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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1302528
審判番号 不服2013-10844  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-11 
確定日 2015-07-08 
事件の表示 特願2012-172380「画面操作用治具および画面の操作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開、特開2013-239140〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成24年8月2日(優先権主張平成24年4月17日)の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成25年6月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
画面操作用シールであって、タッチパネルの画面に対する物理的接触を介して操作するための画面操作用導電性突起部と、指に装着するための装着部とを有し、
前記装着部は、指に貼り付けるための貼付部を有し、該貼付部は、画面操作用突起部と反対側に設けられ、指の腹だけでなく、手袋をした状態で、指の腹に相当する手袋の外表面にも貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状であり、
前記画面操作用突起部は、画面に対する物理的接触により操作するに十分な硬さを有し、
前記フィルムの前記付着面と反対側の面から突起するように設けられ、前記画面操作用突起部の突起高さおよび太さはそれぞれ、タッチパネルの画面に対する物理的接触により操作することが可能な所定高さおよび所定太さを有する、ことを特徴とする画面操作用治具。」

なお、請求項1には「画面操作用導電性突起部」という用語と「画面操作用突起部」という用語の両方が使用されているが、発明の詳細な説明を参酌してもその両用語を相互に異なるものと解すべき理由は見当たらないこと、及びその両用語を相互に同じもの表す用語と解することで発明を矛盾無く理解できること、を考慮し、該両用語は相互に同じものを表す用語であると解する。

2.引用文献記載発明
(1)当審による平成26年3月25日付けの拒絶理由通知書で引用した国際公開第2011/151881号(以下、「引用文献1」と呼ぶ。)には、次の記載がある。

「技術分野
[0001] 本発明は、静電容量方式のタッチパネルを備えたデバイスの入力補助具に関する。
背景技術
[0002] 静電容量方式のタッチパネルを備えたデバイスとしては、米国アップル社のiPhone(アイホン社よりライセンスを受けたアップル社の商標)、
またはiPad(アップル社の商標)が知られている。
[0003] これらのデバイスでは、ユーザインタフェースを多様化するためにマルチタッチ(同時複数箇所接触指示入力)を可能にするため、フロントパネルの背面側に配置された駆動電極と受信電極の間の磁界に対して、静電誘電体であるユーザの指先がフロントパネルに触れることによって受信電極への磁界が遮断されることによってタッチ位置が検出される構造となっている。
[0004] したがって、効果的にマルチタッチによるユーザインタフェースを利用するためには複数の指先でのタッチ動作やフリック動作(画面に指先を接触させた状態でフロントパネルの平面方向に指先を加勢滑動させる動作)を行う必要があった。
[0005] そのため、この種のデバイスのタッチパネル表面には指先の脂が付着して、画面の見栄えが悪くなったり、清潔感を損なったりする可能性があった。
[0006] 特に、iPad(アップル社の商標)とよばれる9.7インチの比較的大画面のタッチパネルを備えたデバイスでは、デバイスの使用頻度が高いと指先の脂分の付着が目立つ結果となっていた。

・・・(中略)・・・

[0010] 本発明は、このような点に着目してなされたものであり、静電容量方式のタッチパネルにおいて指脂の付着を防止して、快適な入力環境を提供する入力補助具を提供することを技術的課題とする。
課題を解決するための手段
[0011] 前記課題を解決するために本発明では以下の手段を採用した。
[0012] 本発明の請求項1は、静電容量入力方式のタッチパネルを備えたデバイスの入力に用いる入力補助具であって、
入力者の指腹部に対して周回状に装着される非導電体からなるバンド本体と、
前記バンド本体の表面側に設けられた導電体または静電誘電体からなるタッチ入力用突起部とからなる入力補助具である。
[0013] これによれば、静電容量方式のタッチパネルにおいて指脂の付着を防止して、快適な入力環境を提供する入力補助具を実現できる。

・・・(中略)・・・

[0016] 本発明の請求項3は、前記有端シート部材は上層部と下層部とからなる2層構造であり、周回外部に位置される上層部は開口部を備えており、該開口部から下層部表面に設けられたタッチ入力用突起部が露出していることを特徴とする請求項2記載の入力補助具である。
[0017] これによれば、上層部が誤ってタッチパネルに接触することによる意図しない誤入力を防止でき、タッチ入力用突起部だけで確実に静電容量方式のタッチパネル入力が可能となる。

・・・(中略)・・・

[0020] 本発明の請求項5は、前記バンド本体は、入力者の指先端近傍を覆うキャップ状であり、装着時に指腹部に当接する該キャップの周面に開口部を有しているとともに、該開口部からはフリンジの中央に突起部が設けられたタッチ入力用突起部が露出している請求項1記載の入力補助具である。
[0021] これによれば、既存の指サック等を利用して入力補助具を構成することが可能となる。
発明の効果
[0022] 本発明によれば、静電容量方式のタッチパネルにおいて指脂の付着を防止して、快適な入力環境を提供する入力補助具を提供することができる。

・・・(中略)・・・

発明を実施するための形態
[0024] 以下、本発明の最良の実施形態を図面を用いて説明する。
[0025] 本実施形態の入力補助具は、静電容量入力方式のタッチパネルディスプレイを備えたデバイス、たとえばアップル社のiPhone,iPod TouchまたはiPad等(いずれもアップル社の商標)の入力に用いるものであるがこれに限られない。
[0026] 入力補助具は、図1に示すように、上層部(同図では下側に配置)と下層部(同図では上側に配置)との2層構造のシート部材であり、両層は図示しない粘着層によって互いに接着されている。
[0027] 下層部は静電誘導材料または導電材料で構成されており、その中央部には入力用突起部が設けられている。
[0028] 上層部は伸縮性のある非導電材料で構成されており、その表面(同図では下側面)が印刷面として構成されており、広告やキャラクタが印刷されている。この上層部の中央には円形状の開口部が設けられており、この開口部を介して前記下層部の入力突起部の先端が露出するようになっている。
[0029] 下層部の内側部(上面)の一端部近傍と、上層部の外側部(下面)の他端部近傍とには面ファスナーが取り付けられており、両端部が重ね合わされることにより、図3に示すように入力者の指腹部に周回するように装着可能になっている。
[0030] この入力補助具を指に装着した状態で、入力用突起部をタッチパネルに接触させて各種の入力を行う。
[0031] このとき、本実施形態の入力補助具であれば、デバイスのタッチパネルに接触するのは導電材料または静電誘導材料からなる入力用突起部であり、ユーザの指が直接タッチパネルに接触することはないため、指先の脂分がタッチパネルに付着して見栄えが悪くなることを防止できる。また、この入力補助具は、指先に装着するものであるため、指の腹部分で直接入力する場合に較べて違和感がなく、かつ、突起部により確実な入力が可能となる。
[0032] 図4は本発明の別の実施形態としての入力補助具を示している。
[0033] 同図に示すように、この入力補助具では、入力者の指先端近傍を覆うキャップ状のバンド本体を有している。このバンド本体は非導電材料であればよく、既存の事務用品として販売されている指サックを利用することもできる。
[0034] バンド本体を指に装着した際に、指の指腹部に当接する周面部分には、開口部を有しており、この開口部からはタッチ入力用突起部材が露出している。
[0035] タッチ入力用突起部材は、導電材料または静電誘導材料で構成されており、円盤状のフリンジ部と、このフリンジ部の一面側に断面円形状の突起部が設けられている。フリンジ部は開口部の経よりも大経で構成されており、このフリンジ部が開口部に係止されるようになっている。そして、図7に示すように、指に装着した際には、フリンジ部はバンド本体と指の周面との間に挟持されるため、特に固定手段を設ける必要がなく、かつ、タッチ入力用突起部のみを適宜交換することが可能となる。」

ここで、引用文献1の上記記載、特に段落[0032]?[0035]の記載を引用文献1の図4と技術常識に照らせば、引用文献1の段落[0035]でいう「タッチ入力用突起部材」は、「タッチパネルの画面に対する物理的接触を介して操作するための断面円形状の導電性突起部と、円盤状のフリンジ部とを有し、前記断面円形状の突起部は、画面に対する物理的接触により操作するに十分な硬さを有し、前記断面円形状の突起部の突起高さおよび太さはそれぞれ、タッチパネルの画面に対する物理的接触により操作することが可能な所定高さおよび所定太さを有する」ものといえる。
したがって、引用文献1には、
「入力者の指先端近傍を覆う非導電体からなるキャップ状のバンド本体と、
導電材料で構成され、タッチパネルの画面に対する物理的接触を介して操作するための断面円形状の突起部と、円盤状のフリンジ部とを有し、
前記断面円形状の突起部は、画面に対する物理的接触により操作するに十分な硬さを有し、前記断面円形状の突起部の突起高さおよび太さはそれぞれ、タッチパネルの画面に対する物理的接触により操作することが可能な所定高さおよび所定太さを有する、タッチ入力用突起部材、
とを有する入力補助具。」
の発明(以下、「引用文献1記載発明」という。)が記載されているといえる。

(2)当審による平成26年3月25日付けの拒絶理由通知書で引用した特開2003-223259号公報(以下、「引用文献2」と呼ぶ。)には、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子機器のキー操作を円滑かつ簡便に行うために、電子機器使用者の指先に取り付けて使用する補助用具であって、
その表面の一部が突出した突起形状を有するとともに、その裏面が電子機器使用者の指先及び電子機器に対して着脱可能な装着面となっていることを特徴とする電子機器のキー操作補助用具。

・・・(中略)・・・

【請求項3】 前記裏面に粘着剤が塗工されている請求項1記載のキー操作補助用具。」

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、携帯電話等の電子機器のキー操作を円滑かつ簡便に行うために、電子機器使用者の指先に取り付けて使用する補助用具に関する。
【0002】
【従来の技術】 近年、携帯電話等の電子機器の普及が目覚ましい。このような電子機器は、携帯できるよう小型化が求められ、それに伴って操作キー(ボタン)もまた小さくなりつつあり、使用者の指より小さいサイズになることもある。。
【0003】 また、最近の電子機器は、その充実した機能や性能を発揮させるために、使用者に複雑で多くのキー操作を要求するため、使用者がかかるキー操作を行うにはある程度の熟練が必要となり、特に高齢者や身体的に指の大きい男性にとっては、操作が困難であったり、操作に慣れるのに時間がかかるという問題があった。
【0004】 従来、このような電子機器のキー操作を改善するための手段の1つとして、特開2001-149137公報には、長く伸ばした生爪あるいは人工爪の裏側に装着して指先の代用とする人工指頭が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、前記の人工指頭は、長く伸ばした生爪や人工爪の裏側に装着することを前提とした形状となっており、長い生爪や人工爪を持たない電子機器使用者では、通常爪裏が外部に露出しないため、これを装着することができない。
【0006】 また、長い生爪や人工爪をもつ電子機器使用者がこの人工指頭を装着した場合でも、スムーズなキー操作には依然として熟練を必要とする。なぜなら、人工指頭の装着により、電子機器使用者の実際の指先と操作キーとの距離が長くなって、その距離感をつかむまでにある程度の時間を要するからである。
【0007】 本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長い生爪や人工爪をもつ電子機器使用者に対象が限定されることなく、電子機器のキー操作を円滑かつ簡便に行うことができるような補助用具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】 本発明によれば、電子機器のキー操作を円滑かつ簡便に行うために、電子機器使用者の指先に取り付けて使用する補助用具であって、その表面の一部が突出した突起形状を有するとともに、その裏面が電子機器使用者の指先及び電子機器に対して着脱可能な装着面となっていることを特徴とする電子機器のキー操作補助用具、が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】 前記のとおり、本発明に係るキー操作補助用具は、その表面の一部が突出した突起形状を有するとともに、その裏面が電子機器使用者の指先及び電子機器に対して着脱可能な装着面となっている。電子機器使用者は、この補助用具を、キーを操作する指の指先(通常は、指の腹よりも先端よりの部位)に直接取り付け、当該補助用具表面の突出した突起形状の部分にて操作キーを押すようにする。
【0010】 そして、このように本発明の補助用具を用いてキー操作行うことにより、小さいキーでも容易かつ確実に押すことができる。また、突起形状部分の高さを適切に小さく保つことにより、従来の感覚のままキー操作を行うことが可能であり、しかもその操作を確実かつ迅速に改善させる。すなわち、当該補助用具を装着した状態でのキー操作には、ほとんど慣れを必要とせず、装着して直ぐに快適なキー操作を実現できる。
【0011】 図1は、本発明に係るキー操作補助用具の実施形態の一例を示す説明図で、(a)が正面図、(b)が側面図である。本発明の補助用具1においては、その裏面3から突起形状を有する表面2の最も高い部分までの高さHが1.0?5.0mmであることが好ましく、当該範囲とすることで、ほとんど従来感覚のままキー操作を行うことができる。この高さHが1.0mm未満ではキー操作の改善効果が低く、また、5.0mmを超えると実際の指先と操作キーとの距離が長くなって、その距離感をつかむまでに時間を要するようになる。
【0012】 裏面3は、電子機器使用者の指先及び電子機器に対して着脱可能な装着面となっており、電子機器を使用している時は、前述のように使用者の指先に装着し、電子機器を使用していない時には紛失しないように電子機器の一部に装着しておくことで、繰り返し使用することができる。

・・・(中略)・・・

【0016】 これらの粘着剤を使用者の指先表面の角質層や電子機器表面に再剥離可能なように、その塗工量を調整して裏面3に塗工する。なお、装着面の他の状態の例として、粘着剤を塗工する代わりに、裏面に吸盤を設け、当該吸盤の吸着力により電子機器使用者の指先及び電子機器に装着するようにしてもよい。
【0017】 装着面となる裏面3の外周形状は、図1のような円形の他、楕円形、長円形、卵形、ひょうたん形などのような角の無い形状とすることが好ましい。これらのような角の無い外周形状は、指先の曲面形状になじみやすいため剥がれにくいからである。一方、裏面の外周形状が三角形や四角形などのように角のある形状である場合は、当該角部が剥がれやすく、それを起点として剥離が進行し、機器操作中に指先から脱落する可能性がある。

・・・(中略)・・・

【0023】
【実施例】 以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0024】 裏面に合成ゴム系粘着剤が塗工されたウレタン樹脂シートを用いて、図1に示すような裏面3の外周形状が円形(直径L:9.0mm)で、表面2がドーム形の突起形状(高さH:4.0mm)を有するキー操作補助用具1を作製した。この補助用具1を図4のように親指の指先に貼付し、当該親指にて図5のように携帯電話4の操作を行ったところ、補助用具1を用いない場合に比して、円滑で確実なキー操作を実現できた。
【0025】
【発明の効果】 以上説明したように、本発明のキー操作補助用具は、指先に取り付けるだけで、携帯電話等の電子機器のキー操作を円滑かつ簡便とし、特に高齢者や身体的に指の大きい男性のキー操作改善に有用である。また、使用に当たってほとんど慣れを必要とせず、装着して直ぐに快適なキー操作を実現できる。更に、本発明の補助用具は指先に装着して使用するので、従来の人工指頭のように長い生爪や人工爪をもつ電子機器使用者に対象が限定されない。」

ここで、引用文献2の上記記載を引用文献2の各図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。
ア.本願明細書においても、本願の図1?6に示されるような「画面操作用治具」が「画面操作用シール」と呼称されているように、「シール」という用語は、「付着面を有する小片」一般を指すものとして使用され得る用語であり、引用文献2の請求項3や各図面に示される「キー操作用補助具」も、「シール」の一種であるということができるから、引用文献2の該「キー操作用補助具」は、「キー操作用シール」とも呼び得る。
イ.引用文献2において「突出した突起形状」を有するとされている「表面の一部」は、「キー操作用突起部」ともいい得る。
ウ.引用文献2でいう「装着面」(裏面)は、「指に装着するための装着部」とも「指に貼り付けるための貼付部」ともいい得、引用文献2の請求項3に係る発明のように該「装着面」(裏面)に粘着剤が塗工される場合には、当該「粘着剤」は、当然に「指の腹に貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状」になる。

したがって、引用文献2には、
「キー操作用シールであって、キー操作用突起部と、指に装着するための装着部とを有し、前記装着部は、指に貼り付けるための貼付部を有し、該貼付部は、キー操作用突起部と反対側に設けられ、指の腹に貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状であり、前記キー操作用突起部は、前記フィルムの前記付着面と反対側の面から突起するように設けられる、キー操作用補助具」の発明(以下、「引用文献2記載発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
引用文献1記載発明と本願発明とを対比すると、次のことがいえる。
(1)引用文献1記載発明の「断面円形状の突起部」は、本願発明の「画面操作用突起部」に相当する。
(2)引用文献1記載発明の「バンド本体」と「フリンジ部」からなる部分は、本願発明の「指に装着するための装着部」に相当する。
また、引用文献1記載発明の「入力補助具」は、「画面操作用治具」とも呼び得る。

したがって、引用文献1記載発明と本願発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「タッチパネルの画面に対する物理的接触を介して操作するための画面操作用導電性突起部と、指に装着するための装着部とを有し、
前記画面操作用導電性突起部は、画面に対する物理的接触により操作するに十分な硬さを有し、前記画面操作用導電性突起部の突起高さおよび太さはそれぞれ、タッチパネルの画面に対する物理的接触により操作することが可能な所定高さおよび所定太さを有する、画面操作用治具。」
である点。

(相違点)
本願発明においては、「装着部」は、「指に貼り付けるための貼付部を有し、該貼付部は、画面操作用突起部と反対側に設けられ、指の腹だけでなく、手袋をした状態で、指の腹に相当する手袋の外表面にも貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状」のものであり、それに付随して、「画面操作用導電性突起部」は、「前記フィルムの前記付着面と反対側の面から突起するように設けられ」るものであり、結果として、「画面操作用治具」は全体として「画面操作用シール」といい得るものであるのに対し、引用文献1記載発明においては、「装着部」は、「指に貼り付けるための貼付部を有し、該貼付部は、画面操作用突起部と反対側に設けられ、指の腹だけでなく、手袋をした状態で、指の腹に相当する手袋の外表面にも貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状」のものではなく、「入力者の指先端近傍を覆う非導電体からなるキャップ状のバンド本体と、導電材料で構成されるタッチ入力用突起部材の円盤状のフリンジ部」からなるものであり、「画面操作用導電性突起部」は「前記フィルムの前記付着面と反対側の面から突起するように設けられ」るものではなく、「画面操作用治具」は全体として「画面操作用シール」といい得るものではない点。

3.判断

(1)上記相違点について
次のア.?カ.の事情を総合すると、引用文献1記載発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことというべきである。

ア.一般に、公知発明に対し、当該公知発明が解決しようとした課題を解決できる範囲で適宜の改変を施すことは、当業者の通常の創作活動の範囲内のことである。したがって、公知発明に対し、当該公知発明が解決しようとした課題を解決できる範囲で適宜の改変を施すことは、その改変が当業者が容易に想到し得なかった構成への改変であるか、あるいはその改変に対する阻害要因がある場合を除き、当業者が容易になし得たことである。

イ.これを公知発明といえる引用文献1記載発明について見るに、引用文献1の段落[0010]の「本発明は、このような点に着目してなされたものであり、静電容量方式のタッチパネルにおいて指脂の付着を防止して、快適な入力環境を提供する入力補助具を提供することを技術的課題とする。」という記載や、段落[0022]の「本発明によれば、静電容量方式のタッチパネルにおいて指脂の付着を防止して、快適な入力環境を提供する入力補助具を提供することができる。」という記載によれば、引用文献1記載発明が解決しようとした課題が、「タッチパネル操作時における指脂のタッチパネルへの付着を防止すること」といった点にあることは明らかである。
したがって、その「タッチパネル操作時における指脂のタッチパネルへの付着を防止すること」といった課題を解決できる範囲で引用文献1記載発明に適宜の改変を施すことは、その改変が当業者が容易に想到し得なかった構成への改変であるか、あるいはその改変に対する阻害要因がある場合を除き、当業者が容易になし得たことである。

ウ.以上を前提に検討するに、引用文献1記載発明の「装着部」(「バンド本体」と「フリンジ部」からなる部分)の構成に何らかの改変を施しても、上記「タッチパネル操作時における指脂のタッチパネルへの付着を防止すること」といった課題を解決できることは明らかであるから、その「装着部」の構成に対して何らかの改変を施すことは、その改変が当業者が容易に想到し得なかった構成への改変であるか、あるいはその改変に対する阻害要因がある場合を除き、当業者が容易になし得たことである。

エ.そこで、まず、引用文献1記載発明の「装着部」の構成(「バンド本体」と「フリンジ部」からなる構成)を本願発明の「装着部」の構成(指に貼り付けるための貼付部を有し、該貼付部は、画面操作用突起部と反対側に設けられ、指の腹だけでなく、手袋をした状態で、指の腹に相当する手袋の外表面にも貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状であり、という構成)に変更する改変(以下、「改変A」と呼ぶ。)が、当業者が容易に想到し得なかった構成への改変であるか否かについて検討するに、以下の理由で、当該改変Aは当業者が容易に想到し得なかった構成への改変ではないと考えるのが妥当である。
(ア)上記2.(2)で言及したとおり、引用文献2には、引用文献2記載発明が記載されているといえるが、該引用文献2記載発明は、「『操作用突起部を有する、電子機器の操作用補助具』であって指に装着して使用するものである」という意味において、引用文献1記載発明と共通の技術分野に属する発明であるから、引用文献1記載発明に接する当業者は、上記ウ.で言及した「装着部」の構成に対する改変にあたって、引用文献2記載発明の構成をも当然に考慮し得たといえる。
(イ)そして、共に指先に装着して使用するものであるという意味における引用文献1記載発明と引用文献2記載発明の使用態様の共通性と、引用文献2記載発明の「装着部」の構成の簡易さからみて、引用文献2記載発明の「装着部」の構成が引用文献1記載発明においても有用であることは、当業者に明らかである。
(ウ)してみれば、引用文献1記載発明の「装着部」の構成に改変を施し、引用文献2記載発明の装着部の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(エ)引用文献1記載発明の「装着部」の構成に改変を施して引用文献2記載発明の装着部の構成を採用すると、引用文献1記載発明の「装着部」を「指に貼り付けるための貼付部を有し、該貼付部は、画面操作用突起部と反対側に設けられ、指の腹に貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状であり、」という構成に改変したものが構成されるが、「指の腹に貼り付けるのに十分な広さを有する付着面」は、「指の腹だけでなく、手袋をした状態で、指の腹に相当する手袋の外表面にも貼り付けるのに十分な広さを有する付着面」でもあるのが普通であるから、結局、引用文献1記載発明の「装着部」を「指に貼り付けるための貼付部を有し、該貼付部は、画面操作用突起部と反対側に設けられ、指の腹に貼り付けるのに十分な広さを有する付着面を備えたフィルム状であり、」という構成に改変したものが構成されることになる。
(オ)以上のことは、上記改変Aが、当業者が容易に想到し得なかった構成への改変ではないことを意味する。

オ.次に、上記改変Aに対する阻害要因があったというべきか否かについて検討するに、以下の理由で、上記改変Aに対する阻害要因はなかったと考えるのが妥当である。
(ア)引用文献1の段落[0017]の「これによれば、上層部が誤ってタッチパネルに接触することによる意図しない誤入力を防止でき、タッチ入力用突起部だけで確実に静電容量方式のタッチパネル入力が可能となる。」という記載は、引用文献1の図1?3に示される実施形態に対応するものと解される請求項3に係る発明についての効果の記載ではあるが、引用文献1の図4の実施形態に基づいて認定した引用文献1記載発明の「キャップ状のバンド本体」も「非導電材料」で構成されるものとされていることを考慮すると、引用文献1記載発明にも妥当すると考える余地がある。
そして、そのことは、引用文献1記載発明の「入力者の指先端近傍を覆う非導電体からなるキャップ状のバンド本体」が、「画面操作用突起部」(断面円形状の突起部)を指に装着するという機能(以下、「装着機能」と呼ぶ。)に加えて、「画面操作用突起部」(断面円形状の突起部)のまわりの導電性の部分がタッチパネルに誤って接触することを回避するという機能(以下、「誤接触回避機能」と呼ぶ。)も担っていると解する余地があることを意味する。
したがって、上記改変Aによって、上記「装着機能」あるいは「誤接触回避機能」の何れかが損なわれ、引用文献1記載発明の実施に支障が生じるような場合には、上記改変Aには阻害要因があると考えるのが妥当であるともいえる。
しかしながら、以下に示すように、上記改変Aによっては引用文献1記載発明の実施に支障が生じることはないと考えられるから、上記改変Aには阻害要因はないと考えるのが妥当である。
a.上記改変Aによって、上記「装着機能」が損なわれることがないことは明らかである。
b.上記改変Aは、引用文献1記載発明の、上記「誤接触回避機能」を担うものともいえる「キャップ状のバンド本体」を無くする改変であるから、該改変Aが施された場合には、上記「キャップ状のバンド本体」が担っていた「誤接触回避機能」は損なわれることになるが、引用文献1記載発明を認定した根拠としている引用文献1の図4に示されるような形状のタッチ入力用突起部材(「導電素材」という記載が付されている部分)が使用される場合には、上記改変Aを施しても、普通の使用状況では「画面操作用突起部」(断面円形状の突起部)のまわりの導電性の部分がタッチパネルに誤って接触するという事態は生じないと考えられる。
c.以上のことは、上記改変Aによっては引用文献1記載発明の実施には支障が生じないことを意味している。
(イ)ほかに、上記改変Aに対する阻害要因は見当たらない。

カ.以上のことは、上記改変Aが、当業者が容易になし得たことであることを意味しているが、引用文献1記載発明に上記改変Aが施された場合に、引用文献1記載発明の「画面操作用導電性突起部」が「前記フィルムの前記付着面と反対側の面から突起するように設けられ」るものとなり、引用文献1記載発明の「画面操作用治具」が全体として「画面操作用シール」といい得るものとなることは、当然のことである。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用文献1記載発明に上記改変Aを施したものが奏するであろうと当業者が予測する効果に比して格別顕著なものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1記載発明と引用文献2記載発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載発明と引用文献2記載発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-29 
結審通知日 2014-07-30 
審決日 2014-08-12 
出願番号 特願2012-172380(P2012-172380)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正和  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 乾 雅浩
和田 志郎
発明の名称 画面操作用治具および画面の操作方法  
代理人 岡 潔  
代理人 岡 潔  
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