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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1298581 |
審判番号 | 不服2013-3933 |
総通号数 | 185 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-28 |
確定日 | 2015-03-11 |
事件の表示 | 特願2007-529005「マルチ粒子」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日国際公開、WO2006/024881、平成20年 4月17日国内公表、特表2008-511604〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2005年8月31日(パリ条約による優先権主張 2004年8月31日 英国(GB))を国際出願日とする特許出願であって、平成23年9月22日付けで拒絶理由が通知され、平成24年3月27日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年10月25日付けで拒絶査定がなされ、平成25年2月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年4月11日に手続補正書(方式)が提出され、同年5月24日付けで前置報告がなされ、平成26年1月22日付けで審尋がなされ、同年6月27日に回答書が提出されたものである。 第2.平成25年2月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [結論] 平成25年2月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.手続補正の内容 平成25年2月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、平成24年3月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の内容について、 「(a)薬学上活性な薬剤、(b)不溶性メタクリル酸アンモニウム共重合体、(c)水浸透性調節剤及び(d)非支配的な可塑剤を含む、溶融押出しされた、制御された放出性のマルチ粒子であって、処理中の潤滑に有意な又は有用な量を提供するのに十分な、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク又は溶融シリカから選ばれる支配的又は非支配的な潤滑剤の量を含まず、かつ非支配的な可塑剤の量は、原料(a)?(d)の合計重量に基づき10から20%である、マルチ粒子。」 を、 「(a)薬学上活性な薬剤、(b)不溶性メタクリル酸アンモニウム共重合体、(c)水浸透性調節剤及び(d)非支配的な可塑剤を含む、溶融押出しされた、制御された放出性のマルチ粒子であって、前記非支配的な可塑剤は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ソルビトール、ショ糖、4000から10,000の範囲の分子量を有する高分子量ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコールからなる群から選ばれるか、又はステアリルアルコールに対し近似する可塑化及び潤滑の特性を有する非支配的な可塑剤であり、前記非支配的な可塑剤は次の判断基準によって識別することができ、すなわち (a)オイドラギットRS POにおける所定の濃度で示差走査熱量測定によって可塑化効果について試験するとき、オイドラギットRS POのTg(℃として測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、及び (b)オイドラギットRS POの所定の濃度でのIKA MKD 0,6-H60 高性能測定混練機における潤滑効果について試験するとき、トルク(Nmとして測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、 そこではTg及びトルクについての値は3つの試験結果の平均であり、前記マルチ粒子は、処理中の潤滑に有意な又は有用な量を提供するのに十分な、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク又は溶融シリカから選ばれる支配的又は非支配的な潤滑剤の量を含まず、かつ非支配的な可塑剤の量は、原料(a)?(d)の合計重量に基づき10から20%である、マルチ粒子。」 とする、補正事項を含むものである。 2.本件補正の目的について 上記した特許請求の範囲についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「非支配的可塑剤」を特定の化合物で限定するか又は特定の判断基準によって限定する補正事項を含むものであり、請求項1についてする本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件について そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、以下に記載のとおりのものである。 「(a)薬学上活性な薬剤、(b)不溶性メタクリル酸アンモニウム共重合体、(c)水浸透性調節剤及び(d)非支配的な可塑剤を含む、溶融押出しされた、制御された放出性のマルチ粒子であって、前記非支配的な可塑剤は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ソルビトール、ショ糖、4000から10,000の範囲の分子量を有する高分子量ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコールからなる群から選ばれるか、又はステアリルアルコールに対し近似する可塑化及び潤滑の特性を有する非支配的な可塑剤であり、前記非支配的な可塑剤は次の判断基準によって識別することができ、すなわち (a)オイドラギットRS POにおける所定の濃度で示差走査熱量測定によって可塑化効果について試験するとき、オイドラギットRS POのTg(℃として測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、及び (b)オイドラギットRS POの所定の濃度でのIKA MKD 0,6-H60 高性能測定混練機における潤滑効果について試験するとき、トルク(Nmとして測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、 そこではTg及びトルクについての値は3つの試験結果の平均であり、前記マルチ粒子は、処理中の潤滑に有意な又は有用な量を提供するのに十分な、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク又は溶融シリカから選ばれる支配的又は非支配的な潤滑剤の量を含まず、かつ非支配的な可塑剤の量は、原料(a)?(d)の合計重量に基づき10から20%である、マルチ粒子。」 (2)刊行物及びその記載事項 刊行物A:国際公開第03/013433号 刊行物Aの記載事項は次のとおりである。(英文のため訳文で記載する。) A1「例えばマトリックスは、オピオイドアゴニストおよび実質的に非放出形態の被覆されたオピオイドアンタゴニストに加えて、 ・・・ 消化性の長鎖(C_(8)?C_(50)、特にC_(12)?C_(40))の置換または未置換炭化水素、例えば脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、鉱物油および植物性油およびワックス、およびステアリルアルコール;およびポリアルキレングリコールも含みうる。 ・・・ 疎水性材料が炭化水素である場合、炭化水素は、好ましくは、25℃?90℃の融点を示す。長鎖炭化水素材料の中でも、脂肪(脂肪族)アルコールが好ましい。経口投与形は、60(重量)%までの少なくとも1つの消化性長鎖炭化水素を含みうる。」(原文:36頁下から3行-37頁8行) A2「 実施例10 制御放出ヒドロコンドン 制御放出ヒドロコンドン剤形は、下記表10における形態となるよう調合された。 表10 表:省略 工程 1.粉砕されたステアリルアルコール、オイドラギットRLPO、ヒドロコンドン酒石酸塩及びオイドラギットRSPOをHobart Mixerを使い混合。 2.Power feeder、溶融押出機(6×1mmダイヘッド付き)、Conveyor,Lasermoke,及びPelletizerを用いることで顆粒物を押出す。)」(原文:実施例10) (3)刊行物Aに記載された発明 摘示A1には、経口投与形である旨の記載、摘示A2には、制御放出形のものである旨の記載、及び、溶融押出により作製する旨の記載があることをふまえて、摘示A2から刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているといえる。 「ヒドロコドン酒石酸塩15.0mg/Unit、オイドラギットRSPO76.0mg/Unit、オイドラギットRLPO4.0mg/Unit、ステアリルアルコール25.0mg/Unitからなる成分を溶融押出により作成された、制御放出経口投与形。」(原文:実施例10) (4)対比・判断 A.本願補正発明と刊行物発明との対比 刊行物A発明における「ヒドロコドン酒石酸塩15.0mg/Unit」「制御放出経口投与形」は、本願補正発明における「(a)薬学上活性な薬剤」「制御された放出性のマルチ粒子」に相当する。 本願補正発明における「(b)不溶性メタクリル酸アンモニウム共重合体」「(c)水浸透性調節剤」の具体例として実施例等に記載されている化合物は、それぞれ「オイドラギットRS PO 76.0mg/Unit」、「オイドラギットRL PO 4.0mg/Unit」であることからすると、刊行物A発明における「オイドラギットRSPO」「オイドラギットRLPO」は、それぞれ本願補正発明における「(b)不溶性メタクリル酸アンモニウム共重合体」「(c)水浸透性調節剤」に相当する。 本願補正発明における「(d)非支配的な可塑剤」は、前半の特定の化合物を含むか、後半の判断基準によって識別することができる化合物を含むかのいずれかの場合を規定するものであるが、刊行物A発明は、上記における前半において規定している特定の化合物である「ステアリルアルコール」を含むことを規定していることから、刊行物A発明は、本願補正発明における「非支配的な可塑剤は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ソルビトール、ショ糖、4000から10,000の範囲の分子量を有する高分子量ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコールからなる群から選ばれるか、又はステアリルアルコールに対し近似する可塑化及び潤滑の特性を有する非支配的な可塑剤であり、前記非支配的な可塑剤は次の判断基準によって識別することができ、すなわち (a)オイドラギットRS POにおける所定の濃度で示差走査熱量測定によって可塑化効果について試験するとき、オイドラギットRS POのTg(℃として測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、及び (b)オイドラギットRS POの所定の濃度でのIKA MKD 0,6-H60 高性能測定混練機における潤滑効果について試験するとき、トルク(Nmとして測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、 そこではTg及びトルクについての値は3つの試験結果の平均であり」との事項を備えている。 また、刊行物A発明は、4成分からなるペレットであることからすると、刊行物A発明は、本願補正発明における「処理中の潤滑に有意な又は有用な量を提供するのに十分な、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク又は溶融シリカから選ばれる支配的又は非支配的な潤滑剤の量を含まず」との事項を備えている。 以上をまとめると、本願補正発明と刊行物A発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 〔一致点〕 (a)薬学上活性な薬剤、(b)不溶性メタクリル酸アンモニウム共重合体、(c)水浸透性調節剤及び(d)非支配的な可塑剤を含む、溶融押出しされた、制御された放出性のマルチ粒子であって、前記非支配的な可塑剤は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ソルビトール、ショ糖、4000から10,000の範囲の分子量を有する高分子量ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコールからなる群から選ばれるか、又はステアリルアルコールに対し近似する可塑化及び潤滑の特性を有する非支配的な可塑剤であり、前記非支配的な可塑剤は次の判断基準によって識別することができ、すなわち (a)オイドラギットRS POにおける所定の濃度で示差走査熱量測定によって可塑化効果について試験するとき、オイドラギットRS POのTg(℃として測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、及び (b)オイドラギットRS POの所定の濃度でのIKA MKD 0,6-H60 高性能測定混練機における潤滑効果について試験するとき、トルク(Nmとして測定する)をステアリルアルコールの同じ濃度によって提供される減少の±50%の範囲内だけ減少させ、 そこではTg及びトルクについての値は3つの試験結果の平均であり、前記マルチ粒子は、処理中の潤滑に有意な又は有用な量を提供するのに十分な、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク又は溶融シリカから選ばれる支配的又は非支配的な潤滑剤の量を含まない、マルチ粒子。 〔相違点〕 本願補正発明は、「非支配的な可塑剤の量は、原料(a)?(d)の合計重量に基づき10から20%である」と特定しているのに対し、刊行物A発明は、ステアリルアルコールが25.0mg/Unitと全成分120.0mg/Unitに対して「20.8%(=25.0/120*100)」で含有すると特定している点。 B.相違点について 刊行物A発明におけるステアリルアルコールは、摘示A1に記載の消化性長鎖(C_(12)?C_(40))炭化水素に包含される脂肪(脂肪族)アルコールとして用いられているものであるところ、同じく摘示A1には、経口製剤中に消化性長鎖炭化水素を60重量%まで含ませ得ることが記載されていることからすると、刊行物A発明におけるステアリルアルコールの量を、制御された放出性の達成などを目的として、20重量%を下回る程度に調節することは、当業者において容易になし得ることである。また、本願明細書の記載を参酌しても、ステアリルアルコールの含有割合を「10から20重量%」とすることにより「20.8重量%」の場合に比べ、格別の効果を奏することが確認できない。 なお、刊行物Aには、ポリアルキレングリコールを含有しない場合、脂肪アルコールの含有割合を20-50重量%とすることが好ましい旨の記載(38頁下から10行-7行)もあるが、好ましい一態様を記載しているに過ぎず、上記記載に拘束されなければならないとの記載も刊行物Aにはないことからすると、上記記載のとおり、本願補正発明は刊行物Aに記載の事項に基いて容易になし得たものである。 (5)請求人の主張について 請求人は、平成25年4月11日提出の手続補正書(方式)において、 (i)新しい溶融押出マルチ粒子を開発するのを試みるときに熟練者(以下、「当業者」とします。)は引用文献1から始めることがないこと。 (ii)引用文献1には、当業者が出発点として引用文献1の例10を取り上げることについてなんら理由がないこと。 (iii)たとえ当業者が出発点として引用文献1およびそこでの例10を見つけたとしても、そこには、その後に本願発明で請求するマルチ粒子に到達するのに必要な改変を行わせる動機を当業者に与えることがないこと。 から、本願発明は、進歩性を有する旨の主張をしている。 しかしながら、刊行物Aの実施例10に開示された製剤を1つの発明としてとらえることは、当業者が当然に行うことであり、また、それに対して、刊行物Aの全体の記載を適宜参酌して改変を加えることも、また当然に当業者が行うものといえる。 そして、上記したように、本願補正発明と、刊行物Aの実施例10に記載の製剤(すなわち、刊行物A発明)との相違点は、「非支配的な可塑剤(例えば、ステアリルアルコールなど)」の配合割合のみであり、しかも本願補正発明で特定する範囲の「10から20%」という配合割合については、管区物Aに示唆されている(下限はない)「60重量%まで」に包含される上、本願補正発明の配合割合「10から20%」は、その上限は刊行物A発明の対応する配合量「20.8%」に対して極めて近い値である。 これに対して、仮に、本願補正発明により格別の効果が奏されることが示されているのであれば、いわゆる選択発明として特許性を有するものと判断される余地があると考えられるが、本願明細書及び審判請求書等の記載を検討しても、そのような格別な効果を奏することを明らかにした記載は見当たらない。 よて、請求人の上記主張は採用できない。 なお、請求人は、回答書において、請求項1を削除する補正をする用意がある旨の主張をしているが、本願明細書を参照しても、非支配的な可塑剤の配合割合が15重量%程度の場合に有する効果が、その割合が20重量%程度の場合に有する効果に比べ格段優れたことが確認できない以上、上記記載と同様の理由により刊行物Aに記載の事項に基いて当業者が容易になし得ることであるから、上記主張を採用することもできない。 (6)まとめ したがって、本願補正発明は、刊行物Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。よって、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成24年3月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1にかかる発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「(a)薬学上活性な薬剤、(b)不溶性メタクリル酸アンモニウム共重合体、(c)水浸透性調節剤及び(d)非支配的な可塑剤を含む、溶融押出しされた、制御された放出性のマルチ粒子であって、処理中の潤滑に有意な又は有用な量を提供するのに十分な、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク又は溶融シリカから選ばれる支配的又は非支配的な潤滑剤の量を含まず、かつ非支配的な可塑剤の量は、原料(a)?(d)の合計重量に基づき10から20%である、マルチ粒子。」 2.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由とされた平成23年9月22日付け拒絶理由通知書に 記載した理由の概要は、要するに、「3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献 1.国際公開第03/013433号」 というものを含むものである。 なお、上記引用文献1は、前記「第2.」「3.」「(2)」における刊行物Aと同じであることから、以降引用文献1を刊行物Aという。 3.当審の判断 (1)刊行物Aの記載事項 刊行物Aには、前記「第2.」「3.」「(2)」に記載した事項が記載されている。 (2)刊行物Aに記載された発明 刊行物Aには、前記「第2.」「3.」「(3)」に記載の刊行物A発明が記載されている。 (3)対比・判断 本願補正発明は、本願発明における非支配的可塑剤に関して、特定の化合物と限定するか、あるいは、特定の判断基準によって識別できることと限定したものである。 そうすると、本願発明をさらに限定した本願補正発明が前記「第2.」「3.」「(4)」に記載のとおり、刊行物Aに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明もまた刊行物Aに記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-09-25 |
結審通知日 | 2014-09-30 |
審決日 | 2014-10-20 |
出願番号 | 特願2007-529005(P2007-529005) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(A61K)
P 1 8・ 121- WZ (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 浩平 |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 加賀 直人 |
発明の名称 | マルチ粒子 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 冨田 和幸 |