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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1301169
審判番号 不服2013-14490  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-29 
確定日 2015-05-18 
事件の表示 特願2010-524069「口腔乾燥症を治療するための歯磨剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成21年3月12日国際公開、WO2009/032406、平成22年12月9日国内公表、特表2010-538074〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年7月17日(パリ条約による優先権主張 2007年9月6日 アメリカ合衆国)を国際出願とする特許出願であって、平成22年5月6日に手続補正書が提出され、平成24年7月11日付けで拒絶理由が通知され、同年10月17日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年3月25日付けで拒絶査定され、同年7月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年11月7日付けで前置審査の結果が報告され、当審において、平成26年5月29日付けで審尋され、同年9月1日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年7月29日付け手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年7月29日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項ただし書第4号に掲げる場合の補正であるところ、その内容は、特許請求の範囲についてする補正であって、以下のとおりのものである。

本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
少なくとも一つの界面活性剤;少なくとも一つの抗菌剤;及び少なくとも一つの接着剤を含む、ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための組成物であって、ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されている、前記組成物。
【請求項2】
口腔投与に適している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
練り歯磨き、又は、マウスウォッシュ、又は、口腔スプレーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一つの関連する病状が、細菌感染、真菌感染、及び原虫感染から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
口腔に対して低刺激性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一つの界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも一つの界面活性剤がココアミドプロピルベタインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも一つの抗菌剤が、二グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、並びに上記抗菌剤の塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの接着剤が、シリコーンオイル、多糖、CMC、キサンタン、カルボポール、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、及びケラチン硫酸から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの表面コーティング/保湿性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一つのフッ化物イオン供給源をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも一つの関連する病状が虫歯である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも一つの研磨剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも一つの抗菌剤が、組成物の0.1?5重量%を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも一つの界面活性剤が、組成物の0.1?3重量%を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも一つの接着剤が、組成物の0.1?3重量%を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも一つの界面活性剤;少なくとも一つの抗菌剤;及び少なくとも一つの接着剤を含む、ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤は、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体化されている、塩化セチルピリジニウムである、組成物であって、ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための前記組成物。
【請求項18】
少なくとも一つの関連する病状が細菌感染、又は、真菌感染である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも一つの接着剤が、シリコーンオイル、キサンタン、及び、ヒアルロン酸から選択される、請求項1に記載の組成物。」

本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
少なくとも一つの界面活性剤;少なくとも一つの抗菌剤;及び少なくとも一つの接着剤を含む、ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための組成物であって、
ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されており;
ここにおいて、少なくとも一つの界面活性剤は非イオン性界面活性剤であって、組成物の0.1?3重量%を含み;
ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤が、二グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、並びに上記抗菌剤の塩から選択され、組成物の0.1?5重量%を含み;
ここにおいて、少なくとも一つの接着剤が、シリコーンオイル、多糖、CMC、キサンタン、カルボポール、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、及びケラチン硫酸から選択され、組成物の0.1?3重量%を含む、
前記組成物。
【請求項2】
口腔投与に適している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
練り歯磨き、又は、マウスウォッシュ、又は、口腔スプレーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一つの関連する病状が、細菌感染、真菌感染、及び原虫感染から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
口腔に対して低刺激性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一つの界面活性剤がココアミドプロピルベタインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも一つの表面コーティング/保湿性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも一つのフッ化物イオン供給源をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの関連する病状が虫歯である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの研磨剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一つの接着剤がヒアルロン酸である、請求項1に記載の組成物。」

すなわち、本件補正は次の補正事項を含むものである。
補正事項1:本件補正前の請求項1を、同請求項6、8、9、14、15及び16の記載に基づいて限定して新たな請求項1とする補正

2.補正の目的
上記補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも一つの界面活性剤」を同請求項6及び15の記載に基づいて、同「少なくとも一つの抗菌剤」を同請求項8及び14の記載に基づいて、並びに同「少なくとも一つの接着剤」を同請求項9及び16の記載に基づいてそれぞれ限定して、新たな請求項1とするものであって、本件補正前後で請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.独立特許要件について
上記のとおり、請求項1に係る本件補正の目的は、特許法第17条の2第5項第2号の場合であるところ、さらに、同条第6項で準用する同法第126条第7項で規定する、いわゆる独立特許要件(すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない)について検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明について
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「少なくとも一つの界面活性剤;少なくとも一つの抗菌剤;及び少なくとも一つの接着剤を含む、ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための組成物であって、
ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されており;
ここにおいて、少なくとも一つの界面活性剤は非イオン性界面活性剤であって、組成物の0.1?3重量%を含み;
ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤が、二グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、並びに上記抗菌剤の塩から選択され、組成物の0.1?5重量%を含み;
ここにおいて、少なくとも一つの接着剤が、シリコーンオイル、多糖、CMC、キサンタン、カルボポール、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、及びケラチン硫酸から選択され、組成物の0.1?3重量%を含む、
前記組成物。」

なお、「グリコアミノグリカン」は「グリコサミノグリカン」を、「ケラチン硫酸」は「ケラタン硫酸」を、「カルボポール」は「カーボポール/Carbopol」(登録商標:物質名はカルボキシビニルポリマー)を、それぞれ意味するものとして以下検討する。

(2)刊行物及び刊行物の記載について
本願の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である特開2006-273767号公報(原査定における引用文献3。以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】
下記一般式[I]

[式中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は-(CHR^(5))m-基又は-(CH_(2)CHR^(5)O)m-CH_(2)CHR^(5)-基を示し(但し、R^(5)は水素原子又はメチル基を示し、mは1?18の整数を示す。)、R^(3)は-(CH_(2))n-基を示し(但し、nは2?4の整数を示す)、R^(4)は炭素数1?8のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。]で表されるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートの単独重合体、若しくは前記一般式[I]で表されるモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体を含む組成物であり、かつ、前記重合体の重量平均分子量が2,000?5,000,000であることを特徴とする口腔用組成物。」(特許請求の範囲)

イ.「【技術分野】
本品は口腔中をゆすぐ際に、あるいは、歯ブラシなどでブラッシングする際に用いられる口腔用組成物に関する。
【背景技術】
従来、口臭の予防、歯肉炎などの口腔疾患の予防、口中を爽快にするなどの目的で殺菌剤、界面活性剤、香料などを配合した歯磨き、洗口液、口中清涼剤などの口腔用組成物が用いられている。
近年、ストレスや医薬品の副作用による唾液分泌の低下、睡眠中の口呼吸などによるドライマウスとよばれる口腔内の乾燥状態が広く知られるようになって来た。口腔内の乾燥は口腔内の細菌数の増加、舌苔の増加、口腔内のバリア機能の低下、それに伴う口臭の発生や炎症の発生などさまざまな問題を引き起こすことが考えられる。」(段落0001?0003)

ウ.「【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、口腔内の乾燥を防ぐことができる上に、使用時に香料による爽快感を損なわずに口腔内への刺激を緩和することができる口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体を配合することにより、口腔内の乾燥感を緩和し、かつ使用時に香料の爽快感を損なわずに口腔内への刺激感を緩和する口腔用組成物を完成した。」(段落0005?0006)

エ.「【発明の効果】
本発明により、口腔内の乾燥を防ぐことができる上に、使用時に香料による爽快感を損なわずに口腔内への刺激を緩和することができる口腔用組成物が提供される。」(段落0012)

オ.「本発明品には、口腔内の乾燥防止及び刺激緩和効果を阻害しない限り通常の口腔用組成物に配合される成分、例えば湿潤剤、溶剤、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、色素、甘味剤などを配合できる。
湿潤剤としては特に限定されないが……、グリセリン、……、キシリトール、……などの多価アルコール類、ヒアルロン酸、……等の多糖類、……などが挙げられる。
溶剤としては特に限定されないが精製水、エタノールが挙げられる。
界面活性剤としては特に限定されないがポリオキシエチレン硬化ひまし油、……等が挙げられる。特に製剤中での安定性、味への影響の面からポリオキシエチレン硬化ひまし油が望ましい。
緩衝剤としては特に限定されないが、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸及びそれらの塩が挙げられ、pHは5?8に調整することが望ましい。
防腐剤及び殺菌剤としては特に限定されないが、塩化セチルピリジニウム、……、グルコン酸クロルヘキシジン、……、安息香酸及びその塩、……等が挙げられ、配合量は通常0.01?1重量%である」。
消炎剤としては特に限定されないがグリチルリチン酸及びその塩、……等が挙げられ、……
甘味剤としては……
本発明における口腔用組成物は、歯磨き、洗口剤、口中清涼剤、含嗽剤、うがい薬等の口腔用製品に応用できる。」(段落0017?0025)

カ.「【実施例】
……
[合成例1]
モノマーとして2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート50gと重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル0.025gをエタノール溶媒100gに溶解し、この溶液を反応器に入れ、窒素置換後、恒温槽にて50℃で10時間重合反応を行った。重合終了後、エタノール・ジイソプロピルエーテル系の混合溶媒を用いて再沈精製し、精製物を真空乾燥させて重合体を得た。重合体の収率は92重量%で、ポリエチレングリコールを標準物質としてGPC分析より求めた重量平均分子量は550,000であった。
[合成例2]
モノマーとして2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート45gとn-ブチルメタクリレート5gの混合物を用いた以外は、合成例1と同様にして共重合体を得た。共重合体の収率は95重量%で、GPC分析により求めた重量平均分子量は610,000であった。さらに得られた重合体の元素分析によりn-ブチルメタクリレートの含有量は、10.5重量%と確認した。
実施例1?実施例11
合成例1及び2の重合体、香料1及び2並びにその他の成分を表1?3に示す割合で配合し種々の洗口液を調製した。香料1としては、メントール、ペパーミント油、アネトールを主とする調合香料を用いた。……
比較例1?比較例7
合成例1及び2の重合体を用いず、香料1及び2並びにその他の成分を表1?3に示す割合で配合し種々の洗口液を調製した。
評価試験
実施例及び比較例で得られた洗口液を対象として緩和効果と湿潤感について下記の補法でパネラー8名による官能評価を行った。すなわち、洗口液5mLで30秒間口腔中をすすいだ後、吐き出した。口中をすすぐ間の刺激性、及び吐き出して5分後の湿潤感を下記の基準に従い3段階で評価し、その平均点を表に示した。
……
湿潤感の評価
3;比較例1の洗口液と比べて湿潤感が高い
2;比較例1の洗口液と比べて湿潤感は同等である
1;比較例1の洗口液と比べて湿潤感が低い。
官能評価の結果を各表中の下段にそれぞれ示す。
【表1】

【表2】
……
【表3】

評価結果
比較例……。一方、実施例1?11の評点は2.2以上であり、比較例1と比べて刺激緩和効果及び湿潤感に優れていることが分かった。」(段落0026?0037)

(3)刊行物1に記載の発明
刊行物1には、「ドライマウスとよばれる口腔内の乾燥状態」の問題を指摘し(摘示イ)、「口腔内の乾燥を防ぐことができる」「口腔内組成物」を提供すること(摘示ウ及びエ)が記載されていることを踏まえれば、摘示ア及び実施例9(摘示カ)に基づいて、
「2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの単独重合体及び2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートとn-ブチルメタクリレートとの共重合体を各0.5重量%、香料0.1重量%、エタノール7.0重量%、グリセリン5.0重量%、キシリトール5.0重量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油1.0重量%、塩化セチルピリジニウム0.05重量%、グリチルリチン酸ジカリウム0.01重量%、ヒアルロン酸ナトリウム1重量%、安息香酸ナトリウム0.1重量%、リン酸1水素ナトリウムをpHを7に調整するために必要な量、残部水を含有する、口腔内の乾燥を防ぐ洗口液」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(4)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「口腔内の乾燥を防ぐ洗口液」は補正発明の「ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための組成物」に相当する。
引用発明の「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」は、摘示オからみて「界面活性剤」として配合されているものであり、補正発明の「非イオン性界面活性剤」である「界面活性剤」に相当することは明らかである。
引用発明の「塩化セチルピリジニウム」は、摘示オからみて「防腐剤及び殺菌剤」として配合されているものであり、補正発明の「塩化セチルピリジニウム」である「抗菌剤」に相当することも明らかである。
引用発明の「ヒアルロン酸ナトリウム」は、補正発明の「グリコアミノグリカン」に相当する。

そうすると、両者は、
「少なくとも一つの界面活性剤;及び少なくとも一つの抗菌剤を含む、ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための組成物であって、
ここにおいて、少なくとも一つの界面活性剤は非イオン性界面活性剤であって、組成物の0.1?3重量%を含み;
ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤が、二グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、並びに上記抗菌剤の塩から選択される
前記組成物」、
の点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:
補正発明では、「少なくとも一つの抗菌剤」が組成物の0.1?5重量%を含む旨特定しているのに対し、引用発明では、「少なくとも一つの抗菌剤」に相当する「塩化セチルピリジニウム」を0.05重量%含むと特定している点

相違点2:
補正発明では、「少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されており」と特定しているのに対し、引用発明では、「グリコアミノグリカン」に相当する「ヒアルロン酸ナトリウム」は配合されているものの、抗菌剤との立体的関係は特定されていない点

相違点3:
補正発明では、「少なくとも一つの接着剤を含む」及び「少なくとも一つの接着剤が、シリコーンオイル、多糖、CMC、キサンタン、カルボポール、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、へパラン硫酸、及びケラチン硫酸から選択され、組成物の0.1?3重量%を含む」と特定しているのに対し、引用発明では、「ヒアルロン酸ナトリウム」を1重量%配合することは記載されているものの、「接着剤」であることは特定されていない点

相違点4:
引用発明では、さらに、「2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの単独重合体及び2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートとn-ブチルメタクリレートとの共重合体を各0.5重量%、香料0.1重量%、エタノール7.0重量%、グリセリン5.0重量%、キシリトール5.0重量%、グリチルリチン酸ジカリウム0.01重量%、安息香酸ナトリウム0.1重量%、リン酸1水素ナトリウムをpHを7に調整するために必要な量、残部水」を含有することが特定されているが、補正発明においては、このような成分は特定されていない点。

(5)判断
これらの相違点について検討する。
ア.相違点1について
刊行物1には、補正発明の「抗菌剤」に相当する「防腐剤及び殺菌剤」の配合量について、「配合量は通常0.01?1重量%である」と記載されており(摘示オ)、補正発明で特定する「組成物の0.1?5重量%」と「0.1?1重量%」の範囲で重複している。
ここで、口腔用組成物において、抗菌剤はその目的に応じて必要な量配合されるものであることは自明のことであって、引用発明においても、摘示オに記載された通常の配合量(0.01?1重量%)の範囲内で変更することは、当業者が適宜なし得ることである。
そうすると、引用発明において、「抗菌剤」である塩化セチルピリジニウム(0.05重量%)の配合量を増加させ、この重複する範囲とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願明細書中、「抗菌剤」を配合している唯一の実施例(処方例)である実施例2のマウスリンス製剤処方では、「塩化セチルピリジニウム」の配合量は補正発明で特定する量に満たない0.05重量%(これは引用発明と同じ量である。)にすぎない。
そうすると、補正発明で特定する「0.1?5重量%」との数値範囲に臨界的な意義は認められず、そのことによる効果も格別なものとは認められない。

イ.相違点2について
補正発明の、「少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されており」の事項についてみると、本願明細書には、以下の記載がある。
「驚くべきことに、本明細書に記載の歯磨剤組成物は、ケージ様の構造を形成することにより陽イオン性抗菌活性剤を立体的に固定して活性剤のバイオアベイラビリティを維持し、それによって口腔粘膜への効率的な送達を提供することができることが見いだされた。」(段落0006)
「抗菌剤、例えばCHX及びCPCを口腔表面へ送達することを助けるために、最終組成物中に製剤化される前のカプセル化又は前乳化(pre-emulsification)によって、両化合物をグリコアミノグリカン(GAG)分子マトリックスの一つ又は組み合わせの内部に立体的に固定する。それらは、電荷-電荷相互作用を通じてGAGと複合体を形成することができる。GAG-CHX又はGAG-CPC複合体は、その後、GAGの高い表面接着特性により、口腔表面上に沈着し、留まることができる。沈着した複合体は、CPC又はCHXを緩やかに放出し、抗菌効果を提供することができる。」(段落0024)

しかしながら、「ケージ様の構造を形成することにより陽イオン性抗菌活性剤を立体的に固定し」又は「両化合物をグリコアミノグリカン分子マトリックスの一つ又は組み合わせの内部に立体的に固定する」が具体的にどのような構成を意味しており、また、このような固定をどのようにして行うのかは詳細には開示されていない。「最終組成物中に製剤化される前のカプセル化又は前乳化によって」とも記載されているが、これが具体的にどのような操作を意味し、また、どのようにして行えばよいのかは明らかではない。
ところで、本願明細書において、抗菌剤と、グリコアミノグリカンに相当するヒアルロン酸とを含有する唯一の実施例である実施例2では、マウスリンス製剤の製造について「以下の成分が、下記の割合で混合された。」と記載しているだけで、「最終組成物中に製剤化される前のカプセル化又は前乳化」を行ったことは記載されておらず、そして「少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されており」が達成されていることは明らかにされていない。ここで、実施例2において、仮に、「塩化セチルピリジニウムがヒアルロン酸の複合体中に立体的に固定」されているのであれば、「少なくとも一つの抗菌剤」を「一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定」するための特別な操作を必要としていないものと解することが自然である。
そうであれば、刊行物1の実施例には、「合成例1及び2の重合体、香料1及び2並びにその他の成分を表1?3に示す割合で配合し種々の洗口液を調製した」(摘示カ)と記載されているとおり、各成分を単に混合して洗口液を調製しているものと解されるところ、実施例9においても抗菌剤である塩化セチルピリジニウム及びグリコアミノグリカンであるヒアルロン酸ナトリウムを含む成分を混合することで、当然、補正発明と同様に、抗菌剤(塩化セチルピリジニウム)が、グリコアミノグリカン(ヒアルロン酸ナトリウム)の複合体中に立体的に固定されているものと解される。
そうすると、補正発明と引用発明とはこの相違点2で実質的に相違しているということはできない。

ウ.相違点3について
補正発明が「少なくとも一つの接着剤を含む」と特定している点について本願明細書の記載をみると、「非イオン性界面活性剤」や「抗菌剤」とは異なり、「接着剤」に関する一般的な記載は全くない。かろうじて、
「ドライマウス、及び虫歯と感染症が含まれる関連する口腔の疾患は、一つ以上の非イオン性界面活性剤;一つ以上の抗菌剤;及び一つ以上の接着性多糖を含有する口腔ケア歯磨剤組成物を投与することにより治療し又は予防することができることが、ここで見いだされた。」(段落0009)
「GAG-CHX又はGAG-CPC複合体は、その後、GAGの高い表面接着特性により、口腔表面上に沈着し、留まることがことができる。沈着した複合体は、CPC又はCHXを緩やかに放出し、抗菌効果を提供することができる。」(段落0024)
と記載しているにとどまる。
ここで、GAGとはグリコアミノグリカン(多糖類の一種である)のことであるところ、ヒアルロン酸はこのGAGに該当することは当業者に周知の事項である。(なお、化粧品や医薬部外品分野において、「ヒアルロン酸」とは「ヒアルロン酸ナトリウム」も意味することは自明のことである。)
ところで、補正発明は、「少なくとも一つの接着剤が、シリコーンオイル、多糖、CMC、キサンタン、カルボポール、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、へパラン硫酸、及びケラチン硫酸から選択され」と特定しているが、上記したとおり、「接着性多糖」又は「GAGの高い表面接着特性」との記載から、GAG(グリコアミングリカン)が接着剤であることは窺い知れるものの、グリコアミノグリカン以外の「シリコーンオイル、多糖、CMC、キサンタン、カルボポール」が接着剤であることは本願明細書に直接的には記載がなく、
「保湿特性を提供するために、その他の表面コーティング/保湿性ポリマーを組成物に組み入れることもできる。ポリマーには、次の化合物群:シリコーンオイル(ジメチコーンなど、スキンケアにおいて表面コーティング及び保湿特性を提供することが知られている)、及び多糖(CMC、キサンタン、及びカルボポールなど)、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、へパラン硫酸、及びケラチン硫酸が含まれるが、これには限定されない。」(段落0023)
「上述の構成成分に加えて、本発明の歯磨剤組成物は、歯磨剤などの、口腔における使用のための調製物のために一般に使用される、多様な、場合による成分及びビヒクルをさらに含有することができる。これらの、場合による構成成分には、研磨剤、界面活性剤、増粘剤、バッファー、保湿剤、保存剤、並びに抗菌剤及び抗虫歯剤などの構成成分が含まれるが、これらには限定されない。以下にさらに詳細に記すこれらすべての添加剤は、一般に有用であり、そして当業者に知られているだろう。
……
結合剤及び増粘剤はまた、場合により、本発明の歯磨剤組成物、特に練り歯磨き組成物において使用することができる。特定の態様において、結合剤及び増粘剤には、……、カルボキシメチルセルロースナトリウム、……などのセルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー;……;キサンタンガムなどの多糖類ゴム;……が含まれるが、これらには限定されない。」(段落0039?0043:なお、カルボキシメチルセルロースはCMCに、カルボキシビニルポリマーはカルボポールに相当する。)
と記載されているように、「シリコーンオイル、多糖、CMC、キサンタン、カルボポール」は、保湿特性を提供するための「表面コーティング/保湿性ポリマー」としてグリコアミノグリカンとともに例示されているもの、又は「結合剤及び増粘剤」(なお、歯磨剤組成物において、結合剤と増粘剤とはほぼ同義である。)として例示されているものにすぎない。
そして、これらの記載からすると、グリコアミノグリカン(GAG)である「ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、へパラン硫酸、及びケラチン硫酸」は、保湿特性を提供するために配合し、それが、そのまま接着剤としても機能するものと解される。
ところで、引用発明では、「ヒアルロン酸ナトリウム」を湿潤剤(これは「保湿特性を提供するためのもの」と言える。)として含有するものであるが(摘示オ)、これは、補正発明において、グリコアミノグリカンを保湿特性を提供するために配合することと軌を一にするものである。そして、このグリコアミノグリカンが、「接着剤」としても機能するのであるから、引用発明においても、「ヒアルロン酸ナトリウム」は、明示はしていないものの同様に「接着剤」として働くものと言える。
また、引用発明では、ヒアルロン酸ナトリウムを1重量%含有するものであるが、これは補正発明の「少なくとも一つの接着剤が、……、組成物の0.1?3重量%を含む」との点と相違するものではない。
そうすると、補正発明と引用発明とは相違点3において実質的に相違しないものである。

エ.相違点4について
引用発明において、摘示オを参照すれば、「グリセリン、キシリトール」は湿潤剤として、「水、エタノール」は溶剤として、「リン酸1水素ナトリウム」は緩衝剤として、「安息香酸ナトリウム」は防腐剤及び殺菌剤として、「グリチルリチン酸ジカリウム」は消炎剤として、それぞれ配合することが明らかである。
また、「2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの単独重合体及び2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートとn-ブチルメタクリレートとの共重合体」は、「口腔内の乾燥感を緩和し、かつ使用時に香料の爽快感を損なわずに口腔内への刺激感を緩和する」(摘示ウ)ために配合する成分である。
ところで、補正発明においては、「少なくとも一つの界面活性剤;少なくとも一つの抗菌剤;及び少なくとも一つの接着剤を含む」と特定し、それ以外の成分を含むことを排除していない。そして、本願明細書には、段落0026?0043に配合可能な種々の成分が記載されている。その中には、親水性液体ビヒクルとしてのグリセリン、フレーバー成分(香料)、キシリトール(甘味剤、保湿剤)、水、緩衝剤としての可溶性リン酸塩、保存剤としての安息香酸やエタノールが例示されるとともに、「本発明の歯磨剤組成物は、歯磨剤などの、口腔における使用のための調製物のために一般に使用される、多様な、場合による成分及びビヒクルをさらに含有することができる。これらの、場合による構成成分には、研磨剤、界面活性剤、増粘剤、バッファー、保湿剤、保存剤、並びに抗菌剤及び抗虫歯剤などの構成成分が含まれるが、これらには限定されない。」(段落0039)と記載されている。
そうすると、本願明細書の上記記載に鑑みれば、引用発明が相違点4に係る「少なくとも一つの界面活性剤;少なくとも一つの抗菌剤;及び少なくとも一つの接着剤」以外の種々の成分を含有していることは、実質的に相違点にはなり得ない。

オ.効果について
補正発明の効果は、例えば、本願明細書段落0004に記載されているように、「ドライマウス及び少なくとも一つの関連する症状を治療し又は予防する」ことにあり、このことが、請求項1中にも用途として明示されているものであるが、実施例として、これらの効果を何ら確認してはいない。
一方で、本願明細書には、
「本発明は、抗菌剤と保湿剤との組み合わせを含み、組成物はドライマウス軽減を提供する特性を有するものである。驚くべきことに、本明細書に記載の歯磨剤組成物は、ケージ様の構造を形成することにより陽イオン性抗菌活性剤を立体的に固定して活性剤のバイオアベイラビリティを維持し、それによって口腔粘膜への効率的な送達を提供することができることが見いだされた。改善された粘膜の相互作用は、本発明の組成物の表面接着特性及び表面コーティングにより、消費者に知覚特性を提供することができる。表面における抗菌剤のさらなる物理的捕捉は、より実質的な性能を導くことができる。」(段落0006)
「抗菌剤、例えばCHX及びCPCを口腔表面へ送達することを助けるために、最終組成物中に製剤化される前のカプセル化又は前乳化(pre-emulsification)によって、両化合物をグリコアミノグリカン(GAG)分子マトリックスの一つ又は組み合わせの内部に立体的に固定する。それらは、電荷-電荷相互作用を通じてGAGと複合体を形成することができる。GAG-CHX又はGAG-CPC複合体は、その後、GAGの高い表面接着特性により、口腔表面上に沈着し、留まることがことができる。沈着した複合体は、CPC又はCHXを緩やかに放出し、抗菌効果を提供することができる。」(段落0024)
と記載されているが、これらの記載は「抗菌剤の口腔粘膜への効率的な送達」に係るものであり、ドライマウスの治療/予防に関するものではない。
そうすると、補正発明が、引用発明と比較して、ドライマウスの治療/予防の点で格別優れた効果を奏するものということはできない。
なお、引用発明に係る実施例9は、「口腔内の乾燥感を緩和し、かつ使用時に香料の爽快感を損なわずに口腔内への刺激感を緩和する」(摘示ウ)ために「2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの単独重合体及び2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートとn-ブチルメタクリレートとの共重合体」(合成例1及び2の重合体)を配合しているが、実施例9からこの合成例1及び2の重合体を除いた洗口液が比較例5(摘示カの表3)に示されている。この比較例5はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(非イオン性界面活性剤)、塩化セチルピリジニウム(抗菌剤)及びヒアルロン酸ナトリウムを含む洗口液であるが、そのドライマウスに対する効果(口腔内の乾燥感の緩和)を示す湿潤感の評価は、2.0とされており、これは比較例1(摘示カの表1)の洗口液と比べて湿潤感は同等であるというものである(摘示カの湿潤感の評価基準参照)。すなわち、合成例1及び2の重合体を含まなくても、従来技術と同等程度のドライマウスに対する治療/予防効果が認められることが示されているといえる。したがって、補正発明のドライマウスの治療/予防効果(湿潤感)はこの比較例5程度のものと解され、格別優れた効果を奏するものとは認められない。

(6)小括
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法126条第7項の規定に違反しているものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 原査定について
1.本願発明
上記第2で判断したとおり、平成25年7月29日付け手続補正書による補正は却下されたので、本願の請求項1?19に係る発明は、平成24年10月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「少なくとも一つの界面活性剤;少なくとも一つの抗菌剤;及び少なくとも一つの接着剤を含む、ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための組成物であって、ここにおいて、少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されている、前記組成物。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由とされた、平成24年7月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由2は、以下のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項:1-19
・引用文献3:特開2006-273767号公報」

3.当審の判断
原査定の拒絶の理由における引用文献3は、上記第2の3(2)で引用した刊行物1と同じものであり、同文献には、上記第2の3(2)のア?カで摘示した事項が記載されている。
そして、同文献には、上記第2の3(3)で認定した引用発明が記載されている。
本願発明と引用発明とを対比すると、上記第2の(4)での判断を踏まえれば、両者は、
「少なくとも一つの界面活性剤;及び少なくとも一つの抗菌剤を含む、ドライマウス及び少なくとも一つの関連する病状を治療し及び/又は予防するための組成物」、
の点で一致し、次の点で相違している。

相違点2':
本願発明では、「少なくとも一つの抗菌剤が、一つ又はそれ以上のグリコアミノグリカンの複合体中に立体的に固定されている」と特定しているのに対し、引用発明では、「グリコアミノグリカン」に相当する「ヒアルロン酸ナトリウム」は配合されているものの、抗菌剤との立体的関係は特定されていない点

相違点3':
本願発明では、「少なくとも一つの接着剤を含む」と特定しているのに対し、引用発明では、「接着剤を含む」ことは特定されていない点

相違点4':
引用発明では、さらに、「2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの単独重合体及び2-メタクリロイルオキシエチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートとn-ブチルメタクリレートとの共重合体を各0.5重量%、香料0.1重量%、エタノール7.0重量%、グリセリン5.0重量%、キシリトール5.0重量%、グリチルリチン酸ジカリウム0.01重量%、安息香酸ナトリウム0.1重量%、リン酸1水素ナトリウムをpHを7に調整するために必要な量、残部水」を含有することが特定されているが、本願発明においては、このような成分は特定されていない点。

ここで、相違点2'?4'は、上記第2の(4)で認定した相違点2?4にそれぞれ対応するものであり、その判断も上記第2の(5)イ?オで述べたことがそのまま妥当する。
そうすると、本願発明は、当業者が引用文献3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る原査定の拒絶の理由2は妥当なものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、この理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-22 
結審通知日 2014-12-24 
審決日 2015-01-06 
出願番号 特願2010-524069(P2010-524069)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小久保 勝伊
関 美祝
発明の名称 口腔乾燥症を治療するための歯磨剤組成物  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  

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