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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1297627
審判番号 不服2014-1386  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-27 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2006-193538「反応性ケイ素基含有ポリマーの調製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月31日出願公開、特開2008- 19361〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,平成18年7月14日に特許出願されたものであって,平成24年5月23日に特許請求の範囲及び明細書が補正され,平成25年2月15日付けで拒絶理由が通知され,同年4月12日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書が補正され(なお,当該補正は,同年10月21日付けで決定により却下されている。),同年10月21日付けで同年4月12日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がされたところ,これに対して,平成26年1月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書が補正されたので,特許法162条所定の審査がされた結果,同年3月26日付けで同法164条3項の規定による報告がされたものである。

第2 補正の却下の決定

[結論]
平成26年1月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成26年1月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は特許請求の範囲の全文を変更する補正事項を含むものであるところ,本件補正前の請求項1の記載,並びに,当該請求項に対応する本件補正後の請求項1の記載は,それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前(平成24年5月23日付け手続補正書)
「(a1)数平均分子量が500?50000であるポリオキシアルキレンポリオールと,(a2)一般式:R^(1)_(m)SiX_(3-m)-R^(2)NCO
(式中,R^(1)は互いに同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基,R^(2)は炭素数1?17の2価の炭化水素基,Xは加水分解性基をそれぞれ示す。mは0?2の整数である。)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物とを,ビスマス系の触媒の存在下でウレタン化反応させ,
得られた(a)反応性ケイ素基含有ポリマーに,アルコール,オキサゾリジン化合物,オキサゾリン化合物,シラザン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を配合することを特徴とする反応性ケイ素基含有ポリマーの調製方法。」
・ 本件補正後
「(a1)数平均分子量が500?50000であるポリオキシアルキレンポリオールと,(a2)一般式:R^(1)_(m)SiX_(3-m)-R^(2)NCO
(式中,R^(1)は互いに同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基,R^(2)は炭素数1?17の2価の炭化水素基,Xは加水分解性基をそれぞれ示す。mは0?2の整数である。)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物とを,触媒として有機ビスマス化合物を単独で使用してウレタン化反応させ,
得られた(a)反応性ケイ素基含有ポリマーに,アルコール,オキサゾリジン化合物,オキサゾリン化合物,シラザン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を配合することを特徴とする反応性ケイ素基含有ポリマーの調製方法。」

2 本件補正の目的
本件補正は,請求項1に記載に係る発明を特定するために必要な事項である「ウレタン化反応」について,補正前において「ビスマス系の触媒の存在下で」とあったものを「触媒として有機ビスマス化合物を単独で使用して」とするもの,すなわち,補正前においてビスマス系の触媒が存在しさえすれば他の触媒は存在してもしなくてもよいとの構成を,補正後において有機ビスマス化合物以外の触媒は存在しない構成に限定するものである。そして,本件補正の前後で,請求項1の記載に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらない。
よって,本件補正は,請求項1についてする補正については,平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「特許法」という。)17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認める。
なお,本件補正は,いわゆる新規事項を追加するものではないと判断される。

3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,要するに,本件補正が特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に適合するものであるか(いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ,以下説示のとおり,本件補正は当該要件に違反すると判断される。
すなわち,本願補正発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(なお,引用文献1は,上記の平成25年2月15日付けで通知された拒絶理由において,「引用文献1」として請求人に提示された刊行物である。)。
・ 引用文献1: 特開2005-154779号公報

4 本願補正発明
本願補正発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「(a1)数平均分子量が500?50000であるポリオキシアルキレンポリオールと,(a2)一般式:R^(1)_(m)SiX_(3-m)-R^(2)NCO
(式中,R^(1)は互いに同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基,R^(2)は炭素数1?17の2価の炭化水素基,Xは加水分解性基をそれぞれ示す。mは0?2の整数である。)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物とを,触媒として有機ビスマス化合物を単独で使用してウレタン化反応させ,
得られた(a)反応性ケイ素基含有ポリマーに,アルコール,オキサゾリジン化合物,オキサゾリン化合物,シラザン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を配合することを特徴とする反応性ケイ素基含有ポリマーの調製方法。」

5 本願補正発明が特許を受けることができない理由
(1) 引用発明
ア 引用文献1には,次の記載がある。(なお,下線は当合議体による。以下同じ。)
・ 【特許請求の範囲】
「【請求項1】
式:
OH-A-OH (II)
のα,ω-ジヒドロキシ基を末端基とする有機ポリマーと式:
R^(2)_(3-n)(OR^(1))_(n)Si-R-NCO (III)
のイソシアナト官能性シランとを,ビスマス化合物および亜鉛化合物からなる群から選択された触媒少なくとも1種の存在で反応させることにより,式:
【化1】
R^(2)_(3-n)(OR^(1))_(n)Si-R-NH-C(O)-O-A-O-C(O)-NH-R-Si(OR^(1))_(n)R^(2)_(3-n) (I)
[前記式中,Rは,ヘテロ原子で中断されていてよい,炭素原子1?12個を有する,置換されているかまたは非置換の二価の炭化水素基を表し,
R^(1)は,同一または異なっていてもよく,ヘテロ原子で中断されていてよい,炭素原子1?12個を有する,置換されているかまたは非置換の一価の炭化水素基を表し,
R^(2)は,同一または異なっていてもよく,ヘテロ原子で中断されていてよい,炭素原子1?12個を有する,置換されているかまたは非置換の一価の炭化水素基を表し,
Aは,ヘテロ原子で中断されていてよい,炭素原子少なくとも6個を有する,置換されているかまたは非置換の二価の炭化水素基を表し,かつ
nは,1,2または3である]のオルガニルオキシシリル基を末端基とするポリマーを製造する方法。…」
・ 【0001】
「本発明は空中湿分に対して高い安定性を有するオルガニルオキシシリル基を末端基とするポリマーの製法およびそのようなポリマーを含有する架橋性配合物に関する。」
・ 【0008】?【0009】
「二価の基Rの例は,アルキレン基,例えばメチレン基,エチレン基,n-プロピレン基,イソプロピレン基,n-ブチレン基,イソブチレン基,t-ブチレン基,n-ペンチレン基,イソペンチレン基,ネオペンチレン基,t-ペンチレン基,ヘキシレン基,例えばn-ヘキシレン基,ヘプチレン基,例えばn-ヘプチレン基,オクチレン基,例えばn-オクチレン基,およびイソオクチレン基,例えば2,2,4-トリメチルペンチレン基,ノニレン基,例えばn-ノニレン基,デシレン基,例えばn-デシレン基,ドデシレン基,例えばn-ドデシレン基;アルケニレン基,例えばビニレン基,およびアリレン基;シクロアルキレン基,例えばシクロペンチレン基,シクロヘキシレン基,シクロヘプチレン基およびメチルシクロヘキシレン基;アリーレン基,例えばフェニレン基およびナフチレン基;アルカリーレン基,例えばo-,m-,p-トリレン基,キシリレン基およびエチルフェニレン基;アラルキレン基,例えばベンジレン基,α-及びβ-フェニルエチレン基である。
基Rは炭素原子1?6個を有する二価の炭化水素基であるのが有利であり,特に炭素原子1?3個を有する二価の炭化水素,殊にメチレン基が有利である。」
・ 【0010】?【0012】
「R^(1)およびR^(2)に関する例は,それぞれ相互に独立してアルキル基,例えば,メチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,t-ブチル基,n-ペンチル基,イソペンチル基,ネオペンチル基,t-ペンチル基,ヘキシル基,例えばn-ヘキシル基,ヘプチル基,例えばn-ヘプチル基,オクチル基,例えばn-オクチル基,およびイソオクチル基,例えば2,2,4-トリメチルペンチル基,ノニル基,例えばn-ノニル基,デシル基,例えばn-デシル基,ドデシル基,例えばn-ドデシル基;アルケニル基,例えばビニル基,およびアリル基;シクロアルキル基,例えばシクロペンチル基,シクロヘキシル基,シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アリール基,例えばフェニル基およびナフチル基;アルカリール基,例えばo-,m-,p-トリル基,キシリル基およびエチルフェニル基;アラルキル基,例えばベンジル基,α-及びβ-フェニルエチル基である。
置換されたR^(1)基の例はアルコキシアルキル基,例えばエトキシエチル基およびメトキシエチル基である。
基R^(1)およびR^(2)が相互に独立して,炭素原子1?6個を有する炭化水素基であるのが有利であり,特に炭素原子1?4個を有するアルキル基,殊にメチル基が有利である。」
・ 【0013】
「基Aの例は,二価のポリマー基,例えば一般式-(R^(3)O)_(m)-のポリエーテル基であり,ここで,R^(3)は同一または異なっていてよく,場合により置換された炭化水素基,有利にメチレン基,エチレン基および1,2-プロピレン基を表し,mは7?600,有利に70?400の整数であり…。」
・ 【0015】
「本発明において使用した式(II)の有機ポリマーが,ポリエーテルおよびポリウレタンをベースとするポリマー調合物であるのが有利であり,特にポリエーテルをベースとするものが有利であり,更にその内でも分子量が4000より大である,特に4000?20000(名目的な分子量)である1,2-ポリプロピレングリコールが有利である。」
・ 【0018】
「式(III)のシランに関する例は,イソシアナト-メチル-ジメチルメトキシシラン,イソシアナト-プロピル-ジメチルメトキシシラン,イソシアナト-メチル-メチルジメトキシシラン,イソシアナト-プロピル-メチルジメトキシシラン,イソシアナト-メチル-トリメトキシシランおよびイソシアナト-プロピル-トリメトキシシランであり,この際,イソシアナト-メチル-メチルジメトキシシラン,イソシアナト-プロピル-メチルジメトキシシラン,イソシアナト-メチル-トリメトキシシランおよびイソシアナト-プロピル-トリメトキシシランが有利であり,イソシアナト-メチル-メチルジメトキシシランおよびイソシアナト-プロピル-メチルジメトキシシランが特に有利である。」
・ 【0021】?【0022】
「本発明により使用した触媒の例は,亜鉛アセチルアセトネート,ビスマス-(2-エチルヘキサノエート),ビスマス-ネオデカノエート,亜鉛-2-エチルヘキサノエート,亜鉛-ネオデカノエートおよびビスマス-テトラメチルヘプタンジオネートである。…
本発明において使用した触媒がビスマスおよび亜鉛のカルボキシレートであるのが有利であり,この際ビスマス-(2-エチルヘキサノエート),ビスマス-ネオデカノエート,亜鉛-2-エチルヘキサノエートおよび亜鉛-ネオデカノエート,もしくはこれらの混合物が特に有利である。」
・ 【0055】
「本発明により製造した配合物の架橋のためには,空中の通常の水分含量で十分である。この架橋は室温で,または所望の場合には高めたまたは低めた温度で,例えば-5?10℃で,または30?50℃で実施することもできる。…」
イ 上記アでの摘記,特に特許請求の範囲,【0013】及び【0015】の記載を総合すると,引用文献1には,次のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「名目的な分子量が4000?20000である1,2-ポリプロピレングリコールと,
式: R^(2)_(3-n)(OR^(1))_(n)Si-R-NCO (III)
のイソシアナト官能性シランとを,ビスマス化合物および亜鉛化合物からなる群から選択された触媒少なくとも1種の存在で反応させることにより,
式: R^(2)_(3-n)(OR^(1))_(n)Si-R-NH-C(O)-O-(R^(3)O)_(m)-O-C(O)-NH-R-Si(OR^(1))_(n)R^(2)_(3-n) (I)
[式中,Rは,ヘテロ原子で中断されていてよい,炭素原子1?12個を有する,置換されているかまたは非置換の二価の炭化水素基を表し,
R^(1)は,同一または異なっていてもよく,ヘテロ原子で中断されていてよい,炭素原子1?12個を有する,置換されているかまたは非置換の一価の炭化水素基を表し,
R^(2)は,同一または異なっていてもよく,ヘテロ原子で中断されていてよい,炭素原子1?12個を有する,置換されているかまたは非置換の一価の炭化水素基を表し,
R^(3)は1,2-プロピレン基を表し,
mは7?600かつnは1,2または3である]
のオルガニルオキシシリル基を末端基とするポリマーを製造する方法」

(2) 対比
ア 本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「1,2-ポリプロピレングリコール」は本願補正発明の「ポリオキシアルキレンポリオール」に,式(III)で表される「イソシアナト官能性シラン」は一般式「R^(1)_(m)SiX_(3-m)-R^(2)NCO」で表される「イソシアネート基含有ケイ素化合物」にそれぞれ相当する。
また,引用発明の式(I)で表される「オルガニルオキシシリル基を末端基とするポリマー」は,「1,2-ポリプロピレングリコール」と式(III)で表される「イソシアナト官能性シラン」とを触媒の存在下でウレタン化反応させて得られるものであることが明らかであるから,本願補正発明の「反応性ケイ素基含有ポリマー」に相当するといえる。なお,方法の発明である本願補正発明における「調製方法」と引用発明の「製造する方法」とは,修辞上の差異があるにすぎないものであって,反応性ケイ素基含有ポリマー(オルガニルオキシシリル基を末端基とするポリマー)を製造する方法を特定するとの意味において両者は実質的に同一である。
さらに,引用発明において使用される触媒は,「ビスマス化合物および亜鉛化合物からなる群から選択された触媒少なくとも1種」と特定するとおり,ビスマス化合物と亜鉛化合物との混合物のほか,ビスマス化合物を単独で使用する場合も包含するから,引用発明における触媒の使用態様は,本願補正発明の使用態様(「触媒として有機ビスマス化合物を単独で使用」)と何ら相違しないといえる。
イ したがって,本願補正発明と引用発明との一致点,相違点は,それぞれ次のとおりのものと認めることができる。
・ 一致点
「(a1)数平均分子量が500?50000であるポリオキシアルキレンポリオールと,(a2)一般式:R^(1)_(m)SiX_(3-m)-R^(2)NCO
(式中,R^(1)は互いに同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基,R^(2)は炭素数1?17の2価の炭化水素基,Xは加水分解性基をそれぞれ示す。mは0?2の整数である。)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物とを,触媒として有機ビスマス化合物を単独で使用してウレタン化反応させる反応性ケイ素基含有ポリマーの調製方法。」である点。
・ 相違点
本願補正発明の調製方法は,得られた「反応性ケイ素基含有ポリマー」にさらに「アルコール,オキサゾリジン化合物,オキサゾリン化合物,シラザン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を配合すること」を特定事項として有するのに対し,引用発明はそのような特定事項を有しない点。

(3) 相違点についての判断
引用発明は,引用文献1(例えば【0055】参照)に記載があるとおり,オルガニルオキシシリル基を末端基とする室温硬化性ポリマーの製造方法に関するものであるところ,この点は,本願補正発明と何ら変わるものでない。
ところで,オルガニルオキシシリル基を末端基に有する室温硬化性ポリマーについて,その保存(貯蔵)安定性を向上させることは周知の課題であり,またそのような課題を解決するにあたり,当該ポリマーにアルコールを添加すること,シラザン化合物を添加すること,あるいは,オキサゾリジン化合物を添加することは周知の課題解決手段であるといえる(要すれば,アルコールの添加については特開昭63-12660号公報及び特開平2-55726号公報,シラザン化合物の添加については特開昭62-151453号公報,オキサゾリジン化合物の添加については特開平7-48519号公報及び国際公開第2005/097906号をそれぞれ参照することができる。なお,これら周知技術に係る文献は,平成25年2月15日付けで通知された拒絶理由において,引用文献2ないし6として請求人に提示された刊行物である。)。
そうすると,オルガニルオキシシリル基を末端基とするポリマーの保存(貯蔵)安定性を向上させるといった引用発明における周知の課題を解決するにあたって,引用発明において上述した周知の解決手段を採用すること,すなわち,引用発明のオルガニルオキシシリル基を末端基とするポリマー(反応性ケイ素基含有ポリマー)にさらに「アルコール,オキサゾリジン化合物,オキサゾリン化合物,シラザン類から選ばれる少なくとも1種の化合物」を配合することは,当業者であれば想到容易であるといえる。

(4) 小活
よって,本願補正発明は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないといえる。

6 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり,本件補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年5月23日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「(a1)数平均分子量が500?50000であるポリオキシアルキレンポリオールと,(a2)一般式:R^(1)_(m)SiX_(3-m)-R^(2)NCO
(式中,R^(1)は互いに同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基,R^(2)は炭素数1?17の2価の炭化水素基,Xは加水分解性基をそれぞれ示す。mは0?2の整数である。)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物とを,ビスマス系の触媒の存在下でウレタン化反応させ,
得られた(a)反応性ケイ素基含有ポリマーに,アルコール,オキサゾリジン化合物,オキサゾリン化合物,シラザン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を配合することを特徴とする反応性ケイ素基含有ポリマーの調製方法。」

2 原査定の理由(平成25年2月15日付け拒絶理由)
原査定の理由は,要するに,本願発明は,引用文献1に記載された発明(引用発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。

3 引用発明
引用発明は,上記第2_5(1)イにおいて認定のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,ウレタン化反応が「ビスマス系の触媒の存在下」で行われるものであるが,これは,「触媒として有機ビスマス化合物を単独で使用して」と特定される本願補正発明との比較において,ビスマス系の触媒が存在しさえすれば他の触媒は存在してもしなくてもよいとするものである(上記第2_1参照)。すなわち,本願補正発明は,本願発明の構成を包含するものであるといえる。
そして,本願発明の特定事項をすべて含む本願補正発明が,上述のとおり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである以上,本願発明も,同様の理由により,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断される。
原査定の理由は妥当なものである。
そうすると,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-03 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-22 
出願番号 特願2006-193538(P2006-193538)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08G)
P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大木 みのり  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 小野寺 務
須藤 康洋
発明の名称 反応性ケイ素基含有ポリマーの調製方法  
代理人 須山 佐一  
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