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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1299745
審判番号 不服2013-17990  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-18 
確定日 2015-04-08 
事件の表示 特願2009- 71278「通信端末およびその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月 7日出願公開、特開2010-224859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成21年3月24日を出願日とする出願であって,平成24年2月10日付けで審査請求がなされ,平成25年3月27日付けで拒絶理由通知(平成25年4月2日発送)がなされ,これに対して平成25年5月29日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正書が提出されたが,平成25年6月11日付けで拒絶査定(平成25年6月18日謄本送達)がなされた。
これに対して,「原査定を取り消す,本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」ことを請求の趣旨として平成25年9月18日付けで審判請求がなされると共に,同日付けで手続補正書が提出され,平成25年11月22日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされ,平成25年12月18日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(平成26年1月7日発送)がなされ,平成26年3月10日付けで回答書の提出がなされた。
そして,当審にて,平成26年7月31日付けで平成25年9月18日付けの手続補正が却下(平成26年8月12日謄本送達)されると共に,同日付けで拒絶理由通知(平成26年8月5日発送)がなされ,これに対して平成26年10月2日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正書が提出されたものである。


第2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年10月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電話帳データを表示する表示手段と,前記電話帳データを他の端末に転送する転送手段と,前記電話帳データが格納される記憶領域とを具える通信端末において,
前記電話帳データの各レコードは,所定の情報を転送先端末で非表示とするための第1の識別子を設定可能であり,
前記電話帳データの各レコードのうち,前記第1の識別子が設定された自端末のものでないレコードは編集できないよう管理されており,
前記通信端末は,前記電話帳データを表示する際に,表示しようとするレコードに前記第1の識別子が含まれる場合に前記所定の情報を表示しない第1の保護機能を有するとともに,前記第1の識別子を含むレコードを転送する際に,前記転送手段が,相手先端末に前記第1の保護機能の有無を問い合わせ,前記第1の保護機能がない旨の返信があった場合か,所定期間何も返信がない場合には前記レコードの転送を行わないことを特徴とする通信端末。」


第3.先行技術文献記載事項

1.引用文献1
当審の上記平成26年7月31日付けの拒絶理由通知において引用された,本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特表2009-510903号公報(平成21年3月12日公表。以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同じ。)

A.「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
何らかの保護を提供する従来の試みの中には,多くのEメールシステムにあるブラインドカーボンコピー(BCC)機能を使用することがある。これは,受領側に送られたEメールメッセージのコピーであり,このメッセージには受領側のアドレスは表示せず,このコピーはエントリ全体ではない。BCCは,受信側がBCCリストの他のアドレスにEメールを送ることは許可していない。言い換えると,送信側は一部の情報を隠すことができるが,送信側には,受領側のユーザが情報の一部を見るのは選択的に可能にしながらも,第三者に電話をかけたりEメールを書いたりするのにその情報を使うのは制限する,という手段はない。デジタル著作権管理(DRM)が,デジタルメディアを無許可でコピーするというこの問題を解決する手段として安全性及び暗号化に焦点を合わせている。DRMの場合,保護された媒体は,許可されていなければ,共有も利用もできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る実施形態によって,ユーザが自身の連絡情報の一部を,特にその連絡情報を第三者に送る際に,選択的に保護することが可能になる。ある実施形態では,プライバシー保護フラグを持つよう修正したvCardを利用できる。このような実施形態には,隠す方法や,自動的に削除(満了タイマかイベントタイマやカウンタを用いて)する方法や,コンテキストに基づき時間又は位置などを用いて他の制限を課す方法などが含まれる。」

B.「【0010】
本発明に係る各実施形態は,受信者が機密情報を電話帳に「発信専用(call only)」としてなら付加できる又は送信側によりカスタマイズされる他の規制付きで付加できるよう,フラグ(単数又は複数)を起動させることにより,プッシュ・トゥ・エクスチェンジ(ブルートゥースや,IRDAや,PTTや,PoCの他,別の手段,例えばvCardを用いて)によって,ユーザが,番号やアドレスや他の機密情報などを選択的な基準で共有できるようにする。即ち,電話番号又は他の連絡情報を受信ユーザは自身の電話帳に保存できるが,その情報を受信ユーザから隠すことが可能である。このシナリオでは,その連絡が強調表示されたら,ユーザにできるのは送信を押すことのみであり,表示又は編集は応答しない,もしくは表示又は編集のオプションが無効になる(グレー表示になる)。この電話帳のエントリを用いて,電話をかけたり,Eメールを書いたり,連絡をとる為の他の機能を実行したりできるが,連絡情報を誰に対しても,手作業で秘密にする(ユーザが番号を書きとめてそれを誰か他の人に渡すのを防止する)ことができる,もしくはデジタル方式で秘密にする(それ以上のプッシュ・トゥ・エクスチェンジを防止する)ことができる。このような方式によって,依然として受領側が受信した情報を用いて意図するタスク(単数又は複数)を達成することが可能でありながら,それ以上は無許可でばらまかれないよう連絡情報の送信側を保護することができ,一定のプライバシー保護を提供することができる。
【0011】
図1を参照すると,連絡情報を選択的に保護する方法10が,発呼者から被呼者に連絡情報を送る工程11と,工程12で連絡情報の一部を被呼者から選択的に隠すことと,工程14で被呼者が発呼者と連絡をとることを可能にすることとを含む。方法10は更に,工程16で,時間及び/又は位置についてなどの所定のコンテキストで被呼者が被呼者と連絡をとることを規制できる。方法10は更に,任意選択で,工程18で被呼者が連絡情報を編集する能力又は被呼者が連絡情報を第三者に回送する能力を無効にすることができる。方法10は,任意選択で,工程20で被呼者が発呼者と所定の回数だけ連絡をとることを可能にできる,又は工程22で連絡情報の一部を所定のグループと共有することを可能にできる。例えば,連絡情報をvCardの形で供給することができ,更に,工程24で,このようなvCardを,そのvCardを無効にするよう削除フラグを立てた第2のvCardを送ることにより,又は同様な機能を行う命令を含むSMSメッセージやEメールを送ることにより,被呼者のアクセスを排除できる。プライバシー保護をより強く保証する為に,方法10は更に,工程26で,連絡情報を送る際に自動的に発信IDをブロックできる。ただし,この連絡情報は,発呼者に感知可能と考えられる情報フィールドを幾つ含んでいてもよく,このフィールドは例えば,移動電話番号,勤務先電話番号番号,自宅電話番号,IPアドレス,Eメールアドレス,SMSアドレス,ファクシミリ番号,vCard又は他のタイプの連絡情報交換フォーマットに入れることのできる他の情報などである。この点については,発呼者は既述の情報フィールド群のどれをも被呼者から隠すことができる。より高度なプライバシー保護の為に,方法10は更に,工程28で,発呼者の位置情報(GPS情報など)を被呼者に対してブロックする。
【0012】
図2を参照すると,送信側又は発呼者により使用可能な連絡情報の編集画面即ちユーザインタフェース30のサンプルが示されている。こういった編集画面はvCard標準に合わせて作ることができる。この例には,フィールドが多数あり,例えば,フルネーム,タイトル,会社,自宅住所,勤務先住所,自宅電話,勤務先電話番号,ファクス番号,携帯番号,Eメールアドレス,インターネットプロトコル(IP)アドレス,インスタントメッセージング(IM)アドレス,ショートメッセージサービス(SMS)アドレスなどがある。各フィールドは,必要に応じて,代替のファクス番号や電話番号などの他の適切なフィールドのプルダウンメニューを備えることもできる。ユーザインタフェース30は更に,前述のフィールドのどれでも隠せる又は編集できる複数のフラグ又はチェックボックスを備えることもできる。こういった情報がその情報の受領側に対して隠されても,別の列のチェックボックス群又はフラグ群が発信専用機能を操作可能にすることができる。例えば,隠すよう送信側の自宅電話にフラグが立てられていても,受領側は依然として,実際に電話番号そのものを見なくても送信側の氏名及び送信ボタンを選択することで送信側の自宅電話に電話できる。
・・・(中略)・・・
【0014】
図3では,連絡情報の選択的な保護に対応するシステム40において,ユーザインタフェース30(図2の)からの連絡情報を持つ移動無線機42又は携帯電話などの電子製品がこういった(移動無線機42のユーザによってカスタマイズされ制限された)情報を,移動無線機である45,46,48など他の指定された受領側に,通信ネットワーク41を介して送信する。図2のユーザインタフェース又は画面30に示されている設定に対応して,受領側48の連絡情報画面50には,送信側にカスタマイズされるか選択されるかした基本的な情報,例えば,フルネーム,会社,勤務先住所,勤務先電話番号,ファクス,Eメールなどがある。ただし,自宅番号及び携帯番号はユーザから隠されているが,連絡情報によって,受領側は,最下部の特別なボタンを用いてJohn Doeの自宅に電話することができる。更に,ここで留意すべきは,勤務先電話番号とファクス番号とを,その連絡情報の送信側が許可するか認めるかすれば,編集可能だということである。」

C.


D.


2.引用文献2
当審の上記平成26年7月31日付けの拒絶理由通知において引用された,本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2004-199190号公報(平成16年7月15日公開。以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

E.「【0073】
<近距離無線通信機能を用いる>
上述した実施形態では,通信端末50′は,コンテンツを通信端末50に移動パケット通信網40を介して送信する場合について説明した。本変形例では,通信端末50′が近距離無線通信路を介して通信端末50にコンテンツを送る例について説明する。本変形例では,通信端末50′,通信端末50はそれぞれ,上述の構成に加え,近距離にてデータの送受信を行う近距離無線通信部を有し,以下のような動作を行う構成とする。
ユーザが,通信端末50′にて上述の第二実施形態と同様の操作を行って,コンテンツに対し再配布制限フラグ‘1’及び自付与フラグ‘1’を対応付けさせた後,これを近距離無線通信部を介して通信端末50へ送信する指示を行う。すると,通信端末50′のCPU500′は,通信端末50へ通信を送信するとともに,通信端末50から通信ヘッダを受信する。次いで,CPU500′は,受信した通信ヘッダに証明情報が付加されているか判定する。そして,CPU500′は,通信ヘッダに証明情報が付加されていると判定した場合,当該通信端末50は再配布制限機能を有していると判定する。そして,上述の第二実施形態と同様に,当該コンテンツに自付与フラグ‘1’を対応付けず再配布制限フラグ‘1’のみを対応付けて,当該コンテンツを近距離無線通信部を介して通信端末50へ送信する。
しかし,通信端末50′のユーザが,当該コンテンツを再配布制限機能及び再配布制限証明機能を有さない通信端末へ近距離無線通信部を介して送信する指示を行うと,通信端末50′のCPU500′は,この通信端末から受信した通信ヘッダには証明情報が付加されていないと判定し,当該通信端末は再配布制限機能を有さないと判定し,当該コンテンツをこの通信端末へ送信しない。」

F.「【0074】
<外部機器に送信する>
次に,通信端末50′がコンテンツを通信端末50′に装着された図示せぬ外部機器へ送信する例について説明する。なお,外部機器は,コンピュータ装置,映像出力装置,外部記憶装置,ゲーム装置など,通信端末50′に接続される機器であれば良い。
本変形例では,通信端末50′は上述の構成に加え,外部機器と通信を行うための外部インタフェース(図示せず)を備える構成とする。更に,通信端末50′及び外部機器は,以下のような動作を行う構成とする。
ユーザは,通信端末50′に図示せぬ外部機器を装着される。そして,通信端末50′にて上述の第二実施形態と同様の操作を行って,コンテンツに対し再配布制限フラグ’1’及び自付与フラグ‘1’を対応付けさせた後,これを外部機器へ送信する指示を行う。すると,通信端末50′のCPU500′は,外部機器に対し,外部インタフェースを介して,問い合わせ信号を送信する。外部機器は,図示せぬインタフェースを介して,当該問い合わせ信号を受信する。ここで,この外部機器は,再配布制限機能を有しているため,当該問い合わせ信号に応答して,応答信号を,インタフェースを介して,送信する。通信端末50′は,この応答信号を受信すると,当該外部記憶装置は再配布制限機能を有していると判定し,当該外部記憶装置に対し,当該コンテンツに自付与フラグ‘1’を対応付けず再配布制限フラグ‘1’のみを対応付けて,これを送信する。
【0075】
しかし,もし,外部機器が,上述した再配布制限機能及び応答機能を有さない場合は,通信端末50′から送信された問い合わせ信号に対する応答信号を送信することができない。従って,通信端末50′は,問い合わせ信号に対する応答信号を得ることができないため,このような外部機器に対し,当該コンテンツを送信しない。」

3.引用文献3
当審の上記平成26年7月31日付けの拒絶理由通知において引用された,本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2000-181867号公報(平成12年6月30日公開。以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

G.「【0039】中継装置8に実装された物理アドレス抽出処理81は,図7のヘッダ702を参照することにより,703に物理アドレスP11が設定されていることが分かるので,その物理アドレスP11を抽出し,図8に示すように,図7のレイヤ5のデータ703,704として受信した宛先物理アドレス=P11をレイヤ2のヘッダ情報801として設定し,さらにレイヤ5のデータ803として「OK」を設定した認証応答を組み立て,LAN14内の物理アドレス=P11のLANカードを持ったコンピュータへ送信する。しかし,ネットワーク14内には物理アドレス=P11のLANカードを持ったコンピュータは存在しないため,どのコンピュータにも受信されない。換言すれば,利用者コンピュータ3から利用者コンピュータ2の利用者の利用者名とパスワードを送信しても,利用者コンピュータ3では認証応答を受信することができない。そこで,利用者コンピュータ3の認証要求/認証応答確認処理は,一般的に行われる応答監視により認証応答の通信タイムアウトとなり,認証が失敗する。」


第4.引用発明の認定

1.引用文献1には,次の技術的事項が記載されている。

(1) 上記B.には,「電話番号又は他の連絡情報を受信ユーザは自身の電話帳に保存できる」と記載されると共に,「移動無線機42又は携帯電話などの電子製品がこういった(移動無線機42のユーザによってカスタマイズされ制限された)情報を,移動無線機である45,46,48など他の指定された受領側に,通信ネットワーク41を介して送信する。・・・(中略)・・・受領側48の連絡情報画面50には,送信側にカスタマイズされるか選択されるかした基本的な情報,例えば,フルネーム,会社,勤務先住所,勤務先電話番号,ファクス,Eメールなどがある。」と記載されている。よって,引用文献1には,「連絡情報を表示する画面と,前記連絡情報を移動無線機である他の受領側に送信する手段と,前記連絡情報を保存する手段を備える移動無線機」が記載されているといえる。

(2) 上記B.には,「図2を参照すると,送信側又は発呼者により使用可能な連絡情報の編集画面即ちユーザインタフェース30のサンプルが示されている。・・・(中略)・・・この例には,フィールドが多数あり,例えば,フルネーム,タイトル,会社,自宅住所,勤務先住所,自宅電話,勤務先電話番号,ファクス番号,携帯番号,Eメールアドレス,インターネットプロトコル(IP)アドレス,インスタントメッセージング(IM)アドレス,ショートメッセージサービス(SMS)アドレスなどがある。・・・(中略)・・・ユーザインタフェース30は更に,前述のフィールドのどれでも隠せる又は編集できる複数のフラグ又はチェックボックスを備えることもできる。こういった情報がその情報の受領側に対して隠されても,別の列のチェックボックス群又はフラグ群が発信専用機能を操作可能にすることができる。」と記載され,上記C.からは,「ユーザインタフェース30」において,連絡情報が各ユーザ単位で表示され,連絡情報の各フィールドにフラグを立てられることが読み取れる。よって,引用文献1には「各ユーザ単位の前記連絡情報の各フィールドは,当該フィールドを前記受領側の画面において隠すためのフラグを立てることが可能」であることが記載されているといえる。

(3) 上記B.には,「図2のユーザインタフェース又は画面30に示されている設定に対応して,受領側48の連絡情報画面50には,送信側にカスタマイズされるか選択されるかした基本的な情報,例えば,フルネーム,会社,勤務先住所,勤務先電話番号,ファクス,Eメールなどがある。ただし,自宅番号及び携帯番号はユーザから隠されている」と記載され,上記C.からは,「自宅電話」及び「携帯電話」に対して「隠す」フラグが立てられていることが読み取れ,上記D.からは,「連絡情報画面50」において各ユーザ単位で連絡情報が表示される際に,「自宅電話」及び「携帯電話」が隠されていることが読み取れる。よって,引用文献1には「前記移動無線機は,前記連絡情報をユーザ単位で表示する際に,表示しようとするフィールドにフラグが立てられている場合に,当該フィールドが隠される機能を有する」ことが記載されているといえる。

2.上記1.の(1)ないし(3)に示したことから,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「連絡情報を表示する画面と,前記連絡情報を移動無線機である他の受領側に送信する手段と,前記連絡情報を保存する手段を備える移動無線機において,
ユーザ単位の前記連絡情報の各フィールドは,当該フィールドを前記受領側の画面において隠すためのフラグを立てることが可能であり,
前記移動無線機は,前記連絡情報をユーザ単位で表示する際に,表示しようとするフィールドにフラグが立てられている場合に,当該フィールドが隠される機能を有することを特徴とする移動無線機。」


第5.対比

1.引用発明の「連絡情報」には,自宅電話,携帯番号,及びEメールアドレスなどが含まれるから,引用発明の「連絡情報」は,本願発明の「電話帳データ」に相当する。また,引用発明の「移動無線機である他の受領側」は,本願発明の「他の端末」に相当する。
してみれば,引用発明の「表示する画面」は,本願発明の「表示手段」に,引用発明の「送信する手段」は,本願発明の「転送手段」に,引用発明の「保存する手段」は,本願発明の「記憶領域」に,それぞれ相当する。また,引用発明の「移動無線機」は,本願発明の「通信端末」に相当する。

2.引用発明において,「当該フィールドを前記受領側の画面において隠す」とは,「当該フィールド」を受領側において非表示とすることであるので,引用発明の「当該フィールドを前記受領側の画面において隠すためのフラグ」は,本願発明の「所定の情報を転送先端末で非表示とするための第1の識別子」に相当する。また,引用発明において「フラグを立てることが可能」であることは,本願発明において「第1の識別子を設定可能」であることに相当する。さらに,引用発明の「ユーザ単位の前記連絡情報」は,本願発明の「前記電話帳データの各レコード」に相当する。

3.引用発明の「前記連絡情報をユーザ単位で表示する際に,表示しようとするフィールドにフラグが立てられている場合に,当該フィールドが隠される機能」は,本願発明の「前記電話帳データを表示する際に,表示しようとするレコードに前記第1の識別子が含まれる場合に前記所定の情報を表示しない第1の保護機能」に相当する。

4.上記1.ないし3.に示したことから,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「電話帳データを表示する表示手段と,前記電話帳データを他の端末に転送する転送手段と,前記電話帳データが格納される記憶領域とを具える通信端末において,
前記電話帳データの各レコードは,所定の情報を転送先端末で非表示とするための第1の識別子を設定可能であり,
前記通信端末は,前記電話帳データを表示する際に,表示しようとするレコードに前記第1の識別子が含まれる場合に前記所定の情報を表示しない第1の保護機能を有することを特徴とする通信端末。」

[相違点1]
本願発明が「前記電話帳データの各レコードのうち,前記第1の識別子が設定された自端末のものでないレコードは編集できないよう管理されて」いる構成を備えているのに対して,引用発明はそのような構成を備えていない点。

[相違点2]
本願発明が「前記第1の識別子を含むレコードを転送する際に,前記転送手段が,相手先端末に前記第1の保護機能の有無を問い合わせ,前記第1の保護機能がない旨の返信があった場合か,所定期間何も返信がない場合には前記レコードの転送を行わない」構成を備えているのに対して,引用発明はそのような構成を備えていない点。


第6.判断

1.相違点1について
(1) 本願発明においては,「第1の識別子が設定された・・・(中略)・・・レコードは編集できないよう管理されて」いるところ,本願の請求項1の記載のみからでは,上記「レコードは編集できない」との記載が,レコードの全部が編集できないとの意味であるか,又は少なくともレコードに含まれる情報の一部は編集できないとの意味であるかを特定することはできない。
そこで,本願の明細書を参酌すると,段落【0028】には,「シークレット設定がされた他人の電話帳データは携帯端末1のユーザが自由に編集できないように制御部12によって管理するようにする。」と記載されている。そして,段落【0028】の当該記載において,「シークレット設定がされた他人の電話帳データは携帯端末1のユーザが自由に編集できない」とは,「シークレット設定がされた他人の電話帳データ」の全体が一切編集できないことを意味しているのか,「シークレット設定がされた他人の電話帳データ」に含まれる少なくとも一部の情報が編集できないことを意味しているのかは,明確でない。さらに,仮に,段落【0028】の上記記載を,「シークレット設定がされた他人の電話帳データ」の全体が一切編集できないことを意味していると解することができたとしても,段落【0028】の上記記載は,実施例の一つを示しているにすぎず,本願発明を,当該記載箇所に示された実施例に限定して解釈すべきとする特段の事情もないから,本願発明は,段落【0028】の上記記載によって限定的に解釈されるものではない。
また,本願の請求項1を引用する本願の請求項4には,「前記第1の識別子は前記電話帳データのレコードの各項目について個別に設定可能であるとともに,前記第1の保護機能は,前記電話帳データのレコードの項目毎に判定され実行される」ことが記載されているから,本願発明は,本願の請求項4に係る発明の「前記第1の識別子は前記電話帳データのレコードの各項目について個別に設定可能であるとともに,前記第1の保護機能は,前記電話帳データのレコードの項目毎に判定され実行される」態様を含み得ることは明らかである。そして,本願の請求項4に係る発明において,第1の識別子が電話帳データのレコードの各項目について個別に設定され,第1の保護機能が電話帳データのレコードの項目毎に判定され実行される際に,「第1の識別子が設定された・・・(中略)・・・レコードは編集できないよう管理されて」いるとは,第1の識別子が設定された項目のみの編集ができないように管理すること,又は第1の識別子が一つでも設定されたレコードはそのレコード全体が編集できないように管理することの,いずれか一方のみに限定して解釈すべきとの特段の事情があるとはいえない。してみれば,本願の請求項1を引用する本願の請求項4に係る発明(すなわち,本願発明に含まれる発明である,本願の請求項4に係る発明)においては,第1の識別子が設定された項目のみの編集ができないように管理すること,及び第1の識別子が一つでも設定されたレコードはそのレコード全体が編集できないように管理することの両方が含まれ得るといえる。
さらに,上記段落【0028】及び請求項4以外の記載箇所に,本願発明の上記「レコードは編集できない」との構成を限定的に解釈すべき事情が記載されているともいえないから,本願の明細書及び特許請求の範囲の全体を参酌しても,本願発明の上記「レコードは編集できない」との構成を,レコードの全部が編集できない構成,又は少なくともレコードに含まれる情報の一部は編集できない構成のいずれか一方に限定して解釈することはできない。

(2) 上記A.には,「本発明に係る実施形態によって,ユーザが自身の連絡情報の一部を,特にその連絡情報を第三者に送る際に,選択的に保護することが可能になる」ことが記載されている。そして,引用発明は,上記「本発明に係る実施形態」,すなわち,引用文献1に記載された実施形態に基づいて認定した発明であるから,引用発明は,ユーザ自身の連絡情報を第三者に送る際に「選択的に保護する」ための発明であるといえる。
一方,仮に,引用発明において,「当該フィールドを前記受領側の画面において隠すためのフラグ」が受領側において自由に編集することが可能であった場合には,ユーザ自身の連絡情報が当該ユーザの意向に反した利用をされ得ることは明らかであり,その際,ユーザ自身の連絡情報を第三者に送る際に「選択的に保護する」ことができなくなることは,当業者にとって自明である。
そして,ユーザ自身の連絡情報を第三者に送る際に「選択的に保護する」ための発明である引用発明が,当該「選択的に保護する」ことができなくなる構成を含まないことは当然であるといえる。したがって,引用発明において,「当該フィールドを前記受領側の画面において隠すためのフラグ」を受領側において自由に編集することが禁止されることに言及されていないとしても,引用発明において,「当該フィールドを前記受領側の画面において隠すためのフラグ」を受領側において自由に編集することが禁止する構成とすることは,当業者が当然想到することである。
また,ユーザが,自らの連絡情報について,「当該フィールドを前記受領側の画面において隠すためのフラグ」を自由に編集できる構成とすることは,当業者にとって自明である。

(3) 上記(1)及び(2)から,本願発明の「前記第1の識別子が設定された自端末のものでないレコードは編集できないよう管理されて」いる構成は,第1の識別子が設定された自端末のものでないレコードの少なくとも一部は編集できないよう管理されている構成を含み得るものであり,引用発明において,連絡情報の受領側が,当該連絡情報に含まれる情報の少なくとも一部を編集することを禁止する構成とすることは,当業者が容易に想到することであるといえるから,引用発明において,「前記電話帳データの各レコードのうち,前記第1の識別子が設定された自端末のものでないレコードは編集できないよう管理されて」いる構成,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。よって,相違点1は格別のものではない。

2.相違点2について
(1) 上記E.の記載から,引用文献2には,通信端末が他の通信端末に再配布制限フラグを対応付けたコンテンツを送信する際に,当該他の通信端末から受信した通信ヘッダに証明情報が付加されていないと,当該他の通信端末が再配布制限機能を有していないと判定して,当該コンテンツを送信しないことが記載されているといえる。また,上記F.の記載から,引用文献2には,通信端末が外部機器に再配布制限フラグを対応付けたコンテンツを送信する際に,問合せ信号に対する応答信号を当該外部機器から得ることができないと,コンテンツを送信しないことが記載されているといえる。
してみれば,引用文献2には,必要な機能を有しているか否かについての問合せを行った際に,必要な機能を有していない旨の返信があった場合,又は返信がなかった場合に,情報の転送を行わない構成が記載されているといえる。
また,引用文献3(上記G.)の記載にもみられるように,応答を受信することができない場合に,通信タイムアウトとなること,すなわち,問合せに対して所定期間何も返信がない場合に,返信がないと判断することは,通信の技術分野において,周知技術であるといえる。

(2) 引用発明は,フラグを立てることで,連絡情報の受領側において,連絡情報のフィールドが隠される機能を有するものであり,引用文献2に記載の発明は,再配布制限フラグを対応付けることで,コンテンツの送信先である通信端末又は外部機器から,当該コンテンツの再配布を制限するものである。してみれば,引用発明と引用文献2に記載の発明は,フラグを付加することで,情報を転送した相手先における当該情報の使用を制限する情報セキュリティの保護に係る共通の技術分野に属しているといえる。

(3) さらに,転送する情報に何らかの識別子を付加することで,当該情報が転送された相手先において,当該識別子に対応した制御を行わせる場合に,付加した識別子に対応する機能を当該相手先が有している必要があることは,当業者にとって技術常識にすぎない。そして,相手先が転送された情報を正常に扱うために必要な機能を有しているか否かについての問合せを行うこと自体は,当業者が通常採用し得る常とう手段である。

(4) 上記(1)ないし(3)から,引用発明に対して,共通の技術分野に属する引用文献2記載の発明,及び上記周知技術を適用して,「前記第1の識別子を含むレコードを転送する際に,前記転送手段が,相手先端末に前記第1の保護機能の有無を問い合わせ,前記第1の保護機能がない旨の返信があった場合か,所定期間何も返信がない場合には前記レコードの転送を行わない」構成,すなわち,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到することである。よって,相違点2は格別のものではない。

3.小括
上記で検討したごとく,相違点1及び2はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明,引用文献2に記載の発明,及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,上記引用発明,引用文献2に記載の発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7.むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-04 
結審通知日 2014-11-11 
審決日 2014-11-25 
出願番号 特願2009-71278(P2009-71278)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金木 陽一  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 小林 大介
辻本 泰隆
発明の名称 通信端末およびその制御方法  
代理人 丸山 隆夫  
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