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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1302640
審判番号 不服2013-19891  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-11 
確定日 2015-07-01 
事件の表示 特願2008-535574「多層実装マット及びそれを含む汚染防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日国際公開、WO2007/044485、平成21年 3月19日国内公表、特表2009-511819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年10月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年10月13日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年4月11日に国内書面並びに明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成21年10月13日に手続補正書が提出され、平成21年10月20日に上申書が提出され、平成23年8月1日付けで拒絶理由が通知され、平成24年2月8日に意見書及び手続補正書が提出され、平成24年6月22日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成24年12月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年6月3日付けで平成24年12月26日付け手続補正についての補正を却下する決定がされるとともに同日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年10月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成26年1月20日付けで書面による審尋がされ、平成26年7月22日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年10月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年10月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成25年10月11日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、下記アに示す本件補正前の(すなわち、平成24年2月8日に提出された手続補正書により補正された)請求項1ないし12を、下記イに示す請求項1ないし12へと補正するものである。
ア 「【請求項1】
セラミック繊維を含み、対向する横エッジによって画定される幅を有する、少なくとも1つの非膨張性層、及び
膨張性材料を含み、対向する横エッジによって画定される幅を有する、少なくとも1つの膨張性層、
前記膨張性層の幅が前記非膨張性層の幅より小さく、前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく、そして前記膨張性層は露出した主要表面を有している、汚染防止装置内の汚染防止要素を実装する多層マット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの非膨張性層が、前記少なくとも1つの膨張性層の両横エッジが前記少なくとも1つの非膨張性層の横エッジの内側に位置づけられるように、互いに関連して配置される、請求項1に記載の多層マット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの非膨張性層及び前記少なくとも1つの膨張性層が、前記少なくとも1つの膨張性層の横エッジの1つが少なくとも1つの非膨張性層の横エッジの線に沿っており、前記少なくとも1つの膨張性層のもう一方の横エッジのみが、少なくとも1つの非膨張性層の横エッジの内側に位置するように、互いに関連して配置される、請求項1に記載の多層マット。
【請求項4】
セラミック繊維を含む1つ以上の層の少なくとも一つの非膨張性ストリップを更に含み、前記非膨張性ストリップが少なくとも1つの前記膨張性層の1つの横エッジに並んで位置づけられ、前記ストリップの幅が少なくとも1つの前記膨張性層の幅より狭い、請求項1?3のいずれか1項に記載の多層マット。
【請求項5】
前記少なくとも一つの非膨張性ストリップが二つの非膨張性ストリップであり、各非膨張性ストリップがセラミック繊維を含む1つ以上の層であり、1つの非膨張性ストリップが少なくとも1つの前記膨張性層の各横エッジに並んで位置づけられ、各前記ストリップの幅が少なくとも1つの前記膨張性層の幅より狭い、請求項4に記載の多層マット。
【請求項6】
各前記非膨張性ストリップ及び少なくとも1つの膨張性層が実質的に同一平面上にある、請求項4または5に記載の多層マット。
【請求項7】
内壁を有するハウジング、
それらの間に間隙を形成するように前記ハウジングに配置された汚染防止要素、及び
請求項1?3のいずれか1項に記載の多層マットを含み、
前記汚染防止要素が、前記ハウジングに実装されるように前記マットが前記間隙に配置されている、汚染防止装置。
【請求項8】
前記ハウジングの内壁の1部分が凹部を規定し、前記マットが少なくとも前記膨張性層の1部分が前記凹部内に受容されるように位置づけられ、前記膨張性層の各横エッジがどれも前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露されない、請求項7に記載の汚染防止装置。
【請求項9】
前記ハウジングの内壁の1部分が凹部を規定し、前記マットが前記膨張性層が前記凹部内に受け入れられるように位置づけられ、前記膨張性層の1つの横エッジが前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露される、請求項7に記載の汚染防止装置。
【請求項10】
内壁を有するハウジング、
それらの間に間隙を形成するように前記ハウジングに配置される汚染防止要素、及び
請求項4?6のいずれか1項に記載の多層マットを含み、
前記マットが前記汚染防止要素を前記ハウジングに実装するように前記間隙に配置される、汚染防止装置。
【請求項11】
前記ハウジングの内壁の1部分が凹部を規定し、前記マットが前記膨張性層が前記凹部内に受け入れられ前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露されないように位置づけられ、1つの膨張性ストリップが前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露される、請求項10に記載の汚染防止装置。
【請求項12】
排気システムが、請求項7?11のいずれか1項に記載の汚染防止装置からなる、内燃機関のための排気システム。」

イ 「【請求項1】
セラミック繊維を含み、対向する横エッジによって画定される幅を有する、少なくとも1つの非膨張性層、及び
膨張性材料を含み、対向する横エッジによって画定される幅を有する、少なくとも1つの膨張性層、
(ここで、前記膨張性層の幅が前記非膨張性層の幅より小さく、前記少なくとも1つの非膨張性層の層厚方向の中央をとおる面は前記膨張性層の層厚方向の中央をとおる面と同一平面にはなく、前記少なくとも1つの非膨張性層の対向する各横エッジのどれもが露出され、そして前記膨張性層は露出した主要表面を有している。)並びに
汚染防止装置内の汚染防止要素、
を実装する多層マット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの非膨張性層が、前記少なくとも1つの膨張性層の両横エッジが前記少なくとも1つの非膨張性層の横エッジの内側に位置づけられるように、互いに関連して配置される、請求項1に記載の多層マット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの非膨張性層及び前記少なくとも1つの膨張性層が、前記少なくとも1つの膨張性層の横エッジの1つが少なくとも1つの非膨張性層の横エッジの線に沿っており、前記少なくとも1つの膨張性層のもう一方の横エッジのみが、少なくとも1つの非膨張性層の横エッジの内側に位置するように、互いに関連して配置される、請求項1に記載の多層マット。
【請求項4】
セラミック繊維を含む1つ以上の層の少なくとも一つの非膨張性ストリップを更に含み、前記非膨張性ストリップが少なくとも1つの前記膨張性層の1つの横エッジに並んで位置づけられ、前記ストリップの幅が少なくとも1つの前記膨張性層の幅より狭い、請求項1?3のいずれか1項に記載の多層マット。
【請求項5】
前記少なくとも一つの非膨張性ストリップが二つの非膨張性ストリップであり、各非膨張性ストリップがセラミック繊維を含む1つ以上の層であり、1つの非膨張性ストリップが少なくとも1つの前記膨張性層の各横エッジに並んで位置づけられ、各前記ストリップの幅が少なくとも1つの前記膨張性層の幅より狭い、請求項4に記載の多層マット。
【請求項6】
各前記非膨張性ストリップ及び少なくとも1つの膨張性層が実質的に同一平面上にある、請求項4または5に記載の多層マット。
【請求項7】
内壁を有するハウジング、
それらの間に間隙を形成するように前記ハウジングに配置された汚染防止要素、及び
請求項1?3のいずれか1項に記載の多層マットを含み、
前記汚染防止要素が、前記ハウジングに実装されるように前記マットが前記間隙に配置されており、前記少なくとも1つの非膨張性層の対向する各横エッジのどれもが、前記汚染制御要素を流れる排気ガスに曝されている、汚染防止装置。
【請求項8】
前記ハウジングの内壁の1部分が凹部を規定し、前記マットが少なくとも前記膨張性層の1部分が前記凹部内に受容されるように位置づけられ、前記膨張性層の各横エッジがどれも前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露されない、請求項7に記載の汚染防止装置。
【請求項9】
前記ハウジングの内壁の1部分が凹部を規定し、前記マットが前記膨張性層が前記凹部内に受け入れられるように位置づけられ、前記膨張性層の1つの横エッジが前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露される、請求項7に記載の汚染防止装置。
【請求項10】
内壁を有するハウジング、
それらの間に間隙を形成するように前記ハウジングに配置される汚染防止要素、及び
請求項4?6のいずれか1項に記載の多層マットを含み、
前記マットが前記汚染防止要素を前記ハウジングに実装するように前記間隙に配置される、汚染防止装置であって、前記少なくとも1つの非膨張性層の対向する各横エッジのどれもが、前記汚染制御要素を流れる排気ガスに曝されている、汚染防止装置。
【請求項11】
前記ハウジングの内壁の1部分が凹部を規定し、前記マットが前記膨張性層が前記凹部内に受け入れられ前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露されないように位置づけられ、1つの非膨張性ストリップが前記汚染防止装置を通り抜ける排気ガスに暴露される、請求項10に記載の汚染防止装置。
【請求項12】
排気システムが、請求項7?11のいずれか1項に記載の汚染防止装置からなる、内燃機関のための排気システム。」
(下線は、本件補正箇所を示すために、請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「非膨張性層」の「横エッジ」に関して、本件補正後に「少なくとも1つの非膨張性層の対向する各横エッジのどれもが露出され」と限定する事項を含むものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

なお、本願補正発明は、「(」及び「)」と、括弧を用いた記載となっているものの、括弧内は、「膨張性層」及び「非膨張性層」の配置関係並びにそれぞれの層の形状構造に関する事項、及び「非膨張性層」の「横エッジ」に関する事項についての説明であって、発明を特定するための事項であるから、括弧内の記載を含めて総合的に認定した。

3 独立特許要件について
(1)引用文献
拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2002-502930号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 引用文献の記載
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 特に自動車における触媒排気ガス清浄装置(1)であって、少なくとも1つのモノリシックセラミックハニカム部材(2)を有し、これは金属ケーシング(3)に配置され、そこにはケーシング(3)とハニカム部材(2)との間に補償層(4)が配置されており、前記補償層は、
境界領域(9)が摩耗の危険性を有する膨張マット(5)と、
境界(7)と内部領域(8)とを有する断熱マット(6)とを含み、
断熱マット(6)の境界(7)が、ハニカム部材(2)の少なくとも一方の端部領域において、残りの内部領域(8)より厚く、
膨張マット(5)が、ハニカム部材(2)に背を向けている断熱マット(6)の内部領域(8)の側部近傍に、断熱マット(6)の境界(7)のより厚い領域が摩耗の危険性のある膨張マット(5)の境界領域(9)を覆うような態様で配置されることを特徴とする、触媒排気ガス清浄装置(1)。
【請求項2】 境界(7)のより厚い領域が、断熱マット(6)をケーシング(3)の方へ折り畳むことにより作製されることを特徴とする、請求項1に記載の触媒排気ガス装置(1)。
【請求項3】 断熱マット(6)が、非常に低い熱伝導性および熱対流性を有するセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒排気ガス清浄装置(1)。
【請求項4】 断熱マット(6)が、少なくともその境界(7)のより厚い領域において、長いセラミックファイバを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の触媒排気ガス清浄装置(1)。
【請求項5】 膨張マット(5)が、水を吸収すると膨張することによって、近接した空洞を封止し得るセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒排気ガス清浄装置(1)。
【請求項6】 補償層(4)が複合材料として設計されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の触媒排気ガス清浄装置(1)。
【請求項7】 複合材料として設計された補償層(4)が、好ましくは少なくとも1回ハニカム部材(2)のまわりに円周方向に巻かれることを特徴とする、請求項6に記載の触媒排気ガス清浄装置(1)。
【請求項8】 複合材料として設計された補償層(4)が、ケーシング(3)の他の何らかの輪郭と適合し得る予め製造された円筒状または楕円形の部分、特に半月形の部分から組立てられることを特徴とする、請求項6に記載の触媒排気ガス清浄装置(1)。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項8】 )

(イ)「【0019】
図1は、本発明に従った排気ガス清浄装置1の部分断面図である。ここには、ケーシング3内に、ハニカム部材2が配置され、これは補償層4に包まれている。
【0020】
ハニカム部材2は、モノリシックのセラミックハニカム部材、特にいわゆる薄肉セラミックから作られたものであるのが好ましい。しかしながら、薄板金から構築されたハニカム部材2を類似の態様で保持することもでき、その目的も同様に、好ましくは金属のケーシング3に対する熱的隔離である。考察中のこの実施例では、セラミック材料のプライを含む補償層4、好ましくは膨張マット5、および別の断熱層、いわゆる断熱マット6を用いて、保持持続および断熱性を達成する。これとともに、これらの2層の積み重ねが補償層4を形成し、これは一方でハニカム部材2をケーシング3に安定して保持し、他方で、非常に優れた断熱性を補償する。断熱マット6はセラミック材料で構成され、非常に低い熱導電性を有するので、ハニカム部材2からケーシング3への熱の伝導および対流を防ぐ。膨張マット5は雲母の粒子を含み、それらのまわりに十分な空間があるという程度まで水を吸収し、その過程で膨張する。言換えれば、膨張マット5は、ケーシング3とハニカム部材2との性質の違いにより、また製造公差により形成される空洞を満たし、よってハニカム部材2が長期間の動作にわたってケーシング3内に安定して装着されることを補償する。セラミック材料の膨張マット5および断熱マット6は典型的にはファイバマットであり、これはセラミックハニカム部材2を保持するための先行技術により公知であり、外部ケーシング3とハニカム部材2との製造公差を補償し、かつ長期間にわたる動作を保持するために必要な厚さを有する。なお、多くの補償層4および/または代替的には、断熱層6を単にさらに積み重ねたもの(これらは交互に放射状に沿う)が、特に排気ガス清浄装置1が非常に高い動作温度にさらされる場合(これはたとえば燃焼機関の出口近くに配置されたときに起こる)に設けられ、断熱性を向上させることも可能である。
【0021】
公知のように、熱い排気ガスの脈流が、雲母の粒子を含む膨張マット5を摩耗させるので、これに対する防護装置が、ハニカム部材2の少なくとも一方の端部領域に、好ましくはハニカム部材2の両方の端部領域に設けられる。この目的のため、本来摩耗に対して非常に耐性のあるセラミックの断熱層6は、ケーシング3に向けて折り畳まれ、すなわち厚い境界が作られて、摩耗の危険性のある膨張マットの境界領域を覆うようにする。この態様で構築された補償層4を複合材料として設計すると、本発明に従った排気ガス清浄装置1の製造に特に有利である。
【0022】
図2は、断熱マット6および膨張マット5を含む複合材料として設計され、かつ少なくとも1回ハニカム部材2のまわりに円周方向に巻かれ得ることが好ましい、補償層4を示す。代替的実施例(図示せず)では、複合材料として設計された補償層4は、ケーシング3の他の何らかの輪郭と適合され得る予め製造された円筒状または楕円形の部分、特に半月形の部分から組立てられる。断熱マット6、すなわち熱隔離層が、少なくともその境界7のより厚い領域において、長いセラミックファイバにより構成されると、排気ガスの脈流による摩耗に対してあまり影響を受けなくなり、摩耗の危険性のある膨張マット5の境界領域9に対して境界7のより厚い領域によってもたらされる保護が適切なものとなる。
【0023】
本発明は、特に簡単で、同時に効果的な構造を特徴とし、自動車の触媒排気ガス清浄装置1において、エンジンの近くで使用した場合にも適切である。同時に、これはハニカム部材2の安定した装着を可能にし、また同時にケーシング3においてハニカム部材2の優れた断熱性を提供し、さらに、排気ガスの脈流による摩耗に対して適切に作用する膨張材料を含む補償層4のプライ5を保護する。」(段落【0019】ないし【0023】)

イ 引用文献に記載された事項
(ア) 図2の記載から、断熱マット6の端部は、折り畳まれているものの端部といえる部分であることは明らかであるから、断熱マットが対向する端部によって画定される幅を有するものであることが看取できる。同様に、膨張マット5も、対向する端部によって画定される幅を有するものであることが看取できる。

(イ) 図2の記載から、膨張マット5の幅が断熱マット6の幅より小さいことに加え、断熱マット6の層厚方向の中央をとおる面は膨張マット5の層厚方向の中央をとおる面と同一平面にないことが看取できる。

(ウ) 図2の記載から、断熱マット6の対向する各端部が露出されていることに加え、膨張マット5が露出した表面を有するものであることが看取できる。

(エ) 上記(1)ア(ア)及び(イ)の記載から、膨張マット5が膨張性材料を含むものであることは明らかである。

ウ 引用文献に記載された発明
上記ア及びイ並びに図1及び2の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「セラミックファイバを含み、対向する端部によって画定される幅を有する、断熱マット6、及び
膨張性材料を含み、対向する端部によって画定される幅を有する、膨張マット5、
膨張マット5の幅が断熱マット6の幅より小さく、断熱マット6の層厚方向の中央をとおる面は膨張マット5の層厚方向の中央をとおる面と同一平面にはなく、断熱マット6の対向する各端部が露出され、そして膨張マット5は露出した表面を有し、
触媒排気ガス清浄装置1内のハニカム部材2を装着する補償層4。」

(2)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「セラミックファイバ」は、その作用、構造又は技術的意義からみて、本願補正発明における「セラミック繊維」に相当し、以下同様に、「断熱マット6」は「非膨張性層」に、「膨張性材料」は「膨張性材料」に、「膨張マット5」は「膨張性層」に、「露出した表面」は「露出した主要表面」に、「触媒排気ガス清浄装置1」は「汚染防止装置」に、「ハニカム部材2」は「汚染防止要素」に、「装着する」は「実装する」に、「補償層4」は「多層マット」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明における「端部」並びに「断熱マット6の対向する各端部が露出され」は、
本願補正発明における「横エッジ」並びに「前記少なくとも1つの非膨張性層の対向する各横エッジのどれもが露出され」に、
「端部」並びに「非膨張性層の対向する各端部が露出され」という限りにおいてそれぞれ相当する。

ウ したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「セラミック繊維を含み、対向する端部によって画定される幅を有する、少なくとも1つの非膨張性層、及び
膨張性材料を含み、対向する端部によって画定される幅を有する、少なくとも1つの膨張性層、
(ここで、膨張性層の幅が非膨張性層の幅より小さく、少なくとも1つの非膨張性層の層厚方向の中央をとおる面は膨張性層の層厚方向の中央をとおる面と同一平面にはなく、少なくとも1つの非膨張性層の対向する各端部が露出され、そして膨張性層は露出した主要表面を有している。)並びに
汚染防止装置内の汚染防止要素、
を実装する多層マット。」
の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
幅を画定するものについて、
本願補正発明においては、「横エッジ」であるのに対し、引用発明においては、「端部」である点(以下、「相違点1」という。)。
(相違点2)
「非膨張性層の対向する各端部が露出され」について、
本願補正発明においては、「前記少なくとも1つの非膨張性層の対向する各横エッジのどれもが露出され」るのに対し、引用発明においては、「断熱マット6の対向する各端部が露出され」る点(以下、「相違点2」という。)。

(3)判断
ア 相違点1について
引用発明における各「端部」は、断熱マット6及び膨張マット5の幅をそれぞれ画定するものである。そして、端部によるものを、エッジによるものとすることに実質的な差異はないというべきであるから、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
また、端部により幅を画定するものを、端部における端又は縁等により幅を画定するものとすることは、技術の具体化の際に当業者が適宜なし得ることであるから、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明に基づき当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
引用発明の「断熱マット6」(本願補正発明の「非膨張性層」に相当。)は、「膨張マット5」において排気ガスにより摩耗の危険性のある箇所を保護するものであるから(上記3(1)ア)、「膨張マット5」の端部よりも「断熱マット6」の端部を排気ガス側すなわち外側に配置することは、当業者が通常採用し得ることである。そうすると、外側配置の「断熱マット6」の端部が、露出となることは明らかである。
そして、上記(3)アで検討したとおり、端部はエッジといえるものであるから、各エッジのどれもが露出されるようにすることに当業者の格別の創意は要しない。
また、各端部における端又は縁のどれもが露出されるようにすることについても当業者の格別の創意は要しない。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明に基づき、当業者が容易になし得ることである。

ウ そして、本願補正発明は、全体として検討しても、引用発明から、当業者が予測することができる以上の格別顕著な作用効果を奏するものではない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は引用発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
平成25年10月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、上記第2[理由]1アに示した請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、原査定の理由の概要については、次のとおりである。
1 原査定の理由の概要
(1)平成24年6月22日付け最後の拒絶理由
ア 理由1(特許法第17条の2第3項)
「平成24年2月8日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)または国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
・・・記・・・
前記手続補正によって、【請求項1】には、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面になく」という発明特定事項が付加された。
しかし、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にな」いことは、翻訳文等に記載も示唆もされておらず、前記手続補正によって導入された新たな技術的事項である。
つまり、「前記少なくとも1つの膨張性層」および「前記膨張性層」が同一の「膨張性層」を意味すると解釈すると、「前記少なくとも1つの膨張性層」および「前記膨張性層」は、当然に「同一平面」に存在する。そして、「前記少なくとも1つの膨張性層」および「前記膨張性層」が異なる「膨張性層」を意味すると解釈しても、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にな」いことは、翻訳文等に記載した事項から明確に把握されず、前記手続補正によって導入された新たな技術的事項と判断せざるを得ない。」

イ 理由2(特許法第36条第6項第2号)
「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・・・記・・・
(1) 【請求項1】には、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面になく」と記載されているが、何を意味するのか不明である。特に、(ア)「前記少なくとも1つの膨張性層」と「前記膨張性層」との関係が不明であり、(イ)どのように定義される「同一平面」を意味するのか不明である。
・・・
よって、請求項1?12に係る発明は、明確でない。」

(2)平成24年12月26日付け意見書
「(イ)請求項1について
補正前の請求項1中の「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく」を、補正後の請求項1において『前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記非膨張性層と同一平面にはなく』と補正しました。
その補正は、拒絶理由1において、審査官殿から、請求項1において「『前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく』という発明特定事項を追加するものであるが、当該構成は、本願の出願当初の明細書及び特許請求の範囲(国際出願の翻訳文)に記載されていない」とのご指摘を受けましたので、その拒絶理由を解消するための補正であります。
その補正の根拠は、請求項1に記載された構成の文脈からして、又、図1及びその説明を記載した本願明細書の段落0030の記載にあります。
その記載からみて、補正前の「前記膨張性層」は、『前記非膨張性層』(12)の誤記であることは明白でありますので、この補正事項は、その誤記を正すものであります。
又、この補正事項は、理由2の項目(1)において、審査官殿から「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく」の構成の意味するところが不明瞭であるとのご指摘を受けましたので、その拒絶理由を解消するためのものでもあります。
この補正により、補正後の請求項1に係る発明の構成は明りょうになったものと考えます。」

(3)平成25年6月3日付け補正の却下の決定
「・・・結 論・・・
平成24年12月26日付け手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、次の理由によって却下します。
・・・理 由・・・
平成24年12月26日付け手続補正後の請求項1?12に係る発明は、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記非膨張性層と同一平面になく、」という発明特定事項を有するものである。
しかし、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記非膨張性層と同一平面にな」いことは、国際出願日における国際特許出願の明細書もしくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)、または国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)に記載も示唆もされておらず、前記手続補正によって導入された新たな技術的事項である。
同日付け意見書において、出願人は、補正の根拠として、【図1】および段落【0030】を示している。
しかし、【図1】において、膨張性層20と非膨張性層12との接触面には、「膨張性層」および「非膨張性層」が存在するので、【図1】および段落【0030】は、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記非膨張性層と同一平面にな」いことを開示するものでない。
また、翻訳文等に記載されている内容を総合的に検討しても、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記非膨張性層と同一平面にな」いことは、記載も示唆もされていない。
したがって、この補正は、外国語書面の翻訳文(または誤訳訂正書による補正後の明細書、特許請求の範囲、もしくは図面)に記載した範囲内においてしたものでない。
よって、この補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、前記結論のとおり決定する。」

(4)平成25年6月3日付け拒絶査定
「この出願については、平成24年6月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由1),2)によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。・・・備考・・・平成24年12月26日付け手続補正書でした補正は、本査定と同日付けの補正の却下の決定のとおり却下された。」

2 判断
ア 理由1(特許法第17条の2第3項)について
平成24年2月8日付け手続補正により、請求項1に新たに追加された発明特定事項である「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく」については、「膨張性層のどの部分も」について、その「膨張性層」と「同一平面にはなく」とするものといえるから、この点、不明確とも解される。しかしながら、「少なくとも1つの膨張性層」という記載は、複数の「膨張性層」を含むものであることは明らかであり、例えば、2つの「膨張性層」のうち、一方の「膨張性層のどの部分も」が、他方の「膨張性層」と「同一平面にはなく」とする限定事項であると解することができる。
そこで、上記補正に係る発明特定事項について検討すると、「同一平面にはなく」という記載は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」ともいう。)に記載されてないし、当初明細書等の記載から自明とはいえない。特に、上記発明特定事項の補正の根拠として請求人は、平成24年2月8日付け意見書(第3 1(2))において、「補正後の請求項1において、『前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく、そして』とする補正は、図1に示されているとおりであります。」としているが、定義のない「平面」という事項を前提とした「同一平面にはなく」という限定について、図面から把握することはできない。
したがって、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく」という発明特定事項を含む特許請求の範囲の請求項1の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲にない。

なお、複数層でない1つの「膨張性層」である場合も、上記したとおり、「同一平面にはなく」が当初明細書等に記載も示唆もないことから、「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく」という発明特定事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲にないことは明らかである。

イ 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1における「前記少なくとも1つの膨張性層のどの部分も前記膨張性層と同一平面にはなく」については、上記アで述べたとおり、1つの「膨張性層」における限定であるか、複数の「膨張性層」における限定であるか不明確である。
請求項1における「同一平面にはなく」という記載は、例えば、仮想平面を前提とするものであるか、膨張性層のエッジ等の面を含め6面あるうちのいずれかの面を前提とするものであるかについて不明確である。さらに、請求項1に記載された「汚染防止装置内の汚染防止要素、を実装する」際には膨張性層の面において曲面となるものも存在するから、請求項1の記載全体としても不明確である。
したがって、請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用して記載する請求項2ないし12は、不明確である。

3 まとめ
上記2アのとおり、平成24年2月8日付け手続補正による本願の請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであるし、又は、上記2イのとおり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであるし、又は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-27 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2008-535574(P2008-535574)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (F01N)
P 1 8・ 561- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩▲崎▼ 則昌谷川 啓亮  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 藤原 直欣
金澤 俊郎
発明の名称 多層実装マット及びそれを含む汚染防止装置  
代理人 永坂 友康  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 小林 良博  
代理人 蛯谷 厚志  

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