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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1297757
審判番号 不服2014-4637  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-10 
確定日 2015-02-19 
事件の表示 特願2012-269817「リモートコントロール装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開,特開2013-102446〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年3月24日を出願日とする特願2008-76187号(以下「原出願」という。)の一部を平成24年12月10日に新たな特許出願としたものであって,特許出願と同日に審査請求がされるとともに,上申書が提出され,平成25年9月13日付けの拒絶理由通知に対し,同年11月18日に手続補正がされ,同年12月3日付けで拒絶査定がされ,これに対して平成26年3月10日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正がされ,同年7月4日に上申書が提出されたものである。

第2 本件補正について
1 本件補正の内容
平成26年3月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲を補正するものであって,特許請求の範囲の記載は,本件補正の前後で以下のとおりである。
・補正前
「【請求項1】
空気調和機,冷熱機器および/または給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置であって,
表示信号に基づく表示を行う表示パネルを有する表示手段と,
押下されると操作信号を送信する複数のファンクションキーと,
押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キーであって,設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択されたメニューを決定する決定キーと,
前記機器における動作状態を文字および/または図柄で,前記表示パネル内のメイン表示部分に表示させるとともに,前記ファンクションキーによる前記機器の動作状態に合わせた操作内容を,前記表示パネル内の前記ファンクションキーの近傍となる操作ガイド部分に表示させる前記表示信号を前記表示手段に送信する制御処理手段と
を備え,
前記制御処理手段は,隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示を前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示させ,
前記制御処理手段は,前記メニューキーが送信した操作信号により前記メイン表示部分に前記メニューを表示し,前記ファンクションキーからの操作信号により前記設定項目の選択に係る表示を移動させ,前記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて前記上位概念の内容を示す文字を他の上位概念の内容を示す文字に変更する
ことを特徴とするリモートコントロール装置。
【請求項2】
前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示は,複数の隣り合うファンクションキーの横寸法に合わせて一体化して,前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示されていることを特徴する請求項1に記載のリモートコントロール装置。
【請求項3】
前記制御処理手段は,前記ファンクションキー押下が一定時間ないと判断すると,操作を確定することを特徴とする請求項1または2に記載のリモートコントロール装置。
【請求項4】
前記制御処理手段は,送信されても処理を行わない操作信号に係る前記ファンクションキーに対応する表示部分には,操作が無効であることを示すために,設定内容を表示させないまたは有効な設定内容表示と異なる表示を前記表示手段に行わせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリモートコントロール装置。」
・補正後
「【請求項1】
空気調和機,冷熱機器および/または給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置であって,
表示信号に基づく表示を行う表示パネルを有する表示手段と,
押下されると操作信号を送信する複数のファンクションキーと,
押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キーであって,設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択されたメニューを決定する決定キーと,
前記機器における動作状態を文字および/または図柄で,前記表示パネル内のメイン表示部分に表示させるとともに,前記ファンクションキーによる前記機器の動作状態に合わせた操作内容を,前記表示パネル内の前記ファンクションキーの近傍となる操作ガイド部分に表示させる前記表示信号を前記表示手段に送信する制御処理手段と
を備え,
前記制御処理手段は,隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示を前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示させ,
前記制御処理手段は,前記メニューキーが送信した操作信号により前記メイン表示部分に前記メニューを表示し,前記ファンクションキーからの操作信号により前記設定項目の選択に係る表示を移動させ,前記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて前記上位概念の内容を示す文字を他の上位概念の内容を示す文字に変更する
ことを特徴とするリモートコントロール装置。
【請求項2】
前記制御処理手段は,前記ファンクションキー押下が一定時間ないと判断すると,操作を確定することを特徴とする請求項1に記載のリモートコントロール装置。
【請求項3】
前記制御処理手段は,送信されても処理を行わない操作信号に係る前記ファンクションキーに対応する表示部分には,操作が無効であることを示すために,設定内容を表示させないまたは有効な設定内容表示と異なる表示を前記表示手段に行わせることを特徴とする請求項1又は2に記載のリモートコントロール装置。」

2 本件補正の整理
上記1より,本件補正は,補正前の特許請求の範囲における請求項2を削除し,補正前の請求項3及び4を繰り上げて新たな請求項2及び3とするとともに,引用する請求項を整合させたものと認められる。

3 本件補正の適否について
上記2より,本件補正が,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,上記2より,本件補正は,特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
したがって,本件補正は,適法な補正である。

第3 本願発明の容易想到性について
1 本願発明について
(1)本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下,単に「本願の請求項1」という。)の記載は次のとおりである。(再掲)
「【請求項1】
空気調和機,冷熱機器および/または給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置であって,
表示信号に基づく表示を行う表示パネルを有する表示手段と,
押下されると操作信号を送信する複数のファンクションキーと,
押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キーであって,設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択されたメニューを決定する決定キーと,
前記機器における動作状態を文字および/または図柄で,前記表示パネル内のメイン表示部分に表示させるとともに,前記ファンクションキーによる前記機器の動作状態に合わせた操作内容を,前記表示パネル内の前記ファンクションキーの近傍となる操作ガイド部分に表示させる前記表示信号を前記表示手段に送信する制御処理手段と
を備え,
前記制御処理手段は,隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示を前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示させ,
前記制御処理手段は,前記メニューキーが送信した操作信号により前記メイン表示部分に前記メニューを表示し,前記ファンクションキーからの操作信号により前記設定項目の選択に係る表示を移動させ,前記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて前記上位概念の内容を示す文字を他の上位概念の内容を示す文字に変更する
ことを特徴とするリモートコントロール装置。」

(2)ところで,本願の請求項1には,当該請求項に係る発明の発明特定事項である「決定キー」について,「選択されたメニューを決定する決定キー」との記載と,「前記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて」との記載がある。
そして,本願の請求項1における上記の記載からは,「決定キー」が,設定項目の一覧である「選択されたメニュー」を決定するものなのか,或いは「設定項目」を決定するものなのかとの点が不明確であるため,本願の請求項1の記載から,「決定キー」との用語について,その意味内容を一義的に理解することは困難である。
そこで,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,「決定キー」の意味内容を理解すると,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願の請求項1における上記の記載と関係する以下の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
・「【0025】
固定キー部5には,「メニュー」固定キー5a,「戻る」固定キー5b,「決定」固定キー5cおよび「運転/停止」固定キー5dの4個の固定キーを例として配備している。ただし,固定キーを配備して行う処理内容についてはこれに限定するものではない。ここで,使用者が固定キーを操作した場合の処理内容は固定されて決まっているため,意匠面には予め押下時の操作内容が文字で印刷してある。これらの印刷は図形でも良く,またキー意匠面ではなくキー周辺の他の場所に印刷していてもよい。」
・「【0043】
メイン画面20を表示しているときに,使用者が「メニュー」キー5aを押下すると,リモコン1に設定することができる設定項目,および風向,ルーバーなど日常的に室内機10に対して操作頻度が少ない設定項目が表示されたメインメニュー画面21aが表示される。ここで,現在,選択対象となっている項目の横には三角の表示を示す。ファンクションキー4aを押下すると三角表示が下の項目に移動し,ファンクションキー4bを押下すると上の項目に移動する。これに伴い選択対象となる項目も変化する。
・・・
【0045】
使用者は,週間スケジュールを設定するために,ファンクションキー4aを操作して「スケジュール設定」に三角表示を移動させる。画面21bはこの状態の表示を示している。・・・
【0046】
使用者が,画面21bの状態において「決定」キー5cを操作(押下)すると,週間スケジュール設定の画面22aが表示される。・・・画面22aが表示されたときには,ファンクションキー4a,4bは,曜日の項目とパターンの項目とを設定対象として選択する三角表示移動のための上下キーとなる。ファンクションキー4c,4dは,画面22aが表示されたときのように,曜日選択時においては横(左右)方向に移動して各曜日の項目を選択するための曜日選択キーの役割を果たす。一方,画面22bが表示されたときのように,パターン番号選択時はパターン番号を変更するためのキーとなる。
【0047】
そして,例えば画面22aが表示されているときに使用者が「決定」キー5cを操作すると,月曜日のパターン1に係る設定画面22cが表示される。ここでは,動作開始時刻,運転/停止,設定温度の設定変更ができるものとする。・・・」
そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載より,本願に係る発明において,固定キー部5に配備された「決定」固定キー5cを操作(押下)すると,ファンクションキー4a,4bにより選択された,メインメニュー画面21aにおける「スケジュール設定」等の設定項目や,週間スケジュール設定の画面22aにおける「曜日」や「パターン番号」といった設定項目が決定されると認められる。
以上から,本願明細書の記載を参酌すれば,本願の請求項1における「決定キー」は,選択された設定項目を決定するものと理解することができ,本願の請求項1における「選択されたメニューを決定する決定キー」との記載は,「選択された設定項目を決定する決定キー」の誤記と解するのが相当と認められる。

(3)さらに,本願の請求項1の記載からは,当該請求項の「前記制御処理手段は,隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示を前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示させ,」との記載における「前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容」との文言についても,その意味内容を一義的に理解することは困難である。
そこで,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,「前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容」の意味内容を理解すると,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願の請求項1における上記の記載と関係する以下の記載がある。
「【0036】
次に具体的な画面表示例について説明する。まず,日常的に使用する室内機10に対する操作設定の画面例について説明する。図1の液晶表示部2にはリモコン1の立上げ処理が完了した後の表示例として,室内機10の現在の運転状態(風速:自動,設定温度:23℃,モード:自動運転冷房中)を表示している。また,液晶表示部2の下部にはファンクションキー部4に対応する操作ガイド3を表示しており,ファンクションキー4aに対応する部分には「風速」の文字を表示している。この表示がされているときのファンクションキー4aは風速切換キーとしての役割を果たすことになる。同様に,操作ガイド3のファンクションキー4bに対応する部分には「-」の文字を表示しており,このとき,ファンクションキー4bは設定温度減少キーの役割を果たす。また,ファンクションキー4cに対応する部分には「+」の文字を表示しており,ファンクションキー4cは設定温度増加キーの役割を果たす。そして,ファンクションキー4dに対応する部分には「モード」の文字を表示しており,ファンクションキー4dは運転モード切換キーの役割を果たす。
【0037】
図5は他のメイン画面20とファンクションキー部4との例を表す図である。上述した図1では,ファンクションキー4bおよび4cに対応する操作ガイド3はそれぞれ独立したものにした。しかし,図5に示すように,隣接するファンクションキーが類似した意味をもつような場合(例えば対になる場合)には,操作ガイド3内の設定温度ガイド6のように,複数のファンクションキーの横寸法に合わせて表示し,さらに中央にファンクションキー押下時の上位概念(図5では「温度」)となる文字などを表示すればさらに分かりやすい表示となる。」
そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載を参酌すれば,本願の請求項1における「前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容」には,液晶表示部2の操作ガイド3において,設定温度減少キーの役割を果たすファンクションキー4bに対応する部分と,設定温度増加キーの役割を果たすファンクションキー4cに対応する部分との中央に表示された「温度」のように,類似した意味をもつ隣接したファンクションキーによる操作の対象が含まれることが理解できる。

(4)したがって,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本願の請求項1に記載の「前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容」について上記(3)のとおりに解したうえで,上記(1)及び(2)より,次のとおりのものと認める。
「空気調和機,冷熱機器および/または給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置であって,
表示信号に基づく表示を行う表示パネルを有する表示手段と,
押下されると操作信号を送信する複数のファンクションキーと,
押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キーであって,設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択された設定項目を決定する決定キーと,
前記機器における動作状態を文字および/または図柄で,前記表示パネル内のメイン表示部分に表示させるとともに,前記ファンクションキーによる前記機器の動作状態に合わせた操作内容を,前記表示パネル内の前記ファンクションキーの近傍となる操作ガイド部分に表示させる前記表示信号を前記表示手段に送信する制御処理手段と
を備え,
前記制御処理手段は,隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示を前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示させ,
前記制御処理手段は,前記メニューキーが送信した操作信号により前記メイン表示部分に前記メニューを表示し,前記ファンクションキーからの操作信号により前記設定項目の選択に係る表示を移動させ,前記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて前記上位概念の内容を示す文字を他の上位概念の内容を示す文字に変更する
ことを特徴とするリモートコントロール装置。」

2 引用文献の記載と引用発明
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,実願昭63-110972号(実開平2-32291号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の記載がある。
ア「筐体内に積層配置された,複数の機能表示部と,これに対応する状態表示部を有する第1の表示画面を構成する第1の液晶パネル及び第2の表示画面を構成する第2の液晶パネルからなる表示装置と,この表示装置の画面を第1の表示画面と第2の表示画面とに選択的に切替える切替キースイッチと,第1の表示画面と第2の表示画面の各機能表示部に対応して設けられ,状態表示部の表示部を選択的に設定する共通の設定キースイッチとを具備してなることを特徴とするリモートコントローラ。」(明細書1頁5?15行)
イ「本考案はエアコン等の運転操作に供される表示装置を具えたリモートコントローラに関する。」(明細書1頁18?19行)
ウ「本考案は上記問題点に鑑みてなされたものであって,大きな表示装置を用いず,しかも操作キースイッチの数を増加させることなく表示装置と操作キースイッチを対応配置することができ,小型にして操作性の良いリモートコントローラを提供することを目的とする。」(同2頁13?18行)
エ「本考案によるリモートコントローラは第1図及び第2図に示されているように,筐体1内には基板2が配設され,この基板2上に表示装置3と切替キースイッチ4と複数の設定キースイッチ5が搭載されている。上記表示装置3は基板2上にコネクタ6を介して上下に積層された第1の表示画面を構成する第1の液晶パネル7と第2の表示画面を構成する第2の液晶パネル8とにより構成され,これら第1,第2の液晶パネル7, 8は上記切替キースイッチ4によって選択的に切替え表示されるが,第1の液晶パネル7は常時表示されるように設定されている。一方,上記第1の液晶パネル7の表示画面は第3図(a)に示されているように温度(DOWN,UP),タイマー,時刻(DOWN,UP)の各機能表示部9と,これに対応して,その状態を表示する,例えばタイマーの場合,連続,入,切,等の状態表示部10とに区画形成され,第2の液晶パネル8の表示画面は第3図(b)に示されているように,運転モード,風量,上下風向,スイング,サラウンド風向の各機能表示部11と ,これに対応して,その状態を表示する,例えば運転モードの場合,自動運転,暖房,冷房,ドライ等の状態表示部12とに区画形成されている。また,上記設定キースイッチ5は第1,第2の液晶パネル7,8の各機能表示部9,11に対応して,即ち,温度のDOWNと運転モード,温度のUPと風量,タイマーと上下風向,時刻のDOWNとスイング,時刻のUPとサラウンド風向に夫々対応して共用関係に近接配置され各機能表示部9,11に対応する設定キースイッチ5を押すことによって,これに対応する各状態表示部10,12の表示を選択的に設定することができる。」(同3頁14行?5頁5行)
オ「上記構成において,常時第1の液晶パネル7の画面が表示されているが,この状態において,例えばタイマーの設定を行う場合は,タイマー機能表示部9に対応する設定キースイッチ5を押すことによって状態表示部10の表示は連続,切,入等に選択的に切替え設定され,その状態が表示され,また,例えば,運転モードの設定を行う場合は,切替えキースイッチ4を押して第2の液晶パネル8の画面に切替えて,この運転モードの機能表示部11に対応する設定キースイッチ5を押すことによって状態表示部12の表示は自動運転,暖房,冷房ドライ等に選択的に切替え設定され,その状態が表示される。」(同5頁7?19行)
カ 図面には,エアコンのリモートコントローラの一実施例について,以下の事項が示されていると認められる。
(ア)第1及び第2の液晶パネル7,8の機能表示部9,11は,設定キースイッチ5の近傍に配置されること。(第2図)
(イ)エアコンにおける動作状態は,温度,タイマー,時刻等の機能表示部9,11に対応した,文字および/または図柄で,第1及び第2の液晶パネル7,8内の状態表示部10,12に表示されること。(第3図(a)及び(b))
(ウ)互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作内容が,「温度DOWN」及び「温度UP」や「時刻DOWN」及び「時刻UP」のように,増加指示を示す内容と減少指示を示す内容とを含む同類の処理に関するものであるときには,表示装置3の機能表示部には「▼ 温度 ▲」や「▼ 時刻 ▲」のように,設定キースイッチ5の操作の対象を示す文字である「温度」や「時刻」を中央に表示したうえで,上記互いに隣り合う設定キースイッチ5の操作内容を一体化して表示すること。(第2図,並びに第3図(a)及び(b))
(2)引用発明
ア 上記(1)ア及びイによれば,引用文献1には,エアコンの運転操作に供されるリモートコントローラに関する発明が記載されている。
イ 上記(1)ア及びウによれば,引用文献1記載のリモートコントローラは,基板2上にコネクタ6を介して上下に積層された第1の表示画面を構成する第1の液晶パネル7と第2の表示画面を構成する第2の液晶パネル8とにより構成される表示装置3を具備するものである。
そして,当該技術分野における技術常識に照らせば,上記第1の液晶パネル7及び第2の液晶パネル8が,表示信号に基づく表示を行うことは明らかである。
そうすると,引用文献1記載のリモートコントローラは,表示信号に基づく表示を行う第1の液晶パネル7と第2の液晶パネル8とにより構成される表示装置3を具備すると認められる。
ウ 上記(1)ア及びウによれば,引用文献1記載のリモートコントローラは,複数の設定キースイッチ5を具備する。
そして,上記(1)ア及びエによれば,上記複数の設定キースイッチ5は,第1及び第2の液晶パネル7,8の各機能表示部に対応して設けられ,これを押すことによって,上記第1及び第2の液晶パネル7,8の状態表示部を選択的に設定するから,当該技術分野における技術常識に照らせば,上記設定キースイッチ5が押下されると操作信号を送信することは明らかである。
そうすると,引用文献1記載のリモートコントローラは,押下されると操作信号を送信する複数の設定キースイッチ5を具備すると認められる。
エ 当該技術分野における技術常識に照らせば,上記(1)ア,ウ及びエより,引用文献1記載のリモートコントローラは,押下されると,表示装置3の画面を第1の液晶パネル7の画面と第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替える操作信号を送信する切替えキースイッチ4を具備すると認められる。
オ 上記(1)エないしカ((ア)及び(イ))より,引用文献1記載のリモートコントローラにおいて,エアコンにおける動作状態が,文字および/または図柄で,第1液晶パネル7内の状態表示部10,及び第2の液晶パネル8内の状態表示部12に表示され,上記複数の設定キースイッチ5による上記エアコンの動作状態に合わせた操作内容が,上記複数の設定キースイッチ5の近傍となる上記第1液晶パネル7内の機能表示部9,及び上記第2の液晶パネル8内の機能表示部11に表示されると認められる。
そして,引用文献1記載のリモートコントローラにおいて,上記第1及び第2の液晶パネル7,8に上記の表示をさせる表示信号を送信する制御処理手段を基板2上に具備することは,当該技術分野における技術常識に照らせば,明らかである。
そうすると,引用文献1記載のリモートコントローラは,エアコンにおける動作状態を,文字および/または図柄で,第1液晶パネル7内の状態表示部10及び第2の液晶パネル8内の状態表示部12に表示させるとともに,上記複数の設定キースイッチ5による上記エアコンの動作状態に合わせた操作内容を,上記複数の設定キースイッチ5の近傍となる上記第1液晶パネル7内の機能表示部9及び上記第2の液晶パネル8内の機能表示部11に表示させる表示信号を,上記第1液晶パネル7及び上記第2の液晶パネル8に送信する制御処理手段を具備すると認められる。
さらに,上記(1)カ(ウ)より,上記制御処理手段は,互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作内容が,増加指示を示す内容と減少指示を示す内容とを含む同類の処理に関するものであるときには,上記互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作の対象を示す文字を中央に表示したうえで,上記互いに隣り合う設定キースイッチ5の操作内容を一体化して,上記表示装置3の機能表示部9,11に表示させるものであるとも認められる。
また,上記エより,上記制御処理手段は,切替えキースイッチ4が送信した操作信号により表示装置3の画面を第1の液晶パネル7の画面と第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替えるものであるとも認められる。
カ 上記アないしオより,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「エアコンの運転操作に供されるリモートコントローラであって,
表示信号に基づく表示を行う第1の液晶パネル7と第2の液晶パネル8とにより構成される表示装置3と,
押下されると操作信号を送信する複数の設定キースイッチ5と,
押下されると,表示装置3の画面を第1の液晶パネル7の画面と第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替える操作信号を送信する切替えキースイッチ4と,
エアコンにおける動作状態を,文字および/または図柄で,第1液晶パネル7内の状態表示部10及び第2の液晶パネル8内の状態表示部12に表示させるとともに,上記複数の設定キースイッチ5による上記エアコンの動作状態に合わせた操作内容を,上記複数の設定キースイッチ5の近傍となる上記第1液晶パネル7内の機能表示部9及び上記第2の液晶パネル8内の機能表示部11に表示させる表示信号を,上記第1液晶パネル7及び上記第2の液晶パネル8に送信する制御処理手段と
を具備し,
上記制御処理手段は,互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作内容が,増加指示を示す内容と減少指示を示す内容とを含む同類の処理に関するものであるときには,上記互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作の対象を示す文字を中央に表示したうえで,上記互いに隣り合う設定キースイッチ5の操作内容を一体化して,上記表示装置3の機能表示部9,11に表示させ,
上記制御処理手段は,上記切替えキースイッチ4が送信した操作信号により表示装置3の画面を第1の液晶パネル7の画面と第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替える,
リモートコントローラ。」

3 周知例の記載と周知技術
(1)周知例1
原査定の拒絶の理由に引用された,原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-333163号公報(以下「周知例1」という。)には,図1及び図4とともに次の記載がある。
「【0011】
図1は,本発明の一実施形態に係るリモコン装置100の外観を示す。このリモコン装置100は,各種の情報を表示すると共に外部からのタッチ操作を受け付ける液晶タッチパネル方式の表示部101を備える。表示部101の下部には,表示部101上で行えないような基本的な操作(メニュー表示,決定等)を行うためのボタン103?106が配置されている。「メニュー」ボタン103は,表示部101上に所定のメニューを表示することを指示するボタンである。「上」ボタン104および「下」ボタン105は,表示部101上でカーソルを上下するためのボタンである。「決定/電源」ボタン106は,リモコン装置100の電源をONするため,あるいは表示部101上でカーソルがセットされている項目を決定することを指示するためのボタンである。・・・
・・・
【0015】
図4は,リモコン装置100の「メニュー」ボタン103を押下したときに表示されるメニュー画面の例を示す。「一覧」401,「追加」403,「削除」404の項目が表示され,カーソル405が表示されている。「一覧」401の下には操作対象として既に登録されている機器を示す項目402が表示されている。カーソル405は,ボタン104,105により上下させることができる。操作対象機器を示す項目402のうち何れかの機器にカーソル405を合わせて決定ボタン106を押下することにより,その操作対象の機器をリモコン操作するための画面が表示される。・・・」

(2)周知例2
原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2002-22250号公報(以下「周知例2」という。)には,図1及び図2とともに次の記載がある。
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような問題を解消し,特段の被い部を設けたりすることなく,操作上の複雑感が減少し,実際に操作が明瞭になり,部材構成も簡素となる空気調和機用ワイヤレスリモートコントロールユニットを提供することを課題とするものである。
・・・
【0014】図1及び図2において,リモコンユニット(空気調和機用ワイヤレスリモートコントロールユニット)1には,空気調和機の機能を示し選択するための機能メニューを表示するドットマトリックス表示方式による液晶表示部2,主機能設定用の主操作スイッチ部3,機能メニュー選択 /決定スイッチ部6が配設されている。
・・・
【0016】機能メニュー選択 /決定スイッチ部6には,液晶表示部2に表示される1段階目の機能メニュー画面であるスタートメニュー画面,及びその下位の機能メニュー画面であるサブメニュー画面に示される空気調和機の機能の選択を行うため,画面中のカーソルの移動操作を行う上,下,左および右向きの4個のカーソルボタン8が配備され,カーソルが位置する画面中の機能に選択を決定する選択決定スイッチ7が配備されている。
・・・
【0018】図2に基づき,液晶表示部2に表示されるスタートメニュー画面10,及びサブメニュー画面11a?11d,12a?12cについて説明する。
【0019】液晶表示部2には,先ずスタートメニュー画面10が表示され,基本機能メニューが示される。本実施の形態の例としては,図2に示すように,「運転モード」,「気流」,「タイマー」,「空気清浄」の4つの基本機能が表示される。
・・・
【0021】また,スタートメニュー画面10は,液晶表示部2中に,主操作スイッチ部3による設定状態等と共に運転中常時表示されるものであっても,適宜な呼出しボタンを設け,あるいは機能メニュー選択 /決定スイッチ部6での所定のスイッチ操作で呼び出されて表示されるものであってもよい。
【0022】スタートメニュー画面10中の各選択機能はカーソルボタン8の操作によって,各選択機能のどれかが選択候補として明示されるので,選択しようとする機能表示にカーソルを合わせ,選択決定スイッチ7を押すことにより,その機能が選択決定される。
・・・
【0024】選択された機能がさらに下位の選択肢を有するときは,下位の第2段階の機能メニュー画面であるサブメニュー画面11a?11dが表示される。
【0025】図2の例ではスタートメニュー画面10中の「運転モード」を選択決定するとサブメニュー画面11aが表示され,サブメニュー画面11a中には,「冷房」,「暖房」,「除湿」の選択機能が表示され,スタートメニュー画面10の時と同様に,カーソルボタン8の操作によって,選択しようとする機能表示にカーソルを合わせ,選択決定スイッチ7を押すことにより,その機能が選択決定される。
・・・
【0028】サブメニュー画面11a?11dで選択決定された選択機能に下位の選択肢がない場合は,その選択機能が実施されるが,さらに下位の選択肢がある場合は,下位の3段階目の機能メニュー画面であるサブメニュー画面が表示される。」

(3)周知例3
原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-71115号公報(以下「周知例3」という。)には,図2ないし4とともに次の記載がある。
「【0011】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって,その目的とするところは,温水暖房システムにおいて,操作性に優れ使い勝手のよい操作装置を提供することを目的とする。
・・・
【0029】
図2は,上記台所リモコン1aの外観構成の一例を示す正面図である。この台所リモコン1aは,その制御部が,上記給湯熱源機Aの制御部との制御信号のやり取りによって該給湯熱源機Aの遠隔操作を行う他,該給湯熱源機Aの制御部を介して該給湯熱源機Aと通信接続された温水暖房装置(図示例では浴室暖房装置)Cの遠隔操作も可能なようにプログラミングされた操作装置であって,図示のように,装置正面に表示部11と操作部12とを備えて構成されている。
【0030】
具体的には,上記表示部11は,台所リモコン1aの制御部から指令に基づいて文字や図形を自由に表示できる蛍光管ドットマトリクスよりなる表示パネルで構成される。また,上記操作部12としては,給湯熱源機Aを給湯可能状態と給湯停止状態とを切り替えるための運転スイッチ12aと,給湯熱源機Aによる浴槽Bへの自動湯張り運転を開始させるためのふろ自動スイッチ12bと,後述する表示部11の画面の切り替え等を行うためのメニュースイッチ12cと,給湯設定温度の上げ/下げ等を入力するためのアップスイッチ12dおよびダウンスイッチ12eと,後述する表示部11の操作事項選択画面の表示に従って操作事項を選択等するための選択スイッチ12f?12hとが備えられており,これらの操作信号が上記台所リモコン1aの制御部に与えられるように構成されている。
・・・
【0035】
図3は,このように選択可能に構成された操作事項の一例を示した説明図である。本実施形態に示す台所リモコン1aでは,このように多くの操作事項を表示部11に表示するにあたり,これらの操作事項を所定数ずつ(図示例では選択スイッチ12f?12hに対応して3項目ずつ)表示部11に表示するように構成し,上記メニュースイッチ12cの押圧操作によって表示中の画面の頁送り(項目送り)ができるように構成されている。
・・・
【0038】
また,上記各操作事項選択画面で表示される操作事項は,上記選択スイッチ12f?12hの上方位置に,各選択スイッチ12f?12hに対応するように表示される。・・・
【0039】
そして,各操作事項の選択は,表示された操作事項(タグ)に対応する選択スイッチ12f?12hの押圧操作によって行われる。したがって,1頁目の操作事項選択画面が表示されている際に,上記選択スイッチ12fが押圧操作されると,この選択スイッチ12fに対応する位置に表示されたタグT1の操作事項,つまり,「ふろ予約」が選択され,「ふろ予約」に関する操作入力画面が表示される(図4(b)参照)。また,これに伴い,台所リモコン1aの制御部は,自動湯張り運転の予約設定モードに突入する。
【0040】
そして,本実施形態では,この「ふろ予約」に関する操作入力画面において,浴槽Bへの自動湯張りの動作予約時刻(図示例では「沸き上がり時刻」と表示)の設定と,予めこの「ふろ予約」と関連付けられた他の操作事項(具体的には,「浴室暖房予約」)の操作入力画面への画面切り替えの双方の操作が行えるように設定されている。・・・」

(4)周知例4
原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-203492号公報(以下「周知例4」という。)には,図2及び図3とともに次の記載がある。
ア「【0019】
また,図2は本発明の第1の実施の形態におけるリモコン装置の外観図を示すものである。このリモコン装置は給湯機用のもので4が表示部で,メニュースイッチ10,アップ/ダウンスイッチ11,確定スイッチ12等で操作手段5を構成している。
・・・
【0021】
まず,通常の状態では図2に示すように表示部4中央には給湯温度設定が表示されアップ/ダウンスイッチで給湯温度設定を変更できるようになっている。・・・
【0022】
つぎに時計時刻を変更する場合を例にとって,図3を使って説明する。図3は時計時刻を変更する場合の一連の操作を表示部4の変化であらわしている。・・・
【0023】
まず(a)の状態でメニュースイッチ10を操作すると表示部4が(b)に変わり,無操作計時手段6に3秒相当の値がセットされ,カウントダウンを開始する。
・・・
【0025】
時計時刻設定はここのリストにはないので,再度メニュースイッチ10を押して(c)の画面に切り替える。ここでも迷って3秒経過すると(2)の「アップ/ダウンスイッチで沸き上げ設定の項目を選んでください」という音声案内が流れる。
【0026】
音声案内に従って,アップ/ダウンスイッチで選択枠を時計設定に合わせ(d)の画面で次の操作を迷っていると,3秒後に(3)「よろしければ確定スイッチを押してください」という案内が流れる。
【0027】
案内に従って,確定スイッチ12を押すと画面は(e)に変わり時計時刻が表示される。ここでもそのままにしておくと3秒後に(4)「アップ/ダウンスイッチで時計時刻を合わせてください」という案内が流れる。
【0028】
案内に従ってアップ/ダウンスイッチで時計時刻10:00から10:25に変更し,そのままにしておくと3秒後に(5)「よろしければ確定スイッチを押してください」という案内がながれる。
【0029】
そこで案内に従って確定スイッチ12を押すと,時計時刻は設定され表示部4は通常の表示にもどる。」
イ 図2及び図3(a)ないし(g)には,給湯用のリモコン装置の実施の形態について,以下の事項が示されていると認められる。
・互いに隣り合うアップ/ダウンスイッチ11による操作内容が,給湯温度の設定や時刻の設定であるときには,表示装置3には「▼ 給湯 ▲」や「▼ 時刻 ▲」のように,アップ/ダウンスイッチ11の操作内容の上位概念の内容を示す文字である「給湯」や「時刻」を中央に表示したうえで,上記互いに隣り合うアップ/ダウンスイッチ11の操作内容を一体化して表示すること。
・確定スイッチ12からの操作信号により決定した設定項目(「時刻設定」)に基づいて,表示装置3に表示された上位概念の内容を示す文字(「給湯」)を,他の上位概念の内容を示す文字(「時刻」)に変更すること。

(5)周知技術
上記(1)ないし(4)より,空気調和機,冷熱機器又は給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置において,表示手段,並びに上記表示手段に設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキー,及び選択された設定項目を決定する決定キーを備える構成とすることで,操作性の向上を図ることは,原出願の出願日前,周知の技術といえる。
そして,上記周知技術のリモートコントロール装置において,増加指示を示すキーと減少指示を示すキーからの操作信号により,表示手段における設定項目の選択に係る表示を移動させることは,周知例1,周知例2及び周知例4にみられるように,原出願の出願日前,当業者により普通に行われていたものといえる。
また,上記周知技術のリモートコントロール装置において,隣り合うキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,上記キーによる操作の対象を示す文字を中央に表示させるように上記隣り合うキーの操作内容の表示を上記表示手段に表示させ,上記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて,上記キーによる操作の対象を示す文字を他の操作の対象を示す文字に変更することも,周知例4にみられるように,原出願の出願日前,当業者により普通に行われていたものといえる。

4 本願発明と引用発明との対比
(1)対比
ア 引用発明における「エアコン」,「の運転操作に供される」,「リモートコントローラ」,「第1の液晶パネル7」及び「第2の液晶パネル8」,「表示装置3」,「設定キースイッチ5」並びに「具備し」は,それぞれ,本願発明の「空気調和機」「に係る機器」,「に対して設けられる」,「リモートコントロール装置」,「表示パネル」,「表示手段」,「ファンクションキー」及び「備え」に相当するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「空気調和機」「に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置」である点で共通するということができ,また,引用発明は,本願発明の「表示信号に基づく表示を行う表示パネルを有する表示手段」及び「押下されると操作信号を送信する複数のファンクションキー」に相当する構成を備えるということができる。
イ 本願発明の「押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キーであって,設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択された設定項目を決定する決定キー」と,引用発明における「押下されると,表示装置3の画面を第1の液晶パネル7の画面と第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替える操作信号を送信する切替えキースイッチ4」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キー」である点で共通するといえる。
ウ 引用発明における「エアコンにおける動作状態」,「状態表示部10」及び「状態表示部12」,並びに「機能表示部9」及び「機能表示部11」,は,それぞれ,本願発明の「前記機器における動作状態」,「メイン表示部分」,及び「操作ガイド部分」に相当するといえる。
そうすると,引用発明は,本願発明の「前記機器における動作状態を文字および/または図柄で,前記表示パネル内のメイン表示部分に表示させるとともに,前記ファンクションキーによる前記機器の動作状態に合わせた操作内容を,前記表示パネル内の前記ファンクションキーの近傍となる操作ガイド部分に表示させる前記表示信号を前記表示手段に送信する制御処理手段」に相当する構成を備えるということができる。
エ 引用発明における「互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作内容が,増加指示を示す内容と減少指示を示す内容とを含む同類の処理に関するものであるとき」は,本願発明の「隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるとき」に相当するといえる。
そして,上記1(3)より,引用発明における「上記互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作の対象」は,本願発明の「前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容」に相当するといえる。
そうすると,引用発明は,本願発明の「前記制御処理手段は,隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示を前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示させ」ることに相当する構成を備えるということができる。

(2)一致点及び相違点
上記(1)より,本願発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりであると認められる。
ア 一致点
「空気調和機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置であって,
表示信号に基づく表示を行う表示パネルを有する表示手段と,
押下されると操作信号を送信する複数のファンクションキーと,
押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キーと,
前記機器における動作状態を文字および/または図柄で,前記表示パネル内のメイン表示部分に表示させるとともに,前記ファンクションキーによる前記機器の動作状態に合わせた操作内容を,前記表示パネル内の前記ファンクションキーの近傍となる操作ガイド部分に表示させる前記表示信号を前記表示手段に送信する制御処理手段と
を備え,
前記制御処理手段は,隣り合う前記ファンクションキーによる操作内容が同類の処理に関するものであるときには,前記ファンクションキーの操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示させるように前記隣り合うファンクションキーの操作内容の表示を前記表示手段の前記操作ガイド部分に表示させる
リモートコントロール装置。」
イ 相違点
・相違点1
本願発明は「空気調和機,冷熱機器および/または給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置」であるのに対し,引用発明は,エアコン(本願発明の「空気調和機」「に係る機器」に相当。)以外の機器に対して設けられる「リモートコントローラ」(本願発明の「リモートコントロール装置」)について特定されていない点。
・相違点2
一致点に係る構成の「押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キー」として,本願発明は,「設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択された設定項目を決定する決定キー」を備えるのに対し,引用発明は,「押下されると,表示装置3の画面を第1の液晶パネル7の画面と第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替える操作信号を送信する切替えキースイッチ4」を備えるもので,本願発明の上記の構成は備えていない点。
・相違点3
本願発明において,「前記制御処理手段は,前記メニューキーが送信した操作信号により前記メイン表示部分に前記メニューを表示し,前記ファンクションキーからの操作信号により前記設定項目の選択に係る表示を移動させ,前記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて前記上位概念の内容を示す文字を他の上位概念の内容を示す文字に変更する」処理をするのに対し,引用発明において,「上記制御処理手段は,上記切替えキースイッチ4が送信した操作信号により表示装置3の画面を第1の液晶パネル7の画面と第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替える」処理をするもので,本願発明の「制御処理手段」による上記の処理は行わない点。

5 相違点についての検討
(1)相違点1について
本願発明における「空気調和機,冷熱機器および/または給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置」には,空気調和機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置が含まれることは明らかであるから,相違点1に係る構成は実質的な相違点であるとはいえない。
仮にそうでないとしても,引用発明を空気調和機に係る機器以外の機器のリモートコントロール装置とすることは,上記2(1)イの引用文献1の記載,及び上記3(5)の周知技術より,当業者が適宜なし得たものである。

(2)相違点2及び3について
以下,相違点2及び3についてまとめて検討する。
上記2(1)ウによれば,引用発明は,操作性の良いリモートコントローラを提供することを目的とするものである。
そして,上記2(2)カより,引用発明において,表示装置3の第1液晶パネル7内の状態表示部10及び第2の液晶パネル8内の状態表示部12には,エアコンにおける動作状態が表示されるとともに,上記第1液晶パネル7内の機能表示部9及び上記第2の液晶パネル8内の機能表示部11には,複数の設定キースイッチ5による上記エアコンの動作状態に合わせた操作内容が表示されると認められ,また,上記2(1)エより,上記エアコンの動作状態は,上記複数の設定キースイッチ5の操作により設定されると認められる。
さらに,上記2(2)カより,引用発明において,上記切替えキースイッチ4が送信した操作信号により,表示装置3の画面が上記第1の液晶パネル7の画面と上記第2の液晶パネル8の画面とに選択的に切替えられると認められる。
してみれば,引用発明の上記第1及び第2液晶パネル7,8内の状態表示部10,12に表示されるエアコンの動作内容それぞれは,上記複数の設定キースイッチ5の操作により設定される設定項目ということができ,また,上記状態表示部10,12には,設定項目が表示されるということができる。
そして,引用発明において,上記切替えキースイッチ4が送信した操作信号により,表示装置3の画面が選択的に切替えられることで,設定項目の表示が選択的に切替えられるということもできる。
ところで,上記3(5)のとおり,空気調和機,冷熱機器又は給湯機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置において,表示手段,並びに上記表示手段に設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキー,及び選択された設定項目を決定する決定キーを備える構成とすることで,操作性の向上を図ることは,原出願の出願日前,周知の技術であり,また,上記周知技術のリモートコントロール装置において,増加指示を示すキーと減少指示を示すキーからの操作信号により,表示手段における設定項目の選択に係る表示を移動させることは,当業者により普通に行われていたものといえる。
そうすると,引用発明と上記周知技術とは,表示手段に設定項目を表示する,空気調和機に係る機器に対して設けられるリモートコントロール装置において,操作性の向上を目的とする点で共通し,両者を組み合わせる動機付けは存在するといえるから,引用発明において,「押下されると,予め定められた機能に対する処理に応じた操作信号を送信する固定キー」として,上記切替えキースイッチ4に代えて「設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択された設定項目を決定する決定キー」を採用すること,及び上記「メニューキー」が送信した操作信号により,表示装置3の状態表示部にエアコンの動作内容のメニューを表示し,操作内容が増加指示を示す内容と減少指示を示す内容とを含む,互いに隣り合う設定キースイッチ5からの操作信号により,上記メニューの設定項目の選択に係る表示を移動させ,選択された設定項目を上記「決定キー」で決定することは,操作性の向上を目的として上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
さらに,引用発明は,互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作内容が,増加指示を示す内容と減少指示を示す内容とを含む同類の処理に関するものであるときには,上記互いに隣り合う設定キースイッチ5による操作の対象を示す文字,すなわち上記互いに隣り合う設定キースイッチ5の操作内容の上位概念の内容を示す文字を中央に表示したうえで,上記互いに隣り合う設定キースイッチ5の操作内容を一体化して,上記表示装置3の機能表示部9,11に表示させるものであるから,上記周知技術を適用する際に,上記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて,上記上位概念の内容を示す文字を他の上位概念の内容を示す文字に変更するようにすることは,当業者により当然に採用されるものであり,また,上記3(5)より,当業者が普通に行い得るものであるともいえる。
以上から,引用発明において,「設定項目の一覧であるメニューを表示するメニューキーおよび選択された設定項目を決定する決定キー」を採用すること(相違点2に係る構成とすること),及び「前記制御処理手段は,前記メニューキーが送信した操作信号により前記メイン表示部分に前記メニューを表示し,前記ファンクションキーからの操作信号により前記設定項目の選択に係る表示を移動させ,前記決定キーからの操作信号により決定した設定項目に基づいて前記上位概念の内容を示す文字を他の上位概念の内容を示す文字に変更する」ようにすること(相違点3に係る構成とすること)は,いずれも,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

6 本願発明の作用効果について
本願明細書の記載によれば,本願発明は,「複数の専用キー(ボタン)ではなく,画面表示の内容によって異なる操作内容を割りあてることができるファンクションキーの操作を行えるようにしたので,キーの数を少なくできる。また,使用者はどのボタンを押して良いのか混乱することなく,そのときに有効なファンクションキーを押下することにより正確な操作が可能となる。また,ファンクションキーの操作内容は表示手段の表示パネルに表示されるため,操作方法を知らなくても容易に操作が可能となる。また,動作状態に合わせた形でファンクションキーの操作内容が表示されるため,使用者は動作状態を確認しながらファンクションキーの操作を行うことができる。」(段落【0019】)との作用効果を奏するものである。
しかし,引用発明は,複数の設定キースイッチ5を備え,当該複数の設定キースイッチ5によるエアコンの動作状態に合わせた操作内容が,表示装置3の画面に表示されるから,引用発明も,本願発明と同様の作用効果を奏すると認められる。
以上から,本願発明の作用効果は,格別のものとはいえない。

7 まとめ
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明)及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 結言

したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-11 
結審通知日 2014-12-16 
審決日 2015-01-06 
出願番号 特願2012-269817(P2012-269817)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町井 義亮  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 高野 美帆子
河口 雅英
発明の名称 リモートコントロール装置  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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