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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F03D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F03D
管理番号 1298562
審判番号 不服2014-5276  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-20 
確定日 2015-03-12 
事件の表示 特願2013- 54465「接続発電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月29日出願公開、特開2014-181555〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年3月17日を出願日とする出願であって、平成25年6月12日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年7月9日)、これに対し、平成25年8月31日付で意見書が、平成25年9月1日付で手続補正書が提出されたが、平成25年11月27日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年12月24日)、これに対し、平成26年3月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


2.平成26年3月20日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年3月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
モーターの回転軸に、前記回転軸の直径より大きい直径を有する歯車を取り付け、前記歯車に発電機と同じ回転軸で連結されている前記歯車の直径の2分の1以下の発電機駆動用歯車を、前記歯車に2個以上噛み合わせて設置することで発電機を2台以上駆動させる機能と制御手段と蓄電手段と送電手段を備え、モーターの1回転で設置した2台以上の各発電機を2回転以上回転させることを特徴とする歯車式発電装置。
【請求項2】
歯車をはずみ車式歯車としたことを特徴とする請求項1記載の歯車式発電装置。
【請求項3】
発電機駆動用歯車の両側に回転軸を伸ばし、発電機駆動用歯車の両側で発電機を駆動させることを特徴とする請求項1、2記載の歯車式発電装置。
【請求項4】
自動車、船舶、航空機などの乗り物に請求項1記載の発電機を2台以上駆動させる機能を装備、又は請求項1記載の歯車式発電装置を搭載したことを特徴とする請求項1から3記載の歯車式発電装置。
【請求項5】
請求項1から4記載の歯車と発電機駆動用歯車による歯車同士の動力伝達方法に代わり、プーリー又はベルトとローラーを用いた面接触による動力伝達方法としたことを特徴とするプーリー式発電装置。
【請求項6】
請求項1から5記載のモーターの回転軸に取り付けた歯車、又はプーリーと、もう一方の歯車、又はプーリーをチェーン、又はベルトで連結し、前記チェーン、又はベルト部に発電機駆動用歯車、又は発電機駆動用ローラーを2個以上設置したことを特徴とする請求項1から5記載の歯車式発電装置及びプーリー式発電装置。

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
駆動モーターと、この駆動モーターの駆動力で回転される2台以上の発電機とから成り、駆動モーターの回転軸には、回転軸の直径より大きい直径を有するはずみ車式とした駆動歯車あるいは駆動プーリーを取り付け、発電機は、駆動歯車に伝達されてあるいは駆動プーリーに伝達されて回転されるよう、駆動歯車あるいは駆動プーリーの直径の2分の1以下の直径を有する発電機駆動用歯車あるいは発電機駆動用ローラーが取り付けられていて、駆動モーターの1回転で発電機は2回転以上回転されるようにすると共に、発電機の少なくとも1つはその発電機によって発電された電力を前記駆動モーターの電源として供給するようにしてあって、前記駆動歯車と発電機駆動用歯車とは歯車同士で噛み合っているか、チェーンによって伝達されるかしてあり、また駆動プーリーと発電機駆動用ローラーとは面接触しているか、ベルトによって伝達されるかしてあることを特徴とする継続発電装置。
【請求項2】
発電機駆動用歯車あるいは発電機駆動用ローラーの両側に回転軸を伸ばし、発電機駆動用歯車あるいは発電機駆動用ローラーの両側で発電機を駆動させるようにしてある請求項1に記載の継続発電装置。
【請求項3】
駆動歯車と発電機駆動用歯車とを伝達するチェーンには、2台以上の発電機の発電機駆動用歯車を噛み合わせてある請求項1または2に記載の継続発電装置。
【請求項4】
駆動プーリーと発電機駆動用ローラーとを伝達するベルトには、2台以上の発電機の発電機駆動用ローラーを面接触してある請求項1または2に記載の継続発電装置。
【請求項5】
駆動モーターの回転軸には、はずみ車式の駆動歯車あるいは駆動プーリーを2連、3連に取り付けてある請求項1乃至4のいずれかに記載の継続発電装置。
【請求項6】
自動車、船舶、航空機などの乗り物に装備または搭載してある請求項1乃至5のいずれかに記載の継続発電装置。」


(2)目的要件について
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

本件補正後の請求項1は、歯車がはずみ車式であって、駆動歯車あるいは駆動プーリーを有するものであるから、これらの構成を全て有する本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項2を引用する本件補正前の請求項5(以下「本件補正前の請求項5」という)に一応対応するものとして検討する。
なお、本件補正後の請求項2は、歯車あるいはローラーの両側に軸を有するものであるから、その記載は、本件補正前の請求項3に一応対応するものであり、又、本件補正後の請求項3、4は、チェーンまたはベルトに2台以上の発電機の歯車又はローラーを設けるものであるから、その記載は、本件補正前の請求項6に一応対応するものであり、又、本件補正後の請求項6は、本願の発電装置を乗り物に装備または搭載するものであるから、その記載は、本件補正前の請求項4に一応対応するものである。
本件補正前の請求項5は、「制御手段」と「蓄電手段」と「送電手段」を有し、かつ、発電装置の電力の供給先は特定されていなかったものであったが、本件補正後の請求項1は、「制御手段」と「蓄電手段」を有しておらず、且つ「発電機の少なくとも1つはその発電機によって発電された電力を前記駆動モーターの電源として供給」とあるように、少なくとも1つの発電機から駆動モーターに電力が供給されるものとなる。本件補正前の請求項5の「制御手段」、「蓄電手段」が削除され、かつ、本件補正前の請求項5の「送電手段」を限定しても、発電機からの電力供給先が駆動モーターとはならず、又、少なくとも1つの発電機から駆動モーターに電力が供給されることで、発電機で得た電力を外部に供給しながら、その一部の電力で駆動モーターを駆動させることによって発電を継続できる(審判請求書「3.(d)」参照)という新たな課題が生じているので、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

本件補正後の請求項5には、「駆動モーターの回転軸には、はずみ車式の駆動歯車あるいは駆動プーリーを2連、3連に取り付けてある」とあるが、本件補正前の請求項に「はずみ車式の駆動歯車あるいは駆動プーリーを2連、3連に取り付けてある」構成を有するものは無く、上述のように本件補正後の請求項5に対応する請求項が本件補正前には存在しないから、所謂増項補正であり、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

仮に、本件補正後の請求項1が本件補正前の請求項1に対応すると扱ったとしても、上述のように、本件補正前の請求項1の「制御手段」、「蓄電手段」が削除され、かつ、本件補正前の請求項1の「送電手段」を限定しても、発電機からの電力供給先が駆動モーターとはならず、又、少なくとも1つの発電機から駆動モーターに電力が供給されることで、発電機で得た電力を外部に供給しながら、その一部の電力で駆動モーターを駆動させることによって発電を継続できるという新たな課題が生じており、しかも、本件補正前の請求項1が歯車式発電装置に係るものであったものが、本件補正後の請求項1は継続発電装置に係るものでプーリー式発電装置を含むものになっているから、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)第36条第4項第1号及び第6項第2号について
本件補正後の請求項1には、「駆動モーターの回転軸には、・・・略・・・駆動歯車あるいは駆動プーリーを取り付け、発電機は、駆動歯車に伝達されてあるいは駆動プーリーに伝達されて回転されるよう、駆動歯車あるいは駆動プーリーの直径の2分の1以下の直径を有する発電機駆動用歯車あるいは発電機駆動用ローラーが取り付けられていて、駆動モーターの1回転で発電機は2回転以上回転されるようにすると共に、発電機の少なくとも1つはその発電機によって発電された電力を前記駆動モーターの電源として供給する・・・略・・・継続発電装置。」と記載され、発電機は駆動モータの倍以上の回転数(速度)で回転し、少なくとも1つの発電機から駆動モーターに電力が供給されることで、発電機で得た電力を外部に供給しながら、その一部の電力で駆動モーターを駆動させることによって発電を継続できる(審判請求書「3.(d)」参照)ものである旨説明されており、「本実施例の発電装置は、部品や装置の故障がない限り、他からの電力の供給を受けずに発電を継続することが可能」(【0019】)という効果を奏する旨記載されている。
そうすると、本件補正後の請求項1に記載されたものは、発電機で得た電力を外部に供給しながら外部からのエネルギー供給を受けずに動作し続ける装置となるが、外部にエネルギーを供給することによって継続発電装置はエネルギー損失が生じ、駆動モーターと発電機を動作させると、鉄損、銅損、機械損等の損失が生じ、歯車と歯車の機械式伝達機構も回転時に機械的損失が生じ、各装置を電気的に接続するリード線、及び蓄電池自体にも電気的損失が生じるから、起動時には駆動モーターで歯車を回転させて発電機を発電できるかもしれないが、当該損失分のエネルギーを外部から補給できないので、ある程度の時間が過ぎれば装置が停止するが、何故外部からのエネルギー供給を受けずに動作し続けることができるのか不明である。

なお、請求人は、審判請求書において、「先ず本願発明では、技術分野の項に記載してありますように、一つの駆動モーターを駆動源として2台以上の発電機を駆動させ、しかもその回転を高めることで効率的に発電できるようにし」(審判請求書「3.(d)」参照)と主張するので、この主張についても検討する。
図1の発電装置において、駆動モーターの軸に取り付けられた歯車を駆動歯車、発電機の軸に取り付けられた歯車を従動歯車とすると、駆動歯車の歯数が従動歯車の歯数より小さい場合、従動歯車は減速されるが伝達されるトルクは増加し、駆動歯車の歯数が従動歯車の歯数より大きい場合、従動歯車は増速されるが伝達されるトルクは減少する。これは、市販の変速機能付き自転車において、走行用の場合、自転車を漕ぐために大きな力が必要であるが速度は速く、登坂用に変速をした場合、自転車を漕ぐために小さな力で足りるが速度は遅いのと同様である。なお、発電機の台数を1台から2台にすれば、発電機が同種であれば、2台を駆動するときは1台を駆動するときの倍のエネルギーが必要となる。
駆動歯車と従動歯車の関係を数式で表すと、
(駆動歯車のトルク×駆動歯車の回転数)=(従動歯車のトルク×従動歯車の回転数)
との関係があり、摩擦等を無視すれば、エネルギーは保存される。
歯車は摩擦等を無視してもエネルギーを保存はしても増加させることはできず、実際には、機械損等の様々な損失が存在するため、歯車を用いても駆動モーターで発生したエネルギーより小さなエネルギーが発電機に伝達されることとなり、請求人が主張するように歯車を用いることにより発電機で得た電力を外部に供給しながら外部からのエネルギー供給を受けずに動作し続けることはできず、請求人の上記主張は採用できない。

したがって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、かつ、本件補正後の特許請求の範囲の記載は明確ではないから、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記した平成25年9月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-64588号(実開昭60-177681号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「図面に於て1は器台、2,2’は器台1に設けた器枠、3は器台1の器枠2,2’に架設せる第1の直流誘導電動器、4,4’はその直流誘導電動器3の一方側より延出せるリード線であってこれを乾電池5の両極6,7又直流蓄電器8の両極6’,7’に連結できるように形成する。9はその誘導電動器3の他方側より延出せる廻転軸、10はその廻転軸9に設けた大径の歯車、11,11’は器台1に設置せる誘導電動器変換用発電器12架設用器枠、13は誘導電動器変換用発電器12の一方側より延出せる廻転軸、14はその廻転軸13に設けた小径の歯車であって前記の大径の歯車10と噛合させる。15,15’は直流誘導電動器変換用発電器12の他方側より延出せるリード線、8’は直流蓄電器を示す。」(明細書第3頁5-19行)

b「今若し大径の歯車10の歯数が27枚、小径の歯車14の歯数が9枚と仮定すれば第2の誘導電動器変換用発電器(注:「誘導電動変換用発動器」は誤記)12の廻転子は第1の誘導電動器3の廻転子の3倍の回転力にて廻転してその発電器12には増大せる起電力を生じてその発電器12の他方側より延出せるリード線15,15’を介して連結せる直流蓄電池8’に蓄電せられるようになる。」(明細書第4頁10-18行)

上記記載及び図面を参照すれば、第1の誘導電動器3の廻転軸9に廻転軸9の直径より大きい直径を有する大径の歯車10が取り付けられた歯車式発電装置が示されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「第1の誘導電動器3の廻転軸9に、前記廻転軸9の直径より大きい直径を有する大径の歯車10を取り付け、前記大径の歯車10に第2の誘導電動器変換用発電器12の一方側より延出せる廻転軸13に設けた小径の歯車14を、前記大径の歯車10に噛合させることで第2の誘導電動器変換用発電器12の廻転子を廻転させる機能と直流蓄電池8’を備え、第1の誘導電動器3の1廻転で第2の誘導電動器変換用発電器12の廻転子を3倍の回転力にて廻転させる歯車式発電装置。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「第1の誘導電動器3」、「廻転軸9」、「大径の歯車10」、「第2の誘導電動器変換用発電器12」、「小径の歯車14」「直流蓄電池8’」、「1廻転」は、それぞれ本願発明の「モーター」、「回転軸」、「歯車」、「発電機」、「発電機駆動用歯車」、「蓄電手段」、「1回転」に相当する。

引用発明の「第2の誘導電動器変換用発電器12の一方側より延出せる廻転軸13に設けた小径の歯車14」と、本願発明の「発電機と同じ回転軸で連結されている前記歯車の直径の2分の1以下の発電機駆動用歯車」は、「発電機と同じ回転軸で連結されている発電機駆動用歯車」との概念で一致する。
引用発明の「前記大径の歯車10に噛合させることで第2の誘導電動器変換用発電器12の廻転子を廻転させる機能」と、本願発明の「前記歯車に2個以上噛み合わせて設置することで発電機を2台以上駆動させる機能」は、「前記歯車に噛み合わせて設置することで発電機を駆動させる機能」との概念で一致する。
引用発明の「廻転子を3倍の回転力にて廻転させる」は、歯車の比(3対1)から判断して、廻転子を3倍の回転数で回転させることを意味するから、引用発明の「第1の誘導電動器3の1廻転で第2の誘導電動器変換用発電器12の廻転子を3倍の回転力にて廻転させる」と、本願発明の「モーターの1回転で設置した2台以上の各発電機を2回転以上回転させる」は、「モーターの1回転で設置した発電機を2回転以上回転させる」との概念で一致する。

したがって、両者は、
「モーターの回転軸に、前記回転軸の直径より大きい直径を有する歯車を取り付け、前記歯車に発電機と同じ回転軸で連結されている発電機駆動用歯車を、前記歯車に噛み合わせて設置することで発電機を駆動させる機能と蓄電手段を備え、モーターの1回転で設置した発電機を2回転以上回転させる歯車式発電装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
発電機駆動用歯車に関し、本願発明は、歯車の直径の2分の1以下であるのに対し、引用発明は、この様な特定がない点。
〔相違点2〕
発電機駆動用歯車を歯車に噛み合わせて設置することで発電機を駆動させる機能に関し、本願発明は、2個以上噛み合わせて設置することで発電機を2台以上駆動させるのに対し、引用発明は、歯車に噛み合わせて設置することで発電機を駆動させる点。
〔相違点3〕
本願発明は、制御手段と送電手段を備えるのに対し、引用発明は、この様な特定がない点。
〔相違点4〕
モーターの1回転で設置した発電機を2回転以上回転させる点に関し、本願発明は、設置した2台以上の各発電機を回転させるのに対し、引用発明は、設置した発電機を回転させる点。


(3)判断
相違点1について
本願発明が、発電機駆動用歯車を歯車の直径の2分の1以下とするのは、モーターの1回転で設置した発電機を2回転以上回転させるためである。しかし、モーターの1回転で設置した発電機を2回転以上回転させるには、歯車の直径を規定するのではなく、発電機駆動用歯車の歯数が歯車の歯数の2分の1以下でなければならない。引用発明は、モーターの1回転で設置した発電機を2回転以上回転させるものであるから、本願の記載に基づけば、発電機駆動用歯車を歯車の直径の2分の1以下にするものであり、両者に差異は認められない。

相違点2、4について
大型歯車に小型歯車を2個以上噛み合わせて設置することで発電機を2台以上駆動させることは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-15803号公報(特に【0016】、【図4】参照。)にもみられるように周知の事項であるから、引用発明において、発電機駆動用歯車を歯車に噛み合わせて設置することで発電機を駆動させることに代えて、発電機駆動用歯車を歯車に2個以上噛み合わせて設置することで発電機を2台以上駆動させることは当業者が容易に考えられることと認められ、この様な構成を採用すれば、当然に、設置した2台以上の各発電機を回転させるものと認められる。

相違点3について
引用発明は発電装置に係るものであるから、当然に送電手段を有しており、また、発電装置から所望の出力を得るには制御が必要であるから、引用発明において、制御手段と送電手段を備えることは、当業者が適宜選択し得ることと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

なお、平成25年9月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載では、歯車式発電装置が、モーターの回転軸に大径の歯車を取り付け、これに2分の1以下の直径の発電機駆動用歯車を2個以上噛み合わせて設置することで発電機を2台以上駆動させ、制御手段と蓄電手段と送電手段を備えるものであって、請求人が審判請求書で主張するような、発電機で得た電力を外部に供給しながら外部からのエネルギー供給を受けずに動作し続ける装置の構成にはなっていないため、自然法則を利用した歯車式発電装置に係る発明であると認められるが、仮に、本願が、請求人が審判請求書で主張するように、発電機は駆動モータの倍以上の回転数(速度)で回転し、少なくとも1つの発電機から駆動モーターに電力が供給されることで、発電機で得た電力を外部に供給しながら、その一部の電力で駆動モーターを駆動させることによって発電を継続できるものであるならば、「2.[理由II](1)」で述べたように、何故外部からのエネルギー供給を受けずに動作し続けることができるのか不明である。


(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-09 
結審通知日 2015-01-13 
審決日 2015-01-27 
出願番号 特願2013-54465(P2013-54465)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F03D)
P 1 8・ 572- Z (F03D)
P 1 8・ 121- Z (F03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 真徳  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 接続発電装置  
代理人 中村 政美  
代理人 原田 寛  

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