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審決分類 審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1297619
審判番号 不服2013-23363  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-29 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2008-514783「有機金属化学気相成長法(MOCVD)による平坦な無極性{1-100}m面窒化ガリウムの成長方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月 7日国際公開、WO2006/130622、平成20年11月27日国内公表、特表2008-543087〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年5月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年5月31日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月12日付けで最初の拒絶理由が通知され、平成24年3月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月24日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書、誤訳訂正書及び手続補正書が提出され、同年12月19日に意見書、補正書及び上申書が提出されたところ、平成24年12月18日付けの手続補正及び同年12月19日付けの手続補正は平成25年7月2日付けで却下されるとともに、同日に拒絶査定がなされた。
それに対して、同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出された。

第2 平成25年11月29日に提出された手続補正書による補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年11月29日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?29を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?29と補正するものであり、補正前後の請求項1、3、4、7、11、15、20、23、25は、それぞれ次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1000℃?1275℃の温度で基板上に第1の窒化物層を成長する工程と、
(b)無極性{1-100}m面III族窒化物層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて1000℃?1275℃の前記温度で成長する工程を含むことを特徴とする、III族窒化物のエピタキシャル薄膜を成長する方法。」
「【請求項3】
前記無極性m面III族窒化物はm面窒化ガリウム(GaN)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項4】
前記第1の窒化物層は核形成層であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項7】
請求項1に記載の方法を用いて作られるデバイス、ウェーハ、基板、或いはテンプレート。」
「【請求項11】
前記工程(a)および(b)における成長は、100Torr未満または50?760Torrの間で変わる成長ガス圧で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。」
「【請求項15】
前記無極性m{1-100}面III族窒化物膜は、表面凹凸値が少なくとも5μm×5μmの範囲で2.54nm未満の窒化ガリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項20】
上面を含む無極性m面III族窒化物膜であって、
該上面はエピタキシャル成長され、
該成長された上面の表面凹凸値は少なくとも5μm×5μmの範囲で2.54nm未満であることを特徴とする、該無極性m面III族窒化物膜からなるデバイス構造。」
「【請求項23】
さらに基板上に成長される第1の窒化物層と、
該第1の窒化物層上に成長される前記無極性m面窒化物膜からなることを特徴とする、
請求項20に記載のデバイス構造。」
「【請求項25】
前記無極性III族窒化物膜は、デバイス、ウェーハ、基板或いはテンプレートであることを特徴とする、請求項20に記載のデバイス構造。」

(補正後)
「【請求項1】
(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1000℃?1275℃の温度で基板上に核生成層として第1の窒化物層を成長する工程と、
(b)無極性{1-100}m面III族窒化物層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて1000℃?1275℃の前記温度で成長する工程を含むことを特徴とする、III族窒化物のエピタキシャル薄膜を成長する方法。」
「【請求項3】
前記無極性m面III族窒化物は5μm×5μmの範囲にわたって表面凹凸値が0?15nmであるm面窒化ガリウム(GaN)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項4】
前記第1の窒化物層は1000℃?1160℃の温度で成長した窒化ガリウム核生成層であり、前記無極性{1-100}m面III族窒化物層は1000℃?1160℃の温度で成長した無極性{1-100}m面窒化ガリウム層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項7】
請求項1に記載の方法を用いて作られる、エピタキシャル成長した状態で5μm×5μmの範囲で自乗平均根表面凹凸値が2.54nm以下および/または表面凹凸値が0?15nmであるエピタキシャル成長された上面を有する無極性m面窒化ガリウム膜を含むデバイス、ウェーハ、基板、或いはテンプレート。」
「【請求項11】
前記工程(a)および(b)における成長は、50?760Torrの間の成長ガス圧で行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。」
「【請求項15】
前記温度、前記圧力および前記V/III比は、前記無極性m{1-100}面III族窒化物膜が、5μm×5μmの範囲で2.54nm以下である自乗平均根表面凹凸値と、x線回折により測定される半値全幅(FWHM)がわずか1.2°であるロッキングカーブにより特徴づけられる結晶品質とを有する窒化ガリウム膜となるような温度、圧力、およびV/III比であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項20】
異なるIII族窒化物層からなり、上面を有する窒化ガリウム膜を含む無極性m面III族窒化物膜であって、
該上面はエピタキシャル成長され、
該成長された該上面は平坦であり、該上面の自乗平均根表面凹凸値は5μm×5μmの範囲で2.54nm以下であることを特徴とする、該無極性m面III族窒化物膜からなるデバイス構造。」
「【請求項23】
さらに基板上に成長される第1の窒化物層と、
該第1の窒化物層上に成長される前記無極性m面窒化物膜からなり、前記無極性m面窒化ガリウム膜がx線回折により測定された半値全幅(FWHM)が0.22°?1.2°であるロッキング・カーブにより特徴づけられる結晶品質を有することを特徴とする、請求項20に記載のデバイス構造。」
「【請求項25】
前記無極性III族窒化物膜は、デバイス、ウェーハ、基板或いはテンプレートであり、前記窒化ガリウム膜は、
(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1100℃?1275℃の温度、400?5500のV/III比、および50?760Torrの圧力で基板上に核生成層として第1の窒化物層を成長する工程と、
(b)無極性{1-100}m面窒化ガリウム層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて1000℃?1160℃の温度、200?3000のV/III比、および50?760Torrの圧力で成長する工程
を含む方法を用いて作製された基層であることを特徴とする、請求項20に記載のデバイス構造。」

2 本件補正についての検討
(1)補正事項の整理
本件補正は、次の事項を含む補正である。
[補正事項1]
補正前の請求項3に記載された「m面窒化ガリウム(GaN)」を、「5μm×5μmの範囲にわたって表面凹凸値が0?15nmであるm面窒化ガリウム(GaN)」として、補正後の請求項3とすること。
[補正事項2]
補正前の請求項4に記載された「核形成層である」を、「1000℃?1160℃の温度で成長した窒化ガリウム核生成層であり、前記無極性{1-100}m面III族窒化物層は1000℃?1160℃の温度で成長した無極性{1-100}m面窒化ガリウム層を含む」として、補正後の請求項4とすること。
[補正事項3]
補正前の請求項7に記載された「デバイス、ウェーハ、基板、或いはテンプレート」を、「、エピタキシャル成長した状態で5μm×5μmの範囲で自乗平均根表面凹凸値が2.54nm以下および/または表面凹凸値が0?15nmであるエピタキシャル成長された上面を有する無極性m面窒化ガリウム膜を含むデバイス、ウェーハ、基板、或いはテンプレート」として、補正後の請求項7とすること。
[補正事項4]
補正前の請求項11に記載された「前記工程(a)および(b)における成長は、100Torr未満または50?760Torrの間で変わる成長ガス圧で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法」を、「前記工程(a)および(b)における成長は、50?760Torrの間の成長ガス圧で行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法」として、補正後の請求項11とすること。
[補正事項5]
補正前の請求項15に記載された「前記無極性m{1-100}面III族窒化物膜は、表面凹凸値が少なくとも5μm×5μmの範囲で2.54nm未満の窒化ガリウムである」を、「前記温度、前記圧力および前記V/III比は、前記無極性m{1-100}面III族窒化物膜が、5μm×5μmの範囲で2.54nm以下である自乗平均根表面凹凸値と、x線回折により測定される半値全幅(FWHM)がわずか1.2°であるロッキングカーブにより特徴づけられる結晶品質とを有する窒化ガリウム膜となるような温度、圧力、およびV/III比である」として、補正後の請求項15とすること。
[補正事項6]
補正前の請求項20に記載された「上面を含む無極性m面III族窒化物膜」を、「異なるIII族窒化物層からなり、上面を有する窒化ガリウム膜を含む無極性m面III族窒化物膜」とし、さらに、補正前の請求項20に記載された「該成長された上面の表面凹凸値は少なくとも5μm×5μmの範囲で2.54nm未満である」を、「該成長された該上面は平坦であり、該上面の自乗平均根表面凹凸値は5μm×5μmの範囲で2.54nm以下である」として、補正後の請求項20とすること。
[補正事項7]
補正前の請求項23に記載された「前記無極性m面窒化物膜からなること」を、「前記無極性m面窒化物膜からなり、前記無極性m面窒化ガリウム膜がx線回折により測定された半値全幅(FWHM)が0.22°?1.2°であるロッキング・カーブにより特徴づけられる結晶品質を有すること」として、補正後の請求項23とすること。
[補正事項8]
補正前の請求項25に記載された「である」を、「であり、前記窒化ガリウム膜は、(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1100℃?1275℃の温度、400?5500のV/III比、および50?760Torrの圧力で基板上に核生成層として第1の窒化物層を成長する工程と、(b)無極性{1-100}m面窒化ガリウム層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて1000℃?1160℃の温度、200?3000のV/III比、および50?760Torrの圧力で成長する工程 を含む方法を用いて作製された基層である」として、補正後の請求項25とすること。

(2)新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についての検討
以下、上記補正事項1?5、7、及び8について検討する。

ア 補正事項1について
(ア)本願の願書に最初に添付された外国語書面の翻訳文の平成24年12月18日付けの誤訳訂正書による補正後の外国語書面の翻訳文(以下「当初明細書等」という。)には、「『m面』GaN材料」の「表面凹凸」について、以下のように記載されている(段落【0025】は平成24年12月18日付けの誤訳訂正書によって補正されている。)。

・「【0025】
出来上がったm面GaN材料の5μm×5μmの原子間力顕微鏡(AFM)表面像を図4に示す。結晶粒は<11-20>の方向に沿っていて、表面凹凸値(自乗平均根)は5μm×5μmの走査(審決注:「捜査」は誤記と認定した。)範囲で約2.54nm以下であった。
【0026】
図5は軸上及び非軸上x線回折ロッキング・カーブを示すω(°)対カウント数/秒の図である。下の表1に示すように軸上(1-100)半値全幅(FWHM)は、aモザイク度及びcモザイク度がそれぞれ0.22°及び1.2°という低い値が測定された。また非軸上(10-12)反射はFWHM値が0.38°である。これらの凹凸とFWHM値は核形成層とGaNエピタキシャル薄膜自体の成長条件を変えても大きくは変化しないことがわかった。」
・「【図面の簡単な説明】
…(略)…
【図4】原子間力顕微鏡(AFM)による5μm×5μmの表面像であり、表面凹凸は2.54nmであることを示している。」

(イ)上記のように、当初明細書等には、請求項3に記載された「5μm×5μmの範囲にわたって表面凹凸値が0?15nmであるm面窒化ガリウム(GaN)」が記載も示唆もされているとはいえず、かつ、当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。
したがって、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
よって、補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たしていない。

イ 補正事項2について
(ア)補正後の請求項4には「『前記第1の窒化物層』は『窒化ガリウム核生成層』であり」と記載され、また、補正後の請求項4は請求項1を引用しており、補正後の請求項1には「核生成層として第1の窒化物層を成長する」と記載されているので、先ず、「核生成層」の用語について検討する。
ところが、当初明細書等には、「核生成層」の用語は記載されていない。

(イ)他方、当初明細書等には、「核形成層」または「核形成層の成長温度」等について、以下のように記載されている(下線は合議体が付加した。段落【0023】は上記誤訳訂正書によって補正されている。)。

・「【0021】
技術的な説明
成長の前に、m面SiC基板を水素中で熱処理する。GaN薄膜成長の前に、AlN層を核形成層として形成する。最後にGaN層をMOCVDによって成長する。図3は単位胞の中で重要な無極性m面GaN(1-100)結晶面を示す。
【0022】
最適な品質のm面GaNを実現するために、AlN層とGaN層の成長に対してそれぞれ400?5,500と200?3,000のV/III比、50?760Torrの間で変わる成長ガス圧、1,100℃?1,275℃、及び1,000℃?1,160℃の範囲の成長温度シリーズがテストされた。温度、リアクタ圧力及び前駆体流速のこの広い範囲内でAlNおよびGaNともm面は安定であった。
【0023】
高品質のGaNを得るために最適なAlN核形成層は、核形成層の厚さ150nm以下のとき、1,175℃以上の温度、比較的低い圧力、及び3,500以下のV/III比にて実現された。」
・「【0035】
無極性エピタキシャル薄膜は、色々な条件と方法によって成長したGaNまたはAlNのような、さまざまな異なる核形成層上、或いは裸の基板上に成長核が作られて成長する。」
・「【0039】
そのような変形は本発明の全体的な実施形態を基本的に変えるものではない。
利点と改良点
m-{1-100}面GaNの成長はHVPE法とMBE法では既に実験されて成功している。しかしながら、MOCVD法によって高品質平坦な無極性m-{1-100}面GaNの成長を実験して成功したのは未だかつて本発明が初めてである。
【0040】
MOCVD法を用いた平坦なm面GaNの成長は、平坦なa-{11-20}面GaNの成長に比べて、大きな成長窓を持っていて、安定性良く成長できるという利点がある。この利点が発揮されるのは、AlN核形成層やGaNエピタキシャル薄膜に対する温度や、圧力や、前駆体流量などの成長パラメータが変わったときである。
【0041】
最適な品質のm面GaNを実現するためには、AlNとGaNに対してそれぞれ、V/III比としては400?5,500および200?3,000の範囲の値が、成長圧力としては50?760Torrの範囲が、そして成長温度シリーズとして1,100℃?1,275℃および1,000℃?1,160℃の範囲が調べられた。このような条件を変更しても結晶性や表面品質に重大な影響は及ぼさなかった。これは平坦な無極性a面GaN薄膜の場合と異なることである。また、a面GaNでは結晶や表面の品質が成長条件の変化を非常に受けやすく、狭い成長窓に閉じ込められる。」

(ウ)そこで、仮に、請求項1に記載された「核生成層」が、当初明細書等に記載の「核形成層」の誤記であるか、または当該「核形成層」と同義であり、また、請求項4に記載された「窒化ガリウム核生成層」が、「窒化ガリウム核形成層」の誤記であるか、または「窒化ガリウム核形成層」と同義であるとして、以下で、当初明細書等の記載について検討する。

当初明細書等の段落【0022】には、「『GaN層』の成長に対して『1,000℃?1,160℃』の範囲の成長温度シリーズがテストされた」ことが開示されている。
ここで、当該「GaN層」は、当初明細書等の段落【0021】及び【0040】?【0041】、特に段落【0040】の記載を勘案すると、「AlN核形成層上に成長するGaN層」として開示されており、「GaN核形成層」は開示されていないことは明らかである。

他方、段落【0035】には、「無極性エピタキシャル薄膜は、『GaN』のような『核形成層上』に成長核が作られ成長する」ことが開示されているものの、「GaN核形成層」の「成長温度」は開示されていない。
段落【0035】に記載のように、核形成層を「GaNの核形成層」とする場合に、組成が同じであるからといって、「AlN核形成層上に成長するGaN層」について開示されている成長温度である「1,000℃?1,160℃」と同じ範囲の成長温度を選択することが当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとは認められない。

したがって、当初明細書等には、請求項4の「1000℃?1160℃の温度で成長した窒化ガリウム核生成層」が記載も示唆もされているとはいえず、かつ、当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。

したがって、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
よって、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

ウ 補正事項3について
上記「ア 補正事項1について」の「(ア)」及び「(イ)」で検討したように、当初明細書等には、請求項7に記載された「『表面凹凸値が0?15nmである』『無極性m面窒化ガリウム膜』」が記載も示唆もされているとはいえず、かつ、当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。
したがって、補正事項3は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
よって、補正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

エ 補正事項4について
(ア)補正事項4により補正された事項は、当初明細書等の段落【0022】及び【0041】に記載されているから、補正事項4は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、補正事項4は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項4は、補正前の請求項11が請求項10を引用していたものを、補正後の請求項11が請求項9を引用するものとする。
すなわち、補正前の請求項11は、引用する請求項10に記載されていた「前記第1の窒化物層を1000℃?1275℃の温度で成長し、 前記無極性{1-100}m面III族窒化物層を1000℃?1160℃の温度で成長する」との限定事項を含むものであり、補正後の請求項11が新たに引用する請求項9には、当該限定事項は含まれていないから、補正事項4は、当該限定事項を削除する補正を含むものである。
したがって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。
よって、補正事項4は、特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

オ 補正事項5について
(ア)上記「ア 補正事項1について」の「(ア)」に記載したように、当初明細書等の段落【0025】には、「表面凹凸値(自乗平均根)は5μm×5μmの走査範囲で約2.54nm以下であった」と記載されており、補正事項5により補正された事項は、当初明細書等に記載されているといえるから、補正事項5は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、補正事項5は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正前の請求項15では、「表面凹凸値が少なくとも5μm×5μmの範囲で2.54nm未満の窒化ガリウム」を発明特定事項としており、当該「表面凹凸値」が「少なくとも5μm×5μmの範囲で『2.54nm』」を含まないものであったが、補正後の請求項15では、「『5μm×5μmの範囲で2.54nm以下である自乗平均根表面凹凸値』を有する窒化ガリウム膜」を発明特定事項とするものであり、「『2.54nmである自乗平均根表面凹凸値』」を含むものであるから、補正事項5は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。
したがって、補正事項5は、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

カ 補正事項7について
(ア)当初明細書等には、「『m面』GaN材料」の「x線回折ロッキング・カーブ」について、以下のように記載されている。

・「【0026】
図5は軸上及び非軸上x線回折ロッキング・カーブを示すω(°)対カウント数/秒の図である。下の表1に示すように軸上(1-100)半値全幅(FWHM)は、aモザイク度及びcモザイク度がそれぞれ0.22°及び1.2°という低い値が測定された。また非軸上(10-12)反射はFWHM値が0.38°である。これらの凹凸とFWHM値は核形成層とGaNエピタキシャル薄膜自体の成長条件を変えても大きくは変化しないことがわかった。」

(イ)上記のように、当初明細書等には、請求項23に記載された「前記無極性m面窒化ガリウム膜がx線回折により測定された半値全幅(FWHM)が0.22°?1.2°であるロッキング・カーブにより特徴づけられる結晶品質を有すること」が記載も示唆もされているとはいえず、かつ、当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。
したがって、補正事項7は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
よって、補正事項7は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

キ 補正事項8について
(ア)補正事項8は、補正事項6による請求項20における補正事項の「窒化ガリウム膜」について、請求項25において、「前記窒化ガリウム膜は、(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1100℃?1275℃の温度、400?5500のV/III比、および50?760Torrの圧力で基板上に核生成層として第1の窒化物層を成長する工程と、(b)無極性{1-100}m面窒化ガリウム層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて1000℃?1160℃の温度、200?3000のV/III比、および50?760Torrの圧力で成長する工程 を含む方法を用いて作製された基層である」とするものである。

(イ)上記「イ 補正事項2について」の「(イ)」に記載したように、当初明細書等の段落【0021】?【0023】、【0039】?【0041】には、「『1100℃?1275℃の温度、400?5500のV/III比、および50?760Torrの圧力で基板上に核生成層』として『AlN層』を成長する」こと、及び「窒化ガリウム膜」は、「『無極性{1-100}m面窒化ガリウム層』を『AlN層』上に『MOCVDを用いて1000℃?1160℃の温度、200?3000のV/III比、および50?760Torrの圧力』で成長する」ことによって作製された層であることは開示されているものの、請求項25に記載の「『前記窒化ガリウム膜は』、『核生成層として第1の窒化物層を成長する工程』を『含む方法を用いて作製された』『基層』である」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、補正事項8は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
よって、補正事項8は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についての検討のまとめ
以上のとおり、本件補正は、補正事項1、2、3、7、及び8を含むものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本件補正は、補正事項4及び5を含むものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件も満たしていない。

3 補正の却下の決定についてのむすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たしていないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「1.平成24年 3月 6日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第4号に規定する要件を満たしていない。」というものであり、

「理由:1」について、「備考」の概要は、
「(1)請求項1における『有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1000℃?1275℃の温度で基板上に第1の窒化物層を成長する工程』、『無極性{1-100}m面III族窒化物層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて1000℃?1275℃の前記温度で成長する工程』について、本願明細書には、AlN核生成層を1000℃?1100℃で形成することや、GaN層を1160℃?1275℃で形成することは、記載されていない。
請求項10の『前記第1の窒化物層を1000℃?1275℃の温度で成長し』についても同様である。
(2)請求項9,11における数値範囲についても、本願明細書における根拠が不明である。
(3)請求項20における『表面凹凸値は少なくとも5μm×5μmの範囲で2.54nm未満』について、本願明細書には、『2.54nm未満』の数値範囲は記載も示唆もされていない。
請求項15についても同様である。
(4)請求項18,21の『aモザイクに対して0.22°未満、および/またはIII族窒化物結晶のcモザイクに対して1.2°未満』、『x線回折により測定された0.38°未満』についても、本願明細書に根拠となる数値範囲の記載がない。」
というものであり、
請求項22に対する「理由:2」について、その「備考」は、「請求項22は、先行する請求項を引用していない。 よって、請求項22の記載は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。」というものである。

第4 当審の判断
当審も、平成24年3月6日に提出された手続補正書による補正(以下「前審補正」という。)は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないと判断する。その理由は以下のとおりである。

1 「理由:1」備考(1)について
ア 前審補正後の請求項1には、「(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1000℃?1275℃の温度で基板上に第1の窒化物層を成長する工程と、(b)無極性{1-100}m面III族窒化物層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて1000℃?1275℃の前記温度で成長する工程を含むことを特徴とする、III族窒化物のエピタキシャル薄膜を成長する方法。」と記載されている。

イ 他方、当初明細書等には、「第1の窒化物層を成長する」こと、または「III族窒化物層を前記第1の窒化物層上にMOCVDを用いて」成長すること等について、以下のように記載されている。

・「【0021】
技術的な説明
成長の前に、m面SiC基板を水素中で熱処理する。GaN薄膜成長の前に、AlN層を核形成層として形成する。最後にGaN層をMOCVDによって成長する。図3は単位胞の中で重要な無極性m面GaN(1-100)結晶面を示す。
【0022】
最適な品質のm面GaNを実現するために、AlN層とGaN層の成長に対してそれぞれ400?5,500と200?3,000のV/III比、50?760Torrの間で変わる成長ガス圧、1,100℃?1,275℃、及び1,000℃?1,160℃の範囲の成長温度シリーズがテストされた。温度、リアクタ圧力及び前駆体流速のこの広い範囲内でAlNおよびGaNともm面は安定であった。
【0023】
高品質のGaNを得るために最適なAlN核形成層は、核形成層の厚さ150nmのとき、1,175℃以上の温度、比較的低い圧力、及び約3,500のV/III比にて実現された。
【0024】
GaN層のエピタキシャル成長に関しては、最も好ましい条件は、100Torr未満のような低圧で、1,110℃?1,160℃の範囲の温度で、NH_(3)の低い蒸気圧で700未満のV/III比で実現された。」
・「【0039】
そのような変形は本発明の全体的な実施形態を基本的に変えるものではない。
利点と改良点
m-{1-100}面GaNの成長はHVPE法とMBE法では既に実験されて成功している。しかしながら、MOCVD法によって高品質平坦な無極性m-{1-100}面GaNの成長を実験して成功したのは未だかつて本発明が初めてである。
【0040】
MOCVD法を用いた平坦なm面GaNの成長は、平坦なa-{11-20}面GaNの成長に比べて、大きな成長窓を持っていて、安定性良く成長できるという利点がある。この利点が発揮されるのは、AlN核形成層やGaNエピタキシャル薄膜に対する温度や、圧力や、前駆体流量などの成長パラメータが変わったときである。
【0041】
最適な品質のm面GaNを実現するためには、AlNとGaNに対してそれぞれ、V/III比としては400?5,500および200?3,000の範囲の値が、成長圧力としては50?760Torrの範囲が、そして成長温度シリーズとして1,100℃?1,275℃および1,000℃?1,160℃の範囲が調べられた。このような条件を変更しても結晶性や表面品質に重大な影響は及ぼさなかった。これは平坦な無極性a面GaN薄膜の場合と異なることである。また、a面GaNでは結晶や表面の品質が成長条件の変化を非常に受けやすく、狭い成長窓に閉じ込められる。」

ウ 以下で、上記当初明細書等の記載について検討する。
上記記載を総合すると、当初明細書等には、「『AlN層』の成長に対して『1,100℃?1,275℃』の範囲の成長温度シリーズをテスト」したこと、及び「『AlN層』上への『MOCVD』法による『無極性m-{1-100}面GaN層』の成長に対して、『1,000℃?1,160℃』の範囲の成長温度シリーズをテスト」したことが開示されているといえるものの、「『1000℃?1100℃』の温度で基板上にAlN層を成長する」こと、及び「GaN層を1160℃?1275℃』の温度で成長する」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、前審補正後の請求項1の「(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1000℃?1275℃の温度で基板上に第1の窒化物層を成長する」こと、及び「『(b)無極性{1-100}m面III族窒化物層を前記第1の窒化物層上にMOCVD』を用いて『1,160℃?1275℃』の前記温度で成長する工程を含む」ことは、当初明細書等に記載も示唆もされているとはいえない。

前者の「(a)有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて1000℃?1275℃の温度で基板上に第1の窒化物層を成長する」ことに関し、仮に、「『有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて』『第1の窒化物層を成長する』」ことは、当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとしても、「『1000℃?1100℃』の温度で基板上に第1の窒化物層を成長する」ことが当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとは認められない。
また、「『(b)無極性{1-100}m面III族窒化物層を前記第1の窒化物層上にMOCVD』を用いて『1,160℃?1275℃』の前記温度で成長する工程を含む」ことが当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとも認められない。

したがって、前審補正後の請求項1とする補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。

エ 前審補正後の請求項10には、「前記第1の窒化物層を1000℃?1275℃の温度で成長し、前記無極性{1-100}m面III族窒化物層を1000℃?1160℃の温度で成長することを特徴とする、請求項19に記載の方法」と記載されている。

そして、上記「ウ」に記載したように、当初明細書等には、「『1000℃?1100℃』の温度で基板上にAlN層を成長する」ことは記載も示唆もされておらず、かつ、当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとは認められない。
したがって、前審補正後の請求項10を「前記第1の窒化物層を1000℃?1275℃の温度で成長し」とする補正も、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。

2 「理由:1」備考(2)について
ア 前審補正後の請求項9には、「前記工程(a)および(b)における成長は、?3500以下のV/III比または200?3000のV/III比を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。」と記載されている。

イ 他方、当初明細書等には、成長の「V/III比」について、以下のように記載されている。

・「【0022】
最適な品質のm面GaNを実現するために、AlN層とGaN層の成長に対してそれぞれ400?5,500と200?3,000のV/III比、50?760Torrの間で変わる成長ガス圧、1,100℃?1,275℃、及び1,000℃?1,160℃の範囲の成長温度シリーズがテストされた。温度、リアクタ圧力及び前駆体流速のこの広い範囲内でAlNおよびGaNともm面は安定であった。
【0023】
高品質のGaNを得るために最適なAlN核形成層は、核形成層の厚さ150nmのとき、1,175℃以上の温度、比較的低い圧力、及び約3,500のV/III比にて実現された。
【0024】
GaN層のエピタキシャル成長に関しては、最も好ましい条件は、100Torr未満のような低圧で、1,110℃?1,160℃の範囲の温度で、NH_(3)の低い蒸気圧で700未満のV/III比で実現された。」
・「【0041】
最適な品質のm面GaNを実現するためには、AlNとGaNに対してそれぞれ、V/III比としては400?5,500および200?3,000の範囲の値が、成長圧力としては50?760Torrの範囲が、そして成長温度シリーズとして1,100℃?1,275℃および1,000℃?1,160℃の範囲が調べられた。このような条件を変更しても結晶性や表面品質に重大な影響は及ぼさなかった。これは平坦な無極性a面GaN薄膜の場合と異なることである。また、a面GaNでは結晶や表面の品質が成長条件の変化を非常に受けやすく、狭い成長窓に閉じ込められる。」

ウ 以下で、上記当初明細書等の記載について検討する。
上記記載を総合すると、当初明細書等には、「『AlN層とGaN層の成長に対してそれぞれ400?5,500と200?3,000のV/III比』」がテストされた」こと、「最適なAlN核形成層は、約3,500のV/III比にて実現された」こと、及び「GaN層は、700未満のV/III比で実現された」ことが開示されているといえるものの、「『AlN層またはGaN層』の成長に対して『?3500以下のV/III比』を用いる」こと、及び「『AlN層』の成長に対して『200?3000のV/III比』を用いる」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、前審補正後の請求項9の「『前記工程(a)および(b)における成長は、?3500以下のV/III比』を用いる」こと、及び「『前記工程(a)』における成長は、『200?3000のV/III比』を用いる」ことは、当初明細書等に記載も示唆もされているとはいえず、かつ当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとも認められない。

エ 前審補正後の請求項11には、「前記工程(a)および(b)における成長は、100Torr未満または50?760Torrの間で変わる成長ガス圧で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。」と記載されている。

オ 他方、当初明細書等には、「成長ガス圧」について、以下のように記載されている。

・「【0022】
最適な品質のm面GaNを実現するために、AlN層とGaN層の成長に対してそれぞれ400?5,500と200?3,000のV/III比、50?760Torrの間で変わる成長ガス圧、1,100℃?1,275℃、及び1,000℃?1,160℃の範囲の成長温度シリーズがテストされた。温度、リアクタ圧力及び前駆体流速のこの広い範囲内でAlNおよびGaNともm面は安定であった。
【0023】
高品質のGaNを得るために最適なAlN核形成層は、核形成層の厚さ150nmのとき、1,175℃以上の温度、比較的低い圧力、及び約3,500のV/III比にて実現された。
【0024】
GaN層のエピタキシャル成長に関しては、最も好ましい条件は、100Torr未満のような低圧で、1,110℃?1,160℃の範囲の温度で、NH_(3)の低い蒸気圧で700未満のV/III比で実現された。」
・「【0041】
最適な品質のm面GaNを実現するためには、AlNとGaNに対してそれぞれ、V/III比としては400?5,500および200?3,000の範囲の値が、成長圧力としては50?760Torrの範囲が、そして成長温度シリーズとして1,100℃?1,275℃および1,000℃?1,160℃の範囲が調べられた。このような条件を変更しても結晶性や表面品質に重大な影響は及ぼさなかった。これは平坦な無極性a面GaN薄膜の場合と異なることである。また、a面GaNでは結晶や表面の品質が成長条件の変化を非常に受けやすく、狭い成長窓に閉じ込められる。」

カ 以下で、上記当初明細書等の記載について検討する。
上記記載を総合すると、当初明細書等には、「『AlN層とGaN層の成長に対してそれぞれ50?760Torrの間で変わる成長ガス圧』がテストされた」こと、「最適なAlN核形成層は、比較的低い圧力にて実現された」こと、及び「GaN層は、100Torr未満のような低圧で実現された」ことが開示されているといえるものの、「『AlN層』における成長が『100Torr未満』で変わる成長ガス圧で行われる」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、前審補正後の請求項11の「『前記工程(a)』における成長は、『100Torr未満』で変わる成長ガス圧で行われる」ことは、当初明細書等に記載も示唆もされているとはいえず、かつ当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとも認められない。

3 当審の判断のむすび
したがって、前審補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。

第5 むすび
したがって、平成24年3月6日に提出された手続補正書による補正(前審補正)は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-24 
結審通知日 2014-08-19 
審決日 2014-09-01 
出願番号 特願2008-514783(P2008-514783)
審決分類 P 1 8・ 562- Z (H01L)
P 1 8・ 57- Z (H01L)
P 1 8・ 55- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 徹  
特許庁審判長 小野田 誠
特許庁審判官 鈴木 匡明
恩田 春香
発明の名称 有機金属化学気相成長法(MOCVD)による平坦な無極性{1-100}m面窒化ガリウムの成長方法及び装置  
代理人 清水 守  
代理人 清水 守  

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