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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B60H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60H
管理番号 1298112
審判番号 不服2013-24253  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-09 
確定日 2015-03-05 
事件の表示 特願2012-104177「空気調和機を取り付けるキャビンの構造」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日出願公開、特開2012-148777〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年9月4日に出願した特願2000-267343号の一部を、以下(1)ないし(3)のとおり順次分割して新たな特許出願としたものである。
(1)特願2000-267343号の一部を平成20年3月17日に新たな特許出願である特願2008-68349号とした。
(2)特願2008-68349号の一部を平成22年9月24日に新たな特許出願である特願2010-214582号とした。
(3)特願2010-214582号の一部を平成24年4月27日に新たな特許出願である特願2012-104177号(本願)とした。
そして、平成25年9月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成25年12月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項1)
「走行機体の運転部を覆うキャビン(12)に空気調和機(30)を配置する構成において、該空気調和機(30)の後端部を、該キャビン(12)の後支柱(14・14)より後方に配置させるように、該後支柱(14・14)の上部間に梁(32)を架設し、該梁(32)の中途部上からブラケット(33)を後方に突設し、前記ブラケット(33)を介して、該梁(32)上に該空気調和機(30)を載置固定し、該キャビン(12)の天井の後部側に、室内からの空気の取入口(44)を形成し、該空気の取入口(44)にはフィルタ(45)を設け、
前記空気の取入口(44)は、空気調和機(30)に設けた空気取入口に連通し、
前記キャビン(12)の外側に配置した空気調和機(30)のカバー(34)には、外気を導入するための開口部(34b)を設け、
前記空気調和機(30)の吸入部には、前記空気調和機(30)のカバー(34)の開口部(34b)からの外気導入と、前記空気の取入口(44)からの室内空気の循環を切り替えるための切替装置を設けたことを特徴とする空気調和機を取り付けるキャビンの構造。」

(補正後の請求項1)
「走行機体の運転部を、上面のルーフ(31)と、前面のフロントガラスと、側面のドアと、後面の後面ガラス(35)とによって被覆するキャビン(12)に、空気調和機(30)を配置する構成において、
該空気調和機(30)の後端部を、該キャビン(12)の後支柱(14・14)より後方に配置させるように、該後支柱(14・14)の上部間に梁(32)を架設し、該梁(32)の中途部上からブラケット(33)を後方に突設し、前記ブラケット(33)を介して、該梁(32)上に該空気調和機(30)を載置固定し、
前記キャビン(12)のルーフ(31)を該後支柱(14・14)よりも後方へ、後端が後輪(3)の後端よりも前方となる位置まで延出し、該延出部分の下方に空気調和機(30)を収納し、
該キャビン(12)から突出したルーフ(31)の下部には、該空気調和機(30)を被覆する下部カバー(34)を設け、
前記梁(32)と、キャビン(12)の後面ガラス(35)の上端との間には、該後面ガラス(35)を前後に回動可能するために、上端を枢支するヒンジ(36)が配置され、
該下部カバー(34)の前端には、ヒンジ(36)との干渉を避けるための回避凹部(34a)を形成した
ことを特徴とする空気調和機を取り付けるキャビンの構造。」

上記補正は、補正前の請求項1から、
「該キャビン(12)の天井の後部側に、室内からの空気の取入口(44)を形成し、該空気の取入口(44)にはフィルタ(45)を設け、
前記空気の取入口(44)は、空気調和機(30)に設けた空気取入口に連通し、
前記キャビン(12)の外側に配置した空気調和機(30)のカバー(34)には、外気を導入するための開口部(34b)を設け、
前記空気調和機(30)の吸入部には、前記空気調和機(30)のカバー(34)の開口部(34b)からの外気導入と、前記空気の取入口(44)からの室内空気の循環を切り替えるための切替装置を設けた」
との発明特定事項を削除するとともに、他の発明特定事項を付加するものである。そして、少なくとも、上記発明特定事項を削除する補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことが明らかである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年6月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(第2[理由](補正前の請求項1)参照。)。

1.引用文献
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-170854号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。

(1a)「【0025】前記運転キャビン10は、図8?図10に示す如く構成してある。すなわち、アルミ金属材で成る左右一対の前ピラー11a、左右一対の後ピラー11b、上前横フレーム11c、上後横フレーム11d、・・・・・・のそれぞれによってキャビンフレーム11を構成し、このキャビンフレーム11と、前側壁12と、左右一対のサイドドア13,13と、後側壁14と、天板15と、板金製の底板16と、左右一対の後輪フェンダー17,17とによって運転キャビン10を構成してある。
【0026】図7に示すように、前側壁12は、透明の硝子板部12aと、板金部12bと、板金部12bに連結している鉄パイプ製ピラー部12cとによって形成してある。」

(1b)「【0028】後側壁14は、透明のガラス板で成り、上端側に備える左右一対のヒンジ14aによって上後横フレーム11dにキャビン横向きの軸芯まわりで回動自在に連結して、この軸芯まわりで上下に揺動操作することによって開閉できるようにキャビンフレーム11に支持させるように構成してある。」

(1c)「【0031】図3?図5に示すように、空調ユニット30は、左右一対の吸込口33,33を前端側に備え、後端側に一つの吹出口34を備える機器ケース35と、この機器ケース35の内部の前端側に位置する左右一対の回転ファン36,36と、各回転ファン36,36を出力軸に一体回転自在に取り付けてある電動ファンモータ37と、機器ケース内の回転ファン36よりも後側に位置する前記エバポレータ31と、機器ケース内のエバポレータ31よりも後側に位置する前記暖房用熱交換器32とで成り、空調ユニット30のうちの吹出口34を除く大部分をユニットケース40によって覆う状態で、かつ、吹出口34が運転キャビン10の内部の計器パネル28の背後に位置する状態で、前記前側壁12の前記鉄板部12bに備えてあるユニット取付け孔12dなどを有する運転キャビン10の空調ユニット支持部10aに取り付けてある。前記吹出口34に案内ダクト29の空気取入れ側を連通させるとともに、この案内ダクト29の空気送出し側には、前記計器パネル28の両横側に位置する第1キャビン内吹出口29aと、前記底板16の前端付近に位置する左右一対の第2キャビン内吹出口29bとを備えてある。」

(1d)「【0033】前記空調ユニット支持部10aは、前記鉄板部12bの一部分をキャビン内側に向かうように折曲げることによって作成してあるユニット支持部12eと、鉄板部12bからエンジンボンネット4の内部のエンジン3の上方に延出させるとともに鉄板部12bに片持ち支持されるように鉄板部12bにのみ連結してあるユニット支持部材41と、前記ユニット取付け孔12dとによって構成してある。ユニットケース40は、前端側がエンジンボンネット4の内部で後端側が前記ユニット取付け孔12dから運転キャビン10の内部に入り込む配置で前記ユニット支持部材41とユニット支持部12eとにわたって取り付けるように、かつ、空調ユニット30をユニット支持部材41及びユニット支持部12eに締め付け固定する取付けボルトによって空調ユニット30との共締めでユニット支持部材41及びユニット支持部12eに締め付け固定するように構成してある。」

(1e)「【0034】ユニットケース40の運転キャビン内に位置する後端部分の上側に吸気ケース42を付設してある。この吸気ケース42に、運転キャビン10の内部に上向きに開口する内気取入れ口42aと、前記板金部12bの前記ユニット取付け孔12dより上側に位置する貫通孔12fを通して運転キャビン10の外側に車体前向きに開口する外気取入れ口42bとを備えてある。前記内気取入れ口42a及び外気取入れ口42bを空調ユニット30の左右の吸込み口33,33に連通させる吸気路43をユニットケース40によってエンジンボンネット3の内部に形成してある。すなわち、空調ユニット30が、回転ファン36の吸引作用により、運転キャビン内の空気を内気取入れ口42aから、運転キャビン外の空気を外気取入れ口42bからそれぞれユニットケース40の内部に取り入れ、吸気路43を通して各吸込口33に導入するように構成してある。これにより、空調ユニット30は、運転キャビン10の内部と外部のいずれの空気もエンジンボンネット4の内部空気が混入しないようにそのボンネット内気と隔絶させて吸入する。
【0035】前記吸気ケース42の内部に、エアフィルター44と、このエアフィルター44の上側に位置する吸気切換え体45とを設けるとともに、吸気ケース42の図6に示す如き長孔42cから上向きに突出するように形成して吸気切換え体45に備えてある操作部45aを手動操作によって前記長孔42cに沿わせて前後方向に摺動操作すると、吸気切換え体45が吸気ケース42の内部を前後に移動し、内気取入れ口42aを開き状態で外気取入れ口42bを閉じ状態にしてキャビン内気のみを空調ユニット30に取り入れさせる第1空調位置と、内気取入れ口42aも外気取入れ口42bも開き状態にしてキャビン内とキャビン外の両方の空気を空調ユニット30に取り入れさせる第2空調位置と、外気取入れ口42bを開き状態で内気取入れ口42aを閉じ状態にしてキャビン外気のみを空調ユニット30に取り入れさせる第3空調位置とに切り換わるように構成してある。
【0036】前記エアフィルター44は、前記内気取入れ口42aと外気取入れ口42bのいずれからの空気にも濾か作用するものであり、フィルター支持具47に支持させてある。」

(1f)「【0039】図14は、空調ユニット30の配置面でさらに異なる実施形態を備えるものを示す。すなわち、運転キャビン10の構造、運転キャビン10をクッションゴムを介して車体に支持させるキャビン取付構造、空調ユニット30の構造は、上記実施形態に示したものと同様に構成してある。空調ユニット30は、吸込口33が運転キャビン10の後外側で吹出口34が運転キャビン10の内側に位置する状態に配置し、運転キャビン10の後側壁14と、この後側壁14から車体後方側に向けて延出するユニット支持部材46とにわたって取り付けてある。」

(1g)図3ないし図5、図7ないし図9、図14の記載は次のとおりである。


上記記載(1f)及び図14には、運転キャビン10に空調ユニット30を取り付けた構造が記載されており、同構造において、空調ユニット30の後端部を運転キャビン10の後ピラー11bより後方に配置させていることは明らかである。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「運転キャビン10に空調ユニット30を取り付けた構造において、
空調ユニット30は、空調ユニット30の後端部を運転キャビン10の後ピラー11bより後方に配置させるように、運転キャビン10の後側壁14と、この後側壁14から車体後方側に向けて延出するユニット支持部材46とにわたって取り付けてある、運転キャビン10に空調ユニット30を取り付けた構造。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-72850号(実開昭62-184012号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2a)「外気aを外気導入口23及び外気フィルタ27を介して導入する外気導入経路Aと、内気bを内気導入口25を介して導入する内気導入経路Bとを有するキャビン装置のエアーコンディショナにおいて、
前記内気導入経路Bは外気導入口23と外気フィルタ27との間で外気導入経路Aに接続されており、この接続位置に外気導入口23を閉鎖して両経路A,Bを連通させる状態と外気導入口23を開放して両経路A,Bの接続を遮断する状態とに切換え可能な切換弁32が設けられていることを特徴とするキャビン装置のエアーコンディショナ。」(1頁5行-17行)

(2b)「天井部14はアウタルーフ17とインナルーフ18との間に、冷却機19(又は熱交換器)及びブロア20等のエアーコンディショナ21を構成するのに必要な各種機器が配置されており、多数の空気導入口及び吐出口が形成されている。
天井部14の後端はリヤガラス16より後方へ突出していて、その下面には外気導入口23が形成され、この外気導入口23には目の粗い外部フィルタ24が設けられている。また、天井部14のキャビン内後部には内気導入口25が形成されており、この内気導入口25に内気フィルタ26が設けられている。
前記外気導入口23の上方には目の細い外気フィルタ27が配置され、その後方の共通通路30にブロア20が配置され、これらによって外気導入経路Aが形成されている。
前記内気導入口25の上方の通路28は後方へ延設されて、外気導入口23と外気フィルタ27との間の通路29に接続されており、内気導入口25、通路28,29、外気フィルタ27及び共通通路30によって内気導入経路Bが形成されており、通路29、外気フィルタ27及び共通通路30は内外導入経路A,B共通となっている。
内外導入経路A,Bの接続位置である通路29には切換弁32が設けられている。この切換弁32は弁体33を枢軸34で枢支し、レバー35で回動操作可能にしたものであり、弁体33を第1図実線位置にすることにより、通路28,29の接続は遮断され、ブロア20の吸引力は外気導入口23へ及び、外気aを外気導入口23、通路29、外気フィルタ27及び共通通路30に通す外気導入状態にセットされ、弁体33を第1図2点鎖線位置にすることにより、弁体33は外気導入口23を閉鎖して通路28,29を連通し、ブロア20の吸引力を内気導入口25に及ぼし、内気bを内気導入口25、通路28,29、外気フィルタ27及び共通通路30に通す内気導入状態にセットする。」(5頁10行-7頁4行)

(2c)第1図及び第2図の記載は次のとおりである。


2.対比
引用発明の「運転キャビン10」は、走行機体の運転部を覆うことが明らかであるから、本願発明の「走行機体の運転部を覆うキャビン(12)」に相当し、引用発明の「空調ユニット30」、「運転キャビン10の後ピラー11b」は、それぞれ、本願発明の「空気調和機(30)」、「キャビン(12)の後支柱(14・14)」に相当する。
引用発明の「運転キャビン10に空調ユニット30を取り付けた構造」は、本願発明の「走行機体の運転部を覆うキャビン(12)に空気調和機(30)を配置する構成」に相当するとともに、「空気調和機を取り付けるキャビンの構造」に相当する。
引用発明の「空調ユニット30」を「取り付けてある」ことは、本願発明の「空気調和機(30)を」「固定し」ていることに相当する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「走行機体の運転部を覆うキャビン(12)に空気調和機(30)を配置する構成において、該空気調和機(30)の後端部を、該キャビン(12)の後支柱(14・14)より後方に配置させるように、該空気調和機(30)を固定した、空気調和機を取り付けるキャビンの構造。」

[相違点1]
空気調和機を固定する構造について、本願発明は、「後支柱(14・14)の上部間に梁(32)を架設し、該梁(32)の中途部上からブラケット(33)を後方に突設し、前記ブラケット(33)を介して、該梁(32)上に該空気調和機(30)を載置固定し」ているのに対し、引用発明は、「運転キャビン10の後側壁14と、この後側壁14から車体後方側に向けて延出するユニット支持部材46とにわたって取り付けてある」点。

[相違点2]
本願発明は、
「キャビン(12)の天井の後部側に、室内からの空気の取入口(44)を形成し、該空気の取入口(44)にはフィルタ(45)を設け、
前記空気の取入口(44)は、空気調和機(30)に設けた空気取入口に連通し、
前記キャビン(12)の外側に配置した空気調和機(30)のカバー(34)には、外気を導入するための開口部(34b)を設け、
前記空気調和機(30)の吸入部には、前記空気調和機(30)のカバー(34)の開口部(34b)からの外気導入と、前記空気の取入口(44)からの室内空気の循環を切り替えるための切替装置を設けた」
ことが特定されているのに対し、引用発明は、このような特定がなされていない点。

3.判断
(1)相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-208247号公報には、「空調装置12はメインフレーム7を構成する後側の枠6から前側へ向けて延設されたステー24によりその後端が支持され・・・したがって、空調装置12は後部がステー24により後部枠6に支持され、左右は側部ステー25、25を介して後側天井材19の上面に止着される。」(2頁右下欄1行-8行)と記載され、空気調和機を梁(枠6)とブラケット(ステー24)により固定することが示されている。
また、引用文献1にも、前記(1d)、【図7】に記載されるとおり、空気調和機を梁(ユニット支持部12e)とブラケット(ユニット支持部材41)により固定することが示されている。
以上のとおり、空気調和機を梁とブラケットにより固定する手段は周知技術である。
ところで、引用発明は、「空調ユニット30は・・・運転キャビン10の後側壁14と、この後側壁14から車体後方側に向けて延出するユニット支持部材46とにわたって取り付けてある」というものであるが、引用文献1には、後側壁14が、透明のガラス板で成り、上下に揺動操作することによって開閉できるものであることも記載されており(前記(1b))、このような後側壁14自体に空調ユニット30ないしユニット支持部材46を取り付けることは、強度や開閉操作の点から不都合であると当業者には理解される。
一方、引用文献1には、後支柱(後ピラー11b)の上部間に梁(上後横フレーム11d)を架設した構成も記載されており(前記(1a)、【図9】)、このような梁に、空調ユニット30ないしユニット支持部材46を取り付ければ、強度や後側壁14の開閉操作の点で好都合であることも、当業者には容易に理解される。
してみれば、引用発明において上記周知技術を採用することにより、後支柱(後ピラー11b)の上部間に梁を架設し、該梁の中途部上からブラケット(ユニット支持部材46)を後方に突設すること、その結果として、ブラケット(ユニット支持部材46)を介して、梁上に空気調和機を載置固定したものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
引用文献2には、キャビン装置のエアーコンディショナにおいて、
「キャビンの天井の後部側に、室内からの空気の取入口(内気導入口25)を形成し、該空気の取入口(内気導入口25)にはフィルタ(内気フィルタ26)を設け、
前記空気の取入口(内気導入口25)は、空気調和機(エアーコンディショナ21)に設けた空気取入口に連通し、
前記キャビンの外側の天井部14の後端の下面には、外気を導入するための開口部(外気導入口23)を設け、
前記空気調和機(エアーコンディショナ21)の吸入部(通路29)には、前記空気調和機のカバーの開口部(外気導入口23)からの外気導入と、前記空気の取入口(内気導入口25)からの室内空気の循環を切り替えるための切替装置(切換弁32)を設けた」
との技術事項が記載されている(前記(2b)、(2c)参照。)。
また、引用文献1には、前記(1e)及び【図3】のとおり、キャビン内気のみを空調ユニット30に取り入れさせる第1空調位置と、キャビン外気のみを空調ユニット30に取り入れさせる第3空調位置とに切り換えることが記載されているから、引用発明においても、同様に、キャビン内気とキャビン外気を切り替えて空調ユニット30に取り入れようとすることは、自然な着想であるといえる。
してみれば、引用発明において、キャビン内気とキャビン外気を切り替えるべく、上記引用文献2の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
上記適用にあたり、引用発明に「空気調和機のカバー」を設け、引用文献2の「天井部14の後端の下面」に設けた「外気導入口23」を、上記「空気調和機のカバー」に設けた「開口部」とする程度のことは、当業者が適宜になし得た設計事項にすぎない。
よって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献2の技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

(3)まとめ
本願発明が、引用発明、引用文献2の技術事項及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2の技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-17 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-20 
出願番号 特願2012-104177(P2012-104177)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (B60H)
P 1 8・ 121- Z (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 紀本 孝
森本 康正
発明の名称 空気調和機を取り付けるキャビンの構造  
代理人 矢野 寿一郎  

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