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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2013800084 審決 特許
無効2014800125 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B03B
審判 一部無効 2項進歩性  B03B
管理番号 1300028
審判番号 無効2014-800048  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-03-28 
確定日 2015-04-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第3612326号発明「線状廃材選別装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3612326号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.請求及び答弁の趣旨
請求人は、結論と同旨の審決を求めている。これに対し、被請求人は答弁をしなかった。


第2.手続の経緯
平成16年 1月 8日 本件特許出願
平成16年10月29日 設定登録(特許第3612326号)
平成26年 3月28日付け 審判請求書
平成26年 4月16日付け 答弁指令
平成26年 4月21日 審判請求書副本の送達
平成26年 9月12日付け 審理事項通知
平成26年 9月22日付け 被請求人・上申書
平成26年10月 8日付け 請求人・口頭審理陳述要領書
平成26年10月15日付け 審理事項通知(2)
平成26年10月21日付け 請求人・口頭審理陳述要領書(2)
平成26年10月22日付け 請求人・上申書
平成26年10月24日 口頭審理
平成26年12月16日付け 審決の予告


第3.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、以下のとおりである。
なお、請求項1のA、B、C等の分説は、請求人の審判請求書によるものとした。

「【請求項1】
A.槽内を上下に仕切る仕切網を備え、この仕切網の上方側に投入される混合廃材を液体中において、その比重差により選別するための選別槽と、
B.この選別槽内の液体を上下方向に脈動させる気室を備えた上下脈動手段と、
C.前記混合廃材のうち選別対象である線状廃材の比重より小さく、かつ、残りの他の廃材の比重より大きい比重を有すると共に、その重量および形状がほぼ同一に形成されている球状物の多数を前記仕切網上に敷き詰めてなる線状廃材分離層とを有していることを特徴とする
D.線状廃材選別装置。」


第4.請求人の主張
1.主張する無効理由
無効理由1
本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
無効理由2
本件発明では、a)仕切網の網目の大きさ、及び、b)選別槽の形状及び球状物の敷き詰め方が、規定されておらず、本件発明の解決しようとする課題を解決するための手段が不足しているから、第36条第6項第1号の要件を満たしていない。

2.証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
ここで、甲第1?2号証は審判請求時に、甲第3?17号証はその後、提出されたものである。
なお、甲第4号証と甲第5号証は、口頭審理において参考資料とされた。(調書の請求人欄2)

甲第1号証:「Gravity Concentration Technology (Developments in Mineral Processing volume 5), Richard O. Burt, Elsevier Science Publishers B.V., The Netherlands, 1984」第184頁?第185頁、第190頁、第211頁
甲第2号証:甲第1号証の一部の箇所の和訳文
甲第3号証:甲第1号証の一部の箇所(甲2とは異なる箇所)の和訳文
甲第6号証:「FI記号 B03B (1994.03発行)」
甲第7号証:「Gravity Concentration Technology」(甲第1号証と同一文献)第203頁?第206頁
甲第8号証:甲第7号証第205頁第8行?同第9行の和訳文
甲第9号証:「選鉱工学」(高桑 健著,NREリサーチ社,昭和54年復刻版)
甲第10号証:リーダーズ英和辞典第2版(研究社,1999年)「a2」の欄
甲第11号証:甲第7号証の全体の和訳文(甲8として提出済みの部分は除く)
甲第12号証:特開2002-86013号公報
甲第13号証:特開2001-205193号公報
甲第14号証:特開2001-35285号公報
甲第15号証:特開平10-128149号公報
甲第16号証:環境資源工学会の沿革に関する資料並びに「資源処理技術」第50巻第1号、同第50巻第3号及び同巻第4号の目次
甲第17号証:小幡英二、外2名,“垂直および水平振動場における単一球の沈降速度”,室蘭工業大学,1987年11月,室蘭工業大学研究報告,理工編Vol.37, pp.349-358, 1987

3.主張の要点
請求人の主張の要点は、以下のとおりである。
なお、原文の丸囲み数字は「丸1」のように置き換えた。行数は、空行を含まない。

(1)無効理由1(第29条)
ア.請求書第5頁第20行?第10頁第12行
「(4-1)本件特許発明
本件の請求項1に係る特許発明は、本件特許第3612326号の願書に添付した特許請求の範囲の当該請求項に記載された通り・・・である。
(4-2)先行技術が存在する事実及び証拠の説明
本件特許の出願前に刊行された刊行物である甲第1号証(・・・)には、本件請求項1に係る特許発明の構成中、A、B、C、Dに相当する構成が記載されている。・・・同号証は、比重選鉱技術(比重差を利用して有用鉱物と不用鉱物とを分離する技術)に関する文献であり、その第184頁第18行?第185頁第4行には、「The basic construction of a jig is shown in Fig.10.1. Essentially, it consists of an open tank, filled with a fluid, normally water, with a horizontal or slightly inclined jig “screen” near the top upon which the particles (the “bed”) are supported, and through which the fluid flows in alternating directions. The jig also includes means to continuously receive raw ore feed (feed intake), for pulsating the water in a controlled manner (jig drive mechanism) and methods of separating the stratified bed into two or more product stream.」(以下「記載X1」という)
第185頁第6行?同第9行には、 「When jigging “through” the screen, or when there is an insufficient proportion of heavies in the feed, then the bed on the screen contains a layer of “ragging” or coarse heavy particles of a specific gravity between the minerals it is intended to separate.」(以下「記載X2」という)と記載され、
第190頁第35行?同頁第37行には、「ragging, of a size larger than the screen aperture, and of a specific gravity between that of the lights and heavies is employed, to ensure that it remains at the bottom of the bed (Fig. 10.7).」(以下「記載Y」という)と記載され、
第211頁本文第6行?同第9行には、「Ragging: Where artificial beds are employed, in through-the-screen jigging, the choice of a suitable ragging is most important. Generally the ragging should be of a specific gravity between the mineral to be separated and the waste mineral. 」(以下「記載Z1」という)第211頁本文第19行?同第21行には、「Materials that can be used as ragging range from artificial alloys or metals(usually spherical) to heavy mineral concentrates or middlings that be not abrasive.」(以下「記載Z2」という)と記載されている。
また、上記記載X1、X2に関連するFig.10.1には、ジグの基本構成が図示されている。・・・
(4-3)本件特許発明と先行技術との対比
(一致点)
本件請求項1に係る特許発明と甲第1号証に記載された事項とを対比すると、両者は、比重差を利用して特定の物質を他の物質から分離する技術である点で共通する。
また、本件特許発明の構成要件A及びBは、甲第1号証の記載X1・・・に相当する。すなわち、本件特許発明の構成要件Aにおける「選別槽」、「仕切網」、「仕切網の上方に投入される混合廃材」は、甲第1号証の記載X1における「open tank」、「screen」、「raw ore feed」にそれぞれ対応し、構成要件Bにおける「上下脈動手段」は、同号証の記載X1における「jig drive mechanism」に対応している。構成要件A及びBにおける「仕切網」、「仕切網の上方に投入される混合廃材」、「上下脈動手段」は、Fig.10.1においても「JIG SCREEN」、「FEED」、「WATER MOTION」として、選別槽とともに図示されている。
さらに、本件特許発明の構成要件Cにおける「仕切網上に敷き詰めてなる線状廃材分離層」は、同号証の記載X2における「ragging」に対応し、Fig.10.1においても「RAGGING」として図示されている。構成要件Cの「線状廃材分離層」が、「線状廃材の比重より小さく、かつ、残りの他の廃材の比重より大きい比重を有する」ことについては、同号証の記載X2において「a layer of “ragging” or coarse heavy particles of a specific gravity between the minerals it is intended to separate.」と記載されている。
(相違点)
丸1 本件特許発明の構成要件Cの線状廃材分離層を構成する物質について、「その重量および形状がほぼ同一に形成されている球状物の多数」との記載があるが、これに対応する甲第1号証の記載X1及びX2には、「ragging」の重量及び形状に関する記載がない。
しかしながら、同号証の記載Z2には、「ragging」の形状について、「Material that can be used as ragging range from artificial alloys or metals (usually spherical) to heavy mineral concentrates or middlings that are not abrasive」と記載されており、「ragging」として合金を使用する際に、形状を球状(spherical)にすることが明記されている。同号証のFig.10.1にも、JIG SCREEN上に敷き詰められた「ragging」が、ほぼ同一の大きさの球状物として図示されている。
また、重量=比重×体積(大きさ)であるから、或る1つの比重を有し、大きさがほぼ同一の球状物の重量がほぼ同一であることは明らかである。
以上の点から、同号証の記載Z2及びFig.10.1には、「ragging」がほぼ同一の形状及び重量の球状物によって構成されることが示されている、解する。
なお、「ragging」の比重について、同号証の記載Yに「ragging,・・・・・of a specific gravity between that of the lights and heavies is employed」との記載があり、同号証の記載Z1に「the ragging should be of a specific gravity between the mineral to be separated and the waste mineral」との記載がある。すなわち、「ragging」が、分離物質と被分離物質との間の(或る1つの)比重を有するものであることが記載Y及びZ1にも明記されている。
上述のように、物質A(比重γ1)と物質B(比重γ2>γ1)とが混在する物質群から物質Bを分離する際に、物質Aと物質Bの中間の比重γ3を有する物質C(γ2>γ3>γ1)を利用する技術は、比重選鉱分野では公知の技術であり、物質Cは、「ラギング材」と呼ばれている。
丸2 本件特許発明の構成要件Dが、「線状廃材を精度良く選別回収することができる」(【0009】)線状廃材分離装置であるのに対して、甲第1号証に記載されている選別対象は鉱物である点で相違している。
しかしながら、異なる比重を有する物質が混在しているものから、比重差を利用して特定の物質を分離する技術である点では、両者は共通している。 なお、Fig.10.1における「CONCENTRATE」が本件特許発明における「線状廃材」に対応している。
(結論)
したがって、当業者であれば、甲第1号証における上記の事項(記載X1、X2、Y、Z1、Z2、Fig.10.1)から、本件請求項1に係る特許発明を想到することは、容易であると思料する。」

イ.口頭審理陳述要領書 第2頁第6行?第4頁第19行
「(2)甲1に記載されたジグに関する発明を線状廃材選別装置に適用する動機付けについて
甲1は、選鉱技術の進歩を述べたシリーズの一冊(Developments in Mineral Processing, volume 5)です。ここで、選鉱(Mineral Processing)とは、採掘した鉱石を有用鉱物と不用鉱物に分離する作業のことをいいます。我国において、選鉱は、学問的には工学部の鉱山工学科(鉱山学科、採鉱学科ともいいます。1980年代には、時代の趨勢にあわせて、資源工学科、資源開発工学科、資源システム工学科等と改称されています)で研究が行われていました。したがいまして、甲1の主たる“読者層”は、鉱山工学科出身の技術者や研究者であると推測されます。
一方、線状廃材選別装置は、廃材の選別技術に関する装置ですが、廃材の選別技術は、資源のリサイクル技術に属するものです。資源のリサイクル技術は、上述のように鉱山工学科から改称された資源工学科が主要な研究拠点となっています。・・・
また・・・本件特許のFI記号B03Bは、「ジグによる固体物質の分離」であることが分かります。このことからも、ジグ選別に関する技術と本件特許が同じ技術分野に属するものであることが分かります(FI記号B03Bを示した資料を甲第6号証として提出します)。
以上のことを考え合わせると、甲1に記載されたジグと線状廃材選別装置とは、近接した技術分野に属する、というよりもむしろ、両方の技術分野を担う技術者・研究者の主要なルーツは同じであるといえます。
過去に選鉱に携わっていて甲1から知識を修得した技術者が、現在は資源のリサイクルに関連する業務に携わっており、技術開発に際して甲1から得た知識を活用することは十分に考えられる事態です。
したがいまして、「甲1に記載されたジグに関する発明を線状廃材選別装置に適用する」のは容易である、と思料します。
(3)甲1に記載されたジグにおいて気室を備えることの容易性について
「気室を備えることの容易性」を説明するため、甲第7号証を提出します。甲第7号証は、甲第1号証と同一文献です。甲第7号証の第203頁以降には、空気により脈動を与える型式のジグ(Pulsator (Air) Jigs)が記載されており、同第205頁第8行?同第9行には、「Tacub Jig: The Tacub jig was developed in Japan (Takakuwa and Matsumura 1954, Yoshida 1959) and has its air chamber below the screen bed.」 との記載があり(この箇所の和訳分を甲第8号証として提出します)、気室(air chamber)を備えたジグが明記されています。
なお、Tacub Jig(タカブ・ジグ)は、故高桑健博士等により昭和30年代に考案されたジグであり、選鉱学の分野では周知の装置です。
Tacub Jig(タカブ・ジグ)に関する資料を甲第9号証として提出します。
(4)甲1のFig.10.1のみから「ragging」の「大きさがほぼ同一」といえる理由について
・・・「ragging」に適する材料として「人工的な合金又は金属」(記載Z2)と記載されています。
したがいまして、「ragging」が、砂利や砕石等の天然物ではなく、合金等を材料とする工業製品が適していることを考慮すると、当業者であれば、特別な技術的意義が見受けられない異なる大きさの「ragging」ではなく、同じ大きさの「ragging」を想起するのは容易である、と思料します。・・・
(5)「ragging」は「或る1つの比重を有する」(全部同じ材料でできている)とする理由について
「ragging」の比重(specific gravity)について、甲1には、「ragging,・・・of a specific gravity between that of the lights and heavies is employed」(記載Y)、および「the ragging should be of a specific gravity between the mineral to be separated and the waste mineral」(記載Z1)(下線は請求人代理人による)との記載があります。不定冠詞「a」が「ある一つの」という語義を有する(甲第10号証をご参照ください)ことを考慮すると、「ragging」が「或る1つの比重を有する」と解する、のは妥当であると思料します。」

ウ.口頭審理陳述要領書(2) 第2頁第5行?第3頁末行
「(2)本願の出願前に線状廃材の選別を目的とした装置の公知性について
・・・
いわゆる「線状廃材」の選別を目的とした装置としては、以下に示すように、多数の出願例(甲第12号証?甲第15号証)が見受けられます。
甲第12号証(特開2002-86013号公報)には、「廃棄物となった使用済み家電製品を破砕し、磁力選別機で鉄を回収した後の非鉄(銅線類)を含むプラスチック群から非鉄とプラスチック類を比重選別して再資源化する比重選別装置」(【0001】、下線は請求人代理人による。以下、本項において同じ)が記載されています。ここで、「非鉄」には、銅線が含まれます。
甲第13号証(特開2001-205193号公報)には、「銅線等の線材を他の破砕片から分別する線類の分別装置」(【0001】)が記載されています。
甲第14号証(特開2001-35285号公報)には、「プラスチック被覆廃電線を粉砕し、比重差により銅と被覆廃材とに分離し、分離された被覆廃材から、該被覆廃材に含まれる銅を更に分別する湿式比重差分別装置」(【請求項1】)が記載されています。ここで、「銅」には、銅線が含まれます。
甲第15号証(特開平10-128149号公報)には、「被覆材付き金属線材を原料として加熱処理することにより発生する、無機残渣と金属線材とが結合してなる集合残渣群から金属線材を分離回収する残渣分離装置」【請求項1】)が記載されています。
以上の証拠から分かるように、本願の出願前において、線状廃材の選別を目的とした種々の装置が存在したことは明らかです。
(3)鉱物選別装置と廃材選別装置が研究主体や当業者が同じであったことを示す証拠について
鉱物選別装置と廃材選別装置の研究・開発主体が同じであることを示す証拠として、甲第16号証を提出します。
甲第16号証は、環境資源工学会に関連する一連の資料です。その第1頁は、同学会の沿革を記したものであり、昭和18年に「浮選剤に関する研究会開催」を契機として創立されたことが示されています。ここで、「浮選」とは、選鉱の一種である浮遊選鉱のことを意味します。
一方、同学会の機関誌である『資源処理技術』の2003年(平成15年)第1号には、「廃電子部品等からのニッケルの浮選による回収」、同2003年第3号には、「乾式タワーミル粉砕機と静電選別機による廃車シュレッダーダストからの銅の分離方法」、同2003年第4号には、「基板・シュレッダーダストからの非鉄金属回収」という論説文等が掲載されています。
これらの資料により、同学会の取り扱うテーマとして、選鉱と廃材選別の両方が含まれることが分かります。
したがいまして、本願の出願日(平成16年1月8日)の前においても、鉱物選別装置と廃材選別装置の研究・開発主体が同じであったことは明らかであると思料します。
(4)「ragging」について「意味なくわざわざその大きさを変えないのが普通である」とする根拠について
鋼球等の金属球は一般的に、冷間圧造工程、バリ取り等の研削加工工程、硬度と粘り強さを付与するための熱処理工程、そして表面を研磨する研磨工程を経て製造されます。ここで、冷間圧造工程とは、原材料(コイル材)を金型の中へ圧力をかけて押し込み、金属球の原形を形作る工程です。
このように、金属球の製造には、金型が必要となりますが、金属球の大きさを変える利点がない(特段の利点はないと思料します。むしろ、大きさがまちまちの金属球を使用すると、金属球の沈降速度がそれぞれ異なってくるため、一定の層が形成されにくくなり、「ragging」としての効果が減殺される可能性があると思料します)のであれば、製造業者は、1種類の金型ですむように、同じ大きさの金属球を製造するものと思料します。・・・」

エ.上申書 第2頁第2行?第17行
「(1)平成26年10月21日付け口頭審理陳述要領書の6(4)における記載「大きさがまちまちの金属球を使用すると、金属球の沈降速度が異なってくるため、一定の層が形成されにくくなり」の妥当性を立証するため、甲第17号証を提出します。
(2)甲第17号証は、「垂直および水平振動場における単一球の沈降速度」というタイトルの論文です。
その表1(第353頁)には、垂直振動が生ずる場において粒径の相違によって粒子の沈降速度がどのように変化するかを実験した結果が示されています。
表1によれば、粒子の粒径dが大きくなるに従って、静水中での終末沈降速度Vs、振動場での平均沈降速度Vp とも大きくなることが示されています。これにより、粒子の径が異なると、静水中においても垂直振動場においても(スクリーンを通して水を脈動させることは、垂直振動を与えることに対応します)、粒子の沈降速度が異なることが分かります。
粒子の沈降速度が異なると、一定の層が形成されにくくなり、「ragging」としての効果が減殺されることとなります。」

オ.調書の請求人欄
「3 相違点アについて
甲第1号証のジグを甲第12号証ないし甲第15号証の線状材選別装置とすることは、甲第16号証から研究開発主体が同じであることを踏まえると容易。
4 相違点イについて
気室を設けることと、それによる脈動は、甲第7号証に記載されている。
甲第9号証の左下図の左側にある丸印は、甲第7号証のFig.10.28と同様に気室である。
5 相違点ウについて
甲第17号証の「表-1」には、粒径を大とすると、沈降速度が大となることが記載されているから、粒径が異なると沈降速度が異なり、一定層が形成されにくくなる。」

(2)無効理由2(第36条)
ア.請求書第10頁第13行?第13頁第3行
「(4-4)特許請求の範囲の記載要件違反に関する説明
a)本件特許発明の解決しようとする課題は、「絡みやすい形状の銅線屑等が混在する線状廃材を精度良く選別回収する」(【0009】)ことであると解する。そして、そのために・・・。・・・線状廃材分離層15を用いて比重選別した線状廃材(銅線屑等)を仕切網14から選別槽5の下部分(仕切網14によって上下に仕切られた選別槽5のうち下の部分)に落下させようとするものである。
よって、本件特許発明の線状廃材選別装置を上述のように作動させるには、仕切網の網目の大きさが「線状廃材を落下させられるが、球状物を落下させない程度」(【0062】)のものでなければならない。
しかるに、請求項1には、仕切網の網目の大きさについての記載がなく・・・。・・・請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることになる。・・・
b)本件特許発明の奏する効果は、「線状廃材分離層の上下脈動が乱れ過ぎないように抑制でき、絡み合った銅線屑をほぐして分離したり、仕切網に引っ掛かった銅線屑を網下に分離することができる」(【0013】)と記載されている。
そして、かかる効果を奏するために、「選別槽の形状、球状物の比重、重量および形状を限定」(【0013】)している。
・・・
選別槽の形状については、「選別槽5は平面断面が略正方形等の正多角形若しくは円形に形成されている必要がある」(【0064】)と記載されている。
そして、このような形状にする理由として・・・。・・・線状廃材分離層15を一体的に上下動させるためには、選別槽5の形状を「平面断面が略正方形等の正多角形若しくは円形に形成」しなければならない、としている。 一方、「選別槽5が断面正多角形の場合、一辺の長さが球状物15aの直径で割り切れる値(整数倍)に設定されており、図8に示すように、隣り合う他の粒状物15aと接触するように敷き詰められる」(【0064】)と記載されている。この記載の意味するところは・・・。・・・粒状物15aを図8に示されるような状態に敷き詰めた状態で上下脈動を与えることによってはじめて、線状廃材分離層15を一体的に上下動させることが可能になるものと解する。
なお、このような状態は選別槽5の断面が正方形又は長方形の場合以外には生じ得ない、と解する。・・・
発明の詳細な説明には、「選別槽5は平面断面略正方形状に形成されており、かつ、重量および形状が同一の球状物15aを使用しているため、線状廃材分離層15と選別槽5の内壁面と接触面に発生する摩擦抵抗はほぼ等しくなる」(【0067】)との記載もある。
以上の発明の詳細な説明の記載から判断すると・・・。・・・本件特許発明の上述の効果を奏するためには、選別槽の形状、球状物の比重、重量および形状、球状物の敷き詰め方の条件が必要であることが、発明の詳細な説明に記載されている。
しかるに、請求項1には、球状物の重量および形状に関する条件は記載されているが、選別槽の形状及び球状物の敷き詰め方に関する条件は記載されていない。
したがって、請求項1には、発明の詳細な説明に記載された手段が記載されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているものと解する。・・・」

イ.口頭審理陳述要領書第4頁第20?22行
「(6)記載要件違反との主張(請求書(4-4))について
記載要件違反に関する請求人の主張は、審理事項通知書に示されたご理解のとおりです。異存ありません。」

なお、平成26年9月12日付審理事項通知書に示したことは以下のとおりである。
「請求人の主張は、要すれば、本件発明では、a)仕切網の網目の大きさ、及び、b)選別槽の形状及び球状物の敷き詰め方が、規定されておらず、本件発明の解決しようとする課題、すなわち、「絡みやすい形状の銅線屑等が混在する線状廃材を精度良く選別回収する。(本件特許明細書の段落[0009])」という課題を解決するための手段が不足しているから、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないとの主張であるとの理解で良いか、回答されたい。」


第5.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、答弁書を提出せず、また、平成26年9月22日付けの上申書で、都合により、平成26年10月24日付けの口頭審理に出頭しない旨、および本件関する一切の手続を行わない旨を述べている。


第6.無効理由1(第29条)についての当審の判断
1.本件発明
本件発明は、上記第3.のとおりと認められる。

2.刊行物記載事項
(1)甲第1号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下が記載されている。
なお、原文摘記箇所に続く()内の文章は、当該摘記箇所についての請求人による和訳を基礎とし、当審にて作成した和訳である。

《第184頁第3行?同頁第17行》
「INTRODUCTION
The jig is one the most widely applied gravity concentrating devices. Along with heavy medium separation, discussed in the preceeding chapter, it accounts for half of the coal processed. It is also the major concentrating device used on the tin dredges of South East Asia and elsewhere. The range of minerals applicable to jigging stretch from coal to diamonds and from gold to roadstone.
Jigging is the process of sorting different minerals in a fluid by stratification, based upon the movement of a bed of particles which are intermittently fluidized by the pulsation of the fluid in a vertical plane. The stratification causes particles to be arranged in layers with increasing density from the top to the bottom. This particle arrangement is developed by several continuously varying forces acting on the particles, and is more related to particle density than most other gravity concentrating devices.」
(はじめに
ジグは、最も広く用いられる重力濃縮装置の1つである。前章で述べられた重選(heavy medium separation)に加えて、ジグは、処理される石炭の半分以上を取り扱う。ジグは、南東アジア等の錫の浚渫工場で使用される主要な濃縮装置でもある。ジグ選別(jigging)に適用される鉱物の範囲は、石炭からダイアモンド、金から道路用砕石にまで及ぶ。
ジグ選別は、流体を垂直面内で脈動させ断続的に流動化させて粒子のベッドを運動させ成層化させることによって、流体中で異なる鉱物を分類する方法である。成層化により、粒子は、頂部から底部に向かって密度が大きくなるように、層状に配列される。このような粒子の配列は、粒子に作用する幾つかの連続的に変動する力によって引き起こされ、大抵の他の重力装置よりも粒子密度に関連する。)

《第184頁第18行?第185頁第4行》
「The basic construction of a jig is shown in Fig.10.1. Essentially, it consists of an open tank, filled with a fluid, normally water, with a horizontal or slightly inclined jig ‘screen’ near the top upon which the particles (the ‘bed’) are supported, and through which the fluid flows in alternating directions. The jig also includes means to continuously receive raw ore feed (feed intake), for pulsating the water in a controlled manner (jig drive mechanism) and methods of separating the stratified bed into two or more product streams.」
(ジグの基本構成は、図10.1に示されている。ジグは基本的に、流体(通常は水)で満たされた開放タンクを備えており、開放タンクの頂部の近傍に、水平又は僅かに傾斜したジグ・スクリーンが設けられ、ジグ・スクリーン上に粒子(ベッド)が支持されている。そして、ジグ・スクリーンを通して、流体が交互の方向に流れる。ジグは又、原鉱供給物(投入される供給物)を連続的に受け入れ、制御されたやり方で水を脈動させるための手段(ジグ駆動機構)を有しており、層状のベッドを分離して2又はそれ以上の生成物に分離する。)

《第185頁第4行?同頁第5行》
「This can include removal of concentrate “over” the screen or “through” the screen.」
(これには、スクリーンの“上”での又はスクリーンを“通して”の濃縮物の除去が含まれることがある。)

《第185頁第6行?同頁第9行》
「When jigging “through” the screen, or when there is an insufficient proportion of heavies in the feed, then the bed on the screen contains a layer of “ragging” or coarse heavy particles of a specific gravity between the minerals it is intended to separate.」
(スクリーンを“通して”ジグ選別を行うとき、すなわち供給物中の重量物の割合が不十分であるときは、スクリーン上のベッドに、“ラギング材”の層、すなわち分離しようとする鉱物の中間の比重を有する粗大な重粒子の層を設ける。)

《第185頁第10行?同頁第22行》
「In operation the bed is made fluid by a pulsating current of fluid to provide stratification. These water currents may be all upward (‘pulsion’ only), all downward (‘suction’ only) or alternating upward and downward. In each case the pulsation may be symetrical or asymetrical. On the upstroke the bed of ragging and slurry is normally lifted as mass, then as velocity of the upcurrent decreases it dilates, loosening the whole mass. On the downstroke it closes slowly again. The ideal is to control this dilation of the bed of material so that the heavier and smaller particles penetrate the interstices of the bed, whilst the larger heavies fall under a condition akin to “hindered” settling.
In most jigs it is the water which pulsates; however, in some, the water is stationary and the screen itself pulsates. In this latter case pulsion is on the down stroke and suction on the upward.」
(作動時に、ベッドは、流体の脈動流によって流動状態になり、成層化される。このような水流は、全て上昇(“圧出”のみ)でもよく、全て下降(“吸引”のみ)でもよく、或いは交互に上昇と下降になるものでもよい。各々の場合において、脈動は、対称でもよく非対称でもよい。上昇行程では、ラギング材とスラリーのベッドは、一つの塊として持ち上げられるのが通常であり、次いで上昇流の速度が減少するにつれてベッドが拡散して塊全体がほぐされる。下降行程では、ラギング材とスラリーのベッドは、再び緩慢に接近する。重くて小さな粒子がベッドの隙間を突き通り、大きくて重い粒子が“遅れて”沈降する状態になるように、材料のベッドのこのような拡散を制御するのが理想的である。
大部分のジグでは、脈動するのは水であるが、水は不動でスクリーン自体が脈動するものもある。後者の場合では、下降行程時に圧出され、上昇行程時に吸引される。)

《第190頁第35行?同頁第37行》
「ragging, of a size larger than the screen aperture, and of a specific gravity between that of the lights and heavies is employed, to ensure that it remains at the bottom of the bed (Fig. 10.7).」
(ラギング材がベッドの底部に確実に留まるようにするため、ラギング材として、スクリーン孔よりも寸法が大きく、かつ、軽量物と重量物との間のある一つの特定の比重を有するものが用いられる(図10.7)。)

《第211頁本文第6行?同頁第9行》
「Ragging: Where artificial beds are employed, in through-the-screen jigging, the choice of a suitable ragging is most important. Generally the ragging should be of a specific gravity between the mineral to be separated and the waste mineral.」
(ラギング材: スクリーン通過型ジグ選別機において人工的なベッドを用いる場合には、適当なラギング材を選択することが非常に重要である。ラギング材の比重は一般的に、分離しようとする鉱物と廃棄鉱物との間の比重とすべきである。)

《第211頁本文第10行?同第18行》
「The size of the ragging must, of course, be larger than the screen aperture, and not too small relative to the particles that have to pass through it during dilation. To assist interstitial trickling it must, when contracted, give the maximum voids, so that maximum suction and mobility through the interstices are attained. Hence it must be very close ranged and ideally irregular, but well rounded, in shape. If too light or spherical in shape, there is a tendency of migration towards the tail end. This can, however, be reduced by suitable baffles or by slightly inclining the screen towards the feed end.」
(ラギング材の寸法は、スクリーン孔よりも大きなものでなければならないのはもちろんであるが、膨張時に通過しなければならない粒子に対して小さすぎてもいけない。隙間からのトリックリング(落下)を促進するために、ラギング材は、隙間を通して最大の吸引と移動性が得られるように、収縮時に最大の間隙を提供しなければならない。それ故、ラギング材は、非常に緊密な範囲になければならず、理想的には不同であるが形状が十分に丸みを帯びたものでなければならない。軽すぎたり形状が球状である場合には、後端の方へ移動する傾向がある。しかしながら、適当なバフルによって、或いはスクリーンを供給端の方へ僅かに傾斜させることによって、このような傾向を減少させることができる。)

《第211頁本文第19行?同頁第21行》
「Materials that can be used as ragging range from artificial alloys or metals(usually spherical) to heavy mineral concentrates or middlings that be not abrasive.」
(ラギング材として使用することができる材料は、人工的な合金又は金属(通常は球状)から重い精鉱物又は中等物にまで及ぶ。)

《第184頁Fig. 10.1.》
Fig. 10.1. から、開放タンクの頂部の近傍に、前記開放タンク内を上下に仕切るジグ・スクリーンが設けられていることが、看取される。

甲第1号証に記載された事項を、図面を参照しつつ、本件発明に照らして整理すると、甲第1号証には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「水で満たされた開放タンクと、開放タンクの頂部の近傍に、前記開放タンク内を上下に仕切る、水平又は僅かに傾斜したジグ・スクリーンとを備え、原鉱供給物(投入される供給物)を連続的に受け入れ、比重差を利用して有用鉱物と不用鉱物とを分離するジグであって、
前記ジグ・スクリーンを通して、水が交互の方向に流れるように、制御されたやり方で水を脈動させるためのジグ駆動機構と、
前記ジグ・スクリーン上のベッドに、分離しようとする鉱物と廃棄鉱物との間のある一つの特定の比重を有する人工的な合金又は金属(通常は球状)を材料としたラギング材の層を設けた、
ジグ」

(2)甲第7号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

《第203頁下から第9行?第204頁下から第7行》
「Pulsator (Air) Jigs:
Large quantities of coal are cleaned each year by jigging:・・・.
Whilst the majority of mineral jigging is carried out in fixed screen pulsion: suction jigs, practically all the coal washed by jigs is carried out by air pulsated units, originally developed in Germany by Mr. Fritz Baum, at the end of the nineteenth century.
Baum Jig: The Baum Jig is a generic name for the class of jigs developed from Baum’s original patent. Various manufacturers offer their own variation of the basic design which is herein discussed.
・・・
The Jig box (Fig. 10.25.) consists essentially of a U-shaped steel container divided in cross section into two, and longitudinally into two or more compartments.
On one side of the box is the screen plate, whilist on the other is the air chamber. In the Baum jig a sealed air chamber above the hutch water compartment is fitted with an air valve, connected to a compressed air supply. The air valve may be a piston type operated by an eccentric, or a rotary valve. A typical mechanism is shown in Fig. 10.26.
At the start of the jig cycle the valve opens to admit air, producing a sharp upward movement of the water. At the instant of closure of the valve, the air continues to expand dissipating its pressure and allowing the water to continue rising through the screen. As the valve continues to rotate, the air is released at a controlled rate to atmosphere and the particles in the jig bed begin to fall, the movement being entirely by gravity. Hence the separation is primarily by hindered settling and the interstitial trickling phase is suppressed.
In its longitudinal phase the U-shaped wash box is divided vertically into compartments, which are themselves sub-divided into sections (Fig. 10.27.).」
(脈動(空気)ジグ:
ジグ選別によって毎年大量の石炭が選炭されている。・・・
大半の鉱物のジグ選別は、固定スクリーンにおける脈動で行われる。すなわち、吸引ジグ、特にジグによって洗浄される石炭は全て、空気脈動ユニット(原型は19世紀末にドイツでフリッツ・バウム氏によって開発された)で処理される。
バウム・ジグ: バウム・ジグは、バウム氏の最初の特許から発展したジグ型式の総称である。種々の製造者が、基本設計に対する変形を提案しており、ここでそれらを紹介する。
・・・
ジグ・ボックス(図10.25)は、U形の鋼製容器によって実質的に構成され、この容器は、横断面が2つに分割され、かつ、長さ方向が2つ以上の区画室に分割されている。
ボックスの一方の側にスクリーンプレートがあり、他方の側に気室がある。バウム・ジグでは、ハッチ状の水区画室の上方の密封された気室に、圧縮空気源に連結された空気弁が装備されている。この空気弁は、電動式のピストン型のものでもよく、回転弁でもよい。図10.26に典型的な機構が示されている。
ジグ行程の開始時に、弁は開放して空気を取り入れ、水の急激な上方移動を引き起こす。弁が閉鎖されると、空気は膨張し続けて圧力を散逸させ、水がスクリーンを通って上昇し続ける。弁が回転し続けると、空気は一定速度で大気に放出され、ジグベッド中の粒子は、もっぱら重力によって落下し始める。したがって、主として沈降が妨げられることによって分離され、隙間のトリックリング(落下)状態が抑えられる。
U形のウォッシュ・ボックスは、長さ方向の相において垂直方向に分割されて区画室が形成され、それらの区画室自体がさらに、部分に分割されている(図10.27)。)

《第205頁本文第8行?同第9行》
「Tacub Jig: The Tacub jig was developed in Japan (Takakuwa and Matsumura 1954, Yoshida 1959) and has its air chambers below the screen bed.」
(タカブ・ジグ:タカブ・ジグは、日本において開発された(1954年タカクワ、マツムラ、1959年ヨシダ)ものであり、タカブ・ジグには、スクリーン・ベッドの下方に気室が設けられている。)

《第205頁本文第12行?第206頁第13行》
「Batac Jig: Combining the principles of the Baum and Tacub jigs, the Batac Jig is finding wide application in coal cleaning plants in Europe and North America (Zimmerman 1974, Chen 1980).
Batac jigs are not common outside the coal industry, although they have been applied to the recovery of iron ore, and have also been tested for the treatment of gold.
In the Batac Jig (Fig. 10.28.), water pulsations are produced by valve controlled compressed air acting on the water from air chambers arranged underneath the jig bed transverse to material flow. This allows the air to be uniformly distributed across the width of the jig. There is no side air chamber, but small air chambers across the jig, thereby allowing for a larger capacity jig per unit space.
Like Baum type jigs, the Batac jig consists of two, or more compartments, each made up of two or more sections to produce clean refuse, middlings and a cleaned coal product.
The Batac air valve, controlled by solid state electronic circuitry is of a flat disc design, claimed to provide a sharper cut-off of the air input and exhaust than the rotary type valves used in standard Baum jigs.
The Batac air valve produces a cycle as shown in Fig. 10.29. (Chen 1980): this cycle is very close to the one suggested by Mayer’s principle of separation in a jig (Armstrong 1964, Mayer 1964).」
(バタク・ジグ: バタク・ジグは、バウム・ジグとタカブ・ジグの原理を組み合わせることによって、欧州と北米の両方で石炭洗浄プラントの広範な用途を創出している(ツィンマーマン 1974年、1975年、チェン 1980年)。
バタク・ジグは、鉄鉱石の回収に使用され、金の処理に用いられたこともあるが、石炭工業以外では一般的ではない。
バタク・ジグ(図10.28)では、材料フローを横切るジグベッドの下方に配列された気室から、弁で制御される圧縮空気を水に作用させることによって、水を脈動させる。これにより、空気がジグの幅全体にわたって均等に分散される。気室は側部には設けられていないが、ジグの幅全体にわたって小さな気室が設けられており、これにより単位空間当たり、より大容量のジグが得られる。
バタク・ジグは、バウム・ジグと同様に、2つ以上の区画室から構成され、各区画室は、選炭された捨石、2号炭、精炭を生成する2つ以上の部分で形成されている。
ソリッドステート電子回路で制御されるバタク・ジグの空気弁は、標準的なバウム・ジグで使用される回転弁よりも空気の流出入を急激に遮断するように、平らなディスク状に設計されている。
バタク・ジグの空気弁により、図10.29に示されるような行程が作り出される(チェン 1980年)。この行程は、メイヤーのジグの分離原理によって示唆される行程と非常に似ている(アームストロング 1964年、メイヤー 1964年)。)

甲第7号証に記載された上記事項を、図面を参照しつつ整理すると、甲第7号証には以下の事項(以下「甲7の記載事項」という。)が記載されている。

「鉱物のジグ選別に用いられるジグにおいて、固定スクリーンにおける水の脈動は、気室を備えた空気脈動ユニットを用いて行われること、そして、そうした空気脈動ユニットを備えたジグは、バウム・ジグ、タカブ・ジグ、バタク・ジグとして広く知られ、用いられていたこと。」

(3)甲第12号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第12号証には、以下の事項が記載されている。
[要約]
「[課題] 廃家電製品を破砕し、鉄を回収後の破砕物から素材別に再資源化する比重選別装置において、銅線を使用している部品を予め解体し取り出すことなく、効率よく銅線とPP樹脂とPS系樹脂を回収する。
[解決手段] 原料を供給する風力選別機9側から第1の槽14と第2の槽16を有する水比重選別槽13の底部を略逆錐状の第1底部14aと第2底部16aに形成し、第1底部14aにスクリューコンベアー15を配置し銅線、アルミニウム小片など非鉄類の重比重物を回収する。第2底部16aから選別水と選別水に沈む樹脂などの中比重物を排出する連通管17に連通して固液分離機18aを設けて選別水と中比重物を分離する。第2の槽16の終端部に固液分離機18bを設けて選別水に浮く軽量物を回収し、少なくとも第2底部16aから排出される選別水を循環ポンプ20により風力選別機9の上流側に循環させる。」

[0001]
「[発明の属する技術分野]本発明は、廃棄物となった使用済み家電製品を破砕し、磁力選別機で鉄を回収した後の非鉄(銅線類)を含むプラスチック群から非鉄とプラスチック類を比重選別して再資源化する比重選別装置に関するものである。」

[0013]
「本発明は上記従来の課題を解決するもので、予め銅線を使用している部品を解体し取り出すことなく、廃家電製品を丸ごと破砕し鉄を回収した残りの破砕物から、銅線等の非鉄と選別水に沈むプラスチック類を効率よく回収するとともに、リサイクルコストを合理化することを目的としている。」

(4)甲第13号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第13号証には、以下の事項が記載されている。
[要約]
「[課題] 銅線を含む一般廃棄物を破砕し、その破砕片を選別回収するリサイクルシステムにおいて、銅線等の線類の分別を可能とする。
[解決手段] プーリ14の周囲を回転する無端ベルト状の移送体8外周面を第2の搬送面とし、該移送体8外周面に多数の突起状部材9を設けてその上面を第1の搬送面とし、前記移送体8、突起状部材9及び前記移送体8を振動させる加振機B10を含む振動分別装置本体を構成し、突起状部材9相互間の間隙を分別対象の銅線が落下する隙間とした。被分別物は第1の搬送面に載置されて振動しつつ第1の搬送面出側へ移送され、被分別物中に混在する分別対象の銅線は振動により前記隙間から第2の搬送面に落下して、振動しつつ第2の搬送面である移送体8の回転により第2の搬送面出側に移送される。」

[0001]
「[発明の属する技術分野]本発明は自動車、家電品等の廃工業製品や銅線類を含む一般廃棄物から破砕により廃棄物を選別可能な大きさに破砕した後、破砕片を選別回収するリサイクルシステムに係り、特に銅線等の線材を他の破砕片から分別する線類の分別装置に関する。」

(5)甲第14号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第14号証には、以下の事項が記載されている。
[要約]
「[課題] 本発明は使用を終えたサイズの小さいプラスチック被覆電線の電線被覆廃材を再利用するために、該廃材から銅を効率よく除く電線被覆廃材からの銅の除去装置を提供することを課題とする。
[解決手段] 本発明は、プラスチック被覆廃電線を粉砕し、比重差により銅と被覆廃材とに分離し、分離された被覆廃材から、該被覆廃材に含まれる銅を更に分別する湿式比重差分別装置において、前記銅を分別する湿式比重差分別装置の被覆廃材投入口から下流側に分級機からなる堰を設けてなることを特徴とする電線被覆廃材からの銅の除去装置であり、該装置により被覆廃材に含まれる銅は殆ど完全、即ち、被覆廃材を燃料等として再利用しうる銅の含有量にまで低減することができる。」

[0001]
「[発明の属する技術分野]本発明は使用を終えたプラスチック被覆電線を回収して解体し、解体したプラスチック電線の被覆廃材を先ず銅とプラスチックとに一次分離し、分離したプラスチック廃材に残留する少量の銅を更に効率よく分離して、プラスチック廃材を再利用または廃却処理するための電線被覆廃材からの銅の除去装置に関するものである。」

(6)甲第15号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第15号証には、以下の事項が記載されている。
[要約]
「[課題] 被覆材付き電線を原料として熱分解もしくは焼却することにより発生する集合残渣を無機残渣と銅線とに分離して銅線を回収する。
[解決手段] 集合残渣群の表面に付着している灰状の無機残渣を水洗しながら振動篩を行うことにより洗い落とす第1振動スクリーン手段2と、その集合残渣群を破砕して内部に固着している無機残渣と銅線部分とを切り離すとともに銅線片を小片化する破砕機3と、振動篩により銅線片と無機残渣とに分離して銅線片をコンテナ14に回収する第2振動スクリーン手段4とで基本構成する。分離された無機残渣から銅屑,銅粉をさらに分離回収するダイスターテーブル6と、洗い落としの前処理として集合残渣群を所定の大きさに切断する切断処理手段1と、各種処理水から微粒状の無機残渣を沈降させる沈降槽7と、上澄み水を再利用する処理水供給手段9とを付加する。」
[0001]
「[発明の属する技術分野]本発明は、例えばゴム系材料等により絶縁被覆された不要電線もしくは不要ケーブルを熱分解もしくは焼却した後に発生する残渣から、有用金属材料である銅線等を分離回収するための残渣分離装置に関する。」

(7)甲第16号証
甲第16号証には、以下の事項が記載されている。
ア.環境資源工学会の沿革について、同学会が、「浮選剤に関する研究会開催」を契機として昭和18年に創立され、平成15年には「環境資源工学会」に改称されたこと、及び、同学会の学会誌は、「浮選」、「資源処理技術」、「環境資源工学」とその名称を変更してきたこと。(第1頁)
イ.「資源処理技術」誌の2003年(平成15年)第1号には、「廃電子部品等からのニッケルの浮選による回収」、同2003年第3号には、「乾式タワーミル粉砕機と静電選別機による廃車シュレッダーダストからの銅の分離除去」、同2003年第4号には、「基板・シュレッダーダストからの非鉄金属回収」という論説文等が掲載されていたこと。(第2頁、第4頁、第6頁)
なお、甲第16号証について、請求人は「環境資源工学会に関連する一連の資料」とのみ説明しているが、当審にて、甲16号証の各頁は、環境資源工学会のホームページ(http://www.nacos.com/rpsj/)の以下に示すURLに掲載された資料であることを確認済みである。
第1頁 http://www.nacos.com/rpsj/010301.html
第2ないし3頁 http://www.nacos.com/rpsj/50_1_contents.html
第4ないし5頁 http://www.nacos.com/rpsj/50_3_contents.html
第6ないし7頁 http://www.nacos.com/rpsj/50_4_contents.html

(8)甲第17号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第17号証には、以下の事項が記載されている。
ア.「垂直および水平振動場における単一球の沈降速度」(第349頁、論文タイトル)
イ.「流体の振動を応用した実用装置には浮遊選鉱,・・・がある。」(第349頁下から第6行?第5行)
ウ.「本報は単一ナイロン球の沈降速度を垂直振動場,および水平振動場で実測し,静止流体中の沈降速度と比較検討したものである。」(第350頁第5行?第6行)
エ.「3.実験装置および実験方法
垂直振動,水平振動とも同一の実験装置を用いた。図-1は垂直振動の場合である。・・・
単一ナイロン粒子を粒子投入口A(15mmφ)より自由落下させ,基準線間を通過する経過時間をビデオ撮影後のスローモーション再生により測定した。・・・
実験資料は直径3.17?12.75mmのナイロン真球粒子を用いた。粒子密度は個々に異なるため,全て実測した。流体はイオン交換水,グリセリン溶液(45wt%),エチレングリコールを使用し,液温は20℃とした。・・・」(第351頁第14行?第352頁第16行)
オ.第353頁の表-1から、粒子の粒径dが大きくなるに従って、静水中での終末沈降速度Vs、振動場での平均沈降速度Vpともに大きくなることが看取できる。

3.引用発明と本件発明との対比
引用発明における「原鉱供給物(投入される供給物)」は、「被分離物」という限りにおいて、本件発明における「混合廃材」に相当する。
引用発明における「分離しようとする鉱物」、「廃棄鉱物」は、各々、「被分離物のうち選別対象である被分離物」、「残りの他の被分離物」という限りにおいて、本件発明における「選別対象である線状廃材」、「残りの他の廃材」に相当する。
引用発明における「水」、「開放タンク」、「ジグ・スクリーン」は、各々、本件発明における「液体」、「選別槽」、「仕切網」に相当する。
よって、引用発明における「水で満たされた開放タンクと、開放タンクの頂部の近傍に、前記開放タンク内を上下に仕切る、水平又は僅かに傾斜したジグ・スクリーンとを備え、原鉱供給物(投入される供給物)を連続的に受け入れ、比重差を利用して有用鉱物と不用鉱物とを分離するジグ」の「開放タンク」は、「槽内を上下に仕切る仕切網を備え、この仕切網の上方側に投入される被分離物を液体中において、その比重差により選別するための選別槽」という限りにおいて、本件発明における「槽内を上下に仕切る仕切網を備え、この仕切網の上方側に投入される混合廃材を液体中において、その比重差により選別するための選別槽」に相当する。
引用発明における「ジグ・スクリーンを通して、水が交互の方向に流れるように、制御されたやり方で水を脈動させるためジグ駆動機構」は、「選別槽内の液体を上下方向に脈動させる上下脈動手段」という限りにおいて、本件発明における「選別槽内の液体を上下方向に脈動させる気室を備えた上下脈動手段」に相当する。
さらに、引用発明における「ジグ・スクリーン上のベッドに、分離しようとする鉱物と廃棄鉱物との間のある一つの特定の比重を有する人工的な合金又は金属(通常は球状)を材料としたラギング材の層を設けた」は、「被分離物のうち選別対象である被分離物の比重より小さく、かつ、残りの他の被分離物の比重より大きい比重を有する球状物の多数を前記仕切網上に敷き詰めてなる、選別対象である被分離物の分離層とを有している」という限りにおいて、本件発明における「混合廃材のうち選別対象である線状廃材の比重より小さく、かつ、残りの他の廃材の比重より大きい比重を有すると共に、その重量および形状がほぼ同一に形成されている球状物の多数を前記仕切網上に敷き詰めてなる線状廃材分離層とを有している」に相当する。
そして、引用発明における「ジグ」は、「被分離物を選別する装置」という限りにおいて、本件発明における「線状廃材選別装置」に相当する。

以上を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
槽内を上下に仕切る仕切網を備え、この仕切網の上方側に投入される被分離物を液体中において、その比重差により選別するための選別槽と、
この選別槽内の液体を上下方向に脈動させる上下脈動手段と、
前記被分離物のうち選別対象である被分離物の比重より小さく、かつ、残りの他の被分離物の比重より大きい比重を有する球状物の多数を前記仕切網上に敷き詰めてなる、選別対象である被分離物の分離層とを有している
被分離物を選別する装置。

《相違点》
(1)「被分離物」、「被分離物のうち選別対象である被分離物」、「残りの他の被分離物」及び「被分離物を選別する装置」が、本件発明では「混合廃材」、「選別対象である線状廃材」、「残りの他の廃材」及び「線状廃材選別装置」であるのに対し、引用発明では「原鉱供給物(投入される供給物)」、「分離しようとする鉱物」、「廃棄鉱物」及び「ジグ」である点
(2)「上下脈動手段」について、本件発明では「気室を備えた」と特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定がされていない点
(3)「球状物」について、本件発明では「その重量および形状がほぼ同一に形成されている」と特定されているのに対し、引用発明では、「ある一つの特定の比重を有する」が、その重量および形状がほぼ同一に形成されているとは特定されていない点

4.相違点の判断
(1)相違点(1)について
被分離物である混合廃材のうち、選別対象である線状廃材を選別する線状廃材選別装置は、甲第12号証ないし甲第15号証に記載された事項や、本件特許公報に参考文献として掲載されている特開昭64-43355号公報第1頁左下欄第17行?第18行の記載(切断ケーブル材の銅屑の回収等に使用する湿式比重選別機)からみて、本願の出願前に周知の技術であったといえる。
また、本件発明の線状廃材選別装置が属する技術分野と、引用発明のジグが属するは技術分野とは、同一ないし相互に近隣する技術分野であり、その研究開発を担ってきた者、すなわち、いわゆる当業者も同じであることは、例えば、本件特許明細書の段落[0003]に「・・・混合廃材を破砕し、石炭や骨材等を比重選別する際に用いられる比重選別装置により選別、分離する方法が考えられる。」と記載されていることや、甲第16号証に記載された事項からも明らかである。
してみれば、引用発明における「被分離物」,「被分離物のうち選別対象である被分離物」,「残りの他の被分離物」を、各々「混合廃材」,「選別対象である線状廃材」,「残りの他の廃材とすることで、線状材選別装置とすることは、用途、目的に応じて当業者が適宜なし得たことというべきである。
(2)相違点(2)について
引用発明のように、水等の流体で満たされた開放タンク内を上下に仕切るジグ・スクリーンを通して前記水等を脈動させるためのジグ駆動機構(上下脈動手段)を備えたジグにおいて、ジグ駆動機構に気室を備え、空気で駆動することは、例えば、本件特許公報に参考文献として掲載されている、上記特開昭64-43355号公報(明細書及び第1図における気室6を参照)、実開昭57-76745号公報(第6図における空気室2を参照)、特開平11-138043号公報(明細書及び図2における気室15を参照)、特開平11-138044号公報(明細書及び図3における気室15を参照)の記載から、本願の出願前の周知技術であったことが明らかであり、このことは甲7の記載事項からも伺える。
そして、上記周知技術を踏まえると、引用発明におけるジグ駆動機構(上下脈動手段)に気室を備えることは、当業者がごく自然に行い得たことというべきである。
(3)相違点(3)について
引用発明における「ある一つの特定の比重を有する」「ラギング材」(球状物)について、上記したように、甲第1号証及び甲第7号証には、その重量および形状がほぼ同一であるとの記載はない。
これに関し、請求人は、おおむね以下のアないしウの主張をしている。
ア.「ラギング材」の大きさがまちまちのものを使用すると、甲17号証に記載された事項からも明らかなように、その沈降速度がそれぞれ異なってくるため、一定の層が形成されにくくなり、「ラギング」の効果が減殺される可能性がある。(口頭審理陳述要領書(2)第3頁の(4)、上申書第2頁の(1)及び(2))
イ.その大きさを変える利点がないのであれば、製造業者は、1種類の金型ですむように、同じ大きさの金属球を製造する。(口頭審理陳述要領書(2)第3頁の(4))
ウ.したがって、意味なくわざわざその大きさを変えないのが普通である。
そして、これらの主張はいずれも技術的に妥当であり、当業者であれば、引用発明を実施するにあたり、その「ラギング材」(球状物)の形状をほぼ同一のものとすると考えるべきである。
してみると、「ラギング材」(球状物)は、「ある一つの特定の比重を有する」ものであるから、結果としてその重量もほぼ同じに形成されると考えられる。
したがって、引用発明における「ある一つの特定の比重を有する」「ラギング材」(球状物)の重量および形状をほぼ同一に形成することは、当業者であれば普通になすべきことというべきである。

そして、本件発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記した周知技術の奏する作用効果から当業者が十分予測し得た程度のものであり、何ら格別なものとはいえない。

5.小括
よって、本件発明は、甲第7号証、甲第12号証?甲第17号証に記載された事項他から明らかな周知技術を踏まえると、甲第1号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものである。


第7.無効理由2(第36条)についての当審の判断
請求人は、本件発明では、a)仕切網の網目の大きさ、及び、b)選別槽の形状及び球状物の敷き詰め方が、規定されておらず、本件発明の解決しようとする課題、すなわち、「絡みやすい形状の銅線屑等が混在する線状廃材を精度良く選別回収する。(本件特許明細書の段落[0009])」という課題を解決するための手段が不足しているから、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないと主張している。
これらの主張について検討する。
まず、上記「a)仕切網の網目の大きさ」について、本件発明は「球状物の多数を前記仕切網上に敷き詰めてなる」ことを要件としている以上、仕切網の網目の大きさを「線状廃材を落下させられるが、球状物を落下させない程度」とすることは、請求項1にその明記がなくとも、当業者であれば、当然考慮すべきことである。
次に、「b)選別槽の形状及び球状物の敷き詰め方」について、本件特許明細書の段落[0013]には以下の記載がある。
「[0013]
本発明によれば、
1.銅線屑等の比重差によっては選別し難く、絡みやすい線状廃材を精度良く選別することができる、
2.選別槽の形状、球状物の比重、重量および形状を限定することにより、線状廃材分離層の上下脈動が乱れ過ぎないように抑制でき、絡み合った銅線屑をほぐして分離したり、仕切網に引っ掛かった銅線屑を網下に分離することができる、
等の効果を奏する。」(下線は、当審にて付与。)
この記載から、選別槽の形状を規定することは、線状材の選別回収精度をより高めるため工夫であると考えるべきである。
また、「球状物の敷き詰め方」について、請求人が指摘する以下(1)?(3)は、いずれも本件発明の実施例に係る説明であって、本件発明の実施にあたり、線状材の選別回収精度をより高めるため工夫を説明しているものというべきである。
(1)「仕切網14の網目は線状廃材を落下させられるが、球状物を落下させない程度の大きさに形成されており」(段落[0062])、
(2)「選別槽5は平面断面が略正方形等の正多角形若しくは円形に形成されている必要がある。これは、敷き詰められた球状物15aと選別槽5の壁面との摩擦力を各辺でほぼ等しくすることにより、線状廃材分離層15が一体的に上下動し、線状廃材のみを下方へ案内するためである。したがって、選別槽5が断面正多角形の場合、一辺の長さが球状物15aの直径で割り切れる値(整数倍)に設定されており、図8に示すように、隣り合う他の球状物15aと接触するように敷き詰められる」(段落[0064])、
(3)「選別槽5は平面断面略正方形状に形成されており、かつ、重量および形状が同一の球状物15aを使用しているため、線状廃材分離層15と選別槽5の内壁面と接触面に発生する摩擦抵抗はほぼ等しくなる。これにより、線状廃材分離層15を構成する各球状物15aはほぼ一体的に上下動を繰り返す 。」(段落[0067])」
以上を踏まえると、本件発明の解決しようとする課題(本件特許明細書の段落[0009])は、[請求項1]に記載された事項で特定される発明、すなわち、本件発明によって解決されることが、当業者に明らかである。
したがって、本件特許に係る出願は、第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。


第8.むすび
以上、本件発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-25 
結審通知日 2015-02-27 
審決日 2015-03-10 
出願番号 特願2004-3334(P2004-3334)
審決分類 P 1 123・ 537- Z (B03B)
P 1 123・ 121- Z (B03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊永 茂弘  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 渡邊 豊英
栗林 敏彦
登録日 2004-10-29 
登録番号 特許第3612326号(P3612326)
発明の名称 線状廃材選別装置  
代理人 杉山 誠二  
代理人 佐川 慎悟  

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