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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01G
管理番号 1298068
審判番号 無効2014-800101  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-06-12 
確定日 2015-03-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第5287300号発明「計量コンベア」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5287300号(以下,「本件特許」という。)は,特願2009-18630号として平成21年1月29日(優先権主張:平成20年11月27日(以下,「優先日」という。),日本国)に出願したものであって,平成25年6月14日に特許権の設定の登録(発明の名称:計量コンベア,請求項の数:8)がなされたものである。
本件特許について,請求人から,平成26年6月12日付け審判請求書により,無効審判(無効2014-800101号,以下「本件特許無効審判」という。)が請求されたところ,被請求人から平成26年9月1日付けで審判事件答弁書の提出があった。なお,訂正の請求はなかった。
その後,平成26年11月14日付けで請求人より口頭審理陳述要領書が提出され,平成26年11月18日付けで被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され,平成26年12月2日に口頭審理が行われた。
その後,平成26年12月3日付けで,請求人より「平成26年12月2日の口頭審理において使用した説明資料を提出する。」として,上申書の提出があった。

以下,本件特許に関し,その請求項1ないし8に係る特許を,それぞれ,「本件特許1」ないし「本件特許8」といい,総称して,「本件特許1等」という。また,本件特許の請求項1ないし8に係る発明を,それぞれ,「本件発明1」ないし「本件発明8」といい,総称して,「本件発明1等」という。さらに,以下,本件特許に係る願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面を「本件特許明細書等」という。

第2 本件発明について
1 本件発明
本件発明1ないし8は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし8のそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものであり,分説して記載すると,以下のとおりのものである。

(1) 本件発明1
「【請求項1】
A.物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
B.前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し,
C.更に,前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段と,
D.前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段と,
を備えたことを特徴とする計量コンベア。」

(2) 本件発明2
「【請求項2】
E.前記搬送手段,前記計量手段,前記計測手段で何らかの異常が発生した場合,その異常が発生した旨とその明細を報知する報知手段と,
F.前記報知手段により異常が報知された時,前記搬送計量装置の搬送手段を停止する停止手段と,
を備えたことを特徴とする請求項1記載の計量コンベア。」

(3) 本件発明3
「【請求項3】
G.前記搬送計量装置が2台で,前記計測手段が前記2台の搬送計量装置の間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の計量コンベア。」

(4) 本件発明4
「【請求項4】
H.物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
I.前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し,
J.更に,前記搬送装置と前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段と,
K.前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段と,
を備えたことを特徴とする計量コンベア。」

(5) 本件発明5
「【請求項5】
L.前記搬送手段,前記計量手段,前記計測手段で何らかの異常が発生した場合,その異常が発生した旨とその明細を報知する報知手段と,
M.前記報知手段により異常が報知された時,前記搬送装置,前記搬送計量装置の搬送手段を停止する停止手段と,
を備えたことを特徴とする請求項4記載の計量コンベア。」

(6) 本件発明6
「【請求項6】
N.前記搬送装置,前記搬送計量装置が1台で,前記計測手段が前記搬送装置と前記搬送計量装置の間に配置されていることを特徴とする請求項4又は5記載の計量コンベア。」

(7) 本件発明7
「【請求項7】
O.前記計量コンベアは,前記選択手段で選択された計量値と,前記計測手段で計測された計測値を表示する表示手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の計量コンベア。」

(8) 本件発明8
「【請求項8】
P.前記計量コンベアは,前記表示手段に表示した表示内容を上位の管理装置へ送信する通信手段を備えていることを特徴とする請求項7記載の計量コンベア。」

第3 請求人の主張
請求人は,「特許第5287300号発明の特許請求の範囲の請求項1,2,3,4,5,6,7及び8に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,甲第1号証ないし甲第8号証を提出するとともに,「本件特許の請求項1から8に係る発明は,甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。」と主張している。なお,甲第7号証及び甲第8号証は,「計量装置を重ね合わせることが周知技術であることを,甲第7号証及び甲第8号証により立証する。」として,平成26年11月14日付け口頭審理陳述要領書とともに提出されたものである。
そして,本件特許を無効とすべき理由は,審判請求書,口頭審理陳述要領書,口頭審理調書及び上申書の記載内容を総合すれば,概略,以下のとおりである。

1 無効理由
・請求項1に係る発明は,甲第1号証に記載された発明,甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項1に係る発明は,甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項1に係る発明は,甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項2に係る発明は,甲第1?3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項3に係る発明は,甲第1?3号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項4に係る発明は,甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項4に係る発明は,甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項5に係る発明は,甲第1?3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項6に係る発明は,甲第1?3号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項7に係る発明は,甲第1?3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
・請求項8に係る発明は,甲第1?3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

2 証拠方法
上記無効理由について請求人が提出した証拠方法は,甲第1号証ないし甲第8号証であるところ,これらはいずれも,本件特許の優先日前に頒布された以下(1)?(8)の刊行物である。

(1) 甲第1号証 特許第3258262号公報(発明の名称:荷物の荷重及び長さ測定装置,特許権者:新光電子株式会社,発行日:平成14年2月18日)
(2) 甲第2号証 特開2008-116413号公報(発明の名称:重量選別機,出願人:大和製衡株式会社,公開日:平成20年5月22日)
(3) 甲第3号証 特開2006-326432号公報(発明の名称:重量選別装置,出願人:アンリツ産機システム株式会社,公開日:平成18年12月7日)
(4) 甲第4号証 特開2002-48623号公報(発明の名称:重量検査装置,出願人:株式会社イシダ,公開日:平成14年2月15日)
(5) 甲第5号証 特開2005-207750号公報(発明の名称:物品寸法測定装置,出願人:新光電子株式会社,公開日:平成17年8月4日)
(6) 甲第6号証 特開2006-194859号公報(発明の名称:自動計量装置および自動計量充填装置,出願人:株式会社トーワテクノ,公開日:平成18年7月27日)
(以上,審判請求書に添付して提出)
(7) 甲第7号証 特開昭61-260125号公報(発明の名称:ロードセル秤の調整装置,出願人:東京電気株式会社,公開日:昭和61年11月18日)
(8) 甲第8号証 米国特許第5539157号明細書(発明の名称:MULTI-CHECK METERING METHOD USING LOAD CELLS AND METERING DEVICE FOR THE SAME,譲受人:Hisamitsu Pharmaceutical Co., Inc.,発行日:1996年7月23日)
(以上,口頭審理陳述要領書に添付して提出)

第4 被請求人の反論
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書及び口頭審理調書の記載内容を総合すれば,概略,以下のとおり反論している。

・請求項1に係る発明は,甲第1号証に記載された発明,甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
・請求項1に係る発明は,甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
・請求項1に係る発明は,甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
・請求項2及び3に係る発明は,請求項1に係る発明の従属項に係る発明であるから,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
・請求項4に係る発明は,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
・請求項4に係る発明は,甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
・請求項4に係る発明は,甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
・請求項5及び6に係る発明は,請求項4に係る発明の従属項に係る発明であるから,当業者が容易に発明をすることができたものではない
・請求項7及び8に係る発明は,請求項1又は4に係る発明の従属項に係る発明であるから,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 甲号各証に記載の事項及び引用発明
1 甲第1号証
(1) 記載事項
甲第1号証には,次の事項アないしキが図面とともに記載されている(なお,下線は当審による。以下,同じ。)。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,次々と搬送されてくる異なる荷物の重量を個々にその重量を秤量すると共に,その長さを測定するための荷物の荷重及び長さ測定装置に関するものである。」

イ 「【0002】
【従来の技術】雑多な長さを有する多数の荷物が,押せ押せに近い状態でコンベアライン上を次々と搬送されてくる状況下において,個々の荷物を一旦停止することなく正確に秤量を行うと共にその長さを測定することは極めて難しい。
【0003】秤量に対する対応策の1つは,高速応答可能なコンベア秤を用い,進行中の荷物を迅速に1個ずつ計量することであるが,これは高速自動計量時に共通して必要な一般技術要件であるから,詳細な記述は省略する。
【0004】測定範囲が単一なコンベア秤を用いた従来例を,理解が容易なように数値例を挙げて説明する。図6は従来装置を用いて比較的長い荷物を計量する場合の説明図である。計量のため送られて来た荷物Aは,搬入コンベア1を介し例えば長さD=80cmのコンベア秤2の上に搬送され,排出コンベア3から排出されるものとする。コンベア秤2の前端に設けられた位置検出用の光センサ4が遮光から透光に移行した以後に,重量検出に適した例えば10cmの有効最小距離Sを走行中に計量する。しかし,荷物長Lが70cm以上の場合には,荷物Aの先端が排出コンベア3に載ってしまう状態でコンベア秤2により誤計量される可能性が大きいため,70cm以上の荷物は正しい測定ができない。
【0005】また,図7は従来装置により比較的短小な荷物を計量する場合の例を示したものであり,概念的には図6の場合と類似している。ただし,計量動作中は先行の荷物A’がコンベア秤2から完全に離脱している必要があり,そのためにはコンベア秤2の後端に設けられた光センサ5が,先行荷物A’により遮光から透光に移行した以後の秤量値を測定値として採用しなければならない。荷物同士の間隔Gが35cmの場合には荷物長Lが20cm未満,間隔Gが25cmであれば荷物長Lが40cm未満の荷物が2個同時に同じコンベア秤2に載った状態で計量する可能性が大きく,正しい測定が期待できない。
【0006】この場合に,コンベア秤2で計量し得る荷物Aの最大長さLmax の大きさを検討してみる。図6において,先行又は後続する荷物A’又は荷物A”を荷物Aと共に同じコンベア秤2で同時に誤計量しないための条件,即ち「荷物間隔G≧重量検出に必要な最小送行距離S」という条件下で,荷物Aの先端が計量に有効な太線の矢印で示した例えばS=10cmの走行部分を通過中に,コンベア秤2から秤量値を得るものとすると,図6から理解できるように,計量可能な荷物Aの最大長さLmax は次式で与えられる。
Xmax =D-S ・・・(α)
【0007】この場合の荷物同士の間隔Gは,前述のG≧Sの条件を満たす範囲内で任意の大きさでよいから,荷物の最大長さLmax はコンベア秤2の実質上の長さDと距離Sのみにより,例えば最大長さLmax =80cm-10cm=70cmに決定される。
【0008】次に,測定できる荷物の最小長さLmin を求めると,図7に示すように荷物同士の間隔Gの影響を大きく受け,式で表すと式(β)のようになる。
Xmin =D+S-2G ・・・(β)
【0009】例えば,荷物Aの前後の間隔Gが共に35cmで,長さD=80cm,距離S=10cmの場合には,式(β)により最小長さLmin は20cmになる。
【0010】このように,計量可能な荷物Aの最小長さLmin は間隔Gにより大きく左右され,間隔Gが大きいと短小な荷物の計量が可能な反面で,測定上無駄な時間が増加するため時間的な測定効率が低下し,単位時間当たりの測定個数は殆ど増加しない。なお,荷物Aの前後の間隔Gが相等しくない場合には,小さい方の間隔Gを式(β)に適用する。
【0011】式(α)と式(β)に荷物長L,距離S,間隔Gの実数例を代入してみると,荷物長Lと間隔Gに関した計量可能領域を図解できる。図8はコンベア秤2の長さD=80cm,測定走行距離S=10cmとし,間隔Gが10cm以上の範囲内に与えられた際に,計量可能な荷物長Lの領域を間隔Gに関係付けてハッチングで示したものである。
【0012】例えば,間隔Gが25cmに規制されている場合,正しく計量できる荷物長Lは直線aの40cm?70cmの範囲に絞られ,70cm以上は勿論,40cm以下の小さな荷物も正しく計量することはできない。荷物長Lが決まっている場合に間隔Gをどのように選択するかについては,例えば荷物長L=25cmの荷物Aを正しく計量するためには,直線bを参照して間隔Gを32.5cm以上の範囲内に入るように規制しなければならないことが分かる。
【0013】装置のパラメータの実数は,実情に即した若干の変更は支障はなく,特にコンベア秤2の長さD,距離S,間隔G,荷物長L等を一斉に比例的に変えた場合には,モデル寸法の大小が変わるものの,基本的な特性は変化することはない。
【0014】段ボール箱等の直方体状貨物等の長さ,幅,高さの各寸法のうち,幅と高さについては光学式その他の装置により,貨物が静止している場合は勿論のこと,移動中であっても比較的容易に高精度で測定することができる。
【0015】一方,進行方向の貨物の長さを移動中に正確に自動測定することは,一見容易に見えるが,実際にはなかなか困難である。」

ウ 「【0016】
【発明が解決しようとする課題】高速の重量測定器や選別器の能力は,一般に単位時間当たりの測定処理数で表現されている。従って,本明細書における以下の記述においても,高速性の評価基準としては単位時間当たりの測定可能数を重視して検討することにする。
【0017】具体的には,搬送速度を早めるほど,或いは荷物のピッチP(中心間距離又は荷物長L+間隔G)を詰めるほど能力が増加する。搬送速度の増加に付帯して必要とされる自動計量技術は,一般技術条件に含まれるから特に論及しないこととし,ここでは主として荷物長L,間隔G等に関する幾何学的な条件と能力の問題を中心に説明する。
【0018】図6,図7と同じ数値例を用いたコンベア秤2に関し,計量可能な範囲内で,搬送速度が100cm/秒の場合の計量能力を計算してみると,次表のようになる。この表において,能力の逆数が搬送時のピッチP(cm)に相当し,ピッチPは荷物長L(cm)と間隔G(cm)の和であるが,荷物長Lが半分になっても能力(個/秒)は2倍にはならず,高々30%程度の増加に止まる。
【0019】
荷物長L 最小間隔G 最小ピッチP 最大能力
10 40 50 2.00
20 35 55 1.82
30 30 60 1.67
40 26 65 1.54
50 20 70 1.43
60 15 76 1.33
70 10 80 1.25
【0020】この表から明らかなように,1台のコンベア秤2を用いた従来の無停止型計量装置では,計量能力を増すために荷物Aの搬送間隔Gを小さく選んだ場合に,計量し得る荷物長Lは比較的大きな範囲にのみ設定され,小さい荷物Aは2個同時にコンベア秤2に載る可能性があるから正しい計量ができない。一方,荷物長Lが小さい短小な荷物Aの計量を可能にするため間隔Gを大きく選んだ場合には,計量能力の低下が避けられないという矛盾を生ずる。
【0021】更には,荷物の荷重測定と共に荷物の長さを測定することは極めて技術的な困難性が伴う。
【0022】本発明の目的は,単一秤による従来装置の上述のような問題点を改善し,長短多種類の荷物の重量を同一装置により測定すると共にその長さを測定し,時間的な測定効率を向上させる荷物の荷重及び長さ測定装置を提供することにある。」

エ 「【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る荷物の荷重及び長さ測定装置は,次々と搬送されてくる荷物の荷重を個々に秤量しかつ測長する装置であって,搬送方向に沿って直列かつ隣接して配置し荷重測定手段をそれぞれ備えた複数個のコンベア秤と,これらの各荷重測定手段の出力を任意の組合わせにより加算して前記荷物の荷重を検出する第1の演算手段と,前記コンベア秤の搬送方向に沿って,基準間隔に配置し前記荷物の通過を検知する少なくとも2つの荷物検出手段と,前記基準間隔で得られた前記荷物基準長に対し残部又は不足分の長さを求めるための前記コンベア秤の駆動ローラの回転角を検知する回転角検出器と,前記基準間隔と前記回転角検出器で求めた長さ分を加減算して前記荷物の長さを測定する第2の演算手段とを備えたことを特徴とする。」

オ 「【0024】
【発明の実施の形態】本発明を図1?図4に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。図1に示すように,荷重測定のための図示しないロードセル及び搬送手段としての駆動ローラ11,12をそれぞれ備え,長さが異なる2台のコンベア秤13,14が,コンベアラインに沿って直列的かつ隣接して配置されている。そして,コンベアベルト13a,14aを駆動する駆動ローラ11,12は図示しないモータにより駆動されており,その回転角はロータリエンコーダ15により検出されている。また,これらのコンベア秤13,14の上流側及び下流側には搬入コンベア17及び排出コンベア18が配置されている。
【0025】上流側のコンベア秤13の前部,コンベア秤13,14の境界部,コンベア秤14の後部には,それぞれ荷物Aの有無を検知し,測定のタイミングを得るための光センサ20,21,22が設けられている。更に,コンベア秤13,14の出力値及び光センサ20,21,22の出力は図示しない演算手段に接続され,この演算手段において測定シーケンスに基づいて,コンベア秤13,14の出力を組合わせて,1個の荷物Aの重量値を得るようにされている。
【0026】概略の荷物長L及び間隔Gつまり光センサ20,21,22の出力の組合わせにより,演算手段は自動的に適切な測定シーケンスを選択し,下記(1) ?(3) の何れかの方法により,測定すべき個々の荷物Aを効率的に計量する。
【0027】(1) 中間長の荷物Aは上流側のコンベア秤13で計量する。
(2) 短い荷物Aは下流側の短いコンベア秤14で計量する。
(3) 長い荷物Aは上流側のコンベア秤13と下流側のコンベア秤14の重量の和を計量値とする。」

カ 「【0030】図2は短い荷物Aを計量する場合を示し,間隔Gが所定の大きさに確保されていれば,2つの荷物が同時にコンベア秤13に載ることがあっても,コンベア秤14では単一の荷物Aしか載らず,荷物長Lが30cm以下の荷物Aの重量をコンベア秤14で正確に測定することができる。
【0031】また,図3は長い荷物Aを測定する場合を示し,荷物長Lが70cm?110cmの荷物Aを,コンベア秤13とコンベア秤14の出力値の和を重量値として測定することができる。
【0032】特定の荷物Aをどのコンベア秤により計量するかはアルゴリズムによるが,光センサ20,21,22の出力の組合わせ,及び計量信号の維持時間等により決定することができ,間隔Gが所定の大きさに確保されていれば,荷物長Lが異なる荷物Aがコンベアラインに混載されていても,何ら問題はなく個々の荷物Aの重量を測定できることは勿論である。
【0033】更には,本実施例においてはアルゴリズムつまり測定シーケンスを変えることにより,荷物Aの計量の方法は必ずしも先の(1) ?(3) に限ることなく,間隔Gに余裕があれば,例えば中間長の荷物Aはコンベア秤13のみでなく,コンベア秤13,14の双方に載った状態で測定することもできるし,短い荷物Aはコンベア秤13だけ,又はコンベア秤13,14の双方に載った状態においても測定することができる。このようにすることにより,測定値を平均化することができ,短かい荷物程,計量される回数が多くなり,測定値がより正確となる。」

キ 「【0049】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る荷物の荷重及び長さ測定装置は,複数のコンベア秤を直列かつ隣接して配置し,単一又は複数の荷重測定手段で検出した重量を,予め定められた適切な測定シーケンスに基づいて組合わせ,個々の荷物の重量を求めることができる。その結果,単一秤のみで計量する場合に比し,測定可能な個々の荷物の長短の範囲を拡大し得るのみでなく,間隔を詰めて単位時間当りの計量個数を増加することができる。また,荷重測定シーケンスで使用する荷物検出手段を用いて,荷物の長さを正確に測定することができる。」

(2) 甲第1号証発明
以上を総合勘案すると,甲第1号証には次の発明が記載されていると認められる(以下,「甲第1号証発明」という。)。
「A.物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
B’.搬送手段と計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し,
C.前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段と,
D’.前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択する選択手段と,
を備えたことを特徴とする計量コンベア。」

2 甲第2号証
(1) 記載事項
甲第2号証には,次の事項アないしケが図面とともに記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,重量選別機に係り,更に詳しくは,搬送手段に載った物品荷重の,荷重検知器への伝達を制御するクランプ切り替え技術に関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
計量コンベヤ装置は,物品を一定速度で搬送しながら,物品の重量を測定する機器であり,例えば物品を重量毎に振り分ける重量選別機(オートチェッカ)には標準装備されている。このような計量コンベヤ装置の一例は,ベルト面に物品を載せ,ベルトにより物品を搬送する計量コンベヤと,この計量コンベヤに連結して,計量コンベヤとともに物品の荷重を検知するロードセル(荷重検知器)とを備える。
【0003】
ここで,重量選別機の処理能力アップの観点から,単位時間当たりに可能な限り多数の物品を自動計量できる仕様に重量選別機を設計できれば好適である。このため,短い時間を置いて連なるように被計量物である物品を,計量コンベヤ上に搬入することが望ましいものの,計量コンベヤ上に2個以上の物品が同時に載った場合には,物品個々の重量が計量できない。よって,物品間の間隔(すなわち物品搬入時間の間隔)は,必然的に所定の間隔以上を保つよう制約されている。計量コンベヤのコンベヤ長(搬送長)以上の間隔を開けて物品を計量コンベヤに搬入すれば,2個以上の物品が計量コンベヤ上に同時に載ることがあり得ないことから,上述の所定間隔のひとつの目安は,コンベヤ長である。
【0004】
そこで,このコンベヤ長を短くすれば,重量選別機の処理能力をアップできるが,重量選別機による物品の適切な重量測定を図るには,少なくとも物品の搬送方向の長さ(以下,「物品長」と略す)よりもコンベヤ長を短くできず,更に,以下に述べる理由からコンベヤ長は,通常は,物品の物品長よりも長めに設計されている。
【0005】
物品の搬送方向の後端が,計量コンベヤの入口に進入するように物品全体が完全に計量コンベヤ上に載った時点から,物品の搬送方向の先端が計量コンベヤの出口に到達する時点迄,重量選別機による適切な物品の重量測定の観点からある程度の時間が必要である。例えば,重量選別機の制御装置は,上述の時間内に,計量コンベヤを駆動する駆動モータよる振動成分を除去するよう,荷重の信号データをフィルタリング処理して最終的な重量データを算出している。そして,このフィルタリング処理の時間は,物品の物品長に依存せずほぼ一定であり,コンベヤ長は,現実的には,上述の時間から見積もられる距離分,物品の物品長よりも長めにして最適設計されている。
【0006】
ところが,仮に重量選別機により選別される物品の品種に応じて物品長が頻繁に変わると,コンベヤ長の最適設計は困難になる。つまり,想定される最大物品長の物品に合わせて,コンベヤ長を充分長めに余裕を持たせ過ぎると,上記理由により,重量選別機の処理能力は著しく低下する。
【0007】
一方,物品の物品長に応じて計量コンベヤを交換することも一案であるが,こうすれば,計量コンベヤの前後に設置されている送り込みコンベヤや振り分けコンベヤも交換する必要があり,手間が掛かり過ぎる。
【0008】
そこで,このような不都合を解決するアイデアが,例えば,特許文献1や特許文献2に従来例として記載されている。
【0009】
特許文献1に記載の多連秤装置では,コンベヤ長が異なる2本の計量コンベヤをコンベヤの搬送方向に沿って直列的に配置してなり,物品の物品長に応じて,コンベヤ長が短い計量コンベヤと,コンベヤ長が長い計量コンベヤとの間の適切な使用組合せが示されている。
【0010】
特許文献2に記載の多連計量装置は,上記特許文献1の多連秤装置の制御手法を発展させた装置であり,より詳しくは,物品の処理能力と物品の物品長から計量コンベヤの運転条件に相当する変動パラメータを演算して,この変動パラメータに基づいて物品を計量する,コンベヤ長が異なる2本の計量コンベヤの適切な使用組合せを選別している。
【特許文献1】特開平10-122940号公報
【特許文献2】特開2006-105729号公報」

ウ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで,計量コンベヤ装置を使用していない場合,つまり計量コンベヤ装置の運転ON-OFFスイッチをOFF(運転停止)にした場合,計量コンベヤ装置の扱いに不慣れな作業者の不注意により,計量コンベヤに過負荷が与えられ(例えば極度に過量な物を計量コンベアに載せる等),ロードセルの損傷を招く可能性がある。特に,上記従来例に記載の計量コンベヤ装置では,コンベヤ長が異なる2本の計量コンベヤの各々に,1個ずつ合計2個のロードセルを設ける必要があり,計量コンベヤ装置の運転停止の場合において,ロードセルを適切に保護する技術は重要になる。要するに,これまでの経験上,ロードセルを壊す過負荷がロードセルに対し与えられる事態は,重量選別機(計量コンベヤ装置)を使用していない時間帯に多発することから,当該時間帯におけるロードセルの保護を適切に行う必要がある。なお,上述の時間帯とは,重量選別機による生産ライン上の作業の終了時から次回の作業の開始時までの期間を意味し,この作業の終了時とは,より正確には,重量選別機(計量コンベヤ装置)の運転ON-OFFスイッチをOFF(運転停止)にし,その後,重量選別機の元電源もOFFにした時点を指す。
【0012】
つまり,従来例の計量コンベヤ装置では,確かに計量コンベヤを交換することなく,多様な物品(例えば様々な物品長の物品)を計量可能になった反面,ロードセルへの予期せぬ過負荷に対する防御という観点から改善の余地があると考えられる。
【0013】
本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,多様な物品(例えば様々な物品長の物品)を一つの荷重検知器により計量でき,汎用性や信頼性を高めた計量装置を備える重量選別機を提供することを目的とする。」

エ 「【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため,本発明の重量選別機は,物品を搬送する第1搬送手段と,物品を載せた状態の前記第1搬送手段の荷重を検知する荷重検知器と,前記第1搬送手段と前記荷重検知器との間の荷重の伝達経路の途中に配置され,前記第1搬送手段から前記荷重検知器への荷重伝達を制御する第1クランプ切り替え機構と,を有する計量装置を備え,前記計量装置により前記物品の荷重に基づいて前記物品を振り分ける装置である。
【0015】
これにより,重量選別機の運転を停止した場合(つまり重量選別機の運転ON-OFFスイッチをOFFにした場合),荷重検知器が負荷に曝されないよう,計量装置の荷重検知器への物品の荷重伝達を適切に制御でき,その結果,重量選別機の信頼性が高まる。
【0016】
また,前記第1搬送手段の搬送長よりも長い搬送長を有して,物品を搬送する第2搬送手段と,前記第2搬送手段と前記荷重検知器との間の荷重の伝達経路の途中に配置され,前記第2搬送手段から前記荷重検知器への荷重伝達を制御する第2クランプ切り替え機構と,を備え,物品を載せた状態の前記第2搬送手段の荷重が,前記荷重検知器により検知されて良い。
【0017】
これにより,多様な物品(例えば様々な物品長の物品)を一つの荷重検知器により計量でき,その結果,重量選別機の汎用性や信頼性が高まる。
【0018】
また,ここで,前記第1および第2クランプ切り替え機構を,全負荷伝達モード,無負荷モード,第1部分負荷伝達モードおよび第2部分負荷伝達モードの何れか一つに設定しても良い。
【0019】
なお,前記全負荷伝達モードでは,前記第1および第2クランプ切り替え機構により,前記第1および第2搬送手段の両方の荷重が前記荷重検知器に伝達される。
【0020】
また,前記第1部分負荷伝達モードでは,前記第1および第2クランプ切り替え機構により,前記第1搬送手段のみの荷重が前記荷重検知器に伝達される。
【0021】
また,前記第2部分負荷伝達モードでは,前記第1および第2クランプ切り替え機構により,前記第2搬送手段のみの荷重が前記荷重検知器に伝達される。
【0022】
また,前記無負荷モードでは,前記第1および第2クランプ切り替え機構により,前記第1および第2搬送手段の両方の荷重が前記荷重検知器に伝達されない。
【0023】
また,前記物品の物品長を記憶した記憶部と,前記第1および第2クランプ切り替え機構を駆動する駆動装置と,制御装置と,を備えても良い。
【0024】
前記物品の荷重を前記荷重検知器により検知する場合には,前記制御装置により,前記物品の物品長に基づいて前記駆動装置の駆動を制御する運転パラメータが前記駆動装置に対し与えられ,前記第1および第2クランプ切り替え機構を,前記運転パラメータに基づく駆動装置の駆動により,前記全負荷伝達モード,前記第1部分負荷伝達モードおよび前記第2部分負荷伝達モードのうちの何れか一つに設定できる。
【0025】
なおここで,前記物品の物品長が,前記第1搬送手段の搬送長よりも短い場合には,前記第1および第2クランプ切り替え機構を前記第1部分負荷伝達モードに設定することが好ましく,前記物品の物品長が,前記第1搬送手段の搬送長よりも長く,かつ前記第2搬送手段の搬送長よりも短い場合には,前記第1および第2クランプ切り替え機構を前記第2部分負荷伝達モードに設定することが好ましく,前記物品の物品長が,前記第2搬送手段の搬送長よりも長い場合には,前記第1および第2クランプ切り替え機構を前記全負荷伝達モードに設定することが好ましい。
【0026】
このようにして,本発明の重量選別機によれば,様々な物品長の物品を一つの荷重検知器により計量でき,その結果,重量選別機の汎用性や信頼性が高まる。
【0027】
一方,前記第1および第2クランプ切り替え機構を駆動する駆動装置と,制御装置と,を備えても良い。
【0028】
そして,前記重量選別機の運転を停止した場合には,前記制御装置により,前記駆動装置の駆動を制御する運転パラメータが前記駆動装置に対し与えられ,前記第1および第2クランプ切り替え機構は,前記運転パラメータに基づく駆動装置の駆動により,前記無負荷モードに設定することが好ましい。
【0029】
このようにして,本発明の重量選別機では,重量選別機の運転を停止した場合,荷重検知器への荷重伝達が適正に阻止され,その結果,荷重検知器への予期せぬ過負荷等による損傷の根本要因を取り除ける。
【0030】
例えば,重量選別機の運転停止中に,重量選別機の扱いに不慣れな作業者の不注意により,第1および第2搬送手段に過負荷が与えられた場合,例えば極度の過量の物を第1および第2搬送手段に載せた場合であっても,荷重検知器の損傷が未然に防止できる。
【0031】
また,前記第1クランプ切り替え機構の一構成例は,前記第1搬送手段を支持する支持具への連結の確立および解除を可能にする2以上の可動ユニットを備えてなり,第1の前記可動ユニットが,無負荷用の台座に支持され,第2の前記可動ユニットが,前記荷重検知器上に載った負荷用の台座に支持されて良い。
【0032】
更に,前記第1可動ユニットは,第1回転ロッドに連結された扇型歯車を含み,前記第2可動ユニットは,第2回転ロッドに連結され,前記扇型歯車の歯に噛み合う円盤型歯車を含み,前記扇型歯車の回転により前記扇型歯車と前記円盤型歯車との間の噛み合いが解かれた場合に,前記第2可動ユニットと前記支持具との間の連結が確立されるとともに,前記第1可動ユニットと前記支持具との間の連結が解除され,前記扇型歯車の回転により前記扇型歯車と前記円盤型歯車との間の噛み合いがなされた場合に,前記第1可動ユニットと前記支持具との間の連結が確立されるとともに,前記第2可動ユニットと前記支持具との間の連結が解除されても良い。
【0033】
このように,前記扇型歯車と前記円盤型歯車との間の噛み合いを解いた場合に,前記第2可動ユニットと前記支持具との間の連結が確立するようにして,前記第1搬送手段の荷重が前記荷重検知器に伝達するように,前記第1クランプ切り替え機構を適切なモードに設定したことから,第1または第2搬送手段に載った物品荷重の荷重検知器による検知時に,前記扇型歯車と前記円盤型歯車との間の噛み合いに基づく相互接触が適切に縁切りできる。その結果,前記物品荷重が前記荷重検知器で精度良く検知され好適である。
【0034】
なお,前記第1回転ロッドを回転する駆動装置を備えても良い。
【0035】
これにより,計量装置のクランプ切り替え動作の自動化に基づき,切り替え作業の効率化が図れる。
【0036】
また,前記第1回転ロッドを回転する手動レバーを備えても良い。
【0037】
これにより,駆動装置を無くして,計量装置のコストダウンが図れる。」

オ 「【発明の効果】
【0038】
本発明によれば,多様な物品(例えば様々な物品長の物品)を一つの荷重検知器により計量でき,汎用性や信頼性を高めた計量装置を備える重量選別機が得られる。」

カ 「【0041】
計量コンベヤ装置100は,図1に示す如く,物品Pを搬送するコンベヤ長(搬送長)が異なる前段計量コンベヤ1(第1搬送手段)および後段計量コンベヤ2(第2搬送手段)と,物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)と,を備える。」

キ 「【0108】
まず,クランプ切り替え機構5,6の前段計量コンベヤ負荷伝達モードについて述べる。
【0109】
図4の図示内容から理解されるとおり,クランプ切り替え機構5の扇型歯車15aおよび円盤型歯車8aの正反転の連動動作により,扇型歯車15aと円盤型歯車8aとの間の噛み合いが解かれた場合に,前段計量コンベヤ1の荷重がロードセルLCに伝達されるよう,クランプ切り替え機構5の下段回転ロッド11aとコンベヤ支持具9aとの連結がなされている(クランプ切り替え機構5の上段回転ロッド10aとコンベヤ支持具9aとの連結が解かれている)。
【0110】
一方,クランプ切り替え機構6の扇型歯車15bおよび円盤型歯車8bの正反転の連動動作により,扇型歯車15bと円盤型歯車8bとの間の噛み合いがなされた場合に,クランプ切り替え機構6により,後段計量コンベヤ2の荷重がロードセルLCに伝達されないよう,クランプ切り替え機構6の上段回転ロッド10bとコンベヤ支持具9bとの連結がなされている(クランプ切り替え機構6の下段回転ロッド11bとコンベヤ支持具9bとの連結が解かれている)。
【0111】
これにより,計量コンベヤ装置100に載った物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のみによる計量に適した寸法の場合,例えば,物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも短い場合,この前段計量コンベヤ負荷伝達モードによれば,物品Pの荷重が,クランプ切り替え機構5,6を介して前段計量コンベヤ1のみからロードセルLCに伝達され好適である。
【0112】
また,上述のとおり,扇型歯車15aと円盤型歯車8aとの間の噛み合いを解いた場合に,前段計量コンベヤ1の荷重がロードセルLCに伝達するようにクランプ切り替え機構5を前段計量コンベヤ負荷伝達モードに設定したことから,前段計量コンベヤ1に載った物品Pの荷重のロードセルLCによる検知時に,扇型歯車15aと円盤型歯車8aとの間の噛み合いに基づく相互接触が適切に縁切りできる。その結果,物品Pの荷重がロードセルLCで精度良く検知され好適である。
【0113】
次に,クランプ切り替え機構5,6の後段計量コンベヤ負荷伝達モードについて述べる。
【0114】
図5の図示内容から理解されるとおり,クランプ切り替え機構5の扇型歯車15aおよび円盤型歯車8aの正反転の連動動作により,扇型歯車15aと円盤型歯車8aとの間の噛み合いがなされた場合に,前段計量コンベヤ1の荷重がロードセルLCに伝達されないよう,クランプ切り替え機構5の上段回転ロッド10aとコンベヤ支持具9aとの連結がなされている(クランプ切り替え機構5の下段回転ロッド11aとコンベヤ支持具9aとの連結が解かれている)。
【0115】
一方,クランプ切り替え機構6の扇型歯車15bおよび円盤型歯車8bの正反転の連動動作により,扇型歯車15bと円盤型歯車8bとの間の噛み合いが解かれた場合に,クランプ切り替え機構6により,後段計量コンベヤ2の荷重がロードセルLCに伝達されるよう,クランプ切り替え機構6の下段回転ロッド11bとコンベヤ支持具9bとの連結がなされている(クランプ切り替え機構6の上段回転ロッド10bとコンベヤ支持具9bとの連結が解かれている)。【0116】
これにより,計量コンベヤ装置100に載った物品Pの物品長が,後段計量コンベヤ2のみによる計量に適した寸法の場合,例えば,物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも長く,かつ後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも短い場合,この後段計量コンベヤ負荷伝達モードによれば,物品Pの荷重が,クランプ切り替え機構5,6を介して後段計量コンベヤ2のみからロードセルLCに伝達され好適である。
【0117】
また,上述のとおり,扇型歯車15bと円盤型歯車8bとの間の噛み合いを解いた場合に,後段計量コンベヤ2の荷重がロードセルLCに伝達するように,クランプ切り替え機構6を後段計量コンベヤ負荷伝達モードに設定したことから,後段計量コンベヤ2に載った物品Pの荷重のロードセルLCによる検知時に,扇型歯車15bと円盤型歯車8bとの間の噛み合いに基づく相互接触が適切に縁切りできる。その結果,物品Pの荷重がロードセルLCで精度良く検知され好適である。
【0118】
次に,クランプ切り替え機構5,6の全負荷伝達モードについて述べる。
【0119】
図6の図示内容から理解されるとおり,クランプ切り替え機構5の扇型歯車15aおよび円盤型歯車8aの正反転の連動動作により,扇型歯車15aと円盤型歯車8aとの間の噛み合いが解かれた場合に,前段計量コンベヤ1の荷重がロードセルLCに伝達されるよう,クランプ切り替え機構5の下段回転ロッド11aとコンベヤ支持具9aとの連結がなされている(クランプ切り替え機構5の上段回転ロッド10aとコンベヤ支持具9aとの連結が解かれている)。
【0120】
一方,クランプ切り替え機構6の扇型歯車15bおよび円盤型歯車8bの正反転の連動動作により,扇型歯車15bと円盤型歯車8bとの間の噛み合いが解かれた場合に,クランプ切り替え機構6により,後段計量コンベヤ2の荷重がロードセルLCに伝達されるよう,クランプ切り替え機構6の下段回転ロッド11bとコンベヤ支持具9bとの連結がなされている(クランプ切り替え機構6の上段回転ロッド10bとコンベヤ支持具9bとの連結が解かれている)。
【0121】
これにより,計量コンベヤ装置100に載った物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1および後段計量コンベヤ2の両方による計量に適した寸法の場合,例えば,物品Pの物品長が,後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも長い場合,この全負荷伝達モードによれば,物品Pの荷重が,クランプ切り替え機構5,6を介して前段計量コンベヤ1および後段計量コンベヤ2の両方からロードセルLCに伝達され好適である。
【0122】
また,上述のとおり,扇型歯車15aと円盤型歯車8aとの間,および,扇型歯車15bと円盤型歯車8bとの間,の噛み合いを解いた場合に,前段計量コンベヤ1および後段計量コンベヤ2の荷重がロードセルLCに伝達するように,クランプ切り替え機構5,6を全負荷伝達モードに設定したことから,前段計量コンベヤ1および後段計量コンベヤ2に載った物品Pの荷重のロードセルLCによる検知時に,扇型歯車15aと円盤型歯車8aとの間の噛み合い,および,扇型歯車15bと円盤型歯車8bとの間の噛み合い,に基づく相互接触が適切に縁切りできる。その結果,物品Pの荷重がロードセルLCで精度良く検知され好適である。」

ク 「【0127】
次に,本実施形態の計量コンベヤ装置100による物品Pの荷重検知の動作の一例について図面を参照しながら説明する。
【0128】
図8は,物品の物品長が前段計量コンベヤのコンベヤ長よりも短い場合の,計量コンベヤ装置による物品の荷重検知の動作例を説明する図である。
【0129】
図9は,物品の物品長が前段計量コンベヤのコンベヤ長よりも長く,後段計量コンベヤのコンベヤ長よりも短い場合の,計量コンベヤ装置による物品の荷重検知の動作例を説明する図である。
【0130】
図10は,物品の物品長が後段計量コンベヤのコンベヤ長よりも長い場合の,計量コンベヤ装置による物品の荷重検知の動作例を説明する図である。
【0131】
なお,図8,図9および図10では,計量コンベヤ装置100の構成(例えば,前段および後段計量コンベヤ1,2やクランプ切り替え機構5,6)については,これらの動作を理解し易くなるように,簡略乃至省略して図示している。
【0132】
また,図8,図9および図10では,前段計量コンベヤ1の前方に送り込みコンベヤ110が図示され,後段計量コンベヤ1の後方に送り出しコンベヤ111が図示されているが,上述のとおり,送り込みコンベヤ110および送り出しコンベヤ111は公知であり,ここでは,これらのコンベヤ110,111の詳細な説明は省略する。
【0133】
図8によれば,前後方向(物品Pの搬送方向)の物品長が前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも短い複数の物品Pが,送り込みコンベヤ110,前段計量コンベヤ1,後段計量コンベヤ2および送り出しコンベヤ111により構成される搬送ライン上に,所定の間隔を隔てて,5個,連なるように搬送されている。」

ケ 「【0155】
なおここでは,物品Pの物品長が,作業者の操作設定表示部102による操作(物品Pの品種登録作業)に基づいて予め記憶部105に入力される例を述べたが,物品Pの物品長が,頻繁にランダムに変わるような計量ラインの場合には,制御装置101が,適宜の検知手段により測定された物品Pの物品長を自動的に取得して,この物品長に基づいてクランプ切り替え機構5,6のクランプ切り替え動作を実行しても良い。」

(2) 甲第2号証発明
以上を総合勘案すると,甲第2号証には次の発明が記載されていると認められる(以下,「甲第2号証発明」という。)。

「物品Pを搬送するコンベヤ長(搬送長)が異なる前段計量コンベヤ1(第1搬送手段)および後段計量コンベヤ2(第2搬送手段)と,物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)と,を備える計量コンベヤ装置100であって,
送り込みコンベヤ110,前段計量コンベヤ1,後段計量コンベヤ2および送り出しコンベヤ111により搬送ラインを構成し,
物品Pの物品長を測定する検知手段及びクランプ切り替え機構5,6を備え,
物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも短い場合,前段計量コンベヤ1のみの荷重がロードセルLCに伝達され,物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも長く,かつ後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも短い場合,後段計量コンベヤ2のみの荷重がロードセルLCに伝達され,物品Pの物品長が,後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも長い場合,前段計量コンベヤ1および後段計量コンベヤ2の両方の荷重がロードセルLCに伝達される,計量コンベヤ装置100。」

3 甲第3号証
(1) 記載事項
甲第3号証には,次の事項アないしコが図面とともに記載されている。
ア 「【請求項1】
被計量品(1,2,3)を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部(9)と,前記被計量品をその重量に基づいて選別する選別手段(10)と,前記計量部からの重量信号によって前記選別手段を作動させる制御部(11)とを備えた重量選別装置(5)において,
前記搬送手段は,第1搬送部(7)と,前記被計量品が前記第1搬送部から直接乗り継ぎ可能となるように前記第1搬送部の後段に設けられた第2搬送部(8)とを含み,
前記制御部は,前記計量部からの重量信号によって前記第2搬送部の搬送速度を減少させるように制御することを特徴とする重量選別装置(5)。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,搬送手段を備えた計量部によって被計量品の重量を搬送しながら計量し,その重量が所定の基準重量範囲内にあるか否かを判定し,その判定結果に応じて被計量品の選別を行う重量選別装置に係り,特に搬送方向の装置サイズ(機長)が短く,被計量品の選別が安定して確実であり,被計量品の計量精度及び処理能力の低下がない重量選別装置を提供するものである。」

ウ 「【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に例示するように,従来,計量部において被計量品を搬送しながら計量し,その計量結果に基づき,後段の選別部によって被計量品を良品と不良品とに選別する重量選別装置が知られている。この重量選別装置では,計量部と選別部は別体として構成されており,計量工程と選別工程との間で被計量品が連続的に移動できるように,これら各部は搬送方向に隣接して設置されている。
【0003】
また,上記のように被計量品を搬送しながら計量する重量選別装置では,計量部が出力する計量信号には,搬送手段の振動や被計量品の揺れ,あるいは床振動等の影響によるノイズが重畳されており,このノイズを抑圧するためにフィルタ手段が使用されている。
【特許文献1】特開平5-312626号公報」

エ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の物品選別装置では,計量部と選別部が別体で被計量品の搬送方向に隣接して設置されているため,搬送方向の装置サイズ(機長)が長く,広い設置スペースが必要になるという問題があった。
【0005】
また,搬送手段の振動や被計量品の揺れ,あるいは床振動等の影響によるノイズを計量部の計量信号から除去するためにフィルタ手段を使用した物品選別装置では,このフィルタ手段が特定の時定数を有しており,これによって計量信号の波形に遅れが生じるため,計量部の搬送方向の長さは被計量品の長さの1.5倍から2倍に設定されることが多く,装置サイズ(機長)が全体として大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
かかる問題点を解決するため,本願発明者は,鋭意研究開発の努力を重ねた結果,図7(a)に示すような構成の重量選別装置を案出するに至った(以下,この発明を先行発明と呼ぶ。)。本出願人の先行発明に係る装置は,搬送手段を含む前段装置100に隣接して設けられ,搬送手段101を備えた計量部102と,これに近接して設けられた選別部103によって構成される。この重量選別装置によれば,計量部102で重量測定が完了し,その判定結果がNGであった場合に,計量部102が備える搬送手段101を停止して該当する被計量品を選別部103で選別することができる。
【0007】
具体的には,図7(b)に示すように,第1の被計量品1が重量測定を完了し,その判定がNGであった場合,計量部102の搬送装置101は停止するが,前段装置100では第2の被計量品2の搬送を継続している。次に,同図(c)に示すように,重量選別装置で選別部103を駆動して計量部102の搬送手段101上にある被計量品1を排除する間,前段装置100は停止するか,又は図示しない何らかの手段(例えばライン近傍の作業員の手動)により第2の被計量品2を抑止し,第2の被計量品2が重量選別装置に送り込まれないようにする。次に,同図(d)に示すように,第1の被計量品1の排除が完了したところで計量部102の搬送手段101と前段装置100の駆動を再開し,第2の被計量品2を重量選別装置に送り込む。次に,同図(e)に示すように,第2の被計量品2が計量部102の搬送手段101に乗り移ったところで第3の被計量品3が前段装置100に入るが,この時点では第2の被計量品2は計量部102で状態が安定していないので計測できない。そして,同図(f)に示すように,第2の被計量品2の状態が安定したところで計量が行われ,その結果に応じてNGの場合は選別部103が作動し,OKの場合はそのまま次段へと搬送されていくが,この時には第3の被計量品3が計量部102の搬送手段101の手前まで搬送されているので,前述したように前記判定がNGの場合には,計量部102の搬送手段101を停止するとともに,前段装置100も停止等しなければならない。
【0008】
この装置によれば,従来は計量部の後段に別体として設置され,判定信号に基づいて被計量品の選別をしていた選別部の機能を,搬送手段が停止した計量部において行うことができるので,装置全体としてのサイズが小さくなるだけでなく,選別の際には被計量品が停止しているので安定して選別できるという利点があるものと考えられた。
【0009】
しかしながら,NG品の選別時という限定された場合であっても,生産ラインの一部を構成する重量選別装置の搬送手段を停止させるということは,生産ラインの処理能力を低下させてしまうこととなり,生産効率の低下を招くという問題が生じてしまう。つまり,
計量部の搬送手段を停止している間に計量部にさしかかった次の被計量品は,計量部の搬送手段が運転再開されるまでは計量部に乗り移れないから,計量部の搬送手段が運転を再開するまでの時間を損失することとなる。さらに,一旦停止した被計量品を所定の搬送速度まで加速しなければならないため搬送が不安定になり,計量精度が悪化するという問題も生じる。
【0010】
この問題を解決するために,本願発明者は2つの手法を案出し,検討した。第1の手法は,選別のための搬送手段の停止時間を考慮し,搬送手段の運転時の搬送速度を上げて被計量品の間隔を拡大する手法であり,第2の手法は,計量部の搬送方向の長さを短縮して計量部の上流側に助走部を設けることである。
【0011】
しかしながら,第1の手法は,搬送速度を上げることにより計量部の搬送手段を通過するのに要する時間が短くなるため,フィルタ手段の時定数が確保できなくなって計量精度が悪化するので現実的ではない。
【0012】
また,第2の手法は,計量部の搬送手段の長さを短縮して助走部を設け,計量部の搬送手段のみを停止する構成となるため,生産ラインの処理能力は低下しないが,計量部の搬送手段の長さが短いということは通過に要する時間も短いことと等価であり,フィルタ手段の時定数が確保できないという第1の手法と共通の問題が生じる。
【0013】
このような第1の手法及び第2の手法での問題は,計量部の搬送手段の長さを長くすることで解決できるが,これでは装置サイズの縮小という根本的な要求が解決できなくなる。従って,第1の手法と第2の手法のいずれを採用したとしても,選別時に搬送手段を停止して安定して選別するという好ましい機能を,生産効率と計量精度を十分高い水準に維持しつつ実現することができない。
【0014】
本発明は,以上説明したような課題を解決するためになされたものであり,被計量品の搬送方向についての装置サイズを縮小でき,計量部の搬送手段を停止して被計量品を停止状態で安定して選別でき,さらに生産効率と計量精度を低下させることもない重量選別装置を提供することを目的としている。」

オ 「【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された重量選別装置5は,
被計量品1,2,3を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品1,2,3の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部9と,前記被計量品1,2,3をその重量に基づいて選別する選別手段10と,前記計量部9からの重量信号によって前記選別手段10を作動させる制御部11とを備えた重量選別装置5において,
前記搬送手段は,第1搬送部(上流側搬送手段7)と,前記被計量品1,2,3が前記第1搬送部(上流側搬送手段7)から直接乗り継ぎ可能となるように前記第1搬送部(上流側搬送手段7)の後段に設けられた第2搬送部(下流側搬送手段8)とを含み,
前記制御部11は,前記計量部9からの重量信号によって前記第2搬送部(下流側搬送手段8)の搬送速度を減少させるように制御することを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載された重量選別装置5bは,
被計量品1,2,3を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品1,2,3の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部9と,前記被計量品1,2,3をその重量に基づいて選別する選別手段10と,前記計量部9からの重量信号によって前記選別手段10を作動させる制御部11とを備えた重量選別装置5bにおいて,
前記搬送手段は,前記重量選別装置5bの前段に設けられた搬送装置(前段装置6)から前記被計量品1,2,3を受け入れる従動ローラ部30と,前記被計量品1,2,3が
前記従動ローラ部30から直接乗り継ぎ可能となるように前記従動ローラ部30の後段に設けられて駆動される第2搬送部31とを含み,
前記制御部11は,前記計量部9からの重量信号によって前記第2搬送部31の搬送速度を減少させるように制御することを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載された重量選別装置5aは,
被計量品1,2,3を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品1,2,3の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部9と,前記被計量品1,2,3をその重量に基づいて選別する選別手段10と,前記計量部9からの重量信号によって前記選別手段10を作動させる制御部11とを備えた重量選別装置5aにおいて,
前記搬送手段は,第1搬送部21と,前記被計量品1,2,3が前記第1搬送部21から直接乗り継ぎ可能となるように前記第1搬送部21の後段に設けられた第2搬送部22と,前記被計量品1,2,3が前記第2搬送部22から直接乗り継ぎ可能となるように前記第2搬送部22の後段に設けられた第3搬送部23とを含み,
前記制御部11は,前記計量部9からの重量信号及び前記被計量品1,2,3の長さに応じて,前記第3搬送部23の搬送速度を減少させる制御又は前記第2搬送部22及び第3搬送部23の搬送速度を共に減少させる制御の何れかを行うことを特徴としている。」

カ 「【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載された重量選別装置5によれば,計量部9の第2搬送部(下流側搬送手段8)を停止して選別手段10で被計量品1,2,3の選別を行いつつ,前段からの被計量品1,2,3の受け入れを続行することができる構成であるから,被計量品1,2,3の搬送方向についての装置サイズを縮小でき,計量部9の第2搬送部(下流側搬送手段8)を停止して被計量品1,2,3が停止した状態で安定して選別でき,さらに生産効率と計量精度を低下させることがないという効果が得られる。
【0019】
請求項2に記載された重量選別装置5bによれば,前述した効果の他,さらに,計量部9の搬送手段を従動ローラ部30と駆動される第2搬送部31とで構成したので,従動ローラ部30については駆動する必要がなく,前段装置6の搬送力を利用できるという利点がある。
【0020】
請求項3に記載された重量選別装置5aによれば,前述した効果の他,さらに,計量部9の搬送手段を第1?第3の3つの搬送部21,22,23で構成したので,被計量品1,2,3が短い場合には,短い被計量品の長さに相当する長さの第3搬送部23の搬送速度を減少させる制御を行い,被計量品が長い場合には,長い被計量品の長さに相当する合計長さの第2搬送部22及び第3搬送部23の搬送速度を共に減少させる制御を行うことで,被計量品の長さに応じた計量及び選別を行うことができる。」

キ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明における最良の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る物品選別装置の第1実施形態(搬送手段が2分割の例)の構成を示すブロック図,図2は第1実施形態における概略構成とその動作を示す図,図3は第2実施形態(搬送手段が3分割の例の1)における概略構成とその動作を示す図,図4は第3実施形態(搬送手段が3分割の例の2)における概略構成とその動作を示す図,図5は第4実施形態(搬送手段の上流側が従動ローラの例)における概略構成とその動作を示す図,図6は第1実施形態における計量信号の波形例を前記先行発明における計量信号の波形例と対比して示す図である。
【0022】
(1)第1実施形態:計量部の搬送手段が2分割の例(図1,図2,図6参照)
第1実施形態(第1例)に係る重量選別装置5の構成を説明する。
図1及び図2(a)に示すように,本例の重量選別装置5は,搬送手段を含む前段装置6が搬送してきた被計量品を受け入れられるように,被計量品の搬送方向について前段装置6の下流側に隣接して設置されている。この重量選別装置5は,被計量品を搬送する搬送手段として,第1搬送部である上流側搬送手段7と,被計量品が上流側搬送手段7から直接乗り継ぎ可能となるように,上流側搬送手段7の後段に設けられた第2搬送部である下流側搬送手段8とを有している。上流側搬送手段7と下流側搬送手段8は,それぞれ別々に駆動・停止することができる。
【0023】
上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定するために,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8は共通の計量部9によって支承されている。計量部9は,その重量測定結果から搬送手段(上流側搬送手段7及び下流側搬送手段8)の重量を差し引き,被計量品の重量を示す重量信号を出力することができる。」

ク 「【0027】
第1例に係る重量選別装置5の作用を説明する。
図2(b)に示すように,第1の被計量品1が重量測定を完了し,その判定がNGであった場合,計量部9が支える搬送手段中,下流側搬送手段8は停止するが,上流側搬送手段7は駆動を継続しており,また前段装置6も第2の被計量品2の搬送を継続している。
【0028】
次に,図2(c)に示すように,選別手段10を駆動し,停止している下流側搬送手段8の上にあるNGの被計量品1をライン外に排除する一方,運転を継続している前段装置6によって第2の被計量品2が運転を継続している上流側搬送手段7に送り込まれてくる。
【0029】
このように,NG品を排除するために下流側搬送手段8が停止して選別手段10が作動している間も,上流側搬送手段7は作動を続けているので,被計量品の搬送と計量作業は休むことなく効率的に続行され,生産効率が高い。
【0030】
次に,図2(d)に示すように,第1の被計量品1を排除した後に下流側搬送手段8は直ちに駆動を開始する。第2の被計量品2は,駆動し続けている上流側搬送手段7に前段装置6から乗り移り,計量部9による第2の被計量品2の計量が行われる。また第3の被計量品3が前段装置6に送り込まれて計量部9に向けた搬送が開始される。
【0031】
このように,被計量品は,計量部9が支える搬送手段に乗り移る間もしくは直前に停止することがなく,そのまま搬送されながら計量されるので,一旦停止した後に始動して計量する場合に起こるような加速に伴う搬送の不安定さがなく,計量精度が低下することはない。
【0032】
次に,図2(e)に示すように,第2の被計量品2の計量結果に基づいて,制御部11は計量部9の下流側搬送手段8及び選別手段10を制御する。すなわち,OKの場合は下流側搬送手段8を停止することなく選別手段10も駆動せず,第2の被計量品2はそのまま次段へと搬送されていくが,この時には第3の被計量品3が計量部9の手前まで搬送されているので,直ちに計量部9に送り込まれて次の計量作業に入ることが出来る。」

ケ 「【0040】
第2例に係る重量選別装置5aの作用を説明する。
図3(b)に示すように,第1の被計量品1が重量測定を完了し,その判定がNGであった場合,第3搬送部23は停止するが,第1及び第2搬送部21,22は駆動を継続しており,また前段装置6も第2の被計量品2の搬送を継続している。
【0041】
次に,図3(c)に示すように,選別手段10を駆動し,停止している第3搬送部23の上にあるNGの被計量品1をライン外に排除する一方,運転を継続している前段装置6によって第2の被計量品2が運転を継続している第1搬送部21に送り込まれてくる。
【0042】
このように,NG品を排除するために第3搬送部23が停止して選別手段10が作動している間も,第1及び第2搬送部21,22は作動を続けているので,被計量品の搬送2と計量作業は休むことなく効率的に続行され,生産効率が高い。
【0043】
次に,図3(d)に示すように,第1の被計量品1を排除した後に第3搬送部23は直ちに駆動を開始する。第2の被計量品2は,駆動し続けている第2搬送部22に第1搬送部21から乗り移り,計量部9による第2の被計量品2の計量が行われる。また第3の被計量品3が前段装置6に送り込まれて計量部9に向けた搬送が開始される。
【0044】
このように,被計量品2は,計量部9の搬送手段に乗り移る間もしくは直前に停止することがなく,そのまま搬送されながら計量されるので,一旦停止した後に始動して計量する場合に起こるような加速に伴う搬送の不安定さがなく,計量精度が低下することはない。
【0045】
次に,図3(e)に示すように,第2の被計量品2の計量結果に基づいて,制御部11は第3搬送部23及び選別手段10を制御する。すなわち,OKの場合は第3搬送部23を停止することなく選別手段10も駆動せず,第2の被計量品2はそのまま次段へと搬送されていくが,この時には第3の被計量品3が計量部9の手前まで搬送されているので,直ちに計量部9に送り込まれて次の計量作業に入ることが出来る。本例によっても,第1例と略同様の効果が得られる。」

コ 「【0065】
複数の搬送手段をそれぞれ専用の計量装置で別々に支承する構成とした場合には,各計量装置ごとにそれぞれ固有の時定数があるのでそれぞれの計量手段で精度よく計量するためには小型化が困難であることは前記したとおりであり,さらに被計量品の重量をそれぞれの計量結果の和から算出するようにした場合には誤差が累積されて測定精度が低くなってしまうが,以上説明した本発明の実施形態の各例においては,複数の搬送手段を1つの計量装置で支承する構成としたので,このような不都合がなく,高い測定精度を得ることができる。」

(2) 甲第3号証発明
以上を総合勘案すると,甲第3号証には次の発明が記載されていると認められる(以下,「甲第3号証発明」という。)。

「被計量品(1,2,3)を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部(9)とを備えた重量選別装置(5)であって,
前記搬送手段は,上流側搬送手段7と,前記被計量品が前記上流側搬送手段7から直接乗り継ぎ可能となるように前記上流側搬送手段7の後段に設けられた下流側搬送手段8を備え,
上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定するために,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8は共通の計量部9によって支承されており,計量部9は,その重量測定結果から搬送手段(上流側搬送手段7及び下流側搬送手段8)の重量を差し引き,被計量品の重量を示す重量信号を出力することができる,
重量選別装置(5)。」

4 甲第4号証
(1) 記載事項
甲第4号証には,次の事項ア及びイが図面とともに記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,重量検査装置,特に,計量コンベアの重量を計測することによって計量コンベア上の物品の重量を算出する重量検査装置に関する。」

イ 「【0016】なお,重量変化監視手段及び重量算出手段は,制御部に含まれていてもよいし,制御部とは別に設けられていてもよい。請求項2に係る重量検査装置は,請求項1に記載の装置であって,警告手段をさらに備えている。警告手段は,使用者に注意を促す手段であって,画面表示,あるいは警報発令を行う。そして,制御部は,計量コンベア重量変化監視処理において計量コンベアの重量値が所定範囲を超えた変化を示したときに,警告手段により異常を知らせる。
【0017】ここでは,計量コンベアの重量値が所定範囲を超えた変化を示したときに,警告手段により異常を知らせている。通常は,計量コンベアの駆動等による振動のために重量値が常に変化しているので,異常としない範囲を定めていないと警告が常時発せられ使用に不具合が生じる恐れがあるためである。
【0018】請求項3に係る重量検査装置は,請求項1又は2に記載の装置であって,制御部は,計量コンベア重量変化監視処理において計量コンベアの重量値が所定範囲を超えた変化を示したときに,計量コンベアを停止させる。」

(2) 甲第4号証発明
以上を総合勘案すると,甲第4号証には次の発明が記載されていると認められる。

「警告手段と,計量コンベアを停止させる制御部とを備える重量検査装置。」

5 甲第5号証
(1) 記載事項
甲第5号証には,次の事項ア及びイが図面とともに記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,ベルトコンベアで搬送中の物品寸法を正確に測定する物品寸法測定装置に関するものである。」

イ 「【実施例1】
【0014】
図1は実施例1の機構図を示し,第1,第2のベルトコンベア11,12はそれぞれローラ11a,11b,及び12a,12bに巻き付けた搬送ベルト13,14により物品Aを搬送するようにされている。第1,第2のベルトコンベア11,12の間には,枠状の寸法測定機構15が配置され,寸法測定時には物品Aを寸法測定機構15内を通過させるようになっている。」

(2) 甲第5号証発明
以上を総合勘案すると,甲第5号証には次の発明が記載されていると認められる。

「第1,第2のベルトコンベア11,12の間には,枠状の寸法測定機構15が配置された物品寸法測定装置。」

6 甲第6号証
(1) 記載事項
甲第6号証には,次の事項ア及びイが図面とともに記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,水平方向に移動する搬送台に物品を懸架して搬送する途中で(すなわちオンラインで)搬送台に懸架された物品を自動的に計量する自動計量装置と,該自動計量装置を用いた自動計量充填装置に関する。」

イ 「【0016】
図2に示すように,データ処理手段17は,ロードセル15による計量値を作業者に読み取り可能な形式で逐次表示する表示器としての機能を有する。また,演算処理機能を有するデータ処理手段17を用いることにより,ロードセル15の計量値を演算処理させて計量完了時の物品1の質量を別途表示させることもできる。また,通信機能を有するデータ処理手段17を用いることにより,計量値をデータ収集手段18へと送信することができる。このようなデータ処理手段17としては,例えば株式会社エー・アンド・デイ製のウェイング・インジケータAD4401を用いることができる。
データ収集手段18は,ロードセル15の計量値を収集して,計測記録の作成や統計的な解析を可能にするために利用される。データ収集手段18としては,例えばデータ収集・解析用のアプリケーションがインストールされたパーソナルコンピュータを用いることができる。
なお,あらかじめ設定入力しておいたシキイ値と前記ロードセル15の計量値とを比較して各種の判定を行う判定手段を,データ収集手段18とは別体に又は一体に構成することも可能である。例えば上限シキイ値と下限シキイ値とを設定しておき,前記計量値が上限シキイ値を超えた場合又は下限シキイ値に満たない場合に,物品1が充填不良品であるものと判定したり,その旨の信号を出力し,この信号によって各種の警報を発したり,当該物品1を搬送台11から自動的に排除する手段を作動させるなどの態様も可能である。
また,ロードセル15の計量値に基づいて,カップ容器1に充填する内容物の量を所定量に調節するように充填機を自動制御することも可能である。充填機の自動制御機能を備えた自動計量充填装置の態様の具体例については,また後で詳しく説明する。」

(2) 甲第6号証発明
以上を総合勘案すると,甲第6号証には次の発明が記載されていると認められる。

「計量値を表示する表示器としての機能と,計量値をデータ収集手段18へと送信する通信機能とを有するデータ処理手段17を備えた自動計量充填装置。」

第6 当審の判断
無効理由は,本件発明1等は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,(1) 甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたとするもの(以下,「無効理由1」という。),(2) 本件発明1等は,甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたとするもの(以下,「無効理由2」という。)及び(3) 本件発明1等は,甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたとするもの(以下,「無効理由3」という。)に分けられるので,以下,無効理由1,2及び3の順に検討する。

1 無効理由1について
無効理由1は,本件発明1,2,3,7及び8は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,甲第1号証発明等に基づいて容易に発明をすることができた,とするものである。

(1) 対比
本件発明1と甲第1号証発明とを,主たる構成要件毎に,順に対比する。
ア 甲第1号証発明の「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベア」(構成A)は,本件発明1の「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベア」に相当する。

イ 甲第1号証発明の「搬送手段と計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」(構成B’)と本件発明1の「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」とは,「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」の点で共通する。

ウ 甲第1号証発明の「前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」(構成C)は,本件発明1の「前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」に相当する。

エ 甲第1号証発明の「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択する選択手段」(構成D’)と本件発明1の「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」は,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」の点で共通する。

(2) 一致点及び相違点
以上の関係を整理すると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し,
更に,前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段と,
前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値を選択する選択手段と,
を備えた計量コンベア。」

<相違点>
本件発明1は,複数台の搬送計量装置を基台側計量装置上に配置し,選択手段が,複数台の搬送計量装置,基台側計量装置から出力された計量値を選択しているのに対し,甲第1号証発明は,複数台の搬送計量装置が基台側計量装置上に配置されておらず,選択手段が搬送物品の計量値として,複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択している点。

(3) 判断
甲第1号証発明は,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択する選択手段」の構成を具備しており,長い荷物A(最も長いコンベア秤より長い荷物)の計量値を得る場合には,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値を組み合わせた値を選択する(例えば,甲第1号証の段落【0027】の「(3) 長い荷物Aは上流側のコンベア秤13と下流側のコンベア秤14の重量の和を計量値とする」)ことで足りるから,甲第1号証発明では,「基台側計量装置」を備える必要がない。甲第1号証発明の目的,課題を解決するための手段及び効果からみて,甲第1号証発明は,本願発明1の「基台側計量装置」が不要の発明である。
また,甲第1号証の段落【0033】には,「本実施例においてはアルゴリズムつまり測定シーケンスを変えることにより,荷物Aの計量の方法は必ずしも先の(1) ?(3) に限ることなく」と記載されているから,甲第1号証には,測定シーケンスを変えることにより荷物Aの計量の方法を前記(3)以外の構成とすることが示唆されているにとどまり,基台側計量装置を備える構成に変えることにより荷物Aの計量の方法を前記(3)以外の構成とすることについては,記載も示唆もされていない。
加えて,甲第2号証発明の「ロードセルLC(荷重検知器)」は,計量手段を備えない前段計量コンベヤ1及び後段計量コンベヤ2のコンベヤ上の物品を計量するためのものであるから,甲第2号証を参照しても,複数台の搬送計量装置の計量値の選択(加算)により長い荷物Aを計量することができる甲第1号証発明において,甲第2号証発明の「ロードセルLC(荷重検知器)」を設ける動機付けがない。
さらに加えて,甲第2号証発明は,「物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)」を有する発明において,クランプ切り替え機構5,6の構成により「ロードセルLC(荷重検知器)」を1つのみとした発明であるから,甲第2号証発明の課題解決手段の技術思想は,計量装置を複数設けてなる甲第1号証発明の技術思想と逆のものといえる。
さらにまた加えて,甲第1号証発明において甲第2号証発明の「ロードセルLC(荷重検知器)」を設けることには,甲第1号証発明の選択手段における「組み合わせた値を選択する」構成が無駄になるという阻害要因が考えられるところ,この阻害要因を超えて,甲第1号証発明と甲第2号証発明を組み合わせることの動機づけが,見いだせない。
したがって,当業者が,甲第1号証発明において,甲第2号証発明の「ロードセルLC(荷重検知器)」の構成を採用することが,容易であるとはいえない。
同様に,甲第3号証発明の「計量部9」は,計量手段を備えない上流側搬送手段7及び下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定するためのものであるから,複数台の搬送計量装置の計量値の選択(加算)により長い荷物Aを計量することができる甲第1号証発明において,甲第3号証発明の「計量部9」を設ける動機付けがない。
そして,甲第1号証発明において,甲第2号証発明の「ロードセルLC(荷重検知器)」や甲第3号証発明の「計量部9」を設けることはできないから,甲第1号証発明の「選択手段」は,「前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する」ものとならない。

(4) 請求人の主張について
請求人は,計量装置を重ね合わせることが周知技術であるとして,甲第7号証及び甲第8号証を示している(口頭審理陳述要領書の2頁10行ないし12行。)。
しかしながら,甲第1号証発明は,「基台側計量装置」が不要の発明であり,さらに,甲第1号証発明において基台側計量装置の構成を設けることには,甲第1号証発明の選択手段における「組み合わせた値を選択する」構成が無駄になるという阻害要因があるから,たとえ計量装置を重ね合わせることが周知技術であるとしても,当業者が甲第1号証発明において基台側計量装置の構成を設けることが容易に想到できたとはいえない。
念のために,甲第7号証を参照すると,甲第7号証には,複数個の小秤量ロードセルと大秤量ロードセルを重ね合わせて秤量に応じて段階的に1目盛の値が変化するようにしたマルチレンジロードセル秤の技術が記載されている(1頁右欄17行ないし2頁左上欄1行)。したがって,仮に,甲第1号証発明と甲第7号証に記載された技術を組み合わせたとしても,甲第1号証発明の搬送計量装置のそれぞれが,小秤量のものと大秤量のものの重ね合わせとなるだけ(「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置を基台側計量装置上に配置したものを複数台,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」の構成になるだけ)であるから,本件発明1の「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」の構成にならない。
同様に,甲第8号証を参照しても,甲第8号証には,原材料を計量するときに複数のロードセルを使用して計量値をチェックする技術が記載されているにとどまる(1欄6行ないし12行)。したがって,仮に,甲第1号証発明と甲第8号証に記載された技術を組み合わせたとしても,甲第1号証発明の搬送計量装置のそれぞれが,計量値のチェックのために重ね合わせられるだけ(「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置を基台側計量装置上に配置したものを複数台,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」の構成になるだけ)であるから,本件発明1の「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」の構成にならない。

(5) まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲第1号証発明,甲第2号証発明及び甲第3号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明2,本件発明3,本件発明7及び本件発明8は,本件発明1を特定するために必要と認める事項のすべてを含む発明であるから,甲第1号証発明ないし甲第3号証発明に加えて,甲第4号証発明ないし甲第6号証発明を考慮しても,本件発明1についてした判断と同様に,いずれも,甲第1号証発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明1等は,上記相違点に係る構成,すなわち,複数台の搬送計量装置を基台側計量装置上に配置し,選択手段が,複数台の搬送計量装置,基台側計量装置から出力された計量値を選択する構成を採用したことにより,少なくとも,「各搬送計量装置の許容長さ以下の物品の重量は,それぞれの搬送計量装置の計量値が選択採用され,機長がもっとも長い搬送計量装置より長い物品については,前記複数の搬送計量装置を載置した基台側計量装置の計量値が選択採用される。即ち,各物品の重量は,それら物品の長さに対応する計量手段の計量値が採用される為,正しい計量値を得ることができる。」(段落【0019】)との効果を奏する。
なお,請求人は,「本件特許発明により,正しい計量値を得ることができる,とは言えない。」,「甲第3号証に記載された計量コンベヤ装置に比べて何の効果も無い。」,「図10の計測結果が,そもそも間違いである」等の理由を挙げ,「本件特許発明の効果も,甲第1号証,甲第2号証及び甲第3号証記載のものと比べて格別なものとは言えない。」と主張する(審判請求書の10頁15行ないし11頁12行,口頭審理陳述要領書の4頁26行ないし6頁20行。)。
しかしながら,本件発明1等が奏する上記作用効果は,甲第1号証発明が奏する効果(段落【0049】),甲第2号証発明が奏する効果(段落【0038】),第3号証発明が奏する効果(段落【0018】ないし【0020】)のいずれとも異なる効果であり,また,本願発明1等は,甲第1号証発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものであるから,本件発明1等の効果は,甲第1号証発明等から予測できる範囲内の効果であるともいえない。

2 無効理由2について
無効理由2は,本件発明1ないし8は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,甲第2号証発明等に基づいて容易に発明をすることができた,とするものである。

(1) 本件発明1,2,3,7及び8について
まず,本件発明1,2,3,7及び8について,以下,検討する。

ア 対比
本件発明1と甲第2号証発明とを,主たる構成要件毎に,順に対比する。
(ア)甲第2号証発明の「物品Pを搬送するコンベヤ長(搬送長)が異なる前段計量コンベヤ1(第1搬送手段)および後段計量コンベヤ2(第2搬送手段)と,物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)と,を備える計量コンベヤ装置100」は,本件発明1の「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベア」に相当する。

(イ)甲第2号証発明では,前段計量コンベヤ1と後段計量コンベヤ2とによって搬送ラインを構成しているところ,一般的に,搬送ラインは直線状となる(甲第2号証の図8ないし図10からも,「前段計量コンベヤ1」と「後段計量コンベヤ2」が一直線に配置されている様子が見て取れる。)。
また,甲第2号証発明では,「物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重」の一方または双方が「ロードセルLCに伝達」されて荷重を検知しており,また,「前段および後段計量コンベヤ1,2」は「ロードセルLC(荷重検知器)」上に配置されているといえるから,結局,甲第2号証発明の「物品Pを搬送するコンベヤ長(搬送長)が異なる前段計量コンベヤ1(第1搬送手段)および後段計量コンベヤ2(第2搬送手段)と,物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)と,を備える計量コンベヤ装置100であって,送り込みコンベヤ110,前段計量コンベヤ1,後段計量コンベヤ2および送り出しコンベヤ111により搬送ラインを構成」することと,本件発明1の「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」することとは,「前記搬送手段を備えた複数台の搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」する点で共通する。

(ウ)甲第2号証発明において,「物品P」は「前段および後段計量コンベヤ1,2」により搬送されており,また,甲第2号証発明は,「物品Pの物品長を測定する検知手段」を備えるから,甲第2号証発明の「物品Pの物品長を測定する検知手段」と本件発明1の「前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」とは,「前記搬送装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」である点で共通する。

(エ)甲第2号証発明は,「物品Pの物品長」に応じて「ロードセルLC」に荷重を伝達する計量コンベヤを替えており,これは,「物品Pの物品長」に応じて「ロードセルLC」に荷重を伝達する計量コンベヤを選択しているといえるから,甲第2号証発明の「物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも短い場合,前段計量コンベヤ1のみの荷重がロードセルLCに伝達され,物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも長く,かつ後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも短い場合,後段計量コンベヤ2のみの荷重がロードセルLCに伝達され,物品Pの物品長が,後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも長い場合,前段計量コンベヤ1および後段計量コンベヤ2の両方の荷重がロードセルLCに伝達される」ことと,本件発明1の「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」とは,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,選択する選択手段」を備える点で共通する。

イ 一致点及び相違点
以上の関係を整理すると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
前記搬送手段を備えた複数台の搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し,
更に,前記搬送装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段と,
前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,選択する選択手段と,
を備えた計量コンベア。」

<相違点1>
本件発明1の搬送装置は,「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた」「搬送計量装置」であり,「複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に」「配置し」ているのに対し,甲第2号証発明の搬送装置(前段計量コンベヤ1及び後段計量コンベヤ2)は,計量装置を備えない「搬送装置」であり,「前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)」を備える点。
<相違点2>
選択手段が,本件発明1においては,「前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択」しているのに対し,甲第2号証発明は,ロードセルLCに荷重が伝達されるコンベヤを選択している点。

ウ 判断
相違点1に関して,甲第2号証発明は,「物品Pの物品長を測定する検知手段及びクランプ切り替え機構5,6」の構成を具備しており,「物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも短い場合,前段計量コンベヤ1のみの荷重がロードセルLCに伝達され」,「物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも長く,かつ後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも短い場合,後段計量コンベヤ2のみの荷重がロードセルLCに伝達され」ることで足りるから,甲第2号証発明では,前段計量コンベヤ1及び後段計量コンベヤ2が計量装置を備える必要がない。甲第2号証発明の目的,課題を解決するための手段及び効果からみて,甲第2号証発明は,本願発明1の「搬送計量装置」が不要の発明である。
また,甲第2号証の段落【0038】には,発明の効果として,「本発明によれば,多様な物品(例えば様々な物品長の物品)を一つの荷重検知器により計量でき,汎用性や信頼性を高めた計量装置を備える重量選別機が得られる。」と記載されているから,甲第2号証には,前段計量コンベヤ1及び後段計量コンベヤ2に対しても計量装置を設けること(荷重検知器を複数設けること)については,記載も示唆もされておらず,むしろ,甲第2号証発明は,前段計量コンベヤ1及び後段計量コンベヤ2に対しても計量装置を設けることを排除しているといえる。
加えて,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段は,「基台側計量装置」が備えられていないからこそ必要な構成であるから,甲第1号証を参照しても,甲第2号証発明において,甲第1号証発明の搬送計量装置の計量手段を設ける動機付けがない。
さらに加えて,甲第1号証発明は,「搬送手段と計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択する選択手段」を備えた発明であるから,甲第1号証発明の課題解決手段の技術思想は,一つの荷重検知器により計量を行う甲第2号証発明と,逆の技術思想といえる。
さらにまた加えて,甲第2号証発明の前段計量コンベヤ1及び後段計量コンベヤ2に対して甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段を設けると,「計量コンベヤに過負荷が与えられ(例えば極度に過量な物を計量コンベアに載せる等),ロードセルの損傷を招く」(甲第2号証の段落【0011】)問題が発生するという阻害要因が考えられるところ,この阻害要因を超えて,甲第2号証発明と甲第1号証発明を組み合わせることの動機付けが,見いだせない。
したがって,当業者が,甲第2号証発明において,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段の構成を採用することが,容易であるとはいえない。
また,甲第7号証及び甲第8号証に記載された構成を考慮しても,同様である。
そして,甲第2号証発明において,甲第1号証発明の「計量手段」を設けることはできないから,当業者が,甲第2号証発明において,相違点2に係る選択手段の構成を採用することも容易でない。

エ まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲第2号証発明及び甲第1号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明2,本件発明3,本件発明7及び本件発明8は,本件発明1を特定するために必要と認める事項のすべてを含む発明であるから,甲第1号証発明ないし甲第3号証発明に加えて,甲第4号証発明ないし甲第6号証発明を考慮しても,本件発明1についてした判断と同様に,いずれも,甲第2号証発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明1等は,上記相違点に係る構成,すなわち,搬送装置は,「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた」「搬送計量装置」であり,「複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に」「配置し」,また,選択手段が,「前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択」する構成を採用したことにより,少なくとも,「各搬送計量装置の許容長さ以下の物品の重量は,それぞれの搬送計量装置の計量値が選択採用され,機長がもっとも長い搬送計量装置より長い物品については,前記複数の搬送計量装置を載置した基台側計量装置の計量値が選択採用される。即ち,各物品の重量は,それら物品の長さに対応する計量手段の計量値が採用される為,正しい計量値を得ることができる。」(段落【0019】)との効果を奏する。

(2) 本件発明4ないし8について
次に,本件発明4ないし8について,以下,検討する。

ア 対比
本件発明4と甲第2号証発明とを,主たる構成要件毎に,順に対比する。
(ア)甲第2号証発明の「物品Pを搬送するコンベヤ長(搬送長)が異なる前段計量コンベヤ1(第1搬送手段)および後段計量コンベヤ2(第2搬送手段)と,物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)と,を備える計量コンベヤ装置100」は,本件発明4の「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベア」に相当する。

(イ)甲第2号証発明では,前段計量コンベヤ1と後段計量コンベヤ2とによって搬送ラインを構成しているところ,一般的に,搬送ラインは直線状となる(甲第2号証の図8ないし図10からも,「前段計量コンベヤ1」と「後段計量コンベヤ2」が一直線に配置されている様子が見て取れる。)。
また,甲第2号証発明では,「物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重」の一方または双方が「ロードセルLCに伝達」されて荷重を検知しており,また,「前段および後段計量コンベヤ1,2」は「ロードセルLC(荷重検知器)」上に配置されているといえるから,結局,甲第2号証発明の「物品Pを搬送するコンベヤ長(搬送長)が異なる前段計量コンベヤ1(第1搬送手段)および後段計量コンベヤ2(第2搬送手段)と,物品Pを載せた状態の前段および後段計量コンベヤ1,2の荷重を検知する1個のロードセルLC(荷重検知器)と,を備える計量コンベヤ装置100であって,送り込みコンベヤ110,前段計量コンベヤ1,後段計量コンベヤ2および送り出しコンベヤ111により搬送ラインを構成」することと,本件発明4の「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」することとは,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段を備えた搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」する点で共通する。

(ウ)甲第2号証発明において,「物品P」は「前段および後段計量コンベヤ1,2」により搬送されており,また,甲第2号証発明は,「物品Pの物品長を測定する検知手段」を備えるから,甲第2号証発明の「物品Pの物品長を測定する検知手段」と本件発明4の「前記搬送装置と前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」とは,「前記搬送装置と前記搬送装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」である点で共通する。

(エ)甲第2号証発明は,「物品Pの物品長」に応じて「ロードセルLC」に荷重を伝達する計量コンベヤを替えており,これは,「物品Pの物品長」に応じて「ロードセルLC」に荷重を伝達する計量コンベヤを選択しているといえるから,甲第2号証発明の「物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも短い場合,前段計量コンベヤ1のみの荷重がロードセルLCに伝達され,物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも長く,かつ後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも短い場合,後段計量コンベヤ2のみの荷重がロードセルLCに伝達され,物品Pの物品長が,後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも長い場合,前段計量コンベヤ1および後段計量コンベヤ2の両方の荷重がロードセルLCに伝達される」ことと,本件発明4の「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」とは,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,選択する選択手段」を備える点で共通する。

イ 一致点及び相違点
以上の関係を整理すると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段を備えた搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し,
更に,前記搬送装置と前記搬送装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段と,
前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,選択する選択手段と
を備えた計量コンベア。」

<相違点1>
本件発明4では,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置」とを備え,当該「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置」を,「基台側計量装置上」に配置しているのに対し,甲第2号証発明では,一方の搬送装置は「搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置」であるものの,他方の搬送装置は「前記搬送手段を備えた搬送装置」であり,当該「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段を備えた搬送装置」を,「計量装置上」に配置している点。
<相違点2>
選択手段が,本件発明4においては,「前記搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択」しているのに対し,甲第2号証発明は,ロードセルLCに荷重が伝達されるコンベヤを選択している点。

ウ 判断
相違点1に関して,甲第2号証発明は,「物品Pの物品長を測定する検知手段及びクランプ切り替え機構5,6」の構成を具備しており,「物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも短い場合,前段計量コンベヤ1のみの荷重がロードセルLCに伝達され」,「物品Pの物品長が,前段計量コンベヤ1のコンベヤ長よりも長く,かつ後段計量コンベヤ2のコンベヤ長よりも短い場合,後段計量コンベヤ2のみの荷重がロードセルLCに伝達され」ることで足りるから,甲第2号証発明では,前段計量コンベヤ1又は後段計量コンベヤ2が計量装置を備える必要がない。甲第2号証発明の目的,課題を解決するための手段及び効果からみて,甲第2号証発明は,本願発明4の「搬送計量装置」が不要の発明である。
また,甲第2号証の段落【0038】には,発明の効果として,「本発明によれば,多様な物品(例えば様々な物品長の物品)を一つの荷重検知器により計量でき,汎用性や信頼性を高めた計量装置を備える重量選別機が得られる。」と記載されているから,甲第2号証には,前段計量コンベヤ1又は後段計量コンベヤ2に対しても計量装置を設けること(荷重検知器を複数設けること)については,記載も示唆もされておらず,むしろ,甲第2号証発明は,前段計量コンベヤ1又は後段計量コンベヤ2に対しても計量装置を設けることを排除しているといえる。
加えて,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段は,「基台側計量装置」が備えられていないからこそ必要な構成であるから,甲第1号証を参照しても,甲第2号証発明において,甲第1号証発明の搬送計量装置の計量手段を設ける動機付けがない。
さらに加えて,甲第1号証発明は,「搬送手段と計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択する選択手段」を備えた発明であるから,甲第1号証発明の課題解決手段の技術思想は,一つの荷重検知器により計量を行う甲第2号証発明と,逆の技術思想といえる。
さらにまた加えて,甲第2号証発明の前段計量コンベヤ1又は後段計量コンベヤ2に対して甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段を設けると,「計量コンベヤに過負荷が与えられ(例えば極度に過量な物を計量コンベアに載せる等),ロードセルの損傷を招く」(甲第2号証の段落【0011】)問題が発生するという阻害要因が考えられるところ,この阻害要因を超えて,甲第2号証発明と甲第1号証発明を組み合わせることの動機付けが,見いだせない。
したがって,当業者が,甲第2号証発明において,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段の構成を採用することが,容易であるとはいえない。
また,甲第7号証及び甲第8号証に記載された構成を考慮しても,同様である。
そして,甲第2号証発明において,甲第1号証発明の「計量手段」を設けることはできないから,当業者が,甲第2号証発明において,相違点2に係る選択手段の構成を採用することも容易でない。

エ まとめ
以上のとおりであるから,本件発明4は,甲第2号証発明及び甲第1号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明5,本件発明6,本件発明7及び本件発明8は,本件発明4を特定するために必要と認める事項のすべてを含む発明であるから,甲第2号証発明及び甲第3号証発明に加えて,甲第4号証発明ないし甲第6号証発明を考慮しても,本件発明4についてした判断と同様に,いずれも,甲第2号証発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明4等は,上記相違点に係る構成,すなわち,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置」とを備え,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置」を,「基台側計量装置上」に配置し,また,選択手段が,「前記搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択」する構成を採用したことにより,少なくとも,「各搬送計量装置の許容長さ以下の物品の重量は,それぞれの搬送計量装置の計量値が選択採用され,機長がもっとも長い搬送計量装置より長い物品については,前記複数の搬送計量装置を載置した基台側計量装置の計量値が選択採用される。即ち,各物品の重量は,それら物品の長さに対応する計量手段の計量値が採用される為,正しい計量値を得ることができる。」(段落【0019】)との効果を奏する本願発明1「の構成と比べて少ない計量手段で同等の計量能力を備えた計量コンベアを提供できると共に,計量手段の数が少ない分安価に製作することができる。」(段落【0020】)との効果を奏する。

3 無効理由3について
無効理由3は,本件発明1ないし8は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,甲第3号証発明等に基づいて容易に発明をすることができた,とするものである。

(1) 本件発明1,2,3,7及び8について
まず,本件発明1,2,3,7及び8について,以下,検討する。

ア 対比
本件発明1と甲第3号証発明とを,主たる構成要件毎に,順に対比する。
(ア)甲第3号証発明の「被計量品(1,2,3)を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部(9)とを備えた重量選別装置」は,本件発明1の「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベア」に相当する。

(イ)甲第3号証発明では,被計量品が上流側搬送手段7から直接乗り継ぎ可能となるように上流側搬送手段7の後段に下流側搬送手段8が設けられているところ,一般的に,搬送は直線状となる(甲第3号証の図2ないし図5からも,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8とが一直線に配置されている様子が見て取れる。)。
また,計量部(9)が搬送手段を支承することから,搬送手段は計量部上に配置されており,さらに,搬送手段は上流側搬送手段7と下流側搬送手段8とを備えることから,甲第3号証発明の「被計量品(1,2,3)を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部(9)とを備えた重量選別装置(5)であって,前記搬送手段は,上流側搬送手段7と,前記被計量品が前記上流側搬送手段7から直接乗り継ぎ可能となるように前記上流側搬送手段7の後段に設けられ下流側搬送手段8を備える」ことと,本件発明1の「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」することとは,「前記搬送手段を備えた複数台の搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」することと共通する。

イ 一致点及び相違点
以上の関係を整理すると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
前記搬送手段を備えた複数台の搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置する計量コンベア。」

<相違点1>
本件発明1の搬送装置は,「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた」「搬送計量装置」であるのに対し,甲第3号証発明の搬送装置(搬送手段)は,計量装置を備えない「搬送装置」であり,「上流側搬送手段7と下流側搬送手段8は共通の計量部9によって支承されて」いる点。
<相違点2>
本件発明1が,「前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」を備えるのに対し,甲第3号証発明では,このような特定がない点。
<相違点3>
本件発明1が,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」を備えるのに対し,甲第3号証発明は,「上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定するために,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8は共通の計量部9によって支承されており,計量部9は,その重量測定結果から搬送手段(上流側搬送手段7及び下流側搬送手段8)の重量を差し引き,被計量品の重量を示す重量信号を出力する」点。

ウ 判断
相違点1に関して,甲第3号証発明では,「上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定する」ことができれば足りるから,甲第3号証発明では,計量部9に加えて,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8にさらに計量部を備える必要がない(上流側搬送手段7の上に載置された被計量品の重量と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を区別して測定する必要がない)。甲第3号証発明の目的,課題を解決するための手段及び効果からみて,甲第3号証発明は,本願発明1の「搬送計量装置」が不要の発明である。
また,甲第3号証の段落【0030】には,「図2(d)に示すように,第1の被計量品1を排除した後に下流側搬送手段8は直ちに駆動を開始する。第2の被計量品2は,駆動し続けている上流側搬送手段7に前段装置6から乗り移り,計量部9による第2の被計量品2の計量が行われる。また第3の被計量品3が前段装置6に送り込まれて計量部9に向けた搬送が開始される。」と記載されているから,甲第3号証には,被計量品の計量が行われる時点では,次の被計量品が前段装置に送り込まれることが記載されているにとどまり,計量部9に加えて,上流側搬送手段7及び下流側搬送手段8にさらに計量部を備えることにより,上流側搬送手段7の上に載置された被計量品の重量と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を区別して測定することについては,記載も示唆もされていない。
加えて,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段は,「基台側計量装置」が備えられていないからこそ必要な構成であるから,甲第1号証を参照しても,甲第3号証発明において,甲第1号証発明の搬送計量装置の計量手段を設ける動機付けがない。
さらに加えて,甲第1号証発明は,「搬送手段と計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択する選択手段」を備えた発明であるから,甲第1号証発明の課題解決手段の技術思想は,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定する甲第3号証発明と,逆の技術思想といえる。
さらにまた加えて,甲第3号証発明の上流側搬送手段7と下流側搬送手段8に対して甲第1号証の搬送装置側の計量手段を設けることには,「計量部の搬送方向の長さは被計量品の長さの1.5倍から2倍に設定されることが多く,装置サイズ(機長)が全体として大きくなってしまう」(甲第3号証の段落【0005】),すなわち,装置が大がかりとなるという阻害要因が考えられるところ,この阻害要因を超えて,甲第3号証発明と甲第1号証発明を組み合わせることの動機づけが,見いだせない。
したがって,当業者が,甲第3号証発明において,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段の構成を採用することが,容易であるとはいえない。
また,甲第7号証及び甲第8号証に記載された構成を考慮しても,同様である。
そして,甲第3号証発明において,甲第1号証発明の「計量手段」を設けることはできないから,当業者が,甲第3号証発明において,相違点2に係る物品の長さを計測する計測手段の構成を採用し,さらに,相違点3に係る物品の長さに応じて計量値を選択する選択手段の構成を採用することも容易でない。

エ まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲第3号証発明及び甲第1号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明2,本件発明3,本件発明7及び本件発明8は,本件発明1を特定するために必要と認める事項のすべてを含む発明であるから,甲第1号証発明ないし甲第3号証発明に加えて,甲第4号証発明ないし甲第6号証発明を考慮しても,本件発明1についてした判断と同様に,いずれも,甲第3号証発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明1等は,上記相違点に係る構成,すなわち,搬送装置は,「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた」「搬送計量装置」であり,「前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」を備え,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」を備える構成を採用したことにより,少なくとも,「各搬送計量装置の許容長さ以下の物品の重量は,それぞれの搬送計量装置の計量値が選択採用され,機長がもっとも長い搬送計量装置より長い物品については,前記複数の搬送計量装置を載置した基台側計量装置の計量値が選択採用される。即ち,各物品の重量は,それら物品の長さに対応する計量手段の計量値が採用される為,正しい計量値を得ることができる。」(段落【0019】)との効果を奏する。

(2) 本件発明4ないし8について
次に,本件発明4ないし8について,以下,検討する。

ア 対比
本件発明4と甲第3号証発明とを,主たる構成要件毎に,順に対比する。
(ア)甲第3号証発明の「被計量品(1,2,3)を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部(9)とを備えた重量選別装置」は,本件発明4の「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベア」に相当する。

(イ)甲第3号証発明では,被計量品が上流側搬送手段7から直接乗り継ぎ可能となるように上流側搬送手段7の後段に下流側搬送手段8が設けられているところ,一般的に,搬送は直線状となる(甲第3号証の図2ないし図5からも,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8とが一直線に配置されている様子が見て取れる。)。
また,計量部(9)が搬送手段を支承することから,搬送手段は計量部上に配置されており,さらに,搬送手段は上流側搬送手段7と下流側搬送手段8とを備えることから,甲第3号証発明の「被計量品(1,2,3)を搬送する搬送手段と,前記搬送手段上に載置された前記被計量品の重量を測定するために前記搬送手段を支承する計量部(9)とを備えた重量選別装置(5)であって,前記搬送手段は,上流側搬送手段7と,前記被計量品が前記上流側搬送手段7から直接乗り継ぎ可能となるように前記上流側搬送手段7の後段に設けられた下流側搬送手段8を備える」ことと,本件発明4の「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置を,基台側計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」することとは,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段を備えた搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置」することと共通する。

イ 一致点及び相違点
以上の関係を整理すると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「物品を搬送する搬送手段と,該物品を前記搬送手段で搬送しながら重量を計量する計量手段を備えた計量コンベアであって,
前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段を備えた搬送装置を,計量装置上に,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置した計量コンベア。」

<相違点1>
本件発明4では,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置」と「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置」とを備えているのに対し,甲第3号証発明では,一方の搬送装置は「搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置」であるものの,他方の搬送装置は「前記搬送手段を備えた搬送装置」であり,「上流側搬送手段7と下流側搬送手段8は共通の計量部9によって支承されて」いる点。
<相違点2>
本件発明4が,「前記搬送装置と前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」を備えるのに対し,甲第3号証発明では,このような特定がない点。
<相違点3>
本件発明4が,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」を備えるのに対し,甲第3号証発明は,「上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定するために,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8は共通の計量部9によって支承されており,計量部9は,その重量測定結果から搬送手段(上流側搬送手段7及び下流側搬送手段8)の重量を差し引き,被計量品の重量を示す重量信号を出力する」点。

ウ 判断
相違点1に関して,甲第3号証発明では,「上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定する」ことができれば足りるから,甲第3号証発明では,計量部9に加えて,上流側搬送手段7又は下流側搬送手段8にさらに計量部を備える必要がない(上流側搬送手段7の上に載置された被計量品の重量と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を区別して測定する必要がない)。甲第3号証発明の目的,課題を解決するための手段及び効果からみて,甲第3号証発明は,本願発明4の「搬送計量装置」が不要の発明である。
また,甲第3号証の段落【0030】には,「図2(d)に示すように,第1の被計量品1を排除した後に下流側搬送手段8は直ちに駆動を開始する。第2の被計量品2は,駆動し続けている上流側搬送手段7に前段装置6から乗り移り,計量部9による第2の被計量品2の計量が行われる。また第3の被計量品3が前段装置6に送り込まれて計量部9に向けた搬送が開始される。」と記載されているから,甲第3号証には,被計量品の計量が行われる時点では,次の被計量品が前段装置に送り込まれることが記載されているにとどまり,計量部9に加えて,上流側搬送手段7又は下流側搬送手段8にさらに計量部を備えることにより,上流側搬送手段7の上に載置された被計量品の重量と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を区別して測定することについては,記載も示唆もされていない。
加えて,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段は,「基台側計量装置」が備えられていないからこそ必要な構成であるから,甲第1号証を参照しても,甲第3号証発明において,甲第1号証発明の搬送計量装置の計量手段を設ける動機付けがない。
さらに加えて,甲第1号証発明は,「搬送手段と計量手段とを備えた複数台の搬送計量装置を,搬送方向が一直線となり連続して搬送し得るように直列且つ隣接して配置し」,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置から出力された計量値またはそれを組み合わせた値を選択する選択手段」を備えた発明であるから,甲第1号証発明の課題解決手段の技術思想は,上流側搬送手段7と下流側搬送手段8の上に載置された被計量品の重量を測定する甲第3号証発明と,逆の技術思想といえる。
さらにまた加えて,甲第3号証発明の上流側搬送手段7又は下流側搬送手段8に対して甲第1号証の搬送装置側の計量手段を設けることには,「計量部の搬送方向の長さは被計量品の長さの1.5倍から2倍に設定されることが多く,装置サイズ(機長)が全体として大きくなってしまう」(甲第3号証の段落【0005】),すなわち,装置が大がかりとなるという阻害要因が考えられるところ,この阻害要因を超えて,甲第3号証発明と甲第1号証発明を組み合わせることの動機づけが,見いだせない。
したがって,当業者が,甲第3号証発明において,甲第1号証発明の搬送装置側の計量手段の構成を採用することが,容易であるとはいえない。
また,甲第7号証及び甲第8号証に記載された構成を考慮しても,同様である。
そして,甲第3号証発明において,甲第1号証発明の「計量手段」を設けることはできないから,当業者が,甲第3号証発明において,相違点2に係る物品の長さを計測する計測手段の構成を採用し,さらに,相違点3に係る物品の長さに応じて計量値を選択する選択手段の構成を採用することも容易でない。

エ まとめ
以上のとおりであるから,本件発明4は,甲第3号証発明及び甲第1号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明5,本件発明6,本件発明7及び本件発明8は,本件発明4を特定するために必要と認める事項のすべてを含む発明であるから,甲第3号証発明及び甲第1号証発明に加えて,甲第4号証発明ないし甲第6号証発明を考慮しても,本件発明4についてした判断と同様に,いずれも,甲第3号証発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,とはいえない。
また,本件発明4等は,上記相違点に係る構成,すなわち,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置」と「前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置」とを備え,「前記搬送手段を備え前記計量手段を備えない搬送装置と,前記搬送手段と前記計量手段とを備えた搬送計量装置」を,「基台側計量装置上」に配置し,「前記搬送装置と前記搬送計量装置が備える搬送手段により搬送される物品の長さを計測する計測手段」を備え,また,「前記計測手段で計測された物品の長さに応じて,前記複数台の搬送計量装置,前記基台側計量装置から出力された計量値を選択する選択手段」を備える構成を採用したことにより,少なくとも,「各搬送計量装置の許容長さ以下の物品の重量は,それぞれの搬送計量装置の計量値が選択採用され,機長がもっとも長い搬送計量装置より長い物品については,前記複数の搬送計量装置を載置した基台側計量装置の計量値が選択採用される。即ち,各物品の重量は,それら物品の長さに対応する計量手段の計量値が採用される為,正しい計量値を得ることができる。」(段落【0019】)との効果を奏する本願発明1「の構成と比べて少ない計量手段で同等の計量能力を備えた計量コンベアを提供できると共に,計量手段の数が少ない分安価に製作することができる。」(段落【0020】)との効果を奏する。

第7 むすび
以上のとおりであるから,請求人が主張する理由及び証拠方法によっては,本件特許1ないし8は,いずれも,特許法第29条第2項の規定に違反する特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって,本件特許1ないし8は,いずれも,特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものとすることはできない。
また,本件審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担とする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-05 
結審通知日 2015-01-08 
審決日 2015-01-21 
出願番号 特願2009-18630(P2009-18630)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三笠 雄司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 樋口 信宏
武田 知晋
登録日 2013-06-14 
登録番号 特許第5287300号(P5287300)
発明の名称 計量コンベア  
復代理人 鈴木 康裕  
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所  
復代理人 宮崎 恭  
代理人 大橋 公治  
復代理人 七條 耕司  
復代理人 小橋 立昌  

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