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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1301852
審判番号 不服2014-2166  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-05 
確定日 2015-06-10 
事件の表示 特願2013- 944「自動分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日出願公開、特開2013- 61356〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年5月26日に出願した特願2006-146656号(以下「本願の原原出願」という。)の一部を新たな特許出願とした特願2011-243995号の一部を、平成25年1月8日に更に新たな特許出願としたものであって、平成25年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年10月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成26年2月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成26年2月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。


[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載を、以下のとおり、補正前のものから補正後のものに補正する事項を含むものである。

(補正前)

「【請求項1】
被検試料及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を前記容器に分注するサンプル分注プローブと、
前記試薬を前記容器に分注する試薬分注プローブと、
前記サンプル分注プローブの内面を洗浄するための洗浄液を供給する第1の供給手段と、
前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量について、第1の供給量と、当該第1の供給量よりも多い第2の供給量とを設定し、当該第1の供給量より多い範囲を許容範囲とする設定手段と、
前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、前記サンプル分注プローブの動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
被検試料及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を前記容器に分注するサンプル分注プローブと、
前記試薬を前記容器に分注する試薬分注プローブと、
前記試薬分注プローブの内面を洗浄するための洗浄液を供給する第2の供給手段と、
前記第2の供給手段により供給される洗浄液の量について、第1の供給量と、当該第1の供給量よりも多い第2の供給量とを設定し、当該第1の供給量より多い範囲を許容範囲とする設定手段と、
前記第2の供給手段により供給される洗浄液の量を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、前記試薬分注プローブの動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。」
が、

(補正後)

「 【請求項1】
被検試料及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を前記容器に分注するサンプル分注プローブと、
前記試薬を前記容器に分注する試薬分注プローブと、
前記サンプル分注プローブまたは前記試薬分注プローブを洗浄するための洗浄液を供給する供給手段と、
前記洗浄液を用いて前記サンプル分注プローブまたは前記試薬分注プローブを洗浄する洗浄漕と、
前記供給手段により供給される洗浄液の量について、第1の供給量と、当該第1の供給量よりも多い第2の供給量とを設定し、当該第1の供給量より多い範囲を許容範囲とする設定手段と、
前記供給手段と前記洗浄漕との間に設けられ、前記供給手段により供給される洗浄液の量を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、前記サンプル分注プローブまたは前記試薬分注プローブの動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
被検試料及び試薬を容器に分注して攪拌し、その混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を前記容器に分注するサンプル分注プローブと、
前記試薬を前記容器に分注する試薬分注プローブと、
前記容器に分注された前記被検試料と前記試薬とを攪拌し前記混合液とする攪拌子と、
前記攪拌子を洗浄するための洗浄液を供給する供給手段と、
前記洗浄液を用いて前記攪拌子を洗浄する洗浄漕と、
前記供給手段により供給される洗浄液の量について、第1の供給量と、当該第1の供給量よりも多い第2の供給量とを設定し、当該第1の供給量より多く当該第2の供給量よりも少ない供給量の範囲を許容範囲とする設定手段と、
前記供給手段と前記洗浄漕との間に設けられ、前記供給手段により供給される洗浄液の量を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、前記攪拌子の動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

(2)そして、上記請求項1の補正は、具体的に以下の事項を含む。

補正前に
「前記サンプル分注プローブの内面を洗浄するための洗浄液を供給する第1の供給手段と、」
とあったものを

「前記サンプル分注プローブまたは前記試薬分注プローブを洗浄するための洗浄液を供給する供給手段と、」
とする補正(以下「補正事項1」という。)。

(3)また、上記請求項2の補正は、具体的に以下の事項を含む。

補正前に
「前記試薬分注プローブの内面を洗浄するための洗浄液を供給する第2の供給手段と、」
とあったものを

「前記攪拌子を洗浄するための洗浄液を供給する供給手段と、」
とする補正(以下「補正事項2」という。)。

2 本件補正の目的についての検討

(1)上記補正事項1について検討する。

上記補正事項1により、補正前には「洗浄液」が「サンプル分注プローブの内面を洗浄するため」のものであったものが、補正後は「洗浄液」が「前記サンプル分注プローブまたは前記試薬分注プローブを洗浄するため」のものに補正され、「洗浄液」の洗浄対象であるプローブの部位がプローブの「内面」であることに関する特定が削除された。

すなわち、上記補正事項1によって、「洗浄液」の洗浄対象であるプローブの部位が拡張又は変更された。

してみると、上記補正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない。

また、上記補正事項が請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。

(2)次に、上記補正事項2について検討する。

上記補正事項2により、補正前には「洗浄液」が「試薬分注プローブの内面を洗浄するため」のものであったものが、補正後は「洗浄液」が「前記攪拌子を洗浄するため」のものに補正され、「洗浄液」の洗浄対象が「試薬分注プローブの内面」から「攪拌子」に変更された。

してみると、上記補正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない。

また、上記補正事項2が請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。

3 むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成26年2月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのもの(上記「第2 平成25年2月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「1 本件補正について」(1)の記載参照。)である。

2 引用例

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原原出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった登録実用新案第3119773号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。

ア 「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
試料をサンプリングプローブで反応容器に分注し、試薬プローブで試薬を添加し混合させ反応させて分析を行う自動分析装置において、サンプリングプローブあるいは試薬プローブ先端からプローブ内の洗浄水を一定時間吐出させ、その吐出された洗浄水量を容器に受け、その容器内の水の量を自動的に測定可能にした自動分析装置。」

イ 「【0011】
図1に自動分析装置の構成及び流路を示す。サンプリングアームに取り付けられたサンプリングプローブの上流側に圧力センサ,シリンジ及び電磁弁及び加圧ポンプ,純水タンクが取り付けられている。図2は通常の試料吸引の説明図である。」

ウ 「【0012】
自動分析装置での通常の分析手順を説明する。まず、サンプリングプローブ25が洗浄槽4にある状態で、流路内を洗浄電磁弁15を開いてプローブ内の洗浄及び水充填を行う。また同時に外洗電磁弁13を開いてサンプリングプローブ25の先端部の外側も洗浄する。その後、試料シリンジ16のプランジャ22を下降させてプローブ先端に分節空気26を3μl吸引する。サンプリングアーム3を回転させ、サンプルディスク1に設置された検体2にサンプリングプローブ25を下降させてプローブ先端が液面に接触するやいなや(液面検知機構24で検知する)プローブの下降を停止させ、試料シリンジのプランジャを下降させて試料を吸引する(ダミー試料含めて約12μl)。サンプリングプローブは上昇させて反応容器5の上に移動して下降し、サンプリングプローブ先端を反応容器に接触させて試料シリンジのプランジャを上昇させて試料を約2μl吐出する。洗浄槽4に戻りプローブの内外の洗浄をおこなう。これが一連の分注動作である。反応容器に試薬が添加され測定が行われ、分析が終了した反応容器は反応容器洗浄機構12で洗浄される。分注流路内の純水と吸引した試料との間には分節空気3μlが存在するが、これは試料の流路内純水への拡散による薄まりを防止すれためのものである。サンプリングプローブの先端絞り部の流路抵抗が増大すると、吸引時にシリンジのプランジャが停止してもこの分節空気が膨張から縮小への変化が継続されままの状態でサンプリングプローブが上昇して液面を離れるために吸引不足が生じることとなる。」

エ 「【0013】
次に本考案のサンプリングプローブの流路抵抗の測定方法について説明する。図3にプローブ先端から吐出された水を容器に受けて流量を測定する方法をしめした。決められた直径の空容器28をサンプルディスク1に置く。自動分析装置の操作部の画面からプローブ流路抵抗測定の指令を与える。サンプリングプローブは空容器28上に移動して、加圧ポンプ20を一定圧に作動させたまま、サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開く。そうするとサンプリングプローブから洗浄水が容器内に吐出される。その後、サンプリングプローブは上限点から下降して容器内の液面を検知して停止させる。下降して停止するまでのステッピングモータへ付与したパルス数を数えてサンプリングプローブの下降量Lを計算する。その下降量から逆算して容器内の液面高さHを求め、それと容器の直径から5秒間に吐出された洗浄水量V0を求める。このV0がある範囲内にない場合は「プローブが詰り気味である、あるいは許容範囲外」である旨の警報を発するようにする。加圧ポンプ20の圧力はおおよそ一定値に圧力計19で合わせるが、試料分注系は精度を必要とするので厳密な圧力測定を圧力センサ7で測定し、圧力が規定値より高ければその分V0は高くなるので補正すると流路抵抗測定精度が高まる。また、流路抵抗は水温によっても変化するので圧力センサに温度測定機能をもたせて水温補正を行うとさらに精度は高まる。」

オ 「【符号の説明】
【0025】
1…サンプルディスク、2…検体、3…サンプリングアーム、4,11…洗浄槽、5…反応容器、6…反応ディスク、7…圧力センサ、8…試薬分注機構、9…試薬ディスク、10…試薬ボトル、12…反応容器洗浄機構、13…外洗電磁弁、14…反応容器洗浄電磁弁、15…サンプリングプローブ内洗浄電磁弁、16…試料シリンジ、17…試薬プローブ内洗浄電磁弁、18…試薬シリンジ、19…圧力計、20…加圧ポンプ、21…純水タンク、22…プランジャ、23…脱気装置、24…液面検知機構、25…サンプリングプローブ、26…分節空気、27…試料、28…受け空容器、29…洗浄水、30…波形(a)、31…波形(b)、32…波形(c)、33…波形(d)、34…波形(e)、35…プランジャ動作シーケンス、36…サンプリングプローブ動作シーケンス。」

カ 【図1】




キ 上記摘記事項イにおける「電磁弁」、「加圧ポンプ」及び「純水タンク」は、上記摘記事項カの図1の記載、及び、上記摘記事項オの符号の説明の記載を参酌するに、それぞれ「サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15」、「加圧ポンプ20」及び「純水タンク21」であると認める。

(2)引用例1に記載された発明の認定

上記(1)アないしキを含む引用例1全体の記載を総合すると、引用例1には、

「 試料をサンプリングプローブで反応容器に分注し、試薬プローブで反応容器に試薬を添加し混合させ反応させて分析を行う自動分析装置において、
サンプリングプローブの上流側にサンプリングプローブ内洗浄電磁弁15、加圧ポンプ20及び純水タンク21が取り付けられており、
容器内の水の量を自動的に測定可能であり、
加圧ポンプ20を一定圧に作動させたまま、サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開くことにより、サンプリングプローブから洗浄水が前記容器内に吐出され、
5秒間に吐出された洗浄水量V0を求め、
この洗浄水量V0がある範囲内にない場合は「プローブが詰り気味である、あるいは許容範囲外」である旨の警報を発するようにした、
自動分析装置。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 本願発明と引用発明との対比

(1)対比

本願発明と引用発明とを対比する。


(ア)引用発明の「試料」、「試薬」、「反応容器」、「分析を行う」及び「自動分析装置」は、それぞれ本願発明の「被検試料」、「試薬」、「容器」、「測定する」及び「自動分析装置」に相当する。

(イ)自動分析装置において試薬を分注により供給することが、本願の原原出願の出願前における技術常識であること、及び、上記摘記事項2(1)カの図1に試薬ディスク9上に複数の試薬ボトル10が配置されていることが示されていることを踏まえると、引用発明の「試薬プローブで反応容器に試薬を添加」することは、「試薬プローブで反応容器に試薬を分注」することであるといえる。

(ウ)引用発明の「自動分析装置」は、「試料をサンプリングプローブで反応容器に分注し、試薬プローブで反応容器に試薬を添加し混合させ反応させて分析を行う」ことから、「試料と試薬との混合液の分析を行う」ものであることは明らかである。

(エ)以上のことから、引用発明の「試料をサンプリングプローブで反応容器に分注し、試薬プローブで反応容器に試薬を添加し混合させ反応させて分析を行う自動分析装置」は、本願発明の「被検試料及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置」に相当する。

イ 引用発明の「サンプリングプローブ」は本願発明の「サンプル分注プローブ」に相当するから、引用発明の「試料を」「反応容器に分注」する「サンプリングプローブ」は、本願発明の「前記被検試料を前記容器に分注するサンプル分注プローブ」に相当する。

ウ 上記ア(イ)を踏まえると、引用発明の「試薬プローブ」は本願発明の「試薬分注プローブ」に相当するから、引用発明の「試薬を」「反応容器に」「添加」する「試薬プローブ」は、本願発明の「前記試薬を前記容器に分注する試薬分注プローブ」に相当する。


(ア)引用発明の「洗浄水」は、本願発明の「洗浄液」に相当する。

(イ)引用発明の「洗浄水」は、「サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開くことにより、サンプリングプローブから」「吐出され」ることから、引用発明の「洗浄水」が「サンプリングプローブの内面を洗浄するための洗浄水」であることは明らかである。

(ウ)引用発明は、「加圧ポンプ20を一定圧に作動させたまま、サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開くことにより、サンプリングプローブから洗浄水が」「吐出され」るものであることから、引用発明の「サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15」及び「加圧ポンプ20」は、「洗浄水を供給するための手段」であるといえる。

(エ)以上のことから、引用発明の「加圧ポンプ20を一定圧に作動させたまま、サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開くことにより、サンプリングプローブから洗浄水」を「吐出させ」る「サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15」及び「加圧ポンプ20」は、本願発明の「前記サンプル分注プローブの内面を洗浄するための洗浄液を供給する第1の供給手段」に相当する。


(ア)引用発明の「洗浄水量V0」は、本願発明の「洗浄液の量」に相当する。

(イ)上記エ(ウ)を踏まえると、引用発明の「加圧ポンプ20を一定圧に作動させたまま、サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開くことにより、サンプリングプローブから洗浄水」を「吐出さ」せ、「5秒間に吐出された洗浄水量V0」は、本願発明の「前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量」に相当する。

(ウ)引用発明の「ある範囲」及び「許容範囲」は、それぞれ本願発明の「許容範囲」に相当する。

(エ)引用発明は、「洗浄水量V0がある範囲内にない場合は「プローブが詰り気味である、あるいは許容範囲外」である旨の警報を発するようにした」ものであるから、引用発明は、「洗浄水量V0がある範囲内にあるか否かを判定」しているといえる。

(オ)引用発明は、「洗浄水量V0がある範囲内にない場合は「プローブが詰り気味である、あるいは許容範囲外」である旨の警報を発するようにした」ものであるところ、プローブが詰まり気味になると洗浄水量V0が減少することは明らかであるから、引用発明は、「ある範囲」を規定するための洗浄水量V0に関する「しきい値」を有し、洗浄水量V0が当該しきい値より多い範囲を前記「ある範囲」、すなわち「許容範囲」とするものといえ、前記「しきい値」及び「許容範囲」を設定するための構成を備えているといえる。

(カ)引用発明が有しているといえる「しきい値」は、本願発明の「第1の供給量」に相当する。

(キ)引用発明が備えているといえる「設定するための構成」は、本願発明の「設定手段」に相当する。

(ク)以上のことから、引用発明の「加圧ポンプ20を一定圧に作動させたまま、サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開くことにより、サンプリングプローブから洗浄水」を「吐出さ」せ、「5秒間に吐出された洗浄水量V0を求め」、「この洗浄水量V0がある範囲内にあるか否かを判定」していることと、本願発明の「前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量について、第1の供給量と、当該第1の供給量よりも多い第2の供給量とを設定し、当該第1の供給量より多い範囲を許容範囲とする設定手段」「を備えること」とは、「前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量について、第1の供給量を設定し、当該第1の供給量より多い範囲を許容範囲とする設定手段を備えること」である点において共通する。


(ア)引用発明は、「容器内の水の量を自動的に測定可能であ」るから、「容器内の洗浄水の量を自動的に測定可能であ」り、「5秒間に吐出された洗浄水量V0を求め」ることは、「容器内の洗浄水の量を自動的に測定」することにより行われることは明らかであるから、引用発明は、「5秒間に吐出された洗浄水量V0」を「自動的に測定する構成」を備えているといえる。

(イ)引用発明が備えているといえる「自動的に測定する構成」は、本願発明の「計測手段」に相当する。

(ウ)以上のことから、引用発明の「加圧ポンプ20を一定圧に作動させたまま、サンプリングプローブ内洗浄電磁弁15を5秒間開くことにより、サンプリングプローブから洗浄水が前記容器内に吐出され、5秒間に吐出された」「容器内の」「洗浄水量V0」を「自動的に測定可能であ」ることは、本願発明の「前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量を計測する計測手段」「を備えること」に相当する。


(ア)引用発明の「発するようにした」ことは、「発するように制御する」ことであるといえ、上記カ(ア)及び(イ)並びにオ(ウ)を踏まえると、引用発明の「この洗浄水量V0がある範囲内にない場合は」「警報を発するようにした」ことは、本願発明の「前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて」、「制御する」ことに相当する。

(イ)引用発明は、「警報を発するようにした」ものであるところ、「自動分析装置」が「警告を発する」ことは明らかであり、「警告を発する」ことは「自動分析装置の動作」であるといえるから、引用発明は、「警告を発するように自動分析装置の動作を制御する構成」を備えているといえる。

(ウ)本願発明の「サンプル分注プローブ」は、「自動分析装置」が備えるものであるから、引用発明が備えているといえる「警告を発するように自動分析装置の動作を制御する構成」と、本願発明の「前記サンプル分注プローブの動作を制御する制御手段」とは、「自動分析装置の動作を制御する制御手段」である点において共通する。

(エ)以上のことから、引用発明の「この洗浄水量V0がある範囲内にない場合は「プローブが詰り気味である、あるいは許容範囲外」である旨の警報を発するようにした」ことと、本願発明の「前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、前記サンプル分注プローブの動作を制御する制御手段」「を備えること」とは、「前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、自動分析装置の動作を制御する制御手段を備える」点において共通する。

(2)一致点

よって、本願発明と引用発明とは、

「 被検試料及び試薬を容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を前記容器に分注するサンプル分注プローブと、
前記試薬を前記容器に分注する試薬分注プローブと、
前記サンプル分注プローブの内面を洗浄するための洗浄液を供給する第1の供給手段と、
前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量について、第1の供給量を設定し、当該第1の供給量より多い範囲を許容範囲とする設定手段と、
前記第1の供給手段により供給される洗浄液の量を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、自動分析装置の動作を制御する制御手段と、
を備える自動分析装置。」

の発明である点で一致し、次の2点で相違する。

(3)相違点

(相違点1)
設定手段が、本願発明は第1の供給量よりも多い第2の供給量も設定するように構成されているのに対して、引用発明はそのように構成されていない点。

(相違点2)
前記計測手段による計測量と、前記許容範囲とに基づいて、自動分析装置の動作を制御する制御手段が、本願発明はサンプル分注プローブの動作を制御するのに対して、引用発明は警報を発するように制御する点。

4 当審の判断

各相違点について検討する。

(1)相違点1について

装置等の状態を監視して警報を発する技術一般において、装置等の状態変化を把握し、異常状態に対する対処を速やかに行えるようにするために、状態変化の程度に応じて複数の警報レベルを設定し、それぞれのレベルに対応したしきい値を設定することは、例を示すまでもなく、本願の原原出願の出願前において周知である。

プローブの詰まりに対する対処を速やかに行えるようにすることは、引用発明に内在する課題であるといえるから、「プローブが詰り気味である、あるいは許容範囲外」である旨の警報を発するものである引用発明においても、プローブの詰まりの状態を把握し、許容範囲外となる前の状態においても注意を促す警報を発するようにすべく、許容範囲の境界に対応する洗浄水量V0である第1の供給量に加えて、許容範囲内である洗浄水量V0、すなわち、第1の供給量よりも多い第2の供給量を注意を促す警報を発するためのしきい値として設定し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について

自動分析装置において、サンプルプローブの詰まりを検知した場合に、分注動作を停止するなど、サンプルプローブに対して正常時とは異なる動作を行うように制御することは、例えば、原査定の拒絶の理由で周知例として引用した特開平11-83868号公報(段落【0033】等)、特開2001-242182号公報(段落【0037】等)等に記載されているように、本願の原原出願の出願前において周知である。

引用発明において、洗浄水量V0がある範囲内にない場合に、サンプリングプローブによる分注を行わないようにするなど、サンプリングプローブの動作を制御するようにすることに、格別の技術的困難性も特段の阻害要因も見あたらない。

してみると、引用発明において、上記周知技術を採用し、洗浄水量V0がある範囲内にない場合に、警報を発することに加えて、サンプリングプローブによる分注を行わないようにするなど、サンプリングプローブの動作を制御するようにし、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)本願発明の奏する作用効果

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

(4)まとめ

よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-10 
結審通知日 2015-04-13 
審決日 2015-04-24 
出願番号 特願2013-944(P2013-944)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 渡戸 正義
平田 佳規
発明の名称 自動分析装置  
代理人 中原 文彦  
代理人 小川 眞一  
代理人 中原 文彦  
代理人 小川 眞一  

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