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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01C
管理番号 1299820
審判番号 不服2014-6464  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-07 
確定日 2015-04-10 
事件の表示 特願2013-88775号「水路板及びこれを用いた排水施設」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日出願公開、特開2014-211056号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月19日の出願であって、同年5月21日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年7月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月6日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、同年10月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月25日付けで平成25年10月8日の手続補正についての補正の却下の決定とともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成26年4月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年4月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の記載を補正することを含むものであり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

補正前(平成25年7月19日付け手続補正書):
「長尺状の幅広平板であって、該長尺方向に沿って連続的に形成した凸条または凹条の複数の樋状体を、それぞれ略平行に配列形成して成る流路基板と、
該流路基板の全体を包被する通水シート材であって、砂礫の通過を阻止し得る程度の多孔性を持った包被体と、
から成り、
前記包被体は、上記流路基板の長尺方向の一端側または両端側を開放させて配設していることを特徴とする水路板。」

補正後(平成26年4月7日付け手続補正書):
「長尺状かつ幅広平板状を成した可撓性単板であって、該長尺方向に連続した凸条又は凹条の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共にその凸条の凸頂部付近及び又は凹条の凹底部付近に、複数個の貫通孔を形成して成る流路基板と、
該流路基板の全体を包被する通水シート材であって、砂礫の通過を阻止し得る程度の通水性を有した包被体と、
から成り、
前記包被体は、上記流路基板の長尺方向の一端側を閉塞すると共に、他端側を開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成していることを特徴とする水路板。」(下線は補正箇所を示すものである。)

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「長尺状の幅広平板であって、該長尺方向に沿って連続的に形成した凸条または凹条の複数の樋状体を、それぞれ略平行に配列形成して成る流路基板」の構成を「長尺状かつ幅広平板状を成した可撓性単板であって、該長尺方向に連続した凸条又は凹条の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共にその凸条の凸頂部付近及び又は凹条の凹底部付近に、複数個の貫通孔を形成して成る流路基板」の構成に(すなわち、「流路基板」を可撓性があって、貫通孔を形成した構成に)、また、同「前記包被体は、上記流路基板の長尺方向の一端側または両端側を開放させて配設している」構成を「前記包被体は、上記流路基板の長尺方向の一端側を閉塞すると共に、他端側を開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成している」構成に限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。なお、「該流路基板の全体を包被する通水シート材であって、砂礫の通過を阻止し得る程度の多孔性を持った包被体」を「該流路基板の全体を包被する通水シート材であって、砂礫の通過を阻止し得る程度の通水性を有した包被体」に補正したことは、通水性を有することをより明確にしたものであって、補正前後の構成に実質的な違いはないといえる。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物は、次のとおりである。

特開平8-81947号公報(以下、「引用例1」という。)
実願昭63-65336号(実開平1-167429号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)
特開2006-16875号公報(以下、「引用例3」という。)

ア 引用例1
(ア)引用例1に記載の事項
引用例1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

a 産業上の利用分野
「【0001】
・・・・本発明は、芝地の地面内の主排水溝に多数の枝排水溝を集結する型式の芝地の排水処理の改良工法からなり、例えばゴルフ場のフェアウエイやラフ、サッカー場、野球場等の芝地の水捌を良好にする排水処理の改良工法に関する。」
b 発明が解決しようとする課題
「【0007】
したがって本発明の目的は、前記従来の排水処理の改良工法の問題を解決しようとするもので、仮設通路を必要とせず、工期を短縮することができ、張芝の復旧管理を省略することができ、施工費を大幅に節減することができ、しかも長期間にわたって排水機能を良好に維持することができ、さらに施工地面が傾斜地はもちろん平坦地で大面積であっても、有効に排水可能な芝地の排水処理の改良工法を提供することにある。」
c 実施例
「【0026】
本発明の芝地の排水処理の改良工法では、図1および図2に示すように、主排水溝10に集結する方向に複数本の枝排水溝11を構築する。
【0027】
前記主排水溝10は、この実施例では既設の暗渠を使用するようにしており、この暗渠は図10に示すものと同様の構造で、同じ部材は同じ符号を付して示した。図2における符号7は芝生を表示している。
【0028】
前記各枝排水溝11は、次のようにして施工する。
【0029】
まず、図3に示すように、主排水溝10である暗渠に向かって、地面1に幅の狭いスリット状の複数本の溝12を掘削する。前記各溝12は、例えば幅W=50?100mm,深さD=300?500mm程度に掘削する。
【0030】
溝12の掘削は、図3に示す実施例では改良した小型トラクタ13を用いて行なっている。
【0031】
次に、図4に示すように、溝12内に排水材15を設置する。この排水材15は、図6に示すように、フィルタ16と、これの内部に収容された芯体17とにより構成されている。
【0032】
前記フィルタ16は、例えばポリエステル長繊維不織布により長いスリーブ状に形成されており、折り畳んだ状態で例えば高さH=200?310mm程度に形成されている。
【0033】
一方、前記芯体17は例えば硬質塩化ビニル樹脂により、高さH=200?310mm程度に形成されている。この芯体17の表裏両面には、例えば縦,横共約20mmの間隔をおいて多数の凹凸部18が設けられており、表裏面の凸部の頂面間の厚さtは約10?15mmに形成され、該芯体の圧縮強度は25?50T/m^( 2)以上となっている。そして、芯体17の凸部列間には、ジグザグ状および斜めに排水径路が形成されている。
【0034】
前記した排水材15として、例えば旭エンジニアリング (株) 製のパブリックドレーン(登録商標)を採用するのが好ましい。
【0035】
前記排水材15を接続する場合には、図7に示すように、互いに接続すべき排水材15,15′の一方の排水材15の例えばフィルタ16の一つの面の高さ方向のほぼ中間部を切り開き、一方の排水材15の芯体17の接続端部側の凹凸部18と、他方の排水材15′の芯体17の接続端部側の凹凸部18とを、フィルタ16を切り開いた部分内で嵌合させ、他方の排水材15′のフィルタ16の表側に前記切り開いたフィルタ16を重ね合わせて閉じ、図8に示すように、フィルタ16の切り込み線の部分や端縁部分に粘着テープ19を張り付ける。
【0036】
これにより、互いに接続すべき排水材15,15′を簡単に接続できるし、必要な任意の長さに接続することが可能となる。
【0037】
また、排水材15の端末処理は、図9に示すように、スリーブ状のフィルタ16を、内部の芯体17よりも長くし、そのフィルタ16の長い部分を折り返し、この折り返し部分16′の端縁部に粘着テープ19を張り付ける。これにより、排水材15の端末から内部に泥等が入り込まないように簡単に塞ぐことができる。
【0038】
前記幅の狭いスリット状の溝12内に排水材15を設置した後、図5に示すように、溝12と排水材15間の隙間に好ましくは砂20を埋め込み、加圧して整地し、完成させる。前記隙間に砂20に代えて、掘削土砂を埋め返してもよい。
【0039】
また、スリット状の溝12は、前述のごとく例えば幅Wが50?100mmと非常に狭いので、張芝等の復旧管理が不要であり、溝12の両側の芝生7が繁殖して来て早期に埋まる。
【0040】
以上の工程により構築した枝排水溝11では、溝12内に水が浸透して来ると、その水は溝12に埋め込まれた砂20や掘削土砂を透過し、次いで、排水材15のフィルタ16により濾過される。
【0041】
前記フィルタ16で濾過された水は、排水材15の芯体17の凸部列間に形成された排水径路を通って排水材15の内部を流れ、主排水溝10に流入し、集水された後、主排水溝10から排水される。
【0042】
したがって、本発明の芝地の排水処理の改良工法のこの実施例によれば、枝排水溝11を簡単にかつ短期間で構築し、主排水溝10に連絡することができるし、施工地面が芝地であっても溝12を切り開いた部分が狭いので、溝12の両側から繁殖して来る芝生により溝12が早期に埋まるため、復旧管理を省略することができ、工期を大幅に短縮でき、また使用禁止期間を短縮でき、さらには施工費を大幅に節減することができる。
【0043】
さらに、枝排水溝11を構成している排水材15は、目詰まりすることが極めて少ないし、かつ耐圧強度も大きく、したがって長期間にわたって排水機能を良好に維持できるので、平坦地でしかもゴルフ場や芝地公園等の大面積の地面であっても、水を長期間にわたって有効に排水することができる。
【0044】
これにより、枝排水溝の構築工事の全てを完了する前に、1部の枝排水溝の構築工事だけを完了した状態で、工事地面を使用することが可能であるというように、恣意的に工事を断続して行うことができるし、溝12を掘削したときの掘削土砂の散乱を防止し、しかもその掘削土砂を有効に利用するようにしているので、芝生7上への残土等の散乱を防ぎ、整然と施工することができる。
【0045】
なお、本発明の芝地の排水処理の改良工法では、主排水溝10として既設の暗渠を利用する上記実施例に説明した工法に限らず、主排水溝10を新設してもよいことは勿論である。
【0046】
さらにまた、主排水溝10は、溝内に、スリーブ状に形成されたフィルタと、プラスチック板の表裏両面に多数の凹凸部を設け、かつ凸部列間に排水径路を有し、しかも前記フィルタ内に収容された芯体とで構成された排水材を垂直または水平に設置したものであってもよい。
【0047】
この場合の主排水溝の構築は、先に説明した枝排水溝11の構築の場合と同様に、溝内に排水材を設置した後、溝と排水材間の隙間に好ましくは砂を埋め込み、加圧して整地し、完成させる。また、前記隙間には、砂に代えて掘削土砂を埋め返してもよい。」
d 図面
(a)図6,7には、排水材15の芯体17の全体をスリーブ状のフィルタ16で包被していること(包み覆っていること)が図示されている。
(b)図7,8には、2つの排水材15の接続部において、一方の排水材15のフィルタ16で両方の排水材15の芯体17を覆っていることが図示されている。
(c)図9には、排水材15の一方の端部おいて、フィルタ16が折り返されて閉じられた状態であることが図示されている。

(イ)引用例1に記載の発明の認定
a 上記(ア)で摘記した引用例1の「図6に示すように、フィルタ16と、これの内部に収容された芯体17とにより構成されている。」(段落【0031】)、「フィルタ16は、例えばポリエステル長繊維不織布により長いスリーブ状に形成されており」(段落【0032】)、「前記排水材15を接続する場合には、図7に示すように、互いに接続すべき排水材15,15′の一方の排水材15の例えばフィルタ16の一つの面の高さ方向のほぼ中間部を切り開き、一方の排水材15の芯体17の接続端部側の凹凸部18と、他方の排水材15′の芯体17の接続端部側の凹凸部18とを、フィルタ16を切り開いた部分内で嵌合させ、他方の排水材15′のフィルタ16の表側に前記切り開いたフィルタ16を重ね合わせて閉じ、図8に示すように、フィルタ16の切り込み線の部分や端縁部分に粘着テープ19を張り付ける。」(段落【0035】)、「また、排水材15の端末処理は、図9に示すように、スリーブ状のフィルタ16を、内部の芯体17よりも長くし、そのフィルタ16の長い部分を折り返し、この折り返し部分16′の端縁部に粘着テープ19を張り付ける。これにより、排水材15の端末から内部に泥等が入り込まないように簡単に塞ぐことができる。」(段落【0037】)との記載事項を踏まえて図6?9を見ると、芯体17は、長尺状かつ幅広平板状の単板(単一の板)であると理解でき、また、フィルタ16は、芯体17の長尺方向の端部において、排水材15の端末では閉じられた状態であるが、端末以外ではその両端側が開放された状態であると理解できる。また、図1?5を併せて見ると、芯体17の長尺方向は、排水される水の流れる方向であると理解できる。
b 上記(ア)で摘記したように、引用例1には、「フィルタ16は、例えばポリエステル長繊維不織布により長いスリーブ状に形成されており」(段落【0032】)、「以上の工程により構築した枝排水溝11では、溝12内に水が浸透して来ると、その水は溝12に埋め込まれた砂20や掘削土砂を透過し、次いで、排水材15のフィルタ16により濾過される。」(段落【0040】)、「前記フィルタ16で濾過された水は、排水材15の芯体17の凸部列間に形成された排水径路を通って排水材15の内部を流れ、主排水溝10に流入し、集水された後、主排水溝10から排水される。」(段落【0041】)と記載されているから、フィルタ16は、砂の通過を阻止し得るものであり、かつ通水性を有することは明らかであるので、フィルタ16は、通水シート材であって、砂の通過を阻止し得る程度の通水性を有しているといえる。また、礫は、小石のことであって、砂より大きいものであるから、フィルタ16は、礫の通過も阻止し得るといえる。
c そうすると、上記(ア)に記載された事項及び図示内容からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「硬質塩化ビニル樹脂からなり、長尺状かつ幅広平板状の単板であって、その表裏両面に多数の凹凸部18を設けた芯体17と、
該芯体17の全体を包被する通水シート材であって、砂礫の通過を阻止し得る程度の通水性を有したフィルタ16と、
から成り、
前記フィルタ16は、上記芯体17の長尺方向の両端側を開放させて形成し、また、排水材15の端末では閉じている排水材15。」

イ 引用例2
(ア)引用例2に記載の事項
引用例2には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

a 産業上の利用分野
「本考案は、軟弱地盤の地盤改良等に使用される土木用ドレーン材に関し、更に詳細には通水路相互を連通させるとともに波形状芯材の両面を連通させる排水構造を有して、目詰まりによる排水効率の低下を防止した土木用ドレーン材に関する。」(明細書第1頁第15行?第2頁第1行)
b 考案が解決しようとする課題
「本考案はこのような課題に鑑みなされたものであり、通水路相互を連通させるとともに波形状芯材の両面を連通させる排水構造を有して、目詰まりによる排水効率の低下を一層確実に防止することができる土木用ドレーン材を提供しようとするものである。」(同第6頁第2?7行)
c 課題を解決するための手段
すなわち、本考案は、波形状芯材の両面に透水シートを貼り合わせて前記波形状芯材の両面に通水路を形成した土木ドレーン材において、前記波形状芯材の突条部に設けて前記通水路相互を連通状態に設ける連通凹部と、この連通凹部内に設けて前記波形状芯材の両面を連通状態に設ける連通孔とを備えたことを特徴とする土木用ドレーン材である。」(同第6頁第9?16行)
d 考案の作用
「従って、本考案の土木用ドレーン材にあっては、軟弱地盤中の過剰間隙水が波形状芯材の両面に形成された通水路内を通過するとき、通水路に目詰まりが生じても、前記連通凹部によって迂回路が形成されて前記通水路相互が連通状態となっているため、過剰間隙水は迂回路を通って別の通水路に迂回できるようになっている。又、連通凹部内に連通孔を設けたため、連通凹部や連通孔が目詰まりすることがなく、過剰間隙水が隣接する通水路内に迂回する際に同時に波形状芯材の他面の通水路内にも迂回できるようになっている。」(同第6頁第18行?第7頁第10行)
e 実施例
「以下本考案の士木用ドレーン材を図面に示した一実施例に従って詳細に説明する。
第1図は本考案の土木用ドレーン材を示す正面図、第2図は第1図のAB線より切断した断面図、第3図は本考案の土木用ドレーン材を示す拡大斜視図である。
第1図、第2図及び、第3図に示すように、本考案の土木用ドレーン材(3l)は、波形状芯材(32)とこの波形状芯材(32)の両面に貼り付けられる透水シート(33)とから構成されている。
波形状芯材(32)は、第1図、第2図及び、第3図に示すように、例えば、高密度ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリエステル等の耐水性に優れた硬質で熱成型可能な合成樹脂を素材とする芯材であって、上方及び下方に相互に連続する突条部を複数配列してなるものである。・・・・このように構成した波形状芯材(32)の両面に透水シート(33)が貼り合わされて通水路(34)が形成されている。なお、波形状芯材(32)の突条部(35)の形状としては、本実施例のように、凹凸型のもの以外に第4図に示すように、上下にサインカーブを描くように円弧状の突条部(35)を上方及び下方に交互に連続させて複数配列成型したものであっても良い。この場合、波形状芯材(32)の突条部(35)と透水シート(33)とを貼り合わせるときに、その貼り合わせに供する部分が円弧状の突条部(35)の先端のみであるため、軟弱地盤中の過剰問隙水が通過する通水路(34)をより広く獲ることができる。
透水シート(33)は、通水性を有するとともに長期間地盤中に置かれても崩壊したり変形したりすることがないシート材である。透水シート(33)としては、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレン或いはポリ塩化ビニリデン等を素材とする熱接着性繊維を使用した不織布が好ましい。」(同第7頁第12行?第9頁末行)
「連通孔(38)は、透水シート(33)を貼り合わせることにより、波形状芯材(32)の両面に夫々形成される通水路(34)を両面に渡って連通せしめる孔である。この連通孔(38)は連通凹部(36)内に設けた孔ならば、円形、楕円形、三角形、四角形等どんな形状のものであっても良いが、水の抵抗やシルト等による目詰まり等を考慮した場合、円形や楕円形のものが好ましい。そして、前記連通凹部(36)内に連通孔(38)を設けることにより、軟弱地盤中の過剰間隙水が連通凹部(36)によって形成された迂回路(37)内に波形状芯材(32)の他面の通水路(34)内へ迂回できる迂回路(39)が形成されることになる。
なお、本考案の土木用ドレーン材(31)は、実施例において軟弱地盤中に垂直方向に打設する例を示したが、これに限らず水平方向に埋設しても良い。」(同第12頁第6行?第13頁第4行)
f 考案の効果
「以上詳述した如く、本考案の土木用ドレーン材にあっては、波形状芯材の突条部に連通凹部を設けて通水路相互に連通可能な排水構造となっているため、通水路に目詰まりが生じても、過剰間隙水を連通凹部により形成された迂回路から迂回させて排出することができる。又、突条部の連通凹部内に連通孔を設けたため、通水路相互を連通させる迂回路内に他面の通水路への迂回路が形成され、通水路相互を連通させる迂回路の目詰まりを一層確実に防止することができる。
又、本考案の土木用ドレーン材にあっては、連通凹部内に設けた連通孔によりその迂回路内に他面の通水路への迂回路が形成されているため、過剰間隙水を他面の通水路からも同時に排出することができる。このため、通水路に目詰まりが生じた際の排水効率の低下を確実に防止することができる。」(同第13頁第6行?第14頁第4行)
g 図面
第3図及び第4図には、土木用ドレーン材3lの波形状芯材32が、板状であって、一方向に連続した突条部35(と凹条)の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成することと、その突条部35の凸頂部付近に、複数個の連通孔38を形成していることが図示されている。

(イ)引用例2に記載の技術事項の認定
上記(ア)に記載された事項及び図示内容からみて、引用例2には、次の技術事項(以下、「引用例2の技術事項」という。)が記載されている。

「波形状芯材32の両面に透水シート33を貼り合わせて前記波形状芯材32の両面に通水路を形成した土木用ドレーン材31において、
前記波形状芯材32が、板状であって、一方向に連続した突条部35(と凹条)の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共に、その突条部35の凸頂部付近に、複数個の連通孔38を形成していること。」

ウ 引用例3
(ア)引用例3に記載の事項
引用例3には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した)。

a 技術分野
「【0001】
本発明は、擁壁の裏面排水、芝地の地中排水等で使用する面状排水材に関し、特に、用途に限定されることなく、簡単な作業で全方向での良好な排水を可能とし、且つ強度や耐久性等にも優れる面状排水材に関するものである。」
b 発明が解決しようとする課題
「【0005】
本発明は、上記従来の面状排水材が有する問題点に鑑み、用途に限定されることなく、簡単な作業で全方向での良好な排水を可能とし、且つ強度や耐久性等にも優れる面状排水材を提供することを目的とする。」
c 課題を解決するための手段
「【0006】
上記目的を達成するため、本発明の面状排水材は、表面に凹凸を形成することにより連続した空隙を有する略四角形の合成樹脂製面状部材と、該合成樹脂製面状部材を被覆する透水シートとを備えた面状排水材において、透水シートの任意の辺に開口部を設けるとともに、該開口部の表面側と裏面側の少なくとも一方から透水シートを外側に延設したことを特徴とする。」
d 発明の効果
「【0017】
本発明の面状排水材によれば、表面に凹凸を形成することにより連続した空隙を有する略四角形の合成樹脂製面状部材と、該合成樹脂製面状部材を被覆する透水シートとを備えた面状排水材において、透水シートの任意の辺に開口部を設けるとともに、該開口部の表面側と裏面側の少なくとも一方から透水シートを外側に延設することから、透水シートの開口部で合成樹脂製面状部材の端部同士を接続して、この接続部においても単独の面状排水材と同等な排水量を確保することができ、広い面積で複数枚を隙間なく用いる場合の排水能力の低下がなく、また、延設した透水シートを接続相手の透水シート上に重ねて接合することにより、接続部への土砂の浸入を完全に防止することができる。」
e 実施例
「【0029】
図1に、本発明の面状排水材1の第1実施例示す。
この面状排水材1は、表面に凹凸を形成することにより連続した空隙を有する略四角形の合成樹脂製面状部材3と、該合成樹脂製面状部材3を被覆する透水シート2とを備えており、透水シート2の任意の1辺に開口部10を設けるとともに、該開口部10の裏面側から透水シート2を外側に延設して、延設部20を形成している。
なお、この面状排水材1では、図示右側の1辺のみに開口部10を形成しているが、例えば、図示左側の辺にも開口部10を形成することができる。この場合、左側の辺の開口部10には、透水シート2の延設部20を必ずしも設ける必要はない。
【0030】
また、合成樹脂製面状部材3は、図2にも示すように、その表面と裏面の両方にそれぞれ規則性を持たして中空で同形状の凹部31と凸部32が設けられており(表面側の凹部31は裏面側の凸部32となる)、その凹部31の底部と凸部32の頂部には貫通孔30が設けられている。
【0031】
このような合成樹脂製面状部材3には、耐食性が良好なことから合成樹脂が好適に使用でき、また、成形性が良好なことから熱可塑性樹脂が好まれ、中でも、汎用性の高い、ポリビニル系の塩化ビニルや酢酸ビニル等、ポリオレフィン系のポリエチレン、ポリプロピレン等、これら合成樹脂の混合体、これら合成樹脂とエチレン-酢酸ビニル等の共重合体類やエラストマ-類や変性ポリオレフィン類等のとの混合物がより好適に使用でき、公害要因が少ないことからポリオレフィン系の合成樹脂が最適に使用できることになる。
また、天然、合成を問わずゴム等も合成樹脂製面状部材3に使用できることは言うまでもない。
【0032】
また、透水シート2には、天然、合成を問わず繊維からなる織布や不織布が使用でき、防食性の高さから合成繊維が好適に使用できることになる。この場合、織布や不織布は厚み、強度、空隙率、価格等において、それぞれ多くの品種があり、これらは使用状況とその設計に応じて適宜選択すればよい。
【0033】
また、開口部10では、複数の合成樹脂製面状部材3の端部同士を、透水シート2で遮ることなく直接接続することができ、この接続部においても単独の面状排水材1と同等の排水量を確保することができ、これにより、広い面積で複数枚を隙間なく用いる場合の排水能力の低下がなく、また、透水シート2の延設部20を接続相手先の透水シート2上に重ね接合することで、接続部への土砂の浸入を完全に防止することができる。
【0034】
また、透水シート2の隣接する2辺に開口部10を設けるとともに、各開口部10の表面側と裏面側の少なくとも一方から透水シート2を延設することにより、縦横の碁盤目状の接続が可能になる。
さらに、透水シート2の対向する2辺に開口部10を設けるとともに、各開口部10の表面側と裏面側の少なくとも一方から透水シート2を延設することにより、横並び等の直線状の接続が可能になる。
【0035】
また、一方の開口部10で表面側から透水シート2を延設するとともに、他方の開口部10で裏面側から透水シート2を延設することにより、接続する面状排水材同士で、延設した透水シート2を接続相手の表面と裏面に相互に接合することができる。
そして、1辺の開口部10で表裏両面側から透水シート2を延設することにより、延設した透水シート2を接続相手の表面と裏面に接合することができる。
【0036】
また、合成樹脂製面状部材3の凹部の底部及び/又は凸部の頂部に貫通孔を設けることにより、水の通過状態が定性化され、より面状排水材内部の水量が均等化され。
また、合成樹脂製面状部材3を長尺の帯状体とすることにより、排水処理量が大きくなり、また、長尺方向での接続作業を減少させることになる。
【0037】
また、合成樹脂製面状部材3を、ポリオレフィン系樹脂を主成分として形成することで、腐食することなく必要な強度や柔軟性を長期に亘って維持し、且つ、環境汚染の問題が回避でき、また、透水シート2が織布又は不織布であれば、これらのグレードによって簡単に必要な透水水準や強度を選択することができる。
【0038】
また、合成樹脂製面状部材3の片面に織布からなる透水シート2を配設するとともに、他の片面に不織布からなる透水シート2を配設し、これらの透水シート2を接合することにより、使用する状況に応じて、織布や不織布それぞれの特色を生かすことができる。
さらに、透水シート2の織布又は不織布を、合成樹脂繊維で形成することにより、透水シート2を、腐食することなく必要な強度や柔軟性を長期に亘って維持することができる等、経済的で且つ材料選択の幅が大きく広がることになる。」
「【0041】
また、図5に示す第4実施例は、1辺の開口部10で、表裏両面から透水シート2を延設して延設部20を形成している。
なお、図示左側の辺にも開口部10を形成することができる。この場合、左側の辺の開口部10には、透水シート2の延設部20を必ずしも設ける必要はない。」
f 図面
図5には、1辺の開口部10で、表裏両面から透水シート2を延設して延設部20を形成していることが図示されている。

(イ)引用例3に記載の技術事項の認定
上記(ア)に記載された事項及び図示内容(特に図5の実施例)からみて、引用例3には、次の技術事項(以下、「引用例3の技術事項」という。)が記載されている。

「表面に凹凸を形成することにより連続した空隙を有する略四角形の合成樹脂製面状部材3と、該合成樹脂製面状部材3を被覆する透水シート2とからなる面状排水材1において、
透水シート2の1辺に開口部10を設けるとともに、該開口部10の表裏両面側から透水シート2を外側に延設して、延設部20を形成していること。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 本願補正発明は、「面状排水材の技術分野に属し、特にゴルフ場のフェアウェイやバンカーの排水機能を向上及び回復させる水路板」(段落【0001】)に関する発明であって、「水路板を、例えば、ゴルフ場のファアウェイであれば所定深さの芝生面下に埋設し、又はバンカーであれば所定深さの砂地面下に埋設し、及び砂地面上に配置すると共に、敷設済み既存の暗渠施設に向かって下方勾配させて構成し」(同【0023】)、「フェアウェイやバンカーに降下して染みこんだ雨水等やバンカーの砂面上に降下した雨水等を水路板によって集水し、その流路基板の長手方向の勾配下方側の既存の暗渠施設に向かって排水する」(同【0027】)ものであるところ、引用発明は、「芝地の地面内の主排水溝に多数の枝排水溝を集結する型式の芝地の排水処理の改良工法からなり、例えばゴルフ場のフェアウエイやラフ、サッカー場、野球場等の芝地の水捌を良好にする排水処理の改良工法に関する」(上記3(1)ア(ア)aの段落【0001】)もので、「各枝排水溝11は、」(同cの段落【0028】)「主排水溝10である暗渠に向かって、地面1に幅の狭いスリット状の複数本の溝12を掘削」(同【0029】)し、「溝12内に排水材15を設置する」(同【0031】)ものであって、「枝排水溝11では、溝12内に水が浸透して来ると、その水は溝12に埋め込まれた砂20や掘削土砂を透過し、次いで、排水材15のフィルタ16により濾過され」(同【0040】)、また、「前記フィルタ16で濾過された水は、排水材15の芯体17の凸部列間に形成された排水径路を通って排水材15の内部を流れ、主排水溝10に流入し、集水された後、主排水溝10から排水される」(同【0041】)ものであるから、本願補正発明の「水路板」と引用発明の「排水材15」とは、ともに地中に埋設して排水を行うものであるので、引用発明の「排水材15」は本願補正発明の「水路板」に相当するといえる。

イ 引用発明の「芯体17」及び「フィルタ16」は、その構造及び機能(作用効果)からみて、本願補正発明の「流路基板」及び「包被体」にそれぞれ相当する。

ウ 引用発明の芯体17に「表裏両面に多数の凹凸部18を設けた」ことと、本願補正発明の流路基板に「長尺方向に連続した凸条又は凹条の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成する」こととは、流路基板(芯体17)に「複数個の凸部や凹部を形成する」ことで共通しているといえる。

エ したがって、両者は 次の点で一致する。
「長尺状かつ幅広平板状の単板であって、複数個の凸部や凹部を形成して成る流路基板と、
該流路基板の全体を包被する通水シート材であって、砂礫の通過を阻止し得る程度の通水性を有した包被体と、
から成る水路板。」

オ そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
流路基板について、本願補正発明のものは、「可撓性」を有するものであって、「該長尺方向に連続した凸条又は凹条の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共にその凸条の凸頂部付近及び又は凹条の凹底部付近に、複数個の貫通孔を形成して」いるのに対し、引用発明のものは、硬質塩化ビニル樹脂からなるが、可撓性を有するか否か不明であり、また、複数個の凸部や凹部を有するが、上記のような構成を有していない点。
(相違点2)
包被体について、本願補正発明のものは、「上記流路基板の長尺方向の一端側を閉塞すると共に、他端側を開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成している」のに対し、引用発明のものは、芯体17(流路基板)の長尺方向の両端側を開放させて形成し、また、排水材15の端末では閉じているが、上記のような構成を有していない点。

(3)相違点の判断
ア 相違点1について
(ア)引用例2について
引用例2には、上記(1)イで説示したように、
「波形状芯材32の両面に透水シート33を貼り合わせて前記波形状芯材32の両面に通水路を形成した土木用ドレーン材31において、
前記波形状芯材32が、板状であって、一方向に連続した突条部35(と凹条)の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共に、その突条部35の凸頂部付近に、複数個の連通孔38を形成していること。」(引用例2の技術事項)
が記載されている。
引用例2の技術事項の「土木用ドレーン材31」は、「軟弱地盤の地盤改良等に使用される・・・・通水路相互を連通させるとともに波形状芯材の両面を連通させる排水構造を有して」(上記(1)イ(ア)a)おり、「軟弱地盤中の過剰間隙水が波形状芯材の両面に形成された通水路内を通過する」(上記(1)イ(ア)d)ものであるから、地中に埋設して排水を行うものであるといえるので、本願補正発明の「水路板」に相当し、また、引用例2の技術事項の「波形状芯材32」、「突条部35(と凹条)」、「連通孔38」及び「透水シート33」は、その構造及び機能からみて、「流路基板」、「凸条(と凹条)」、「貫通孔」及び「包被体」にそれぞれ相当するので、引用例2の技術事項は、次の技術事項に相当するといえる。
「流路基板の両面に包被体を貼り合わせて前記流路基板の両面に通水路を形成した水路板において、
前記流路基板が、板状であって、一方向に連続した凸条の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共に、その凸条の凸頂部付近に、複数個の貫通孔を形成していること。」
また、引用例2の技術事項である土木用ドレーン材31の波形状芯材32は、上記のとおりの構造であるから、比較的に簡易な構造であり、また、その構造から、排水を確実に、また効率的に行うことができるものであると解される(上記(1)イ(ア)d,fに記載の作用及び効果も参照。)。

(イ)判断
a 一般的に、共通又は関連する技術分野の技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、共通又は関連する技術分野に置換可能な技術手段があるときは、当業者がその転用を容易に着想し得るといえる。
b 引用発明の排水材15と引用例2の技術事項の土木用ドレーン材31とは、本願補正発明の水路板と同様に、地中に埋設して排水を行うものであるから、引用発明と引用例2の技術事項とは技術分野が共通しているといえる。
c 引用例1には、「本発明の目的は、前記従来の排水処理の改良工法の問題を解決しようとするもので、仮設通路を必要とせず、工期を短縮することができ、張芝の復旧管理を省略することができ、施工費を大幅に節減することができ、しかも長期間にわたって排水機能を良好に維持することができ、さらに施工地面が傾斜地はもちろん平坦地で大面積であっても、有効に排水可能な芝地の排水処理の改良工法を提供することにある。」(上記3(1)ア(ア)bの段落【0007】)と記載されているから、引用発明の排水材15は、長期間にわたって排水機能を良好に維持することができ、また、施工地面が傾斜地はもちろん平坦地で大面積であっても、有効に排水可能なようにすること、すなわち、排水を確実に、また効率的に行うとの課題が内在しているといえる。また、排水処理の改良工法は、排水材を地中に埋設するものであるところ、その工期を短縮し、施工費を節減するためには、排水材の構造を簡易なものとし、取扱い易いものとすることが想定できるので、引用発明の排水材15は、そのような課題も内在しているといえる。
d 上記a?cの事情を考慮すると、引用発明の流路基板(芯体17)において、引用例2の技術事項を適用して、一方向に連続した凸条の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共に、その凸条の凸頂部付近に、複数個の貫通孔を形成することは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。そして、その際に、凸条の樋状体を排水される水の流れる方向である長尺方向に沿ったものとすることは、当然のことである。
e また、引用発明の流路基板(芯体17)を、可撓性を有するものとすることや、どの程度の可撓性を有するものとするかは、当業者が適宜に決定し得る程度の設計的事項であるといえる。このことは、例えば、本願出願前に公知である特開2012-46871号公報に、「排水材は,断面が横長状の長方形の角筒状とされて、硬質(又は軟質)の合成樹脂製とされている。合成樹脂としては、EVA樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系合成樹脂、又は、塩化ビニール樹脂等が使用される。排水材は、上下にそれぞれ配設された第1・第2基材(基板)1,2と、左右一対の連結板3と、排水材の内部に配設される内部補強体4を有し、第1・第2基材1,2及び左右一対の連結板3が排水材の周壁部を構成している。尚、排水材やその構成部材は、屈曲可能とされたり、可撓性を有する場合があるが、そうされない場合もある。」(段落【0008】)と記載されていることや、可撓性を有する排水材(水路板)が本願出願前に周知(実願昭57-57530号(実開昭58-160931号)のマイクロフィルム(特に明細書第8頁第13?15行)、特開平5-179636号公報(特に段落【0010】)、特開平8-85936号公報(特に段落【0006】)を参照。)であったことからいえる。
f なお、本願補正発明は、水路板を水平に設置して用いるものか否か明らかとはいえないが、引用例1には、「主排水溝10は、溝内に、スリーブ状に形成されたフィルタと、プラスチック板の表裏両面に多数の凹凸部を設け、かつ凸部列間に排水径路を有し、しかも前記フィルタ内に収容された芯体とで構成された排水材を垂直または水平に設置したものであってもよい。」(上記(1)ア(ア)bの段落【0046】)との記載があるから、排水材(水路板)を水平に設置することは、示唆されているといえるし、また、引用例2には、「本考案の土木用ドレーン材(31)は、実施例において軟弱地盤中に垂直方向に打設する例を示したが、これに限らず水平方向に埋設しても良い。」(上記(1)イ(ア)f)と土木用ドレーン材(水路板)を水平に設置することが記載されているので、水路板を水平に設置して用いることに、進歩性があるとはいえない。
g 以上のとおりであるから、引用発明に引用例2の技術事項を適用するとともに適宜設計変更を行って、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

イ 相違点2について
(ア)引用例3について
引用例3には、上記(1)ウで説示したように、
「表面に凹凸を形成することにより連続した空隙を有する略四角形の合成樹脂製面状部材3と、該合成樹脂製面状部材3を被覆する透水シート2とからなる面状排水材1において、
透水シート2の1辺に開口部10を設けるとともに、該開口部10の表裏両面側から透水シート2を外側に延設して、延設部20を形成していること。」(引用例3の技術事項)
が記載されている。
引用例3の技術事項の「面状排水材1」は、「擁壁の裏面排水、芝地の地中排水等で使用する面状排水材に関し、特に、用途に限定されることなく、簡単な作業で全方向での良好な排水を可能とし、且つ強度や耐久性等にも優れる面状排水材に関するもの」(上記(1)ウ(ア)aの段落【0001】)であって、「表面に凹凸を形成することにより連続した空隙を有する略四角形の合成樹脂製面状部材と、該合成樹脂製面状部材を被覆する透水シートとを備えた面状排水材において、透水シートの任意の辺に開口部を設けるとともに、該開口部の表面側と裏面側の少なくとも一方から透水シートを外側に延設することから、透水シートの開口部で合成樹脂製面状部材の端部同士を接続して、この接続部においても単独の面状排水材と同等な排水量を確保することができ、広い面積で複数枚を隙間なく用いる場合の排水能力の低下がなく、また、延設した透水シートを接続相手の透水シート上に重ねて接合することにより、接続部への土砂の浸入を完全に防止することができる」(上記(1)ウ(ア)dの段落【0017】)ものであるから、地中に埋設して排水を行うものであるといえるので、本願補正発明の「水路板」に相当し、また、引用例3の技術事項の「合成樹脂製面状部材3」、「透水シート2」、及び(透水シート2の)「任意の1辺に開口部10を設けるとともに、該開口部10の表裏両面側から透水シート2を外側に延設して、延設部20を形成していること」は、その構造及び機能からみて、「流路基板」、「包被体」、及び「上記流路基板の」「一端側を閉塞すると共に、他端側を開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成している」ことにそれぞれ相当するので、引用例3の技術事項は、次の技術事項に相当するといえる。
「流路基板と、該流路基板を被覆する包被体とからなる水路板において、
包被体は、上記流路基板の一端側を閉塞すると共に、他端側を開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成していること。」

(イ)判断
a 一般的に、共通又は関連する技術分野の技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、共通又は関連する技術分野に置換可能あるいは付加可能な技術手段があるときは、当業者がその適用を容易に着想し得るといえる。
b 引用発明の排水材15と引用例3の技術事項の面状排水材1とは、本願補正発明の水路板と同様に、地中に埋設して排水を行うものであるから、引用発明と引用例3の技術事項とは技術分野が共通しているといえる。
c 引用発明のフィルタ16は、芯体17(流路基板)の長尺方向の両端側を開放させて形成し、また、排水材15の端末では閉じている。また、引用例1には、2つの排水材15の接続部において、一方の排水材15のフィルタ16で両方の排水材15の芯体17を覆っていることも開示されている(段落【0035】及び図7,8)。さらに、引用発明の排水材15においても、相互の連結を容易に行うとの課題が内在しているといえる。
d 上記a?cの事情を考慮すると、引用発明の包被体(フィルタ16)において、引用例3の技術事項(開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成すること)を適用して、流路基板の長尺方向の一端側を閉塞すると共に、他端側を開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成することは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
e 以上のとおりであるから、引用発明に引用例3の技術事項を適用して、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

ウ 効果について
本願補正発明の作用効果は、引用発明及び引用例2,3の技術事項の作用効果からみて、当業者が予測し得る程度のものである。

(4)むすび
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2,3の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、拒絶査定時の平成25年7月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「長尺状の幅広平板であって、該長尺方向に沿って連続的に形成した凸条または凹条の複数の樋状体を、それぞれ略平行に配列形成して成る流路基板と、
該流路基板の全体を包被する通水シート材であって、砂礫の通過を阻止し得る程度の多孔性を持った包被体と、
から成り、
前記包被体は、上記流路基板の長尺方向の一端側または両端側を開放させて配設していることを特徴とする水路板。」

第4 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、2の記載事項は、前記第2の3(1)に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記第2の1の本願補正発明から、「流路基板」の構成に係る限定事項である「長尺状かつ幅広平板状を成した可撓性単板であって、該長尺方向に連続した凸条又は凹条の樋状体の複数個をそれぞれ略平行に配列形成すると共にその凸条の凸頂部付近及び又は凹条の凹底部付近に、複数個の貫通孔を形成して成る」構成(すなわち、「流路基板」を可撓性があって、貫通孔を形成した構成)、及び、「包被体」の構成に係る限定事項である「上記流路基板の長尺方向の一端側を閉塞すると共に、他端側を開放させて流路基板の端部より外側へ延長させて形成している」構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の3(3)に記載したとおり、引用発明及び引用例2の技術事項、並びに本件補正で限定された事項に係る引用例3の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、本件補正で限定された事項に係る判断(引用例3の技術事項に基づく点)を除き同様の理由で、引用発明及び引用例2の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-13 
結審通知日 2015-02-16 
審決日 2015-02-27 
出願番号 特願2013-88775(P2013-88775)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E01C)
P 1 8・ 121- Z (E01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石村 恵美子▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 小野 忠悦
住田 秀弘
発明の名称 水路板及びこれを用いた排水施設  
代理人 水野 博文  

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