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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60C
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60C
管理番号 1299331
審判番号 不服2012-12177  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-28 
確定日 2015-04-23 
事件の表示 特願2007-179033「制動力大きいスタッドレスタイヤ及び製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月11日出願公開、特開2008-296894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
平成19年 5月29日 出願
平成19年 6月26日 手続補正(1)
平成19年 6月26日 審査請求
平成19年 8月27日付 補正指令(1)(出願に対し)
平成19年 8月27日付 補正指令(2)(手続補正(1)に対し)
平成19年 8月27日付 補正指令(3)(審査請求に対し)
平成19年10月 9日 手続補正(2)(補正指令(1)に対し)
平成19年10月 9日 手続補正(3)(補正指令(3)に対し)
平成19年11月30日付 手続却下(手続補正(1)に対し)
平成22年 3月29日付 拒絶理由通知(1)
平成22年 6月17日 手続補正(4)
平成23年 5月11日付 拒絶理由通知(2)
平成23年 8月 4日 意見書(1)
平成24年 3月13日付 拒絶査定
平成24年 6月28日 審判請求
平成24年 8月 3日付 補正指令(4)(審判請求に対し)
平成24年 9月 7日 手続補正(5)(補正指令(4)に対し)
平成24年11月 8日付 拒絶理由通知(3)
平成25年 1月24日 意見書(2)
平成25年 1月24日 手続補正(6)及び(7)
平成25年 2月13日付 通知書(手続補正(6)を返戻)
平成25年 6月21日付 拒絶理由通知(4)
平成25年 8月 6日 応対記録(電話)
平成25年 8月14日 意見書(3)
平成25年 8月14日 手続補正(8)
平成25年 8月16日 手続補正(9)及び(10)(意見書(3)に対し)
平成25年 9月24日付 補正指令(5)(手続補正(8)に対し)
平成25年10月20日 手続補正(11)(補正指令(5)に対し)

なお、「(1)」等の符号は、手続を特定するため、本審決において付した。

第2.拒絶理由
第2の1.拒絶理由通知(1)
拒絶理由通知(1)の理由1として、以下が指摘されている。

「この出願(以下「本願」という。)は、【特許請求の範囲】の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願請求項1-13に係る発明が、それぞれ「物」に関する発明であるのか、「方法」に関する発明であるのか、「カテゴリー」が理解できない。なお、本願においては、「物」の発明である場合は「スタッドレスタイヤ」又は「スタッドレスタイヤの製造装置」とすべきであり、「方法」に関する発明である場合は、「スタッドレスタイヤの製造方法」とすべきと思われる(なお、「物」に関する発明とした場合、請求項が、いわゆる「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」にならないように注意されたい。)。
(略)
(9)本願請求項2に係る発明において、「請求項1」という用語が出てくるのは、本願請求項2に係る発明が本願請求項1に係る発明と異なることをいいたいためなのか、本願請求項2が本願請求項1の従属項であることを示したいためなのか、明確に把握できない。両発明が主従の関係にないのならば、請求項1を引き合いに出さずとも、本願請求項2に係る発明の構成を明確に記載すれば十分である。したがって、本願請求項2に係る発明は明確でない。
(10)本願請求項2に係る発明において、「請求項1を製造するのには」とあるが、請求項1の何を「製造するのには」なのか明確にする必要がある。したがって、本願請求項2に係る発明は明確でない(製造するものは、おそらく「スタッドレスタイヤ」と思われるが、請求項においてはそのことを明確にする必要がある。)。」

第2の2.拒絶理由通知(2)
拒絶理由通知(2)の理由1として、以下が指摘されている。
「この出願(以下「本願」という。)は、【特許請求の範囲】の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願請求項1-5に係る発明のカテゴリーが、全て不明瞭である。したがって、本願請求項1-5に係る発明は明確でない。
(2)本願請求項4が、独立請求項なのか請求項1、2又は3の従属項なのか明瞭でない結果、不明確である。
(3)本願請求項5が、独立請求項なのか請求項1又は2の従属項なのか明瞭でない結果、不明確である。」

第2の3.拒絶理由通知(3)
拒絶理由通知(3)の理由1として、以下が指摘されている。
「この出願(以下「本願」という。)は、【特許請求の範囲】の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願請求項1-5に係る発明のカテゴリーが、全て不明瞭である。したがって、本願請求項1-5に係る発明は明確でない。
(2)本願請求項4が、独立請求項なのか請求項1、2又は3の従属項なのか明瞭でない結果、不明確である。
(3)本願請求項5が、独立請求項なのか請求項1又は2の従属項なのか明瞭でない結果、不明確である。」

第2の4.拒絶理由通知(4)
平成25年 6月21日付けで通知した拒絶理由は、特許法第36条第4項及び第6項、第37条第29条第2項を根拠とするものであり、概要は、以下のとおりである。

(36条)
(略)

3.請求項2、3、5等において「トレッド部」の「高さ」、「長さ」、「幅」、「厚さ」が、具体的にいかなる範囲か不明確である。意見書で参考図により説明されたい。

4.請求項2において、「同じ幅に切断」、「中央部は幅広く切断」とあるが、まず「同じ幅に切断」した布を、次いで図1のように「中央部は幅広く切断」するということか不明確である。

(略)

13.請求項3の「生カバー」とはいかなるものか不明である。

(略)

18.各請求項について、従属請求項なのか独立請求項なのか、いずれかの請求項に従属するのか、全ての請求項に従属するのか、他の請求項との関係が不明である。例えば、請求項6は、「請求項1,2,3にもこの請求項6の水を」、「請求項4,5にもこの請求項6の水を」とあり、関係が不明である。請求項7も同様である。

(略)

25.図面の関係が、図面の簡単な説明を参照しても不明である。例えば、「正面図」、「側面図」、「断面図」、「図○の××の部分の拡大図」、「図○の××方向から見た図」等の説明をお願いしたい。

26.符号の説明が不明である。各符号が示すものは、「もの(構成要素)」を示していると解されるが、「動作」として説明されている。

(37条)
29条の理由として示すとおり、トレッド部表面から吸収した水分を溝側面から排出することに、特別な技術的特徴は認められない。そうすると、水分を吸収し排出するための「伝達手段」が「布又は糸」である請求項1?5に係る発明と、「極小空間」である請求項6?7に係る発明との間で、同一の又は対応する特別な技術的特徴を見出すことができない。
よって、請求項1?5に係る発明と、請求項6?7に係る発明とは、発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当しない。

(29条)
本発明は、上記のとおり不明確ではあるが、請求人の便のため、29条についても指摘しておく。
1.特開2001-219716号公報
2.特開平4-193611号公報
3.実願昭62-389号(実開昭63-108803号)のマイクロフイルム
4.特開平3-258603号公報
5.特開平11-254445号公報
6.特開平4-38207号公報
7.特開2006-297807号公報
8.特表2000-506820号公報

請求項1、4について
刊行物1又は2には、氷雪性能向上のため、サイブにより水を吸い上げ、排出するものが記載されている。サイブは、主たる溝にも連通し、しかも主たる溝は水の吸収・排出機能を有していることから、サイブ内の水は溝にも排出されると解される。
撚糸による布、撚糸が、水の伝達機能を有することは周知であり、しかも、タイヤにおいて、布を利用するものが刊行物3に、糸を利用するものが刊行物4に記載されていることから、刊行物1又は2のものにおいて、水の伝達手段として、布、糸を利用することに困難性は認められない。

(略)

補正は、出願時の明細書、図面の範囲に限られる。新規事項の追加とならないよう留意願いたい。

本願に対しては、審査段階を含め、既に何回も拒絶理由が通知されているところ、拒絶の理由が解消されない場合は、不成立(拒絶)審決となる。特定の請求人に同様の拒絶理由を何度も通知することは、請求人間の公平の観点から問題があるので、ご理解願いたい。
請求人は、これまでの手続をみると、特許手続について、不慣れなことは明らかであり、今後も手続を行うのであれば、代理人(弁理士)を利用するか、無料相談(例えば、以下参照)等を利用し、手続を十分理解した上で対応願いたい。
今後、状況によっては、特許法第13条第1項による代理人選任命令もありうる。

【参考】無料相談先
日本弁理士会北海道支部 011-736-9331
北海道発明協会 011-747-8256

以上、特許法第159条第2項で準用する同法第50条の規定により、通知する。

第3.第36条第4項及び第6項についての判断
1.発明のカテゴリー
拒絶理由(1)の理由1の(1)、拒絶理由(2)の理由1の(1)、拒絶理由(3)の理由1の(1)として、3度にわたり指摘した点は、いずれも発明のカテゴリーが不明瞭であるというものである。
しかし、請求項4、請求項7、請求項8は、「製造方法と製造装置」とされ、「物」の発明である「製造装置」と「方法」の発明である「製造方法」の両方が記載されていることから、いずれの発明であるのか、依然として不明である。
よって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.トレッド部の形状
拒絶理由(4)で3.として指摘した、「請求項2、3、5(注、手続補正(8)により請求項6)等において「トレッド部」の「高さ」、「長さ」、「幅」、「厚さ」が、具体的にいかなる範囲か不明確である。意見書で参考図により説明されたい」なる指摘に対し、請求人は、手続補正(10)において、参考図1及び2をもとに、以下の説明をしている。

「図1の1は請求項2の「その布をスタッドレスタイヤトのレッド部の高さと同じ幅に切断して」、請求項3の「その長さはスタッドレスタイヤを輪切りにした状態でのトレッド部の高さの幅に何回も折ってアコ-ディオン状に折って」、請求項5の「その糸と配合ゴムのよく混合したのをスタッドレスタイヤトレッド部の厚さに成るように板状にした」で図1の1はトレッド部の高さと幅と厚さに該当する」、「請求項2の「長さはスタッドレスタイヤを輪切りにした状態でのトレッド部の長さより長めにして、これは中央部にしわを寄せる為に」、請求項3の「その布をスタッドレスタイヤを輪切りにした状態でのトレッド部の幅より長めにして、これは中央部にしわを寄せる為に」は図1の2がトレッド部の長さ及び幅に該当する」、「請求項3の「長さはスタッドレスタイヤの大きさのトレッド部の回転する表面の円を1周したよりも長くその長さは」は図2の3がスタッドレスタイヤのトレッド部の回転する表面の円を1周する長さである」

すなわち、参考図1の符号1について、「1はトレッド部の高さと幅と厚さに該当する」、符号2について、「2がトレッド部の長さ及び幅に該当する」としている。
一般に、物の大きさを特定する場合、「縦*横*高さ」、「長さ*幅*高さ」、「縦*横*厚さ」等が用いられ、矛盾のない用語が用いられる。
しかし、請求人によれば、参考図1の符号1は、「トレッド部の高さと幅と厚さ」であり、概念の異なる「高さ」、「幅」、「厚さ」を複合したものであり、符号2は「長さ」、「幅」が複合したものとされる。
さらに、同じ「幅」が符号1及び符号2の両方に用いられている。
以上、請求人の説明を踏まえても、「高さ」、「長さ」、「幅」、「厚さ」が、具体的にいかなる範囲であるのか、依然として不明である。
よって、本願は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3.切断形態
拒絶理由(4)で4.として指摘した、「請求項2において、「同じ幅に切断」、「中央部は幅広く切断」とあるが、まず「同じ幅に切断」した布を、次いで図1のように「中央部は幅広く切断」するということか不明確である」なる指摘に対し、請求人は、手続補正(10)において、以下の説明をしている。

「手続補正書の図1の1はトレッド部の幅で有り3は盛り上がっだ部分であり最初から図1の形に切断するのであり、金型のプラダ-に取り付けて高温、高圧の蒸気で膨らました時にトレッド部が弧を形どって加硫されるときにトレッド部表面の布の中央のしわの寄せた盛り上がった部分が両側に移動して盛り上がった部分は1のトレッド部の幅になる」

すなわち、「最初から図1の形に切断する」としている。
しかし、図1を見ると、中央が盛り上がっていることから、最初から中央が盛り上がった形に切断するのであれば、前段階で「同じ幅に切断」する必要はない。
「同じ幅に切断」と「中央部は幅広く切断」との関係は、依然として不明である。
よって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4.生カバー
拒絶理由(4)で13.として指摘した、「請求項3(注、手続補正(8)により請求項4)の「生カバー」とはいかなるものか不明である」なる指摘に対し、請求人は、手続補正(10)において、以下の説明をしている。

「生カバーとは加硫されていない配合ゴムを布に塗って板状にしたものである」

しかし、「生カバー」は、通常の技術用語であるとは認められず、請求人説明の裏付けとなる証拠もないから、「生カバー」は、依然として不明である。
よって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

5.請求項間の関係
拒絶理由(1)の(9)、(10)、拒絶理由(2)の(2)、(3)、拒絶理由(3)の(2)、(3)、拒絶理由(4)の18.で、4度にわたり指摘した点は、いずれも、請求項中に他の請求項番号が含まれているため、当該請求項が、従属請求項なのか独立請求項なのか、従属するならいずれの請求項に従属するのか、他の請求項との関係が不明であるというものである。
かかる指摘に対し、請求人は、手続補正(10)では特段の主張がないから、手続補正(8)により対応したと解される。
請求項1は「スタッドレスタイヤ」、請求項2は「請求項1の製造方法」、請求項3は「請求項1のもう1つの製造方法」とされ、請求項1と請求項2、3とは発明のカテゴリーが異なっている。
よって、請求項2、請求項3でいう「請求項1」を善解すると、「請求項1のスタッドレスタイヤ」を言うと解される。
次に、請求項3をみると「請求項2,3の加硫機」とあり、同様に解釈すると、「請求項2」は「スタッドレスタイヤの製造方法」と解される。その結果、「請求項2,3の加硫機」とは、「スタッドレスタイヤの製造方法の加硫機」の意となり、カテゴリーが混在し、不明となっている。しかも、請求項3が、請求項3自身を引用している。
また、請求項6は、「請求項4の製造装置」とされ、請求項4に従属すると解されるが、請求項4は「製造方法と製造装置」であるから、請求項6が請求項4に従属する場合、カテゴリーが整合していない。
以上、各請求項について、他の請求項との関係が、依然として不明である。
よって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

6.図面の関係
拒絶理由(4)で25.として指摘した、「図面の関係が、図面の簡単な説明を参照しても不明である。例えば、「正面図」、「側面図」、「断面図」、「図○の××の部分の拡大図」、「図○の××方向から見た図」等の説明をお願いしたい」なる指摘に対し、請求人は、手続補正(10)において、参考図4?7に基づく説明をしている。
しかし、参考図4?7は、出願時の明細書、図面ではなく、新たな図面であるから、かかる参考図のみによる説明は適切でない。
さらに、参考図の図4と図5は、同一方向から見た図面と解されるにもかかわらず、手続補正(10)において、「図5は図4の側面図」とされている。参考図の図6と図7も同様である。
参考図を勘案しても、図面の関係が、依然として不明である。
よって、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

7.符号の説明
拒絶理由(4)で26.として指摘した、「符号の説明が不明である。各符号が示すものは、「もの(構成要素)」を示していると解されるが、「動作」として説明されている」なる指摘に対し、請求人は、手続補正(8)を行うとともに、手続補正(10)において、以下の説明をしている。

「符号の示しているのはものと解りやすく動作も述べている」

しかし、手続補正(8)をみると、例えば、以下の記載がある。
「4 トレッド部の形で幅より長くして、トレッド部の高さに切断した布の両面に配合ゴムを塗って横側から見る
5 トレッド部の形で幅より長くして、トレッド部の高さに切断した布の両面に配合ゴムを塗ったものの中央部にしわをよせた
6 トレッド部の形で幅より長くして、トレッド部の高さに切断した布の両面に配合ゴムを塗ったものの中央部にしわをよせて何枚も重ねて板状にしたのをカーカスに巻き貼りつけた」
「8 布の両面に配合ゴムを塗って板状にしてカーカスに直線に巻き貼りつけて金型のプラダーに取りつけて高温、高圧の蒸気でふくらまして弧をえがいてスタッドレスタイヤトレッド部に成型されてトレッド部が弧をえがく
9 弧をえがいてスタッドレスタイヤトレッド部に成型される時にトレツド部の中央部のしわをよせた部分がトレッド部の両側に移動
10 布をトレッド部の形して、幅より長くして、トレッド部の高さに切断したもので中央部が盛り上がってなく直線に切断した布の両面に配合ゴムを塗ってカーカスに巻き貼りつける場合に中央部を盛り上げる様に先に幅の狭い布の両面に配合ゴムを塗ったのを巻いている」

これら記載は、「もの(構成要素)」に関する記載ではなく、「動作」に関する記載であるから、符号の説明が、依然として不明である。
よって、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4.第37条についての判断
拒絶理由(4)で、「請求項1?5に係る発明と、請求項6?7に係る発明とは、発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当しない」旨、指摘した。
請求人は、手続補正(10)において、以下の説明をしている。

「トレッド部のサイビングは雪氷面の上の水分が多くある場合サイビングは水分に埋まってしまいサイビングの横から水分は排出できなく制動は効かない、発泡ゴムで出来たトレッド部のグリップの表面から水分を吸収してグリップの側から水分を排出しても発泡ゴムのドレッド部グリップの表面はなめらかであり、それに対してトレッド部のグリップの表面に布や糸が露出していた場合は、雪氷面の上に水分がたまっていて非常に滑りやすい状態の上に麻布を置くとその麻袋は非常に滑りにくく、これは麻袋の繊維が水分を吸収しているのと繊維が制動の役目をしているからであり、それと同じ原理で布や糸がトレッド部のグリップの表面に露出していたらそこから水分を吸収して布や糸を伝わってグリップの溝の側の布や糸から水分が排出されるのとグリップ表面の布や糸が制動の役目を強めて非常に制動力の高いスタッドレスタイヤが出来るのでありそのスタッドレスタイヤとその製造方法と製造装置を特許請求としているのであり、
請求項6?7(今回の手続補正書では7?8)は既存の技術である水やトリクロルメタン、テトラクロルメタンの発泡ゴムでスタッドレスタイヤの製造はしていなく水やトリクロルメタンやテトラクロルメタンの既存の発泡技術を利用してスタッドレスタイヤとその製造方法と製造装置を特許請求としているのであり極小空間の水分吸収は特許請求とはしていない」

すなわち、請求人は、手続補正(8)により補正された、請求項1?6と請求項7?8に共通する技術的特徴は、「トレッド部表面から吸収した水分を溝側面から排出すること」ではなく、「スタッドレスタイヤとその製造方法と製造装置」であると主張している。
そこで、請求項1、7、8について見ると、請求項1は「スタッドレスタイヤ」なる「物」の発明であり、請求項7?8は「スタッドレスタイヤの製造方法と製造装置」の発明である。
よって、「スタッドレスタイヤとその製造方法と製造装置」のすべてが、技術的特徴とする請求人の主張は根拠がない。
仮に、「物」の発明である「スタッドレスタイヤ」が技術的特徴と善解したとしても、「スタッドレスタイヤ」は、拒絶理由(4)で引用した刊行物1の段落0012、刊行物2の1ページ左下欄4行?右下欄17行にみられるごとく周知であるから、この点が「同一の又は対応する特別な技術的特徴」であると認めることはできない。
よって、請求項1?6に係る発明と、請求項7?8に係る発明とは、依然として、発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当しない。

第5.第29条第2項についての判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、手続補正(8)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりである。

「繊維によりをかけて糸にして水分の吸収を良いくして布を織った物をスタッドレスタイヤトレッド部の中に入っていてトレッド部の表面から布が出ていてその布が雪氷面の水分を吸収してトレド部のグリップ溝の側から排出する制動力の高いスタッドレスタイヤ」

2.刊行物記載の発明
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由(4)に引用された特開2001-219716号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブロック、リブ等の陸部をトレッドに備え、この陸部にサイプを形成した空気入りタイヤに係り、より具体的には、氷雪性能を向上した空気入りタイヤに関するものである。」

「【0006】しかしながら、サイプの対向壁面の面積に対して給水容量が少ないことから、排水性能(除水性能)が劣るとともに、加工性(製作性)の面でやや劣るという課題があった。本発明は、対向壁面の両面に凹凸部を形成し、この凸部がタイヤ負荷時において互いに接触することによってこれ以上のサイプ閉じを阻止し、凸部以外の部分(凹部)がサイプ深さ方向に形成されることによって吸水性能を確保できる氷雪性能に優れた空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、サイプ4が形成された陸部5をトレッド2に備えている空気入りタイヤ1であって、前述の目的を達成するために次の技術的手段を講じている。すなわち、請求項1に係る空気入りタイヤ1は、前記サイプ4の対向両壁面11,12に凹凸部13が形成され、負荷時において前記凹凸部13の凸部14A,14Bが互いに接触してサイプ4が閉じるのを阻止するように構成されていることを特徴とするものである。」

「【0012】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態のいくつかを説明する。図1(1)は空気入りタイヤ1(スタッドレスタイヤ)のトレッド2を示しており、該トレッド2はサイプ4が形成された陸部5を備えており、図では中央1本のストレート主溝6と、左右のストレート主溝7L,7Rを形成することによって、耐横すべりを配慮しており、陸部5はブロックで示しており、トラクションポケット8を形成することによって雪上性を配慮しており、・・・。
【0013】・・・。また、サイプ4については、図示の波形サイプ、直線サイプであっても良く、更には、セミオープン(サイプ一端が溝に連通し、他端が溝に至らないもの)、フルオープン(サイプ両端が溝に連通しているもの)およびクローズサイプ(サイプ両端が溝に連通していないもの)の何れであっても良く、これらを総称してサイプと定義するものとする。
【0014】図1(1)(2)(3)で示しているように、サイプ4の対向壁面11,12(以下、対向両壁面11,12という)には、凹凸部13が形成されており、走行中の負荷(横力)によって凸部14A,14Bが図1(3)で示すように接触してサイプ4が閉じるのを阻止し、凹部15A,15Bによる毛管現象を確保している。・・・。」

「【0021】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、ブロック(陸部)剛性を確保しかつ接地面を充分としながら、サイプによる対スキッド性を約束して氷雪性能を向上した空気入りタイヤを提供できる。」

これらを、図面を参酌し、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「スタッドレスタイヤ1のトレッド2に、端部が溝6,7に連通するサイプ4が形成された陸部5を備え、サイプ4の対向壁面11,12に凹凸部13を形成することでサイプ4が閉じるのを阻止し、毛管現象により吸水性能を確保し、スキッド性を約束し氷雪性能に優れた空気入りタイヤ」

3.対比・判断
刊行物1発明の「トレッド2」は本願発明の「トレッド部(トレド部)」に相当し、同様に、「溝6,7」は「グリップ溝」に、「スキッド性を約束」することは「制動力の高い」ことに、相当する。
刊行物1発明の「トレッド2」には「溝6,7」が形成され、本願発明の「トレッド部」には「グリップ溝」が形成されているから、両者は、「トレッド部にグリップ溝が形成されている」限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「サイプ4」は「毛管現象により吸水」、すなわち「雪氷面の水分を吸収」するものである。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「スタッドレスタイヤのトレッド部の表面から雪氷面の水分を吸収し、トレッド部にグリップ溝が形成されている、制動力の高いスタッドレスタイヤ。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:水分を吸収する手段について、本願発明では「繊維によりをかけて糸にして水分の吸収を良いくして布を織った物をスタッドレスタイヤトレッド部の中に入っていてトレッド部の表面から布が出ていてその布」により行うが、刊行物1発明では「サイプ4の対向壁面11,12に凹凸部13を形成することでサイプ4が閉じるのを阻止し、毛管現象により」行う点。
相違点2:水分の排出について、本願発明では「トレド部のグリップ溝の側から排出」するが、刊行物1発明では明らかでない点。

相違点1について検討する。
撚糸による布、撚糸が、水の吸収機能を有することは周知であり、しかも、タイヤにおいて、布を利用するものが拒絶理由(4)で引用した実願昭62-389号(実開昭63-108803号)のマイクロフイルムに、糸を利用するものが同じく特開平3-258603号公報の特許請求の範囲に記載されている。
刊行物1発明では、水分吸収手段として、サイプによる毛管現象を利用しているが、毛管現象を確実に発生させるためには、サイプの適切な加工、間隔・大きさの制御が必要である。
他方、水分吸収手段として周知である撚糸による布、撚糸を利用する場合は、加工の厳密性はそれほど要求されない。
したがって、加工の容易性の観点から、水分吸収手段として「繊維によりをかけて糸にして織った布」を利用することに困難性は認められない。
請求人は、手続補正(10)において、本願発明は「表面の全面から水分を吸収」する旨、主張する。
しかし、本願発明には、その点が何ら特定されていないから、請求人の主張は根拠がない。

相違点2について検討する。
刊行物1発明における「サイプ」は、その「端部が溝に連通」している。
そうすると、サイプに吸水された水分の排出は、トレッド部の表面のみならず、サイプの端部、すなわち「溝」の側からも行われると解される。
よって、この点は、実質的相違点ではない。

4.小括
本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

第6.付記
特許出願は、法令により定められた手続により、審査・審理される。
そのため、仮に優れた発明であったとしても、手続が不備であるために、特許権が取得できないことは珍しくない。

第7.むすび
本願は、上記第3ないし第5、いずれの理由によっても拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-14 
結審通知日 2014-02-04 
審決日 2014-02-18 
出願番号 特願2007-179033(P2007-179033)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B60C)
P 1 8・ 536- WZ (B60C)
P 1 8・ 121- WZ (B60C)
P 1 8・ 65- WZ (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 河原 英雄
紀本 孝
発明の名称 制動力大きいスタッドレスタイヤ及び製造方法  
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