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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1298801
審判番号 不服2014-1079  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-21 
確定日 2015-03-18 
事件の表示 特願2009-198771「データ保存システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開,特開2011- 50002〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年8月28日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年 7月12日 審査請求
平成24年11月12日 拒絶理由通知
平成25年 1月11日 意見書・手続補正書
平成25年 5月 1日 拒絶理由通知(最後)
平成25年 6月12日 意見書・手続補正書
平成25年11月26日 補正却下の決定・拒絶査定
(平成25年6月12日付け手続補正書でした手続補正を却下する。この出願については平成25年5月1日付け拒絶理由通知に記載した理由により,拒絶すべきものである。)
平成26年 1月21日 審判請求・手続補正書
平成26年 3月26日 前置報告書

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年1月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって,特許請求の範囲の請求項7については,本件補正の前後で以下のとおりである。
・補正前
「【請求項7】
通信装置に電力を供給する充電装置用充電端子と,
前記充電装置用充電端子に入力されたデータを記憶する記憶回路と,
前記充電装置用充電端子が前記通信装置の通信装置用充電端子に接続されたことを契機に,前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに,前記充電装置用充電端子に入力されたデータを前記記憶回路に記憶させる充電制御回路と,
を備え,
前記充電制御回路は,
前記通信装置から特定の音楽データ若しくは画像データの読出要求信号を取得すると,要求のあった前記特定の音楽データ若しくは画像データを前記通信装置が視聴可能になるように,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する
ことを特徴とする充電装置。」
・補正後
「【請求項7】
通信装置に電力を供給する充電装置用充電端子と,
前記充電装置用充電端子に入力されたデータ配信サービスを用いてダウンロードされた予め定められた音楽データ若しくは画像データを記憶する記憶回路と,
前記充電装置用充電端子が前記通信装置の通信装置用充電端子に接続されたことを契機に,前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに,前記充電装置用充電端子に入力されたデータを前記記憶回路に記憶させる充電制御回路と,
を備え,
前記充電制御回路は,
前記通信装置から特定の音楽データ若しくは画像データの読出要求信号を取得すると,要求のあった前記特定の音楽データ若しくは画像データを前記通信装置が視聴可能になるように,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する
ことを特徴とする充電装置。」

2 補正事項の整理
本件補正による特許請求の範囲の請求項7についての補正を整理すると次のとおりとなる。(当審注.下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)
・補正事項
補正前の請求項7の「前記充電装置用充電端子に入力されたデータを記憶する記憶回路」を,「前記充電装置用充電端子に入力されたデータ配信サービスを用いてダウンロードされた予め定められた音楽データ若しくは画像データを記憶する記憶回路」と補正すること。

3 補正の適否について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0042】及び【0054】の記載から,補正事項は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,補正事項は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,補正事項は,補正前の請求項7における「前記充電装置用充電端子に入力されたデータを記憶する記憶回路」を,「前記充電装置用充電端子に入力されたデータ配信サービスを用いてダウンロードされた予め定められた音楽データ若しくは画像データを記憶する記憶回路」と技術的に限定するもので,補正前の請求項7に記載された発明特定事項を限定的に減縮するから,特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

4 独立特許要件についての検討
(1)検討の前提
上記3で検討したとおり,本件補正による請求項7についての補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから,本件補正後の請求項7に記載された事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,更に検討する。

(2)本願補正発明
本件補正後の請求項7に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,次のとおりのものと認める。
「【請求項7】
通信装置に電力を供給する充電装置用充電端子と,
前記充電装置用充電端子に入力されたデータ配信サービスを用いてダウンロードされた予め定められた音楽データ若しくは画像データを記憶する記憶回路と,
前記充電装置用充電端子が前記通信装置の通信装置用充電端子に接続されたことを契機に,前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに,前記充電装置用充電端子に入力されたデータを前記記憶回路に記憶させる充電制御回路と,
を備え,
前記充電制御回路は,
前記通信装置から特定の音楽データ若しくは画像データの読出要求信号を取得すると,要求のあった前記特定の音楽データ若しくは画像データを前記通信装置が視聴可能になるように,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する
ことを特徴とする充電装置。」

(3)引用例の記載と引用発明,及び周知例
ア 引用例1の記載と引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2007-174483号公報(以下「引用例1」という。)には,図1ないし図4とともに,次の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
a「【技術分野】
【0001】
本発明は,通信端末の充電器,通信システムおよび通信制御方法に関し,特に,SIM(Subscriber Identity Module)カードを使用する通信端末の充電器,通信システムおよび通信制御方法に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0009】
本発明は,上記の課題を解決するためになされたものであり,余計な手間やコストをかけることなく容易且つ確実に通信端末内のデータをバックアップすることができ,しかもバックアップしたデータを通信端末に容易且つ確実に反映させることが可能な充電器,通信システムおよび通信制御方法を提供することを目的とする。」
b「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の最良の実施の形態について図面を参照して以下詳細に説明する。図1は,本発明の実施形態に係わる充電器10と,該充電器が充電する通信端末20の構成例を示すブロック図である。充電器10は,通信端末接続部12と,充電回路14と,SIMカードリーダライタ16(データ書込部)とを備える。通信端末接続部12は,通信端末20の充電器接続部22と着脱可能に接続する。通信端末接続部12は,充電電流を充電回路14から二次電池24へ供給する電源ラインと,SIMカードリーダライタ16と通信端末20との間でデータをやり取りするデータラインとを含む。充電回路14は,AC電源50から供給される電力から充電電流を生成する。充電電流は,電源ラインを介して二次電池24へ供給される。SIMカードリーダライタ16は,SIMカード60bと着脱可能に接続し,通信端末20のメモリ26に記憶される所定データ(例えば,電話帳データ,メールデータ,画像データおよび音楽データ)をSIMカード60bへ書き込む。SIMカードリーダライタ16は,SIMカード60bと着脱可能に接続するカードスロット機構や,リード/ライトアドレスを制御するアクセス制御回路等から構成される。
【0019】
尚,SIMカードリーダライタ16は,通信端末20側の制御部34,あるいは,充電器10側に搭載した制御部(不図示)によって制御される。通信端末20側の制御部34がSIMカードリーダライタ16を制御する場合,制御部34は,メモリ26から所定データを読み出し,読み出した所定データをSIMカードリーダライタ16へ送信する。一方,充電器10側の制御部がSIMカードリーダライタ16を制御する場合,この制御部が通信端末20のメモリ26に直接アクセスし,あるいは制御部34に対して所定データを送信する指示を出す。制御部は,取得した所定データをSIMカードリーダライタ16へ送信する。尚,以下の説明では,通信端末20側の制御部34がSIMカードリーダライタ16を制御する場合を例に挙げる。
【0020】
ここで,上記の如き充電器10に接続されて,二次電池24が充電され且つメモリ26内の所定データがSIMカード60bにバックアップされる通信端末20の構成について説明する。通信端末20は,図1に示すように,充電器接続部22と,二次電池24と,メモリ26と,制御部34と,通信部36と,SIMカードリーダライタ38とを備える。充電器接続部22は,充電器10の通信端末接続部12と着脱可能に接続する。充電器接続部22は,充電電流を充電回路14から二次電池24へ供給する電源ラインと,制御部34とSIMカードリーダライタ16との間でデータをやり取りするデータラインとを含む。二次電池24は,通信端末20全体に電力を供給するとともに,充電器接続部22を介して接続される充電回路14からの充電電流によって充電される。二次電池24としては,例えば,リチウムイオン電池を挙げることができる。メモリ26は,制御部34がアクセス可能な記録媒体であり,通信端末20の動作を規定するプログラムやデータを保存する。データとしては,例えば,電話帳データ28,メールデータ30,画像・音楽データ32等を挙げることができる。制御部34は,主にCPU(Central Processing Unit)等のコントローラで構成され,通信端末20全体,場合によっては充電器10を制御する。制御部34は,充電器接続部22を監視して充電器10が接続されたか否かを判定する。充電器10が接続された場合,制御部34は,メモリ26から読み出した所定データを,SIMカードリーダライタ16を介してSIMカード60bへ書き込む。通信部36は,無線基地局(不図示)を介して他の通信機器,例えば,交換局や他の通信端末との間で通信を行う。SIMカードリーダライタ38は,SIMカード60aと着脱可能に接続し,SIMカード60a内のデータを読み出し,あるいは所定データをSIMカード60bに書き込む制御を行う。SIMカードリーダライタ38は,SIMカード60aと着脱可能に接続するカードスロット機構や,リード/ライトアドレスを制御するアクセス制御回路等から構成される。尚,当然のことながら,SIMカードリーダライタ38は,充電器10によって所定データがバックアップされたSIMカード60bとも接続可能であり,制御部34はSIMカード60bから読み出した所定データをメモリ26に展開する。また,以上説明した通信端末20は,例えば,携帯電話機,PHS(Personal Handyphone System),あるいはPDA(Personal Digital Assistance)等の汎用の移動端末である。
【0021】
図2は,本発明の実施形態で使用されるSIMカード60a,60bのフォーマットの一例である。SIMカード60a,60bは,管理情報格納部150とユーザデータ格納部152とを備える。・・・一方,ユーザデータ格納部152は,利用者が任意にデータを読み出し,書き込むことが可能なエリアである。ユーザデータ格納部152には,例えば,通信端末20の電話帳データ28,メールデータ30あるいは画像・音楽データ32等が格納される。」
c「【0023】
図4は,充電器10の動作例を説明するフローチャートである。尚,充電器10は,前述したとおり,通信端末20の制御部34によって制御される。従って,正確には,図4は,制御部34の動作例を説明するものでもある。利用者は,1枚目のSIMカード60aを通信端末20のSIMカードリーダライタ38に接続し,2枚目のSIMカード60bを充電器10のSIMカードリーダライタ16へ接続する。ここで,通信端末20は,バックアップ対象となるデータを決定する(ステップS1)。尚,この決定は,利用者が任意に決定することもでき,あるいは利用者に対して選択の余地を与えず特定のデータを強制的に決定することもできる。通信端末20の制御部34は,充電器接続部22に充電器10が接続したか否かを判定する(ステップS2)。充電器10の接続を検出した場合,制御部34は,電源ラインを介して充電器10から入力する充電電流による二次電池24の充電を開始する(ステップS3)。尚,この二次電池24の充電は,必ずしも制御部34が介在する必要はなく,二次電池24と充電回路14とが接続した時点で自動的に充電を開始する構成とすることもできる。制御部34は,ステップS1において決定したデータをメモリ26から読み出す(ステップS4)。制御部34は,読み出したデータを,充電器10のSIMカードリーダライタ16に送信する。SIMカードリーダライタ16は,受信したデータをSIMカード60bのユーザデータ格納部152へ書き込む(ステップS5)。
【0024】
以上説明したように,本実施形態の充電器10は,通信端末20のメモリ26に格納されている所定データを,SIMカード60bにバックアップするためのSIMカードリーダライタ16を備える。そして,その所定データは,充電処理と同時にSIMカード60bにバックアップされる。・・・」
(イ)引用発明
a 上記(ア)bより,引用例1には,充電器10が,充電電流を充電回路14から通信端末20の二次電池24へ供給する電源ラインと,SIMカードリーダライタ16と通信端末20との間でデータをやり取りするデータラインとを含む通信端末接続部12,及びSIMカード60bが接続されたSIMカードリーダライタ16を備えることが記載されていると認められる。
b 上記(ア)b及びcより,引用例1には,充電器10が通信端末20の制御部34によって制御されて,通信端末接続部12を,通信端末20の充電器接続部22に接続したことを検出した場合,通信端末20の二次電池24の充電処理と同時に,画像・音楽データ32が保存された通信端末20のメモリ26から,強制的に決定した特定のデータをSIMカードリーダライタ16に送信し,SIMカード60bへ書き込み,所定データをバックアップするとの動作をすることが記載されていると認められる。
そして,上記(ア)bによれば,引用例1には「SIMカードリーダライタ16は,通信端末20側の制御部34,あるいは,充電器10側に搭載した制御部(不図示)によって制御される。・・・尚,以下の説明では,通信端末20側の制御部34がSIMカードリーダライタ16を制御する場合を例に挙げる。」(段落【0019】)と記載されている。
そうすると,引用例1には,充電器10において,充電器10側に搭載した制御部により,引用例1記載の上記の動作をすることも記載されていると認められる。
c 上記(ア)bのとおり,引用例1には,「SIMカードリーダライタ38は,充電器10によって所定データがバックアップされたSIMカード60bとも接続可能であり,制御部34はSIMカード60bから読み出した所定データをメモリ26に展開する。」(段落【0020】)と記載されている。
そして,引用例1には,充電器10側に搭載した制御部に関する上記bの記載(段落【0020】)がある。
そうすると,引用例1におけるこれらの記載から,引用例1には,充電器10において,充電器10側に搭載した制御部により,所定データがバックアップされたSIMカード60bと,通信端末20のSIMカードリーダライタ38とを接続し,SIMカード60bから読み出した所定データを通信端末20のメモリ26に展開するようにしたことが記載されていると認められる。
d 上記aないしcより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「充電電流を充電回路14から通信端末20の二次電池24へ供給する電源ラインと,SIMカードリーダライタ16と通信端末20との間でデータをやり取りするデータラインとを含む通信端末接続部12と,
SIMカード60bが接続されたSIMカードリーダライタ16と,
通信端末接続部12を,通信端末20の充電器接続部22に接続したことを検出した場合,通信端末20の二次電池24の充電処理と同時に,画像・音楽データ32が保存された通信端末20のメモリ26から,強制的に決定した特定のデータをSIMカードリーダライタ16に送信し,SIMカード60bへ書き込み,所定データをバックアップする制御部と,
を備え,
上記制御部は,
所定データがバックアップされたSIMカード60bと,通信端末20のSIMカードリーダライタ38とを接続し,SIMカード60bから読み出した所定データを通信端末20のメモリ26に展開する
充電器10。」
イ 周知例
(ア)周知例1
本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2009-15379号公報(以下「周知例1」という。)には,図1及び図2とともに,次の記載がある。
・「【0002】
近年,携帯端末の広まりとともに,携帯端末向けの様々なサービスが開発され,普及している。・・・また,コンテンツ配信サービスも,ユーザの利用が急激に拡大している。このサービスにより,ユーザは,コンテンツと呼ばれる音楽及び映像等の各種データを,サービスサイトから入手する,すなわち,自分の携帯端末へダウンロードすることが可能である。以上のサービスは共に,公衆網を介した,携帯端末と,電子メール用サーバ,又はサービスサイトといった,各種情報を格納する装置との間の双方向通信により成立する。」
・「【0032】
-構成-
図1に,本発明の第1の実施の形態に係るデータ配信システム10の構成をブロック図形式で示す。図1を参照して,データ配信システム10は,携帯端末20A及び20B等の端末と,これら携帯端末20A,20B等と公衆網60との間の中継を行なうための基地局50A及び50B等と,公衆網60に接続され,携帯端末20A,20B等に記憶されたデータをバックアップし管理するための管理サーバ22と,いずれも公衆網60に接続されたメールサービスサーバ70,音楽配信サイト80及びその他の通信サービスサイト(図示せず)とを含む。
【0033】
なお,以下,メールサービスサーバ70,音楽配信サイト80,及び図示しないその他の通信サービスサイトを,総称して「サービスサイト」と呼ぶ。また,以下,サービスサイトからユーザの端末にダウンロードされるデータを,総称して「コンテンツ」と呼ぶ。コンテンツは,メールサービスサーバ70からダウンロードされる電子メール,及び,音楽配信サイト80からダウンロードされる音楽,等を含む。管理サーバ22は,公衆網60を介し,サービスサイトと接続することもできる。
・・・
【0038】
図2に,携帯端末20Aの構成をブロック図形式で示す。・・・
【0039】
図2を参照して,サービス処理部112は,図1に示す基地局50A等の基地局及び公衆網60を介して,無線インターフェースのエアリンクを行ない,安定的にデータ通信を行なうための通信装置130と,スピーカ等からなる音声出力装置132と,ユーザが指示を入力するための入力装置134と,携帯端末20Aの電力供給に関する情報,携帯端末20Aにおいて作成されたデータ,携帯端末20Aと他局との間で送受信されたデータ,及び携帯端末20Aによるデータの送受信の履歴を保存するための,不揮発性の記憶装置136と,表示装置138と,・・・通信装置130,音声出力装置132,入力装置134,記憶装置136,表示装置138,・・・を所定のプログラムにしたがって制御し,携帯電話としての一般的機能,管理サーバからのデータのダウンロード機能,並びにダウンロードしたデータを音声出力装置132及び表示装置138を用いて再生する機能を実現するための制御部142とを含む。」
(イ)周知例2
本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2003-15664号公報(以下「周知例2」という。)には,図1とともに,次の記載がある。
「【0021】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)図1は本発明の第1の実施の形態に係る音楽配信端末の構成を示すブロック図である。図1に示す音楽配信端末8aは,アンテナ1と,無線回路部2と,制御部3aと,メモリカード読み書き手段4と,メモリカード5と,再生部6と,イヤホンジャック7と,で構成されている。また,外部音響装置12は,アンテナ9と,無線部10と,スピーカ11と,で構成されている。
【0022】次に,本発明の第1の実施の形態における音楽配信端末の動作を説明する。不図示の音楽配信サービス事業者が設置した音楽配信元であるサーバからダウンロードする楽曲データは,無線基地局を経由し,無線基地局において無線信号に変換され,アンテナ1で受信される。アンテナ1で受信された無線信号は,無線回路部2へ入力される。無線回路部2は,入力された無線信号をベースバンド信号に復調して制御部3aに出力する。制御部3aは入力されたベースバンド信号を楽曲データに変換する。制御部3aから出力された楽曲データは,メモリカード読み書き手段4に着脱可能な記憶媒体である,例えばメモリカード5に保存される。メモリカード5に保存された楽曲データは,メモリカード読み書き手段4で読み取られ,制御部3aに出力される。制御部3aはメモリカード読み書き手段4からの楽曲データを再生するために,楽曲データを再生部6へ出力する。
【0023】再生部6は,入力された楽曲データを音楽再生信号に変換し出力する。再生部6から出力された音楽再生信号は,イヤホンジャック7及び制御部3aに入力される。イヤホンジャック7に不図示のイヤホンを接続することにより,音楽再生信号を音として聴くことができる。・・・」
(ウ)当該技術分野における周知技術
上記(ア)及び(イ)から,次の事項は,周知例1及び2にみられるように,本願出願日前,当該技術分野では周知の技術といえる。
・通信装置において,データ配信サービスを用いて,音楽データ若しくは画像データをダウンロードすること。
・通信装置において,ダウンロードされた音楽データ若しくは画像データを,通信装置が視聴可能になるように出力すること。

(4)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明における「通信端末20」は,本願補正発明の「通信装置」に相当する。
そして,引用発明における「通信端末接続部12」は,「充電電流を充電回路14から通信端末20の二次電池24へ供給する電源ライン」を含むから,本願補正発明の「通信装置に電力を供給する充電装置用充電端子」に相当する。
イ 引用発明は,「画像・音楽データ32が保存された通信端末20のメモリ26から,強制的に決定した特定のデータをSIMカードリーダライタ16に送信し,SIMカード60bへ書き込み,所定データをバックアップする」ものであって,引用発明の「画像・音楽データ32」は,本願補正発明の「音楽データ若しくは画像データ」に相当するから,引用発明における「強制的に決定した特定のデータ」は,本願補正発明の「予め定められた音楽データ若しくは画像データ」に相当するといえる。
また,引用発明の「通信端末接続部12」(本願補正発明の「充電装置用充電端子」に相当。)は,「SIMカードリーダライタ16と通信端末20との間でデータをやり取りするデータライン」を含むから,引用発明における「強制的に決定した特定のデータ」が「通信端末接続部12」に入力されることは明らかである。
そして,引用発明における「強制的に決定した特定のデータ」は,「SIMカード60bが接続されたSIMカードリーダライタ16」に送信され,「SIMカード60b」に書き込まれるから,「SIMカード60bが接続されたSIMカードリーダライタ16」は,上記「強制的に決定した特定のデータ」を記憶する記憶回路といえる。
そうすると,本願補正発明の「記憶回路」と,引用発明の「SIMカード60bが接続されたSIMカードリーダライタ16」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記充電装置用充電端子に入力された」「予め定められた音楽データ若しくは画像データを記憶する記憶回路」である点で共通する。
ウ 引用発明における「通信端末接続部12を,通信端末20の充電器接続部22に接続したことを検出した場合」とは,「通信端末接続部12」(本願補正発明の「充電装置用充電端子」に相当。)が「通信端末20」(本願補正発明の「通信装置」に相当。)の「充電器接続部22」に接続されたことを契機にしたということができる。
そして,引用発明の「充電器接続部22」は,本願補正発明の「通信装置用充電端子」に相当する。
また,引用発明の「通信端末20の二次電池24の充電処理」は,「通信端末接続部12」に含まれる「充電電流を充電回路14から通信端末20の二次電池24へ供給する電源ライン」を介して「通信端末20」に電力を供給することといえるから,引用発明における「通信端末20の二次電池24の充電処理と同時に」は,本願補正発明の「前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに」に相当する。
さらに,上記イにおける検討より,引用発明における「画像・音楽データ32が保存された通信端末20のメモリ26から,強制的に決定した特定のデータをSIMカードリーダライタ16に送信し,SIMカード60bへ書き込み,所定データをバックアップする」ことから,引用発明は,「前記充電装置用充電端子に入力された」「予め定められた音楽データ若しくは画像データ」を「記憶回路に記憶させる」ものと認められる。
そうすると,本願補正発明の「充電制御回路」と引用発明の「制御部」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記充電装置用充電端子が前記通信装置の通信装置用充電端子に接続されたことを契機に,前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに,前記充電装置用充電端子に入力された」「予め定められた音楽データ若しくは画像データ」を「記憶回路に記憶させる」「充電制御回路」である点で共通する。
エ 引用発明の「SIMカード60b」には,「画像・音楽データ32が保存された通信端末20のメモリ26から,強制的に決定した特定のデータ」がバックアップされているから,引用発明で「所定データがバックアップされたSIMカード60bと,通信端末20のSIMカードリーダライタ38とを接続し,SIMカード60bから読み出した所定データを通信端末20のメモリ26に展開する」ことは,特定の「画像・音楽データ32」を「SIMカード60b」から読み出すことといえる。
そして,「SIMカード60b」から読み出した,特定の「画像・音楽データ32」を,「通信端末接続部12」に含まれる「SIMカードリーダライタ16と通信端末20との間でデータをやり取りするデータライン」に出力することは明らかである。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「充電制御回路」が,「特定の音楽データ若しくは画像データを」,「前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する」点で共通する。
オ 引用発明の「充電器10」は,後述する相違点に係る構成を除き,本願補正発明の「充電装置」に相当する。
カ 以上から,本願補正発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。
(ア)一致点
「通信装置に電力を供給する充電装置用充電端子と,
前記充電装置用充電端子に入力された,予め定められた音楽データ若しくは画像データを記憶する記憶回路と,
前記充電装置用充電端子が前記通信装置の通信装置用充電端子に接続されたことを契機に,前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに,前記充電装置用充電端子に入力された,予め定められた音楽データ若しくは画像データを前記記憶回路に記憶させる充電制御回路と,
を備え,
前記充電制御回路は,
特定の音楽データ若しくは画像データを,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する
充電装置。」
(イ)相違点
・相違点1
本願補正発明では,「記憶回路」に記憶される「予め定められた音楽データ若しくは画像データ」,及び「充電制御回路」により「記憶回路」に記憶させるデータについて,「データ配信サービスを用いてダウンロードされた」と特定されているのに対し,引用発明では上記の特定はされていない点。
・相違点2
「前記充電制御回路は,特定の音楽データ若しくは画像データを,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する」点について,本願補正発明では,「前記通信装置から特定の音楽データ若しくは画像データの読出要求信号を取得すると,要求のあった前記特定の音楽データ若しくは画像データ」を,「前記通信装置が視聴可能になるように」出力するのに対し,引用発明において上記の特定はされていない点。

(5)相違点についての検討
ア 相違点1について
上記(3)イより,通信装置において,データ配信サービスを用いて,音楽データ若しくは画像データをダウンロードすることは,本願出願日前,当該技術分野では周知の技術である。
そうすると,引用発明において,「通信端末接続部12を,通信端末20の充電器接続部22に接続したことを検出した場合,通信端末20の二次電池24の充電処理と同時に,画像・音楽データ32が保存された通信端末20のメモリ26から,強制的に決定した特定のデータをSIMカードリーダライタ16に送信し,SIMカード60bへ書き込み,所定データをバックアップする」際に,「通信端末20」の「メモリ26」に保存する「画像・音楽データ32」,すなわち「SIMカードリーダライタ16に送信し,SIMカード60bへ書き込」むデータを,「データ配信サービスを用いてダウンロードされた予め定められた音楽データ若しくは画像データ」とすることは,当業者が普通に行い得るものというべきである。
以上から,相違点1に係る構成は,当業者が普通に行い得るものであって,格別のものとはいえない。
イ 相違点2について
上記(3)ア(ア)bによれば,引用発明における「画像・音楽データ32が保存された通信端末20のメモリ26から,強制的に決定した特定のデータをSIMカードリーダライタ16に送信し,SIMカード60bへ書き込み,所定データをバックアップする制御部」について,引用例1には,「充電器10側の制御部がSIMカードリーダライタ16を制御する場合,この制御部が・・・制御部34に対して所定データを送信する指示を出す。」(段落【0019】)との記載があり,データの受信側である「充電器10側の制御部」が,データの送信側である「通信端末20」側の「制御部34」に対して「所定データを送信する指示」を出すことが記載されている。
そうすると,引用発明において,「充電器10」が備える「制御部」が,「所定データがバックアップされたSIMカード60bと,通信端末20のSIMカードリーダライタ38とを接続し,SIMカード60bから読み出した所定データ(本願補正発明の「特定の音楽データ若しくは画像データ」に相当。)を通信端末20のメモリ26に展開する」場合に,データの受信側である「通信端末20」側の「制御部34」が,データの送信側である上記「制御部」に対して所定データを送信する指示を出すようにすること,すなわち,上記「制御部」が「通信端末20」から所定データの読出要求信号を取得するようにすることは,引用例1の上記の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして,上記「制御部」が「通信端末20」から所定データの読出要求信号を取得した場合に,所定データとして,要求のあった特定の音楽データ若しくは画像データを読み出すことは,当業者が当然に行い得るものであり,また,上記特定の音楽データ若しくは画像データを「通信端末20」が視聴可能になるように出力することは,上記(3)イより,当該技術分野では周知の技術である。
以上から,引用発明において,相違点2に係る構成とすることは,引用例1の記載,並びに周知例1及び2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,格別のものとはいえない。

(6)本願補正発明の作用効果について
本願明細書の記載によれば,従来技術では,充電のための動作に加えて,何らかの動作を行なわなければならなかったり,充電が終了した後にデータのバックアップを行なう必要があり,通信装置に格納されているデータのバックアップが簡素でないという問題があった(段落【0008】,【0009】)ので,本願に係る発明は,上記の課題を解決し,通信装置のデータのバックアップを簡素にするようにした(段落【0010】)との作用効果を奏するものである。
しかし,上記(3)ア(ア)aより,引用発明は,余計な手間やコストをかけることなく容易且つ確実に通信端末内のデータをバックアップすることができ,しかもバックアップしたデータを通信端末に容易且つ確実に反映させることが可能な充電器を提供するとの目的を達成したものと認められるから,本願補正発明と引用発明との間に,作用効果上,格別の相違があるとは認められない。
そうすると,本願補正発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

(7)まとめ
本件補正後の請求項7に係る発明(本願補正発明)は,引用例1記載の発明(引用発明),並びに周知例1及び2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性について

1 本願発明について
平成26年1月21日に提出された手続補正書による手続補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年1月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。
「【請求項7】
通信装置に電力を供給する充電装置用充電端子と,
前記充電装置用充電端子に入力されたデータを記憶する記憶回路と,
前記充電装置用充電端子が前記通信装置の通信装置用充電端子に接続されたことを契機に,前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに,前記充電装置用充電端子に入力されたデータを前記記憶回路に記憶させる充電制御回路と,
を備え,
前記充電制御回路は,
前記通信装置から特定の音楽データ若しくは画像データの読出要求信号を取得すると,要求のあった前記特定の音楽データ若しくは画像データを前記通信装置が視聴可能になるように,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する
ことを特徴とする充電装置。」

2 引用例1の記載と引用発明
引用例1の記載は,前記第2の4(3)ア(ア)のとおりであり,引用発明は,前記第2の4(3)ア(イ)で認定したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比
前記第2の1及び2から明らかなように,本願発明は,本願補正発明から,平成26年1月21日に提出された手続補正書による補正事項(前記第2の2参照。)に係る技術的限定を取り除いたものである。
そして,上記補正事項に係る技術的限定は,本願補正発明と引用発明との相違点1に係る構成を含むものである。
そうすると,前記第2の4(4)より,本願発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりであると認められる。
・一致点
「通信装置に電力を供給する充電装置用充電端子と,
前記充電装置用充電端子に入力されたデータを記憶する記憶回路と,
前記充電装置用充電端子が前記通信装置の通信装置用充電端子に接続されたことを契機に,前記充電装置用充電端子を介して前記通信装置に電力を供給するとともに,前記充電装置用充電端子に入力された,予め定められた音楽データ若しくは画像データを前記記憶回路に記憶させる充電制御回路と,
を備え,
前記充電制御回路は,
特定の音楽データ若しくは画像データを,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する
充電装置。」
・相違点
「前記充電制御回路は,特定の音楽データ若しくは画像データを,前記記憶回路から読み出して前記充電装置用充電端子に出力する」点について,本願発明では,「前記通信装置から特定の音楽データ若しくは画像データの読出要求信号を取得すると,要求のあった前記特定の音楽データ若しくは画像データ」を,「前記通信装置が視聴可能になるように」出力するのに対し,引用発明において上記の特定はされていない点。

4 相違点についての検討
本願発明と引用発明との相違点は,本願補正発明と引用発明との相違点2と同一である。
そして,前記第2の4(5)イで検討したとおり,本願補正発明と引用発明との相違点2は,引用発明において,引用例1の記載,並びに周知例1及び2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
そうすると,本願補正発明と引用発明との相違点2と同一である,本願発明と引用発明との相違点も,引用発明において,引用例1の記載,並びに周知例1及び2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,格別なものとはいえない。
また,前記第2の4(6)の理由により,本願発明と引用発明との間に,作用効果上,格別の相違があるとは認められないから,本願発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

5 まとめ
以上のとおり,本願の請求項7に係る発明(本願発明)は,引用例1記載の発明(引用発明),並びに周知例1及び2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 結言

以上検討したとおり,本願の請求項7に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-20 
結審通知日 2014-10-21 
審決日 2014-11-05 
出願番号 特願2009-198771(P2009-198771)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松原 徳久  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 河口 雅英
山中 実
発明の名称 データ保存システム  
代理人 丸山 隆夫  

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