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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1296946
審判番号 不服2012-8207  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-07 
確定日 2015-01-27 
事件の表示 特願2000-579636「WT-1とGATA-1のエピトープを用いた免疫治療方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月11日国際公開、WO00/26249、平成15年 1月 7日国内公表、特表2003-500004〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、1999年11月2日(パリ条約による優先権主張 1998年11月2日、イギリス)を国際出願日とする出願であって、請求項に係る発明は、平成24年5月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?28に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「アミノ酸配列RMFPNAPYLからなるペプチドではないという条件で、アミノ酸配列RMFPNAPYLを含み、9から12個のアミノ酸からなるペプチド、あるいは配列RMFPNAPYLの2位および9位のアミノ酸の一つまたは両方が、他の天然に生じるアミノ酸と置換されているアミノ酸配列を含み、前記置換がHLA-A0201に対する結合を損なわない、ペプチド。」

2 先願明細書の記載
(1)原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先権主張の日前である1998年7月31日を優先日として本願の出願日前に国際出願され、本願の出願後に国際公開されたPCT/JP99/04130号(国際公開第00/06602号。対応する国内出願番号は、特願2000-562398号)(以下、「先願」という。)の、国際出願日における国際出願の明細書(以下「先願明細書」という)には、以下の事項が記載されている。そして、以下の事項は、先願における優先権主張の基礎出願である特願平10-218093号(1998年7月31日出願)の出願当初明細書にも記載されている。

ア 「従って本発明は、WT1遺伝子発現生成物が癌抗原である可能性を確認し、新規な癌抗原を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、WT1遺伝子の発現生成物のアミノ酸配列中で、マウス及びヒトのMHCクラスI及びMHCクラスIIとの結合において、アンカーアミノ酸として機能すると予想される少なくとも1個のアミノ酸を含有する連続する7?30個のアミノ酸から成るポリペプチドを合成し、これらのペプチドがMHC蛋白質と結合することを確認すると共に、MHCクラスI抗原と結合した場合にキラーT-細胞を誘導し、且つ標的細胞に殺細胞効果を及ぼすことを確認して本発明を完成した。」(3頁4?14行)

イ 「さらに、本発明は、ヒトWT1のcDNAに対応する配列番号:2に示すアミノ酸配列において、MHC抗原との結合のためのアンカーアミノ酸を含む7?30個のアミノ酸から成るペプチドを活性成分とする癌抗原を提供する。」(3頁20?23行)

ウ 「また、癌細胞の表面においてMHCクラスIにより提示される癌抗原ペプチドのサイズはおよそ8?12個であることが知られている。」(6頁5?7行)

エ 「また、ヒトについては、Immunogenetics Vol. 41, p.178-228 (1995)の記載から、ヒトのHLA-A^(*)0201への結合アンカーアミノ酸として、N-末端から2番目のLeu及びMet、並びにN-末端から9番目のVal及びLeuが予想される。そこで、ヒトWT1蛋白質のアミノ酸配列(Mol. Coll. Biol. Vol.11, p.1707-1712, 1991)(配列番号:2)中で、上の条件に合致する、9個のアミノ酸から成る2種類のペプチドを合成した。
D^(b) 126; Arg Met Phe Pro Asn Ala Pro Tyr Leu(配列番号:5)
(マウスにおけるDb 126 の配列と同じ)
WH 187; Ser Leu Gly Glu Gln Gln Tyr Ser Val(配列番号:8)
(下線はアンカーアミノ酸を示す。)
上記ペプチドと、HLA-A^(*)0201との結合能を次のようにして測定した。
上記ペプチドと、emptyなHLA-A^(*)0201をもつT2細胞(J. Immunol., 150, 1763, 1993 ; Blood, 88, 2450, 1996)を37℃、1時間インキュベート後、HLA-A2.1を認識する蛍光標識モノクローナル抗体で、T2細胞を染色し、FACS解析で、細胞当りの平均蛍光量から結合解離定数を計算した。
結 合 能
ペプチド Kd(M)
D^(b) 126 1.89×10^(-6)
WH 187 7.61×10^(-6)
2種類のペプチドは、ともに中等度以上の結合親和性を有する。」(7頁17行?8頁12行)

(2)以上の記載から、先願明細書においては、WT1遺伝子発現生成物が癌抗原である可能性を確認し、新規な癌抗原を提供するという課題を解決するため(上記ア)、癌細胞の表面においてMHCクラスIにより提示される癌抗原ペプチドのサイズはおよそ8?12個であること(上記ウ)、及び、ヒトのHLA-A^(*)0201(ヒトMHCクラスIであることは、前記エで引用されているImmunogenetics Vol. 41, p.178-228 (1995)のp.178右欄10?21行に記載されているように周知である)への結合アンカーアミノ酸としてN-末端から2番目のLeu及びMet、並びにN-末端から9番目のVal及びLeuが予想されること(上記エ)に基づいて、ヒトWT1蛋白質のアミノ酸配列(配列番号:2)の中から、HLA-A^(*)0201に結合親和性を有するD^(b) 126;Arg Met Phe Pro Asn Ala Pro Tyr Leu(配列番号:5)等のペプチドに到達した(上記ア、イ、エ)ことが認められる。
ここで、配列番号5は、先願の発明者が到達した癌抗原の一例であって、上記ウ及びエの記載からみれば、先願明細書には、配列番号5の9個のアミノ酸からなる配列を含む12個までのサイズのものや、2番目のアンカーアミノ酸がLeu、9番目のアンカーアミノ酸がValであるものも、HLA-A^(*)0201への結合親和性を有するものとして、記載されているに等しいと解するのが相当である。このように解することは、本願発明の特定が、実施例等の具体的な記載に基づくことなく、本願明細書の「HLA分子に結合するペプチドの最適な長さが約8ないし12アミノ酸、好ましくは9アミノ酸であることは周知である。」([0029])の記載、及び「所定のアミノ酸配列の“異型(variant)”により、例えば1または2つのアミノ酸残基の側鎖が、ペプチドが所定のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様にHLA分子に結合できるように、変更(例えば、別の天然に生じるアミノ酸残基の側鎖または他の側鎖で置換することによる)されていることを意味する。例えば、ペプチドは、改善しないにしても、HLA-A0201のような適切なMHC分子と相互作用して結合する能力を少なくとも維持するように、そして、改善しないにしても、本発明の第一、第二または第三の態様に定義したようなアミノ酸配列を含むポリペプチド(例えば、WT1またはgata-1)を異常に発現する細胞を認識して殺すことができる活性化CTLを産生する能力を少なくとも維持するように、修飾されてもよい。HLA-A2結合ノナマーの2位および9位は、通常、アンカー残基である。これらの残基およびHLA-A2を結合することに関わる他の残基の修飾は、CTL認識を変更することなく結合を増強させることができる」(「0018」)の記載を根拠とするものであること(平成21年11月26日付け、平成23年4月15日付けの各意見書における審判請求人の主張)とも符合する。
そうすると、先願明細書における配列番号5は、アミノ酸を一文字記号で標記した場合には、RMFPNAPYLとなるから、先願明細書には、以下の発明が記載されていると認められる。
「アミノ酸配列RMFPNAPYLを含み、9から12個のアミノ酸からなるペプチド、あるいは配列RMFPNAPYLの2位のアミノ酸がLeu、9位のアミノ酸Valと置換されているアミノ酸配列を含む、HLA-A0201に結合する、ペプチド。」
(以下、「先願発明」という。)

3 対比
本願発明と先願発明とを対比すると、後者における「2位のアミノ酸がLeu、9位のアミノ酸Valと置換されている」は前者における「2位および9位のアミノ酸の一つまたは両方が、他の天然に生じるアミノ酸と置換されている」に相当するから、両者は、「アミノ酸配列RMFPNAPYLを含み、9から12個のアミノ酸からなるペプチド、あるいは配列RMFPNAPYLの2位および9位のアミノ酸の一つまたは両方が、他の天然に生じるアミノ酸と置換されているアミノ酸配列を含み、前記置換がHLA-A0201に対する結合を損なわない、ペプチド。」で一致し、以下の点で一応相違する。
本願発明では「アミノ酸配列RMFPNAPYLからなるペプチドではないという条件で」という特定があるのに対し、先願発明にはかかる特定がない点。

4 相違点についての検討
先願発明は、「アミノ酸配列RMFPNAPYLからなるペプチド」以外のペプチドを包含するものであることが明らかであるから、前記相違点は実質的な相違点には当たらない。
したがって、本願発明と先願発明とは実質的に同一である。

5 むすび
本願発明は先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第184条の13で読み替える同法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-26 
結審通知日 2014-09-01 
審決日 2014-09-12 
出願番号 特願2000-579636(P2000-579636)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 茜千葉 直紀  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 飯室 里美
中島 庸子
発明の名称 WT-1とGATA-1のエピトープを用いた免疫治療方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
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