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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01D
管理番号 1301386
審判番号 不服2014-1735  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-30 
確定日 2015-05-28 
事件の表示 特願2012-135266「位置センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月 6日出願公開、特開2012-168205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
特許出願: 平成24年6月14日
(特願2007-523917号(優先権主張平成17年6月26日)の分割出願)
拒絶査定: 平成25年10月18日(送達日:同年同月29日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成26年1月30日
手続補正: 平成26年1月30日
拒絶理由通知: 平成26年12月12日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:平成27年1月6日)
手続補正: 平成27年3月9日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成27年3月9日(以下、「本件意見書」という。)


2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「プリント基板上に形成してなるフラットコイルを同じ位置で複数層に重ねて配置し、重ねられたフラットコイルを直列接続して1つのコイル極を構成し、該コイル極を1つの交流信号で励磁するコイル部と、
前記コイル極に非接触的に対向するように配置された磁気応答部材と
を具備し、前記磁気応答部材を検出対象位置に連動して変位させることで、前記コイル部と磁気応答部材の相対的位置を検出対象位置に応じて変化させ、この相対的位置の変化に応じて前記磁気応答部材の前記コイル極に対する対応が変化して該コイル極のインピーダンスが変化し、このインピーダンス変化に応じたアナログ振幅レベルを持つ出力信号を該コイル極から取り出すことに基づき位置検出信号を得るようにしたことを特徴とする位置センサであって、
前記磁気応答部材は、検出対象位置の回転を伝達するための回転軸に取り付けられていて、該回転軸に伴って回転し、
前記プリント基板は、前記回転軸を貫通させる開口を有していて、該回転軸を該開口内に貫通させた状態で固定的に配置され、
前記コイル部の基板上に、前記コイル極の出力に基づき位置検出信号を生成する測定用回路を配置してなることを特徴とする位置センサ。」(以下、「本願発明」という。)


3.当審拒絶理由
これに対し、当審拒絶理由における理由2の概要は、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-52588号公報(発明の名称:回転位置検出装置、出願人:株式会社エスジー、公開日:平成5年3月2日、以下、「引用例1」という。)に記載された発明、及び周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


4.引用例記載の事項・引用発明
(1)記載事項
引用例1には、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。なお、下線は当審が付した。

(a)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気抵抗変化を利用した回転位置検出装置に係り、特に磁気抵抗変化を出力交流信号の電気的位相角の変化として検出する位相シフト方式の回転位置検出装置に関する。」

(b)
「【0014】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施例である回転位置検出装置の概略構成を示す図である。図1の(a)は回転位置検出装置を回転軸方向から見た正面図であり、(b)はそれを回転軸の垂直方向から見た側面図である。
【0015】本実施例の回転位置検出装置が従来のものと異なる点は、図7及び図8の回転位置検出装置に設けられていた2次コイルが省略され、ロータ11bの回転角度θに応じた電気的位相角度だけ位相シフトした信号Y=sin(ωt-θ)が1次コイルから取り出されるようになっている点である。
【0016】本実施例の回転位置検出装置は、回転軸方向に沿って磁束を発生するように1次コイル1A?1Dがステータ11a上に設けられている。この1次コイル1A?1Dは円周方向に約90度の間隔で4極設けられている。本実施例では出力検出用の2次コイルが省略されているので、1次コイルに鉄心を設けなくてもよくなり、その結果1次コイル1A?1Dとしてステータ表面に銅を渦巻き状に形成したフィルム状のコイルを用いることができ、1次コイルの厚さをmm単位以下まで薄くすることができる。
【0017】ロータ11bは、回転角度に応じて各1次コイル1A?1Dのリラクタンスを変化させる形状及び材質からなり、図8のものと同様に回転軸に対して中心の偏心した円板で構成されている。回転軸を挟んで互いに対向する1次コイル1Aと1次コイル1Cからなる第1の対及び1次コイル1Bと1次コイル1Dからなる第2の対は、差動的に動作するようにコイルが巻かれており、かつ差動的なリラクタンス変化が生じるように構成されている。
【0018】ロータ11bの材質としては、珪素鋼板等の磁性体や銅板等の非磁性体を用いることができる。銅板は1次コイルから発生される磁束を打ち消す方向に渦電流を発生し、珪素鋼板等の磁性体を用いた場合とは逆のリラクタンス変化を生じさせるという働きがあるからである。なお、珪素鋼板と銅板とを適宜組み合わせることによって検出感度を向上することもできるが、この組み合わせたについては後述する。
【0019】第1の対を構成する1次コイル1Aは正弦波信号sinωtで励磁され、1次コイル1Cは-sinωtで励磁される。第2の対を構成する1次コイル1Bは余弦波信号cosωtで励磁され、1次コイル1Dは-cosωtで励磁される。そして、第1の対を構成する1次コイル1A及び1Cの中点から第1の出力Y1が取り出され、第2の対を構成する1次コイル1B及び1Dの中点から第2の出力Y2が取り出される。
【0020】それぞれの中点から得られる第1及び第2の出力Y1,Y2の差分を取ることによって、従来と同様の出力信号Yが得られるようになっている。この出力信号Yは、基準信号となる1次交流信号(1次コイルの励磁信号)sinωtに対して、ロータ11bの回転角度θに応じた電気的位相角度だけ位相シフトした出力信号Y=sin(ωt-θ)である。」

(c)
「【0032】ロータ11bは、各1次コイル1A?1Dに対して一定のギャップを介在して対峙しており、回転軸の回転と応じて回転するようになっている。この回転軸に検出対象である回転角度θが与えられる。ロータ11bは、各1次コイル1A?1Dに対向する面積を回転角度θに応じて変化させる形状をしている。本実施例では、回転軸に対して中心が偏心するように取り付けられた円板で構成されている。
【0033】各1次コイル1A?1Dと、ロータ11bの円板との対向する面積が回転角度θに応じて変化することによって、各1次コイル1A?1Dを介する磁路のリラクタンスが変化し、各1次コイル1A?1Dのインピーダンス(インダクタンス)La,Lb,Lc,Ldを変化させる。ここで、ステータ11a及びロータ11bの機械的寸法及び形状等を適当に選定することによって、各1次コイル1A?1Dのインピーダンス変化が次式のような三角関数に従うようにすることができる。」

(2)引用発明
前記記載(a)ないし(c)、及び図1,2の内容を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「銅を渦巻き状に形成したフィルム状の1次コイル1Aを正弦波信号sinωtで励磁するステータ11aと、
前記1次コイル1Aに対して一定のギャップを介在して対峙し、磁性体や銅板等からなるロータ11bと
を具備し、前記ロータ11bを回転軸の回転に応じて回転させることで、1次コイル1Aとロータ11bの円板との対向する面積が回転角度θに応じて変化することによって、1次コイル1Aのインピーダンスを変化させ、ロータ11bの回転角度θに応じた電気的位相角度だけ位相シフトした信号Yがコイルから取り出されるようになっている回転位置検出装置であって、
前記ロータ11bは回転軸の回転に応じて回転する、回転位置検出装置。」(以下、「引用発明」という。)


5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「銅を渦巻き状に形成したフィルム状の1次コイル1A」と、本願発明における「プリント基板上に形成してなるフラットコイルを同じ位置で複数層に重ねて配置し、重ねられたフラットコイルを直列接続して1つのコイル極を構成」した「コイル極」とは、共に「コイル」である点で共通する。
次に、引用発明における「正弦波信号sinωtで励磁する」こと及び1次コイルが設けられている「ステータ11a」は、それぞれ本願発明における「1つの交流信号で励磁する」こと及び「コイル部」に相当し、また同様に、引用発明の1次コイル1Aに対して「一定のギャップを介在して対峙し、磁性体や銅板等からなるロータ11b」は、本願発明の前記コイル極に「非接触的に対向するように配置された磁気応答部材」に相当する。
ここで、引用発明の1次コイル1Aから出力される出力信号や、ほかの1次コイル1B?1Dの出力信号と合成されて取り出される信号Yは、いずれも「アナログ振幅レベルを持つ出力信号」であることが明らかであるから、引用発明における「前記ロータ11bを回転軸の回転に応じて回転させることで、1次コイル1Aとロータ11bの円板との対向する面積が回転角度θに応じて変化することによって、1次コイル1Aのインピーダンスを変化させ、ロータ11bの回転角度θに応じた電気的位相角度だけ位相シフトした信号Yがコイルから取り出されるようになっている回転位置検出装置」は、本願発明における「前記磁気応答部材を検出対象位置に連動して変位させることで、前記コイル部と磁気応答部材の相対的位置を検出対象位置に応じて変化させ、この相対的位置の変化に応じて前記磁気応答部材の前記コイル極に対する対応が変化して該コイル極のインピーダンスが変化し、このインピーダンス変化に応じたアナログ振幅レベルを持つ出力信号を該コイル極から取り出すことに基づき位置検出信号を得るようにした位置センサ」に相当するといえる。
さらに、引用発明において「前記ロータ11bは回転軸の回転に応じて回転する」ことは、本願発明において「前記磁気応答部材は、検出対象位置の回転を伝達するための回転軸に取り付けられていて、該回転軸に伴って回転」することに相当する。
また、引用例1の図1の構成からみて、引用発明のステータ11aが、「回転軸を貫通させる開口を有していて、該回転軸を該開口内に貫通させた状態で固定的に配置され」ていることは明らかである。ここで本願発明のプリント基板は、引用発明のステータ11aに相当するコイル部を構成するものであるから、引用発明の「ステータ11aが、回転軸を貫通させる開口を有していて、該回転軸を該開口内に貫通させた状態で固定的に配置され」ていることと、本願発明の「プリント基板は、前記回転軸を貫通させる開口を有していて、該回転軸を該開口内に貫通させた状態で固定的に配置され」ていることとは、共に「コイル部」が「前記回転軸を貫通させる開口を有していて、該回転軸を該開口内に貫通させた状態で固定的に配置され」ている点で共通する。

してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
「コイルを1つの交流信号で励磁するコイル部と、
前記コイル極に非接触的に対向するように配置された磁気応答部材と
を具備し、前記磁気応答部材を検出対象位置に連動して変位させることで、前記コイル部と磁気応答部材の相対的位置を検出対象位置に応じて変化させ、この相対的位置の変化に応じて前記磁気応答部材の前記コイル極に対する対応が変化して該コイル極のインピーダンスが変化し、このインピーダンス変化に応じたアナログ振幅レベルを持つ出力信号を該コイル極から取り出すことに基づき位置検出信号を得るようにしたことを特徴とする位置センサであって、
前記磁気応答部材は、検出対象位置の回転を伝達するための回転軸に取り付けられていて、該回転軸に伴って回転し、
前記コイル部は、前記回転軸を貫通させる開口を有していて、該回転軸を該開口内に貫通させた状態で固定的に配置されている位置センサ。」

(相違点)
相違点1
本願発明においては、コイル部が備える「コイル極」が、「プリント基板上に形成してなるフラットコイルを同じ位置で複数層に重ねて配置し、重ねられたフラットコイルを直列接続して1つのコイル極を構成」したものであるのに対し、引用発明においては、ステータ11aが備える1次コイル1Aは単に「銅を渦巻き状に形成したフィルム状の1次コイル1A」であるとされている点。また併せて、本願発明においては「プリント基板」が「前記回転軸を貫通させる開口を有して」いるのに対し、引用発明のステータ11aが有する「前記回転軸を貫通させる開口」が「プリント基板」に設けられているのか否かが不明である点。

相違点2
本願発明においては、「前記コイル部の基板上に、前記コイル極の出力に基づき位置検出信号を生成する測定用回路を配置してなる」のに対し、引用発明においては測定用回路の配置が不明である点。


6.判断
上記相違点1ないし2についてそれぞれ検討する。
当審拒絶理由において引用文献2ないし5として例示された、本願の優先日前に頒布された刊行物には、それぞれ下記のように記載されている。なお、下線は当審が付した。

・特開平11-6708号公報(以下、「引用例2」という。)
「【0015】なお、図では駆動コイル11はほぼ1ターンの平面コイルとして、また相対位置検出用コイル21及び絶対位置検出用コイル22の各第1コイル部231 ,241 ,第2コイル部232 ,242 はいずれも3/4ターンの平面コイルとして示したが、これらを例えば多層配線技術を等を利用した複数ターンのコイルとして構成してもよい。」

・特表2002-531853号公報(以下、「引用例3」という。)
「【0044】
この電気的測定コンポーネントは、例えば、回路カードまたは半導体生産に関して知られる異なる方法で生産してもよい。そのような生産の適当な方法には、フォトリソグラフィがある。そのような生産方法では、通常マスクを生産し、次にそれを使って多くの測定電気的測定コンポーネントを作ることができる。このようにして、多くの測定電気的測定コンポーネントを低コストで作ることができる。ある測定では(例えば、平面コイルの形の電気的測定コンポーネントで曲った対象物を測定するとき)、もしこのコイルが非常に小さければ有利である。例えば、2.5mmのコイル直径が適当かも知れない。二つの渦巻き形部分20、21を使うことによって(基板22の各側に一つずつ)、巻線の巻き数が多く同時に直径が小さいコイルをこの様にして生産することができる。二つを超える渦巻き形部分20、21を有することも可能である。それで間に絶縁基板または絶縁層を置いた三つ以上の渦巻き形部分も考えられる。この電気的測定コンポーネントが間に絶縁基板22がある二つ以上の渦巻き形部分20、21を含むとき、もしこの基板22が薄ければ、この場合この測定電気的測定コンポーネントのこの渦巻き形部分の平面に横の広がりは小さいかも知れないので、有利かも知れないことに注目すべきである。基板22の厚さcは、例えば、30μm未満、好ましくは20μm未満、最も好ましくは約12μmかも知れない。そのような基板は、例えば、ポリイミドにしてもよい。この発明による測定電気的測定コンポーネントの一部を形成するこのコイルが如何なる螺旋形部も(このコイルの本質的部分を構成する螺旋形部の少なくとも如何なる部分も)有しないのが好ましいことも注目すべきである。これは、このコイルが一つの渦巻き形部分しか有しないときと、このコイルが幾つかの渦巻き形部分を有するときの両方の場合である。」

・特開2000-55994号公報(以下、「引用例4」という。)
「【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、プリント基板に作製した1以上のプリントコイルにより磁界を検知する装置であって、該プリントコイルは同一形状の導電パターンと、プリントコイルの両端に端子部とを有し、該端子部にて該プリントコイルを直列接続して直列接続数を増減し、磁界検知感度を調節することを特徴とするものである。」
「【0014】図3の例では1層のプリントコイルを示したが、図4は多層構造のプリントコイル構造の例を説明する図である。基材2の両面にそれぞれ螺旋状回路のプリントコイル1をエッチングによって作製し、その表面をレジスト7で被覆する。基材2両面のプリントコイル1の導通はスルーホール801を介して行い、対向するプリントコイル1の導通は接続導体802で行う。これを5枚張り合わせた形で10層の細径線コイルが完成する。このとき基材2の厚みは0.1mm、プリントコイル1の導体薄膜厚みは18ミクロン程度なので約1.3mmの厚みの中に10層のプリントコイルを作り込むことができる。
【0015】図5は、プリントコイルおよび増幅/フィルタ回路を構成する導体薄膜と、その出力表示装置からなる薄型磁界検知装置の例を示す図である。磁気シールドを施されていない一般の環境には、電気機器の発生する商用電源周波数50/60Hzを代表として多くの磁気雑音が存在する。必要な信号とこれらの雑音とを分別するためには、プリントコイル1から出力される信号をフィルタ回路9および増幅回路10でフィルタリング・増幅することが有効である。通常そのような回路はプリント基板上に作られるが、その作製工程はプリントコイル1のそれと同一であるためこれらを一体で設計し製作することにより製作作業の効率化と装置の小型化が可能になる。」

・特開2003-194862号公報(以下、「引用例5」という。)
「【0005】
【課題を解決するための手段】ダイオード検波を用いた検出回路と小型アンテナ等を同一プリント基板の表裏に設けること等により小型化し、さらに検出した電界や磁界のレベルのアナログ信号をデジタル化して表示、さらにCPUを用いて、例えば被ばく量となる積算量等を表示、また、その他の評価用解析等を可能にする。」
「【0009】本発明に用いる、アンテナ部、アンプ部、マイクロ波検波部、及び磁界検出部からなる回路は複数の平面アンテナ群、線形/対数アンプ、キャパシタンスとインダクタンスからなる整合回路とフィルター回路、及びショットキーダイオードから主に構成されたものである。またアンテナ部で受信した信号は、マイクロ波検波部で検波され、線形/対数アンプ部により増幅されA/D変換機を用いてデジタル変換し数値化される。図1に小型電磁波検出器の代表的な実施例の構成図を示す。
【0010】本発明の検出部は、平面アンテナで小型化を図ることに加えてテーパー状にすることにより、ギガヘルツ帯における広帯域化した小型アンテナであるマイクロスプリットアンテナやプリント基板ダイポールアンテナとして機能するものであり、平面アンテナとして一般的なダイポールアンテナやループアンテナを用いることも可能であるが、本発明では小型化と0.9GHz?2.5GHzまでの検出という広帯域化を図るために、プリント基板上でアンテナの形状をテーパーに印刷している。」

相違点1について
上記引用例2ないし4にも記載されているように、測定用のフラットコイルとして、「フラットコイルを同じ位置で複数層に重ねて配置し、重ねられたフラットコイルを直列接続して1つのコイル極を構成」してコイル巻数を増やしたものは周知(以下、「周知技術1」という。)であり、これを引用発明に採用する程度のことは、当業者が容易になし得たものといえる。また、フラットコイルを形成する基板としていわゆるプリント基板を用いることも、例えば引用例4,5に記載されているように周知(以下、「周知技術2」という。)であるから、引用発明のステータ11aに「プリント基板」を用いて、これに「前記回転軸を貫通させる開口」を設けるようにする程度のことは、当業者が容易になし得たものといえる。

相違点2について
センサ用フラットコイル(平面ループアンテナ)と測定用回路とを同一の基板上に配置することも、例えば引用例4,5に記載されているように周知(以下、「周知技術3」という。)であって、これを引用発明に採用する程度のことは、当業者が容易になし得たものといえる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1ないし3から当業者が予測可能なものであって、格別のものではない。

したがって、本願発明は引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。


7.請求人の主張について
審判請求人は、本件意見書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。
(1)請求人の主張の概要
「(3)請求項1に対する理由2について
引用文献1(特開平5-52588号)は、互いに位相のずれた多相交流信号により、コイルを励磁し、位相シフトした交流信号を取り出す構成からなっておりますので、「コイル極を1つの交流信号で励磁する」本発明の構成とは異なっております。」

(2)検討
請求人は、引用文献1(引用例1)の発明は「互いに位相のずれた多相交流信号により、コイルを励磁し、位相シフトした交流信号を取り出す構成」であって、「コイル極を1つの交流信号で励磁する」本願発明の構成とは異なると主張している。この主張は、引用文献1(引用例1)において、
「【0019】第1の対を構成する1次コイル1Aは正弦波信号sinωtで励磁され、1次コイル1Cは-sinωtで励磁される。第2の対を構成する1次コイル1Bは余弦波信号cosωtで励磁され、1次コイル1Dは-cosωtで励磁される。」
と記載されている構成を指すものと推測されるのであるが、これらの1次コイル1Aないし1Dは、それぞれがステータ11a表面の異なる位置に配置されるものである。一方、本願発明において「1つの交流信号で励磁する」とされている「コイル極」は、「プリント基板上に形成してなるフラットコイルを同じ位置で複数層に重ねて配置し、重ねられたフラットコイルを直列接続して1つのコイル極を構成」されるものであるから、上記1次コイル1Aないし1Dのうちのいずれか一つに対応するものといえる。そして、1つのコイルの励磁が1つの交流信号で行われていることも明らかである。そもそも本願の請求項1には、コイル極が複数設けられていることを示す記載すら無く、請求人の上記主張は請求項の記載に基づかないものといえる。
なお、複数のコイルを1つの交流信号で励磁する構成は、例えば特開2001-235307号公報(平成25年7月29日付けの最初の拒絶理由において引用された引用文献1)において、
「【0022】図1(C)に示すように、各コイル11,12は、交流発生源30から発生されるの所定の1相の高周波交流信号(仮にsinωtで示す)によって定電圧又は定電流で励磁される。・・・」
と記載されているように周知なものである。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。


8.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-30 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-13 
出願番号 特願2012-135266(P2012-135266)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G01D)
P 1 8・ 121- WZ (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 中塚 直樹
関根 洋之
発明の名称 位置センサ  
代理人 飯塚 義仁  

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