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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1299029
審判番号 不服2013-21561  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-05 
確定日 2015-03-25 
事件の表示 特願2010-268438「交換可能な機能ユニットを持つ測定又は検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月2日出願公開,特開2011-107145〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許出願は,平成16年7月29日に出願した特願2006-523555号(パリ条約による優先権主張 平成15年8月18日,ドイツ)の一部を平成22年12月1日に新たな特許出願としたものである。
その後の手続の経緯の概略は,以下のとおりである。
平成24年10月24日:拒絶理由通知(同年同月30日発送)
平成25年 1月29日:意見書
平成25年 1月29日:手続補正書
平成25年 6月28日:拒絶査定(同年7月2日送達)
平成25年11月 5日:手続補正書
(以下,本件手続補正書による補正を「本件補正」という。)
平成25年11月 5日:審判請求
平成26年 1月20日:前置報告
平成26年 5月29日:上申書

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。
「 互いに接続することができる,いくつかの機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))を持ち,前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))の機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))が,様々な精度,及び/又は,様々な品質,及び/又は,様々な機能の範囲を提供する,測定又は検査装置(1)であって,
前記測定又は検査装置(1)は,スペクトラムアナライザ(20)であり,
前記機能ユニットは,中間周波数フィルター(21),アナログ・デジタル変換器(22),I/Q復調器(24),法絡線整流器(32),対数モジュール(34),ビデオフィルター(36),及び/又は,一つ乃至四つの検出器(38?41)であり,
前記測定又は検査装置(1)は,前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))の前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))により,様々な性能を有するように構成可能であり,
前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))は,交換可能であり,及び/又は,追加又は削除可能であり,
前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))が,周波数レンジ,及び/又は,信号対雑音比,及び/又は,ダイナミックレンジ,及び/又は,測定レート,及び/又は,測定分解能,及び/又は,測定精度,及び/又は,入力感度により特徴付けられ,
前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))は,交換され,及び/又は,追加又は削除されることにより,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))による第2の性能と,の間で前記測定又は検査装置(1)の性能を変更すること,
を特徴とする測定又は検査装置(1)。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。
「 それぞれ所定の精度,所定の品質および所定の機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する相互接続可能な複数の機能ユニットを備えるスペクトラムアナライザであって,
前記機能ユニットは,それぞれ,中間周波数フィルター,アナログ・デジタル変換器,I/Q復調器,法絡線整流器,対数モジュール,ビデオフィルターおよび検出器のうちのいずれか一つであり,
前記中間周波数フィルターは,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する中間周波数フィルターと交換可能であり,
前記アナログ・デジタル変換器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するアナログ・デジタル変換器と交換可能であり,
前記I/Q復調器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するI/Q復調器と交換可能であり,
前記法絡線整流器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する法絡線整流器と交換可能であり,
前記対数モジュールは,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する対数モジュールと交換可能であり,
前記ビデオフィルターは,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するビデオフィルターと交換可能であり,
前記検出器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する一つ乃至四つの検出器と交換可能であり,
前記機能特性は,周波数レンジ,信号対雑音比,ダイナミックレンジ,測定レート,測定分解能,測定精度および入力感度のうちの少なくともいずれか一つにより特徴付けられ,
前記スペクトラムアナライザは,前記機能ユニットの機能特性により,所定の性能を有するように構成可能であり,
前記スペクトラムアナライザは,前記機能ユニットの交換により,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第2の性能と,の間で前記所定の性能を変更すること,
を特徴とするスペクトラムアナライザ。」

2 補正の目的
本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)における「前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))は,交換可能であり,及び/又は,追加又は削除可能であり」に関して,「追加又は削除可能であり」の選択肢を除いて,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)とする補正を含むから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで,本件補正後発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。

3 独立特許要件
(1) 引用例1に記載の事項
本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である,特開2002-22773号公報(公開日:平成14年1月23日,発明の名称:測定機器及びオシロスコープ,出願番号:特願2001-132776号,出願日:平成13年4月27日,出願人:テクトロニクス・インコーポレイテッド,以下「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審が付したものである。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,一般に,デジタル・オシロスコープの如き測定機器に関し,特に,オシロスコープなどのデジタル測定機器用の新規なアーキテクチャに関する。
【0002】
【従来の技術】最新のデジタル・オシロスコープは,一般に,デジタル・ストレージ・オシロスコープ(DSO)又はデジタル・フォスファ・オシロスコープ(DPO)と呼ばれている。いずれの形式のオシロスコープにおいても,このアーキテクチャの主な特徴は,被試験アナログ信号を高速の一連のデジタル・サンプルに変換するA/D(アナログ・デジタル)変換器と,これらサンプルをメモリに転送するデマルチプレクサと,こららサンプルを蓄積する循環型取込みメモリ・アレイ(配列)とを用いることである。システム・マイクロプロセッサを用いて,取込みメモリから波形サンプルを読み出し,これらサンプルを表示用に処理している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これらオシロスコープは,現在まで合理的に適切に動作してきたが,かかる構成には欠点があることが認められている。かかる欠点の1つは,上述の従来の取込みメモリの設計では,技術コストが比較的に高価あり,拡張が困難であるという傾向にある。例えば,デマルチプレクサ集積回路は,速いデータ入力レートを,現在のメモリ・チップの動作限界と両立性のある遅い書込みレートに低減できなければならない。さらに,可能な最長メモリ長は,デマルチプレクサ・チップのアドレス・ラインの数により制限された。
【0004】第2の欠点は,従来のオシロスコープがデータ取込みを行う方法に存在する。すなわち,トリガが検出されるまで,循環形式(重ね書き形式)で,データをデータ取込みメモリに書き込んでいる。その後,ポスト・トリガ事象の検出に応答して,外部プロセッサが取込みメモリから波形データを読み出すまで,書込み処理を停止する。データを読み出した後,取込みメモリは,再び,データ受信状態にされ,次のトリガ事象に応答する。特に,この欠点は,表示のために,波形を読出し且つ処理するので,非常に大量のシステム・ソフトウェアがオーバーヘッドになる(即ち,処理時間が非常にかかる)という事実に基づく。波形サンプルを処理するのに必要な特定のアルゴリズムに応じて,被試験波形の異常が検出できないという非常に長期間の「デッド・タイム(不感時間)」が生じる。
【0005】従来のデジタル・オシロスコープの第3の欠点は,メモリ長を容易に拡張できないことである。ある程度のメモリ拡張はできるが,各メモリ拡張は,取込みボード上でメモリ集積回路に利用できる空間量と,上述の如く,デマルチプレクサ集積回路のメモリ・アドレスの能力とで制限される。よって,取込みメモリの大幅な拡張は,著しい開発成果がなければ,不可能であった。
【0006】したがって,本発明は,不感時間を短縮し,異常を検出できる確率を高め,メモリ長を容易に拡張できる新規なアーキテクチャを用いた測定機器及びオシロスコープを提供するものである。」

イ 「【0009】
【発明の実施の形態】以下,本発明をオシロスコープの環境で説明するが,本発明は,その他の測定機器にも適用できることが当業者には理解できよう。
【図2】

【0010】図2は,従来から既知である典型的なデジタル・ストレージ・オシロスコープ100のアーキテクチャを示す。このオシロスコープ100は,前置増幅器110と,A/D変換器120と,デマルチプレクサ130と,取込みメモリ140と,制御器(マイクロプロセッサ,即ち,μP)150と,表示メモリ160と,表示器ユニット170とをこの順序に配置された直列配置を具えている。この種の配置は,典型的には,1個又は2個のプリント基板上で構成されており,ユーザが再構成できるものではない。
【0011】図2に示したオシロスコープは,かかるオシロスコープの設計を実施する際に用いるカスタム・ハードウェア集積回路の細部と融合した実時間ソフトウェアを必要とすることが当業者には理解できよう。ハードウェア設計がたとえわずかであっても変更になる度に,ソフトウェア技術者は,そのソフトウェアを修正しなければならないので,これは,非常に複雑な問題である。この状況は,システム実時間ソフトウェアが,可能な異なるハードウェア構成の総てをサポートしなければならいという事実と類似している。明らかに,ハードウェア構成の数が増加するに従って,既存の製品及び以前のバージョンの製品の動作に偶然に悪影響を与えることなく,新たなバージョンの製品を作ることは,ますます困難になってきている。すなわち,新たな構成を無事に作るためには,総ての以前の構成の履歴の知識が設計技術者に必要となる。以下に説明する本発明によるSDOアーキテクチャは,これらの問題を解決する。
【図1】

【0012】図1は,本発明によるストリーミング分配オシロスコープ(SDO)200の主要部の簡略化したブロック図である。SDOアーキテクチャにおいて,オブジェクト指向アプローチを用いて,所定モジュール及びそれらのハードウェア細部の動作を分離し,各モジュールに分ける。任意の所定モジュールは,標準で,一般的で,一定の出力信号を供給するのに必要な総てのロジックを含んでおり,かかるモジュールのハードウェアを後から機能向上させることに問題はない。
【0013】データ・ストリームにおける各種のモジュールが標準の1組のアトリビュートを具えるように,SDOアーキテクチャが設計されている。このアプローチにより,インタフェースのPC(プログラマブル・コントロール)側ソフトウェアのいかなる変更もすることなく,新たな前置増幅器を設計し,システムに組み込む(プラグインする)ことができる。メモリ・ボード自体を除いて,いかなる変更もなく,新たなメモリ・ボードを設計し,設置することができる。
【0014】本発明のストリーミング分配オシロスコープのアーキテクチャを用いることにより,ハードウェア要素及びソフトウェア要素の両方を具えた新たなカスタム・アプリケーションを3?6ヶ月で開発することが可能である点に留意されたい。更に顕著な本発明の特徴として,標準に利用可能なストリーミング・スコープ・モジュールのオプションや,それらのライブラリ,新たなアプリケーション構成を,数週間ではなく,わずかな時間で開発できることである。
【0015】この点に関して,SDOアーキテクチャのモジュール方式により,任意の数のチャネルが可能である点に留意されたい。また,モジュール方式により,前置増幅器を選択的且つ相互交換可能にできる(例えば,帯域を標準で1GHzとし,差動,無線,光,オーディオ/サーボに対しては10MHzとする)。デジタイザ(デジタル化回路)モジュールは,8ビットで2GS/s(サンプル/秒)のモジュール,12ビットで100MHzのモジュール,及び16ビットで20MHzのモジュールから選択できる。また,256Mバイト,128Mバイト及び64Mバイトのメモリ・モジュールも,同じく容易に交換可能である。デジタル・アナログ(D/A)モジュールは,標準の8ビット・モジュール,12ビット・モジュール,及び16ビット・モジュールから選択可能である。実時間スペクトラム・アナライザ用のスペクトラム・アナライザ・モジュールの選択には,FFT(高速フーリエ変換)に基づくプロセッサ,又は掃引デジタル・フィルタがある。ストリーム・プロセッサ・モジュールのオプションに最も適当なのは,測定のためにデータ・ストリームを処理するフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を基本にしたものや,測定に基づくトリガ用のものや,データ・ストリームでの事象検索用のものである。信号ソース(信号源)モジュールには,8ビットD/A,12ビットD/A,16ビットD/A,光,高電圧パルスなどのオプションがある。最後に,FPGAプロセッサにより,非常な困難を伴うことなく,種々の種類のデジタル・フィルタを実施できる点に留意されたい。従来は,上述の如き選択には,大幅なソフトウェアの変更が必要であったが,本発明によるSDOによれば,これらのいかなる選択もユーザ側でユーザ自身がSDOを再構成できることが判る。すなわち,SDOのユーザは,新たなオシロスコープ・アプリケーションを作るのに,わずかな時間で,そのシステム・ハードウェア及びそのソフトウェア・ライブラリを構成できる。
【0016】SDOは,1チャネルのときに2GS/sのサンプリング・レートで,また,2チャネルのときに1GS/sのサンプリング・レートで動作することができる。また,SDOアーキテクチャは,データ・ストリームの多数のポイントから標準波形の捕捉(取込み)を行う。SDOアーキテクチャにより,1つのデータ・ストリームに対して同時の多数トリガ及び多数取込みメモリが可能である。これにより,1つのデータ・ストリームに対して,エッジ・トリガによる測定と,ある値でのトリガによる測定との両方を選択できる。
【0017】SDOアーキテクチャの他の特別な利点は,SDOがサンプルを取り逃すことなく連続的にデータ・ストリームを処理できることである。すなわち,総てのサンプルに対して測定が行え,不感時間がゼロになる。処理パイプラインは,1個のA/Dボードと,望ましい数だけの他の形式のボードとで構成できる。これら付加的なボードは,パイプライン内で任意所望の処理順序に構成できる。」

ウ 「【0018】上述の如く,SDOは,設定変更可能なバス・アーキテクチャを用いている。すなわち,SDOは,本質において,バス上の一連のモジュールである。図1は,ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)200を示している。高感度前置増幅器,標準前置増幅器又は光前置増幅器でもよい前置増幅器214を含んだ前置増幅器モジュール210は,直列インタフェース・バス210の最初のモジュールである。この直列インタフェース・バス201は,好ましくは,ファイバ・チャネル光直列インタフェース・バスである。前置増幅器モジュール210は,チャネル入力接続CH1及びCH2を含んでいるが,これは,少なくとも1チャネルはある。前置増幅器モジュール210からのアナログ出力信号は,デジタイザ(デジタル化回路)モジュール220に供給され,これらアナログ出力信号をサンプリングし,一連のデジタル信号サンプルに変換する。デジタイザ・モジュール220は,8ビットのA/D変換器(デジタイザ)224を用いて,連続した2GS/s(ギガ・サンプル/秒)のデータ・ストリームを発生するか,若しくは,12ビット又は16ビットのA/D変換器を用いて,2GS/sよりも遅いレート(速度)で連続したデータ・ストリームを発生する。デジタイザ・モジュール220は,クロック回路228及びラッチ226も具えている。このクロック回路228が,デジタイザ24,ラッチ226,232,236,242,246,252,256,262,266,272,276,282,286のラッチのタイミングを制御する。
【0019】デジタイザ・モジュール220からのデータ・ストリームは,ラッチ回路であるFIFO(先入れ先出し)回路226を介して,リボン・ケーブル(簡略化のために単に矢印で示す)により次段のボード230に供給される。プロセッサ・モジュールであるフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)ボード230,240は,FPGAパイプライン234及び244を夫々有し,データ・ストリームを1つのボードから次段のボードにパイプ接続するように,デイジー・チェーンにできる。多数のFPGAボードを追加して,多数のA/D変換器をインターリーブとして,実時間サンプリング速度を速くすることができる。
【0020】D/A変換器ボード250は,必要に応じて,デイジー・チェーン内の任意の処理ボードの間に挿入して,アナログ出力信号を発生できる。典型的なD/A変換器ボードは,ラッチ回路である入力FIFO252と,D/A変換器回路254と,ラッチ回路である出力FIFO256とを具えており,データ・ストリームを次段のボードに順次供給する。D/A変換器ボード250を用いて,外部のオシロスコープ又は他の測定機器(図示せず)をトリガできる。また,D/A変換器ボード250を用いて,外部制御信号や,連続した測定結果を外部でモニタするための信号を供給できる。メモリ・ボード(メモリ・モジュール)260,270は,データ・ストリームの任意の位置に配置することができる。これらメモリ・ボードを用いて,例えば,DPO(デジタル・フォスファ・オシロスコープ)データベースを作ることができるし,又は表示用にデータのフレームを捕捉できる。
【0021】取込みメモリ・ボード260は,入力データ・ストリームを受け,パイプラインの次のボードにデータ・ストリームを出力するように構成されている。前段のFPGAボード(プロセッサ・モジュール)230,240からのトリガ・ライン信号を受けると,データのフレームが捕捉され,取込みメモリ264に蓄積される。このフレームは,PCバス201で利用可能であり,表示器(図示せず)に供給される。複数のメモリ・ボード(又はモジュール)は,多数のトリガ入力を有しているので,データ・ストリームの異なる部分における異なる種類のトリガに基づいて波形を捕捉できる。なお,図1では,取込みメモリ・モジュールがメモリ・モジュール260だけであるが,夫々プロセッサ・モジュールからトリガ信号を受ける複数の取込みメモリ・モジュールを設けてもよい。
【0022】測定トリガの動作は,最も価値のあるものの1つであり,本発明のアーキテクチャの独特な概念に関連する。FPGAモジュールは,立ち上がり時間,振幅,周期などの事象の総ての発生において,一定の測定を実行する。トリガは,任意のこれら測定に基づいたFPGAボード(プロセッサ・モジュール)からの出力信号である。このトリガ信号を任意の取込みメモリ・モジュールに供給してもよく,これらメモリ・モジュールは,処理チェーン内に分布させてもよい。アナログ・トリガ回路が必要でないかもしれないが,望むならば,アナログ・トリガを本発明のアーキテクチャの一部として実施してもよい。好ましくは,トリガ・スイッチ・マトリクス・モジュールを用いて,システム制御プロセッサ(PC)により,どのトリガがどの取込みメモリ・モジュールに行くかを制御できる。かかるトリガ・スイッチ・マトリクス・モジュールは,図11を参照して後述する。
【0023】信号発生器や,スペクトラム・アナライザや,他の処理モジュールの如き他の種類のボード(モジュール)を必要に応じてデータ・ストリームの任意の位置に挿入してもよい。図1では,モジュール270が,メモリの他に,スペクトル処理を行うスペクトル集積回路も具えている。
【0024】ハードディスク駆動モジュール280をデータ・ストリーム内に(例えば,FIFO276の出力端に)設けて,総ての入力サンプル(例えば,データの20ギガ・サンプル)を受け,ハードディスク・メモリ284に蓄積できることが判る。サンプル・データ速度がハードディスクの書込み速度を超さなければ,これは事実である。実際の蓄積の大きさ(容量)は,選択したディスク・ドライブの大きさのみにより制限される。
【0025】光ファイバ・チャネル201を用いると,付加的なスレーブ・システムを接続できるので,任意所望の数の処理チャネルを短時間に接続できる。JAVA(R)などのソフトウェアでプログラムして,接続された総てのスレーブ・システム・ボードを自動的に認識できることが当業者には理解できよう。」

エ 「【0124】SDOソフトウェア・アーキテクチャは,厳密にオブジェクト指向である。ソフトウェア・オブジェクトは,このシステム全体に振り分け(分布)られている。例えば,各モジュールは,そのモジュールにローカルなアブストラクト・ソフトウェア・インタフェースを実現できるローカル・マイクロ制御器を具えている。この振り分けられたアプローチにより,ボードSWのその部分で,新たなボードを設計でき,ボード・ロジック設計又は構成を変更できる。このメイン・システム・プロセッサは,その形式の総てのボードに対して有効な標準アブストラクト・インタフェースを介して,ボードと依然会話をできる。(ボードの形式は,デジタイザ,前置増幅器,メモリ,D/A変換器などである。)ボードが新たな機能をインタフェースに負荷する必要がなければ,サブクラス・オブジェクトが生成される。これは,元のアブストラクト・クラス挙動を受け継ぎ,新たな挙動を追加する。この場合,最小のメイン・システム・ファームウェアの変更が必要になる。例えば,デジタイザ・モジュールは,固定アブストラクト・インタフェースを有するので,2個のデジタイザを有するボード又は16個のデジタイザを有するボードをプラグインすることが可能であり,システム制御器プロセッサ用ソフトウェアは,これらボードとの通信にいかなる困難も見つからない。ボードの現在のバージョンは,アブストラクト・インタフェースに質問することにより,他のバージョンのボードよりも,多くの資源又は少ない資源を具えていることが判る。
【0125】ソフトウェア・クライエントのオブジェクトをシステム全体に分布させた最終目的は,各時点で,新たなシステム・モジュールを設計することであり,ソフトウェアの作用は非常に小さな作用であり,モジュール自体にローカル化されている。この結果,SDOシステムの一部を更新又は変更するのに,設計期間を短くできる。これにより,市場に出す時間を短くでき,開発コストも低減できる。これにより,システム全体を維持するのが容易になる。これは,少ない技術者で,モジュールのボード上のソフトウェアの変更をローカルにできるためである。なお,メイン・システムのソフトウェア・アーキテクチャを変更するには,多くの技術者が必要となる。
【0126】SDOシステムは,カストマの試験及び測定システムにも埋め込めることが理解できよう。SDOは,実時間信号処理及びアナログ信号発生もできる。かかる信号は,ユーザの入力信号から得ることができるし,また,例えば,任意波形発生器(AWG)により内部的に発生することもできる。」

オ 「【0127】
【発明の効果】上述の如く本発明の測定機器及びオシロスコープによれば,不感時間を短縮し,異常を検出できる確率を高め,メモリ長を容易に拡張できる。」

(2) 引用発明
これら記載内容から見て,引用例1には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。また,引用発明認定に際し参考にした引用例1の記載箇所を段落番号で付記する。)。
「 【0012】ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)であって,
【0012】オブジェクト指向アプローチを用いて,所定モジュール及びそれらのハードウェア細部の動作を分離し,各モジュールに分け,任意の所定モジュールは,標準で,一般的で,一定の出力信号を供給するのに必要な総てのロジックを含んでおり,かかるモジュールのハードウェアを後から機能向上させることに問題はなく,
【0015】モジュール方式により,前置増幅器を選択的且つ相互交換可能にでき(例えば,帯域を標準で1GHzとし,差動,無線,光,オーディオ/サーボに対しては10MHzにでき),
【0015】デジタイザ(デジタル化回路)モジュールは,8ビットで2GS/s(サンプル/秒)のモジュール,12ビットで100MHzのモジュール,及び16ビットで20MHzのモジュールから選択でき,
【0015】256Mバイト,128Mバイト及び64Mバイトのメモリ・モジュールも,同じく容易に交換可能で,
【0015】これらのいかなる選択もユーザ側でユーザ自身がSDOを再構成でき,すなわち,SDOのユーザは,新たなオシロスコープ・アプリケーションを作るのに,わずかな時間で,そのシステム・ハードウェア及びそのソフトウェア・ライブラリを構成でき,
【0018】バス上の一連のモジュールである,
ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)。」

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア スペクトラムアナライザ
本件出願の発明の詳細な説明に開示された,技術分野(段落【0001】),背景技術(段落【0002】及び【0003】),発明が解決しようとする課題(段落【0005】)及び発明の効果(段落【0014】及び【0015】)等を勘案すると,本件補正後発明の「スペクトラムアナライザ」は,「測定又は検査装置」の一例である。
また,引用発明は,「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」であるから,「測定又は検査装置」である。
したがって,本件補正後発明と引用発明は,「測定又は検査装置」の点で共通する。

イ 機能ユニットを備える
引用発明の「前置増幅器」は,「モジュール方式により,前置増幅器を選択的且つ相互交換可能にでき(例えば,帯域を標準で1GHzとし,差動,無線,光,オーディオ/サーボに対しては10MHzにでき)」る。
引用発明の「デジタイザ(デジタル化回路)モジュールは,8ビットで2GS/s(サンプル/秒)のモジュール,12ビットで100MHzのモジュール,及び16ビットで20MHzのモジュールから選択でき」る。
引用発明の「256Mバイト,128Mバイト及び64Mバイトのメモリ・モジュールも,同じく容易に交換可能」である。
ここで,前置増幅器の帯域,デジタイザモジュールのビット数及びサンプリング速度,メモリ・モジュールのバイト数等は,「周波数レンジ,信号対雑音比,ダイナミックレンジ,測定レート,測定分解能,測定精度および入力感度のうちの少なくともいずれか一つ」の観点からモジュールの機能を特徴付ける性質であるから,「所定の精度,所定の品質および所定の機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つ」の「機能特性」といえる。
そうしてみると,引用発明の「前置増幅器」のモジュール,「デジタイザ(デジタル化回路)モジュール」及び「メモリ・モジュール」は,「それぞれ所定の精度,所定の品質および所定の機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する」「機能ユニット」といえる。
そして,引用発明は,「バス上の一連のモジュール」であるから,引用発明の「モジュール」は,「相互接続可能な複数の」ものである。
したがって,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」と本件補正後発明の「スペクトラムアナライザ」は,「それぞれ所定の精度,所定の品質および所定の機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する相互接続可能な複数の機能ユニットを備える」測定又は検査装置の点で共通する。また,引用発明のモジュールの「機能特性は,周波数レンジ,信号対雑音比,ダイナミックレンジ,測定レート,測定分解能,測定精度および入力感度のうちの少なくともいずれか一つにより特徴付けられ」ている。

ウ 所定の性能を有するように構成可能
引用発明は,前置増幅器,デジタイザモジュール,メモリ・モジュール等の各モジュールがバス上の一連のモジュールとしてその性能を発揮することにより「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」として適切に動作すべきものであるから,「前記機能ユニットの機能特性により,所定の性能を有するように構成可能」であることは,当然である。

エ 第1の性能及び第2の性能
引用発明の「任意の所定モジュールは,標準で,一般的で,一定の出力信号を供給するのに必要な総てのロジックを含んでおり,かかるモジュールのハードウェアを後から機能向上させることに問題はなく」,例えば,「デジタイザ(デジタル化回路)モジュールは,8ビットで2GS/s(サンプル/秒)のモジュール,12ビットで100MHzのモジュール,及び16ビットで20MHzのモジュールから選択でき」るから,引用発明は,「前記機能ユニットの交換により,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第2の性能と,の間で前記所定の性能を変更すること」ができる。

(4) 一致点及び相違点
本件補正後発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明の対比結果を踏まえると,両者に完全に一致する点は存在しないが,以下の構成において共通する。
「それぞれ所定の精度,所定の品質および所定の機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する相互接続可能な複数の機能ユニットを備える測定又は検査装置であって,
前記機能特性は,周波数レンジ,信号対雑音比,ダイナミックレンジ,測定レート,測定分解能,測定精度および入力感度のうちの少なくともいずれか一つにより特徴付けられ,
前記測定又は検査装置は,前記機能ユニットの機能特性により,所定の性能を有するように構成可能であり,
前記測定又は検査装置は,前記機能ユニットの交換により,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第2の性能と,の間で前記所定の性能を変更すること,
を特徴とする測定又は検査装置。」

イ 相違点
本件補正後発明は「スペクトラムアナライザ」であり,「スペクトラムアナライザ」として,請求項1に記載された本件補正後発明の各構成,すなわち,「それぞれ所定の精度,所定の品質および所定の機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する相互接続可能な複数の機能ユニットを備え」,「前記機能ユニットは,それぞれ,中間周波数フィルター,アナログ・デジタル変換器,I/Q復調器,法絡線整流器,対数モジュール,ビデオフィルターおよび検出器のうちのいずれか一つであり」,「前記中間周波数フィルターは,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する中間周波数フィルターと交換可能であり」,「前記アナログ・デジタル変換器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するアナログ・デジタル変換器と交換可能であり」,「前記I/Q復調器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するI/Q復調器と交換可能であり」,「前記法絡線整流器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する法絡線整流器と交換可能であり」,「前記対数モジュールは,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する対数モジュールと交換可能であり」,「前記ビデオフィルターは,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するビデオフィルターと交換可能であり」,「前記検出器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する一つ乃至四つの検出器と交換可能であり」,「前記機能特性は,周波数レンジ,信号対雑音比,ダイナミックレンジ,測定レート,測定分解能,測定精度および入力感度のうちの少なくともいずれか一つにより特徴付けられ」,「前記機能ユニットの機能特性により,所定の性能を有するように構成可能であり」,「前記機能ユニットの交換により,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第2の性能と,の間で前記所定の性能を変更する」ものであるのに対し,引用発明は,「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」であるから,その各構成は,「測定又は検査装置」として共通する側面はあるとしても,スペクトラムアナライザとは相違する点。

(5) 判断
引用例1の,発明の属する技術分野(段落【0001】),従来の技術(段落【0002】),発明が解決しようとする課題(段落【0003】ないし【0006】),発明の効果(段落【0127】)の記載,さらに,段落【0009】の記載を勘案すると,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」のアーキテクチャがスペクトラムアナライザに好適であることは,当業者ならば直ちに理解できる事項である。
すなわち,引用例1には,発明の属する技術分野について,「本発明は,一般に,デジタル・オシロスコープの如き測定機器に関し,特に,オシロスコープなどのデジタル測定機器用の新規なアーキテクチャに関する。」(段落【0001】)と記載されているところ,スペクトラムアナライザが「デジタル・オシロスコープの如き測定機器」であることは,技術常識である。一例として,原審の拒絶理由通知において示した特開平8-248070号公報(以下「周知例1」という。)に開示された周知技術(図10及び段落【0014】,並びに,図1及び段落【0025】ないし【0027】)は波形をデジタル変換した後に波形解析を行うFFT型のスペクトラムアナライザであるから,デジタル・オシロスコープと波形解析手法が相違するにすぎない。また,古市善教,「ディジタルオシロスコープ入門」,株式会社オーム社,1990年7月30日,8ないし15頁(以下「周知例2」という。)においても,スペクトラムアナライザが「ディジタルオシロスコープの仲間」として紹介されている。あるいは,周知例1に記載の周知のスペクトラムアナライザにおいては,図2のように波形をメモリに取り込んだ後に周波数スペクトル分析を行う(段落【0013】,【0025】及び【0026】)から,引用例1の段落【0003】ないし【0006】の記載と同様の課題が内在する(取込みメモリ設計の技術コスト及び拡張性,デッド・タイムの発生,等)。また,引用発明の課題解決手段についてみても,引用例1の段落【0012】及び【0015】に例示される構成と同様のモジュール構成をスペクトラムアナライザで採用すれば,その「任意の所定モジュールは,標準で,一般的で,一定の出力信号を供給するのに必要な総てのロジックを含んでおり,かかるモジュールのハードウェアを後から機能向上させることに問題はなく」なり,ユーザの使い勝手が向上することが期待できる。さらに,原審の拒絶理由通知において示した特開昭62-274220号公報(以下「周知例3」という。)の1頁右下欄13行ないし2頁4行には,「従来から,電気,温度,光,音・・・などを測定し,データを記録し,蓄積し,処理し,必要な情報を出力するための計測機器として,オシロスコープ,スペクトラムアナライザ,波形解析装置,伝送特性試験器,光特性測定装置など数多く製品化され実用に供されている。(改行)近年まではこれらの計測機器の性能は比較的限定されており,機能や性能を拡張したり変更する場合には,計測機の一部のプリント基板や,回路モジュール,あるいはプラグイン・ユニットを交換することにより実現していた。」と記載され,スペクトラムアナライザにおいても,モジュール化,ユニット化による機能拡張が従来から行われていたことをうかがい知ることができる。

そして,スペクトラムアナライザにおける周知の構成に鑑みると,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」のアーキテクチャをスペクトラムアナライザに適用して,本件補正後発明の構成に至ることは,当業者が容易にできることである。
すなわち,一例として,周知例1の図4のA/D変換器のサンプリング周波数,ビット数,ノイズ及び誤差等は,測定目的に対応した帯域幅,ダイナミックレンジ,精度等の1つ又は複数を勘案して決定すべきであるところ,引用発明の「デジタイザ(デジタル化回路)モジュールは,8ビットで2GS/s(サンプル/秒)のモジュール,12ビットで100MHzのモジュール,及び16ビットで20MHzのモジュールから選択でき」るという構成に倣えば,周知技術において,A/D変換器をモジュールとして,「前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するアナログ・デジタル変換器と交換可能」とすることは,当業者において容易である。あるいは,引用発明の「任意の所定モジュールは,標準で,一般的で,一定の出力信号を供給するのに必要な総てのロジックを含んでおり,かかるモジュールのハードウェアを後から機能向上させることに問題はなく」,という構成に倣って,標準で,一般的で,一定の出力信号を供給するA/D変換器を,後から機能向上させたA/D変換器に変えることができるように,モジュールとして「前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するアナログ・デジタル変換器と交換可能」とすることも,当業者において容易である。同様に,周知例1の図4の直交キャリア系列生成回路についても,標準で,一般的で,一定の出力信号を供給する直交キャリア系列生成回路を,後から機能向上させた(A/D変換器の性能に対応した処理能力,及び,測定目的に対応したフィルターの帯域幅,ダイナミックレンジ,リップル,カットオフ特性,位相特性等の性能が向上した)直交キャリア系列生成回路に変えることができるように,モジュールとして「I/Q復調器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有するI/Q復調器と交換可能」とすることは,当業者において容易である。また,周知例1には中間周波数フィルターが明記されていないが,周知例1の段落【0001】に開示された測定対象において,PDCの搬送周波数は800MHzであり,PHSの搬送周波数は1.9GHzであることを考慮すると,例えば,特開平9-257843号公報(以下「周知例4」という。)の図1,特開平10-126217号公報(以下「周知例5」という。)の図4,特開平7-134151号公報(以下「周知例6」という。)の図1に示されるように入力部に周波数変換部及び中間周波数フィルターを重ねて設けることは当然であり(1.9GHzの信号を直接A/D変換することは非現実的であり,また,ナイキスト周波数を超える信号の混入を取り除くことも必須であり),また,測定対象や測定項目に適したモジュールへの差替,例えば,測定対象や測定項目に対応した周波数帯,信号帯域幅,信号対雑音比,フィルター精度,等に対応した中間周波数フィルター等への交換を容易にするべく,中間周波数フィルター等をモジュールとして「前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する中間周波数フィルターと交換可能」とすることは,当業者が容易にできることである。さらにまた,周知例1の図1では,検出器として入力信号のピーク値のみが開示されているが,例えば,周知例2の14及び15頁には,図1-10(時間軸,周波数軸の同時表示),図1-11(伝達関数の表示)及び図1-12(相互相関の表示)機能が示されており,これらに対応した検出器を測定目的に応じて交換可能なように,モジュールとして「検出器は,前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する一つ乃至四つの検出器と交換可能」とすることは,当業者において容易である。

本件補正後発明の機能ユニットは「複数の機能ユニット」で「それぞれ,中間周波数フィルター,アナログ・デジタル変換器,I/Q復調器,法絡線整流器,対数モジュール,ビデオフィルターおよび検出器のうちのいずれか一つ」であるから,機能ユニットが「2つ」で,その2つが「それぞれ,中間周波数フィルター,アナログ・デジタル変換器,I/Q復調器及び検出器のうちのいずれか一つ」である場合を含む。そうしてみると,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」のアーキテクチャをスペクトラムアナライザに適用した当業者が,「中間周波数フィルター,アナログ・デジタル変換器,I/Q復調器及び検出器」のうち少なくとも2つについて,上記具体的に例示したような事項を考慮してモジュール化することにより,引用発明と本件補正後発明の前記共通点の構成を維持しつつ,本件補正後発明の構成に至ることは,容易である。

あるいは,引用例1の図1に「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」の全てのハードウェア要素が「オブジェクト指向アプローチを用いて,所定モジュール及びそれらのハードウェア細部の動作を分離し,各モジュールに分け」られ,全て「バス上の一連のモジュール」とされている点に鑑みると,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」のアーキテクチャをスペクトラムアナライザに適用する当業者が,中間周波数フィルター,アナログ・デジタル変換器,I/Q復調器,法絡線整流器,対数モジュール,ビデオフィルター,検出器といった,スペクトラムアナライザにおいて周知である全ての構成について,測定対象,帯域幅,分解能,ダイナミックレンジ,処理速度等に応じて後から機能向上させることができるようにモジュールとして「前記所定の精度とは異なる精度,前記所定の品質とは異なる品質,前記所定の機能の範囲とは異なる機能の範囲のうちの少なくともいずれか一つを機能特性として有する」モジュール「と交換可能」とすることにより,引用発明と本件補正後発明の前記共通点の構成を維持しつつ,本件補正後発明の構成に至ることは,容易である。

また,本件補正後発明の効果は,引用発明が奏する効果,特に,引用発明と本件補正後発明の前記共通点の構成が奏する効果と比較して,顕著なものとはいえない。

(6) 小括
したがって,本件補正後発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのまとめ
本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本願発明)は,前記「第2」1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項5ないし9(拒絶査定時の1ないし8)に係る発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例1に記載の事項及び引用発明
引用例1に記載の事項及び引用発明は,前記「第2」3(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
(1) 対比
引用発明は,「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」であるから,「測定又は検査装置」である。
また,「機能ユニット」に関しては,前記「第2」3(3)イと同様である。
したがって,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」は,本願発明の「互いに接続することができる,いくつかの機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))を持ち,前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))の機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))が,様々な精度,及び/又は,様々な品質,及び/又は,様々な機能の範囲を提供する,測定又は検査装置(1)」に相当する。

加えて,「様々な性能を有するように構成可能」な点,並びに,「第1の性能」及び「第2の性能」に関しても,前記「第2」3(3)ウ及びエと同様である。
したがって,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」は,本願発明の,「前記測定又は検査装置(1)は,前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))の前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))により,様々な性能を有するように構成可能であり」,「前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))は,交換可能であり,及び/又は,追加又は削除可能であり」,「前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))が,周波数レンジ,及び/又は,信号対雑音比,及び/又は,ダイナミックレンジ,及び/又は,測定レート,及び/又は,測定分解能,及び/又は,測定精度,及び/又は,入力感度により特徴付けられ」,「前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))は,交換され,及び/又は,追加又は削除されることにより,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))による第2の性能と,の間で前記測定又は検査装置(1)の性能を変更すること」の要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
本願発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
ア 一致点
「 互いに接続することができる,いくつかの機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))を持ち,前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))の機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))が,様々な精度,及び/又は,様々な品質,及び/又は,様々な機能の範囲を提供する,測定又は検査装置(1)であって,
前記測定又は検査装置(1)は,前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))の前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))により,様々な性能を有するように構成可能であり,
前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))は,交換可能であり,及び/又は,追加又は削除可能であり,
前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))が,周波数レンジ,及び/又は,信号対雑音比,及び/又は,ダイナミックレンジ,及び/又は,測定レート,及び/又は,測定分解能,及び/又は,測定精度,及び/又は,入力感度により特徴付けられ,
前記機能ユニット(2_(1),2_(2),2_(3),2_(4))は,交換され,及び/又は,追加又は削除されることにより,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた前記機能特性(FE_(1),FE_(2),FE_(3),FE_(4))による第2の性能と,の間で前記測定又は検査装置(1)の性能を変更すること,
を特徴とする測定又は検査装置(1)。」

イ 相違点
本願発明の「前記測定又は検査装置(1)は,スペクトラムアナライザ(20)であり」,「前記機能ユニットは,中間周波数フィルター(21),アナログ・デジタル変換器(22),I/Q復調器(24),法絡線整流器(32),対数モジュール(34),ビデオフィルター(36),及び/又は,一つ乃至四つの検出器(38?41)であ」るのに対して,引用発明は,「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」である点。

(3) 判断
前記「第2」3(5)と同様の理由により,当業者において,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」のアーキテクチャをスペクトラムアナライザに適用して,本願発明の構成に至ることは,容易である。
また,本願発明の効果は,引用発明が奏する効果と比較して,顕著なものとはいえない。

5 上申書について
請求人は,上申書において,本件補正発明が却下されることを前提とした意見を述べているが,これに対する当審の見解は,以下のとおりである。
(1) 「引用文献1は測定装置がオシロスコープであることのみ記載しており,測定装置がスペクトラムアナライザであることについて記載していません。また,測定装置が例えばスペクトラムアナライザのような他の装置であってもよいことについて何ら示唆しておりません。さらに,引用文献1は,互いに接続することができるいくつかの機能ユニットであって,中間周波数フィルター,アナログ・デジタル変換器,I/Q復調器,法絡線整流器,対数モジュール,ビデオフィルター,及び/又は,一つ乃至四つの検出器である機能ユニットを持つ測定装置について何ら記載しておらず,また示唆もしておりません。」の主張に対し
引用例1には,前記「第2」3(5)で言及したとおりの示唆があり,また,中間周波数フィルター等の構成は,スペクトラムアナライザの構成として周知である。

(2) 「引用文献1は,例え機能ユニットが交換可能且つ追加可能であることについて記載しているとしても,機能ユニットが削除可能であることについて記載してらず,また示唆もしておりません。換言すると,従来技術において,本願発明のように機能ユニットを「交換可能,及び/又は,追加又は削除可能」とすることは,進歩性なしにはなし得ることではございません。」の主張に対し
特許請求の範囲には,「交換可能,及び/又は,追加又は削除可能」と記載されているのであるから,「交換可能」であれば,本願発明の要旨に含まれる。
仮に,特許請求の範囲の記載を「交換可能,及び,追加又は削除可能」と解するとしても,引用例1には,「D/A変換器ボード250は,必要に応じて,デイジー・チェーン内の任意の処理ボードの間に挿入して,アナログ出力信号を発生できる。」(段落【0020】),「信号発生器や,スペクトラム・アナライザや,他の処理モジュールの如き他の種類のボード(モジュール)を必要に応じてデータ・ストリームの任意の位置に挿入してもよい。」(段落【0023】)といった,「追加又は削除可能」なモジュールも開示されている。
スペクトラムアナライザにおいて,アナログ/デジタル変換器やI/Q復調器等を削除等した場合,スペクトラムアナライザとしての機能が失われると考えられるが,例えば,中間周波数フィルターに関しては,測定対象に応じて「追加又は削除可能」であっても良いことを考慮すると,仮に,特許請求の範囲の記載を「交換可能,及び,追加又は削除可能」と解するとしても,容易である。

(3) 「引用文献1は,機能ユニットが有する機能特性が,周波数レンジ,及び/又は,信号対雑音比,及び/又は,ダイナミックレンジ,及び/又は,測定レート,及び/又は,測定分解能,及び/又は,測定精度,及び/又は,入力感度により特付けられる点について何ら記載しておらず,また示唆もしておりません。
特に,引用文献1は,機能ユニットが,交換され,及び/又は,追加又は削除されることにより,少なくとも,高ダイナミックレスポンス及び高精度だが,相対的に遅い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第1の性能と,限られたダイナミックレスポンス,適度の精度だが,早い測定レートにより特徴付けられた機能特性による第2の性能と,の間で性能を変更することを記載しておらず,また示唆もしておりません。そもそも,引用文献1は,異なる性能のそれぞれを有するように測定装置を構成する点について記載しておらず,また示唆もしておりません。」の主張に対し
請求人が主張する構成は,前記4(1)で述べたとおり,本願発明と引用発明の一致点であり,また,引用発明の「ストリーミング分配オシロスコープ(SDO)」をスペクトラムアナライザに置き換えても,引用発明と本願発明の上記一致点の構成は維持されるものである。

(4) 「上記意見にも関わらず,この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものであるとのことから本件審判の請求は成り立たないと審決されるような場合,出願当初明細書に記載された事項の範囲内で特許請求の範囲をさらに補正する準備がありますので,何卒,補正の機会を与えてくださいますようお願い申し上げます。」の主張に対し
制度に照らし合わせると,補正の機会を与える必要はない。
特に,本件に関しては,発明の詳細な説明に開示された,技術分野(段落【0001】),背景技術(段落【0002】及び【0003】),発明が解決しようとする課題(段落【0005】)及び発明の効果(段落【0014】及び【0015】)等を勘案すると,本願発明の本質的な部分は全て引用例1に開示されており,測定又は検査装置の例示において異なるにすぎないと理解できるから,補正の機会は与えないこととする。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-27 
結審通知日 2014-10-28 
審決日 2014-11-12 
出願番号 特願2010-268438(P2010-268438)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神谷 健一  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 樋口 信宏
新川 圭二
発明の名称 スペクトラムアナライザ  
代理人 酒井 宏明  
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