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関連判例 | 平成26年(行ケ)10139号 審決取消請求事件平成26年(行ケ)10085号 審決取消請求事件平成26年(行ケ)10139号 審決取消請求事件平成26年(行ケ)10085号 審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G01N 審判 全部無効 原文新規事項追加の訂正 G01N 審判 全部無効 2項進歩性 G01N 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 G01N |
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管理番号 | 1301833 |
審判番号 | 無効2012-800004 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-01-26 |
確定日 | 2015-05-27 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4132677号「完全型副甲状腺ホルモンの測定方法ならびに副甲状腺疾患および慢性腎不全患者の骨状態の識別方法」の特許無効審判事件についてされた平成25年 1月17日付け審決(一次審決)に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成25年(行ケ)第10147号平成25年 8月 6日言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第4132677号の請求項1ないし26に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第4132677号の出願は,平成12年 1月13日(パリ条約による優先権主張 平成11年1月14日米国[以下,「第1優先日」という。],平成11年6月26日米国[以下,「第2優先日」という。また,それぞれの優先権主張を「第1優先権主張」及び「第2優先権主張」という。])を国際出願日とする出願であって,以降の主な経緯は次のとおりである。 なお,提出された甲各号証,乙各号証及び丙各号証について,例えば甲第1号証を,「甲1」のように,甲,乙,及び丙と番号の組合わせとして略記することとする。 平成16年 8月 9日付け 拒絶理由通知書 平成17年 2月 9日 手続補正書・意見書 平成17年 8月 1日付け 拒絶査定 平成17年11月 7日 拒絶査定不服審判請求書 平成17年12月 7日 請求理由を補正する手続補正書 平成20年 3月14日付け 拒絶理由通知書 平成20年 3月28日 手続補正書 平成20年 4月15日付け 特許すべき旨の審決 平成20年 6月 6日 特許権の設定登録(請求項の数27) 平成24年 1月26日 無効審判請求(請求人)(甲1?23) 平成24年 5月16日 答弁書提出(被請求人)(乙1?5) 平成24年 7月23日付け 審理事項通知書 平成24年 9月12日 参加申請書(特許法第148条第3項の規定 に基づく被請求人側への補助参加申請。) 平成24年 9月14日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成24年 9月18日 口頭審理陳述要領書(被請求人)(乙6及び 7) 平成24年10月 2日 口頭審理 平成24年10月 9日 上申書(請求人) 平成24年10月 9日 上申書(被請求人) 平成24年10月22日 参加申請に対する意見書(請求人) 平成24年10月22日 上申書(請求人) 平成24年10月29日 上申書 平成24年11月19日付け 参加許否の決定(参加を許可する。) 平成24年12月21日付け 審理終結通知 平成25年 1月17日付け 審決(特許発明1?27を無効とする。) 平成25年 5月22日 知的財産高等裁判所出訴(平成25年 (行ケ)第10147号)(被請求人) 平成25年 7月16日 訂正審判請求書(訂正2013-39010 0号)(被請求人) 平成25年 8月 6日 知的財産高等裁判所審決取消決定(特許法1 81条2項の規定に基づく審決取消し(差戻 し)) 平成25年 8月30日付け 通知書(訂正請求のための期間指定通知(指 定期間10日))の発送 平成25年 9月13日 訂正請求書(被請求人)(乙8?乙10) 平成25年11月22日 弁駁書(参加人)(丙1及び丙2) 平成25年12月12日 弁駁書(請求人) 第2 訂正の適否 本件訂正請求は,被請求人が平成25年9月13日付けで提出した訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するものであって,以下の事項を訂正内容とするものである(訂正による変更部分に下線を付した。)。 1 訂正内容 (1)訂正事項1 訂正前の段落【0012】に 「までの間のアミノ酸配列を有するペプチドである非w-PTHペプチド断片は,in vivoで,拮抗物質または阻害物質(PIN)の役割をする」 とあるのを, 「までの間のペプチドであるところの或る大きな非w-PTHペプチド断片は,in vivoで,w-PTHの拮抗物質または阻害物質(PIN)の役割をする」 (2)訂正事項2 訂正前の請求項1に 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする」 と訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項2に「前記標識された第1の抗体又は抗体断片が,モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体,あるいはそれらの断片である請求項1に記載のキット。」 とあるのを 「ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met (配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列 に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とするモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体,あるいはそれらの断片である,標識された第1の抗体又は抗体断片と, b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とを含み,阻害性の非(1?8 4)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットであって, c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片をさらに含み,それにより,生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定し得るキット。」 に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項6に 「請求項1?5のいずれかに記載のキット」 とあるのを 「請求項1記載のキット」 に訂正する。 (5)訂正事項5 請求項7に 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)のうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする」 と訂正する。 (6)訂正事項6 補正前の請求項8に 「前記第1の抗体又は抗体断片が,モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体,あるいはそれらの断片である請求項7に記載のキット。」 とあるのを 「ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met (配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とするモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体,あるいはそれらの断片である,実質的に純粋な第1の抗体又は抗体断片と, b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する,標識された第2の抗体又は抗体断片とを含み,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットであって, c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片 をさらに含み,それにより,生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定し得るキット。」 と訂正する。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項12に 「請求項7?11のいずれかに記載のキット」 とあるのを 「請求項7記載のキット」 と訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項13に 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のAla-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする」 と訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の請求項14の 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (10)訂正事項10 訂正前の請求項15に 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (11)訂正事項11 訂正前の請求項16に 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (12)訂正事項12 訂正前の請求項17に 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (13)訂正事項13 訂正前の請求項18に 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (14)訂正事項14 訂正前の請求項18に 「識別するための分析方法。」 とあるのを, 「識別するための分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。」 と訂正する。 (15)訂正事項15 訂正前の請求項19の 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (16)訂正事項16 訂正前の請求項19に 「分析方法。」 とあるのを, 「分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。」 と訂正する。 (17)訂正事項17 訂正前の請求項20の 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (18)訂正事項18 訂正前の請求項20に 「分析方法。」 とあるのを, 「分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。」 と訂正する。 (19)訂正事項19 訂正前の請求項21の 「該初期ペプチド配列中の少なくとも4つのアミノ酸が該抗体又は抗体断片との反応部位の一部である,」 とあるのを 「該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の」 と訂正する。 (20)訂正事項20 訂正前の請求項21に 「分析方法。」 とあるのを, 「分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。」 と訂正する。 (21)訂正事項21 訂正前の請求項27を削除する。 2 訂正の可否についての当審の判断 (1)訂正の目的及び新規事項について ア 訂正事項1について 本件特許に係る出願は,特許法第184条の4第1項の「外国語特許出願」であるPCT/US2000/000855(国際公開第2000/042437号参照。上記国際出願を,以下「本件外国語特許出願」という。)が,同法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされたものである。そうすると,本件訂正請求については,特許法第184条の19の規定により,外国語特許出願に係る法律63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成23年改正前」という。)の第134条の2第1項の規定による訂正及び訂正審判の請求については,平成23年改正前の第126条第3項中「外国語書面出願」とあるのは「第184条の4第1項の外国語特許出願」と,「外国語書面」とあるのは「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面」とされる。 すなわち,平成23年改正前の第126条第3項中「(同項ただし書第二号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあっては,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては,外国語書面))における,「外国語書面出願」及び「外国語書面」とあるのは,それぞれ第184条の4第1項の「外国語特許出願」及び第184条の4第1項の「国際出願日における条約第3条(2)に規定する明細書,請求の範囲又は図面」となる。 以下,「国際出願日における条約第3条(2)に規定する明細書,請求の範囲又は図面」を,「基準明細書等」という。また,条約第3条(2)に規定する明細書,すなわち,国際出願の明細書のみをいう場合は,「基準明細書」という。 そこで,基準明細書5頁10?13行の記載をみると 「The present invention incorporates a discovery that a large, non-whole PTH petptide fragment, a peptide having an amino acid sequence from between (SEQ LD No. 2)[PTH_(3-84)])and(SEQ ID No.3[PTH_(3-84)]),functions in vivo as a wPTH antagonist or inhibitor(PIN),(see FIGURE 12).」(下線は訂正事項1に対応する箇所に下線を付記したものである。) と記載されている。 そうすると,訂正事項1のとおりの事項が基準明細書等に記載されており,そのように翻訳すべできあったことは明白である。 したがって,訂正事項1は,平成23年改正前の特許法第134条の2(以下,経過規定の記述を省略し単に「特許法第134条の2」という。特許法第134条の2において準用する同法第126条については,平成23年改正前の同法第126条であるが,経過規定の記述を省略し単に同法第126条ということとする。)第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 また,訂正事項1は,基準明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,同法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合する。 イ 訂正事項2について 訂正前の「該初期ペプチド配列」,すなわち,「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met」を,訂正事項2により,「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)」と配列を長さを短くして限定したものである。 そして,かかる限定は,本件明細書の段落【0027】に「特異的ヤギ抗(1?6)ポリクロナール抗体」との記載からみて,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであり,特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定を満たすものである。 加えて,訂正事項2の他の訂正事項は,かかる訂正に伴い表現を整えたものである。 そうすると訂正事項2は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法同条同項ただし書き第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 ウ 訂正事項3について 訂正前の請求項2において,請求項1を引用していたところ,訂正事項3により請求項の引用をしないものに書き下し,さらに「c)」の規定を加えて,限定したものであり,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。。 そして,かかる「c)」の規定は,本件明細書の段落【0014】の記載によるものであって,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものといえ特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 エ 訂正事項4について 訂正事項4は,訂正前の請求項6が引用する請求項を減らすものであって,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 オ 訂正事項5について 上記「イ 訂正事項2について」で述べた理由と同様の理由で,訂正事項5は,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであり,特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。また,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法同条同項ただし書き第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 カ 訂正事項6について 訂正前の請求項8において,請求項7を引用していたところ,訂正事項6により請求項の引用を解除し,さらに「c)」の規定を加えて,限定したものであり,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,かかる「c)」の規定は,本件明細書の段落【0014】の記載によるものであって,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものといえ特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 キ 訂正事項7について 訂正事項7は,訂正前の請求項12が引用する請求項を減らすものであって,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ク 訂正事項8について 訂正前の「該初期ペプチド配列」,すなわち,「Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met」を,訂正事項8により,「Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)」と配列の長さを短くして限定したものあって,本件明細書の段落【0027】の抗ヒトPTH(1?6)の抗体である「特異的ヤギ抗(1?6)ポリクロナール抗体」との記載をラットに適用したものといえ,かかる限定は願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものということができ,特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。加えて,訂正事項8の他の訂正事項は,かかる訂正に伴い表現を整えたものである。 そうすると訂正事項8は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法同条同項ただし書き第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 ケ 訂正事項9?13,15,17及び19について 上記「イ 訂正事項2について」で述べた理由と同様の理由で,訂正事項9?13,15,17及び19は,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであり,特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定を満たすものである。また,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法同条同項ただし書き第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 コ 訂正事項14,16,18及び20について 訂正事項14,16,18及び20は,訂正前に,分析に使用する手段の規定がなかったところ,訂正後の請求項2または請求項8に記載のキットを用いるように限定するものであって,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 サ 訂正事項21について 訂正事項21は,訂正前の請求項27を削除するものであって,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)拡張及び変更について 訂正事項1?21は,実質上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないことは明らかであるから,特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 3 訂正の適否のまとめ よって,平成25年9月13日付けで請求された訂正を認める。 第3 訂正された発明 上記「第2」で述べたように,平成25年9月13日付けの訂正請求は適法なものである。(以下,訂正後の明細書及び図面をまとめて「訂正明細書」という。),訂正後の請求項1?26に係る発明(以下,それぞれの発明を「訂正発明1」などということとし,まとめて「訂正発明」という。) そして,訂正明細書には,次の発明が記載されている。 【請求項1】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片と, b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片と を含み,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキット。 【請求項2】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met (配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とするモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体,あるいはそれらの断片である,標識された第1の抗体又は抗体断片と, b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とを含み,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットであって。 c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片をさらに含み,それにより,生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定し得るキット。 【請求項3】 前記標識が,化学発光剤,測色剤,エネルギー移動剤,酵素,蛍光剤,及び放射性同位元素からなる群から選択される請求項1又は2に記載のキット。 【請求項4】 前記第2の抗体又は抗体断片が固相支持体に吸着されている請求項1?3のいずれかに記載のキット。 【請求項5】 前記固相支持体が,タンパク質結合表面,金属コロイド粒子,ラテックス粒子又はポリマービーズからなる群から選択される請求項4に記載のキット。 【請求項6】 前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンが,前記第1の抗体又は抗体断片及び前記第2の抗体又は抗体断片に結合した後に,該第1の抗体又は抗体断片及び該第2の抗体又は抗体断片の結合部位以外の部位に特異的に結合する第3の抗体又は抗体断片であって,それにより沈殿塊を生成する第3の抗体又は抗体断片をさらに含む請求項1記載のキット。 【請求項7】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,実質的に純粋な第1の抗体又は抗体断片と, b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する,標識された第2の抗体又は抗体断片とを含み,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキット。 【請求項8】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met)(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とするモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体,あるいはそれらの断片である,実質的に純粋な第1の抗体又は抗体断片と, b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する,標識された第2の抗体又は抗体断片と を含み,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットであって, c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片をさらに含み,それにより,生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定し得るキット。 【請求項9】 前記第1の抗体又は抗体断片が,固相支持体に吸着されている請求項7または8に記載のキット。 【請求項10】 前記固相支持体が,タンパク質結合表面,金属コロイド粒子,ラテックス粒子又はポリマービーズからなる群から選択される請求項9に記載のキット。 【請求項11】 前記標識が,化学発光剤,測色剤,エネルギー移動剤,酵素,蛍光剤,及び放射性同位元素からなる群から選択される請求項7?10のいずれかに記載のキット。 【請求項12】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンが前記第1の抗体又は抗体断片及び前記第2の抗体又は抗体断片に結合した後に,該第1の抗体又は抗体断片及び該第2の抗体又は抗体断片の結合部位以外の部位に特異的に結合する第3の抗体又は抗体断片であって,それにより沈殿塊を生成する第3の抗体又は抗体断片をさらに含む請求項7記載のキット。 【請求項13】 ラット完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met (配列番号7)からなるラット完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のAla-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片と, b)前記ラット完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号8)を認識する第2の抗体又は抗体断片とを含み,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のラット完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキット。 【請求項14】 a)検査すべき人から得られたサンプルを,Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)のうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと, b)該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含み,該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する,実質的に正常な副甲状腺機能を有する人と副甲状腺機能亢進症の人とを識別するための分析方法。 【請求項15】 a)検査すべき人から得られたサンプルを,Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)のうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと, b)該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップと を含み,該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する,副甲状腺機能亢進症の治療効果をモニタリングするための分析方法。 【請求項16】 a)検査すべき人から得られたサンプルを,Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと, b)該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップと, を含み,該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する,正常な骨機能を有する人と副甲状腺関連の骨疾患を有する人とを識別するための分析方法。 【請求項17】 a)検査すべき人から得られたサンプルを,Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと, b)該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップと,を含み,該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する,副甲状腺関連の骨疾患をモニタリングするための分析方法。 【請求項18】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを,a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)のうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるス テップと,該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む,完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップと b)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を,イムノアッセイを用いて決定するステップと, c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値,及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップとを含み, ステップc)において,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を,完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む,実質的に正常な副甲状腺機能を有する人と副甲状腺機能亢進症の人とを識別するための分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項19】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを,Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと,該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む,完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップとb)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を,イムノアッセイを用いて決定するステップと, c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値,及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップと を含み, ステップc)において,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を,完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む,副甲状腺機能亢進症の治療効果をモニタリングするための分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項20】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを,Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと,該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む,完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップと b)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を,イムノアッセイを用いて決定するステップと, c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値,及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップと を含み, ステップc)において,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を,完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む,正常な骨機能を有する人と副甲状腺関連の骨疾患を有する人とを識別するための分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項21】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを,Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと,該サンプルを,前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む,完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップと b)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を,イムノアッセイを用いて決定するステップと, c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値,及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップと を含み, ステップc)において,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には,副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を,完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む,副甲状腺関連の骨疾患をモニタリングするための分析方法であって, ステップa)及びb)を,請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項22】 前記サンプルが,血清,血漿,及び血液のサンプルからなる群から選択される請求項14?21のいずれかに記載の方法。 【請求項23】 前記完全型副甲状腺ホルモン値が,前記副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値と比較される請求項18?21のいずれかに記載の方法。 【請求項24】前記完全型副甲状腺ホルモン値が,前記総副甲状腺ホルモン値と比較される請求項18?21のいずれかに記載の方法。 【請求項25】前記副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値が,前記総副甲状腺ホルモン値と比較される請求項18?21のいずれかに記載の方法。 【請求項26】前記比較が比率または割合の形態である請求項18?21のいずれかに記載の方法。 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張 請求人は,特許第4132677号の請求項1?27に記載の発明について特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,審判請求書において,下記に示した証拠を提出して,無効とすべきものであると主張している。 請求人の主張する無効理由を,審判請求書に沿い,請求人提出の口頭審理陳述要領書3頁17行?6頁18行に記載の誤記の補正,主張の取り下げ,平成25年12月12日提出の弁駁書等を併せて整理すると次のようになる。 なお,「」で括った箇所は,審判請求書等をそのまま引用したものであり,「」で括っていない箇所は,当審でまとめたものである。 また,訂正発明15の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」,訂正明細書の段落【0001】「非断片化PTH1?84」,同段落【0012】「[PTH_(3?84)]」及び段落【0004】「(1?34)PTH」と表現が統一されていない。甲各号証及び乙各号証の表記も証拠方法によりまちまちである。 そこで,以下訂正明細書及び甲各号証及び乙各号証を摘記するときは,そのままの表現を用いるが,本審決の引用箇所以外においては,副甲状腺ホルモンを「PTH」といい,PTHのN末端を「PTH(1)」とし,C末端を「PTH(84)」とし,PTHの断片の範囲をいうときは「PTH(3?84)」のようにいうこととする。また,特に断りのない限り「PTH」と記す場合は,「ヒトPTH」をいうものとする。 (1) 無効理由1(特許法第17条の2第3項) ア 無効理由1-1(審判請求書「(3-4)」の項) 「配列PTH(34-84)を結合する抗体の明示はいうまでもなく暗示もない。 平成20年3月28日付けで補正された請求項1に記載の「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体」は,当初明細書等に記載されていない。」(審判請求書20頁21?25行) よって,本件特許は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであることから,特許法第123条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。 イ 無効理由1-2(審判請求書「(3-4)」の項) 「当初明細書には,アミノ酸1-6を認識する第1の抗体とアミノ酸39-84を認識する第2の抗体との組み合わせが記載されている。 第1の抗体及び第2の抗体のそれぞれについて多数の選択肢があるが,上記のアミノ酸1-6を認識する第1の抗体とアミノ酸39-84を認識する第2の抗体との組み合わせ以外の特定の選択肢の組み合わせを採用することが,当初明細書等に記載されていない。」 と主張し, 「さらに請求項に記載の第2の抗体も請求項の残りの構成との組み合わせて開示されていない。明細書は,第2の抗体との組み合わせという意味の第1の抗体を「第2の抗体はC末端にて付着する捕捉抗体の役割を果たす」(段落0013)と記載するにすぎない。 最後に,請求項に記載の第1の抗体は,4つの工程の方法によって特定され,特許発明には記載されていない,全PTHを測定する方法の狭い文脈において開示されるにすぎない。したがって,特許発明は,当初明細書の開示からは不当に広いものとなっている。」(審判請求書21頁14?28行) よって,平成20年3月28日付けで補正された「請求項1に記載のアミノ酸1-8を認識する第1の抗体とアミノ酸34-84を認識する第2の抗体との組み合わせは,当初明細書等に記載されていない。」(審判請求書21頁29行?22頁2行。) ここでいう「4つの工程の方法」は,当初明細書段落【0013】に対応するものであり,「シグナル抗体または捕捉抗体のいずれかとして使用する場合,存在する全てのw-PTHに結合させるのに十分な抗体を加える「工程1」。次に,第1の抗体を,存在するあらゆるw-PTHに結合させ,それによって複合体を形成させる「工程2」。複合体を,好ましくはw-PTHのC末端にて,標識するために,第2の抗体および従来のイムノアッセイ標識,たとえば化学発光剤,測色剤,エネルギー移動剤,酵素,蛍光剤,および放射性同位元素を含む特異的結合標識が使用され,また,第1の抗体と実質的に同時に,あるいは第1の抗体に続いて,加えることができる「工程3」。最終的に,従来の技術を使用して標識複合体の量を測定し,それによって,試料中のw-PTHレベルを算出する「工程4」。」を意味する。(請求人提出の口頭審理陳述要領書3頁末行?5頁11行) また,「請求項に記載の第1及び第2の抗体は,特許発明の方法のキットの一部又はいかなる他の方法の一部としても記載されていない。」(審判請求書22頁3?4行) 「最後に,認められない補正は,全ての特許発明1?27」(審判請求書22頁5行)にある。 よって,本件特許発明1?27は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであることから,特許法第123条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。 (2) 無効理由2(特許法第36条第6項第1号) ア 無効理由2-1(審判請求書「(3-12)」の項) 「実施可能要件に関する(3-5)-(3-8)の主張は,特許発明の広い範囲に対して,明細書には,当業者が特許発明を実施することができるための記載が限られていることを明らかにしていることから,(3-5)-(3-8)事項に基づけば,特許発明は,発明の詳細な説明に記載したものではないことからサポート要件を満たさないことも明らかである。」(審判請求書28頁2?6行) よって,特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 イ 無効理由2-2(審判請求書「(3-13)」の項) 「特許発明1は,「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体」及び「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体」を含む,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットに関する。 上記のとおり,特許発明1の所定の第1の抗体及び第2の抗体の組み合わせは,当初明細書等には,記載されていない。 よって,特許発明1は,発明の詳細な説明に記載したものではない。」(審判請求書28頁8?15行) 特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 (3) 無効理由3(特許法第36条第4項) ア 無効理由3-1(審判請求書「(3-5)」の項) 「特許発明がPTH(1-84)の3-8,3-9,4-8,5-8,5-9等のアミノ酸から選択されるペプチドが,抗体との反応部位の一部である,第1の抗体を含むことを考慮すると,阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片であるPTH(7-84)にも同様に適用することができる。したがって,第1の抗体及び第2の抗体の請求項の組み合わせは,阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片であるPTH(7-84)にも結合する。したがって,特許発明は,実施可能ではない発明を含む。」(審判請求書23頁13?19行) 「このポリクローナル抗体は,1-5,1-7,2-6,2-8,3-8,4-8,5-8,5-9等のようなPTHペプチドにも結合する抗体を含むことになり,これらの ポリクローナル抗体は,PTH(3-84)及び(7-84)のような阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片にも結合することになる。本件明細書中には,当業者に本特許発明を過度な努力無しに実施することを可能にするさらなる教示はない。したがって,実施可能要件を満たさない。」(審判請求書24頁3?9行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 イ 無効理由3-2(審判請求書「(3-6)」の項) 「全副甲状腺ホルモンを検出するが阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片を検出しない,第1及び第2抗体をどのように作成し,そして選択するかについて実施可能な開示を提供していない。明細書は,どのようにPTH(1-6)ペプチドに結合する第1のポリクローナル抗体,そして多分どのようにPTH(1-8)ペプチドに結合する第1のポリクローナル抗体を得るのかを記載するにすぎない(段落0023-0027)。上記のように,どのように第1の抗体を全PTHにのみ結合し,PTH(3-84)又は (7-84)のような阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片に結合しない抗体のセットに限定するかについて記載も示唆も無い。」(審判請求書24頁13?21行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 ウ 無効理由3-3(審判請求書「(3-7)」の項) 「特許発明1の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく」について,明細書の段落0012には,「本発明は,(配列番号2[PTH3-84]から(配列番号3[PTH_(34-84)])までの間のアミノ酸配列を有するペプチドである大きい非w-PTHペプチド断片は,in vivoで,wPTH措抗物質または阻害物質(PIN)の役割をするという発見を含む(図12参照)。」と記載している。 ここで,最も長い阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片は,PTH3?84であり,PTHのN末端のわずか2アミノ酸を欠く断片である。w-PTH(1?84)を検出し,この断片(3?84)を検出しないためには,w-PTHの1及び2のアミノ酸を特異的に認識する必要がある。しかし,w-PTHの1?8の少なくとも4つのアミノ酸がエピトープである特許発明1の第1の抗体が,w-PTHの1及び2のアミノ酸を特異的に認識することは,技術的に理解することができない。 よって,本件の発明の詳細な説明は,当業者が特許発明1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。」(審判請求書24頁25行?末行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 エ 無効理由3-4(審判請求書「(3-8)」の項) 「特許発明は,抗体が,第1の抗体及び第2の抗体が結合する全PTH(1-84)からのみ生じるシグナルを出すことを保証せず,二つの抗体の一つのみが結合した阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片からのシグナルも含む。 ・・・(略)・・・特許発明の第1及び第2の抗体は,二つの抗体の一つのみと結合した分子の除去が可能な程度に記載されていないことから,検出されたシグナルは,適切なサンドイッチPTH分子及びラベルされた第1の抗体にのみ結合した阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片のようなPTH断片に由来する。したがって,特許発明は,実施することができない態様を含む。」(審判請求書25頁14行?末行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 オ 無効理由3-5(審判請求書「(3-9)」の項) 「上記で指摘したとおり,本願は,特定の抗体を,実際に,全PTHアッセイに用い,明細書に記載の実際のデータを作るために用いたことの記載が無い。 ・・・(略)・・・ よって,本願は,実際のデータを作成するために用いた第1の抗体についてのいかなる情報を何も提供することなく実際の実験結果を開示し議論している。このような必須かつ重要な情報が無くては,当業者は,請求項の技術的及び臨床的効果の信頼性を評価するための根拠が無い。したがって,当業者は,開示された実験データを,技術的課題が解決されたか否か,そして発明が実施可能であるか及びサポートされているか否かのそれぞれを評価するときに,考慮することができないと結論する。」(審判請求書26頁5行?27頁10行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 カ 無効理由3-6(審判請求書「(3-10)」の項) 「全PTHの短い半減期は,本特許に示されていない更なる説明を必要とする。 ・・・(略)・・・サンプル単離,サンプル調製及びサンプル測定の間の時間における小さな偏差が,サンプルに置かれたままの全PTH濃度に大きな影響を与えることから,甲14で知られるとおり,全PTHの半減期は,1-3分のオーダーであり,サンプル単離及びPTH測定の間隔が,全PTHの定量には重要である。したがって,この問題は,当業者に,たとえば,定量的PTH濃度に基づく判断基準の定義に極めて重要であり,本件特許によって実施可能になっていない。」(審判請求書27頁12?21行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 キ 無効理由3-7(審判請求書「(3-11)」の項) 「当業者は,具体的に記載された結合特性を有する第2抗体を得るために,どの免疫原を使うことができ,どの方法を用いることができるのかを教示されていない。よって,特許発明に記載の第2抗体をどのように調製するかの実施可能な記載はない。」(審判請求書27頁23行?末行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 ク 無効理由3-8(審判請求書「(3-13)」の項) 「特許発明1は,「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体」及び「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体」を含む,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットに関する。 上記のとおり,特許発明1の所定の第1の抗体及び第2の抗体の組み合わせは,当初明細書等には,記載されていない。 ・・・(略)・・・ よって,本件の発明の詳細な説明は,当業者が特許発明1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。」(審判請求書28頁8?19行) よって,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 (4) 無効理由4(特許法第36条第6項第2号) ア 無効理由4-1(審判請求書「(3-16)」の項) 「特許発明13ついては,・・・(略)・・・配列番号8は,明細書中に存在していないことから,第2抗体を特定することができない。」(審判請求書36頁26行?37頁2行) よって,特許法第36条第6項第2号により特許を受けることができないものであるので,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 イ 無効理由4-2(審判請求書「(3-14)」の項) 「特許発明1に記載の「抗体断片」について,明細書に明確な定義もなく,どのような断片を包含し,どのような断片を包含しないかが具体的に把握することができないので,その発明の範囲が明確でない。 よって,特許発明1は,明確に記載された発明ではない。」(審判請求書28頁21?24行) よって,特許法第36条第6項第2号により特許を受けることができないものであるので,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 (5) 無効理由5(特許法第29条第2項) 審判請求書34頁8行?37頁25行及び審判請求書37頁26行?38頁18行に,甲8を主体として,本件特許の請求項1?27に係る発明(訂正前の本件特許の請求項1?27に係る発明を,「特許発明1?27」という。)に対する無効理由が記載されている。 また,請求人提出の口頭審理陳述要領書6頁14?18行の記載からみて,特許発明5,6,10,12,13及び18?27に対する無効理由が記載されている。 そして,平成25年12月12日提出の弁駁書6頁11行?41頁下から3行には,訂正発明1?26に対する無効理由が記載されている。 以上の請求人の主張を,訂正請求に伴う訂正発明1?26に対する無効理由として整理すると,次の2つの無効理由に整理できる。 ア 無効理由5-1 訂正発明1?26は,甲8に記載された発明並びに甲第1?7号証及び甲第9?23号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるので,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 イ 無効理由5-2 訂正発明5,6,10,12,13及び18?26は,甲11に記載された発明並びに甲第1?10号証及び甲第12?23号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるので,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 (6) 無効理由6(特許法第29条第1項第3号) 優先権主張の有効性について(審判請求書「(3-15)」の項) 「特許発明は,2つの優先権US09/231,422及びUS09/344,639のいずれの利益も享受しない。 具体的には,「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片」は,2つの優先権書類には開示されていない。」(審判請求書29頁3?8行) 訂正発明1?4,7?9,11,14?17は,甲11に記載された発明であり,新規性がない。よって,特許法第29条第1項第3号により特許を受けることができないものであるので,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。(審判請求書30頁18行?31頁27行,口頭審理陳述要領書6頁14?18行) よって,特許法第29条第1項第3号により特許を受けることができないものであるので,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 2 証拠方法 甲1 Rude et al., 1996年8月, Otolaryngologic clinics of North America,, 29(4):663?79 甲2 Horneck et al.,1991,Current Protocols in Immunology, chapter 2.1.1?2.1.22 甲3 John et al., 1999年, The Journal of Clinical Endocrinology Metabolism, 84(11):4287?4290 (当審注:月日まで発行日を特定する記載がない。) 甲4 D'Amour et a.l, 1979, J. Clin. Invest., 63:89?98 甲5 D'Amour et al., 1981, the American Physiological Society, 241 :E208?E214 甲6 Bringhurst et al., 1988, the American Physiological Society, 255 :E886?E893 甲7 Brossard et al., 1996, Journal of Clinical Endocrinology Metabolism, 81(11):3923?3929 甲8 Lepage et al., 1998, Clin. Chem.,44(4): 805?809 甲9 Winer et al., 1998, Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 83(10):3480?3486 甲10 Nussbaum et al., 1987, Clin. Chem., 33/8: 1364?1367 甲11 Gao et al., 1999 Progran Abstracts Twenty-First Annual Meeting of the American Society for Bone and Mineral Research America's Center St. Louis, Missouri, USA, September 30-October 4, 1999 , vol.14, SUPPL 1:SU057,S446 (当審注:月日まで発行日を特定する記載がない。) 甲12 Blind et al., 1987, Clin. Chem., 33/8:1376?1381 甲13 Newman et al., 1988, Ann. Clin. Biochem., 25:654?660 甲14 Libutti et al., 1999年12月, Surgery, 126(6):1145?1151 甲15 Martin et al., 1997, MEDICINA CLINICA.(Barc)109(6):201?206 甲16 米国特許第4, 369, 138号公報 甲17 Hackeng et al., 1986, Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 63(2):447?453 甲18 特願2000-593958号の優先権証明書(US 09/231,422) 甲19 特願2000-593958号の優先権証明書(US 09/344, 639) 甲20 Harman et al, 1999年6月, Arch Surg,134:651?656 (当審注:1999年6月何日に発行されたか特定する記載がない。) 甲21 Garner et al., 1999年12月, Surgery 126 : 1132?1138 甲22 MacGregor et al., 1986, Bone and Mineral, 1: 41?50 甲23 Whole PTH「住友」添付文書,2009年1月改訂(第4版) 3 主な甲号証の記載内容 なお,下線は,当審にて付記したものである。以下同様である。また,翻訳は,請求人によるものである。翻訳が請求人から提出されていない箇所については,当審にて翻訳したものである。 (1)甲8記載の事項 (甲8-1)「非(1-84)循環副甲状腺ホルモン(PTH)断片は,尿毒症試料におけるインタクトPTHの商業的アッセイ測定に有意に干渉する」(805頁 標題) (甲8-2)「我々は以前,インタクトな副甲状腺ホルモン(I-PTH)のためのニコルスアッセイが,PTHの非(1-84)分子型と反応することを示した。この型は,カルボキシ末端断片として振る舞い,腎不全において貯留し,測定された免疫反応性40-60%を占める。我々はこれが他の商業的二部位I-PTHアッセイにおいても一般的な現象であるかどうかをみようと思った。よって我々は,比較した三つの商業的キット[ニコルス(NL),インクスター(IT),およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)]の活性を比較し,112人の腎不全患者のI-PTHを測定し,hPTH(1-84)および非(1-84)PTHを,10-100pmol/Lの濃度のI-PTHの尿毒症患者の血清サンプルのHPLCプロファイル上で検出した。これらの三つのアッセイにおいて,合成hPTH(7-84)(おそらく非(1-84)PTHと関係する断片である)の挙動もまた,hPTH(1-84)と比較した。112の尿毒症試料における三つのアッセイで測定されたI-PTH濃度は,非常に関連し(r^(2)≧0.89,P<0.0001),そしてNLを用いて測定された値は,平均してITより23%高かった。DSLを用いて測定された値は,40pmol/L未満および40pmol/L超の値について,ITよりもそれぞれ23%および56%高かった。三つのアッセイは,四つのプロファイル上で,対応するhPTH(1-84)および非(1-84)PTHに対応する二つのHPLCピークを検出した。この最後のピークはNLを用いた免疫反応性の36±8.4%,ITを用いた免疫反応性の24±5.5%,およびDSLを用いた免疫反応性の25±2.8%を呈する(NL対ITまたはDSL:P<0.05)。これらの違いが,ITおよびDSLについてはhPTH(1-84)と比較してhPTHの(7-84)に対する免疫反応性が50%低いが,NLについてはそうではないことによることを確認した。これらの結果は,ほとんどの二部位I-PTHアッセイは,非(1-84)PTH物質と交差反応することを示唆し,これは,尿毒症を罹患していない被験者よりも,骨病変のない尿毒症患者において報告された2-2.5倍高いI-PTH濃度の約半分について説明している。」(805頁本文左欄1行?同頁本文右欄9行) (甲8-3)「ヒトインタクト副甲状腺ホルモン(I-PTH)のための放射免疫測定二部位アッセイの開発は,腎不全におけるPTH測定を非常に単純化した(1-4)。この簡素化は,これらのアッセイの特異性の改善による;それらは,インタクトな,生物学的に活性型のホルモンとのみ反応し(5,6),そして腎不全において貯留することが知られている不活性なホルモン断片とは反応しない(7,8)。しかしながら,尿毒症患者において,これらの非常に特異的なアッセイは,健康な被検者と比較してI-PTHの非抑制的両分において2.5倍増加して測定していた(9-14)。さらに,尿毒症血清において測定されるI-PTH濃度は,明らかにPTH関連骨異常を2-2.5倍過大に見積もった(15)。循環しているPTHの阻害物質の存在が,これらの違いの潜在的原因の一つとして提唱されている。 我々はすでに,健康な人および尿毒症患者からの血清をHPLCで分画した場合に,二コルス二部位I-PTHアッセイによって二つの免疫反応性ピークを検出することが出来たことを示している(18,19)。1つのピークは,合成hPTH(1-84)と共に移動することが示され,そして二つ目の,より親水性のピークは,腎不全において貯留し,これらの患者における総免疫反応の40-60%を占め,それに比較して健康な人においては10-20%である。」(805頁本文右欄10?34行) (甲8-4)「アッセイ 三つの商業的二部位I-PTHアッセイを試験した:アレグロインタクトPTH(ニコルス研究所),N-タクトPTH SP(インクスター),およびアクティブインタクトPTH[ダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)]。これら三つのアッセイは,使用される捕捉抗体およびシグナル抗体のタイプ(アフィニティ精製ゴートポリクローナル,抗カルボキシ末端捕捉抗体および抗アミノ末端シグナル抗体),トレーサー(^(125)I),インキュベーション条件(室温で22時間),校正物質(血清ベースの合成hPTH(1-84)),精度(イントラアッセイおよびインターアッセイの両方とも),参照値などの点から,ほぼ同一である。主たる違いは,DSLアッセイはプラスチックビーズに替えて抗体でコートされたチューブを使用すること,およびこの同じアッセイはより低い感度クレームである(0.6pmol/L対ニコルスアッセイおよびインクスターアッセイについてそれぞれ0.1および0.07pmol/L)ことである。各々のアッセイを,それら自身の校正物質を用いて,製造者の手順に従い行った。約三分の二のサンプルを,二回繰り返して行った;三分の一は,血清量の制限により単回で行った。各々のアッセイの反応性を,合成hPTH(1-84)およびhPTH(7-84)(バケム)を添加した病気でないヒト血清のプールを用いても試験した。」(806頁左欄13?35行) (甲8-5)「しかし,これらは,アフィニティクロマトグラフによって精製したが,この3つのアッセイにおいてシグナル及び捕捉抗体として用いたポリクローナル抗体は,論理的には,PTH分子のどちらか一方の末端で少数のアミノ酸を欠いているhPTHフラグメントと反応する能力を有する。現在入手可能なアミノ末端が明らかな抗体のほとんどが,PTH分子の14-34領域に位置する1以上のエピトープに反応する(21)。14-34領域から比較的離れた,PTHのアミノ末端での少数のアミノ酸の切断は,それゆえに,これらのアッセイにおいて免疫反応性を妨げなかった。それぞれのインサートによれば,この研究で評価した3つのキットの交差反応性を,N末端に極めて多数のアミノ酸を欠いているPTHフラグメント:hPTH(39-84),hPTH(53-84),hPTH(39-68)及びhPTH(44-68)を用いてチェックした。多分,上市のとき商業的人手可能性が限定されることから,どのキットについても,この研究においてテストしたhPTH(7-84)フラグメントのような,まさに最初のN末端アミノ酸の欠損したフラグメントをチェックしなかったようだ。」(808頁左欄25?44行) (甲8-6)「I-PTHアッセイの非(1-84)PTHとの交差反応性の臨床的意義は,二重にある。まず,非(1-84)PTHピーク中で移動している分子実体は,おそらく,アデニル酸サイクラーゼ活性化に必須である極めて最初のN末端アミノ酸の少なくとも幾つかを欠失したものである。それゆえ,三つのPTHアッセイは,不活性断片を測定していて,PTH分泌を,アッセイに応じて80-120%過大に見積もっていた。これが,PTH介在性骨関与のみられない腎不全患者での2から2.5倍高い「正常植」に恐らく寄与している。次に,非(1-84)PTHピーク中で移動しているhPTH物質は,PTHレセプターに結合する能力を保持していた可能性がある。PTHの結合部分およびPTHアミノ末端に対する抗体を調整するためのおもなエピトープは,PTH分子の同じ領域に位置している(21,22)。レセプターに結合することにより,非(1-84)PTHは,それゆえ,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用し,腎不全の患者でみられる見かけ上のPTH抵抗性(および随伴するPTH分泌の増加)に寄与しているかもしれない(7-12)。更なる研究が,この最後の点を解明することおよび校正物質における違いの効果を評価することが必要である。というのも我々はすでに,大きな非(1-84)PTH断片が,種々のI-PTHアッセイにより異なって測定されるということを示している。」(808頁左欄45行?同頁右欄13行) (甲8-7)「PTHの一番端のN端部分に対する抗体が,生成されないと考える明らかな理由がないことから,「真の」I-PTHアッセイの開発が,望ましい目標として残っている。」(808頁右欄13?16行) (甲8-8)「図2は,3つのアッセイにおいて2つの異なるI-PTH濃度(上のクロマトグラムは?60pmo1/L,下のクロマトグラムは?100pmo1/L)で観察される典型的なHPLCプロファイルを示す。3つのアッセイは,免疫学的に反応性のPTHの2つのピークと反応した。大きいほうのより疎水性のピークは,合成hPTH(1-84)(右矢印)と共に移動した。一方,小さいほうのやや疎水性の低いピークは,hPTH(1-84)の前,hPTH(7-84)(左矢印)のすぐ前方で移動した。表2に示すように,非(1-84)ピークの曲線下面積の割合は,ニコルスアッセイにおいては;45%大きく(P,0.05),hPTH(1-84)に相当する面積は他の2つのアッセイよりも15%小さかった。 これらの差についてより良い理解を得るために,我々は次に,hPTH(1-84)及び非(1-84)PTHピークと構造的に関連する可能性があり商業的に人手できる分子であるhPTH(7-84)の免疫反応性を分析した。図3に示すように,hPTH(1-84)及びhPTH(7-84)は,ニコルスアッセイではほぼ等モルで反応した。一方,他の2つのアッセイでは,hPTH(7-84)は,hPTH(1-84)のたった1/2の強さであった。」(807頁左欄7行?同頁右欄12行) (甲8-9)「クロマトグラフィー分離 類似したI-PTH濃度の最大5人の患者からのプール血清又は単一の個体からの血清は,Sep-PakPlusC_(18)カートリッジ(ウォーターズ社クロマトグラフ事業部)で抽出され,それから,前述したように(18-20),C_(18)μ-Bondapak分析カラム(ウォーターズ社)で,非連続のアセトニトリル勾配(l.0g/Lトリフルオロ酢酸中150-450mL/Lアセトニトリル)を用いて,クロマトグラフが行われた。蒸発濃縮及び凍結乾燥後,各1.5mLの分画を7.0g/Lウシ血清アルブミン又は健常人プール血清で再溶解した。その後,各分画のI-PTH含有量が,それぞれのキャリブレーション物質で較正された3つのアッセイを用いて測定された。」(806頁左欄36?49行) (甲8-10)807頁 図2 (翻訳) 「図2 尿毒症サンプルの2つのプールにおける循環血中I-PTHのHPLCプロファイル(上段;60pmo1/L,下段:100pmo1/L) 分析:Nichols(-),Incster(...),DSL(---)。左矢印は,hPTH(7-84)標準;右矢印は,hPTH(1-84)標準。」 (甲8-11)807頁 表2 (翻訳) 「表2 3つのI-PTH商業アッセイを使用した4つの尿毒症PTHのHPLCのパラメトリック評価」 (甲8-12)「非(1-84)PTH物質は,尿毒症患者試料中の免疫反応性I-PTH全体の40-60%を構成し(19),非(1-84)ピーク中に見出された物質は,hPTH(7-84)と同様に反応すると仮定されることから,我々は,インクスターとニコルスアッセイの間には20-25%の差があると予想していた。これは,全測定範囲上の場合である(24%)。」(808頁左欄9?16行) (甲8-13)807頁 図3 (翻訳) 「図3 ニコルス,インクスター及びDSLアッセイにおけるhPTH(1-84)(実線)及びhPHT(7-84)(破線)の免疫放射活性」 第5 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張 特許第4132677号に対する,本件審判の請求は,成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,下記に示した証拠方法を提出して,請求人の無効の申し立ては理由がない,と反論している。 2 証拠方法 乙1 被請求人による甲5のE209頁左欄33?40行の翻訳 乙2 被請求人による甲7の一部翻訳 乙3 被請求人による甲10の一部翻訳 乙4 被請求人による甲8の一部翻訳 乙5 高坂唯子等,1988年,核医学,25巻8号,813?820頁 乙6 Gerhard Heinrich et al., J Biol.Chem.,Vol.259,No.5, 1984年, pp.3320-3329 乙7 Gao et al, 1999 Progran Abstracts Twenty-First Annual Meeting of the American Society for Bone and Mineral Research America's Center St. Louis, Missouri, USA ,September 30-October 4, 1999 , Vol.14, SUPPL 1, 大英図書館への受入日のラベルが添付してある表紙の複写物 乙8 生化学辞典(第3版),株式会社東京化学同人,3版2刷, 1998年11月20日,109頁「アンタゴニスト」の項, 11?12頁「アゴニスト」の項 乙9 Shafaat A. Rabbani et al., Biochemistry, Vol.29, 1990, pp.10080-10089 乙10 塚本雄介,Annual Review 腎臓,1999巻,43-46頁 3 主な乙各号証記載の事項 (1)乙5記載の事項 (乙5-1)「Figure4上段は採決後速やかに血清分離を行い,その後4℃と室温(25℃)で1?2日放置した場合のPTHの測定値を示す。採血後直ちに-20℃で凍結した検体と4℃で2日まで放置した値との間に有意な変化は認められなかったが,室温で放置した場合には1日目では約9%,2日目では約35%低下することが認められた。」(816頁左欄22?28行) (2)乙6記載の事項 (乙6-1)ラット副甲状腺ホルモンのヌクレオチド及び推定されるアミノ酸配列-他の種の対応する配列との比較と題する図9において,ラット副甲状腺ホルモンの全アミノ酸配列が記載されている(3327頁 図9) (3)乙7記載の事項 (乙7-1)表紙には,「9-SEP-1999 BSDS」とのラベルが付いており,また,複写物の下段には,「Supplied by The British Library-The world's knowlege」(当審訳:大英図書館によって提供される-「世界の知識」)と記載されている。 (4)乙8記載の事項 (乙8-1)「アンタゴニスト[antagonist] 拮抗薬,遮断薬ともよばれる。受容体(レセプター)に結合してアゴニスト^(*)の効果を阻害するが,それ自体は受容体と結合しても阻害効果を発揮できない物質をいう。・・・(略)・・・」(109頁 アンタゴニストの項) (乙8-2)「アゴニスト[agonist] 作動薬,作用薬ともよばれる。受容体(レセプター)との結合により受容体の構造変化をもたらし,つづいて種々の生理作用を示す物質をいう。・・・(略)・・・」(11?12頁 アゴニストの項) (5)乙9記載の事項 なお,翻訳は被請求人提出の乙9抄訳によるものである。 図10Cとともに, (乙9-1)「図10:甲状腺上皮小体切除ラットへのPTHペプチド注入の効果:組換えhPTH-(3-84)のアンタゴニスト活性の評価。bPTH-(1-84)(1nmol/h)(△)と合成bPTH-(3-34)(10nmol/h)(▲),bPTH(1-84)(1nmol/h)と組換えbPTH-(3-34)(10nmol/h)(■),及び溶媒単独(×)。測定したパラメーターの詳細については図9の説明文及び実験手順を参照されたい。」(10088頁 図10の説明) 第6 被請求人側参加人の主張及び証拠方法について 1 参加人の主張 被請求人側への補助参加を認めた参加人は,本件特許の請求項1?26に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないので,特許法第123条第1項第2号に該当せず,特許とすべきものであると主張し,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,以下の証拠方法を提出している。 2 証拠方法 丙1 2013年3月19日付け,ニットボディーメディカル株式会社 三浦俊英の「PTH測定に関する事情聴取の件」 と題する陳述書 丙2 2013年4月3日付け,やましたクリニック 院長山下弘幸の 「PTH測定に関する事情聴取の件」と題する陳述書 第7 技術常識及び訂正明細書の用語について 訂正明細書の特許請求の範囲等に記載された「第1の抗体又は抗体断片」,「第2の抗体又は抗体断片」及び「第3の抗体又は抗体断片」について,それぞれ「第1の抗体等」,「第2の抗体等」及び「第3の抗体等」ということとする。 1 抗原決定基の大きさと,それを認識する抗体について 本件特許の出願に対する拒絶査定不服審判の手続において,被請求人は,平成17年12月7日に審判請求理由を補正する手続補正書を提出している。当該手続補正書において,参考資料13として引用されたQuentin N. Myrvik et al.,廣瀬俊一等監訳, 免疫学 基礎から臨床へ,株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナル,第1版第2刷,1990年8月15日,29頁下から2行?30頁1行には「C. 抗原決定基の性状 抗原決定基の大きさは多様であるが,通常500から700Å^(2)の大きさをもった領域により形成される。この領域は,ほぼ4?6個のアミノ酸の集合の大きさに相当する。」と記載されているから,抗原決定基の大きさは,アミノ酸4?6個であることが本件特許の第1優先日前の技術常識であったといえる。 2 PTHのホルモン活性領域及び受容体結合領域についての技術常識 i)N末端からアミノ酸数個の領域に,ホルモン活性領域があること N末端から数個のアミノ酸残基の領域が,アデニルシークラーゼ活性領域であり,ホルモン活性に重要であることが,次のように第1優先日前から周知の事項となっていた。 下記刊行物Aに 「さらにこの(1-34)フラグメントにおいてN末の2?6個のアミノ酸を欠如したペプチドがPTHアンタゴニスト活性を有することが知られている。」(刊A-1) 下記刊行物Bに 「受容体結合性と別のものとして,PTHの合成のNH_(2)-末端短縮断片での体系的な構造・活性研究は,ホルモン作用(2-7)に対して,最初の2つの残基の臨界的な重要性を明らかにした。3-34配列のアナログ,すなわち,[Nle^(8),Nle^(8),Tyl^(34)]bPTH-(3-34)アミドは,完全な1-34または1-84配列と等しい親和性で腎PTH受容体に結合し,そして,1-34領域(4)の放射能でラベルが付けられたアナログによる受容体占有を防ぐ。」(刊B-2) 下記刊行物Cに 「N末端からアミノ酸2?6個が除かれたPTH類似体は,環状AMP濃度の変化を生じさせることなくペプチドホルモンレセプターと高親和性でなおも結合する阻害剤を提供することになる。」(刊C-1) 下記刊行物Fに 「アミノ末端切断は,PTH刺激されたアデニル酸シクラーゼの拮抗アンタゴニストであるポリペプチドをもたらす。そのため[Tyr.sup.34 ]bPTH (7-34)アミドは,腎臓の PTH 受容体に対する適度な親和性を維持し,いかなるアゴニスト活性も有していない。」(刊F-1) ii)PTH受容体結合領域 PTH受容体結合領域は,PTH(25?34)の領域にあることが下記刊行物B,D及びEに記載のように本件特許の第1優先日前から周知の事項となっていた。 iii)PTH(7?34)又はPTH(7?84)はアンタゴニストであること 下記刊行物C,F,G及びHには,それぞれ, 「N末端から3?7つのアミノ酸取り除かれたPTHアナログは,サイクリックAMP濃度の変化を引き起こさずに,ペプチドホルモンレセプターに高親和性で結合する阻害剤を生成する。」(刊C-1), 「そのため[Tyr^(34) ]bPTH (7-34)アミドは,腎臓の PTH 受容体に対する適度な親和性を維持し,いかなるアゴニスト活性も有していない。」(刊F-1), 「PTH / PTHrP アンタゴニストは,PTH (7-34)とそのアミド誘導体である。」(刊G-1), 「ヒトPTH(7-84)(図2)(SEQ ID NO:24?31)のような,N末端のアミノ酸配列を欠いたアンタゴニスト誘導体」(刊H-1) と記載されており,第1優先日前から,PTH(7?34)又はPTH(7?84)がアンタゴニストであることが周知の事項となっていた。 iv)PTHの生物学的作用はPTH(1?34)にある PTHの生物学的作用が,PTH(1?34)にあることは, 下記刊行物Aに,「その生物学的作用はN末端(1-34位)・・・のフラグメントで再現できる事が以前より知られ」(刊A-1)ていたと記載され, 下記刊行物Bに「in vitro (1,2)及びin vivo(3)における副甲状腺ホルモン(PTH)1作用に関する研究は,NH_(2)末端34アミノ酸が十分な生物学的活性に十分な構造的決定因子を含むことを明らかにした」(刊B-2)と記載され, 下記刊行物Eに「リガンドに関する研究は,当該ホルモンのN末端1-34断片,すなわち,PTH[1-34]が,未変性PTHに効力が等しく,残基25-34が主要な結合領域を構成することを示した(7,8)。」(刊E-1)と記載され, 下記刊行物Fに「PTH(1-34)は,イヌ腎臓膜におけるアデニル酸シクラーゼの活性化に関しては天然の84アミノ酸ホルモンの完全アゴニストである。」(刊F-1) と記載されていることから,第1優先日前から周知の事項となっていた。 刊行物A:特開平5-271279号公報 (刊A-1)「その生物学的作用はN末端(1-34位)(以下アミノ酸残基の位置はSerを第1位とするヒトPTH(1-84)の配列に対応する番号で示す)のフラグメントで再現できる事が以前より知られており〔G.W.Tregearら,エンドクリノロジー(Enducrinology),93,1349-1353(1973)〕,多くの誘導体が合成されてきた。さらにこの(1-34)フラグメントにおいてN末の2?6個のアミノ酸を欠如したペプチドがPTHアンタゴニスト活性を有することが知られている。さらに最近になって35位以後のC末端部のレセプターへの結合能〔L.G.Raoら,エンドクリノロジー(Endocrinology)117,1632-1636(1985)〕やアルカリホスファターゼの活性化作用〔T.M.Murrayら,エンドクリノロジー(Endocrinology)124,1097-1099(1989)〕が明らかにされた。」(2頁1欄下から8行?同頁2欄下から2行) 刊行物B:Samuel R. Nussbaum, Michael Rosenblatt, and John T. Potts, Jr. ,Parathyroid Hormone・Renal Receptor Interactions DEMONSTRATION OF TWO RECEPTOR-BINDING DOMAINS , THE JOURNAL OF BIOLWICACLH EMISTRY ,Vol. 255, No. 21. , 1980, pp. 10183-10187 (刊B-1)「This analysis indicates that the structural features of the hormone most important for receptor binding are clustered in the COOH-terminal 25-34 domain of the molecule. In addition, these studies will facilitate PTH analogue design through identification of the binding domains within the hormone. Future PTH analogues of biological interest, particularly hormone inhibitors, may result from structural modifications of the 25-34 region.」(10183頁左欄32?41行) (当審訳) 「この分析では,受容体結合のための最も重要なホルモンの構造上の特徴は,分子のCOOH 末端25-34ドメインにクラスタ化されていることを示す。 さらに,これらの研究はホルモン内の結合領域の同定をとおして,PTHアナログ設計を促進するであろう。生物学に興味のある将来のPTHアナログ(特にホルモン阻害剤)は25-34領域の構造の修正に起因するかもしれない。」 (刊B-2)「Studies of parathyroid hormone (PTH)^(1) action in vitro (1, 2)and in vivo (3) demonstrated that the NH_(2)-terminal 34 amino acids contain structural determinants sufficient for full biological activity. More recent direct studies of PTH interaction with receptor sites in renal membranes in vitro (4) indicate that the sequence region 1-34 has avidity for the PTH receptor that is equivalent to the complete 84-amino acid sequence of the native molecule. Systematic structure・activity studies with synthetic NH_(2)-terminally shortened fragments of PTH revealed the critical importance of the first 2 residues to hormone action (2-7)as distinct from receptor binding properties per se. An analogue of the 3-34 sequence, [Nle^(8),Nle^(8),Tyl^(34)]bPTH-(3-34)amide,binds to the renal PTH receptor with an affinity equal to that of the full 1-34 or 1-84 sequence and blocks completely receptor occupancy by a radioactively labeled analogue of the 1-34 region (4).」(10183頁左欄本文下から2行?同頁右欄14行) (当審訳) 「in vitro (1,2)及びin vivo(3)における副甲状腺ホルモン(PTH)^(1)作用に関する研究は,NH_(2)末端34アミノ酸が十分な生物学的活性に十分な構造的決定因子を含むことを明らかにした。in vitro(4)の腎の膜中の受容体部位とのPTH相互作用に関するより最近の直接的な研究は,配列領域1-34が天然の分子の完全な84のアミノ酸配列と等価なPTH受容体に対する結合活性を持っていることを示す。受容体結合性と別のものとして,PTHの合成のNH_(2)-末端短縮断片での体系的な構造・活性研究は,ホルモン作用(2-7)に対して,最初の2つの残基の臨界的な重要性を明らかにした。3-34配列のアナログ,すなわち,[Nle^(8),Nle^(8),Tyl^(34)]bPTH-(3-34)アミドは,完全な1-34または1-84配列と等しい親和性で腎PTH受容体に結合し,そして,1-34領域(4)の放射能でラベルが付けられたアナログによる受容体占有を防ぐ。」 刊行物C:特開昭63-313800 (刊C-1)「 作用剤活性はN末端アミノ酸配列の存在に依存している。末端アミノ酸2?6個の除去により,すべて作用剤活性でない場合には,大部分消失させる結果になる。したがって,第二メッセンジャー分子は,代わりのアミノ末端を有するそれらの類似体によって影響をうけない。 N末端からアミノ酸2?6個が除かれたPTH類似体は,環状AMP濃度の変化を生じさせることなくペプチドホルモンレセプターと高親和性でなおも結合する阻害剤を提供することになる。」 4頁左上欄1?10行) 刊行物D:特表平7-509228号公報 (刊D-1)「hPTHおよびhPTHrpの間の配列相同性は13のN末端残基に大体限定されており,このうち8個が同一である。hPTHのレセプター結合領域(25-34)内の10個のアミノ酸のうち1個だけがhPTHrpにおいて保存されている。」(4頁左上欄下から4行?末行) 刊行物E:Maria Pellegrini , Alessandro Bisello ,Michael Rosenblatt ,Michael Chorev, and Dale F. Mierke, Binding Domain of Human Parathyroid Hormone Receptor: From Conformation to Function, Biochemistry, 37 (37), 1998, pp 12737?12743 (刊E-1)「Studies of the ligand have shown that the N-terminal 1-34 fragment of the hormone, PTH[1-34], is equipotent to native PTH and that residues 25-34 constitute the principal binding domain (7, 8).」(12737頁右欄6?9行) (当審訳) 「リガンドに関する研究は,当該ホルモンのN末端1-34断片,すなわち,PTH[1-34]が,未変性PTHに効力が等しく,残基25-34が主要な結合領域を構成することを示した(7,8)。」 刊行物F:米国特許第5849695号明細書 (刊F-1)「PTH(1-34) is a full agonist of the native 84 amino-acid hormone with respect to adenylate cyclase activation in canine renal membranes (See Ref. 1 below. The letters used are the conventional ones to describe an amino acid sequence). Amino-terminal truncation results in polypeptides that are competitive antagonists of PTH-stimulated adenylate cyclase. Thus [Tyr^(34) ]bPTH(7-34)amide retains moderate affinity for renal PTH receptors, but does not have any agonist activity. Specific weak receptor binding activity is retained in a fragment as small as PTH(25-34) (Ref. 2). 」(1欄45?55行) (当審訳) 「PTH(1-34)は,イヌ腎臓膜におけるアデニル酸シクラーゼの活性化に関しては天然の84アミノ酸ホルモンの完全アゴニストである (下記Ref. 1参照。 使用される文字は,アミノ酸配列を記述するために慣用されているものである。)。アミノ末端切断は,PTH刺激されたアデニル酸シクラーゼの拮抗アンタゴニストであるポリペプチドをもたらす。そのため[Tyr^(34) ]bPTH (7-34)アミドは,腎臓の PTH 受容体に対する適度な親和性を維持し,いかなるアゴニスト活性も有していない。特異的な弱い受容体結合活性が,PTH(25-34)のような小さな断片に保存されている(Ref. 2)。」 刊行物G:米国特許第5744128号明細書 (刊G-1)「A preferred PTH/PTHrP antagonist peptide is PTH (7-34) and its amide derivative.」(8欄38?39行) (当審訳) 「好ましいPTH / PTHrP アンタゴニストは,PTH (7-34)とそのアミド誘導体である。」 刊行物H:米国特許第5856138号明細書 (刊H-1)「As to the N-terminal portion lacking human PTH muteins, for example, antagonist derivatives lacking N-terminal amino acid sequences such as Ser-Val-Ser, Ser-Val-Ser-Glu, (amino acids 1-4 of SEQ ID NO:5) Ser-Val-Ser-Glu-Ile (amino acids 1-5)and Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln (amino acids 1-6 of SEQ ID NO:6 (FIG. 1), genes of human PTH (4-84), human PTH (5-84), human PTH (6-84) and human PTH (7-84) (FIG. 2) (SEQ ID NOs: 24 to 31) are first prepared from synthetic oligomers (FIGS. 3 and 4), and inserted into vectors (FIG. 5).」(5欄41?50行) (当審訳) 「N末端部分を欠いているヒトPTH 突然変異蛋白質について,例えば,Ser-Val-Ser, Ser-Val-Ser-Glu, (SEQ ID NO:5のアミノ酸1-4 ) Ser-Val-Ser-Glu-Ile (アミノ酸1-5)及びSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln (SEQ ID NO:6 のアミノ酸1-6(図1),ヒトPTH(4-84),ヒトPTH(5-84),ヒトPTH(6-84)及びヒトPTH(7-84)(図2)(SEQ ID NO:24?31)のような,N末端のアミノ酸配列を欠いたアンタゴニスト誘導体は,合成オリゴマーから最初に調製されたり(図3及び4),また,ベクターに挿入される(図5)。」 3 第1の抗体等の役割について 訂正明細書には, 「図2に示す通り,一般に,C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体が選択され,標識抗体は,アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的である。しかし,図3に示す通り,これらの抗体の特異性を逆転させることも可能である。」(訂正明細書の段落【0018】,なお,訂正明細書の引用箇所における下線は当審に付記したものである。以下,同様である。) との記載に照らし,訂正発明の「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)」と反応する第1の抗体等は,アデニル酸サイクラーゼ活性ドメインであるw-PTH先端部分を認識する役割を果たすものと理解される。 そして,下記「8 阻害物質(PIN)のN末端について」で述べるように,訂正明細書の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」,すなわち,PINのN末端は,PTH(7)であり,PINの一つであるとされるPTH(7?84)断片のような断片は,PTH(1?6)の領域を有していないから,訂正発明の「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)」と反応する第1の抗体等と結合しないことは明白である。 よって,訂正発明の「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)」と反応する第1の抗体等は,訂正発明の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出すること」がないという機能を担っている。 4 第2の抗体等の役割について 訂正明細書の段落【0018】,【図2】及び【図3】を参酌すると,それぞれ次のようなものが図面に記載されている。 i)【図2】記載の事項 図面に記載の認識部位からしてN末端に結合する第1の抗体等に相当する標識(18)の結合したシグナル抗体(16),及び,固体支持体(14)に付着させた第2の抗体等に相当する捕捉抗体(12)がw-PTHと結合している状態が記載されている。 ii)【図3】記載の事項 図面に記載の認識部位からしてN末端に結合する第1の抗体等に相当する固体支持体(14)に付着させた第1の抗体等に相当する捕捉抗体(12),及び,第2の抗体等に相当する標識(18)の結合したシグナル抗体(16)がw-PTHと結合している状態が記載されている。 このように第2の抗体等は,w-PTHアッセイの線図である【図2】及び【図3】に記載されているように,第1の抗体等と共に用いられ,w-PTHをアッセイするのに用いられるものである。 また,w-PTHアッセイについて記載された「シグナル抗体を使用する場合,第1の抗体は以前としてN末端にて付着するが,第2の抗体はC末端にて付着する捕捉抗体の役割を果たす。」(訂正明細書の段落【0013】)との記載からみて,第2の抗体等の役割はw-PTHのC末端を認識することであると理解される。 さらに,訂正発明の「ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する」第2の抗体等は,訂正明細書で「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」であるとされるPTH(7?84)断片と結合することは明白であるから,第2の抗体等それのみでは,訂正発明の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出すること」がないという機能を持っていないことは明らかである。 以上のことから,第2の抗体等の役割はw-PTHのC末端を認識することであるといえ,訂正発明の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出すること」がないという機能を持つものではない。 5 w-PTH値について 訂正明細書には 「シグナル抗体または捕捉抗体のいずれかとして使用する場合,存在する全てのw-PTHに結合させるのに十分な抗体を加える。次に,第1の抗体を,存在するあらゆるw-PTHに結合させ,それによって複合体を形成させる。複合体を,好ましくはw-PTHのC末端にて,標識するために,第2の抗体および従来のイムノアッセイ標識,たとえば化学発光剤,測色剤,エネルギー移動剤,酵素,蛍光剤,および放射性同位元素を含む特異的結合標識が使用され,また,第1の抗体と実質的に同時に,あるいは第1の抗体に続いて,加えることができる。最終的に,従来の技術を使用して標識複合体の量を測定し,それによって,試料中のw-PTHレベルを算出する。」(訂正明細書の段落【0014】) 「[w-PTHイムノアッセイ] 本発明の好ましい態様は,図2および3に示す,しばしばサンドイッチアッセイと呼ばれる放射免疫測定法(IRMA)である。このようなアッセイ(10)で使用される要素としては,固体支持体(14)に付着させた捕捉抗体(12),およびそれに付着させた,標識(18)を有するシグナル抗体(16)を含む。図2に示す通り,一般に,C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体が選択され,標識抗体は,アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的である。・・・」(訂正明細書の段落【0018】) と記載され,図2には,訂正発明のアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体等に相当する「捕捉抗体(12)」と,訂正発明の(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする第1の抗体等に相当する「シグナル抗体(16)」の両者と結合するものをw-PTH値として検出している状態が図示されている。 このことからすると,訂正発明の第1の抗体等と第2の抗体等の両者に結合するものをw-PTH値として検出していることが理解される。 6 総PTH値及びPIN値について 訂正明細書には,総PTHについて, 「(本発明では,「総PTH」は,w-PTH(天然の主たるPTH受容体結合作動物質)とPIN(天然の主たるPTH受容体結合拮抗物質)との和を指す。)総PTHアッセイは,配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。PTHのアミノ酸7?38を検出することにより,このアッセイは,両者を検出することができる。」(訂正明細書の段落【0014】) と記載されている。なお,下記「8 阻害物質(PIN)のN末端について」で言及するようにこの箇所には誤訳がある。 そうすると,総PTHとは,w-PTHとPINの和であり,PTH(7?38)を検出することにより得られた値をいうものと解される。 また,PINとw-PTHの両者を検出するために,「配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出する」具体例として,「PTHのアミノ酸7?38を検出する」ことが記載されており,「配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出する」ことは,「PTHのアミノ酸7?38を検出する」ことであると解される。 このことから,訂正発明2等の「c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片」とは,PINのN末端領域,すなわち,前記PTH(7?38)を認識する抗体等であると解される。 また,PIN値は, 「PINを測定する際に,PINを直接測定することもでき,あるいは間接的に測定することもできる。最初にw-PTHを測定し,次いで総PTHを測定することにより,間接的測定を行うことができる。w-PTH値を総PTH値から減算することにより,PIN値が得られる。」(訂正明細書の段落【0014】) と記載されていることから,直接又は間接的に測定できるが,間接的に測定する場合は,w-PTH値を総PTH値から減算することにより,PIN値が得ることができる。 7 阻害物質(PIN)の意味について 訂正明細書には,PINについて次のような記載がある。 「本発明は,(配列番号2[PTH_(3)?_(84)])から(配列番号3[PTH_(34)?_(84)])までの間のペプチドであるところの或る大きな非w-PTHペプチド断片は,in vivoで,w-PTHの拮抗物質または阻害物質(PIN)の役割をするという発見を含む(図12参照)。換言すれば,w-PTHのPTH受容体への結合およびその後の生物学的活性は,このPINペプチド断片の存在による影響を受ける。PTH結合部位が遮断されるという点で,PTHまたはPTH類似体に関してPTH受容体を阻害することができる。」(訂正明細書の段落【0012】) 「PIN(天然の主たるPTH受容体結合拮抗物質)」(訂正明細書の段落【0014】) 図12には,■で表されるPTH(7?84)断片がインバースアゴニストとしての作用を有することが理解される。 このことからすると,PINとは,PTH受容体に結合する阻害性の拮抗物質の総称と理解され,PTH受容体の阻害についてしか訂正明細書に規定されていないから,インバースアゴニストとしての作用は有さないアンタゴニスト,すなわち,PTH受容体結合拮抗物質もPINに含まれ得る。 8 阻害物質(PIN)のN末端について 訂正明細書には,PINについて次のような記載がある。 「(本発明では,「総PTH」は,w-PTH(天然の主たるPTH受容体結合作動物質)とPIN(天然の主たるPTH受容体結合拮抗物質)との和を指す。)総PTHアッセイは,配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。PTHのアミノ酸7?38を検出することにより,このアッセイは,両者を検出することができる。」(訂正明細書の段落【0014】) ここで,「総PTHアッセイは,配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。」とあるが,次のことから,「PTHのN末端」とは,「w-PTH」,すなわち,PTH(1-84)のN末端を意味するものではないと解される。 i)配列番号4は,w-PTHのN末端からの8個のアミノ酸配列であり,「配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出する」との記載において,「PTHのN末端」をw-PTHのN末端と解すると矛盾が生じる。 ii)上記「6 総PTH値について」で述べたように総PTHとは,w-PTHとPINの和であり,PINは,w-PTHのN末端を有していないから,「PTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する」の「PTHのN末端」をw-PTHのN末端と解するとPINを検出できないことは明白である。 iii)訂正明細書には「PTHのアミノ酸7?38を検出することにより,このアッセイは,両者を検出することができる」と記載されており,PTH(7?38)により,PINとw-PTHの両者,すなわち,総PTHを検出できる断片である。このPTH(7?38)は,w-PTHのN末端,すなわち,PTH(1?6)を欠いており,「PTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する」の「PTHのN末端」がw-PTHのN末端をいうものでないことは明白である。 ここに,PTH(7?38)によりPINが検出できるとする記載があるから,PINのN末端の限界はPTH(7)であると解される。 iv)前記段落【0014】に対応する基準明細書の記載は 「A total PTH assay detects both PIN and wPTH by detecting the N-terminal end of PTH not at SEQ ID No. 4, the very end of the N-terminal.」(基準明細書6頁19?21行) であり, 「総PTHアッセイは,配列番号4ではない,すなわち,N末端のギリギリの終端ではないPTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。」(当審訳) と記載されている。配列番号4のようなw-PTHのN末端のギリギリの終端ではないようなPTHのN末端を検出することによりPINとw-PTHの両者が測定されることが記載されている。(なお,上記「第2 2(1)ア 訂正事項1について」で述べたように,「条約第3条(2)に規定する明細書,すなわち,国際出願の明細書を「基準明細書」という。また,「国際出願日における条約第3条(2)に規定する明細書,請求の範囲又は図面」を,「基準明細書等」という。以下,同様である。) (小括) 以上のことを総合すると,PTH(7?84)がPINであることを示す図12が訂正明細書に記載されているように,N末端がPTH(7)であるPINのデータが実際に示されていることに加え,「PTHのアミノ酸7?38を検出することにより,このアッセイは,両者を検出することができる。」(訂正明細書の段落【0014】)とPTH(7?38)によりPINが検出できるとする記載があるから,PINのN末端の限界はPTH(7)であると解される。 そして,「総PTHアッセイは,配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。」(訂正明細書の段落【0014】)とあるが,この検出の目的がPINを検出するということに照らせば,PINが検出できなければならず,当該記載は,「総PTHアッセイは,配列番号4のようなw-PTHのN末端のギリギリの終端ではなく,PINを検出できるN末端,すなわち,PTH(7)を含むPTHのN末端領域を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。」ものと解釈することができる。 第8 無効理由1に対する当審の判断 平成23年法律63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる(以下,「平成23年改正前」という。)特許法第123条第1項第1号には,「特許出願(外国語書面出願を除く。)」とあるから,これを理由として無効とすることはできない。 なお,請求人の無効理由は,同法同条同項第5号に該当するとの主張とも解することができるので,念のため,これについても検討する。 1 無効理由1-1について 本件特許に係る外国語特許出願に係る国際出願日における国際出願の明細書,及び特許請求の範囲又は図面,すなわち,基準明細書等には,次の事項が記載されている。 なお,翻訳は当審で翻訳したものであり,参考までに,特許明細書の対応する段落番号を付すこととする。 基準明細書等には, 「シグナル抗体を使用する場合,第1の抗体は以前としてN末端にて付着するが,第2の抗体はC末端にて付着する捕捉抗体の役割を果たす。」(基準明細書6頁11?13行 【0013】) と記載されており,基準明細書等からは,上記「第7 4 第2の抗体等の役割について」で言及したのと同様に,第2の抗体等の役割はw-PTHのC末端を認識するにあることが把握される。 基準明細書等には,実施例として, 「{固相ヤギ抗(39?84)PTH抗体}--{w-PTH}--{125-I-ヤギ免疫化学反応ヤギ抗(1?6)抗体}」(基準明細書10頁下から4行?下から3行 段落【0022】) が記載されており,第2の抗体等に相当するw-PTHのC末端を認識する{固相ヤギ抗(39?84)PTH抗体}と第1の抗体等に相当する{125-I-ヤギ免疫化学反応ヤギ抗(1?6)抗体}により,w-PTHが検出されていることが示されている。 このことから,少なくとも基準明細書等には,w-PTHのC末端を認識する抗体として,PTH(39?84)を認識する抗体が記載されている。 PTH(39?84)を認識する抗体は,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片として基準明細書等(例えば,【図12】)に記載されたPTH(7?84)を認識することは自明なことであり,w-PTHのC末端を認識する抗体のみでは,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出すること」がないという機能を持っていないことは明らかである。 他方,第1の抗体等については, 「図2に示す通り,一般に,C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体が選択され,標識抗体は,アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的である。」(基準明細書9頁14?17行 【0018】) と記載されており,アデニル酸サイクラーゼ活性化ドメイン,すなわち,PTHの活性化部位を含むw-PTHのN末端先端部分のペプチド配列に特異的な抗体として第1の抗体等が記載されている。 「アデニル酸サイクラーゼ活性化ドメイン」は,PTHの活性に関与する領域であって,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」がこの領域を含むことはあり得ない。よって,第1の抗体等は「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」が有していない領域を認識する抗体であるといえ,訂正発明の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」を検出しないという機能は,第1の抗体が担っていることは明白である。 そうすると,w-PTHのN末端を認識する第1の抗体等とw-PTHのC末端を認識する第2の抗体等を使用する「ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイ」において,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン」を認識する機能を有するのは第1の抗体等のみであって,第2の抗体は,w-PTHであれば必ず有しているC末端を認識するためのものと解される。 そうであるなら,基準明細書等に第2の抗体等の態様として記載された,PTH(39?84)を認識する抗体を,訂正発明のごとく,「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片」としたところで,w-PTHのC末端を認識するという機能に変わりは無く,新たな技術的事項を導入することにはならない。 以上のことから,訂正発明の「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片」とする事項は,基準明細書等に記載された事項の範囲内の補正であって,平成23年改正前の特許法第123条第1項第5号の規定により無効とすることはできない。 2 無効理由1-2について (1) 第1の抗体等について 本件訂正請求により,第1の抗体等は,訂正発明1?12及び訂正発明14?26は,「a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片」 と訂正され,訂正発明13は, 「a)Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met (配列番号7)からなるラット完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のAla-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTH)と反応し,かつ(1 ?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片」 と訂正された。 よって,訂正前の請求項1にあったようなアミノ酸1-8,すなわち,PTH(7)やPTH(8)を含む領域を認識するような実施例にない選択肢は削除された。 よって,訂正発明1?26は,第1の抗体等について基準明細書等に記載の実施例のとおりのものとなったので,無効とすることはできない。 (2) 第2の抗体等について 上記「第8 1 無効理由1-1について」で言及したように,「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片」とする事項は,基準明細書等に記載された事項の範囲内の補正であって,無効とすることはできない。 (3) 第1の抗体等と第2の抗体等の組合せについて 基準明細書等は, 「本発明の好ましい態様は,図2および3に示す,しばしばサンドイッチアッセイと呼ばれる放射免疫測定法(IRMA)である。このようなアッセイ(10)で使用される要素としては,固体支持体(14)に付着させた捕捉抗体(12),およびそれに付着させた,標識(18)を有するシグナル抗体(16)を含む。図2に示す通り,一般に,C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体が選択され,標識抗体は,アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的である。」(基準明細書11?17行 段落【0018】) と記載されているように,図2及び3をみれば,訂正発明の第1の抗体等に相当する「アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的」な「標識抗体」と,訂正発明の第2の抗体等に相当する「C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体」を組合わせることは基準明細書等に記載されていることは明白である。 そして,上記「(1) 第1の抗体等について」及び「(2) 第2の抗体等について」で言及したように,これらの抗体等に含まれる選択肢について基準明細書等に記載された事項の範囲内の補正であるのだから,第1の抗体等と第2の抗体等を組合わせに含まれる選択肢もまた,基準明細書等に記載の範囲内のものといえる。 さらに,基準明細書等には, 「人間において,生物学的に活性な循環しているPTHレベルの測定が行われてきた。1つの重大な問題は,PTHが,通常は10?65pg/mlという低レベルで存在することである。極めて循環レベルが低いことに加えて,PTHが不均質性であることおよびその多くの循環断片があるという問題がある。多くの場合,イムノアッセイは,循環PTH断片による実質的且つ有意な阻害に直面している。たとえば,幾つかの市販されているPTHキットは,非(1?84)PTH断片と,ほぼ100%の交差反応を示す(LePageの論文を参照)。」(基準明細書3頁12?18行) と記載されている。 訂正発明1?26は,このPTHキットの改良であるから,キットとしての態様が基準明細書等に記載されていることは明らかである。 よって,訂正発明1?26は,第1の抗体等について基準明細書等に記載された事項の範囲内のものであり,無効とすることはできない。 第9 無効理由3に対する当審の判断 1 無効理由3-1について 訂正発明1?12及び訂正発明14?26の第1の抗体等は 「a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片」 であり,訂正発明13の第1の抗体等は 「a)Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met (配列番号7)からなるラット完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のAla-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片」 である。 訂正明細書記載の実施例(段落【0026】参照)のごとく,これらのPTH(1?6)を免疫原として使用すれば当業者に過度な実験を強いることなく簡単に取得できる。そして,第1の抗体等は,上記「第7 8 阻害物質(PIN)のN末端について」に記したように,PINのN末端の限界はPTH(7)であり,例えば阻害性非(1-84)副甲状腺ホルモン断片であるPTH(7-84)等のPINに結合することが無いことは明らかである。 よって,訂正発明は実施可能ではない発明を含むものではなく,特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。 2 無効理由3-2について 上記「第9 1 無効理由3-1について」で言及したように,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」,すなわち,PINを検出しない第1の抗体等は訂正明細書に実施可能な程度に記載されているといえるから,第1の抗体等及び第2の抗体等のセットもまた,訂正明細書に実施可能な程度に記載されているといえ,特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。 3 無効理由3-3について 上記「第9 1 無効理由3-1について」で言及したように,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」,すなわち,PINを検出せず,PTH(1?6)を特異的に認識する第1の抗体等は,訂正明細書に実施可能な程度に記載されているといえ,特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。 4 無効理由3-4について 上記「第9 1 無効理由3-1について」で言及したように,訂正明細書の記載に基づき,w-PTH(1?84)を検出し,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」,すなわち,PINを検出しない第1の抗体又は抗体断片を得ることは可能である。そうであるなら,「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片」と組み合わせて用いることにより,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定する」ことは,可能であるといえる。 よって,訂正明細書は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。 5 無効理由3-5について 上記「第9 1 無効理由3-1について」で言及したように,訂正発明の第1の抗体等の作成方法は,訂正明細書に実施可能なように記載されている。 そして,第1の抗体等が得られるのであれば,その抗体が認識する抗原決定基からみて,全PTHアッセイに用いた場合,技術課題が解決されることが予期され,そして,その効果も予測できるといえる。 加えて,訂正明細書の【図11】において示されるように,訂正発明1によるw-PTHアッセイが,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片であるPTH(7?84)を検出しないことが示されている。 さらに,実際にヒトの血清を用いた実験が訂正明細書の段落【0029】に示されている。この実験は,健常者の血清試料(w-PTH(1?84)と阻害物質(PIN)である,PTH(7?84)を含む。)を使用し,PINを検出してしまう従来技術であるI-PTHアッセイと,訂正発明に係るw-PTHアッセイの検出値を比較した対比実験であり,その結果は,【図5】に記載されているように,全ての試料で,従来のI-PTHアッセイに比較して,訂正発明に係るw-PTHアッセイが低い値となっている。これは,訂正明細書の段落【0009】記載の阻害物質(PIN)を検出する従来のアッセイによる問題点が,訂正発明に係るw-PTHアッセイにより解消されたことを示すものである。 したがって,訂正発明の第1の抗体等についての情報及び実験は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たす程度に訂正明細書に記載されているといえる。 6 無効理由3-6について 請求人は「全PTHの短い半減期」について言及するが,本件明細書の【図5】では,w-PTHが□の記号で示されており,特許発明1に係るw-PTHアッセイにより,全PTH,すなわち,w-PTHが測定されていることがわかる。 全PTHの半減期が短いことにより起きえる不都合は,従来のI-PTHアッセイにおいても起きる現象であり,従来のI-PTHアッセイの手法を参考に適宜工夫すれば,請求人の主張するような「サンプル単離,サンプル調製及びサンプル測定の間の時間における小さな偏差」があるとしても,実施できることは明白である。 よって,訂正発明は,訂正明細書の発明の詳細な説明に実施できる程度に記載されているのであるから,特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。 7 無効理由3-7について 免疫原として「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)」を認識する抗体が第2の抗体であるから,免疫原として「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)」を使うことは自明な事項である。 そして,アフィニティ精製を含む第1の抗体の作成手法について訂正明細書の段落【0023】?【0027】に記載があり,当業者がその手法を参酌すれば第2の抗体を作成できることは明白である。 よって,訂正発明は,訂正明細書の発明の詳細な説明に実施できる程度に記載されているといえ,特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。 8 無効理由3-8について 訂正明細書には, 「本発明の好ましい態様は,図2および3に示す,しばしばサンドイッチアッセイと呼ばれる放射免疫測定法(IRMA)である。このようなアッセイ(10)で使用される要素としては,固体支持体(14)に付着させた捕捉抗体(12),およびそれに付着させた,標識(18)を有するシグナル抗体(16)を含む。図2に示す通り,一般に,C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体が選択され,標識抗体は,アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的である。」(訂正明細書の段落【0018】) と記載されている。 よって,訂正発明の第1の抗体等に相当する「アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的」な「標識抗体」と,訂正発明の第2の抗体等に相当する「C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体」を組合わせたものが記載されていることは,図2及び図3をみても明らかである。 よって,第1の抗体等と第2の抗体等を組合わせることは訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていることから,特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。 第10 無効理由2に対する当審の判断 1 無効理由2-1について 請求人の主張する特許法第36条第6項第1号に関する無効理由の根拠は,「実施可能要件に関する(3-5)-(3-8)の主張」(審判請求書28頁2行)に基づくものである。 これらは,上記「第4」において,「無効理由3-1」?「無効理由3-4」として整理した無効理由の主張に相当し,これらの無効理由により無効とすることができないことは,上記「第9 1 無効理由3-1について」?「第9 4 無効理由3-4について」で述べたとおりである。 よって,特許法第36条第6項第1号により,本件特許を無効とすることはできない。 2 無効理由2-2について 訂正明細書には, 「本発明の好ましい態様は,図2および3に示す,しばしばサンドイッチアッセイと呼ばれる放射免疫測定法(IRMA)である。このようなアッセイ(10)で使用される要素としては,固体支持体(14)に付着させた捕捉抗体(12),およびそれに付着させた,標識(18)を有するシグナル抗体(16)を含む。図2に示す通り,一般に,C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体が選択され,標識抗体は,アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的である。」(訂正明細書の段落【0018】) と記載されている。 よって,訂正発明の第1の抗体等に相当する「アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的」な「標識抗体」と,訂正発明の第2の抗体等に相当する「C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体」を組合わせたものが記載されていることは,図2及び図3をみても明らかである。 よって,第1の抗体等と第2の抗体等を組合わせることは訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されており,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 第11 無効理由4に対する当審の判断 1 無効理由4-1について 訂正発明13について,特許請求の範囲に記載の「配列番号8」が本件明細書に記載されておらず,また,ラット34?84の配列がどのようなものかも本件明細書に記載がない。 しかしながら,乙6の(乙6-1)に記載されているように,ラットPTHの全配列は技術常識となっていたものといえ,ラット34?84の配列が訂正明細書に記載されていなくとも訂正発明13は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものといえる。 2 無効理由4-2について 「抗体断片」という用語は,例えば,下記刊行物Iに記載のように,本件特許の出願前から広く使用されている用語であって,定義が訂正明細書にないからといって,明確性を欠くというものではない。 よって,抗体断片を特定事項として含む訂正発明は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものといえる。 刊行物I:特表平10-500575号公報 (刊I-1)「特定のエピトープを認識する抗体断片は,公知の方法によって作ることができる。例えば,そのような断片は,それらに限定されないが,抗体分子のペプシン消化によって作ることができるF(ab’)_(2)断片およびF(ab’)_(2)断片のジスルフィド架橋を還元することにより得られるFab断片が挙げられる。あるいは,Fab発現ライブラリーを作製して(Huseら,1989,Science,246:1275-1281),所望の特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速かつ容易に同定することができる。」(24頁4?10行) 第12 無効理由5-1に対する当審の判断 上記したように無効理由1?4は,いずれも理由がなく,訂正発明1?26は,上記「第3 訂正された発明」に記載したとおりの事項により特定される発明であると認めることができる。 1 訂正発明1について (1)甲8記載の発明 甲8に 「我々は以前,インタクトな副甲状腺ホルモン(I-PTH)のためのニコルスアッセイが,PTHの非(1-84)分子型と反応することを示した。この型は,カルボキシ末端断片として振る舞い,腎不全において貯留し,測定された免疫反応性40-60%を占める。我々はこれが他の商業的二部位I-PTHアッセイにおいても一般的な現象であるかどうかをみようと思った。よって我々は,比較した三つの商業的キット[ニコルス(NL),インクスター(IT),およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)]の活性を比較し,112人の腎不全患者のI-PTHを測定し,hPTH(1-84)および非(1-84)PTHを,10-100pmol/Lの濃度のI-PTHの尿毒症患者の血清サンプルのHPLCプロファイル上で検出した。」(甲8-2) と記載されている。 このことから,甲8の目的が,ニコルスアッセイ,PTHの非(1-84)分子型と反応することが知られており,これが,他のインクスター(IT),およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)のキットでも起きえるかを調べることを目的としていることが把握できる。 ここで,「ニコルス(NL),インクスター(IT)およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)のアッセイキット」は,「尿毒症患者の血清サンプルのHPLCプロファイル上で検出した」とあるから,尿毒症患者,すなわち,ヒトを測定対象としており,検出されるPTHは,ヒトPTHであることは自明な事項である。 また, 「これら三つのアッセイは,使用される捕捉抗体およびシグナル抗体のタイプ(アフィニティ精製ゴートポリクローナル,抗カルボキシ末端捕捉抗体および抗アミノ末端シグナル抗体),トレーサー(^(125)I)・・・(略)・・・。」(甲8-4) と記載されていることから,抗カルボキシ末端捕捉抗体と抗アミノ末端シグナル抗体から構成され,抗アミノ末端シグナル抗体は,^(125)Iのシグナルで標識されていることが理解される。 また,測定されるデータは摘記(甲8-2)に「112の尿毒症試料における三つのアッセイで測定されたI-PTH濃度は,非常に関連し(r2≧0.89,P<0.0001),そしてNLを用いて測定された値は,平均してITより23%高かった。」と記載されているように,I-PTHの検出対象は濃度であることがわかる。 以上の事項を整理すると,甲8には,次の発明(以下,「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。 「インタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)をアッセイするニコルス(NL),インクスター(IT)およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)のアッセイキットであって, a)^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体と b)抗カルボキシ末端捕捉抗体 を含み, 尿毒症患者試料中のインタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定するキット。」 (2) 対比 訂正発明1と甲8発明を対比する。 ア ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットについて 甲8発明の「インタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)」の「インタクト」とは,「そのままの」という意味であるから,切断などされていないそのままのヒト副甲状腺ホルモンと解されるが,甲8に「これらの結果は,ほとんどの二部位I-PTHアッセイは,非(1-84)PTH物質と交差反応することを示唆」(甲8-2)すると記載されているように,訂正発明1の「ヒト完全型副甲状腺ホルモン」といえないような断片も検出される。 よって,甲8発明の「インタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定するキット」と,訂正発明の「ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキット」とは,ヒト副甲状腺ホルモンをアッセイするキットという点で共通する。 イ 第1の抗体等について 甲8発明の「a)^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」は,「抗アミノ末端」と記載されているから,PTHのN末端側の配列を認識する抗体であるといえるが,甲8に,「現在入手可能なアミノ末端が明らかな抗体のほとんどが,PTH分子の14-34領域に位置する1以上のエピトープに反応する(21)」(甲8-5)及び「図3に示すように,hPTH(1-84)及びhPTH(7-84)は,ニコルスアッセイではほぼ等モルで反応した。」(甲8-8)と記載されているように,訂正発明1の「Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)」と反応するものでは無いことは明白である。 よって,甲8発明の「a)^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」と,訂正発明1の「a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片」とは,「所定のN末端側配列に結合する標識された第1の抗体又は抗体断片」という点で共通する。 ウ 第2の抗体等について 訂正発明1の「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)」は,「第2の抗体はC末端にて付着する捕捉抗体の役割を果たす。」(訂正明細書の段落【0013】)との記載からみて,C末端側に結合する抗体であるが,訂正発明1の「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する」かは不明である。 よって,甲8発明の「b)抗カルボキシ末端捕捉抗体」と,訂正発明1の「b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片」とは,「所定のカルボキシ末端側を認識する第2の抗体又は抗体断片」という点で共通する。 エ 生物学的サンプルについて 甲8発明の「尿毒症患者試料」は,訂正発明1の「生物学的サンプル」に相当することは明白である。 オ ヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定することについて 上記「ア ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットについて」で言及したように,甲8発明の「インタクトなヒト副甲状腺ホルモン」が訂正発明1の「ヒト完全型副甲状腺ホルモン」ではないことを除き,甲8発明は「インタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定する」ことは,ホルモン濃度をホルモン量に換算できるから,訂正発明1の「生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定する」ことに相当する。 カ 阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することがないことについて 訂正発明1の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」のアミノ酸配列の範囲は,上記「第7 8 阻害物質(PIN)のN末端について」で述べたように,PTH(25?34)の領域を必ず含み,C末端は,PTH(7?84)断片のようにC末端はPTH(84)であってもよく,N末端の限界はPTH(7)である。 他方,甲8発明の「キット」は, 「現在入手可能なアミノ末端が明らかな抗体のほとんどが,PTH分子の14-34領域に位置する1以上のエピトープに反応する(21)。14-34領域から比較的離れた,PTHのアミノ末端での少数のアミノ酸の切断は,それゆえに,これらのアッセイにおいて免疫反応性を妨げなかった。」(甲8-5) 及び 「図3に示すように,hPTH(1-84)及びhPTH(7-84)は,ニコルスアッセイではほぼ等モルで反応した。」(甲8-8) との記載からみて,PTH(7?84)のような,「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片」も検出してしまうことは明白である。 よって,甲8発明の「キット」は,訂正発明1の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出すること」がないという特性を備えていない。 キ 小括 以上の事項を総合すると,両発明の間には,次の(一致点)並びに(相違点1)及び(相違点2)がある。 (一致点) 「ヒト副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって, a)所定のN末端側配列に結合する標識された第1の抗体又は抗体断片と, b)所定のカルボキシ末端側を認識する第2の抗体又は抗体断片と を含み, 生物学的サンプル中のヒト副甲状腺ホルモン量を測定するキット。」 (相違点1) 所定のN末端側配列に結合する第1の抗体等及びヒト副甲状腺ホルモンのアッセイするためのキットが,訂正発明1では「a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって,該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し,かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする,標識された第1の抗体又は抗体断片」であり,当該第1の抗体等が「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出すること」がない,「ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアッセイするためのキット」であるのに対して,甲8発明は,「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」であり,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出してしまい,厳密にはヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットとはいえない点。 (相違点2) 所定のカルボキシ末端側配列に結合する第2の抗体等が,訂正発明1では「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片」であるの対して,甲8発明は,「抗カルボキシ末端捕捉抗体」ではあるが,アミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識するか不明な点。 (3)検討 ア (相違点1)について (ア)甲8発明の解決すべき課題 甲8には 「レセプターに結合することにより,非(1-84)PTHは,それゆえ,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用し,腎不全の患者でみられる見かけ上のPTH抵抗性(および随伴するPTH分泌の増加)に寄与しているかもしれない(7-12)。更なる研究が,この最後の点を解明することおよび校正物質における違いの効果を評価することが必要である。というのも我々はすでに,大きな非(1-84)PTH断片が,種々のI-PTHアッセイにより異なって測定されるということを示している。」(甲8-6) と記載されているように,非PTH(1-84)がアンタゴニストとして作用する可能性も含めて,更なる研究が必要とされていることが理解される。そして, 「大きな非PTH(1-84)断片が商業的入手可能な3つのI-PTHアッセイにより測定されている」(甲8-6) と記載されており,しかも,非PTH(1-84)断片の患者血清中有の量は, 「我々はすでに,健康な人および尿毒症患者からの血清をHPLCで分画した場合に,二コルス二部位I-PTHアッセイによって二つの免疫反応性ピークを検出することが出来たことを示している(18,19)。1つのピークは,合成hPTH(1-84)と共に移動することが示され,そして二つ目の,より親水性のピークは,腎不全において貯留し,これらの患者における総免疫反応の40-60%を占め,それに比較して健康な人においては10-20%である。」(甲8-3) と,決して少ない量ではないことが理解される。 このような問題を解決し, 「「真の」I-PTHアッセイの開発が,望ましい目標」(甲8-7) という望ましい目標に到達することが,甲8発明の解決すべき課題であることが甲8から把握できる。 また, 「現在入手可能なアミノ末端が明らかな抗体のほとんどが,PTH分子の14-34領域に位置する1以上のエピトープに反応する(21)。14-34領域から比較的離れた,PTHのアミノ末端での少数のアミノ酸の切断は,それゆえに,これらのアッセイにおいて免疫反応性を妨げなかった。・・・(略)・・・,どのキットについても,この研究においてテストしたhPTH(7-84)フラグメントのような,まさに最初のN末端アミノ酸の欠損したフラグメントをチェックしなかったようだ。」(甲8-5) と記載されており,甲8発明の「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」が,「hPTH(7-84)フラグメントのような,まさに最初のN末端アミノ酸の欠損したフラグメント」を検出しないという問題についても甲8から認識できる。 (イ)図2の記載 甲8には,図2(甲8-10)において,尿毒症患者の血清で,標準として添加された左矢印のPTH(7?84)の位置付近から高速クロマトグラフィーの検出値が得られている。この図2からは,標準として加えられた合成PTH(7?84)の位置付近から検出値が得られたというだけで,高速クロマトグラフィーで検出されたものが,PTH(7?84)とまではいえない。 また,図2のグラフは,標準として加えられた合成PTH(7?84)の位置からピークが若干ずれている。 しかしながら,甲8の図3に,ニコルス,インクスター及びDSLのいずれのアッセイも,hPTH(7-84)と反応することが示されており, 「どのキットについても,この研究においてテストしたhPTH(7-84)フラグメントのような,まさに最初のN末端アミノ酸の欠損したフラグメントをチェックしなかったようだ。」(甲8-5) と特にhPTH(7?84)に注目した記載があり, 「まず,非(1-84)PTHピーク中で移動している分子実体は,おそらく,アデニル酸サイクラーゼ活性化に必須である極めて最初のN末端アミノ酸の少なくとも幾つかを欠失したものである。」(甲8-6) と記載されているのであるから,甲8に接した当業者であれば,患者血清にPTH(7?84)が存在するかもしれないという強い示唆を受けるものといえる。 そして, 甲8には, 「レセプターに結合することにより,非(1-84)PTHは,それゆえ,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用し,腎不全の患者でみられる見かけ上のPTH抵抗性(および随伴するPTH分泌の増加)に寄与しているかもしれない(7-12)。更なる研究が,この最後の点を解明することおよび校正物質における違いの効果を評価することが必要である。というのも我々はすでに,大きな非(1-84)PTH断片が,種々のI-PTHアッセイにより異なって測定されるということを示している。」(甲8-6) と記載され,「更なる研究」の必要性が示されている。 以上のことを総合すると,甲8からは,患者血清中にPTH(7?84)が含まれているとまでいえないとしても,患者血清にPTH(7?84)が存在するかもしれないという示唆に基づき,更に研究し,そのとおりであったことを確かめることは,当業者が何の創作性もなくなし得る,単なる確認事項に過ぎない。 (ウ)甲8発明の「抗アミノ末端シグナル抗体」の改良 甲8には, 「レセプターに結合することにより,非(1-84)PTHは,それゆえ,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用し,腎不全の患者でみられる見かけ上のPTH抵抗性(および随伴するPTH分泌の増加)に寄与しているかもしれない(7-12)。」(甲8-6) と記載されており,非(1-84)PTHがPTHの生理学的アンタゴニストになるかもしれないという可能性が示唆されており,かつ,腎不全患者の見かけ上のPTH抵抗性という病態についての寄与への可能性も示唆されている。実際,上記「第7 2 iii)PTH(7?34)又はPTH(7?84)はアンタゴニストであること」に記したように,第1優先日前から,PTH(7?84)がアンタゴニストであることが周知の事項となっていた。 さらに,甲8には, 「現在入手可能なアミノ末端が明らかな抗体のほとんどが,PTH分子の14-34領域に位置する1以上のエピトープに反応する(21)。14-34領域から比較的離れた,PTHのアミノ末端での少数のアミノ酸の切断は,それゆえに,これらのアッセイにおいて免疫反応性を妨げなかった。」(甲8-5) と記載されているように,甲8発明の「ニコルス(NL),インクスター(IT)およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)のアッセイキット」の問題が「抗アミノ末端シグナル抗体」にあるという認識があり, 「PTHの一番端のN端部分に対する抗体が,生成されないと考える明らかな理由がないことから,「真の」I-PTHアッセイの開発が,望ましい目標として残っている。」(甲8-7) とPTHの一番端のN端部分に対する抗体を作成するという,甲8発明の「ニコルス(NL),インクスター(IT)およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)のアッセイキット」が有する課題を解決するための手段の示唆までなされている。 以上のことから,甲8発明において,甲8から把握される患者血清にPTH(7?84)が存在するかもしれないという示唆に基づきそれを確かめ,PTHの一番端のN端部分に対する抗体を作成するという示唆に基づき, i)アンタゴニストであることが周知のPTH(7?84)と反応することなく, ii)「「真の」I-PTH」とのみ,すなわち,PTH(1?84)とのみ反応する, という特性を有する抗体を作成すべく,PTH(7?84)が有しておらず,PTH(1?84)のみが有する領域であるPTH(1?6)に注目して,PTH(1?6)に対する抗体を甲8発明の「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」とすれば, 該抗体は,抗原決定基の大きさは,アミノ酸4?6個であるという技術常識(上記「第7 1 抗原決定基の大きさと,それを認識する抗体について」参照)に鑑み,PTH(1?6)と反応し,かつPTH(1?6)のうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする抗体となることは自明なことであるから, 当業者にとって,(相違点1)に記した訂正発明1の特定事項のごとくすることは,容易になし得たことといえる。 イ (相違点2)について 訂正明細書には,訂正発明の「前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84」から認識する第2の抗体等の役割は上記「第7 4 第2の抗体等の役割について」で述べたように,w-PTHのC末端を認識することであるといえる。そして,第2の抗体等がアミノ酸配列34からの配列を認識するある点について,臨界的技術的意義が記載されておらず,第1優先日当時の技術常識を参酌しても,w-PTHのC末端を認識するということを超えて格別な技術的意義があるとは認められない。 他方,甲8には 「図2は,3つのアッセイにおいて2つの異なるI-PTH濃度(上のクロマトグラムは?60pmo1/L,下のクロマトグラムは?100pmo1/L)で観察される典型的なHPLCプロファイルを示す。3つのアッセイは,免疫学的に反応性のPTHの2つのピークと反応した。大きいほうのより疎水性のピークは,合成hPTH(1-84)(右矢印)と共に移動した。」(甲8-8) と記載されており,甲8発明の「ニコルス(NL),インクスター(IT)およびダイアグノスティックシステムラボラトリーズ(DSL)のアッセイキット」のいずれもが,非(1-84)PTHも検出してしまうが,hPTH(1-84)は,確実に検出していると理解され,甲8発明の「抗カルボキシ末端捕捉抗体」は,真の意味での完全型副甲状腺ホルモン,すなわち,PTH(1?84)を検出できている。 そして,上記「ア(相違点1)について」で述べたように,甲8発明において,PTH(1?6)に対する抗体を甲8発明の「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」とすることにより,訂正発明1のごとく「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出すること」のないものとなるから,甲8発明の「抗カルボキシ末端捕捉抗体」は,完全型副甲状腺ホルモンであれば必ず有するPTHのカルボキシ末端であるPTH(84)を含む適宜な領域を捕捉する抗体であればよいこととなる。 そうすると,甲8発明において,完全型副甲状腺ホルモンであれば必ず有するPTHのカルボキシ末端を捕捉すべく,甲8発明の「抗カルボキシ末端捕捉抗体」を,訂正発明1のごとく「ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する」ものとすることは,当業者が適宜案出し得る設計的事項といえる。 ウ 訂正発明1の効果について 訂正明細書から,次のような効果が把握できる。 (効果1) 「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく,生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定する」(訂正発明1の発明特定事項)ことができる。 (効果2) 「本発明は,副甲状腺機能亢進等の副甲状腺疾患の患者を,正常状態または非罹病状態と識別する」(段落【0001】)ことができる。 (効果3) 図7及び段落【0030】からみて,慢性尿毒症患者の診断に寄与することができる。 (効果4) 非w-PTHペプチド断片の値と,w-PTHの値と,またはこれらの値の組み合せとのいずれかの値を比較するか,またはこれらを独立に使用することにより,副甲状腺および骨関連の疾患状態を識別すること,ならびにこのような状態と正常な状態とを識別する」(段落【0001】)ことができる。 (効果5) 図12に,PTH(7?84)のみを加えた(■)のグラフが記載されおり,w-PTHであるPTH(1-84)を加えなくともカルシウムの変化が起きていることが把握できる。これは,PTH(7?84)がインバースアゴニスト活性を有していることを示すものである。 (なお,被請求人は,平成25年9月13日付け訂正請求書38頁1行?39頁23行において強調している。) (ア)(効果1)について 「第12 1(3)ア (相違点1)について」で言及したように,甲8発明において,甲8から把握される患者血清にPTH(7?84)が存在するかもしれないという示唆,PTHの一番端のN端部分に対する抗体を作成するという示唆に基づき,アンタゴニストであることが周知のPTH(7?84)と反応することなく,インタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)とのみ反応する,PTH(1?6)に対する抗体を甲8発明の「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」とすれば,抗体の特性からみて,(効果1)のごとくの効果が奏されることは明らかである。 そうすると,(効果1)は,甲8及び周知の事項から当業者が予測できる範囲内のものといえる。 (イ)(効果2)?(効果4)について 甲8発明は,インタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)をアッセイするものであり,例えば,甲1に「PTH濃度の直接決定が,副甲状腺機能の最良の試験である」(甲1-1)との記載にあるように,副甲状腺機能の診断にPTH濃度を測定することが周知の事項であるから,(効果2)のように,副甲状腺機能亢進等の副甲状腺疾患の患者を,正常状態または非罹病状態と識別するのに適用し得ることは明白である。 また,甲8発明は,「尿毒症患者試料中のインタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定する」ものであるから,(効果3)のような尿毒症の患者の診断に適用できることは,自明なことである。 さらに,PTHと骨関連の疾患との関係は,例えば下記刊行物Jに記載のように第1優先日前から周知であって,(効果4)のように,骨関連の疾患状態を識別できることは,甲8に接した当業者であれば予測し得るものである。 刊行物J:特開平10-236977号公報 (刊J-1)「【0002】 【従来の技術】副甲状腺ホルモン(PTH)は骨代謝における重要なホルモンの一つとして知られている。」 (ウ)(効果5)について 確かに,訂正明細書の図12からみて,PTH(7?84)がアンタゴニストではなく,インバースアゴニストであることが解明されている。 しかしながら,上記「第12 1(3) ア (相違点1)について」に記したように,PTH(1?6)に注目して,PTH(1?6)に対する抗体を甲8発明の「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」とすることで,(相違点1)に記した訂正発明1の発明特定事項のごとく構成すれば,PTH(7?84)のような断片が検出されなくなることは自明なことである。 甲8において,「PTHの生理学的アンタゴニストとして作用」(甲8-6)するものとして示唆されたPTH(7?84)がインバースアゴニストであることが判明しようがしまいが,両者は阻害剤であることには違いは無く,前記したように甲8発明を構成すれば,PTH(7?84)は検出されないのだから,診断等に影響を与えることはない。 せいぜい,(効果5)は、阻害の機作がアンタゴニストではなくインバースアゴニストであったことを解明しただけのものである。 (エ)小括 よって,(効果1)?(効果4)は,甲8及び周知の事項から当業者が予測できる範囲内のものといえ,格別顕著なものともいえない。 また,(効果5)は,訂正発明1の特定事項と何ら関連しない事項である。 (4)訂正発明1についてのむすび 以上のことから,訂正発明1は,甲8に記載された発明及び上記周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 2 訂正発明2について (1)対比 訂正発明2と甲8発明を対比すると,上記「第12 1 訂正発明1について(2) 対比」に記した対比事項に加えて,次の対比事項がある。 ア モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体について 甲8発明の「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」は,モノクローナルともポリクローナルとも甲8に記載されていない。 しかしながら,抗体試薬は,ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体としてしか,取得する手法がないから,甲8発明の「^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」が,これらのいずれかであることは自明なことであって,訂正発明2の第1の抗体等が「モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体」に相当することは明白である。 イ 第3抗体等について 上記「第7 総PTH値及びPIN値について」で述べたように,訂正明細書の総PTHアッセイは,配列番号4ではなく,PTHのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。」(段落【0014】)とは,PINを検出するという機能に照らせば,「総PTHアッセイは,w-PTHの配列番号4のN末端,すなわち,PTH(1)ではなく,PINのN末端を検出することにより,PINとw-PTHの両者を検出する。」ものと解される。 訂正発明2の「c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片」とは,訂正発明2の「生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量PIN値を検出する」との機能及び上記段落【0014】の記載に照らし,「c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのPINのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片」と解することができる。 そうすると,甲8発明は,訂正発明2の第3の抗体等を具備していないことは明白である。 ウ 生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量について 上記「第7 6 総PTH値及びPIN値について」に記したように,訂正発明2の「生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量」,すなわち,総PTHは,訂正発明の第3抗体等で検出される値であるから,第3の抗体等を具備していない甲8発明が,これを測定していないことは明白である。 エ 阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量について 甲8発明は,訂正発明2の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量」を直接測定していないし,また,上記「第7 6 総PTH値及びPIN値について」で述べたように,w-PTH値を総PTH値から減算することにより間接的に得るものでもない。 オ 小括 以上のことを総合すると,両発明は,上記「第12 1(2)キ 小括」に記した(相違点1)及び(相違点2)に加えて,(相違点3)を有する。 (相違点3) 訂正発明2が,「c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片をさらに含み」,「それにより,生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と,阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定」するのに対して,甲8発明は,かかる構成を具備していない点。 (2)検討 (相違点1)及び(相違点2)については,「第12 1(3)検討」で述べたとおりである。 ア 相違点3について また,(相違点3)について検討すると,甲8において, 「どのキットについても,この研究においてテストしたhPTH(7-84)フラグメントのような,まさに最初のN末端アミノ酸の欠損したフラグメントをチェックしなかったようだ。」(甲8-5) とPTH(7?84)の断片に特に注目しており, 甲8には, 「レセプターに結合することにより,非(1-84)PTHは,それゆえ,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用し,腎不全の患者でみられる見かけ上のPTH抵抗性(および随伴するPTH分泌の増加)に寄与しているかもしれない(7-12)。」(甲8-6) と記載されているように,非(1-84)PTHがアンタゴニストになるとの可能性が示唆されている。かつ,腎不全患者の見かけ上のPTH抵抗性という病態についての寄与への可能性も示唆されており,実際,上記「第7 2iii)PTH(7?34)又はPTH(7?84)はアンタゴニストである」に記したように,第1優先日前から,PTH(7?34)及びPTH(7?84)は共にアンタゴニストであることが周知の事項となっていた。 乙8に「アンタゴニスト[antagonist] 拮抗薬,遮断薬ともよばれる。受容体(レセプター)に結合してアゴニスト^(*)の効果を阻害するが,それ自体は受容体と結合しても阻害効果を発揮できない物質をいう。・・・(略)・・・」(乙8-1)と記載されているように,アンタゴニストは,体内のw-PTHと拮抗して受容体を奪い合い,w-PTHの作用を阻害するものであるから,w-PTHの濃度とアンタゴニストであるPTH(7?84)の濃度が,病態に影響を与えることは自明なことである。 また,アンタゴニストは,前記したように体内のw-PTHと拮抗して受容体を奪い合うものであるから,w-PTHとアンタゴニストであるPTH(7?84)の濃度比もまた,病態に影響を与えることは自明なことである。 そうすると,アンタゴニストであるPTH(7?84)の濃度を測定すること,並びに,w-PTHの濃度,アンタゴニストの濃度及びそれらの比を得ようとするとする動機があることは明白である。 以上のことから,甲8発明において,PTHのアンタゴニストを測定するため,アンタゴニストであることが周知の甲8に記載の「hPTH(7-84)」(甲8-5)に注目し,そのN末端を検出できるような抗体を作成し,アンタゴニストの濃度を測定し,w-PTHの濃度,アンタゴニストの濃度を得ることで,(相違点3)に記した訂正発明2の特定事項のごとく構成することは,当業者が容易になし得たことといえる。 イ 効果について 被請求人は,平成25年9月13日付け訂正請求書38頁1行?39頁23行において,PTH(7?84)がインバースアゴニストである,すなわち,上記「第12 1(3)ウ 訂正発明1の効果について」で述べた(効果5)を強調する。 訂正発明2の発明特定事項からみて,訂正発明2の「阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定」する,すなわち,PTH(7?84)の量が測定されることは,訂正発明2の効果として把握できる。 他方,上記「ア 相違点3について」で述べたように,甲8発明において,甲8に記載の「hPTH(7-84)」(甲8-5)に注目し,そのN末端を検出できるような抗体を作成し,アンタゴニストの濃度を測定すべく構成すれば,hPTH(7-84)を測定できるのであって,検出される対象物がインバースアゴニストであることが解明されたところで,検出される対象物が変わるものではないし,その測定される量が変わるものでもない。 そして,上記「第12 1(3)ア (相違点1)について」で述べたように,甲8には,PTH(7?84)が,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用しているかもしれないとの示唆があり,アンタゴニストもインバースアゴニストも阻害剤という点では共通するから,hPTH(7-84)の阻害の機作がどうあれ,「「真の」I-PTH」(甲8-7)の量と阻害性のhPTH(7-84)の量が,副甲状腺機能亢進症等の疾病患者におけるそれらの濃度と関連するという点において変わらない。 副甲状腺機能亢進症等の疾病の診断においては,多数の患者や健常者におけるそれらの濃度から診断基準となる濃度は決められ,hPTH(7-84)がアンタゴニストであろうがインバースアゴニストであろうが,診断基準となるこれらの診断基準となる濃度に違い生ずるものでもない。 そうすると,訂正明細書に記載のようにhPTH(7-84)が,インバースアゴニストであることが判明したとしても,甲8及び上記周知の事項から予想されるところを超えた格別な作用効果が奏されるとはいえず,(効果5)は、せいぜい,阻害の機作がアンタゴニストではなくインバースアゴニストであったことを解明しただけのものにすぎない。 (3)訂正発明2のむすび よって,訂正発明2は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 3 訂正発明3について 上記「第12 1 訂正発明1について」に記した理由に加えて,甲8発明は,「^(125)I」を標識とするものであるから,訂正発明3の「標識」が「放射性同位元素からからなる」ものに相当する。 よって,訂正発明3は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 4 訂正発明4及び訂正発明5について 上記「第12 1 訂正発明1について」に記した理由に加えて,抗体試薬をタンパク質結合表面,金属コロイド粒子,ラテックス粒子又はポリマービーズ等の固相支持体に結合して用いることは,例示するまでもなく第1優先日前から周知技術である。 よって,訂正発明4及び訂正発明5は,甲8に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 5 訂正発明6について 上記「第12 1 訂正発明1について」に記した理由に加えて,N末端,C末端に加えて中間部分のペプチドを認識する抗体を用いる測定方法は,第1優先日前から,例えば,下記刊行物Kに記載のように周知技術であって,抗体の結合により沈殿が起きることは技術常識である。 よって,訂正発明6は,甲8に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 刊行物K:特開平10-82787号公報 (刊K-1)「【0012】本発明でヒトカルシトニンを測定する場合には,標識抗体としてヒトカルシトニンペプチドのC末端部と反応する抗体とN末端部と反応する抗体とを組み合わせて用いることができ,固相抗体としては,例えばこのC末端部とN末端部との中間部ペプチドを認識する抗体を組み合わせて用いることができる。」 6 訂正発明7について 上記「第12 1 訂正発明1について」に記した理由に加えて,訂正発明7と甲8発明を対比すると,更に次の点で相違する。 (相違点4)第1の抗体等が,訂正発明7では「実質的に純粋」なのに対して,甲8発明は,それが不明な点。 (相違点5)第2の抗体等が,訂正発明7では標識されているのに対して,甲8発明では,抗アミノ末端シグナル抗体に標識がなされており,抗カルボキシ末端捕捉抗体には,標識がなされていない点。 しかしながら,甲8発明において,抗体が純粋でなければ検出感度が落ちることは技術常識であって,(相違点4)は,単なる設計的事項に過ぎない。 また,(相違点5)は,甲8発明が,両抗体の結合をもって検出することから,どちらに標識があってもよいことは明らかであって,単なる設計的事項に過ぎない。 よって,訂正発明7は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 7 訂正発明8?12について 上記「第12 1 訂正発明1について」に記した理由及び「第12 2 訂正発明2について」?「第12 5 訂正発明6について」に記した理由と同様の理由により,訂正発明8?12は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 8 訂正発明13について 訂正発明13と甲8発明を対比すると,上記「第12 1(2)キ 小括」記載の(相違点1)及び(相違点2)に加えて,次の(相違点6)を有する。 (相違点6) キットが訂正発明13では,「ラット完全型副甲状腺ホルモンをアッセイ」するものであり,それに伴い,第1の抗体等が,ラットのPTH(1?8)に相当する「Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号7)に特異的」なものであり,また,第2の抗体等が「ラット完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84」を認識するものであるのに対して,甲8発明は,インタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)をアッセイするものである点で相違する。 しかしながら,上記「第12 1 訂正発明1について」に記した理由に加えて,ヒトで得られた知見をラットに応用することは当業者が難なくなし得ることであって,それに伴い,甲8発明の「a)^(125)Iのシグナルで標識された抗アミノ末端シグナル抗体」の特異性と「b)抗カルボキシ末端捕捉抗体」の認識する配列を,上記相違点に記載の訂正発明13の特定事項のごとくすることは当業者が容易になし得たことといえる。 よって,訂正発明13は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 9 訂正発明14について (1)対比 訂正発明14と甲8発明を対比すると,上記「第12 1(2)キ 小括」記載の(相違点1)及び(相違点2)に加えて,次の(相違点7)を有する。 (相違点7) 訂正発明14が「実質的に正常な副甲状腺機能を有する人と副甲状腺機能亢進症の人とを識別するための分析方法」であるのに対いて,甲8発明は,「尿毒症患者試料中のインタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定する」分析方法であって,尿毒症患者を対象とするものである点。 (2)検討 例えば,甲1に「PTH濃度の直接決定が,副甲状腺機能の最良の試験である」(甲1-1)との記載にあるように,副甲状腺機能の診断にPTH濃度を測定することは,第1優先日前から周知の事項である。 したがって,甲8発明において,副甲状腺機能を測定すべく,(相違点7)に記載の訂正発明14の発明特定事項のごとく構成することは当業者が容易になし得たことといえる。 また,訂正発明14の効果は,甲8及び周知の事項から当業者が予測し得るものであって,格別顕著なものともいえない。 よって,訂正発明14は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 10 訂正発明15について (1)対比 訂正発明15と甲8発明を対比すると,上記「第12 1(2)キ 小括」記載の(相違点1)及び(相違点2)に加えて,次の(相違点8)を有する。 (相違点8) 訂正発明15が「副甲状腺機能亢進症の治療効果をモニタリングするための分析方法」であるのに対いて,甲8発明は,「尿毒症患者試料中のインタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定する」分析方法であって,尿毒症患者を対象とするものであり,治療効果のモニタリングもしていない点。 (2)検討 例えば,甲1に「PTH濃度の直接決定が,副甲状腺機能の最良の試験である」(甲1-1)との記載にあるように,副甲状腺機能の診断にPTH濃度を測定することは,第1優先権日前から周知の事項である。 したがって,甲8発明において,副甲状腺機能の治療効果をモニタリングすべく,(相違点8)に記載の訂正発明15の特定事項のごとく構成することは当業者が容易になし得たことといえる。 また,訂正発明15の効果は,甲8及び周知の事項から当業者が予測し得るものであって,格別顕著なものともいえない。 よって,訂正発明15は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 11 訂正発明16について (1)対比 訂正発明16と甲8発明を対比すると,上記「第12 1(2)キ 小括」記載の(相違点1)及び(相違点2)に加えて,次の(相違点9)を有する。 (相違点9) 訂正発明16が「正常な骨機能を有する人と副甲状腺関連の骨疾患を有する人とを識別するための分析方法」であるのに対いて,甲8発明は,「尿毒症患者試料中のインタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定する」分析方法であって,尿毒症患者を対象とするものである点。 (2)検討 PTHと骨関連の疾患との関係は,例えば,上記「第12 1 (3)ウ(イ)(効果2)?(効果4)について」に記した刊行物Jに記載のように第1優先日前から周知の事項である。 また,病気の診断で正常な人のデータと対比することとは,第1優先日前から普通に行われていることである。 したがって,甲8発明において,副甲状腺関連の骨疾患を有する人とを識別するため,(相違点9)に記載の訂正発明16の特定事項のごとく構成することは当業者が容易になし得たことといえる。 また,訂正発明16の効果は,甲8及び周知の事項から当業者が予測し得るものであって,格別顕著なものともいえない。 よって,訂正発明16は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 12 訂正発明17について (1)対比 訂正発明17と甲8発明を対比すると,上記「第12 1(2)キ 小括」記載の(相違点1)及び(相違点2)に加えて,次の(相違点10)を有する。 (相違点10) 訂正発明17が「副甲状腺関連の骨疾患をモニタリングするための分析方法」であるのに対いて,甲8発明は,「尿毒症患者試料中のインタクトなヒト副甲状腺ホルモン(I-PTH)濃度を測定する」分析方法であって,尿毒症患者を対象とするものであり,治療効果のモニタリングもしていない点。 (2)検討 PTHと骨関連の疾患との関係は,例えば,上記「第12 1 (3)ウ(イ)(効果2)?(効果5)について」に記した刊行物Jに記載のように第1優先日前から周知の事項である。 また,病状の変化を調べるために時間をおいて測定する等,モニタリングを行うことは第1優先日前から普通に行われていることである。 したがって,甲8発明において(相違点10)に記載の訂正発明15の特定事項のごとく構成することは当業者が容易になし得たことといえる。 また,訂正発明17の効果は,甲8及び周知の事項から当業者が予測し得るものであって,格別顕著なものともいえない。 よって,訂正発明17は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 13 訂正発明18について 上記「第12 2 訂正発明2について」に記した理由に加えて,上記「第12 9 訂正発明14について」に記した理由により,訂正発明18は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 (被請求人の主張について) 被請求人は,平成25年9月13日付け訂正請求書38頁1行?39頁23行において,PTH(7?84)がインバースアゴニストであることを強調する。 確かに,図12に,PTH(7?84)のみを加えた(■)のグラフが記載されており,w-PTHであるPTH(1-84)を加えなくともカルシウムの変化が起きていることが把握できる。これは,PTH(7?84)がインバースアゴニスト活性を有していることを示すものである。 しかしながら,訂正発明18は,「副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値」を測定対象の一つとして含み,「実質的に正常な副甲状腺機能を有する人と副甲状腺機能亢進症の人とを識別する」ものである。 甲8は,上記「第12 1(3)ア (相違点1)について」で述べたように,PTH(7?84)のような非(1-84)PTHは,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用しているかもしれないことを示唆するものであり,上記「第12 2(2)イ 効果について」に記したように,PTH(7?84)が,アンタゴニストであれ,インバースアゴニストあれ,阻害剤であるには違いは無く,PTH(7?84)がインバースアゴニストであることが解明されたところで,「実質的に正常な副甲状腺機能を有する人と副甲状腺機能亢進症の人とを識別する」判断に影響を与えることもなく,甲8及び上記周知の事項から予想されるところを超えた格別な作用効果が奏されるものではない。 せいぜい,阻害の機作がアンタゴニストではなくインバースアゴニストであったことを解明しただけのものにすぎない。 14 訂正発明19について 上記「第12 2 訂正発明2について」に記した理由に加えて,上記「第12 10 訂正発明15について」に記した理由により,訂正発明19は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 15 訂正発明20について 上記「第12 2 訂正発明2について」に記した理由に加えて,上記「第12 11 訂正発明16について」に記した理由により,訂正発明20は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 16 訂正発明21について 上記「第12 2 訂正発明2について」に記した理由に加えて,上記「第12 12 訂正発明17について」に記した理由により,訂正発明21は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 17 訂正発明22について 上記「第12 9 訂正発明14について」?「第12 13 訂正発明18について」に記したいずれかの理由に加えて,甲8に「アッセイ」(甲8-4)の項目で,「各々のアッセイを,それら自身の校正物質を用いて,製造者の手順に従い行った。約三分の二のサンプルを,二回繰り返して行った;三分の一は,血清量の制限により単回で行った。各々のアッセイの反応性を,合成hPTH(1-84)およびhPTH(7-84)(バケム)を添加した病気でないヒト血清のプールを用いても試験した。」(甲8-4)とあるように,血清を使用しているものであって,訂正発明22の「前記サンプルが,血清,血漿,及び血液のサンプルからなる群から選択される」ことは,甲8発明が具備しているものである。 よって,訂正発明22は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 18 訂正発明23?26について 上記「第12 9 訂正発明14について」?「第12 13 訂正発明18について」に記したいずれかの理由に加えて,甲8において, 「どのキットについても,この研究においてテストしたhPTH(7-84)フラグメントのような,まさに最初のN末端アミノ酸の欠損したフラグメントをチェックしなかったようだ。」(甲8-5) とPTH(7?84)の断片に特に注目しており, 甲8には, 「レセプターに結合することにより,非(1-84)PTHは,それゆえ,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用し,腎不全の患者でみられる見かけ上のPTH抵抗性(および随伴するPTH分泌の増加)に寄与しているかもしれない(7-12)。」(甲8-6) と記載されているように,非(1-84)PTHがアンタゴニストになるとの可能性が示唆されている。実際,上記「第7 2iii)PTH(7?34)又はPTH(7?84)はアンタゴニストである」に記したように,第1優先日前から,PTH(7?34)及びPTH(7?84)は共にアンタゴニストであることが周知の事項となっていた アンタゴニストは,体内のw-PTHと拮抗して受容体を奪い合い,w-PTHの作用を阻害するものであるから,w-PTHの濃度とアンタゴニストであるPTH(7?84)の濃度が,病態に影響を与えることは自明なことである。 また,アンタゴニストは,前記したように体内のw-PTHと拮抗して受容体を奪い合うものであるから,w-PTHとアンタゴニストであるPTH(7?84)の濃度比もまた,病態に影響を与えることは自明なことである。 そうすると,アンタゴニストであるPTH(7?84)の濃度を測定すること,並びに,w-PTHの濃度,アンタゴニストの濃度及びそれらの比を得ようとするとする動機があることは明白である。 以上のことから,甲8発明において,訂正発明23?26のごとく構成することは,当業者が容易になし得たことといえる。 また,訂正発明23?26の効果は,甲8及び周知の事項から当業者が予測し得るものであって,格別顕著なものともいえない。 よって,訂正発明23?26は,甲8に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 第13 参加人の主張について 参加人は,次のような主張をする。 「両丙号証における陳述内容から,副甲状腺分野の専門医及び診断薬メーカーの開発担当者の間で甲8は広く知られており,『従来のIntactPTH測定が会社によって(即ち,3社のアッセイキット間で)測定値が異なっている事や,その原因が非(1-84)PTHなるものによるものらしいとの印象を得てい』たものの(丙第1号証第1頁第25?27行,丙第2号証第11?13行),臨床医の間では,『wPTHのneutral antagonistとして働き,その存在量はwPTHの機能に実質的な影響を与える程度ではない』と考えられており,従って,『従来のiPTH測定でも臨床には影響がないので問題なく使用できる』と判断されていたし(丙第2号証第15?18行),診断薬の開発担当者の間でも,『IntactPTHの測定は臨床上では同じキットを用いて診断や経過観察を行』うので,『この論文を読んでも診断薬の開発者として特に新たなキットの開発が必要であるとは思』われていなかったのである(丙第1号証1頁第28?30行)。」(参加人弁駁書4頁22?34行) 1 参加人の主張について 甲8には, 「レセプターに結合することにより,非(1-84)PTHは,それゆえ,PTHの生理学的アンタゴニストとして作用し,腎不全の患者でみられる見かけ上のPTH抵抗性(および随伴するPTH分泌の増加)に寄与しているかもしれない(7-12)。更なる研究が,この最後の点を解明することおよび校正物質における違いの効果を評価することが必要である。というのも我々はすでに,大きな非(1-84)PTH断片が,種々のI-PTHアッセイにより異なって測定されるということを示している。」(甲8-6) と記載され,「更なる研究」の必要性が示されている。 三浦俊秀は,丙1において 「これらのことからLepageの論文の信憑性については疑義があるのではと思った次第です。」(丙1の2頁2?3行) と述べている。一般的に信憑性についての疑義がある場合,科学的な根拠もなく誤りであると断じることはあり得ず,追試して確かめることが行われている。信憑性に疑念を持ったのであれば,甲8の研究に沿い,信憑性を確かめるべく実験を行い,更に研究を行う動機となることはあるにせよ,甲8記載の上記「更なる研究」をあきらめ, 「PTHの一番端のN端部分に対する抗体が,生成されないと考える明らかな理由がないことから,「真の」I-PTHアッセイの開発が,望ましい目標として残っている。」(甲8-7) との目標に向かう研究を断念する理由にはならない。 また,山下幸弘は,丙2において 「従来のiPTH測定でも臨床には影響がないので問題なく使用できると判断していました」(丙2の15?18行) と述べるが,影響があるかないかは,前記甲8記載の「更なる研究」によって明らかになることである。 かえって,「また,PTH7-84の量が,患者によって一律ではなく,PTHが高い患者でPTH7-84が高い場合もあれば,低い場合もあること,またIntactPTHで測定した結果では,正常域であってもiPTHを指標とした際には誤って過剰治療を行う可能性があることを認識しました。」(丙2の19?24行) と述べるように,確かめもせずに「問題なく使用できる」と判断するのは,非常に危険なことである。「臨床には影響がないので問題なく使用できる」と臨床医が思い込むような状態にあったことを当業者が知ったのであれば,前記危険に鑑み,なおさら,本当に臨床に影響なく使用できるかどうかを確かめるはずである。 そして,参加人の前記主張に 「両丙号証における陳述内容から,副甲状腺分野の専門医及び診断薬メーカーの開発担当者の間で甲8は広く知られており,『従来のIntactPTH測定が会社によって(即ち,3社のアッセイキット間で)測定値が異なっている事や,その原因が非(1-84)PTHなるものによるものらしいとの印象を得てい』た」(参加人弁駁書4頁22?26行) とあるように,第1優先日前から,広く当業者にそのような印象が広まっていたのであるから,甲8記載の前記「更なる研究」をしようと,甲8に接した当業者が思うことは明白である。 よって,参加人の主張を採用することはできない。 第14 結語 以上のとおりであるから,訂正発明1?26は,第1優先日前に頒布された刊行物である甲8に記載された発明,及び,周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効理由5-2及び無効理由6について検討するまでもなく,訂正発明1?26は,無効とすべきものである。 また,審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人の負担とすべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 完全型副甲状腺ホルモンの測定方法ならびに副甲状腺疾患および慢性腎不全患者の骨状態の識別方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって、 a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、標識された第1の抗体又は抗体断片と、 b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片と を含み、阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキット。 【請求項2】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって、 a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とするモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、あるいはそれらの断片である、標識された第1の抗体又は抗体断片と、 b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片と を含み、阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットであって、 c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片 をさらに含み、それにより、生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と、阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定し得るキット。 【請求項3】 前記標識が、化学発光剤、測色剤、エネルギー移動剤、酵素、蛍光剤、及び放射性同位元素からなる群から選択される請求項1又は2に記載のキット。 【請求項4】 前記第2の抗体又は抗体断片が固相支持体に吸着されている請求項1?3のいずれかに記載のキット。 【請求項5】 前記固相支持体が、タンパク質結合表面、金属コロイド粒子、ラテックス粒子又はポリマービーズからなる群から選択される請求項4に記載のキット。 【請求項6】 前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンが、前記第1の抗体又は抗体断片及び前記第2の抗体又は抗体断片に結合した後に、該第1の抗体又は抗体断片及び該第2の抗体又は抗体断片の結合部位以外の部位に特異的に結合する第3の抗体又は抗体断片であって、それにより沈殿塊を生成する第3の抗体又は抗体断片をさらに含む請求項1記載のキット。 【請求項7】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって、 a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、実質的に純粋な第1の抗体又は抗体断片と、 b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する、標識された第2の抗体又は抗体断片と を含み、阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキット。 【請求項8】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって、 a)Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とするモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、あるいはそれらの断片である、実質的に純粋な第1の抗体又は抗体断片と、 b)前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する、標識された第2の抗体又は抗体断片と を含み、阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、生物学的サンプル中のヒト完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキットであって、 c)配列番号4ではないヒト副甲状腺ホルモンのN末端領域を認識する第3の抗体又は抗体断片 をさらに含み、それにより、生物学的サンプル中の総ヒト副甲状腺ホルモン量と、阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片量とをさらに測定し得るキット。 【請求項9】 前記第1の抗体又は抗体断片が、固相支持体に吸着されている請求項7または8に記載のキット。 【請求項10】 前記固相支持体が、タンパク質結合表面、金属コロイド粒子、ラテックス粒子又はポリマービーズからなる群から選択される請求項9に記載のキット。 【請求項11】 前記標識が、化学発光剤、測色剤、エネルギー移動剤、酵素、蛍光剤、及び放射性同位元素からなる群から選択される請求項7?10のいずれかに記載のキット。 【請求項12】 ヒト完全型副甲状腺ホルモンが前記第1の抗体又は抗体断片及び前記第2の抗体又は抗体断片に結合した後に、該第1の抗体又は抗体断片及び該第2の抗体又は抗体断片の結合部位以外の部位に特異的に結合する第3の抗体又は抗体断片であって、それにより沈殿塊を生成する第3の抗体又は抗体断片をさらに含む請求項7記載のキット。 【請求項13】 ラット完全型副甲状腺ホルモンをアッセイするためのキットであって、 a)Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号7)からなるラット完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な第1の抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のAla-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、標識された第1の抗体又は抗体断片と、 b)前記ラット完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号8)を認識する第2の抗体又は抗体断片と を含み、阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、生物学的サンプル中のラット完全型副甲状腺ホルモン量を測定するキット。 【請求項14】 a)検査すべき人から得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、 b)該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップと を含み、該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する、実質的に正常な副甲状腺機能を有する人と副甲状腺機能亢進症の人とを識別するための分析方法。 【請求項15】 a)検査すべき人から得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、 b)該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップと を含み、該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する、副甲状腺機能亢進症の治療効果をモニタリングするための分析方法。 【請求項16】 a)検査すべき人から得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、 b)該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップと、 を含み、該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する、正常な骨機能を有する人と副甲状腺関連の骨疾患を有する人とを識別するための分析方法。 【請求項17】 a)検査すべき人から得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、 b)該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップと、 を含み、該サンプルにおける阻害性の非(1?84)副甲状腺ホルモン断片を検出することなく、完全型副甲状腺ホルモン値のみをイムノアッセイ法を用いて決定する、副甲状腺関連の骨疾患をモニタリングするための分析方法。 【請求項18】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む、完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップと b)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を、イムノアッセイを用いて決定するステップと、 c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値、及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップと を含み、 ステップc)において、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を、完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む、実質的に正常な副甲状腺機能を有する人と副甲状腺機能亢進症の人とを識別するための分析方法であって、 ステップa)及びb)を、請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項19】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む、完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップと b)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を、イムノアッセイを用いて決定するステップと、 c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値、及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップと を含み、 ステップc)において、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を、完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む、副甲状腺機能亢進症の治療効果をモニタリングするための分析方法であって、 ステップa)及びb)を、請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項20】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む、完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップと b)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を、イムノアッセイを用いて決定するステップと、 c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値、及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップと を含み、 ステップc)において、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を、完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む、正常な骨機能を有する人と副甲状腺関連の骨疾患を有する人とを識別するための分析方法であって、 ステップa)及びb)を、請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項21】 a)試験すべきヒトから得られたサンプルを、Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met(配列番号4)からなるヒト完全型副甲状腺ホルモンの初期ペプチド配列に特異的な抗体又は抗体断片であって、該初期ペプチド配列中のSer-Val-Ser-Glu-Ile-Gln((1?6)PTH)と反応し、かつ(1?6)PTHのうちの少なくとも4つのアミノ酸を反応部位の一部とする、第1の抗体又は抗体断片と接触させるステップと、該サンプルを、前記ヒト完全型副甲状腺ホルモンのアミノ酸配列34から84(配列番号3)を認識する第2の抗体又は抗体断片とさらに接触させるステップとを含む、完全型副甲状腺ホルモン値を決定するステップと b)該サンプルにおける総副甲状腺ホルモン値を、イムノアッセイを用いて決定するステップと、 c)該サンプルにおける完全型副甲状腺ホルモン値、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値、及び総副甲状腺ホルモン値からなる群から選択されるパラメータの少なくとも2つを比較するステップと を含み、 ステップc)において、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を選択する場合には、副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値を、完全型副甲状腺ホルモン値及び総副甲状腺ホルモン値から計算するステップをさらに含む、副甲状腺関連の骨疾患をモニタリングするための分析方法であって、 ステップa)及びb)を、請求項2または請求項8記載のキットを用いて行うことを特徴とする方法。 【請求項22】 前記サンプルが、血清、血漿、及び血液のサンプルからなる群から選択される請求項14?21のいずれかに記載の方法。 【請求項23】 前記完全型副甲状腺ホルモン値が、前記副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値と比較される請求項18?21のいずれかに記載の方法。 【請求項24】 前記完全型副甲状腺ホルモン値が、前記総副甲状腺ホルモン値と比較される請求項18?21のいずれかに記載の方法。 【請求項25】 前記副甲状腺ホルモン阻害性ペプチド断片値が、前記総副甲状腺ホルモン値と比較される請求項18?21のいずれかに記載の方法。 【請求項26】 前記比較が比率または割合の形態である請求項18?21のいずれかに記載の方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 [技術分野] 本発明は、副甲状腺機能亢進等の副甲状腺疾患の患者を、正常状態または非罹病状態と識別する、斬新な方法および装置に関する。生物学的試料中の完全型副甲状腺ホルモン(以下、w-PTHと略す)すなわち非断片化PTH1?84、ならびにPTH拮抗物質の役割を果たすことができる非w-PTHペプチド断片を検出する。非w-PTHペプチド断片の値と、w-PTHの値と、またはこれらの値の組み合せとのいずれかの値を比較するか、またはこれらを独立に使用することにより、副甲状腺および骨関連の疾患状態を識別すること、ならびにこのような状態と正常な状態とを識別することが可能である。 【0002】 [関連出願] 本願は、米国特許および商標庁に提出された非暫定実用特許出願、出願番号第08/231,422号の一部係属出願である。 【0003】 [背景技術] カルシウムは、細胞透過性、骨および歯の形成、血液凝固、神経インパルスの伝達、および通常の筋収縮において非常に重要な役割を果たす。血中カルシウムイオン濃度は、カルシトロールおよびカルシトニンと共に、主として副甲状腺ホルモン(PTH)により制御される。カルシウム取り込みおよび排泄は変化する可能性があるが、PTHは、フィードバック機構により細胞内および周囲の体液中における安定したカルシウム濃度の維持に役立つ。血清カルシウムが低下すると、副甲状腺はPTHを分泌し、貯蔵カルシウムの放出に影響を及ぼす。血清カルシウムが上昇すると、PTH分泌低下により、貯蔵カルシウム放出が阻害される。 【0004】 完全型のヒトPTH(本技術分野ではhPTHと呼ばれることもあるが、本発明では、完全型PTHまたはw-PTHと呼ぶ)は、図1に示す通り、独特の84アミノ酸ペプチド(配列番号1)である。このペプチドは、プロテインキナーゼC活性化に関与するドメイン(アミノ酸残基28?34)ならびにアデニル酸サイクラーゼ活性化に関与するドメイン(アミノ酸残基1?7)を含み、骨に対して同化作用を有することが研究で確認されている。しかし、腺内代謝または末梢代謝により生成される公算が高い様々な異化作用型の分解されたPTHペプチドまたは断片化PTHペプチドが循環内に存在する。たとえば、w-PTHは、アミノ酸34と35の間で切断されて、(1?34)PTHのN末端断片と(35?84)PTHのC末端断片が生じ得る。同様に、アミノ酸36と37の間または37と38の間で切断が起こり得る。最近、PTHのN末端付近で切り取られた「非(1?84)PTH」と呼ばれる大きなPTH断片が開示された。(R.LePage et al,“A non-(1-84) circulating parathyroid hormone(PTH) fragment interferes significantly with intact PTH commercial assay measurements in uremic samples”Clin Chem(1998);44:805-810参照)。 【0005】 PTHの正確な測定が臨床上必要性なことは、十分に証明されている。血清PTHレベルは、以下の疾患を有する患者にとって最も重要な指標の1つである。それらは、家族性低カルシウム尿症、高カルシウム尿症、多発性内分泌腺腫症I型およびII型、骨粗鬆症、パジェット骨疾患、副甲状腺の過形成および腺腫に起因する原発性副甲状腺機能亢進、偽副甲状腺機能低下、および続発性副甲状腺機能亢進を引き起こす恐れがある腎不全である。 【0006】 PTHは、慢性腎不全患者の病気の経過において、ある役割を果たす。腎性骨ジストロフィー(RO)は、嚢胞性線維性骨炎(PTH過剰に起因する)、骨軟化症非鉱化骨基質(ビタミンD不足に起因する)、骨格外石灰化/骨化(カルシウム代謝異常およびリン代謝異常に起因する)、および無力性骨疾患(PTH抑制が一因である)を含む複雑な骨格疾患である。慢性腎不全患者は、ROが発症する恐れがある。腎機能障害により血清リンが増加し(高リン血症)、腎による1,25ジヒドロキシビタミンD(1,25-D)産生が減少する。前者の結果として、胃腸のカルシウム吸収減少による続発性副甲状腺機能亢進、および血清リンの上昇に応答したPTH上昇による嚢胞性線維性骨炎が起こる。後者は、低カルシウム血症および骨軟化症を引き起こす。続発性副甲状腺機能亢進が発症すると、副甲状腺のカルシウム受容体およびビタミンD受容体の発現が減少するため、副甲状腺のそのホルモン調節物質に対する応答が低下する。血清カルシウムが低下する。ROは、指の壊疽、骨痛、骨折、および筋の衰弱につながる。 【0007】 人間において、生物学的に活性な循環しているPTHレベルの測定が行われてきた。1つの重大な問題は、PTHが、通常は10?65pg/mlという低レベルで存在することである。極めて循環レベルが低いことに加えて、PTHが不均質性であることおよびその多くの循環断片があるという問題がある。多くの場合、イムノアッセイは、循環PTH断片による実質的且つ有意な阻害に直面している。たとえば、幾つかの市販されているPTHキットは、非(1?84)PTH断片と、ほぼ100%の交差反応を示す(LePageの論文を参照)。 【0008】 PTHイムノアッセイは長い年月をかけて変化してきた。1つのアプローチは、Arnold W.Lindall et al.に付与された米国特許第4,369,138号に記載の二重抗体沈降イムノアッセイである。第1の抗体は(65?84)PTH断片に対して高いアフィニティを有する。第1の抗体を含む試料に放射能標識した(65?84)PTHペプチドを加え、内因性非標識ペプチドに関して競合させる。第1の抗体および放射能標識したPTH断片複合体に結合する第2の抗体を加え、それによって、沈殿を形成する。沈殿も上清も放射能を測定することができる。内因性レベルをそれから算出することができる。 【0009】 PTH断片の阻害をなくすために、Nichol’s Institute of San Juan Capistrano,CaliforniaによるAllegro(登録商標)Intact PTHアッセイ等の、インタクトPTH(I-PTH)用の放射免疫測定法(IRMA)が導入された。1つの方式では、捕捉抗体がhPTHのC末端部分に特異的に結合し、標識抗体が捕捉されたhPTHのN末端に特異的に結合する。別の方式では、2つのモノクローナル抗体が使用され、その両者がhPTHのN末端部分に付着する。残念ながら、これらのアッセイでは、w-PTHペプチドと非w-PTHペプチド断片が測定されるが、両者が識別されないため、問題がある。非w-PTH断片の内因性濃度がかなり大きい副甲状腺機能亢進患者および腎不全患者では、このように識別不可能であることが表面化している。 【0010】 最近、研究者が、N末端PTH断片に適した特異的結合アッセイを行った。(Gao,Ping et al“Immunochemical luminometric assay with two monoclonal antibodies against the N-terminal sequence of human parathyroid hormone”,Clinical Chimica Acta 245(1996)39-59参照)。この免疫化学照度測定法は、2つのモノクローナル抗体を使用し、N末端の(1?34)PTH断片を検出するが、中間部分のPTH断片またはC末端のPTH断片を検出しない。これらのアッセイのデザインにおける重要な因子は、C末端のPTH断片との反応を排除することである。 【0011】 [発明の開示] 本発明は、副甲状腺疾患患者(たとえば、原発性副甲状腺機能亢進、続発性副甲状腺機能亢進、およびその時期)を、正常状態または非罹病状態と識別するため、治療中または治療後の副甲状腺の機能をモニタリングするため、すなわち、手術中および手術後の副甲状腺機能のモニタリングならびに治療、および副甲状腺関連の骨疾患および副甲状腺機能亢進症の治療効果のモニタリングを行うための斬新な方法および装置に関する。すなわち、生物学的な試料のw-PTHすなわち非断片化PTH、PTH拮抗物質の役割を果たすことができる非w-PTHペプチド断片、またはこれら2つの値の組み合せのいずれかの少なくとも1つという、3つの異なるパラメータの、血清中または血中レベルを検出する。これらの値の間の関係、ならびに値そのものが、健常者と副甲状腺疾患の患者との間で著しく異なるため、2つの値を比較するか、上記3つの値の1つを独立に試験することにより、副甲状腺および骨関連の疾患状態を識別し、疾患状態と正常な状態とを識別することができる。 【0012】 本発明は、(配列番号2[PTH_(3)?_(84)])から(配列番号3[PTH_(34)?_(84)])までの間のアミノ酸配列を有するペプチドであるところの或る大きな非w-PTHペプチド断片は、in vivoで、w-PTHの拮抗物質または阻害物質(PIN)の役割をするという発見を含む(図12参照)。換言すれば、w-PTHのPTH受容体への結合およびその後の生物学的活性は、このPINペプチド断片の存在による影響を受ける。PTH結合部位が遮断されるという点で、PTHまたはPTH類似体に関してPTH受容体を阻害することができる。w-PTH濃度とPIN濃度との関係はPTH関連疾患によって異なり、従って、これらの関係は疾患状態を示すものである。本発明は、PINの拮抗物質性が明らかになったことを考慮すると同様に役に立つ副甲状腺関連の骨疾患、および結果として生じる骨損失または増加をモニタリングするための斬新な方法および装置に関する。PINが増量することにより、PTHのカルシウム放出活性が阻害される。 【0013】 w-PTHを測定する際に、PINを測定することは望ましくない。血清、血漿または血液等の試料中のw-PTH量を測定する本発明の方法は、PTHペプチドSER-VAL-SER-GLU-ILE-GLN-LEU-MET(配列番号4)に特異的な第1の抗体を使用するか抗体断片を使用するかによって異なってもよく、少なくとも4つのアミノ酸を認識する抗体が、従来のイムノアッセイ形式におけるシグナル抗体または捕捉抗体のいずれかとしての、ペプチドの抗体反応部分の一部である一般的な様式を含む。(他の種に存在する類似したペプチド、たとえば、第1のアミノ酸セリンがアラニンで置換されているラットペプチドを使用することもできる)。シグナル抗体または捕捉抗体のいずれかとして使用する場合、存在する全てのw-PTHに結合させるのに十分な抗体を加える。次に、第1の抗体を、存在するあらゆるw-PTHに結合させ、それによって複合体を形成させる。複合体を、好ましくはw-PTHのC末端にて、標識するために、第2の抗体および従来のイムノアッセイ標識、たとえば化学発光剤、測色剤、エネルギー移動剤、酵素、蛍光剤、および放射性同位元素を含む特異的結合標識が使用され、また、第1の抗体と実質的に同時に、あるいは第1の抗体に続いて、加えることができる。最終的に、従来の技術を使用して標識複合体の量を測定し、それによって、試料中のw-PTHレベルを算出する。シグナル抗体を使用する場合、第1の抗体は依然としてN末端にて付着するが、第2の抗体はC末端にて付着する補足抗体の役割を果たす。 【0014】 PINを測定する際に、PINを直接測定することもでき、あるいは間接的に測定することもできる。最初にw-PTHを測定し、次いで総PTHを測定することにより、間接的測定を行うことができる。w-PTH値を総PTH値から減算することにより、PIN値が得られる。(本発明では、「総PTH」は、w-PTH(天然の主たるPTH受容体結合作動物質)とPIN(天然の主たるPTH受容体結合拮抗物質)との和を指す。)総PTHアッセイは、配列番号4ではなく、PTHのN末端を検出することにより、PINとw-PTHの両者を検出する。PTHのアミノ酸7?38を検出することにより、このアッセイは、両者を検出することができる。市販の総PTH用アッセイは、Scantibodies Laboratory,Inc.of Santee,Californiaから入手できる。少なくとも4つのアミノ酸が、ペプチドの抗体反応部分の一部である、PTHのアミノ酸7?38を含むPTHペプチドLEU-MET-HIS-ASN-LEU-GLY-LYS-HIS-LEU-ALA-SER-VAL-GLU-ARG-MET-GLN-TRP-LEU-ARG-LYS-LYS-LEU-GLN-ASP-VAL-HIS-ASN-PHE-VAL-ALA-LEU-GLY(配列番号5)の一部(好ましくは、アミノ酸9?34)に特異的な抗体または抗体断片を使用することにより、総PTHの直接測定を行うことができる。このような抗体あるいは抗体断片を、シグナル抗体または捕捉抗体のいずれかとして、従来のイムノアッセイ形式で使用することができる。 【0015】 副甲状腺疾患状態と正常な状態とを識別するため、または副甲状腺疾患状態の治療効果をモニタリングするために、w-PTH値、PIN値、または総PTH(w-PTHとPINとの組み合せ)値の間の関係、換言すれば、PIN値と総PTH値、PIN値とw-PTH値、またはw-PTH値と総PTH値の間の関係を比較することができる。たとえば、w-PTHと総PTH、PINと総PTH、またはPINとw-PTHとの間の比率を使用することができる。(比較は、これらの全因子の神経回路網の形をとることさえ可能である。)選択される比較方法に関わらず、これらの値は、健常者と副甲状腺疾患患者との間で、また副甲状腺疾患の様々な時期の間で、有意に異なる。 【0016】 あるいは、副甲状腺疾患状態と正常な状態を識別するか、w-PTH、PIN、または総PTH単独のいずれかの値を独立に試験することによって副甲状腺疾患状態に対する治療効果をモニタリングすることができる。 【0017】 [本発明を実行するための最良の形態] 本発明を開示するにあたって、多数のよく似た、種依存的PTH型が存在することを念頭に置かなければならない。hPTHのアミノ酸配列を図1に示す。しかし、たとえば、ラットPTH、ウシPTH、またはブタPTHの場合、hPTH配列のアミノ酸の幾つかに置換が見られる。本発明の場合、抗体または抗体断片を互換的に使用して、これらのPTHを測定することができるが、PTH測定が行われる種と一致する配列をもつPTHに特異的な抗体を使用することが好ましい。 【0018】 [w-PTHイムノアッセイ] 本発明の好ましい態様は、図2および3に示す、しばしばサンドイッチアッセイと呼ばれる放射免疫測定法(IRMA)である。このようなアッセイ(10)で使用される要素としては、固体支持体(14)に付着させた捕捉抗体(12)、およびそれに付着させた、標識(18)を有するシグナル抗体(16)を含む。図2に示す通り、一般に、C末端断片(22)に特異的な捕捉抗体が選択され、標識抗体は、アデニル酸サイクラーゼ活性化用ドメイン(24)を含むw-PTH先端部分のペプチド配列に特異的である。しかし、図3に示す通り、これらの抗体の特異性を逆転させることも可能である。 【0019】 あるいは、従来の沈降アッセイまたは比濁アッセイと同様、w-PTHが溶液から沈降するか溶液中で識別される、イムノアッセイをデザインすることも可能である。たとえば、少なくとも3つの抗体を使用して、沈殿塊を形成することができる。先端部分を認識するw-PTH抗体およびC末端抗体に加えて、PTHの中間部分に付着する、少なくとも3つの抗体を使用することができる。w-PTHと少なくとも3つの抗体の複合塊は、従来の技法で測定できる標識沈殿塊を形成する。別の方法は、先端部分を認識するw-PTH配列抗体をコロイド状固体支持体、たとえばラテックス粒子に結合することであろう。 【0020】 さらに詳細には、クロラミンTで酸化し、1mCiの125-I放射性同位元素と共に室温で25秒間インキュベートし、メタ硫酸水素ナトリウムで還元することによって、アフィニティ精製ヤギ抗(1?6)PTH抗体の50μgをヨウ素化することにより、シグナル抗体を作製することができる(Scantibodies Laboratory,Inc.製,Santee California,U.S.A.)。ヨウ素化混合物を、PD-10脱塩カラム(Pharmacia社製,Uppsala,Sweden)を通過させ、製造会社の説明書に従うことにより、標識されなかった125-I放射性同位元素を、125-Iヤギ抗(1?6)PTHシグナル抗体と分離させる。脱塩カラムから回収した分画をガンマカウンターで測定し、125-Iヤギ抗(1?6)抗体を示す分画をプールし、100μl当たり約300,000DPM(崩壊/分)に希釈する。この溶液が、w-PTH IRMAで使用されるトレーサー溶液である。 【0021】 当業者に周知の受動吸収技法を使用して、アフィニティ精製ヤギ抗PTH39?84抗体(Scantibodies Laboratory,Inc.製,Santee,California,U.S.A)を、12×75mmポリスチレン管(Nunc社製,Denmark)に付着させることにより、捕捉抗体被覆試験管を作製する。この試験管を空にし、乾燥させ、固相抗体被覆試験管を作成する。 【0022】 試料のw-PTHアッセイを実施するために、人間血清試料200μmを固相固体被覆試験管に加える。各管にトレーサー溶液(標識したヤギ抗(1?6)シグナル抗体)100μlを加える。この管を、170rpmで振盪しながら、室温にて20?22時間インキュベートする。この間に、{固相ヤギ抗(39?84)PTH抗体}と{w-PTH}と{125-I-ヤギ免疫化学反応ヤギ抗(1?6)抗体}というサンドイッチを形成する免疫化学反応が起きる。このインキュベーション後、この試験管を蒸留水で洗浄する。ガンマカウンターを使用して、固相上の放射能(その量は存在するw-PTHの量に対応する)を測定する。試料中のw-PTH濃度を確認するために、標準および対照からの結果ならびにコンピューターソフトウエアを使用して、試料に関する放射能データを従来の分析法で処理する。図4に、このようなアッセイ用の標準曲線を示す。 【0023】 [先端部分のw-PTH配列ペプチド] 上記アッセイにおけるシグナル抗体を作製するために、まず、hPTH(Ser-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met)、ラットPTH(Ala-Val-Ser-Glu-Ile-Gln-Leu-Met)のいずれかに対応する合成PTHペプチド、または共通配列における少なくとも先端部分の4つのアミノ酸を作製する。選択されたペプチドは、アッセイを行う上で、2つの役割を果たすことができる。第1に、ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を作製する特異的な材料である。第2に、所望のシグナル抗体または捕捉抗体を単離するためのアフィニティ精製法の材料である。 【0024】 簡単に記載すると、Applied Biosystem,Inc.製(Foster City,California,U.S.A)モデル431自動ペプチドシンセサイザーで、Fmoc(9-フルオロニルメトキシカルボニル)をαアミノ保護基として使用して、このようなペプチドを合成することができる。全てのアミノ酸および溶剤は、Applied Biosystem社から入手され、合成級のものである。合成に続いて、トリフルオロ酢酸(TFA)中に6.67%のフェノール、4.4%(V/V)のチオアニソールおよび8.8%のエタンジオールを含む反応混合液を使用して、このペプチドを樹脂から分離し、側鎖を脱ブロックする。分離されたペプチドを沈降させ、冷ジエチルエーテルで数回洗浄する。次いで、これを水に溶解し、凍結乾燥する。粗ペプチドをアミノ酸分析装置(Waters PICO-TAG System社製,Boston,Massachusetts,U.S.A)、およびVYDAC(TM)C8カラムと移動緩衝液として水中に0.1%のTFAおよび0.1%のTFA中に99.9%のアセトニトリルとを使用した逆相HPLCに供する。適当なアミノ酸組成に加えて1つの主要なピークが存在することは、このペプチドが、さらなる使用に適する証拠と考えられる。 【0025】 次いで、このようにして得られるペプチドを、製造会社からの説明書に従って、架橋アガロースビーズ(Pharmacia社製,Uppsala,Swedenからの活性化Sepharose4B)に付着させる。先端部分のアミノ酸配列を認識するペプチド配列をビーズ上に準備し、w-PTHイムノアッセイ用の先端部分の配列抗体を単離するための、ポリクローナル抗体血清源をアフィニティ精製することができる。 【0026】 [先端部分のアミノ酸配列を認識するw-PTH抗体] アフィニティ精製抗(1?6)PTH抗体を作製するために、先ず、上述の選択された先端部分のPTH配列ペプチドを、ヤギに注入する免疫原として使用する。このペプチドは、注射用免疫原として単独で、一般に約5,000?10,000,000の分子量をもつ非PTHペプチドに組み込んで、w-PTH完全配列の一部として、使用することができる。この免疫原を、同量のフロイント完全アジュバント(軽鉱油、Arlacelデタージェント、および不活化結核菌の混合物である)と混合する。このようにして得られた混合物をホモジナイズして水/油乳剤を作製し、これを、抗体を作製するために動物(一般にヤギ)に注入する。免疫原用量は約50?400μgである。以後毎月、同用量の免疫原複合体をフロイント完全アジュバントを除いてヤギに毎月注入する。免疫後約3ヶ月後から、ヤギから毎月採血する。遠心分離により血液から赤血球を分離し、(1?6)PTH抗体が多い血清(抗血清)を分離する。 【0027】 所望の(1?6)PTH抗体に対する抗血清を精製するために、分離カラムに、上述の先端部分のPTH配列ペプチド結合ビーズを充填し、0.1Mのリン酸緩衝食塩水(PBS)でカラムを洗浄し、平衡化する。(1?6)PTH特異性をもたない抗体を除去するために、抗血清をカラムに負荷し、0.01MのPBSで洗浄する。溶出液(0.1Mのグリシン塩化水素緩衝液、pH2.5)を、カラムを通過させることにより、結合した特異的ヤギ抗(1?6)PTHポリクローナル抗体を、カラムの固相PTH1?6から溶出させる。当業者に周知の通り、1.0Mのリン酸緩衝液、pH7.5を加えるか、0.01MのPBSと緩衝液交換するかのいずれかによって、ポリクローナル抗体がカラムから出た後、溶出したポリクローナル抗体を中和する。このポリクローナル抗体を2?8℃で保存する。 【0028】 [w-PTHアッセイと総PTHアッセイとの間の比較] 本発明のw-PTH IRMAアッセイと、従来のインタクトPTHすなわちI-PTHイムノアッセイ、Allegro Nichols Intact-PTHアッセイ(Nichols Institute Diagnostics of San Juan Capistrano社,California,U.S.Aにより市販および作製されている)とを、PTH正常者と慢性尿毒症罹患者との両者で比較した。このI-PTHイムノアッセイは、PINとPTHの間で100%交差反応性であるため、事実上、総PTHアッセイである(図10参照)。 【0029】 図5に、本発明のw-PTH IRMAアッセイおよび上記I-PTHアッセイの両方で測定した健常者からの正常なヒト血清試料34検体の結果を示す。各例で、IRMAにより検出されるw-PTHレベルは、I-PTHアッセイで報告されるw-PTHレベルより低く、本IRMAが、I-PTHアッセイで検出される阻害性の非(1?84)PTH断片を検出しないことがわかる(図11参照)。図11は、このような阻害がいかにして発生するかを示す図である。本発明における、先端部分のPTHペプチド配列に特異的でないN末端のPTHに特異的なシグナル抗体を検出することができる。w-PTH(図6の上部)のみならず、PIN、非(1?84)PTH断片(図6の下部)も検出することができる。 【0030】 慢性尿毒症患者157例のアッセイ結果の比較を図7に示す。w-PTH IRMAおよび上記I-PTHを使用して、これらの患者からの血清試料を測定した。各例で、w-PTHレベルはI-PTH値より低い。 【0031】 [臨床使用] 188例を含む臨床状況で、本発明のw-PTHアッセイおよびPINアッセイを使用した。このグループには、健常な副甲状腺を有する31例および連続して透析を受けている慢性尿毒症患者157例が含まれていた。各人の血液試料を採取し、Scantibodies Laboratory,Inc.からのw-PTHアッセイ、ならびに総PTH値を与えるNichols InstituteからのI-PTHアッセイを使用して測定した。 【0032】 表1に、透析を受けている慢性尿毒症患者の、w-PTHアッセイ、PINアッセイおよび総PTHアッセイの結果を、個々に、また比較して示す。 【0033】 【表1】 【0034】 【表1(つづき)】 【0035】 【表1(つづき)】 【0036】 【表1(つづき)】 【0037】 【表1(つづき)】 【0038】 表2に、健常者のw-PTHアッセイ、PINアッセイおよび総PTHアッセイの結果を、個々に、また比較して示す。 【0039】 【表2】 【0040】 明らかに、これらの2群の中央値における統計学的な有意差から、これらのアッセイを単独で使用することにより、あるいはそれぞれの値を比較することにより2つを識別できることが分かる。 【0041】 【表3】 【0042】 本発明は、かなり多数の上記の好ましい特徴を組み込むことができることを、当業者は理解できるであろう。 【0043】 本明細書に記載の全ての刊行物および未公開の特許出願を、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。 【0044】 現在、およびこの特許明細書から発行される特許の存続期間中、当業者に明白である、したがって本発明の精神および範囲の中である本発明のその他の実施形態は、本明細書に記載されていない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 ヒトw-PTHの線図である。 【図2】 本発明の抗体をトレーサーエレメントとして使用したw-PTHアッセイの線図である。 【図3】 本発明の抗体を捕捉エレメントとして使用したw-PTHアッセイの線図である。 【図4】 w-PTHアッセイ用の標準曲線を示すグラフである。 【図5】 「正常な」PTH値を有する健常者に関する従来のI-PTHアッセイと本発明のw-PTHアッセイとを比較するグラフである。 【図6】 従来のI-PTHアッセイにおける、PINによる阻害を示す線図である。 【図7】 慢性尿毒症患者に関する、従来のI-PTHアッセイと本発明のw-PTHアッセイととを比較するグラフである。 【図8】 健常者、原発性副甲状腺機能亢進患者、および慢性尿毒症患者に関する、w-PTHの分布を示すグラフである。 【図9】 受容体レベルで、いかにして、PINがw-PTHの作用を遮断し、それによって、人間がw-PTHの生物学的作用に非感受性になるかを示す線図である。 【図10】 本発明で使用する総PTHアッセイにおける、w-PTHとPINの完全な交差反応性を示すグラフである。 【図11】 本発明で使用するw-PTHアッセイが、いかにPINを検出しないかを示すグラフである。 【図12】 PINが、いかにw-PTHのin vivoインヒビターであるかを示すグラフである。 【配列表】 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2014-01-31 |
結審通知日 | 2014-02-05 |
審決日 | 2014-02-25 |
出願番号 | 特願2000-593958(P2000-593958) |
審決分類 |
P
1
113・
537-
ZA
(G01N)
P 1 113・ 536- ZA (G01N) P 1 113・ 842- ZA (G01N) P 1 113・ 121- ZA (G01N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加々美 一恵 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
齊藤 真由美 小川 慶子 |
登録日 | 2008-06-06 |
登録番号 | 特許第4132677号(P4132677) |
発明の名称 | 完全型副甲状腺ホルモンの測定方法ならびに副甲状腺疾患および慢性腎不全患者の骨状態の識別方法 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 有原 幸一 |
復代理人 | 後藤 孝明 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 中村 綾子 |
代理人 | 福間 信子 |
復代理人 | 三宅 俊男 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 津国 肇 |
代理人 | 福間 信子 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 河村 英文 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 河村 英文 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 中村 綾子 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 柳橋 泰雄 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 福間 信子 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 鈴木 音哉 |