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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1297576
審判番号 不服2012-2318  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-06 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2006-533125「T細胞媒介性疾患の処置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 2日国際公開、WO2004/103304、平成19年 1月18日国内公表、特表2007-500747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2004年5月14日(パリ条約による優先権主張 2003年5月15日、2003年7月21日、2003年10月27日、2003年11月4日、いずれも米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成22年9月17日付け拒絶理由通知に対する同年12月28日付け手続補正、及び平成23年2月1日付け拒絶理由通知に対する同年8月8日付け手続補正がなされたが、同年9月27日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成24年2月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされた。

第2 平成24年2月6日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年2月6日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明

平成24年2月6日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本願明細書の特許請求の範囲は、以下のように補正された。

〈補正前(平成23年8月8日付け手続補正書に記載の特許請求の範囲)〉
「【請求項1】
T細胞媒介性疾患を処置する薬剤の製造におけるジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩の使用であって、
上記T細胞媒介性疾患が、組織不適合性、移植片対宿主疾患、所望されない遅延型超過敏反応、T細胞媒介性肺疾患または自己免疫疾患であり、
上記ジケトピペラジンが以下の式を有しており、
【化1】

ここで:
R^(1)およびR^(2)は同一であっても異なってもよく、R^(1)およびR^(2)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ホモアルギニン、シトルリン、チロシン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、ここで、該アミノ酸は上記(a)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は、以下:
(i)-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、もしくはヘテロアリールであってもよい、-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基、
(ii)-OPO_(3)H_(2)基または-OR_(3)基に置き換えられた-OH基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールであってもよい、-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基、
(iii)-CH(NH_(2))-または-CH(OH)-基に置き換えられた-CH_(2)-基、
(iv)-CH_(2)-NH_(2)または-CH_(2)-OH基に置き換えられた-CH_(3)基、
および/または
(v)ハロゲンに置き換えられた炭素原子に結合しているH
を有している、使用。
【請求項2】
上記T細胞媒介性疾患が、多発性硬化症、神経炎、多発性筋炎、乾癬、白斑、シェーグレン症候群、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、自己免疫性膵炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、糸球体腎炎、強皮症、サルコイドーシス、自己免疫性甲状腺疾患、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、重症筋無力症、アジソン病、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血または結合線維組織増殖症候群である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記T細胞媒介性疾患が、肺線維症または特発性肺線維症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
T細胞の活性化を抑制する薬剤の製造におけるジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩の使用であって、
上記ジケトピペラジンが以下の式を有しており、
【化2】

ここで:
R^(1)およびR^(2)は同一であっても異なってもよく、R^(1)およびR^(2)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ホモアルギニン、シトルリン、チロシン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、ここで、該アミノ酸は上記(a)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は、以下:
(i)-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、もしくはヘテロアリールであってもよい、-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基、
(ii)-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールであってもよい、-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基、
(iii)-CH(NH_(2))-または-CH(OH)-基に置き換えられた-CH_(2)-基、
(iv)-CH_(2)-NH_(2)または-CH_(2)-OH基に置き換えられた-CH_(3)基、
および/または
(v)ハロゲンに置き換えられた炭素原子に結合しているH
を有している、使用。
【請求項5】
R^(1)およびR^(2)の両方が疎水性側鎖または疎水性側鎖の誘導体である、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
R^(1)およびR^(2)は同一であっても異なってもよく、R^(1)およびR^(2)の々は、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、ロイシン、イソロイシンまたはノルロイシンの側鎖である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
R^(1)はグリシンの側鎖であり、R^(2)はロイシンの側鎖である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
薬学的に受容可能な担体、ならびに以下の式:
【化3】

を有するジケトピペラジンまたはその生理学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物であって、
ここで:
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がアラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、シトルリン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、ここで、該アミノ酸は上記(a)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は、以下:
(i)-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、もしくはヘテロアリールであってもよい、-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基、
(ii)-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールであってもよい、-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基、
(iii)-CH(NH_(2))-または-CH(OH)-基に置き換えられた-CH_(2)-基、
(iv)-CH_(2)-NH_(2)または-CH_(2)-OH基に置き換えられた-CH_(3)基、
および/または
(v)ハロゲンに置き換えられた炭素原子に結合しているH
を有する、薬学的組成物。
【請求項9】
R^(5)およびR^(6)の両方が疎水性側鎖または疎水性側鎖の誘導体である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、ロイシン、イソロイシンまたはノルロイシンの側鎖である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、
(c)アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリンもしくはスレオニンの側鎖であるか;または
(d)アミノ酸の側鎖の誘導体であって、(c)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は請求項8に記載されている、薬学的組成物。
【請求項12】
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、
(c)2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、リジン、ヒドロキシリジン、シトルリンもしくはオルチニンであるか;または
(d)アミノ酸側鎖の誘導体であって、(c)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は請求項8に記載されている、請求項8に記載の薬学的組成物。

〈補正後(平成24年2月6日付け手続補正書に記載の特許請求の範囲)〉
「【請求項1】
T細胞媒介性疾患を処置する薬剤の製造におけるジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩の使用であって、
上記T細胞媒介性疾患が、組織不適合性、移植片対宿主疾患、所望されない遅延型超過敏反応、T細胞媒介性肺疾患または自己免疫疾患であり、
上記ジケトピペラジンが以下の式を有しており、
【化1】

ここで:
R^(1)およびR^(2)は同一であっても異なってもよく、R^(1)およびR^(2)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、ホモアルギニン、シトルリン、チロシン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、ここで、該アミノ酸は上記(a)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は、以下:
(i)-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、もしくはヘテロアリールであってもよい、-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基、
(ii)-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールであってもよい、-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基、
(iii)-CH(NH_(2))-または-CH(OH)-基に置き換えられた-CH_(2)-基、
(iv)-CH_(2)-NH_(2)または-CH_(2)-OH基に置き換えられた-CH_(3)基、
および/または
(v)ハロゲンに置き換えられた炭素原子に結合しているH
を有している、使用。
【請求項2】
上記T細胞媒介性疾患が、多発性硬化症、神経炎、多発性筋炎、乾癬、白斑、シェーグレン症候群、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、自己免疫性膵炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、糸球体腎炎、強皮症、サルコイドーシス、自己免疫性甲状腺疾患、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、重症筋無力症、アジソン病、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血または結合線維組織増殖症候群である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記T細胞媒介性疾患が、肺線維症または特発性肺線維症である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
T細胞の活性化を抑制する薬剤の製造におけるジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩の使用であって、
上記ジケトピペラジンが以下の式を有しており、
【化2】

ここで:
R^(1)およびR^(2)は同一であっても異なってもよく、R^(1)およびR^(2)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、ホモアルギニン、シトルリン、チロシン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、ここで、該アミノ酸は上記(a)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は、以下:
(i)-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、もしくはヘテロアリールであってもよい、-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基、
(ii)-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールであってもよい、-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基、
(iii)-CH(NH_(2))-または-CH(OH)-基に置き換えられた-CH_(2)-基、
(iv)-CH_(2)-NH_(2)または-CH_(2)-OH基に置き換えられた-CH_(3)基、
および/または
(v)ハロゲンに置き換えられた炭素原子に結合しているH
を有している、使用。
【請求項5】
R^(1)およびR^(2)の両方が疎水性側鎖または疎水性側鎖の誘導体である、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
R^(1)およびR^(2)は同一であっても異なってもよく、R^(1)およびR^(2)の々は、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、イソロイシンまたはノルロイシンの側鎖である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
薬学的に受容可能な担体、ならびに以下の式:
【化3】

を有するジケトピペラジンまたはその生理学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物であって、
ここで:
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がアラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、シトルリン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、ここで、該アミノ酸は上記(a)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は、以下:
(i)-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、もしくはヘテロアリールであってもよい、-NHR^(3)基または-N(R^(3))_(2)基に置き換えられた-NH_(2)基、
(ii)-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基であって、ここで、R^(3)の各々は独立して、置換されたかもしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールであってもよい、-OPO_(3)H_(2)基または-OR^(3)基に置き換えられた-OH基、
(iii)-CH(NH_(2))-または-CH(OH)-基に置き換えられた-CH_(2)-基、
(iv)-CH_(2)-NH_(2)または-CH_(2)-OH基に置き換えられた-CH_(3)基、
および/または
(v)ハロゲンに置き換えられた炭素原子に結合しているH
を有する、薬学的組成物。
【請求項8】
R^(5)およびR^(6)の両方が疎水性側鎖または疎水性側鎖の誘導体である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、ロイシン、イソロイシンまたはノルロイシンの側鎖である、請求項8に記載の薬学的組成物。【請求項10】
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、
(c)アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、ロイシン、イソロイシン、
ノルロイシン、セリン、ホモセリンもしくはスレオニンの側鎖であるか;または
(d)アミノ酸の側鎖の誘導体であって、(c)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は請求項7に記載されている、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、
(c)2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、リジン、ヒドロキシリジン、シトルリンもしくはオルチニンであるか;または
(d)アミノ酸側鎖の誘導体であって、(c)に記載のアミノ酸の1つであり、該誘導体化された側鎖は請求項7に記載されている、請求項7に記載の薬学的組成物。

上記補正は、
(1)補正前の請求項1及び請求項4に係る発明におけるR^(1)およびR^(2)の定義である「(a)」に記載の選択肢から「ロイシン」及び「アルギニン」を削除した。

(2)補正前の請求項2及び請求項3に係る発明の末尾である「・・・方法。」を「・・・使用。」に補正した。

(3)補正前の請求項6に係る発明におけるR^(1)およびR^(2)の定義の選択肢から「ロイシン」を削除した。

(4)補正前の請求項7を削除した。

(5)上記(4)の補正に伴い、補正前の請求項8?12の番号をそれぞれ一つずつ繰り上げて請求項7?11にすると共に、繰り上げた後の請求項7?11が引用する請求項番号を一つずつ繰り上げた。
以上(1)?(5)を補正事項とするものである。

上記補正事項(2)及び(5)は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第4項第4号の「明りょうでない記載の釈明」に該当し、補正事項(4)は同法第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」に該当する。
また、補正前及び補正後の請求項1、請求項4及び請求項6に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、上記補正事項(1)及び(3)は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の特許請求の範囲に記載の請求項1?11に係る発明(以下、「本願補正発明」という 。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、検討する。

2.原査定の理由

平成23年9月27日付け拒絶査定の理由、すなわち平成23年2月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由3、4の一部は、以下のとおりのものである。
「3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満たしていない。
4.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


理由3、4について
C.請求項1-7
実施例2には、DA-DKP及びMR-DKPを含むヒト初乳HC2626、MR-DKPを含むヒト初乳HCRBL、又は、DA-DKPについてTリンパ球からのTNFαまたはIL-16の産生抑制作用を確認したことが記載されており、当該データは図2-5に示されているが、MR-DKPは初乳に含まれた状態での検討しかしておらず、当該実施例においてヒト初乳について確認された結果が、MR-DKPの存在に由来するものであることは示されていない。
実施例3には、「GL-DKPおよびAP-DKP(DMI Synthesis,Ltd.,Cardiff,UKから入手した)を、実施例2に記載したように、TRiPS細胞株およびH4#9.25細胞株を使用して試験した。GL-DKPおよびAP-DKPが、用量依存的様式でこれらのTリンパ球細胞株の両方によるインビトロでのサイトカイン産生を抑制することを見出した。」と記載されているのみで、どのような濃度でGL-DKPおよびAP-DKPを投与したのか、何のサイトカイン産生抑制作用を検討したのか等の、薬理試験系についての説明が記載されておらず、結果が用量依存的であったことの証明となる薬理試験データも示されていない。
実施例4には、DA-DKP、DA-DKPを含むアルブミン調製物、又は、YE-DKPを含むDKP-γ-グロブリンについてIL-2、IFNγ又はTNFα産生抑制作用を確認したところ、DKP-γ-グロブリンのみが抑制作用を示したことが記載されているものの、YE-DKPはγ-グロブリン調製物に含まれた状態での検討しかしておらず、当該実施例においてDKP-γ-グロブリンについて確認された結果が、YE-DKPの存在に由来するものであることは示されていない。
以上から、実施例2-4におけるデータをみても、効果が確認されているのはDA-DKPについてTリンパ球からのTNFα及びIL-16産生抑制作用だけである。
そして、当該技術分野において、アスパラギン酸とアラニンがそれぞれ親水性又は疎水性アミノ酸だからといって、親水性及び疎水性アミノ酸全ての組み合わせによるDKPについて、DA-DKPと同様の作用を有するとの技術常識があったとは認められないし、また、Tリンパ球からのIFNγ又はTNFα産生抑制作用のみをもって、請求項1-3に規定されたT細胞媒介性疾患を処置可能であるとは認められない。
したがって、上記請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ということができないし、発明の詳細な説明には、上記請求項に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているともいえない。」

3.当審の判断

(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)について

本願補正発明は、上記のとおり、T細胞媒介性疾患を処置する薬剤の製造における、請求項1に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩の使用に係る発明であるから、特許法第2条第3項第2号にいう「方法」の発明である。
そして、本願補正発明の実施とは、T細胞媒介性疾患を処置する薬剤の製造において、請求項1?6に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩を有効成分として使用することであり、また、請求項7?11に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩を薬学的組成物の有効成分として使用することを意味することは明らかである。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるためには、発明の詳細な説明に、請求項1?6に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩がT細胞媒介性疾患を処置する薬剤の有効成分となり得る薬理作用を有すること、また、請求項7?11に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩が薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有することが、当業者が認識できる程度にまで記載されている必要があるといえる。
以上の点を踏まえて、以下に検討する。

(1a)本願明細書に記載されている事項

本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明のジケトピペラジンが、「T細胞媒介性疾患を処置する薬剤の有効成分となり得る薬理作用」または「薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用」を有するか否かに関して、次のような記載がある。なお、下線は便宜上当審合議体が付加した。

(ア)「〔発明の技術分野〕
本発明は、特定のジケトピペラジンを使用する、T細胞媒介性疾患の処置、およびT細胞の活性化の抑制に関する。・・・」(段落【0001】)

(イ)「〔発明の背景〕
T細胞媒介性疾患は、多くの免疫系障害を示す。特に、T細胞は、自己免疫性疾患を開始させかつ永続させる細胞であると考えられている。自己免疫性疾患は、合衆国だけでも何百万もの人々を苦しめている80の深刻な慢性疾患の一群である。自己免疫疾患は、内因性(自己)抗原に対する免疫系の反応によって特徴付けられる。自己抗原に対するこれらの免疫応答は、自己反応性T細胞の持続的または反回性の活性化によって維持され、そして、直接的にまたは間接的に、この自己反応性T細胞は、自己免疫性疾患に見られる特徴的な組織の損傷および破壊の原因である。自己免疫性疾患および他のT細胞媒介性疾患に対する多くの処置が提案されているが、さらなる処置の必要性がなお存在する。」(段落【0002】)

(ウ)「本発明はまた、T細胞の活性化を抑制する方法を提供する。本方法は、式Iのジケトピペラジンまたはその生理学的に受容可能な塩の有効量を、当該ジケトピペラジンまたはその塩を必要とする動物に投与する工程を含む。」(段落【0006】)

(エ)「〔本発明の好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明は、T細胞媒介性疾患を処置する方法を提供する。「処置」は、疾患の症状、継続期間および重篤度を(完全にまたは部分的に)低減させること(疾患が治癒することを含む)、および疾患を予防することを意味するように本明細書中で使用される。
T細胞媒介性疾患としては、組織不適合性、移殖片対宿主疾患、望ましくない遅延型超過敏反応(たとえば遅延型アレルギー反応)、T細胞媒介性肺疾患または自己免疫疾患が挙げられる。T細胞媒介性肺疾患としては、サルコイドーシス、過敏性肺炎、急性間質性肺炎、歯槽骨炎、肺線維症、特発性肺線維症、および炎症性肺損傷によって特徴付けられる他の疾患が挙げられる。自己免疫疾患としては、多発性硬化症、神経炎、多発性筋炎、乾癬、白斑、シェーグレン症候群、慢性間接リウマチ、1型糖尿病、自己免疫性膵炎、炎症性腸疾患(たとえばクローン病および潰瘍性大腸炎)、セリアック病、糸球体腎炎、強皮症、サルコイドーシス、自己免疫性甲状腺疾患(たとえば橋本甲状腺炎および甲状腺機能亢進症)、重症筋無力症、アジソン病、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血および結合線維組織増殖症候群が挙げられる。」(段落【0017】?【0018】)

(オ)「上述したように、本発明のジケトピペラジンまたはその生理学的に受容可能な塩は、T細胞媒介性疾患を処置するか、または、T細胞の活性化を抑制するために使用され得る。
このように使用するために、ジケトピペラジンまたはその生理学的に受容可能な塩は、処置を必要とする動物に投与される。この動物は、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ、またはヒトのような哺乳動物が好ましい。本発明の化合物についての効果的な投薬形態、投与様式、および投薬量は、経験的に決定され得、このような決定を下すことは当業者の範囲内である。投薬量は、使用される特定の化合物、処置されるべき疾患または状態、疾患または状態の重篤度、投与経路、化合物の排泄速度、処置の継続期間、この動物に投与されている他の薬物の同定、この動物の年齢、サイズおよび種類、ならびに医学分野および獣医学分野で知られている他の要因とともに変動することは、当業者によって理解される。一般に、本発明の化合物の好適な1日投与量は、治療効果を生成するために効果的な最少の投与量の、化合物の量である。しかしながら、この1日投与量は、主治医である医師または獣医師により適切な医学的判断の範囲内で決定される。所望される場合、有効な1日投与量は、2個、3個、4個、5個、6個またはそれ以上の副投与量(sub-dose)として投与され得、1日を通して適切な間隔を空けて別々に投与され得る。化合物の投与は、受容可能な応答が達成されるまで継続されるべきである。
本発明の化合物(すなわち、ジケトピペラジンまたはその生理学的に受容可能な塩)は、任意の適切な投与経路によって治療のために患者(患畜)に投与され得、その投与経路としては、経口、経鼻、経直腸、経膣、非経口(たとえば、静脈内注入、髄腔内注入、腹腔内注入、皮下または筋肉注射)、大槽内、経皮、頭蓋内、脳内、および局所(頬側および舌下を含む)が挙げられる。好ましい投与経路は、経口および静脈内である。
本発明の化合物は単独で投与されることも可能であるが、この化合物を薬学的処方物として投与することが好ましい。本発明の薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、および必要に応じて、1つ以上の他の化合物、薬物または他の物質との混合物中の活性成分として本発明の化合物(単数または複数)を含む。各担体は、この処方物の他の成分と適合性であり、動物に対して有害ではないという観点において「受容可能」でなければならない。薬学的に受容可能な担体は当該分野において周知である。選択された投与経路にかかわらず、本発明の化合物は、当業者に公知の慣用的な方法によって、薬学的に受容可能な投薬形態に処方される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Scienceを参照のこと。」(段落【0048】?【0050】)

(カ)「〔実施例1:ラットの腸からのAsp Ala DKP(DA-DKP)およびGlu Ala DKP(EA-DKP)の吸収〕
肛門括約筋から直腸までのラット腸をわずかに単離し、ウシ血清アルブミンを含む赤血球ベースの灌流液を用いて、張間膜動脈を介して潅流した。消化管から流出した赤血球を、門脈の挿管によって回収し、(再酸化後)再循環した。平衡化の期間後、約1mgのAsp-Alaジケトピペラジン(DA-DKP)または約1,4mgのGlu-Alaジケトピペラジン(EA-DKP)を含む溶液(約1ml)を、十二指腸の内腔に注射によって投与した。
投薬後、灌流液の一連のサンプルを、間隔をおいて投与2時間後まで回収した。これらのサンプルを遠心分離機し、両方の環状ペプチドについてタンデム液体クロマトグラフフィー質量分法(tandem liquid chromatography mass spectrometry)によって、血漿をアッセイした。
この結果は、灌流のわずか2時間後には、腸内の内腔から循環へ吸収されたDA-DKPおよびEA-DKPの量は、投与された用量のそれぞれ95%および100%(実際には112%)に相当したことを示した。
したがって、両方の環状ペプチドは、腸内の内腔から血液へ迅速にかつ効果的に吸収され、腸壁を超えて輸送される間に代謝される証拠はない。よって、これらの潜在的治療薬は経口で与えられ得る。・・・変化していないDA-DKPおよびEA-DKPの胃腸管から血液への迅速な吸収は、前全身性クリアランス(pre-systemic clearance)が低いことを示す。したがって、経口的な投薬は理想的な投薬経路である。
さらに、単離され、灌流されたラット腎臓の研究は、腎ペプチダーゼによって広範に代謝される多くの直鎖ペプチドとは異なり、両方の環状ジペプチドの腎クリアランスが比較的遅いことを示している。
このデータをひとまとめにすると、少ない1日投与量のジケトピペラジンの投薬レジメンは、治療目的に適しているであろうということが示唆される。
経口投与後のラットにおける予備的な薬物動態学的データは、両方の環状ジペプチドについて上述したものと一致していた:1,1?3,7mg/kg体重(DA-DKP)および1,5?4,8mg/kg体重(EA-DKP)で経口的に投薬した後の、Tmax値が30分?60分、Cmax値が4?6μg/ml(DA-DKP)および0,6?1,1μg/ml(EA-DKP)(Tmaxは、濃度が最大に達する時間であり、Cmaxは、到達する最大濃度である。これらの両方を、得られたデータについてのカーブフィット方程式(curve fit equation)から計算した。)。
予備的データは、DA-DKPおよび他のジケトピペラジンが血液脳関門を超えることを示唆している。従って、本発明のDA-DKPおよび他のジケトピペラジンは、多発性硬化症のような神経性障害を処置するために役に立つはずである。」(段落【0081】?【0089】)

(キ)「〔実施例2:Met-Arg DKP(MR-DKP)を含むヒト初乳画分およびAsp-Ala DKP(DA-DKP)による、ヒトTリンパ球サイトカイン産生のインビトロでの抑制〕
〔A.材料〕
本実施例は、DA-DKP、MR-DKPを含むヒト初乳(HC2626)、およびまたMR-DKPを含むヒト初乳(HCRBL;脱脂した初乳のCentriconろ過によって調製した、3000未満の分子量の成分を含むヒト初乳画分)の低分子量画分がヒトTリンパ球サイトカイン産生を抑制したことを実証する。DA-DKPおよびMR-DKPを、DMI Synthesis,Ltd.,Cardiff,UKから入手した。これら2つのジケトピペラジンは、炎症に対する生理学的応答の間に生成される、天然に存在する小さな化合物である。これらはまた、時折、ヒト静脈内免疫グロブリン(IVIg)、ヒトアルブミン、および他の生物学的調製物中に見出される。
〔B.Tリンパ球サイトカイン産生の抑制〕
異なる2つのCD4-陽性ヒトTリンパ球クローンを試験した。細胞株の1つ(TRiPS)を、インフルエンザの予防接種を受けたドナーから単離した。この細胞は、ヘマグルチニンペプチド307-319について特有のものである。他の細胞株(H4#9.25)を、複数の硬化症ドナーの検死用脳組織から単離した。この細胞は、ミエリン塩基性タンパク質(アミノ酸87-99)について特有のものである。Tリンパ球クローンの両方が、(1)特異的抗原およびHLA-DR2-陽性提示細胞、または(2)抗-CD3抗体および抗-CD28抗体、のいずれかを用いるインビトロ刺激後に、インターロイキン8(IL-8)、IL-16、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、および腫瘍壊死因子α(TNF-α)を生成する。
これらのT細胞株を、刺激後18?20日目に約4×10^(5)個の細胞を使用する継代のために刺激した。・・・ 活性化実験を、細胞のアリコートを回収し、加温した(37℃)IMDM培地で2度洗浄することにより、実行した。・・・サイトカイン量を、特異的ELISA(例えば、TNFα、IFNγ、IL-8、IL-16;Endrogen)によってアッセイした。」(段落【0090】?【0093】)

(ク)「図1?5に示すように、ヒト初乳(HC2626)は、用量依存的様式で両方のTリンパ球細胞株によるインビトロでのサイトカイン産生を抑制した。また、図1?5に示すように、HC RBLおよびDA-DKPは、促進サイクルの初期において、用量依存的様式で両方のTリンパ球細胞株によるインビトロでのサイトカイン産生を抑制した。しかしながら、周期後期(14日目以降)におけるHC RBLおよびDA-DKPの効果は、刺激性であった(図4参照)。HC RBLおよびDA-DKPの両方が、MR-DKPを含んでいる(質量分析法によって決定されたように)が、HC2626は、MR-DKP(細胞周期の後期における抑制性効果の原因であり得る)に加えて他の構成成分(2003年11月25日出願の係属中の出願10/723,247に記載されるようなカゼイン(これは、相対的な脱リン酸化タンパク質であり、よって抗炎症性であり得る)を含む)を含む。したがって、HCRBLおよびHC2626(いずれもMR-DKPを含んでいる)、MR-DKPおよびDA-DKPは、全て刺激周期の初期においてT細胞によるサイトカイン産生を抑制するため、T細胞媒介性疾患および/または自己免疫性疾患(例えば、多発性硬化症)における炎症性サイトカイン応答を下方調節する際に有用であるはずである。これらの結果はまた、HC RBL、HC2626、MR-DKPおよびDA-DKPが、残りのT細胞に影響することなく、抗原特異的T細胞に選択的に影響を与えることを示唆する。」(段落【0094】)

(ケ)「〔C.作用機構〕
DA-DKPおよびHC2626(MR-DKPを含む)の作用機構を試験した。試験するために、何も加えず(「Nil」)、CD3/CD28 Dynabeads(CD3/CD28ビーズ)、CD3/CD28ビーズおよび0.5mMDA-DKP、またはCD3/CD28ビーズおよびHC2626の1:500希釈物のいずれかとともに、1×10^(6)個の18日目のTRiPS細胞を、37℃で30分間インキュベートした。・・・結果をフィルムに曝露することにより視覚化し、表2が示すように、0(陰性)または+から++++(陽性)とスコア付けした。表2に示すように、いくつかのサイトカイニン転写因子活性化(ERK1/2)および予め形成されたサイトカイニンの放出が、HC2626(MR-DKPを含む)およびDA-DKPによって抑制された。」(段落【0095】?【0097】)

(コ)「

」(段落【0098】の【表1】)

(サ)「

」(段落【0099】の【表2】)

(シ)「〔実施例3:Gly-Leu DKP(GL-DKP)およびAla-Pro DKP(AP-DKP)による、インビトロでのヒトTリンパ球サイトカイン産生抑制〕
GL-DKPおよびAP-DKP(DMI Synthesis, Ltd., Cardiff, UKから入手した)を、実施例2に記載したように、TRiPS細胞株およびH4#9.25細胞株を使用して試験した。GL-DKPおよびAP-DKPが、用量依存的様式でこれらのTリンパ球細胞株の両方によるインビトロでのサイトカイン産生を抑制することを見出した。この作用機構は、実施例2に記載したように、現在調査中であり、サイトカイン転写調節因子の活性化および予め形成されたサイトカインの放出の両方が影響を受けたようである。」(段落【0100】)

(ス)「〔実施例4:Asp Ala DKP(DA-DKP)およびTyr Glu DKP(YE-DKP)による、インビトロでのヒトTリンパ球サイトカイン産生の抑制〕
正常なヒトリンパ球を、Histopaque(Sigma)を用いて、正常なヒトドナーの末梢血白血球から単離した。次いで、3?4×10^(5)個のリンパ球を、血清を含まない1mlのIMDM培地中で懸濁した。これらの細胞を、1:2000希釈した抗CD3抗体希釈物(Pharmingen, San Diego, CA )25μlを添加し、37℃で18時間インキュベートすることによって刺激した。
次いで、3つのDKP製剤のうちの1つおよびデキサメタゾン(最終濃度10-5M)を3連の培養物に添加した。これらの3つのDKP調製物は、以下の通りである:
1.DA-DKP(DMI Synthesis,Ltd.,Cardiff, UK)より入手;培養液中の最終濃度25μg/ml)
2.DKP-ZLB、60℃で4日間加熱した後に質量分析法による測定にて0,5mM DA-DKPを含むことがわかった25%アルブミン調製物(ZLB Bioplasma,AG 3000 Berne 22 Switzerlandより入手)(培養液中の最終濃度14μg/ml DA-DKP)
3.DKP-γ-glob、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)中に12mg/mlのγ-グロブリンを含むγ-グロブリン調製物(Sigmaより入手、番号G-4386)を、Centricon 3000フィルタを使用してろ過し、このろ液(3000未満のMWを有する成分を含む)を使用した。このろ液は質量292(これは、Tyr-Glu DKP(YE-DKP)の質量である)を含んでいた。この質量を、陰性電気スプレイ質量分析法と結合した陰イオン交換HPLCによって測定した。このろ液を、培養液中にて1:4の最終希釈で使用した。
DKP調製物またはデキサメタゾンを添加した後、培養物を、37℃で18時間インキュベートした。次いで、各培養液に放出されたIL-2、IFNγ、およびTNFαの量を、ELISA(Pierce Biotechnology, Rockford, IL61105)によって測定した。」(段落【0101】?【0103】)

(セ)「結果を、以下の表3に示す。表に見られるように、3つ全てのサイトカインの放出の減少は、DKP-γ-グロブリンを用いて得られた。CD69+T細胞(CD69は活性化されたT細胞上に見られるマーカーである。)の数を調べるフローサイトメトリーもまた、デキサメタゾンによる約50%の低減と比較した場合に、DKP-γ-globは、T細胞受容体複合体が内部移行するにもかかわらず、CD69+T細胞の数を約90%まで減少させたことを示した。」(段落【0104】)

(ソ)「

」(段落【0105】の【表3】)

(1b)本願の各実施例で用いられた有効成分

本願の実施例1で用いられた有効成分は、
ジケトピペラジンであるAsp(アスパラギン酸)Ala(アラニン)DKP(以下、「DA-DKP」という。)、
及び、ジケトピペラジンであるGlu(グルタミン酸) Ala(アラニン)DKP (以下、「EA-DKP 」という。)である(摘記(カ))。
本願の実施例2で用いられた有効成分は、
ジケトピペラジンであるDA-DKP (摘記(キ))、
ジケトピペラジンであるMet(メチオニン)-Arg(アルギニン)DKP(以下、「MR-DKP」という。)を含むヒト初乳であって、細胞周期の後期における抑制性効果の原因であり得る上記「MR-DKP」に加えて、他の構成成分として、相対的な脱リン酸化タンパク質であり抗炎症性であり得る「カゼイン」を含むヒト初乳(摘記(キ)及び(ク)、以下「HC2626」という。)、
及び、脱脂した初乳のろ過により調製した、3000未満の分子量の成分を含むヒト初乳画分であって、上記「MR-DKP」を含むヒト初乳(摘記(キ)、以下、「HCRBL」という。)である。
本願の実施例3で用いられた有効成分は、
ジケトピペラジンであるGly(グリシン)-Leu(ロイシン)DKP(以下、「GL-DKP」という。)、
及び、ジケトピペラジンであるAla(アラニン)-Pro(プロリン)DKP (以下、「AP-DKP 」という。)である(摘記(シ))。
本願の実施例4で用いられた有効成分は、
ジケトピペラジンであるDA-DKP 、
及び、0.5mM DA-DKPを含むことがわかった25%アルブミン調製物(以下、「DKP-ZLB」という。)、
及び、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)中に12g/mlのγ-グロブリンを含むγ-グロブリン調製物をろ過して得られた3000未満のMWを有する成分を含むろ液であって、質量292(ジケトピペラジンであるTyr(チロシン)Glu(グルタミン酸)DKP (以下、「YE-DKP 」という。)の質量である。)を含むろ液(以下「DKP-γ-glob」という。)である(摘記(ス))。

(1c)本願の各実施例で用いられた上記有効成分のそれぞれが、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分となり得る薬理作用、または薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有するか否かについて

実施例1には、ジケトピペラジンである「DA-DKP」及び「EA-DKP 」のそれぞれが腸内の内腔から血液へ迅速にかつ効果的に吸収され、経口で投与可能であることが示されている(摘記(カ))。
しかし、上記ジケトピペラジンが奏する薬理作用の有無を確認し得る薬理試験データまたはそれと同視すべき程度の記載はないので、実施例1の記載を根拠として、上記「DA-DKP」及び「EA-DKP 」が、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分となり得る薬理作用、または薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有するとはいえない。

実施例2には、ジケトピペラジンである「DA-DKP 」、「HC2626」(ジケトピペラジンである「MR-DKP]及び「カゼイン」を含むヒト初乳)、及び「HCRBL」(3000未満の分子量の成分を含むヒト初乳画分であって、ジケトピペラジンである「MR-DKP」を含むヒト初乳)のそれぞれについて、ヒトTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用が確認されたことが、裏付けとなる薬理試験データと共に記載されている(摘記(キ)?(サ))。
しかし、上記「HC2626」は、ジケトピペラジンである「MR-DKP」だけでなく、抗炎症性であり得る「カゼイン」のような他の成分も含むヒト初乳であるであるから、「HC2626」によるTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用が、ジケトピペラジンである「MR-DKP」の作用によるものであるか否かは不明である。
同様に、上記「HCRBL」は、ジケトピペラジンである「MR-DKP」だけでなく、3000未満の分子量の他の成分を含むヒト初乳であるから、「HCRBL」によるTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用が、ジケトピペラジンである「MR-DKP」の作用によるものであるか否かは不明である。
そうすると、実施例2の結果に接した当業者は、ジケトピペラジンである「DA-DKP 」を単独で用いた場合にTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用を奏することは理解し得るものの、ジケトピペラジンである「MR-DKP」を単独で用いた場合であっても、上記「DA-DKP 」、「HC2626」及び「HCRBL」と同様にTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用を奏すると理解し得るとは言い難い。

実施例3には、ジケトピペラジンである「GL-DKP」及び「AP-DKP 」が、いずれも用量依存的様式でTリンパ球細胞株のインビトロでのサイトカイン産生を抑制することが見出されたことが文言でのみ記載されているが、裏付けとなる薬理試験データ等は記載されていない。
ここで、実施例3には、用いた実験条件について「実施例2に記載したように」と記載されているので、実施例3で用いられた実験条件を理解するために実施例2の記載を参酌すると、実施例3で用いられたジケトピペラジンである「GL-DKP」及び「AP-DKP 」の入手元は、実施例2で用いられたジケトピペラジンである「DA-DKP」及び「MR-DKP」と同様に「DMI Synthesis, Ltd., Cardiff, UK」であり、また、実施例3では実施例2と同様に「TRiP細胞株」及び「H4#9.25細胞株」を用いたことが理解できる(摘記(キ)及び(シ))。
しかし、実施例2では、ヒトTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用を確認する薬理試験において、ジケトピペラジンである「DA-DKP 」は単独で用いている一方、ジケトピペラジンである「MR-DKP」は「HC2626」や「HCRBL」のようにヒト初乳中すなわち他の成分も存在する状態で用いているのであるから、実施例2の記載を参酌しても、実施例3で用いられたジケトピペラジンである「GL-DKP」及び「AP-DKP 」のそれぞれが、上記「DA-DKP」と同様に単独で用いられたのか、あるいは上記「MR-DKP」と同様にヒト初乳中すなわち他の成分が存在する状態で用いられたのか、いずれであるのかについて、当業者には理解できない。
そうすると、実施例2の記載を参酌しても、ジケトピペラジンである「GL-DKP」及び「AP-DKP 」のそれぞれが単独で用いられたか否かが不明であるので、実施例3の「いずれも用量依存的様式でTリンパ球細胞株のインビトロでのサイトカイン産生を抑制することが見出された」という記載が、「GL-DKP」及び「AP-DKP 」それぞれを単独で用いた場合に得られた薬理作用を意味する記載であるとはいえない。
仮に、上記記載が、「GL-DKP」及び「AP-DKP 」それぞれを単独で用いた場合に得られた薬理作用を意味する記載であるとしても、裏付けとなる薬理試験データ等が記載されていない以上、当該薬理作用の程度は依然として不明であるから、実施例3の記載に接した当業者が、「GL-DKP」及び「AP-DKP 」は、いずれもT細胞媒介性疾患を処置する有効成分となり得る薬理作用、または薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有すると理解し得るとは言い難い。
このように、実施例3の記載を根拠として、ジケトピペラジンである「GL-DKP」及び「AP-DKP 」それぞれが、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分となり得る薬理作用、または薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有するとはいえない。

実施例4には、ジケトピペラジンである「DA-DKP 」がIL-2及びTNFαの放出を抑制し、「DKP-ZLB」(ジケトピペラジンである「DA-DKP」を含むアルブミン調製物)がIL-2の放出を抑制し、「DKP-γ-glob」(ジケトピペラジンである「YE-DKP」及びγ-グロブリンを含むγ-グロブリン調製物)がIL-2、IFNγ及びTNFαの放出を抑制すると共に、CD69+T細胞の数を約90%まで低減させたことが記載されている(摘記(ス)?(ソ))。
しかし、上記「DKP-γ-glob」は「YE-DKP」だけでなく「γ-グロブリン」も含んでおり、しかも「γ-グロブリン」が免疫系に影響を及ぼす治療薬剤であることは本願優先日当時の技術常識であるので(要すれば、「今日の治療薬(2000年版)」、株式会社南江堂、2000年2月20日発行、第411頁を参照。)、実施例4の結果に接した当業者が、ジケトピペラジンである「YE-DKP」を単独で用いた場合であっても、「DKP-γ-glob」と同様にIL-2、IFNγ及びTNFαの放出を抑制すると共に、CD69+T細胞の数を約90%まで低減させたこTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用を奏すると理解し得るとは言い難い。
このように、実施例4の記載を根拠として、ジケトピペラジンである「YE-DKP」が、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分となり得る薬理作用、または薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有するとはいえない。

以上のことから、本願明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が、単独で用いた場合にTリンパ球サイトカイン産生を抑制する作用を奏し、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分または薬学的組成物の有効成分となり得る可能性が確認または示唆されたと理解し得るジケトピペラジンは「DA-DKP」(すなわちAsp(アスパラギン酸)Ala(アラニン)DKP)のみである。

(1d)本願補正発明の有効成分であるジケトピペラジンが、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分となり得る薬理作用、または薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有するか否かについて

本願補正発明の有効成分であるジケトピペラジンは、
請求項1及び4で「R^(1)およびR^(2)は同一であっても異なってもよく、R^(1)およびR^(2)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、ホモアルギニン、シトルリン、チロシン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、」と定義され、
請求項7で「R^(5)およびR^(6)は同一であっても異なってもよく、R^(5)およびR^(6)の各々は、
(a)アミノ酸の側鎖であって、該アミノ酸がアラニン、バリン、ノルバリン、α-アミノイソ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸、2,3-ジアミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、ホモセリン、スレオニン、リジン、ヒドロキシリジン、シトルリン、もしくはオルニチンであるか;または
(b)アミノ酸側鎖の誘導体であって、ここで、該アミノ酸は上記(a)に記載のアミノ酸の1つであり、」と定義されているが、
上記「DA-DKP」(すなわちAsp(アスパラギン酸)Ala(アラニン)DKP)は、上記請求項1、4及び7で定義されるいずれのジケトピペラジンにも該当せず、さらに、これらの請求項のいずれかを引用する請求項2、3、5、6、及び8?11で定義されるジケトピペラジンのいずれにも該当しない。
また、上記「DA-DKP」(すなわちAsp(アスパラギン酸)Ala(アラニン)DKP)」で確認された結果を根拠として、請求項1?6または請求項7?11に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩が、「DA-DKP」同様の薬理作用を有し、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分または薬学的組成物の有効成分となり得る可能性が確認または示唆されたと推認し得る根拠となる本願出願日当時の技術常識等が存在するともいえない。

(1e)小括

以上のように、本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1?6に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩がT細胞媒介性疾患を処置する薬剤の有効成分となり得る薬理作用を有すること、また、請求項7?11に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩が薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有することが、当業者が認識できる程度にまで記載されているとはいえない。
よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないのであるから、補正後の本願は、特許法第36条第4項第1号に記載する要件を満たしていない。

(2)特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)について

特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な記載の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識等に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、また、本願明細書のサポート要件の存在は、本願出願人すなわち審判請求人が挙証責任を負うと解するのが相当である。
ここで、上記「3.(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)について」で指摘したように、本願補正発明の解決すべき課題は、T細胞媒介性疾患を処置する薬剤の製造において、請求項1?6に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩を有効成分として使用すること、また、請求項7?11に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩を薬学的組成物の有効成分として使用することであるが、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記課題を解決し得る手段となるジケトピペラジンについて、当業者が認識できる程度に記載がなされているとはいえず、この点が本願出願日当時の技術常識等から自明であるともいえない。
そうすると、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当業者が、本願補正発明の上記課題を解決し得る手段の範囲を認識できるとはいえず、さらに本願出願日当時の技術常識等を参酌しても、当業者が、本願発明の上記課題を解決し得る手段の範囲を依然として認識できないと解するほかはない。
それにもかかわらず、特許請求の範囲には本願補正発明が記載されているのであるから、本願明細書の特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合しておらず、本願補正発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないので、補正後の本願は、特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない。

4.補正却下についてのむすび

以上のとおり、補正後の本願は、特許法第36条第4項第1号に記載する要件、及び特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない。 よって、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1号の規定によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

平成24年2月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年8月8日付け手続補正書に記載の特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものである。

(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)について

実施例3で用いられた「GL-DKP」(すなわちジケトピペラジンであるGly(グリシン)-Leu(ロイシン)DKP)は、本願発明の請求項4?7において「R^(1)はグリシンの側鎖であり、R^(2)はロイシンの側鎖である」場合のジケトピペラジンに相当するが、上記「第2 3.(1)」の「(1c)」で指摘したように、実施例3の記載を根拠として、「GL-DKP」が、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分となり得る薬理作用、または薬学的組成物の有効成分となり得る薬理作用を有するとはいえない。
また、上記「第2 3.(1)」の「(1c)」及び「(1d)」で指摘したように、T細胞媒介性疾患を処置する有効成分または薬学的組成物の有効成分となり得る可能性が確認または示唆されたと理解し得るジケトピペラジンである「DA-DKP」(すなわちジケトピペラジンであるAsp(アスパラギン酸)Ala(アラニン)DKP)は、本願発明の請求項1?12で定義されるいずれのジケトピペラジンにも該当せず、上記「DA-DKP」(すなわちジケトピペラジンであるAsp(アスパラギン酸)Ala(アラニン)DKP)で確認された薬理作用を根拠として、請求項1?12に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩が、同様の薬理作用を有すると推認し得る本願出願日当時の技術常識等が存在するともいえない。
以上のように、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないので、本願は、特許法第36条第4項第1号に記載する要件を満たしていない。

(2)特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)について

本願発明の解決すべき課題は、上記「第2 3.(2)」で指摘したように、T細胞媒介性疾患を処置する薬剤の製造において、請求項1?7に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩を有効成分として使用すること、また、請求項8?12に記載の特定の化学構造を有するジケトピペラジンまたはそれらの生理学的に受容可能な塩を薬学的組成物の有効成分として使用することであるが、上記「第3(1)」で指摘したように、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記課題を解決し得る手段となるジケトピペラジンについて、当業者が認識できる程度に記載がなされているとはいえず、この点が本願出願日当時の技術常識等から自明であるともいえない。
そうすると、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当業者が、本願発明の上記課題を解決し得る手段の範囲を認識できるとはいえず、さらに本願出願日当時の技術常識等を参酌しても、当業者が、本願発明の上記課題を解決し得る手段の範囲を依然として認識できないと解するほかはない。
それにもかかわらず、特許請求の範囲には本願発明が記載されているのであるから、本願明細書の特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合しておらず、本願発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないので、本願は、特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない。

第4 むすび

以上のとおり、本願は特許法第36条第4項第1号に記載する要件を満たしておらず、また、本願は特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-02 
結審通知日 2014-09-09 
審決日 2014-09-30 
出願番号 特願2006-533125(P2006-533125)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 537- Z (A61K)
P 1 8・ 536- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊池 美香  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 前田 佳与子
安藤 倫世
発明の名称 T細胞媒介性疾患の処置  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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