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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1302657 |
審判番号 | 不服2014-2352 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-02-07 |
確定日 | 2015-07-01 |
事件の表示 | 特願2012-190620「情報処理装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日出願公開、特開2012-238338〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特願2007-043547号が,平成19年2月23日に出願され,該出願を原出願とする特許法第44条第1号の規定による新たな特許出願として,本件審判に係る出願(以下,「本願」という。)が,平成24年8月30日に出願され,平成24年9月24日付けで審査請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成25年7月24日付けで拒絶理由通知(平成25年8月20日発送)がなされ,これに対して平成25年10月17日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,平成25年10月31日付けで拒絶査定(平成25年11月26日謄本送達)がなされた。 これに対して,「原査定を取り消す,この出願の発明は,特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成26年2月7日付けで審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成26年4月4日付けで拒絶理由通知(平成26年5月13日発送)がなされ,これに対して平成26年7月4日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成26年7月25日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされた。 第2.分割要件について 1.本願の平成26年7月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項3及び5には,いずれも「複数の時間帯別にその各時間帯でのアプリケーション種別情報を記憶する時間帯記憶手段」と記載されている。 一方,本願の原出願である特願2007-043547号の明細書及び図面には,段落【0030】及び図5に,各時間帯で使用する端末の種類が格納される「実行環境スケジュール」が記載され,段落【0037】及び図7に,端末の種類とアプリケーションの種類の関係を格納する「実行環境テーブル」が記載されているといえる。 しかしながら,本願の上記請求項3及び5に記載された,「複数の時間帯別にその各時間帯でのアプリケーション種別情報を記憶する時間帯記憶手段」は,上記原出願の特許請求の範囲,明細書,及び図面のいずれにも記載されていない。 してみれば,本願は,原出願の一部を新たな特許出願としたものとはいえないから,出願日の遡及は認められず,本願の出願日は,本願が実際に出願された平成24年8月30日であると認められる。 2.下記「第4」において記載する,引用文献1ないし3,並びに参考文献1及び2は,いずれも,上記原出願の出願日(平成19年2月23日)より前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。 してみれば,本願の出願日が原出願の出願日に遡及するか否かは,下記「第5」ないし「第7」で示すことに影響を与えることではないから,仮に,本願の出願日が原出願の出願日に遡及することが認められたとしても,本件審決の結論は変わらない。 第3.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年7月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「 複数の端末装置用の情報の生成を制御する情報処理装置であって, 複数の異なる時間帯別に,その各時間帯で使用する端末装置の端末種別情報を記憶する時間帯記憶手段と, 現在時刻が,前記時間帯記憶手段に記憶された複数の時間帯の内の何れかの時間帯の開始時刻に近付いてきたか否かを判別する判別手段と, 前記判別手段で何れかの時間帯に近付いてきたことを判別した際は,その時間帯に対応して前記時間帯記憶手段に記憶された端末種別情報を取得し,その端末種別情報により複数種類の端末装置の内の何れかの種類の端末装置を特定し,その特定される種類の端末装置用で特化されるその端末種別特有の情報を,前記時間帯の開始時刻に先立って生成するよう制御する生成制御手段と, を具備したことを特徴とする情報処理装置。」 第4.先行技術文献記載事項 1.引用文献1 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,平成26年4月4日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2006-091954号(平成18年4月6日公開。以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A.「【0021】 〔発明の目的〕 そこで,本発明の目的は,サーバコンピュータのリソースを無駄に消費することなく,リモート接続要求後,即座に仮想デスクトップ環境を利用可能にすることにある。」 B.「【0029】 〔作用〕 クライアントコンピュータに対してターミナルサービスを提供するサーバコンピュータは,上記クライアントコンピュータに対して予め定められている起動時刻になると,上記クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成する。なお,起動時刻は,例えば,クライアントコンピュータの利用者の業務開始時刻よりも,所定時間前の時刻とすることができる。その後,例えば,上記利用者の業務開始時刻になり,クライアントコンピュータからリモート接続要求が送られてくると,サーバコンピュータは,クライアントコンピュータと自サーバコンピュータとを接続し,上記生成済みの仮想デスクトップ環境をクライアントコンピュータから利用可能にする。」 C.「【0034】 図1は,本発明にかかるリモート接続システムの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。同図を参照すると,本実施の形態のリモート接続システムは,ターミナルサービスを提供するサーバコンピュータ1と,ターミナルサービスを利用する複数台のクライアントコンピュータ2-1?2-kと,各クライアントコンピュータ2-1?2-kの利用者U1?Ukのスケジュール情報に従ってサーバコンピュータ1に対してリモート接続要求や終了要求を送信する管理サーバ3と,サーバコンピュータ1及び管理サーバ3の両方からアクセス可能な記憶装置4とを含んでいる。 【0035】 記憶装置4は,磁気ディスク装置などにより実現されるものであり,認証情報記憶部41と,スケジュール管理部42と,仮想デスクトップ環境管理テーブル43とを備えている。 【0036】 認証情報記憶部41には,各利用者U1?Ukの利用者ID及びパスワードが登録されている。なお,本実施の形態では,利用者U1?Ukの利用者IDは「id1?idk」,パスワードは「p1?pk」であるとする。 【0037】 スケジュール管理部42には,各利用者U1?Ukのスケジュール情報が登録されている。スケジュール情報には,その利用者の利用者IDと,その利用者用の仮想デスクトップ環境を生成する時刻である起動時刻と,その利用者用の仮想デスクトップ環境を終了(消滅)する時刻である終了時刻とが含まれる。図2は,スケジュール管理部42の内容例を示す図である。同図の第1行目は,利用者ID「id1」の利用者U1は,起動時刻が「7時00分」,終了時刻が「18時00分」であることを示している。」 D.「【0047】 管理サーバ3内のリモート接続制御部31は,図4のフローチャートに示すように,スケジュール管理部42に登録されている各利用者U1?Ukのスケジュール情報の内の1つ(例えば,利用者Ujのスケジュール情報)を取得し(ステップS41),それに含まれている起動時刻,終了時刻が,次式(1)を満たしているか否かを調べる(ステップS42)。即ち,現在時刻が起動時刻と終了時刻との間の時刻であるか否かを調べる。 【0048】 起動時刻≦現在時刻<終了時刻 … (1) 【0049】 そして,式(1)を満たしている場合(ステップS42がYES)は,リモート接続制御部31は,仮想デスクトップ環境管理テーブル43を参照し,そこに利用者Ujの利用者ID「idj」が登録されているか否かを調べることにより,利用者Uj用の仮想デスクトップ環境11-jが生成済みであるか否かを調べる(ステップS43)。 【0050】 生成済みであれば(ステップS43がYES),ステップS41に戻り,スケジュール管理部42から次の利用者のスケジュール情報を取得する。これに対して,利用者Uj用の仮想デスクトップ環境11-jが生成されていなければ(ステップS43がNO),認証情報記憶部41から利用者Ujのパスワード「pj」,利用者ID「idj」を取得し(ステップS44),それらを含むリモート接続要求をサーバ1へ送信する(ステップS45)。 【0051】 サーバコンピュータ1内の,ターミナルサービス提供部13は,管理サーバ3から利用者ID「idj」,パスワード「pj」を含むリモート接続要求が送られてくると,図5のフローチャートに示すように,利用者Uj用の仮想デスクトップ環境11-jを生成すると共に,仮想デスクトップ環境管理テーブル43に,利用者ID「idj」,状態情報「切断セッション」,リソース情報「Rj」からなる管理情報を登録する(ステップS51,S52)。これにより,利用者Uj用の仮想デスクトップ環境11-jが切断セッションとして生成されたことになる。」 E.図2 2.引用文献2 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,平成26年4月4日付けの拒絶理由通知において引用された,特開平11-187127号(平成11年7月9日公開。以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) F.「【0046】ステップ27又はステップ30において,ユーザの間近に位置する端末が見つかった場合,その端末を送信先に決定(ステップ31)するとともに,位置テーブル11を参照してその端末の情報形態を調べ,送信対象の電子情報の情報形態と同一であるか否かを判定(ステップ32)し,否であれば,送信先端末の情報形態に適合するように形態の変換処理を行う(ステップ33)。 【0047】例えば,メールやWebから電話に変換する場合は,音声合成処理を施し,又は,FAXからメールやWebに変換する場合は文字認識処理を施し,又は,FAXから電話に変換する場合は文字認識した後に音声合成処理を施し,又は,電話からメールやFAX若しくはWebに変換する場合は音声認識処理を施す。」 G.「【0051】2.第2実施例図7,図8は上記第1実施例の位置テーブル11の代わりに用いることができる端末使用予定テーブル40の構造図である。なお,本実施例におけるシステムの全体構成や情報送信装置の概略構成は,適宜に図1,図2を参照するものとする。 【0052】図7,図8において,端末使用予定テーブル40は,ユーザ毎の複数のレコードからなるとともに,各ユーザの利用可能なすべての端末のフィールドを有する点で第1実施例の位置テーブル11と共通するが,ユーザや端末の位置検出アドレス及び位置情報を格納するためのサブフィールドを有しない点,並びにユーザの端末使用予定スケジュールを格納するためのサブフィールドを有する点で相違する。 【0053】すなわち,図示の端末使用予定テーブル40では,符号41で示すように,あるユーザについて,そのユーザのディフォルトの使用端末として端末cが,そのユーザの月曜?金曜の8時?17時の使用機器として端末bが,そのユーザの月曜?金曜のその他の時間帯の使用機器として端末a,端末dが指定されており,また,符号42で示すように,別のユーザについて,そのユーザのディフォルトの使用端末として端末xが,そのユーザの月曜?金曜の9時?19時の使用機器として端末zが,そのユーザの月曜?金曜のその他の時間帯の使用機器として端末y,端末xが指定されている。 【0054】なお,同じスケジュール内に複数の機器名が指定されているが,これは機器名で指定された複数の機器に送信可能であり,送信の優先順に機器名が指定されていることを示す。さらに,この端末使用予定テーブル40はユーザーの指定によってユーザーの端末へ呼び出し,ユーザーが任意に修正,追加,削除できるようにする。若しくは,センターに対して,メール等で各テーブルのうち修正,追加,削除する項目を送信して書き換える。 【0055】図9は第1実施例の宛先テーブル10と本実施例の端末使用予定テーブル40を用いた場合の処理フローである。 【0056】この図において,電子情報の送信イベントが発生すると,まず,宛先テーブル10を参照してユーザ識別コードを特定し(ステップ50),次いで,そのユーザ識別コードを用いて端末使用予定テーブル40を検索する。そして,そのユーザの端末使用スケジュールを調べ,現在の日時で使用する予定の端末があるか否かを判定する。又は,複数の使用予定端末がある場合には優先順位の高い端末があるか否かを判定する(ステップ51,52)。 【0057】使用予定の端末がない場合は,そのユーザのディフォルトの端末を送信先に指定し(ステップ53),送信元と送信先の情報形態が同一であるか否かを判定(ステップ54)した後,同一でない場合は,送信先端末の情報形態に適合するように変換処理を施し(ステップ55),最後に,送信先の端末(ディフォルトの端末)に宛先を変更して(ステップ56)その宛先に電子情報を送信する(ステップ57)。 【0058】一方,ステップ52において,そのユーザの使用予定端末がある場合は,その使用予定端末を送信先端末に指定し(ステップ58),送信元と送信先の情報形態が同一であるか否かを判定(ステップ59)した後,同一でない場合は,送信先端末の情報形態に適合するように変換処理を施し(ステップ60),最後に,送信先の端末(使用予定端末)に宛先を変更して(ステップ61)その宛先に電子情報を送信する(ステップ62)。」 3.引用文献3 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,平成26年4月4日付けの拒絶理由通知において引用された,国際公開第2004/092934号(2004年10月28日公開。以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) H.「 本発明の他の目的は,ユーザの起動指示から使用可能になるまでの時間が短縮された電子機器を提供することである。」(第2頁第2行?第3行) I.「 起動時刻指示部300は,リモコンまたはテンキー等からなり,ユーザの操作に従って起動時刻をCPU101に指示する。CPU101は,起動時刻指示部300により指示された起動時刻に基づいて起動準備時刻を算出し,起動時刻および起動準備時刻を起動時刻メモリ203に格納する。ここで,起動時刻は,ユーザが電子機器の使用を開始する時刻であり,ユーザの操作により設定される。起動準備時刻は,起動準備指示に従って起動準備を開始する時刻であり,ユーザが電子機器の使用を開始する時刻よりも電子機器の起動準備に必要な時間だけ前の時刻に設定される。 ここで,起動準備とは,プログラム格納メモリ102に格納された圧縮されたプログラムを展開する動作,プログラム格納メモリ102に格納されたプログラムを主記憶装置103に転送する動作およびCPU101によりプログラムの一部を実行する動作のうち一部または全部を含む。 なお,起動時刻は,ある時点を基準とした相対的な経過時間で表されてもよく,絶対的な時刻であってもよい。同様に,起動準備時刻は,ある時点を基準とした相対的な経過時間で表されてもよく,絶対的な時刻であってもよい。ある時点とは,例えば,ユーザが電子機器の起動時刻をタイマ予約した時点である。 タイマ201は,CPU101の制御に従って動作し,時刻を測定する。起動準備指示部202は,タイマ201により測定された時刻と起動時刻メモリ203に格納された起動準備時刻とを比較することにより起動準備時刻であるか否かを判定し,起動準備時刻になると起動準備指示をCPU101に与える。起動準備指示部202は,比較器,またはマイクロコンピュータ等からなる。」(第10頁第7行?第27行) 4.参考文献1 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である高橋竜男 外2名,“モバイル向けシンクライアントシステムの検討”,情報処理学会論文誌,社団法人情報処理学会,2004年5月15日,第45巻 第5号,p.1417-1431(以下,「参考文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) J.「一方で,モバイルコンピューティング用の端末に関しては,ノートPC,PDA,ブラウザ機能付き携帯電話(以下,本論文では単に移動機と称する)等,選択肢は増加している」(第1417頁左欄第6行?右欄第3行) K.「本論文で前提とするシンクライアントシステムを利用したモバイルコンピューティング環境を図1に示す. オフィス内には企業LANに接続されたPCが設置されており,利用者がオフィス内にいる場合には,このPCを直接操作する(図1(a)).利用者がオフィスから外出している場合には,利用者はシンクライアント端末からネットワークを利用してオフィス内のPC(この場合オフィス内のPCはシンクライアントシステムにおけるサーバとして機能する)を遠隔操作することにより,オフィス内にいる場合と同一のアプリケーションおよび作業環境を利用し続けることが可能になる.外出中の利用者は,自らの状態(移動中/静止中)において最も利用しやすい端末を利用する. ・・・(中略)・・・ 本論文では,移動中の利用者に対しても,オフィス内に準じたモバイルコンピューティング環境を提供することを目標とし,移動機を端末としたシンクライアントシステムの構築に関して検討する(図1(b)).」(第1418頁左欄第36行?右欄第11行) 5.参考文献2 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である村野公一,“さようなら,PCクライアント。”,サーバ・ソリューション・マガジン SERVERS SELECT,株式会社メディアセレクト,2005年4月1日,第1巻 第1号,p.48-65(以下,「参考文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) L.「 クライアント/サーバコンピューティングの場合には,サーバに保存されたデータを取り出してクライアントにあるアプリケーションで作業したり,その作業で作成されたデータをサーバに保存したりするのが主である。それに対し,サーバベースコンピューティングでは,サーバにあるアプリケーションを操作し,サーバ内で保存する。操作,作成されるデータ自体の動きは,クライアントに流れてくることはなく,サーバ内で完結している。 たとえば,社内で文書作成作業をしていたとする。途中で作業を中断し,ログアウトする。自宅に帰って,アクセスし直したとき,サーバではアプリケーションが中断したときのままの状態になっている。作業の即時再開が可能になっているのだ(図2)。 このことが最も威力を発揮するのは,モバイル端末を利用した場合である。モバイル機器でアクセスする場合,ネットワーク回線が安定していない点が不安要素になる。作業途中でネットワークが切断されると,そこまでのデータを消失してしまう可能性があるわけだ。しかし,サーバベースコンピューティングでは,セッションの切断によるデータ消失の心配はない。」(第52頁左欄第16行?右欄第19行) 第5.引用発明の認定 1.引用文献1に記載されている事項について検討する。 (1) 上記D.の「【0047】 管理サーバ3内のリモート接続制御部31は,図4のフローチャートに示すように,スケジュール管理部42に登録されている各利用者U1?Ukのスケジュール情報の内の1つ(例えば,利用者Ujのスケジュール情報)を取得し(ステップS41),それに含まれている起動時刻,終了時刻が,次式(1)を満たしているか否かを調べる(ステップS42)。即ち,現在時刻が起動時刻と終了時刻との間の時刻であるか否かを調べる。 【0048】 起動時刻≦現在時刻<終了時刻 … (1) 【0049】 そして,式(1)を満たしている場合(ステップS42がYES)は, ・・・(中略)・・・ 認証情報記憶部41から利用者Ujのパスワード「pj」,利用者ID「idj」を取得し(ステップS44),それらを含むリモート接続要求をサーバ1へ送信する(ステップS45)。 【0051】 サーバコンピュータ1内の,ターミナルサービス提供部13は,管理サーバ3から利用者ID「idj」,パスワード「pj」を含むリモート接続要求が送られてくると,図5のフローチャートに示すように,利用者Uj用の仮想デスクトップ環境11-jを生成する」との記載によると,「管理サーバ」は,「スケジュール管理部」に登録されている情報を取得して,「サーバコンピュータ」に対して「リモート接続要求」を送信し,「サーバコンピュータ」は,当該「リモート接続要求」が送られてきたときに「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」を生成するのであるから,「管理サーバ」と「スケジュール管理部」を含む構成は,「サーバコンピュータ」に「リモート接続要求」を送信することを通じて,「サーバコンピュータ」に「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」を生成させているといえる。また,上記C.には「ターミナルサービスを利用する複数台のクライアントコンピュータ2-1?2-k」と記載されているから,上記「クライアントコンピュータ」が複数存在する態様が想定されているといえる。 さらに,「管理サーバ」と「スケジュール管理部」を含む構成が,情報を処理する装置であることは明らかであるから,「管理サーバ」と「スケジュール管理部」を含む構成は,「情報処理装置」といえるものである。 してみると,引用文献1には,「サーバコンピュータに複数のクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成させる情報処理装置」が記載されているといえる。 (2) 上記C.には,「各クライアントコンピュータ2-1?2-kの利用者U1?Ukのスケジュール情報」と記載されるとともに,「スケジュール管理部42には,各利用者U1?Ukのスケジュール情報が登録されている。スケジュール情報には,その利用者の利用者IDと,その利用者用の仮想デスクトップ環境を生成する時刻である起動時刻と,その利用者用の仮想デスクトップ環境を終了(消滅)する時刻である終了時刻とが含まれる」ことが記載されている。そして,当該記載からは,各クライアントコンピュータの複数の利用者の各々に対して,起動時刻と終了時刻で規定される「時間帯」が「スケジュール管理部」に記憶されている態様が読み取れる。 また,上記E.からは,複数の利用者について,利用者ごとに起動時刻と終了時刻が規定されており,起動時刻と終了時刻によって規定される「時間帯」が,利用者ごとに異なる態様が読み取れる。 さらに,上記B.には,「起動時刻は,例えば,クライアントコンピュータの利用者の業務開始時刻よりも,所定時間前の時刻とすることができる」と記載されているのであるから,「起動時刻」とは,「利用者の業務開始時刻よりも,所定時間前の時刻」であるといえる。 してみると,引用文献1には,「各クライアントコンピュータの複数の利用者に対して,利用者の業務開始時刻よりも所定時間前の時刻である起動時刻と終了時刻によって規定される時間帯であって,利用者によって異なる時間帯を記憶するスケジュール管理部」が記載されているといえる。 (3) 上記D.には,「管理サーバ3内のリモート接続制御部31は,図4のフローチャートに示すように,スケジュール管理部42に登録されている各利用者U1?Ukのスケジュール情報の内の1つ(例えば,利用者Ujのスケジュール情報)を取得し(ステップS41),それに含まれている起動時刻,終了時刻が,次式(1)を満たしているか否かを調べる(ステップS42)。即ち,現在時刻が起動時刻と終了時刻との間の時刻であるか否かを調べる」ことが記載されており,上記記載中の「次式(1)」として「起動時刻≦現在時刻<終了時刻 … (1)」が記載されている。 また,上記D.から,利用者の各々に対して,起動時刻と終了時刻で規定される「時間帯」が「スケジュール管理部」に記憶されている態様が読み取れることは,上記(2)において示したとおりである。 してみると,引用文献1には,「現在時刻が,スケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別するリモート接続制御部」が記載されているといえる。 (4) ア.「リモート接続制御部」が「現在時刻がスケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別する」ことが読み取れることは,上記(3)に示したとおりである。そして,上記D.には,「いずれかの時間帯の開始時刻になった」と判別した際に,「利用者Ujのパスワード「pj」,利用者ID「idj」を取得し(ステップS44),それらを含むリモート接続要求をサーバ1へ送信する」ことが記載されているのであるから,「リモート接続制御部」は「現在時刻がスケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別し,その時間帯に対応した利用者を特定」しているといえる。 イ.さらに,上記D.には「【0047】 管理サーバ3内のリモート接続制御部31は,図4のフローチャートに示すように,スケジュール管理部42に登録されている各利用者U1?Ukのスケジュール情報の内の1つ(例えば,利用者Ujのスケジュール情報)を取得し(ステップS41),それに含まれている起動時刻,終了時刻が,次式(1)を満たしているか否かを調べる(ステップS42)。即ち,現在時刻が起動時刻と終了時刻との間の時刻であるか否かを調べる。 【0048】 起動時刻≦現在時刻<終了時刻 … (1) 【0049】 そして,式(1)を満たしている場合(ステップS42がYES)は, ・・・(中略)・・・ 認証情報記憶部41から利用者Ujのパスワード「pj」,利用者ID「idj」を取得し(ステップS44),それらを含むリモート接続要求をサーバ1へ送信する(ステップS45)。 【0051】 サーバコンピュータ1内の,ターミナルサービス提供部13は,管理サーバ3から利用者ID「idj」,パスワード「pj」を含むリモート接続要求が送られてくると,図5のフローチャートに示すように,利用者Uj用の仮想デスクトップ環境11-jを生成する」ことが記載されている。 すると,「管理サーバ」内の「リモート接続制御部」は,「サーバコンピュータ」に対して「リモート接続要求」を送信し,「サーバコンピュータ」は,当該「リモート接続要求」が送られてきたときに「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」を生成するのであるから,「リモート接続制御部」は,「サーバコンピュータ」に「リモート接続要求」を送信することを通じて,「サーバコンピュータ」に「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」を生成するよう制御しているといえる。 ウ.上記イ.に示した「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」は,「利用者Ujのパスワード「pj」,利用者ID「idj」・・・(中略)・・・を含むリモート接続要求」に応じて生成されるものであるから,当該「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」は,上記ア.に示した構成において特定された「利用者」に対応して生成するものであるといえる。 エ.上記ア.ないしウ.に示したことから,引用文献1には,「リモート制御部は,現在時刻がスケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別し,その時間帯に対応した利用者を特定し,その特定される利用者に応じたクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成するよう制御する」ことが記載されている。 2.上記1.の(1)ないし(4)に示したことから,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 サーバコンピュータに複数のクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成させる情報処理装置であって, 各クライアントコンピュータの複数の利用者に対して,利用者の業務開始時刻よりも所定時間前の時刻である起動時刻と終了時刻によって規定される時間帯であって,利用者によって異なる時間帯を記憶するスケジュール管理部と, 現在時刻が,スケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別するリモート接続制御部とを具備し, リモート制御部は,現在時刻がスケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別し,その時間帯に対応した利用者を特定し,その特定される利用者に応じたクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成するよう制御する, ことを特徴とする情報処理装置」 第6.対比 1.引用発明と本願発明を対比する。 (1) 引用発明の「クライアントコンピュータ」は,「端末装置」といえるものであるから,引用発明の「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」は,「端末装置用の情報」であるといえる。 してみると,引用発明の「サーバコンピュータに複数のクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成させる情報処理装置」は,本願発明の「複数の端末装置用の情報の生成を制御する情報処理装置」に相当する。 (2) 引用発明の「複数の利用者に対して,利用者の業務開始時刻よりも所定時間前の時刻である起動時刻と終了時刻によって規定される時間帯」は,「利用者によって異なる時間帯」であるから,「複数の異なる時間帯」であるといえる。 また,引用発明において,「各クライアントコンピュータの複数の利用者に対して」,「起動時刻と終了時刻によって規定される時間帯」を記憶することは,当該「利用者」が利用する「クライアントコンピュータ」の稼働予定を記憶することであるといえる。 一方,本願発明において,「その各時間帯で使用する端末装置の端末種別情報を記憶する」ことは,端末装置の稼働予定を記憶することであるといえる。 してみると,引用発明の「複数の利用者に対して,利用者の業務開始時刻よりも所定時間前の時刻である起動時刻と終了時刻によって規定される時間帯であって,利用者によって異なる時間帯を記憶するスケジュール管理部」と,本願発明の「複数の異なる時間帯別に,その各時間帯で使用する端末装置の端末種別情報を記憶する時間帯記憶手段」とは,「複数の異なる時間帯別に,端末装置の稼働予定を記憶する時間帯記憶手段」である点で共通する。 (3) 上記(2)に示したことから,引用発明の「スケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻」は,「時間帯記憶手段に記憶された複数の時間帯の内の何れかの時間帯の開始時刻」といえるものである。 してみると,引用発明の「現在時刻が,スケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別するリモート接続制御部」と,本願発明の「現在時刻が,前記時間帯記憶手段に記憶された複数の時間帯の内の何れかの時間帯の開始時刻に近付いてきたか否かを判別する判別手段」とは,「現在時刻が,前記時間帯記憶手段に記憶された複数の時間帯の内の何れかの時間帯の開始時刻と所定の関係になったか否かを判別する判別手段」である点で共通する。 (4) 引用発明の「現在時刻がスケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別」することが,「何れかの時間帯の開始時刻と所定の関係になったと判別」することであるといえることは,上記(3)に示したとおりである。 また,引用発明の「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境」は,「端末装置用の情報」であるといえることは,上記(1)に示したとおりであるから,引用発明の「その時間帯に対応した利用者を特定し,その特定される利用者に応じたクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成する」ことは,少なくとも「その時間帯における端末装置の稼働予定を特定し,その特定される端末装置の稼働予定特有の情報を生成する」ことであるといえる。 してみると,引用発明の「現在時刻がスケジュール管理部に記憶された複数の時間帯の内のいずれかの時間帯の開始時刻になったか否かを判別し,その時間帯に対応した利用者を特定し,その特定される利用者に応じたクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成するよう制御する」「リモート制御部」と,本願発明の「前記判別手段で何れかの時間帯に近付いてきたことを判別した際は,その時間帯に対応して前記時間帯記憶手段に記憶された端末種別情報を取得し,その端末種別情報により複数種類の端末装置の内の何れかの種類の端末装置を特定し,その特定される種類の端末装置用で特化されるその端末種別特有の情報を,前記時間帯の開始時刻に先立って生成するよう制御する生成制御手段」とは,「何れかの時間帯の開始時刻と所定の関係になったと判別した際は,その時間帯における端末装置の稼働予定を特定し,その特定される端末装置の稼働予定特有の情報を生成するよう制御する生成制御手段」である点で共通する。 2.上記1.において示したことから,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。 [一致点] 複数の端末装置用の情報の生成を制御する情報処理装置であって, 複数の異なる時間帯別に,端末装置の稼働予定を記憶する時間帯記憶手段と, 現在時刻が,前記時間帯記憶手段に記憶された複数の時間帯の内の何れかの時間帯の開始時刻と所定の関係になったか否かを判別する判別手段と, 何れかの時間帯の開始時刻と所定の関係になったと判別した際は,その時間帯における端末装置の稼働予定を特定し,その特定される端末装置の稼働予定特有の情報を生成するよう制御する生成制御手段と, を具備したことを特徴とする情報処理装置。 [相違点1] 本願発明は,一のユーザが複数の端末装置を使用することを前提として,「その各時間帯で使用する端末装置の端末種別情報を記憶する時間帯記憶手段」及び「前記時間帯記憶手段に記憶された端末種別情報を取得し,その端末種別情報により複数種類の端末装置の内の何れかの種類の端末装置を特定し,その特定される種類の端末装置用で特化されるその端末種別特有の情報を,前記時間帯の開始時刻に先立って生成するよう制御する生成制御手段」を備えた「複数の端末装置用の情報の生成を制御する情報処理装置」となっているのに対し,引用発明は,一のユーザが複数のクライアント装置を使用することを前提とした構成になっていない点。 [相違点2] 本願発明の「判別手段」は,「現在時刻が,前記時間帯記憶手段に記憶された複数の時間帯の内の何れかの時間帯の開始時刻に近付いてきたか否かを判別する」ものであって,本願発明の「生成制御手段」では,「前記判別手段で何れかの時間帯に近付いてきたことを判別した際」に端末種別特有の情報を生成するよう制御するのに対し,引用発明は,「開始時刻に近付いてきたか否かを判別する」構成でない点。 第7.判断 1.相違点1について (1) ア.上記G.(引用文献2)には,「端末使用予定テーブル40では,符号41で示すように,あるユーザについて,そのユーザのディフォルトの使用端末として端末cが,そのユーザの月曜?金曜の8時?17時の使用機器として端末bが,そのユーザの月曜?金曜のその他の時間帯の使用機器として端末a,端末dが指定されており,また,符号42で示すように,別のユーザについて,そのユーザのディフォルトの使用端末として端末xが,そのユーザの月曜?金曜の9時?19時の使用機器として端末zが,そのユーザの月曜?金曜のその他の時間帯の使用機器として端末y,端末xが指定されている」と記載されていることから,引用文献2には,一のユーザが複数の端末装置を使用することを前提とした構成が記載されているといえる。 イ.さらに,上記G.には,「そのユーザの端末使用スケジュールを調べ,現在の日時で使用する予定の端末があるか否かを判定する。・・・(中略)・・・そのユーザの使用予定端末がある場合は,その使用予定端末を送信先端末に指定し(ステップ58),送信元と送信先の情報形態が同一であるか否かを判定(ステップ59)した後,同一でない場合は,送信先端末の情報形態に適合するように変換処理を施し(ステップ60),最後に,送信先の端末(使用予定端末)に宛先を変更して(ステップ61)その宛先に電子情報を送信する(ステップ62)。」と記載され,上記F.には「その端末の情報形態を調べ,・・・(中略)・・・送信先端末の情報形態に適合するように形態の変換処理を行う・・・(中略)・・・例えば,メールやWebから電話に変換する場合は,音声合成処理を施し,又は,FAXからメールやWebに変換する場合は文字認識処理を施し,又は,FAXから電話に変換する場合は文字認識した後に音声合成処理を施し,又は,電話からメールやFAX若しくはWebに変換する場合は音声認識処理を施す。」と記載されている。 上記G.には,「送信元と送信先の情報形態が同一であるか否かを判定」することが記載されているから,「端末使用スケジュール」には,少なくとも各時間帯で使用する端末の「情報形態」が格納されているといえる。さらに,上記F.の「メールやWebから電話に変換する場合は,音声合成処理を施し,又は,FAXからメールやWebに変換する場合は文字認識処理を施し,又は,FAXから電話に変換する場合は文字認識した後に音声合成処理を施し,又は,電話からメールやFAX若しくはWebに変換する場合は音声認識処理を施す」との記載によると,端末の「情報形態」とは,端末の種別に応じたものであることは明らかであるから,「端末使用スケジュール」には,端末種別が格納されているともいえる。 また,上記G.において,「送信先端末の情報形態に適合するように変換処理を施」すこととは,上記F.の上記記載から,送信先の端末種別を特定し,当該端末種別特有の情報に変換することであるといえる。 ウ.上記ア.及びイ.に示したことから,引用文献2には,一のユーザが複数の端末を使用することを前提とした構成において,各時間帯に対応して記憶された端末種別を特定し,特定された端末種別特有の情報を生成することが記載されているといえる。 (2) ア.上記K.(参考文献1)には,「オフィス内には企業LANに接続されたPCが設置されており,利用者がオフィス内にいる場合には,このPCを直接操作する・・・(中略)・・・移動中の利用者に対しても,オフィス内に準じたモバイルコンピューティング環境を提供することを目標とし,移動機を端末としたシンクライアントシステムの構築に関して検討する」と記載されるとともに,上記J.(参考文献1)には,「ノートPC,PDA,ブラウザ機能付き携帯電話(以下,本論文では単に移動機と称する)」と記載されている。 イ.上記L.(参考文献2)には,「たとえば,社内で文書作成作業をしていたとする。途中で作業を中断し,ログアウトする。自宅に帰って,アクセスし直したとき,サーバではアプリケーションが中断したときのままの状態になっている。・・・(中略)・・・このことが最も威力を発揮するのは,モバイル端末を利用した場合である。」と記載されている。 ウ.上記ア.及びイ.に示したことから,シンクライアントシステムにおいて,一のユーザが複数のクライアント装置を使用することは,参考文献1及び2にみられるように,一般的に行われていたことであるといえる。 (3) してみると,「サーバコンピュータにクライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成させる」発明,すなわち,シンクライアントシステムに係る発明である引用発明において,一のユーザが複数のクライアント装置を使用することを前提とした,上記(1)に示した引用文献2記載の事項を適用して,相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜になし得ることである。 2.相違点2について (1) 上記I.(引用文献3)の,「起動時刻は,ユーザが電子機器の使用を開始する時刻であり,ユーザの操作により設定される。起動準備時刻は,起動準備指示に従って起動準備を開始する時刻であり,ユーザが電子機器の使用を開始する時刻よりも電子機器の起動準備に必要な時間だけ前の時刻に設定される。ここで,起動準備とは,プログラム格納メモリ102に格納された圧縮されたプログラムを展開する動作,プログラム格納メモリ102に格納されたプログラムを主記憶装置103に転送する動作およびCPU101によりプログラムの一部を実行する動作のうち一部または全部を含む。」との記載からは,利用者が使用を開始する時刻を利用者が設定することと,当該利用者が設定した時刻よりも「電子機器の起動準備に必要な時間だけ前の時刻」となった際,すなわち当該利用者が設定した時刻に近づいた際に,「起動準備」,すなわち利用者が使用するための準備を開始することが読み取れる。 (2) 引用発明は,「利用者の業務開始時刻よりも所定時間前の時刻である起動時刻」を設定し,当該「起動時刻」になった際に,「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成するよう制御」する構成であるといえるから,利用者が使用を開始する時刻に近づいた際に「クライアントコンピュータ用の仮想デスクトップ環境を生成するよう制御」する構成であるともいえる。 (3) 上記A.には「本発明の目的は,サーバコンピュータのリソースを無駄に消費することなく,リモート接続要求後,即座に仮想デスクトップ環境を利用可能にすることにある」と記載され,上記H.には「本発明の他の目的は,ユーザの起動指示から使用可能になるまでの時間が短縮された電子機器を提供することである」と記載されていることから,引用発明及び引用文献3記載の発明は,ともに,利用者が使用を開始する際に,即座に使用を開始することを可能にすることを目的とするものであるといえる。してみると,引用発明において,利用者が使用を開始する時刻に近づいたことを判断するための具体的構成として,上記(1)において示した引用文献3記載の構成を適用して,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。 3.小括 上記で検討したごとく,各相違点は格別のものではなく,そして,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明,引用文献2及び3記載の発明,並びに参考文献1及び2にみられる周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本願発明は,上記引用発明,引用文献2及び3記載の発明,並びに参考文献1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第8.むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-12 |
結審通知日 | 2015-04-07 |
審決日 | 2015-04-21 |
出願番号 | 特願2012-190620(P2012-190620) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 衣川 裕史、新井 寛、坂庭 剛史 |
特許庁審判長 |
西村 泰英 |
特許庁審判官 |
小林 大介 石井 茂和 |
発明の名称 | 情報処理装置及びプログラム |