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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L |
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管理番号 | 1298806 |
審判番号 | 不服2014-8332 |
総通号数 | 185 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-07 |
確定日 | 2015-03-18 |
事件の表示 | 特願2012-111412号「洗浄剤ディスペンサーおよび洗浄剤の分配方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月23日出願公開、特開2012-157736号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2001年(平成13年)3月15日(パリ条約による優先権主張 2000年4月17日 米国)を国際出願日とする国際出願(特願2001-575879号)の一部を平成24年5月15日に新たな特許出願とした特願2012-111412号であって、平成25年7月24日付けで拒絶理由が通知され、同年10月18日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成26年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年5月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成25年10月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の、 「固体洗浄剤からの使用溶液を洗浄機中に分配する方法であって、以下のステップ: a.底部を有する固体洗浄剤をディスペンサー中に配置し、前記固体洗浄剤は、前記固体洗浄剤を保持し水を通過させるためのスクリーンタイプ構造を有する支持部材の上に保持され、前記ディスペンサーはチャンバーを有し、前記チャンバーは空洞を定め、かつ水注入口及び水排出口を含み、かつ前記空洞は前記固体洗浄剤を受容するように設計され、かつ配置され; b.前記ディスペンサーの前記水注入口に水を供給し、ここで前記水は前記チャンバーの前記空洞内の一定水位まで供給され、それにより前記固体洗浄剤と接触し、ここで水は最初に前記固体洗浄剤の下の空洞を満たし、続いて支持部材の上まで上昇して、前記固体洗浄剤の底部から前記固体洗浄剤と接触し; c.前記空洞を前記固体洗浄剤の前記底部から水で浸し; d.前記水中に前記固体洗浄剤の一部を溶解し、かつ使用溶液を形成し、;そして、 e.前記水排出口を介して前記ディスペンサーから前記使用溶液を放出し、ここで前記使用溶液が、前記水排出口を通って前記チャンバーから流出し、さらに前記洗浄機に流入する、 を含み、 前記固体洗浄剤からの前記使用溶液が、0.1質量%?1.5質量%の固体洗浄剤濃度を有して前記洗浄機中に分配され、そして 1回より多い、前記空洞内の水の浸水及び前記使用溶液の放出で構成されるサイクルを通じて前記固体洗浄剤を全て分配する、前記方法。」が 「固体洗浄剤からの使用溶液を洗浄機中に分配する方法であって、以下のステップ: a.底部を有する固体洗浄剤をディスペンサー中に配置し、前記固体洗浄剤は、前記固体洗浄剤を保持し水を通過させるためのスクリーンタイプ構造を有する支持部材の上に保持され、前記ディスペンサーはチャンバーを有し、前記チャンバーは空洞を定め、かつ水注入口及び水排出口を含み、かつ前記空洞は前記固体洗浄剤を受容するように設計され、かつ配置され; b.前記ディスペンサーの前記水注入口に水を供給し、ここで前記水は、前記支持部材と概略同じ高さに配置された開口部から前記チャンバーの前記空洞内の一定水位まで供給され、それにより前記固体洗浄剤と接触し、ここで水は最初に前記固体洗浄剤の下の空洞を満たし、続いて支持部材の上まで上昇して、前記固体洗浄剤の底部から前記固体洗浄剤と接触し; c.前記空洞を前記固体洗浄剤の前記底部から水で浸し; d.前記水中に前記固体洗浄剤の一部を溶解し、かつ使用溶液を形成し、;そして、 e.前記水排出口を介して前記ディスペンサーから前記使用溶液を放出し、ここで前記使用溶液が、前記水排出口を通って前記チャンバーから流出し、さらに前記洗浄機に流入する、 を含み、 前記固体洗浄剤からの前記使用溶液が、0.1質量%?1.5質量%の固体洗浄剤濃度を有して前記洗浄機中に分配され、そして 1回より多い、前記空洞内の水の浸水及び前記使用溶液の放出で構成されるサイクルを通じて前記固体洗浄剤を全て分配する、前記方法。」と補正された。(下線は補正箇所を示す。) そして、上記の本件補正による請求項1の補正は、水が供給される個所(位置)について「支持部材と概略同じ高さに配置された開口部から」であることを特定する補正事項からなり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。 すなわち、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。 2 独立特許要件違反についての検討 そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。 (1)引用例 ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-300517号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「イ 引用例1に記載された発明の認定」に直接関与する記載に下線を付した。) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、レストラン等の外食産業で使用される食器洗浄機、ビール瓶や酒瓶等を洗浄するための洗瓶機、プラスチックコンテナーの洗浄に使用されるプラスチックコンテナー洗浄機等に固形洗浄剤を供給するための供給装置に関するものである。」 「【0009】本発明の目的は、溶解性が良好で、充分な濃度の洗浄剤溶液が得られ、さらに洗浄剤の交換に手間がかからず、環境破壊を引き起こす洗浄剤容器を使用しない洗浄システムを可能にするための洗浄剤供給装置を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、本発明を完成した。本発明の固形洗浄剤の供給装置は、固形洗浄剤を洗浄タンク内に分配するための供給装置であって、少なくとも2個以上の固形洗浄剤を積み重ねて収納するスペースを有し、収納された最下段の固形洗浄剤の底部が、供給装置内に流入した水あるいは湯に浸漬されることによって洗浄剤が溶解して洗浄剤水溶液を生成し、その洗浄剤水溶液が供給装置の側面に設けられたオーバーフロー口を通って洗浄タンク内に導入されるように構成されていることを特徴とする。 【0011】以下、添付図面に従って本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明の固形洗浄剤供給装置の一例を示す斜視図であり、図2はその断面図である。図3は、本発明の固形洗浄剤供給装置に使用される固形洗浄剤の一例を示す斜視図である。図3の固形洗浄剤は、無包装で露出しているかまたは水可溶性のフィルムで全面包装されている。 【0012】図1及び図2の本発明の洗浄剤供給装置1は、浸漬槽6内部にバスケット4を内装して構成された、少なくとも2個以上の固形洗浄剤を積み重ねて収納するスペースを有する。無包装かまたは水可溶性のフィルムで全面包装された固形洗浄剤3は、aまたはc面が下方になるように、洗浄剤投入口9より浸漬槽6内のバスケット4の中へ、少なくとも2個以上積み重ねて装填される。 【0013】装填された固形洗浄剤3を溶解するために、給水管5により水または湯が浸漬槽6内に導入される。浸漬槽6内に導入された水または湯は、洗浄剤溶液流出口8の位置に達するまで浸漬槽6内に満たされる。ここで7は湯気抜き穴である。バスケット4内に装填された固形洗浄剤3のうち最下段の固形洗浄剤の下から1/4 ?1/2 の体積の部分は、浸漬槽6内に満たされた水または湯の中に浸り、この固形洗浄剤3の浸漬部分が、給水管5から導入される水または湯の渦巻き作用などによって溶解し、浸漬槽6内で濃厚な洗浄剤溶液10となって、洗浄剤溶液流出口8よりオーバーフローによって洗浄タンク内に流出される。 【0014】本発明の洗浄剤供給装置では、給水の温度、圧力が低温、低水圧であっても良好な溶解性を示し、短時間に濃厚な洗浄剤溶液を洗浄タンク内に送ることができ、洗浄タンク内の洗浄剤濃度を常に所定濃度に保つことができる。さらに、本発明に使用される固形洗浄剤は、プラスチック製の容器を使用せず、廃棄可能な紙、ビニール、ビニールコート紙などを包装材として使用することが、環境破壊を引き起こす心配がないので好ましい。 【0015】また、従来のカートリッジタイプでは、1個の洗浄剤カートリッジを使い終わるたびに次のカートリッジと入れ替えなければならないという煩雑さがあったが、本発明の洗浄剤供給装置では、固形洗浄剤は入れっぱなしであり、1個または2個を使い終わったら次々と固形洗浄剤を装填することができるので、入れ替えの煩雑さがなくなる。洗浄剤装填筒2を透明にすれば、洗浄剤の使用量が一目でわかるので、洗浄剤の追加時期の判断も容易である。またバスケット4により、固形洗浄剤の崩壊が防止されるので、給水管の目詰まりの心配もない。」 「【0035】 【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0036】実施例1 図1及び図2に示す供給装置を使用して、図3に示す固形洗浄剤3個を、次の条件で溶解し、洗浄機の洗浄剤溶液濃度を測定した。 洗浄剤の大きさ 直径13cm 高さ9cm 重量2kg×3個=6kg 給湯温度 20℃ 給湯圧力 0.2kg /cm^(2) 洗浄機 石川島播磨 D-6型(タンク容量70リットル) 洗浄サイクル 1サイクル 洗浄45秒 インターバル5秒 すすぎ時間12秒 結果を図9に示す。 【0037】図3に示す洗浄剤3個は、最後まで形崩れせず、徐々に底部から均一に溶解し、洗浄剤3個が無くなる寸前まで所定濃度を維持した。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図9】 」 イ 引用例1に記載された発明の認定 【図2】から、バスケット4の下面と浸漬槽6の底部内側面との間には空間があり、水または湯は給水管5の出口からバスケット4の下面の下側に導入され、給水管5の出口から浸漬槽6内部に導入された水または湯は、バスケット4の下面と浸漬槽6の底部内側面との間の空間を満たしてから洗浄剤溶液流出口8の位置に達するまで浸漬槽6内に満たされることは明らかである。 【図9】から、引用例1に記載の洗浄剤供給装置1で形成された洗浄剤濃度は0.2%であること、及び、洗浄剤残留量が0になるまでに400回の洗浄サイクルが実施されることが見て取れる。 よって、上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、 「洗浄剤供給装置1に収納された最下段の固形洗浄剤3の底部が、洗浄剤供給装置1内に流入した水あるいは湯に浸漬されることによって洗浄剤が溶解して洗浄剤水溶液を生成し、その洗浄剤水溶液を洗浄剤供給装置1の側面に設けられた洗浄剤溶液流出口8を通って洗浄タンク内に導入する方法であって、 洗浄剤供給装置1内において、 固形洗浄剤3は、aまたはc面が下方になるように、洗浄剤投入口9より浸漬槽6内のバスケット4の中へ、少なくとも2個以上積み重ねて装填され、 装填された固形洗浄剤3を溶解するために、給水管5の出口から水または湯が浸漬槽6内にバスケット4の下面の下側から導入され、浸漬槽6内に導入された水または湯は、バスケット4の下面と浸漬槽6の底部内側面との間の空間を満たしてから洗浄剤溶液流出口8の位置に達するまで浸漬槽6内に満たされ、バスケット4内に装填された固形洗浄剤3のうち最下段の固形洗浄剤の下から1/4 ?1/2 の体積の部分は、浸漬槽6内に満たされた水または湯の中に浸り、この固形洗浄剤3の浸漬部分が、給水管5から導入される水または湯の渦巻き作用などによって溶解し、浸漬槽6内で濃厚な洗浄剤溶液10となって、洗浄剤溶液流出口8よりオーバーフローによって洗浄タンク内に流出され、 洗浄剤供給装置1で形成された洗浄剤濃度は0.2%であり、 洗浄剤残留量が0になるまでに400回の洗浄サイクルが実施される方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 (2)本願補正発明と引用発明との対比 ア 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「洗浄タンク」は、洗浄剤供給装置1で生成された洗浄剤を導入(分配)する導入(分配)先であるという意味において、本願補正発明の「洗浄機」に相当するから、引用発明の「固形洗浄剤3の底部」が「溶解して洗浄剤水溶液を生成し」、「その洗浄剤水溶液」を「洗浄タンク内に導入する方法」が、本願補正発明の「固体洗浄剤からの使用溶液を洗浄機中に分配する方法」に相当する。 (イ)引用発明の「洗浄剤供給装置1」が本願補正発明の「ディスペンサー」に相当し、引用発明の「最下段の固形洗浄剤3の底部が、洗浄剤供給装置1内に流入した水あるいは湯に浸漬される」ように「洗浄剤供給装置1に収納され」ることが、本願補正発明の「底部を有する固体洗浄剤をディスペンサー中に配置」されることに相当する。 (ウ)引用発明の「バスケット4」は、固形洗浄剤3を装填するものであり、また、かご型の容器を意味する「バスケット」という部材名からして、当然に、水を通過させるものであるといえるから、本願補正発明の「固体洗浄剤を保持し水を通過させるためのスクリーンタイプ構造を有する支持部材」に相当し、引用発明の「洗浄剤供給装置1内において、固形洗浄剤3は、aまたはc面が下方になるように、洗浄剤投入口9より浸漬槽6内のバスケット4の中へ、少なくとも2個以上積み重ねて装填され」ることが、本願補正発明の「前記固体洗浄剤は、前記固体洗浄剤を保持し水を通過させるためのスクリーンタイプ構造を有する支持部材の上に保持され」ることに相当する。 (エ)引用発明の「浸漬槽6」が本願補正発明の「チャンバー」に相当するから、引用発明の「洗浄剤供給装置1内において」、「水または湯が浸漬槽6内に導入され、浸漬槽6内に導入された水または湯は、洗浄剤溶液流出口8の位置に達するまで浸漬槽6内に満たされ」ることが、本願補正発明の「前記ディスペンサーはチャンバーを有し、前記チャンバーは空洞を定め」ることに相当する。 (オ)引用発明の「給水管5」と、本願補正発明の「チャンバー」に含まれる「水注入口」とは、「チャンバー(引用発明においては浸漬槽6)内に水を注入する部材」である点で共通し、また、引用発明の「洗浄剤供給装置1の側面に設けられた洗浄剤溶液流出口8」が、本願補正発明の「チャンバー」に含まれる「水排出口」に相当する。 (カ)引用発明の「固形洗浄剤3は、aまたはc面が下方になるように、洗浄剤投入口9より浸漬槽6内のバスケット4の中へ、少なくとも2個以上積み重ねて装填され」ることが、本願補正発明の「前記空洞は前記固体洗浄剤を受容するように設計され、かつ配置され」ることに相当する。 (キ)引用発明の「給水管5の出口から水または湯が浸漬槽6内にバスケット4の下面の下側から導入され、浸漬槽6内に導入された水または湯は、洗浄剤溶液流出口8の位置に達するまで浸漬槽6内に満たされ」ることが、本願補正発明の「前記水は」「開口部から前記チャンバーの前記空洞内の一定水位まで供給され」することに相当する。 (ク)引用発明の「バスケット4の下面と浸漬槽6の底部内側面との間の空間」が、本願補正発明の「固体洗浄剤の下の空洞」に相当するといえるから、引用発明の「給水管5の出口から水または湯が浸漬槽6内にバスケット4の下面の下側から導入され、浸漬槽6内に導入された水または湯は、バスケット4の下面と浸漬槽6の底部内側面との間の空間を満たしてから洗浄剤溶液流出口8の位置に達するまで浸漬槽6内に満たされ、バスケット4内に装填された固形洗浄剤3のうち最下段の固形洗浄剤の下から1/4 ?1/2 の体積の部分は、浸漬槽6内に満たされた水または湯の中に浸」ることが、本願補正発明の「(水は)それにより前記固体洗浄剤と接触し、ここで水は最初に前記固体洗浄剤の下の空洞を満たし、続いて支持部材の上まで上昇して、前記固体洗浄剤の底部から前記固体洗浄剤と接触」することに相当する。 (ケ)引用発明の「浸漬槽6内にバスケット4の下面の下側から導入された水または湯は、バスケット4の下面と浸漬槽6の底部内側面との間の空間を満たしてから洗浄剤溶液流出口8の位置に達するまで浸漬槽6内に満たされ」ることが、本願補正発明の「前記空洞を前記固体洗浄剤の前記底部から水で浸」すことに相当する。 (コ)引用発明の「洗浄剤溶液10」が、本願補正発明の「使用溶液」に相当するから、引用発明の「この固形洗浄剤3の浸漬部分が、給水管5から導入される水または湯の渦巻き作用などによって溶解し、浸漬槽6内で濃厚な洗浄剤溶液10とな」ることが、本願補正発明の「前記水中に前記固体洗浄剤の一部を溶解し、かつ使用溶液を形成」することに相当する。 (サ)引用発明の「(洗浄剤溶液10が)洗浄剤溶液流出口8よりオーバーフローによって洗浄タンク内に流出され」ることが、本願補正発明の「前記水排出口を介して前記ディスペンサーから前記使用溶液を放出し、ここで前記使用溶液が、前記水排出口を通って前記チャンバーから流出し、さらに前記洗浄機に流入する」ことに相当する。 (シ)引用発明の洗浄剤濃度の「0.2%」は、本願補正発明の「固体洗浄剤濃度」の「0.1質量%?1.5質量%」の範囲内の数値であるから、引用発明の「洗浄剤供給装置1で形成された洗浄剤濃度は0.2%であ」ることが、本願補正発明の「前記固体洗浄剤からの前記使用溶液が、0.1質量%?1.5質量%の固体洗浄剤濃度を有して前記洗浄機中に分配され」ることに相当する。 (ス)引用発明の「洗浄剤残留量が0になるまでに400回の洗浄サイクルが実施される」ことが、本願補正発明の「1回より多い、前記空洞内の水の浸水及び前記使用溶液の放出で構成されるサイクルを通じて前記固体洗浄剤を全て分配する」ことに相当する。 イ 一致点 よって、本願補正発明と引用発明は、 「固体洗浄剤からの使用溶液を洗浄機中に分配する方法であって、以下のステップ: a.底部を有する固体洗浄剤をディスペンサー中に配置し、前記固体洗浄剤は、前記固体洗浄剤を保持し水を通過させるためのスクリーンタイプ構造を有する支持部材の上に保持され、前記ディスペンサーはチャンバーを有し、前記チャンバーは空洞を定め、かつチャンバー内に水を注入する部材を有し、水排出口を含み、かつ前記空洞は前記固体洗浄剤を受容するように設計され、かつ配置され; b.前記ディスペンサーの前記水を注入する部材に水を供給し、ここで前記水は、開口部から前記チャンバーの前記空洞内の一定水位まで供給され、それにより前記固体洗浄剤と接触し、ここで水は最初に前記固体洗浄剤の下の空洞を満たし、続いて支持部材の上まで上昇して、前記固体洗浄剤の底部から前記固体洗浄剤と接触し; c.前記空洞を前記固体洗浄剤の前記底部から水で浸し; d.前記水中に前記固体洗浄剤の一部を溶解し、かつ使用溶液を形成し、;そして、 e.前記水排出口を介して前記ディスペンサーから前記使用溶液を放出し、ここで前記使用溶液が、前記水排出口を通って前記チャンバーから流出し、さらに前記洗浄機に流入する、 を含み、 前記固体洗浄剤からの前記使用溶液が、0.1質量%?1.5質量%の固体洗浄剤濃度を有して前記洗浄機中に分配され、そして 1回より多い、前記空洞内の水の浸水及び前記使用溶液の放出で構成されるサイクルを通じて前記固体洗浄剤を全て分配する、前記方法。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。 ウ 相違点 (ア)相違点1; チャンバー(引用発明においては「浸漬槽6」)内に水を注入する部材が、本願補正発明においては、「チャンバーに含まれる(チャンバーと一体の)水注入口」であるのに対し、引用発明においては(浸漬槽6とは別体の)給水管5である点。 (イ)相違点2; チャンバーに水を供給する部材の開口部(引用発明においては「給水管5の出口」)が、本願補正発明においては「(固体洗浄剤の)支持部材と概略同じ高さに配置され」るのに対して、引用発明においては、「バスケット4の下面(固形洗浄剤の支持部材)の下側」にある点。 (3)当審の判断 ア 上記の各相違点について検討する。 (ア)相違点1について 容器等に水を注入するものにおいて、水の注入部材や流出部材を容器等と一体で形成することは、別体で形成することと同様に、例を挙げるまでもなく周知の技術である。 そして、引用発明においても、流出口(洗浄剤溶液流出口8)は水を注入する容器である浸漬槽と一体で形成していることに鑑みれば、注入口においても、上記の周知技術を適用し、浸漬槽と一体で形成する、すなわち、浸漬槽に含ませるものとして、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ)相違点2について 固体洗浄剤を封入してある容器へ水を供給する部材の開口部をどの位置に設けるかは、固体洗浄剤を、どのように水を接触させて溶解させるかという視点から適宜に設定し得るものである。 開口部の位置として、固体洗浄剤の支持部材と同じ高さ(本願補正発明における位置)も、固体洗浄剤の支持部材より低い位置(引用発明における位置)も、供給する水が、直接固体洗浄剤に掛からずに底から水で満たされるための位置という意味において同等な関係にある位置ということができ、どちらを採用するかは、適宜選択し得る事項にすぎないから、引用発明においても、開口部の位置を固体洗浄剤(固形洗浄剤)の支持部材であるバスケット4の下面と同じ高さとして、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 この点について、請求人は、審判請求書において 「引用文献1には、支持部材と概略同じ高さに配置された開口部から水を供給するという構成は記載されていません。 引用文献1は、2つ以上の固体洗浄剤をバスケットに入れることを記載(段落0012等)するところ、バスケットは固体洗浄剤の下に意図的に空洞を形成するように構成されたものではありません。このことは、「バスケット4内に装填された固体潤滑剤3のうち最下段の固体洗浄剤の下から1/4?1/2の体積の部分は、浸漬槽6内に満たされた水または湯の中に浸り、この固体洗浄剤3の浸漬部分が・・水または湯の渦巻き作用などによって溶解し」(段落0013)、「短時間に濃厚な洗浄剤溶液を洗浄タンク内に送ることができ」(段落0014)等の記載から理解されます。 上記記載に鑑みれば、引用文献1では、固体洗浄剤の迅速な溶解が所望されており、水または湯の渦巻き作用はそのような迅速な溶解に寄与するものとして望ましいものとして意図されていることは明らかです。 このような引用文献1の技術思想は本願発明の技術思想とは相反するものです。本願発明では、水中の乱流は不均一な又は速すぎる溶解を招来することにより望ましくないからです。 従って、引用文献1に接した当業者が本願発明の構成を容易に想起できたとは到底いえません。 」 と主張する。 しかしながら、引用例1の図2から、固体洗浄剤を支持しているバスケット下面の下に空間(空洞)が存在し、バスケットの下の空間(空洞)に給水管5の出口(水注入部材の開口部)があることは明らかである。その場合、注入された水の流れに関する状態は、水注入部材の開口部を固体洗浄剤を支持しているバスケット下面と同じ高さとした場合と格別な差異が生じるものではなく、渦の発生状態について、本願補正発明と実質的な相違が生じるものということはできない。 一方で、本願補正発明においても、本願明細書には、【0021】において「空洞(31)の底から水で空洞(31)を満たすことは、渦(vortices and eddies)を最小化するが、この渦が不均一に洗浄剤を浸食しやすい。」と記載されており、渦は全くなくなると記載されているわけではなく、「最小化する」ものであるものの、存在することが記載されているということができる。そして、当該渦の作用によって、固体洗浄剤はある程度は溶解されるものと認められ、その点においても、引用発明と相違するものでない。 そうすると、本願補正発明において、開口部が支持部材と概略同じ高さに配置されたことによっては、引用発明との間に、水の渦や乱流の発生及びそれによる固体洗浄剤の溶解に関しては、格別の差異が生じるものとは認められない。また、本願補正発明には、水の渦巻きや乱流の発生に関して引用発明との間で差異を生じさせるための他の構成が特定されているものとも認められない。 すなわち、請求人の上記主張は、請求項及び発明の詳細な説明の記載に基づかない主張であるから、採用することはできない。 イ 本願補正発明の奏する作用効果 そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 ウ まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 むすび したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年10月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成26年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。) 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成26年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 平成26年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比」の「ア 対比」において記載したのと同様の対比の手法及び結果により、本願発明と引用発明は、「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比」の「イ 一致点」において記載したのと同じ点で一致し、また、上記「第2 平成26年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比」の「ウ 相違点」における「(ア)相違点1」に相当する相違点(すなわち、上記各相違点において「本願補正発明」を「本願発明」と置き換えたもの)のみで相違する。 そして、上記相違点については、上記「第2 平成26年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)当審の判断」の「ア」における「(ア)相違点1について」で、検討したとおりであり、また、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものであることから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-10-20 |
結審通知日 | 2014-10-21 |
審決日 | 2014-11-04 |
出願番号 | 特願2012-111412(P2012-111412) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A47L)
P 1 8・ 575- Z (A47L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横溝 顕範 |
特許庁審判長 |
千壽 哲郎 |
特許庁審判官 |
森本 康正 森林 克郎 |
発明の名称 | 洗浄剤ディスペンサーおよび洗浄剤の分配方法 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 胡田 尚則 |
代理人 | 出野 知 |
代理人 | 青木 篤 |