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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1299371
審判番号 不服2013-5523  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-26 
確定日 2015-03-30 
事件の表示 特願2007-532593「不正リスクアドバイザー」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月30日国際公開、WO2006/034205、平成20年 5月 1日国内公表、特表2008-513893〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2005年9月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2004年9月17日及び2005年8月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、
平成19年3月15日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面、及び、同年4月13日付けで特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文が提出されると共に、平成20年8月1日付けで審査請求がなされ、平成23年5月10日付けで拒絶理由通知(平成23年5月12日発送)がなされ、
これに対して平成23年11月14日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ、
平成24年2月29日付けで最後の拒絶理由通知(平成24年3月2日発送)がなされ、
平成24年9月3日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正書が提出され、
平成24年11月15日付けで上記平成24年9月3日付けの手続補正書による補正の却下の決定(平成24年11月26日謄本発送・送達)がなされるとともに、同日付けで上記平成24年2月29日付けの拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶査定(平成24年11月26日謄本発送・送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成25年3月26日付けで審判請求がなされると共に同日付けで手続補正がなされ、
平成25年4月18日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされ、
平成25年10月4日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(平成25年10月7日発送)がなされたが、請求人から回答書の提出はなかったものである。


第2.平成25年3月26日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年3月26日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成25年3月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のように補正された。

(本件補正前の特許請求の範囲)
(以下、本件補正により補正される以前の特許請求の範囲に記載された各請求項を「補正前の請求項」という。)
「 【請求項1】
プロセッサによって、第1クライアントコンピュータの第1インターネット(IP)アドレスに基づき第1アクセスロケーションを決定することと、
該プロセッサによって、第1アクセス時間を決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータの第2IPアドレスに基づき第2アクセスロケーションを決定することと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を決定することと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の移動速度を計算することと、
該第1IPアドレスまたは該第2IPアドレスのうちの一つから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを該移動速度に基づき判定することであって、該オンラインの商取引は、銀行預金口座へのアクセス、クレジットカードによる商取引、オンラインによる手形払い、電信送金、株取引または個人情報を使用する商取引のうちの一つ以上を含む、ことと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記計算するステップは、
前記第1アクセスロケーションと前記第2アクセスロケーションとの間の距離を計算するステップと、
前記第1アクセス時間と前記第2アクセス時間との間の時間差を計算するステップと、
該計算された時間差で該計算された距離を割り算することによって、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の前記移動速度を計算するステップと
を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロセッサによって、第1クライアントコンピュータに関連する第1アクセスロケーションおよび第1アクセス時間をユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータのIPアドレスに基づき該第2クライアントコンピュータに関連する第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該ユーザーの該移動速度を計算することと、
該第1クライアントコンピュータのIPアドレスまたは該第2クライアントコンピュータのIPアドレスのうちの一つから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを該移動速度に基づき判定することと
を包含する、方法。
【請求項4】
前記第1アクセスロケーションおよび前記第1アクセス時間が、前記ユーザーに関連する行動プロファイルから決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1アクセスロケーションが、該第1アクセスロケーションにおいて前記ユーザーのIPアドレスの関数として決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2アクセスロケーションを、前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶することをさらに包含し、該行動プロファイルは、前記プロセッサに結合されたデータベースに記憶される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1アクセスロケーションは前記ユーザーの最後に有効なアクセスロケーションに
基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第2アクセスロケーションおよび前記第2アクセス時間は、前記ユーザーの現在のアクセスロケーションおよび現在のアクセス時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
プロセッサによって、ユーザーに関連するコンピュータのIPアドレスに基づき、一つ以上の要素を計算することであって、少なくとも一つの要素は、第1アクセスロケーションと第2アクセスロケーションとの間の該ユーザーの移動速度であり、該第1アクセスロケーションまたは該第2アクセスロケーションのうちの一つは、該コンピュータのIPアドレスに関連する、ことと、
該プロセッサによって、該一つ以上の要素に基づき、該コンピュータのIPアドレスから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを判定することと
を包含する、方法。
【請求項10】
前記判定することは、一つ以上のルールを前記少なくとも一つの要素のうちの少なくとも一つの要素へ適用することによって、前記オンラインの商取引が不正であるかを判定することを包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ユーザーの移動速度は、
前記プロセッサによって、第1クライアントコンピュータの第1IPアドレスに基づき前記第1アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、第1アクセス時間を該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータの第2IPアドレスに基づき前記第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の該ユーザーの移動速度を計算するステップと
に従って決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザーの移動速度を計算する前記ステップは、
前記第1アクセスロケーションと前記第2アクセスロケーションとの間の距離を計算するステップと、
前記第1アクセス時間と前記第2アクセス時間との間の時間差を計算するステップと、
該計算された時間差によって該計算された距離を割り算することによって、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の該移動速度を計算するステップと
を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クライアントによってさらに処理するために、前記プロセッサによって、前記判定を該クライアントへ転送することをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記プロセッサによって、前記判定に基づき、報告を生成することをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセッサによって、前記オンラインの商取引と関連するリスクスコアを生成することをさらに包含し、該リスクスコアは、リスク値およびリスクウェートの計算または該リスクスコアを設定するルールの計算のうちの一つ以上に基づくリスク値の集合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセッサに機能的に結合されたデータベースにおいて、前記リスクスコアをデータベースに記憶することをさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
クライアントが前記リスクスコアと比較するために閾値レベルを割り当てる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記リスクスコアが前記閾値レベルを超過したときには、前記オンラインの商取引は不正であると判定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リスクスコアはリアルタイムで生成される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
クライアントにより、前記判定するステップの結果にアクセスすることをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記クライアントは前記オンラインの商取引が不正であるかどうかを示し得る、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記一つ以上の要素のうちの少なくとも一つが静的または動的である、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
要素は、前記IPアドレスと関連する国、地域、または都市を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
要素は、前記IPアドレスと関連するアドレスと比較するために、クライアントによって提供されるアドレスである、請求項9に記載の方法。
【請求項25】
要素は、クライアントと関連するデータベースに記憶されるエリアコードおよび電話番号と比較するために、該クライアントによって提供されるエリアコードまたは電話番号である、請求項9に記載の方法。
【請求項26】
要素は、確認のためにクライアントによって提供される電子メールアドレスである、請求項9に記載の方法。
【請求項27】
要素は、現在の商取引と比較される、前記プロセッサに機能的に結合されたデータベースに記憶された商取引習慣に基づく、前記ユーザーに関連するアクセス行動である、請求項9に記載の方法。
【請求項28】
要素は、所定の時間内に前記オンラインの商取引が試みられた頻度である、請求項9に記載の方法。
【請求項29】
要素は、特定の時間内に単一のIPアドレスが複数の前記ユーザーに固有の識別子にアクセスする、または複数の該ユーザーに固有の識別子を使用する速度である、請求項9に記載の方法。
【請求項30】
クライアントは前記一つ以上の要素の少なくとも一つに関して閾値レベルを割り当てるように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項31】
クライアントは一つ以上のユーザー定義の要素を作るように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項32】
クライアントは前記一つ以上の要素の少なくとも一つに関して拘束ルールを定義するように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項33】
前記第1アクセスロケーションが、前記プロセッサによって、前記ユーザーと関連する行動プロファイルから決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項34】
前記第1アクセスロケーションは、前記ユーザーの最後に有効なアクセスロケーションに基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項35】
前記第2アクセスロケーションおよび前記第2アクセス時間は、前記ユーザーの現在のアクセスロケーションおよび現在のアクセス時間である、請求項11に記載の方法。
【請求項36】
前記第2アクセスロケーションについての情報が、前記プロセッサに結合されたデータベースにおいて、前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶されている、請求項9に記載の方法。
【請求項37】
前記第1アクセスロケーションおよび前記第2アクセスロケーションについての情報が前記プロセッサに結合されたデータベースに記憶される、請求項9に記載の方法。
【請求項38】
要素は前記IPアドレスに関連する接続タイプを備え、接続タイプは、ダイヤルアップ、Integrated Services Digital Network(ISDN)、ケーブルモデム、Digital Subscriber Line(DSL)、Digital Signal1(T1)、またはOptical Carrier3(OC3)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項39】
要素は前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶される接続タイプを備え、接続タイプは、ダイヤルアップ、Integrated Services Digital Network(ISDN)、ケーブルモデム、Digital Subscriber Line(DSL)、Digital Signal1(T1)、またはOptical Carrier3(OC3)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項40】
要素は前記ユーザーの前記IPアドレスに関連するホストタイプを備え、該ホストタイプは、ネットワークのエンドポイント、ネットワークのプロクシ、またはネットワークのファイヤーウォールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項41】
要素は、前記プロセッサに結合されたデータベースにおいて、前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶されるドメインネームを含む、請求項9に記載の方法。」

(本件補正後の特許請求の範囲)
(以下、本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された各請求項を「補正後の請求項」という。なお、下線は、補正箇所を示すものとして、請求人が付与したものである。)
「 【請求項1】
プロセッサによって、第1クライアントコンピュータの第1インターネット(IP)アドレスに基づき第1アクセスロケーションを決定することと、
該プロセッサによって、第1アクセス時間を決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータの第2IPアドレスに基づき第2アクセスロケーションを決定することと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を決定することと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の移動速度を計算することと、
該第1IPアドレスまたは該第2IPアドレスのうちの一つから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを該移動速度に基づき判定することであって、該オンラインの商取引は、銀行預金口座へのアクセス、クレジットカードによる商取引、オンラインによる手形払い、電信送金、株取引または個人情報を使用する商取引のうちの一つ以上を含む、
ことと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記計算するステップは、
前記第1アクセスロケーションと前記第2アクセスロケーションとの間の距離を計算するステップと、
前記第1アクセス時間と前記第2アクセス時間との間の時間差を計算するステップと、
該計算された時間差で該計算された距離を割り算することによって、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の前記移動速度を計算するステップと
を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロセッサによって、第1クライアントコンピュータに関連する第1アクセスロケーションおよび第1アクセス時間をユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータのIPアドレスに基づき該第2クライアントコンピュータに関連する第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該ユーザーの該移動速度を計算することと、
該第1クライアントコンピュータのIPアドレスまたは該第2クライアントコンピュータのIPアドレスのうちの一つから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを該移動速度に基づき判定することと
を包含する、方法。
【請求項4】
前記第1アクセスロケーションおよび前記第1アクセス時間が、前記ユーザーに関連する行動プロファイルから決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1アクセスロケーションが、該第1アクセスロケーションにおいて前記ユーザーのIPアドレスの関数として決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2アクセスロケーションを、前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶することをさらに包含し、該行動プロファイルは、前記プロセッサに結合されたデータベースに記憶される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1アクセスロケーションは前記ユーザーの最後に有効なアクセスロケーションに基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第2アクセスロケーションおよび前記第2アクセス時間は、前記ユーザーの現在のアクセスロケーションおよび現在のアクセス時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
プロセッサによって、ユーザーに関連するコンピュータのIPアドレスに基づき、一つ以上の要素を計算することであって、少なくとも一つの要素は、第1アクセスロケーションと第2アクセスロケーションとの間の該ユーザーの移動速度であり、該第1アクセスロケーションまたは該第2アクセスロケーションのうちの一つは、該コンピュータのIPアドレスに関連する、ことと、
該プロセッサによって、該一つ以上の要素に基づき、該コンピュータのIPアドレスから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを判定することと
を包含する、方法。
【請求項10】
前記判定することは、一つ以上のルールを前記少なくとも一つの要素のうちの少なくとも一つの要素へ適用することによって、前記オンラインの商取引が不正であるかを判定することを包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ユーザーの移動速度は、
前記プロセッサによって、第1クライアントコンピュータの第1IPアドレスに基づき前記第1アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、第1アクセス時間を該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータの第2IPアドレスに基づき前記第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定するステップと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の該ユーザーの移動速度を計算するステップと
に従って決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザーの移動速度を計算する前記ステップは、
前記第1アクセスロケーションと前記第2アクセスロケーションとの間の距離を計算するステップと、
前記第1アクセス時間と前記第2アクセス時間との間の時間差を計算するステップと、
該計算された時間差によって該計算された距離を割り算することによって、該第1アクセスロケーションと該第2アクセスロケーションとの間の該移動速度を計算するステップと
を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クライアントによってさらに処理するために、前記プロセッサによって、前記判定を該クライアントへ転送することをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記プロセッサによって、前記判定に基づき、報告を生成することをさらに包含する、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセッサによって、前記オンラインの商取引と関連するリスクスコアを生成することをさらに包含し、該リスクスコアは、リスク値およびリスクウェートの計算または該リスクスコアを設定するルールの計算のうちの一つ以上に基づくリスク値の集合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセッサに機能的に結合されたデータベースにおいて、前記リスクスコアをデータベースに記憶することをさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
クライアントが前記リスクスコアと比較するために閾値レベルを割り当てる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記リスクスコアが前記閾値レベルを超過したときには、前記オンラインの商取引は不正であると判定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リスクスコアはリアルタイムで生成される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
クライアントにより、前記判定するステップの結果にアクセスすることをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記クライアントは前記オンラインの商取引が不正であるかどうかを示し得る、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記一つ以上の要素のうちの少なくとも一つが静的または動的である、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
要素は、前記IPアドレスと関連する国、地域、または都市を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
要素は、前記IPアドレスと関連するアドレスと比較するために、クライアントによって提供されるアドレスである、請求項9に記載の方法。
【請求項25】
要素は、クライアントと関連するデータベースに記憶されるエリアコードおよび電話番号と比較するために、該クライアントによって提供されるエリアコードまたは電話番号である、請求項9に記載の方法。
【請求項26】
要素は、確認のためにクライアントによって提供される電子メールアドレスである、請求項9に記載の方法。
【請求項27】
要素は、現在の商取引と比較される、前記プロセッサに機能的に結合されたデータベースに記憶された商取引習慣に基づく、前記ユーザーに関連するアクセス行動である、請求項9に記載の方法。
【請求項28】
要素は、所定の時間内に前記オンラインの商取引が試みられた頻度である、請求項9に記載の方法。
【請求項29】
要素は、特定の時間内に単一のIPアドレスが複数の前記ユーザーに固有の識別子にアクセスする、または複数の該ユーザーに固有の識別子を使用する速度である、請求項9に記載の方法。
【請求項30】
クライアントは前記一つ以上の要素の少なくとも一つに関して閾値レベルを割り当てるように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項31】
クライアントは一つ以上のユーザー定義の要素を作るように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項32】
クライアントは前記一つ以上の要素の少なくとも一つに関して拘束ルールを定義するように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項33】
前記第1アクセスロケーションが、前記プロセッサによって、前記ユーザーと関連する行動プロファイルから決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項34】
前記第1アクセスロケーションは、前記ユーザーの最後に有効なアクセスロケーションに基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項35】
前記第2アクセスロケーションおよび前記第2アクセス時間は、前記ユーザーの現在のアクセスロケーションおよび現在のアクセス時間である、請求項11に記載の方法。
【請求項36】
前記第2アクセスロケーションについての情報が、前記プロセッサに結合されたデータベースにおいて、前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶されている、請求項9に記載の方法。
【請求項37】
前記第1アクセスロケーションおよび前記第2アクセスロケーションについての情報が前記プロセッサに結合されたデータベースに記憶される、請求項9に記載の方法。
【請求項38】
要素は前記IPアドレスに関連する接続タイプを備え、接続タイプは、ダイヤルアップ、Integrated Services Digital Network(ISDN)、ケーブルモデム、Digital Subscriber Line(DSL)、Digital Signal1(T1)、またはOptical Carrier3(OC3)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項39】
要素は前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶される接続タイプを備え、接続タイプは、ダイヤルアップ、Integrated Services Digital Network(ISDN)、ケーブルモデム、Digital Subscriber Line(DSL)、Digital Signal1(T1)、またはOptical Carrier3(OC3)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項40】
要素は前記ユーザーの前記IPアドレスに関連するホストタイプを備え、該ホストタイプは、ネットワークのエンドポイント、ネットワークのプロクシ、またはネットワークのファイヤーウォールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項41】
要素は、前記プロセッサに結合されたデータベースにおいて、前記ユーザーに関連する行動プロファイルに記憶されるドメインネームを含む、請求項9に記載の方法。」

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
(1-1)本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

そして、本件補正は上記「第1.」に示したとおり審判請求と同時にするものであり、上記「第2.」の「1.」に示したとおり特許請求の範囲についてする補正であるから、その目的について検討する。

(1-2)
補正前の請求項3に記載された「該第1IPアドレス」について、補正後の請求項3において「該第1クライアントコンピュータのIPアドレス」と補正することは、「第1IPアドレス」なる用語が当該記載箇所より以前に用いられていない誤記を訂正したものであることが明らかである。
補正前の請求項8に記載された「ユーザーの現在のロケーション」について、補正後の請求項8において「ユーザーの現在のアクセスロケーション」と補正することは、補正前の「ロケーション」を、「アクセス」について認識されるロケーションへと、限定を付加するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
補正前の請求項10に記載された「前記判定するステップは、」について、補正後の請求項10において「前記判定することは、」と補正することは、引用元の請求項9の記載と平仄を合わせるために行う誤記の訂正である。
補正前の請求項29に記載された「該ユーザに識別子を使用する」について、補正後の請求項29において「該ユーザ」に固有の識別子を使用する」と補正することは、直前に登場する「固有の識別子」との間で平仄を合わせるために行う誤記の訂正である。

したがって、本件補正後の請求項8についてする補正は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下「限定的減縮」と記す。)、すなわち、第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものである。

(2)独立特許要件

上記(1)のとおり、本件補正は限定的減縮を目的とするものを含むことから、本件補正後の請求項8に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(2-1)本件補正発明
本件補正後の請求項8に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記平成25年3月26日付の手続補正(本件補正)により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載されたとおりの次のものである。(引用元とされる請求項3も含めて再掲する。)

請求項3:「 プロセッサによって、第1クライアントコンピュータに関連する第1アクセスロケーションおよび第1アクセス時間をユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータのIPアドレスに基づき該第2クライアントコンピュータに関連する第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該ユーザーの該移動速度を計算することと、
該第1クライアントコンピュータのIPアドレスまたは該第2クライアントコンピュータのIPアドレスのうちの一つから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを該移動速度に基づき判定することと
を包含する、方法」
請求項8:「 前記第2アクセスロケーションおよび前記第2アクセス時間は、前記ユーザーの現在のアクセスロケーションおよび現在のアクセス時間である、請求項3に記載の方法。」

(2-2)引用文献
(2-2-1)引用文献1の記載事項及び引用発明1
本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成24年2月29日付けの原審の拒絶理由において引用された、国際公開第03/036576号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(下線は、当審において付与したものである。)

A「The subject of the invention is the method and system of additional securing of payments made with payment cards, complementing the known methods and systems of authorization of transactions made with payment cards.」(第1頁、「Technical Field」欄)
(当審仮訳:この発明の主題は、支払いカードで行われる既知の取引認証に係る方法及びシステムを補完するものであって、支払いカードで行われる決済の追加的な確保の方法及びシステムである。)

B「The present invention can make use of generally available telecommunications services, in particular voice transmission, automatic voice server, text messages transmission (SMS - Short Message Service), multimedia message transmission, electronic mail (e-mail) and "instant messaging". The telecommunications services are accessible via a communication terminal which is held by the payment card user. A mobile phone or, to a smaller extent, "pager" are typical examples of such terminals. The invention also makes use of the' so called localizable terminals, that is the terminals whose geographical position can be located. Any portable device, independent or working with other devices enabling identification of geographical position at any selected moment can be a localizable terminal. A mobile phone can be a typical example of a localizable terminal, since telephone network enables pretty precise identification of the current location of the mobile phone by using the information on the mobile phone or mobile phones in the network the range of which the given mobile phone is currently in. The invention can also make use of PDA (Personal Digital Assistant) and specialized tracking devices. Localizable terminals can also make use of various location technologies, both using the infrastructure of mobile telephone networks and the ones independents of such networks (e.g. GPS - "Global Positioning System") or mixed technologies (e.g. GPS supported by mobile telephone network). In some special cases, a terminal can be at the same time a communication and a localizable terminal, thus becoming a universal terminal.」(第5頁、「Mode for Carrying Out the Invention」欄)
(当審仮訳:本発明は、一般に利用可能な通信サービスを利用することができる。とりわけ、音声伝送や、自動音声サーバや、テキストメッセージ送信(SMS - ショートメッセージサービス)や、マルチメディアメッセージの送信や、電子メール(e-mail)、及び「インスタントメッセージング」である。通信サービスは、支払いカードユーザによって保持運営されている通信端末を介してアクセス可能である。携帯電話や、より狭義では「ポケットベル」は、このような端末の典型的な例である。本発明はまた、地理的位置に配置することができる端末である 'いわゆるローカライズ端末を利用する。任意のポータブルデバイス、独立した、または任意の選択された瞬間に地理的な位置の特定を可能にする他のデバイスでの作業は、ローカライズ可能な端末であってもすることができます。携帯電話上の情報や携帯電話が現時点でどの範囲のネットワークに繋がっているかの情報を用いて、電話ネットワークがその携帯電話の現在位置のかなり正確な同定を可能にするため、携帯電話は、ローカライズ可能な端末の典型例である。本発明はまた、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)および特殊トラッキングデバイスを利用することができる。 ローカライズ可能な端末は、携帯電話ネットワークのインフラでも、独立系のネットワーク(例えば、「全地球測位システム」、GPS)のどちらでも、あるいはこれらの双方の混合技術(例えば、携帯電話網が使用するGPS)のいずれかを使用して、さまざまな位置検出技術を利用することができる。いくつかの特殊ケースでは、端末は、このように、通信機器であると同時に、ローカライズ端末、ユニバーサル端末となることができる。)

C「Another version of the system 1 is additionally equipped with a calculating irregularity detecting module 3 (IDM - fig. 5), used to detect irregularities of authorization of payments requiring the use of a payment terminal. The system 1 in this version also contains an information database on the previous transactions made with cards 6 and two additional module interfaces 7 and 10. Interface 10 works as an intermediary in contacts with the payment terminals systems 12 managing the information on payment terminals, providing information on available payment terminals and their geographical positions. The location interface 7 enables connections with location modules 14 providing the service of locating localizable terminals. Irregularity detecting module 3 detects some illegal operations made with duplicated or forged cards, and its use can be conditional and depend on many factors, such as for example the amount of the payment to be made. Operation of the irregularity detecting module 3 consists in knowing the geographical position of payment terminals and in the assumption that two subsequent payments made with the same card must take place within a time span big enough for the card holder to be able to move between the geographical positions in which the payment terminals used to make the two subsequent payments are used. Based on the theoretical and/or empirical data, the standard (i.e. the smallest physically possible) time-spatial distance between the two payment terminals is calculated. 」(第7頁第30行-第8頁第15行)
(当審仮訳:システム1の他の態様は、不正を計算する検知モジュール3(IDM-図5)が追加的に装備されたものである。これは、支払い端末の使用を必要とする決済承認の不正を検出するために使用されるモジュールである。本態様でのシステム1はまた、当該カード6を用いた以前の取引を収容する情報データベース、及び、 2つの追加モジュールインターフェイス7、10をも備える。インターフェイス10は、インターフェイス決済端末の情報を管理する決済端末システム12と協働する仲介者として、以前の決済取引に関する情報のデータベースが含まれている利用可能な決済端末の情報及びその(端末の)地理的位置の情報の双方を得るよう機能する。場所インターフェイス7は、ローカライズ可能な端末の位置を特定するサービスを提供するロケーション・モジュール14との接続を可能にします。不正検知モジュール3は、重複した操作あるいは偽造カードを用いた不法な操作を検出し、当該利用は、条件付きで可能で、多数の要因;例えば行われる取引数など、に依存することで可能とします。不正検知モジュール3の動作は、支払い端末の地理的位置を知ることで、カード保有者が(複数の)地理的位置の間を移動できるようにするために同じカードでなされた二つの連続の支払いが十分な大きい期間内に行わなければならないことを前提に構成されています。理論的及び/又は経験的データに基づいて、2つの支払い端末間の標準の時間空間的な距離(すなわち、物理的に可能な最小の)が計算される。)

D「Irregularity detecting module 3 retrieves from the database 6 information on the previous transaction made with the given card, that is the date and time of the payment and geographical position of the then used payment terminal. Then from the payment terminal system 12, via the interface 10 information on the geographical position of payment terminal that the additional authorized current payment is related to is retrieved. The information on the location of the payment terminal can be also included in the authorization question and then the payment terminal system 12 and the interface 10 are not used. After the necessary data have been retrieved, the time-spatial distance between the current payment operation and the previous operation related to the same card is calculated and compared with the standard distance. If the distance is smaller than the standard one, it can mean that it is likely that there exist two copies of the same card and that there is an attempt of a; fraud. 」(第8頁第21行-第33行)
(当審仮訳:前記カードによる以前の取引情報を収容したデータベース6の情報から、不正検知モジュール3は、以前に使用された支払い端末における支払いの日付及び時刻と、地理的位置のデータを検索します。そして、現在の追加的な決済承認に関係する支払い端末の地理的情報が、インターフェイス10を経由して支払い端末システム12から検索されます。支払い端末の位置についての情報も承認質問に含むことができます。そのとき、支払い端末システム12およびインターフェイス10は使用されません。
必要なデータが取得された後、現在の支払い動作と同じカードに関連する以前の操作との間の時間空間距離を計算し、標準距離と比較されます。その距離が標準距離より小さいとしたら、それは同じカードの2つのコピーが存在する可能性があることを意味し、かつ、詐欺の試みが存在すると言えるでしょう。)

上記Aには、支払いカードで行われる決済の追加的な確保の方法が記載され、上記Bには、決済が行われる端末として携帯電話やPDAの例が示されつつ、端末が電話ネットワークに限定されないネットワークにアクセス(=繋がる)すると現在の位置を同定することが可能であることが記載され、上記C及びDには、決済承認の不正を検知する不正検知モジュール3を含めたシステム1が、以前に使用された支払い端末における支払いの時刻および地理的位置のデータを検索し、現在の追加的な決済承認に関係する支払い端末の地理的情報を、インターフェイス10を経由して支払い端末システム12から検索し、現在の支払い動作と同じカードに関連する以前の操作との間の時間空間距離を計算し、標準距離と比較することで詐欺が試みられたとする一連の処理が記載されている。
上記の点を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明1)
「システムの不正検知モジュールは、以前にネットワークにアクセスされた支払い端末における支払いの日付及び時刻と地理的位置のデータとを検索し、
該モジュールは、現在の追加的な決済承認に関係する支払い端末の地理的情報を、インターフェイスを経由して支払い端末システムから検索し、
該モジュールは、現在の支払い動作と同じカードに関連する以前の操作との間の時間空間距離を計算し、
当該時間空間距離を標準の時間空間的な距離と比較することで決済承認の不正である詐欺が試みられたとする
方法。」

(2-2-2)引用文献2の記載事項及び引用発明2
本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成24年2月29日付けの原審の拒絶理由において引用された、特開2000-40064号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(下線は、当審において付与したものである。)

D「【0006】従って本発明の目的は、移動端末から有線ネットワークへのアクセスにおいて、不正アクセスを防止できるようにすることにある。」

E「【0009】本発明の第2の側面に従うネットワークアクセスの認証方式は、移動クライアントがネットワーク上のサーバから所望の情報を取得する環境に適用されるもので、移動クライアントのサーバへのアクセス時に、移動クライアントからの位置情報によりその移動速度を演算する手段と、演算された移動速度に基づいてアクセスの正当性を判断し、正当と認めたときアクセスを許可する手段とを備える。」

F「【0027】認証サーバ11は、図2に示すように、通信情報処理部23と、認証情報依存部25と、発ID処理部27と、リモートアクセス処理部29とを備える。
・・・(中略)・・・
【0030】発ID処理部27には、移動端末1_(1)の移動速度上限値として、例えば200km/hが予め設定されている。発ID処理部27は、通信情報処理部23から与えられた発IDに対応する移動端末(この場合は、移動端末1_(1))の過去のアクセス履歴、即ち、移動端末1_(1)が前回アクセスしたときの時刻データt_(1)、及びアクセスしたときの位置データ(x_(1)、y_(1))を認証情報保存部25から取得する。そして、これらの各データと、今回のアクセス時刻データt_(2)、及び今回のアクセス時における移動端末1_(1)の現在位置データ(x_(2)、y_(2))とに基づき、下記の(1)式により移動端末1_(1)の移動速度vを求める。
【0031】
【数1】


発ID処理部27は、(1)式により求めた移動速度vと、上記移動速度上限値(200km/h)とを比較した結果、v≦移動速度上限値 であれば、正当なアクセスと判定し、一方、v≧移動速度上限値 であれば、現実的な移動速度でないとして不正アクセスと判定する。そして、これらの判定結果を、リモートアクセス処理部29に与える。」

上記Dには、移動端末から有線ネットワークへのアクセスにおいて、不正アクセスを防止できるようにすることを目的とする発明が記載され、
上記Eには、ネットワークアクセスの認証方式として、移動クライアントのサーバへのアクセス時に、移動クライアントからの位置情報によりその移動速度を演算する手段と、演算された移動速度に基づいてアクセスの正当性を判断し、正当と認めたときアクセスを許可する方式が記載され、
上記Fには、移動端末1_(1)が前回アクセスしたときの時刻データt_(1)、及びアクセスしたときの位置データ(x_(1)、y_(1))を認証情報保存部25から取得する。そして、これらの各データと、今回のアクセス時刻データt_(2)、及び今回のアクセス時における移動端末1_(1)の現在位置データ(x_(2)、y_(2))とに基づき、移動端末1_(1)の移動速度vを求め、求めた移動速度vと、上記移動速度上限値(200km/h)とを比較した結果、v≧移動速度上限値 であれば、現実的な移動速度でないとして不正アクセスと判定する処理が記載されている。
上記D?Fの点を踏まえると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明2)
「移動端末から有線ネットワークへのアクセスにおいて、不正アクセスを防止できるようにする方法であって、
移動端末が前回アクセスしたときの時刻データ、及びアクセスしたときの位置データを取得し、
これらの各データと、今回のアクセス時刻データ、及び今回のアクセス時における移動端末の現在位置データとに基づき、移動端末の移動速度を求め、
求めた移動速度と、移動速度上限値とを比較し、移動速度≧移動速度上限値 であれば、現実的な移動速度でないとして不正アクセスと判定する処理
を含む方法。」

(2-2-3)引用文献3の記載事項
本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成24年2月29日付けの原審の拒絶理由において引用された、米国特許出願公開第2003/0172036号明細書(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(下線は、当審において付与したものである。)

G「In the system of FIG. 1 and method of FIG. 2 a payer (not shown) enters an online payment instruction, such as in connection with the online purchase of goods or services, at a communications device, such as a computer 100 , and transmits the payment instruction to a computer 102 , typically being a network server, via a network 104 , such as the Internet.」(第3頁右欄[0054]参照)
(当審仮訳:図1および図2の方法のシステムでは、支払人(図示せず)はコンピューター100のようなコミュニケーション装置で、品物またはサービスのオンラインでの買い物のようにオンライン決済指示を入力し、インターネットのようなネットワーク104を経由し、典型的にはネットワーク・サーバーで、コンピューター102に支払い指示を送信します。)

H「Upon receiving the payment instruction, computer 102 determines a network address associated with the online payer using conventional techniques. Typically, the network address is of the communications device used to transmit the payment instruction, such as computer 100 , and is transmitted as part of the payment instruction without the payer's intervention. The network address may be an IP network address, such as where network 104 is the Internet, or any other type of address. Computer 102 then determines a location associated with the network address using conventional methods, such as by employing a network address-to-location database 106 in which network addresses are mapped to locations. The location is used to represent the location of the online payer, and may be a geographical location,」(第3頁右欄[0055]参照)
(当審仮訳:支払い指示を受ける際、コンピューター102は、従来の技術を使用して、オンライン支払人に関連したネットワーク・アドレスを決定します。典型的には、ネットワーク・アドレスは、コンピューター100のような支払い指示を送信するために使用されるコミュニケーション装置で、支払人の介在のない支払い指示の一部として送信されます。ネットワーク・アドレスは、ネットワーク104がインターネットであればIPネットワーク・アドレスであり、あるいは他のタイプのアドレスでよい。その後、コンピューター102は、従来方式を使用した、ネットワーク・アドレスからの写像される位置、例えば、ネットワークアドレスを位置へとマッピングしたネットワーク・アドレス対位置データベース106の使用により、ネットワーク・アドレスに関連した位置を決定します。位置はオンライン支払人の位置を表わすために使用され、地理的位置でもよい、)

(3)本件補正発明と引用発明1との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。

ア.引用発明1の「不正検知モジュール」は、上記Cの冒頭に記載されているとおり、「calculating」(計算) し、そのためのデータを取り扱う機能を有するものであるから、当該「不正検知モジュール」は、「プロセッサ」と呼称しても差し支えないと解される。それゆえ、当該「不正検知モジュール」それ自体も、当該モジュールを含むとされる「システム」も又同様に、本件補正発明の「プロセッサ」に相当する。
また、引用発明1の「支払い端末」は、上記Bに記載された「携帯電話」や、「PDA」を具体的なデバイスとするものであり、他方、本件補正発明の(「第1」、「第2」を付加的に伴う)「クライアントコンピュータ」についても、本件明細書の【0007】に記載された「携帯電話、携帯端末、ワイヤレスの通信デバイス、パーソナルコンピュータ、または本発明の実施形態を実行するために特に設計された専用のハードウエアデバイスを含む様々なデバイスが、本発明のシステム、方法、またはコンピュータプログラム製品を実行するために使用され得ることは当業者には明らかである。」との記載からすると、その具体的に使用されるデバイスの態様において引用発明1と一致している。これらのことを総合すると、引用発明1の「支払い端末」は、本件補正発明の「クライアントコンピュータ」に相当する。
また、本件補正発明における、「アクセスロケーション」や「アクセス時間」に付された、「第1」及び「第2」の意味は、本件明細書の【0058】に記載された「第1IPアドレスは24.131.36.54であり、第1アクセス時間302が東部標準時1:00PMであることを仮定する。NetAcuityサーバーによって提供される方法のような、IPアドレスに対応する位置を判定するための方法が、第1IPアドレスがアメリカ、ジョージア州アトランタの第1ロケーション301に対応することを判定するために使用される。次に、144.214.5.246である第2IPアドレスが提供され、第2アクセス時間304が東部標準時1:05PMである。再び、方法が使用され、144.214.5.246が中国、香港の第2アクセスロケーション303に対応することを判定する。」、特にアクセス時間に関する時刻情報の前後関係に着目した場合、「第1」はアクセス上、「第2」に先立って行われる関係にあると看取できるので、引用発明1の「以前にアクセスされた支払い端末における支払いの日付及び時刻と地理的位置のデータ」及び「現在の追加的な決済承認に関係する支払い端末の地理的情報」は、各々本件補正発明の「第1クライアントコンピュータに関連する第1アクセスロケーションおよび第1アクセス時間」及び「第2クライアントコンピュータに関連する現在の第2アクセスロケーション」に相当する。
また、これに伴い、引用発明1における日付や時刻などの時間データや、位置のデータを検索する行為と、本件補正発明における同種のデータの「決定」をする行為とは、互いに情報の確定や、当該確定済み情報の入手という点で共通すると言える。
以上纏めると、
引用発明1の「システムの不正検知モジュールは、以前にネットワークにアクセスされた支払い端末における支払いの日付及び時刻と地理的位置のデータとを検索し、
該モジュールは、現在の追加的な決済承認に関係する支払い端末の地理的情報を、インターフェイスを経由して支払い端末システムから検索し、」は、
本件補正発明の「プロセッサによって、第1クライアントコンピュータに関連する第1アクセスロケーションおよび第1アクセス時間をユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータに関連する現在の第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定することと、」
に相当する。

イ.引用発明1では「現在の」「決済承認」について言及され、かつ、「時間空間的距離」についての言及があることから見て、「現在」の「決済承認」が求められた現在時刻を、「必要な情報」の一部として入手していると解される。
また、引用発明1の「以前」の「決済」も、「現在」の「決済承認」も、上記Bの記載からみて、どちらも「支払い端末」を「ネットワーク」に「アクセス」することでなされていると解される。
そうすると、引用発明1の「モジュール」が「時間空間的距離」を測る過程の一部に本件補正発明で言う「第2アクセス時間」が前提として組み込まれていると判断され、また、引用発明1においても「支払い端末」が「現在」も「ネットワーク」に「アクセス」する状態を伴っていると解されるため、本件補正発明の「該プロセッサによって、現在の第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定する」なるステップを当然に内在していると解せる。

ウ.引用発明1の「該モジュール」が行う、「現在の支払い動作と同じカードに関連する以前の操作との間の時間空間距離を計算」する処理は、
「計算」される「時間空間距離」が、「以前の操作」及び「現在の支払い動作」の各々から抽出された、「日付及び時刻」及び「地理的位置」のデータを「時間空間距離」の「計算」に用いていることを意味すると解されるので、本件補正発明の「プロセッサ」が行うとされた「該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該現在の第2アクセスロケーションおよび該現在の第2アクセス時間」を利用した「計算」に相当する。

エ.引用発明1の「該モジュール」が行う、「当該時間空間距離を標準距離と比較することで決済承認の不正である詐欺が試みられたとする」なる処理は、
「詐欺」の行為が他人をだます行為であって、「決済承認の不正である」条件と併せ考えると、商取引の不正行為に該当することとなるのが明らかなので、本件補正発明の「プロセッサ」が行う、「商取引が不正であるかを」「判定する」処理に相当する。
加えて、引用発明1における「決済承認」は、前記イにて言及したとおり、ネットワークにアクセスすることで発生しているため、ここで言う「商取引」の形態は、何らかの端末で行うとされる「オンラインの商取引」に相当することにもなる。

以上から、本件補正発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)
「プロセッサによって、第1クライアントコンピュータに関連する第1アクセスロケーションおよび第1アクセス時間をユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータに関連する現在の第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、現在の第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該現在の第2アクセスロケーションおよび該現在の第2アクセス時間を用いて計算することと、
オンラインの商取引が不正であるかを判定することと
を包含する、方法。」

(相違点1)
「プロセッサ」による「現在の第2アクセスロケーション」の「決定」に関し、
本件補正発明が、「第2クライアントコンピュータのIPアドレスに基づき」行われるとしているのに対して、引用発明1は、IPアドレスに基づいて行うことについては言及がない点。

(相違点2)
「プロセッサ」によって行われる「計算」処理に関し、
本件補正発明が、「該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該(現在の)第2アクセスロケーションおよび該(現在の)第2アクセス時間の関数として、該ユーザーの該移動速度」を「計算」の対象と特定しているのに対して、引用発明1は、ユーザの「時間空間距離」を「計算」の対象としている点。

(相違点3)
「オンラインの商取引が不正であるか」の「判定」に関し、
本件補正発明では、当該判定を「移動速度に基づき」行うとしているのに対して、引用発明1では、「時間空間距離を標準の時間空間的な距離と比較すること」で行うとしている点。

(4)当審の判断
上記相違点1ないし相違点3について検討する。

(4-1)相違点1について
本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3には、インターネット104を介したオンラインの商取引に関する事項が上記Gの記載に示され、また、上記Hの記載には、利用者である支払人の地理的位置を入手する上で、インターネット104のIPアドレスを利用することが示されている。
してみると、当該相違点1にて本件補正発明が採用した特定事項は、すべて本願の最先の優先日前に公知とされた、インターネットを使用ネットワークとした場合における公知の地理的位置データの取得態様そのものというべきであって、引用文献1には上記Bに記載「Localizable terminals can also make use of various location technologies, both using the infrastructure of mobile telephone networks and the ones independents of such networks (e.g. GPS - "Global Positioning System") or mixed technologies (e.g. GPS supported by mobile telephone network).」のとおり、電話網に限らず他のネットワークを利用することができる旨の示唆もあることを考慮すれば、引用発明1に対し上記引用文献3に係る公知技術の態様を採用することで、地理的位置データの取得に関しIPアドレスの使用に基づいて行うことは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、相違点1は、格別のものではない。

(4-2)相違点2及び3について
そもそも、本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、前記引用発明2とした内容が示すとおり、端末によるネットワークへの不正アクセスを判定する際に、前回アクセスと今回アクセスとの双方で取得した時間と位置の双方のデータから、端末の移動速度を計算し、当該移動速度に基づきアクセスの不正を判定するとした態様が示されている。
更に、引用発明1は、ユーザーの移動速度とまでは示していないものの、「時間空間距離」という表現が示すとおり、ある時間間隔に対して現実的に移動しえる距離であるかどうかを引用発明1では判定に据えていることが、上記Cの記載「Operation of the irregularity detecting module 3 consists in knowing the geographical position of payment terminals and in the assumption that two subsequent payments made with the same card must take place within a time span big enough for the card holder to be able to move between the geographical positions in which the payment terminals used to make the two subsequent payments are used. Based on the theoretical and/or empirical data, the standard (i.e. the smallest physically possible) time-spatial distance between the two payment terminals is calculated. 」からも十分に窺い知れる状況であるといえ、時間と距離の2つから導出されるパラメータの代表が、速度であることは学術上の常識であると言える。
してみると、引用発明1における「時間空間距離」を手がかりとし、引用発明1において、ネットワークへの不正アクセス対処といった、共通する技術分野に属する引用発明2が示す技術思想を適用し、不正アクセスの判定に「移動速度」のパラメータを使用すること、すなわち、相違点2及び3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、相違点2及び3は、格別のものではない。

そして、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明1、2、及び引用文献3に係る公知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、上記引用発明1、2、及び引用文献3に係る公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定の要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.なお、審判請求人は、平成25年3月26日付けで提出された審判請求書において、

「3.本願特許が登録されるべき理由
3.1 本願の特許請求の範囲は、本審判請求書と同時に提出した手続補正書に示されるとおりです。本審判請求書と同時に提出した手続補正書の内容は、平成24年9月3日付けで提出した手続補正書の内容と同一です。なお、平成24年9月3日付けで提出した手続補正書は平成24年11月26日付けで補正却下の決定が送達されていますが、出願人は、当該補正却下の決定に記載の理由から補正却下はなされるべきでないと確信しております。また、補正後の請求項に係る発明は、平成24年2月29日付け拒絶理由通知書に記載の理由にも該当しないと確信しております。以下、その理由について、説明いたします。

3.2 本審判請求書と同時の補正が上記補正却下の決定に記載の理由から補正却下されるべきでないというべき理由について
平成24年11月26日付けの補正却下の決定は、引用文献1?3の組み合わせに基づいて本願発明が容易想到であるというものです。しかし、引用文献1の主題と引用文献3の主題は組み合わせることができるものではありません。従いまして、引用文献1?3の組み合わせに基づいて本願発明が容易想到であるとはいえません。

引用文献1は、電話ネットワークサービスまたはGPSシステムを用いて携帯電話やページャなどの局在可能な端末の地理的位置を識別することを教示しています(引用文献1の第5頁第10行?第25行をご参照ください)。しかし、引用文献1は、支払端末の地理的位置を決定するためにIPアドレスを使用することを記載していません。それに対して、引用文献3が教示しているのは、IPアドレスを支払端末の地理的位置に変換する計算方法です。

少なくともこれらのことから、引用文献3に記載されている端末のIPアドレスに基づいた認証および計算方法を引用文献1に記載されている支払保護方法に組み込むことを当業者ができたとは到底考えられません。

従いまして、補正後の独立請求項1、3、9およびそれらの従属請求項は、引用文献1?3に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえません。

少なくとも以上の理由から、本審判請求書と同時の補正は上記補正却下の決定に記載の理由から補正却下されるべきではありません。

3.3 補正後の請求項に係る発明が平成24年2月29日付け拒絶理由通知書に記載の理由に該当しないというべき理由について
3.3.1 理由1について
上記「3.2 本審判請求書と同時の補正が上記補正却下の決定に記載の理由から補正却下されるべきでないというべき理由について」で上述した理由と少なくとも同一の理由から理由1は解消されるべきです。

3.3.2 理由2について
平成24年 9月 3日付けで提出した意見書において主張した理由と少なくとも同一の理由から理由2は解消されるべきです。 」

と主張している。

しかしながら、本件補正発明の主題は、引用文献1における上記Aの記載と、引用文献3における上記Gの記載とを見比べると、両者はネットワークにアクセスし、支払いを実行するシステムに関する技術的事項を取り扱っている点で明らかに共通した状況にある。
また、引用文献1は、上記(4-1)の「相違点1について」において検討したとおり、電話網の利用が必須であるとすべき開示はなく、位置データ、とりわけユーザ端末の地理的位置データの入手を必須としたものである。
すなわち、引用文献1における電話網を利用した態様は、ある一つの実施の態様を示したに過ぎず、電話網以外の通信網はいくつも存在し、その種別に応じて地理的位置データを入手する具体的態様も自ずと異なりえると解するのが当然の理というべきである。
しかるに、引用文献3が示す、通信網がインターネットであった場合にはIPアドレスによりアクセス位置データが入手できるとする公知の態様を、位置データの取得と利用を開示する引用文献1に記載された技術思想に対し、通常の公知の態様を用いて具体化し、本件補正発明の態様に至ることついては、当業者なら十分に想致できるものであり、その想致に至る過程に殊更考慮すべき阻害要因はないと判断される。
以上のことから、上記審判請求書の主張は理由がなく、採用することができない。

4.補正却下むすび

上記で検討した通り、本願の補正後の請求項8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定の要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記結論のとおり決定する。


第3.本願発明について

1.平成25年3月26日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項8に係る発明は、平成23年11月14日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(引用元とされる請求項3と共に示す。以下「本願発明」という。)

請求項3:「プロセッサによって、第1クライアントコンピュータに関連する第1アクセスロケーションおよび第1アクセス時間をユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2クライアントコンピュータのIPアドレスに基づき該第2クライアントコンピュータに関連する第2アクセスロケーションを該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、第2アクセス時間を該ユーザーに対して決定することと、
該プロセッサによって、該第1アクセスロケーションおよび該第1アクセス時間、および該第2アクセスロケーションおよび該第2アクセス時間の関数として、該ユーザーの該移動速度を計算することと、
該第1IPアドレスまたは該第2IPアドレスのうちの一つから実行されたオンラインの商取引が不正であるかを該移動速度に基づき判定することと
を包含する、方法。」

請求項8:「前記第2アクセスロケーションおよび前記第2アクセス時間は、前記ユーザーの現在のロケーションおよび現在のアクセス時間である、請求項3に記載の方法。」

2.引用文献
本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成24年2月29日付けの原審の拒絶理由において引用された、前記引用文献1には、前記「第2」の「2.」の(2-2-1)の項で摘記した事項が記載されている。
また、本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成24年2月29日付けの原審の拒絶理由において引用された、前記引用文献2及び3には、おのおの前記「第2」の「2.」の(2-2-2)の項及び(2-2-3)の項で摘記した事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」の「2.」の(3)及び(4)で検討した、本件補正発明における発明特定事項である「前記ユーザーの現在のアクセスロケーション」について、「アクセス」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2」の「2.」の(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明1ないし2、及び引用文献3に係る公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1ないし2、及び引用文献3に係る公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明の構成により奏する効果も、引用発明1ないし2、及び引用文献3に係る公知技術から当然予測される範囲内のもので、格別顕著なものとは認められない。


第4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-05 
結審通知日 2014-11-06 
審決日 2014-11-18 
出願番号 特願2007-532593(P2007-532593)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小林 大介
西村 泰英
発明の名称 不正リスクアドバイザー  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  

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