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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1298546 |
審判番号 | 不服2013-21139 |
総通号数 | 185 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-30 |
確定日 | 2015-03-12 |
事件の表示 | 特願2010-288796「入力装置および入力装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日出願公開、特開2011- 60335〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成20年12月22日に出願した特願2008-326281号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成22年12月24日に新たな特許出願としたものであって、平成25年1月25日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知がなされ、同年4月1日付けで手続補正がなされたが、同年7月24日付けで同年4月1日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がなされ、平成26年10月24日付けて当審において拒絶理由が通知され、同年12月15日付けで手続補正がなされたものである。 そして、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年12月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 押圧による入力を受け付ける入力部と、 前記入力部に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記入力部を振動させる振動部と、 前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して押しボタンスイッチが押し下がった触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御する制御部と、 を備えることを特徴とする入力装置。」 2.引用例等 当審の拒絶の理由に引用された原出願の出願日前に頒布された、特開平10-293644号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a)「【請求項1】 情報表示機能を有する表示パネルと、この表示パネルの上方近傍に配置されていて、操作された位置を表すための一種類以上の位置成分信号を出力する透明または半透明のタッチパネルと、このタッチパネルからの位置成分信号に基づいて、当該タッチパネルの操作位置を検出してその操作位置を表す操作位置信号を出力する操作位置検出手段と、前記タッチパネルにおいてスイッチとして使用するスイッチ使用領域を設定するスイッチ使用領域設定手段と、このスイッチ使用領域設定手段で設定したスイッチ使用領域と、前記操作位置検出手段で検出した操作位置とを比較して、前者と後者が重なるときに一致検出信号を出力する一致検出手段と、前記タッチパネルが所定の押圧力以上で押圧されたことを検出して押圧検出信号を出力する押圧検出手段と、この押圧検出手段から与えられる押圧検出信号に応答して駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、この駆動信号発生手段から与えられる駆動信号に基づいて前記タッチパネルを機械的に駆動して当該タッチパネルの操作者に触感応答を与える駆動手段と、前記一致検出手段から一致検出信号および前記押圧検出手段から押圧検出信号が共に与えられたときにアンド信号を出力する論理積手段と、常時は前記操作位置検出手段から与えられる操作位置信号の通過を阻止しており、前記論理積手段からアンド信号が与えられたときに当該阻止を解除して前記操作位置信号を通過させて出力するゲート手段とを備えることを特徴とするタッチパネル付表示装置。」(【請求項1】の記載。当審注:下線は当審で付与した。) b)「【0031】表示パネル2には、タッチパネル4の各スイッチ使用領域4aの下部付近に、当該スイッチ使用領域4aの操作によって選択される内容を表示するようにするのが好ましく、そのようにすれば所望のスイッチ使用領域4aの選択・操作が容易になる。」(【0031】の記載。) c)「【0036】駆動信号発生回路18および駆動部10によってタッチパネル4を機械的に駆動してタッチパネル4の操作者に触感応答を与える態様としては、例えば、(1)タッチパネル4を振動させる、(2)タッチパネル4を一瞬(1ショット)だけ急に水平方向にスライドさせる、(3)タッチパネル4を急に水平方向にスライドさせ、押している間はこれを保持する、(4)タッチパネル4を一瞬(1ショット)だけ急に下げる、(5)タッチパネル4を急に下げ、押している間はそれを保持する、(6)タッチパネル4を一瞬(1ショット)だけ急に上げる、(7)タッチパネル4を急に上げ、押している間はそれを保持する、等が採り得る。これらの場合に駆動信号発生回路18から駆動部10に与える駆動信号DSの具体例は次のとおりである。即ち、上記(1)の場合は交流信号を与えれば良い。上記(2)、(4)および(6)の場合は、パルス信号を与えれば良い。上記(3)、(5)および(7)の場合は、直流信号を与えれば良い。 【0037】上記によって操作者に与えられる触感応答の具体例は次のとおりである。即ち、上記(1)の場合は、操作者の指等に振動が与えられる。上記(2)?(5)の場合は、タッチパネル4のスイッチ部を一定のストロークだけ押し込んだというストローク感と、同スイッチ部を急に操作したというクリック感の両方が操作者の指等に与えられる。上記(6)および(7)の場合は、タッチパネル4が突き上がって来る刺激によって、タッチパネル4を急に操作したというクリック感が操作者の指等に与えられる。 【0038】次に電気回路を図2を参照して説明すると、このタッチパネル付表示装置は、図6に示した従来例の回路の他に、上記押圧検出スイッチ20、論理積回路22およびゲート回路24を更に備えている。 【0039】押圧検出スイッチ20から出力される押圧検出信号SSは、前述した駆動信号発生回路18および論理積回路22に与えられる。 【0040】駆動信号発生回路18は、この押圧検出信号SSに応答して駆動信号DSを発生し、それを駆動部10に与える。これによって、駆動部10が電気的に駆動され、タッチパネル4が前述したように機械的に駆動される。」(【0036】?【0040】の記載。なお、丸数字を括弧付きの数字に置き換えた。) d)「【0047】また、駆動信号発生回路18は、押圧検出スイッチ20からの押圧検出信号SSに基づいて駆動信号DSを出力して駆動部10を電気的に駆動するので、タッチパネル4をなぞり操作したり誤って触れただけでは、タッチパネル4の操作者に触感応答は与えられない。タッチパネル4を所定の押圧力以上で押圧操作すると初めて、押圧検出信号SSが出力され、駆動信号DSによって駆動部10が電気的に駆動され、この駆動部10によってタッチパネル4が機械的に駆動されて触感応答が与えられ、これによって明確な操作感を得ることができる。従って、操作者に無用の誤解を与える恐れがない。このとき与えられる触感応答、即ち操作感の具体的な内容は、前述のとおりである。」(【0047】の記載。) e)「【0062】 【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。 【0063】請求項1記載の発明によれば、タッチパネルをなぞる等によって操作しただけでは操作位置信号はゲート手段に阻止されていて外部に出力されず、タッチパネルを所定の押圧力以上で押圧操作して初めてゲート手段から操作位置信号が外部に出力されるので、単にタッチパネルに誤って触れたり、なぞり操作を行うだけでは、ゲート手段から操作位置信号は出力されない。従って、なぞり操作や誤って触れることによって誤操作が起こるのを防止することができる。 【0064】また、押圧検出手段から押圧検出信号が出力されないと駆動手段は電気的に駆動されないので、タッチパネルをなぞり操作したり誤って触れただけでは、触感応答は与えられない。タッチパネルを所定の押圧力以上で押圧操作すると初めて、押圧検出信号が出力されて触感応答が与えられ、これによって明確な操作感を得ることができる。従って、操作者に無用の誤解を与える恐れがない。」(【0062】?【0064】の記載。) 以上の記載によれば、以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が開示されていると認められる。 「情報表示機能を有する表示パネルと、 この表示パネルの上方近傍に配置されていて、操作された位置を表すための一種類以上の位置成分信号を出力する透明または半透明のタッチパネルと、 このタッチパネルからの位置成分信号に基づいて、当該タッチパネルの操作位置を検出してその操作位置を表す操作位置信号を出力する操作位置検出手段と、 前記タッチパネルにおいてスイッチとして使用するスイッチ使用領域を設定するスイッチ使用領域設定手段と、 このスイッチ使用領域設定手段で設定したスイッチ使用領域と、前記操作位置検出手段で検出した操作位置とを比較して、前者と後者が重なるときに一致検出信号を出力する一致検出手段と、 前記タッチパネルが所定の押圧力以上で押圧されたことを検出して押圧検出信号を出力する押圧検出手段と、 この押圧検出手段から与えられる押圧検出信号に応答して駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、 この駆動信号発生手段から与えられる駆動信号に基づいて前記タッチパネルを機械的に駆動して当該タッチパネルの操作者に触感応答を与える駆動手段と、 前記一致検出手段から一致検出信号および前記押圧検出手段から押圧検出信号が共に与えられたときにアンド信号を出力する論理積手段と、 常時は前記操作位置検出手段から与えられる操作位置信号の通過を阻止しており、前記論理積手段からアンド信号が与えられたときに当該阻止を解除して前記操作位置信号を通過させて出力するゲート手段とを備え、 表示パネルには、タッチパネルの各スイッチ使用領域の下部付近に、当該スイッチ使用領域の操作によって選択される内容を表示し、 操作者に触感応答を与える態様としては、例えば、タッチパネルを振動させるものであり、 タッチパネルを所定の押圧力以上で押圧操作すると初めて、押圧検出信号が出力され、駆動信号によって駆動手段が電気的に駆動され、この駆動手段によってタッチパネルが機械的に駆動されて触感応答が与えられ、これによって明確な操作感を得ることができる ことを特徴とするタッチパネル付表示装置。」 3.対比 本願発明と引用例記載の発明とを対比する。 (1)本願発明の「押圧による入力を受け付ける入力部」について 本願の明細書に「タッチパネル12は、表示パネル11に対する押圧による入力を受け付ける入力部を構成するもの」(【0032】)と記載されるように、本願発明の「押圧による入力を受け付ける入力部」は「タッチパネル」を含んでいうものと解される。 したがって、引用例記載の発明の「表示パネルの上方近傍に配置されていて、操作された位置を表すための位置成分信号を出力する透明または半透明のタッチパネル」は、本願発明の「押圧による入力を受け付ける入力部」といい得るものである。 (2)本願発明の「前記入力部に対する押圧荷重を検出する荷重検出部」について 引用例記載の発明の「タッチパネルが所定の押圧力以上で押圧されたことを検出して押圧検出信号を出力する押圧検出手段」は、タッチパネルを押圧する押圧力の程度を示す検知信号を出力する前段部分と、当該検知信号の大きさが所定の押圧力以上の場合に押圧検出信号を出力する後段部分とからなっていると普通に想定される。 そして、引用例記載の発明の「押圧検出手段」の上記前段部分は、本願発明の「前記入力部に対する押圧荷重を検出する荷重検出部」といい得るものである。 (3)本願発明の「前記入力部を振動させる振動部」について 引用例記載の発明の「タッチパネルを機械的に駆動して当該タッチパネルの操作者に触感応答を与える駆動手段」は「触感応答を与える態様としては、例えば、タッチパネルを振動させる」ものであるから、引用例記載の発明の「駆動手段」は、本願発明の「前記入力部を振動させる振動部」といい得るものである。 (4)本願発明の「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して押しボタンスイッチが押し下がった触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御する制御部」について まず、引用例記載の発明の「タッチパネルが所定の押圧力以上で押圧されたことを検出して」出力される「押圧検出信号」は、「押圧検出信号が」「与えられたときにアンド信号を出力」し、「常時は」「操作位置信号の通過を阻止しており、」「アンド信号が与えられたときに当該阻止を解除して前記操作位置信号を通過させて出力する」ようになっていて、「押圧検出信号」が出力されなければ、「操作位置信号」は出力されないようにされている。 ここで、引用例記載の発明の「操作位置信号を通過させて出力する」ことは、タッチパネルが操作されたことを表す信号を出力することであり、「入力部への入力を受け付ける」といい得ることであるから、引用例記載の発明の「押圧検出信号」は、「入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に」出力される信号ともいい得るものである。 したがって、引用例記載の発明が、「タッチパネルを所定の押圧力以上で押圧操作すると初めて、押圧検出信号が出力され、」「押圧検出信号に応答して駆動信号」が発生され、「駆動信号によって駆動手段が電気的に駆動され、この駆動手段によってタッチパネルが機械的に駆動されて触感応答が与えられ、これによって明確な操作感を得る」ものであることは、本願発明の「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して押しボタンスイッチが押し下がった触感を呈示する」ことと、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して触感を呈示する」点で一致するといえる。 そして、「押圧検出信号」は、引用例記載の発明の「押圧力検出手段」が有していると想定される、上記(2)に記載した「押圧検出手段」の後段部分より出力され、「押圧検出信号」に応答して発生される「駆動信号」は、引用例記載の発明の「駆動信号発生手段」により発生されるものであるから、引用例記載の発明の上記(2)に記載した「押圧検出手段」の後段部分と「駆動信号発生手段」を合わせたものは、本願発明の「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して押しボタンスイッチが押し下がった触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御する制御部」と、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御する制御部」といい得る点で一致するといえる。 (5)本願発明の「入力装置」について 引用例記載の発明の「タッチパネル付き表示装置」は、その機能から見て、本願発明の「入力装置」と同様に「入力装置」ともいい得るものであることは明らかである。 したがって、両者は、 「押圧による入力を受け付ける入力部と、 前記入力部に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記入力部を振動させる振動部と、 前記荷重検出部により検出される押圧荷重が、前記入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、前記入力部を押圧している押圧物に対して触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御する制御部と、 を備えることを特徴とする入力装置。」 である点で一致するものであり、次の点で相違する。 〈相違点〉 「入力部を押圧している押圧物に対して触感を呈示するように前記振動部の駆動を制御する制御部」が、本願発明は、「押しボタンスイッチが押し下がった触感」を呈示するように振動部の駆動を制御するのに対し、引用例記載の発明は、「押しボタンスイッチが押し下がった触感」を呈示するように振動部の駆動を制御するとはされていない点。 4.当審の判断 〈相違点についての判断〉 (ア)「押しボタンスイッチが押し下がった触感」の解釈について 明細書には、「押しボタンスイッチが押し下がった触感」との直接的表現記載はないが、その技術上の意義を示すものと解される記載として、以下の記載がある。 [明細書の記載] 「【0010】 したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、操作者が押圧式の入力部を操作した際に、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示できる入力装置および入力装置の制御方法を提供することにある。」 「【0013】 本発明によれば、入力部への押圧荷重が、入力を受け付ける所定の基準を満たした際に、入力部を振動させるので、操作者に対して押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示することが可能となる。」 「【0029】 以上のことから、タッチパネルのようなプレート状の押圧式の入力部を押圧する際、図1に示すA点からB点までの荷重では、入力部を振動させずに、操作者に自発的に押下させて圧覚を刺激し、その状態で、B点において、例えば、周波数170Hzで入力部を約1周期分振動させて触覚を刺激すれば、操作者に対して図4の測定結果に係る押しボタンスイッチを操作した場合と同様のクリック触感を呈示することが可能となる。 【0030】 本発明に係る入力装置は、以上の原理に基づいて、プレート状の押圧式の入力部を押圧する場合に、押圧荷重が入力部への入力を受け付ける所定の基準を満たすまでは圧覚を刺激し、所定の基準を満たした際に、入力部を所定の駆動信号、すなわち一定周波数、駆動時間である周期(波長)、波形、振幅、で振動させて触覚を刺激する。これにより、操作者に対して、押しボタンスイッチを押下した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示するものである。」 「【0037】 図7は、本実施の形態に係る入力装置の動作を示すフローチャートである。制御部15は、タッチパネル12への入力を監視するとともに、荷重検出部13で検出される荷重を監視する。そして、タッチパネル12への入力が表示パネル11に表示された入力用オブジェクトに対する入力で、かつ、荷重検出部13により検出される押圧荷重が、タッチパネル12の押圧によって増加しながら当該入力を受け付ける所定の基準を満たしたのを検知すると(ステップS81)、その時点のタッチパネル12への入力を受け付けるとともに、振動部14を所定の駆動信号で駆動して、タッチパネル12を予め設定した所定の振動パターンで振動させる(ステップS82)。これにより、タッチパネル12を押圧している指もしくはスタイラスペンの押圧物を介して、操作者にクリック触感を呈示して、入力操作が完了したことを認識させる。なお、荷重検出部13は、例えば、4つの歪みゲージセンサ31の出力の平均値から荷重を検出する。また、振動部14は、例えば、2つの圧電振動子32を同相で駆動する。 【0038】 ここで、ステップS81で検知する所定の基準は、例えば、図1に示したB点の荷重である。したがって、この所定の基準は、表現したい押しボタンスイッチの押下時の荷重特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、携帯端末に適用する場合においては、年配のユーザは重めに、頻繁にメールをするユーザは軽めに設定できるように、ユーザが自由に設定できるようにする。また、ステップS82で振動部14を駆動する所定の駆動信号、す なわち触覚を刺激する一定周波数、周期(波長)、波形、振幅は、呈示するクリック触感に応じて適宜設定すればよい。例えば、携帯端末に使用されているメタルドームスイッチに代表されるクリック触感を呈示する場合は、後述するように、タッチパネル12に所定の荷重が加わった時点で、例えば、170Hzの一定周波数のSin波からなる1周期分の駆動信号により振動部14を駆動して、タッチパネル12を、所定の荷重が加わった状態で、約15μm振動させる。これにより、操作者にリアルなクリック触感を呈示することができる。 【0039】 このように、本実施の形態に係る入力装置は、荷重検出部13で検出されるタッチパネル12に加わる荷重が、タッチパネル12への入力を受け付ける所定の基準を満たすまでは圧覚を刺激するようにし、所定の基準を満たすと、振動部14を所定の駆動信号で駆動してタッチパネル12を所定の振動パターンで振動させて触覚を刺激する。これにより、操作者に対してクリック触感を呈示して、当該入力操作が完了したことを認識させる。したがって、操作者は、タッチパネル12を、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を得ながら、入力操作を行うことができるので、違和感を覚えることがない。また、タッチパネル12を「押した」と言う意識との連動で入力操作を行うことができるので、単なる押圧による入力ミスも防止することができる。」 「【0043】 すなわち、制御部46は、位置検出部42により入力用オブジェクトの有効押圧領域の入力位置が検出された場合は、第1実施の形態に係る入力装置と同様に、タッチパネル41への荷重が増加しながら所定の基準を満たした時点で、例えば、170Hzの一定周波数のSin波からなる1周期分の駆動信号により振動部45を駆動して、タッチパネル41を、所定の荷重が加わった状態で、約15μm振動させる。これにより、操作者に対しクリック触感を呈示して、その入力操作が完了したことを認識させる。また、制御部46は、タッチパネル41で検出された入力を受け付けることにより、表示パネル43に対して入力に応じた表示を行う。 【0044】 したがって、本実施の形態に係る入力装置によれば、第1実施の形態の場合と同様に、操作者は、タッチパネル41を、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を得ながら、入力操作を行うことができるので、違和感を覚えることがない。また、タッチパネル41を「押した」と言う意識との連動で入力操作が行われるので、単なる押圧による入力ミスも防止することができる。」 「【0053】 以上の評価結果例から、図5および図6に示した構成の入力装置を携帯端末に適用する場合は、タッチパネル12に所定の基準を満たす荷重が加わった時点で、例えば、周波数140Hz以上、好適には170Hzの一定周波数で、5/4周期以下、好適には1周期のSin波の駆動信号により、タッチパネル12を約15μm以上振動させれば、操作者にリアルなクリック触感を呈示可能であることが確認できた。なお、図8および図9に示した構成の入力装置においても、同様の結果が得られることが確認できた。」 「【0080】 また、制御部は、荷重検出部により検出される押圧荷重が、所定の基準を満たした際に、振動部を駆動して、入力部(タッチパネル) を予め設定した所定の振動パターンで振動させるが、前記所定の振動パターンは、押圧時の場合、図4の実線が示す振動パターンであってもよい。また、前記所定の振動パターンは、リリース時の場合、図4の一点鎖線が示す振動パターンであってもよい。このように入力部を振動させることによって、操作者に対して、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のクリック触感(振動刺激)を呈示することが可能となる。」 本願の明細書の上記記載からすれば、本願発明の「押しボタンスイッチが押し下がった触感」とは「押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感」を含んでいうものと解される。 (イ)容易想到性の判断について 上記のとおり、本願発明の「制御部」は、入力部を押圧している押圧物に対して「押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感」を呈示するように振動部の駆動を制御するものを含んでいうものと解し得るものであるから、その場合について検討する。 〈周知技術〉 一般に、表示部に重ねたタッチパネル(タッチセンサ)を有する入力装置において、表示部に操作者が選択する「押しボタンスイッチ」を表示することは周知慣用にすぎない。 また、かかる入力装置において、操作者が表示部に表示されたボタンを操作した際、操作者が(機械式)ボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動させることも普通のことにすぎない。 これには、例えば、当審の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された原出願の出願日前に頒布された引用文献3?6である下記周知例が参照される。 記(周知例) ・引用文献3:特開2004-70920号公報 {【0055】,【0059】,【0065】、図14,図18(S39:ボタンプッシュ時のクリック振動を発生する)等} ・引用文献4:特開2005-149197号公報 {【0002】,【0003】,【0050】,【0051】、図5等} ・引用文献5:特表2008-516348号公報 {請求項1,2,31,【0055】?【0061】、図10,図11等} ・引用文献6:特開2007-94993号公報 {【0002】,【0003】等} 〈容易想到性の判断〉 上記周知技術からすれば、引用例に接した当業者が、引用例記載の発明の、表示パネル上の「スイッチ使用領域の操作によって選択される内容」の表示を、押しボタンスイッチの表示とする動機付けは十分あるといえ、その際、引用例記載の発明の「触感を呈示するように振動部の駆動を制御する制御部」を、「操作者が押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示するように」振動部の駆動を制御するものとすることは、ごく自然であり、上記周知技術からみても当業者が容易に想到し得ることである。 そして、そのように制御するすることは、「押しボタンスイッチが押し下がった触感」を呈示するように振動部の駆動を制御することを意味している。 すなわち、引用例記載の発明の制御部を「押しボタンスイッチが押し下がった触感」を呈示するように振動部の駆動を制御するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (ウ)まとめ よって、引用例記載の発明を出発点とし、本願発明に至ることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例記載の発明に対する上記周知技術の採用に伴って奏するであろうと当業者が予想する効果に比して、格別顕著なものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶するべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-01-09 |
結審通知日 | 2015-01-13 |
審決日 | 2015-01-26 |
出願番号 | 特願2010-288796(P2010-288796) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 慎一 |
特許庁審判長 |
乾 雅浩 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 山田 正文 |
発明の名称 | 入力装置および入力装置の制御方法 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 大倉 昭人 |