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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1302688
審判番号 不服2014-13843  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-16 
確定日 2015-07-02 
事件の表示 特願2011-547445「蓄電デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月 7日国際公開、WO2011/080989〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年12月3日(特許法第41条に基づく国内優先権主張 特願2009-297156号(平成21年12月28日))を国際出願日とする出願であって、平成25年7月31日付け拒絶理由通知に対して同年10月2日付けで手続補正がなされ、同年11月19日付け拒絶理由通知に対して平成26年1月20日付けで手続補正がなされが、同年5月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされた。

第2 平成26年7月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年7月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正

平成26年7月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前に、
「【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる外装容器と、この外装容器内に配置された正極電極および負極電極と、前記外装容器内に充填された、リチウム塩を含む電解液とよりなり、前記外装容器内に配置されたリチウムイオン供給源と前記負極電極および/または前記正極電極との電気化学的接触によって、リチウムイオンが当該負極電極および/または当該正極電極にドーピングされる蓄電デバイスであって、
前記外装容器が正極電位とされていることを特徴とする蓄電デバイス。」
とあったところを、

本件補正後、
「【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる外装容器と、この外装容器内に配置された正極電極および負極電極と、前記外装容器内に充填された、リチウム塩を含む電解液とよりなり、前記外装容器内に配置されたリチウム金属よりなるリチウムイオン供給源と前記負極電極および/または前記正極電極との電気化学的接触によって、リチウムイオンが当該負極電極および/または当該正極電極にドーピングされた蓄電デバイスであって、
前記外装容器が正極電位とされていることを特徴とする蓄電デバイス。」
とするものである。

すると、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「リチウムイオン供給源」について、「リチウム金属よりなる」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

2.先願明細書等

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の特許出願であって、本願の優先権主張の日後に公開された特願2009-254664号(特開2010-239111号公報 優先日 平成20年11月6日、平成21年3月9日)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0001】
本発明は各種電子機器やハイブリッド自動車の回生用、あるいは電力貯蔵用等に使用される電気二重層キャパシタや電気化学キャパシタなどのキャパシタおよびそれを用いたキャパシタユニットに関するものである。」

イ.「【0010】
図12(a)は、従来のキャパシタの他の一例として示した、電気化学キャパシタの上面断面図であり、図12(b)は同電気化学キャパシタにおける電極巻回ユニット100の正面図である。」

ウ.「【0011】
図12(a)において、この従来の電気化学キャパシタは、正極101、負極102の間にセパレータ103を介して交互に積層して同心的に巻回して電極巻回ユニット100を形成し、この電極巻回ユニット100の外周部及び中心部に、リチウムイオン供給源としてそれぞれリチウム金属(リチウム極)104、105を配置し、これらをアルミニウムや鉄から成る外装容器106内に収容して内部に電解液を充填し構成されたものであった。」

エ.「【0012】
また、正極101及び負極102は、表裏面を貫通する孔が設けられた多孔材からなる後述の集電体に形成されており、このように集電体を多孔材にすることによって、リチウム金属104、105が電極巻回ユニット100の外周部と中心部に配置されていても、リチウムイオンはリチウム金属104、105から電極巻回ユニット100の集電体の貫通孔を通って自由に各電極間を移動し、電極巻回ユニット100のすべての負極102及び/又は正極101にリチウムイオンをドーピングできる。」

オ.「【0060】
まず始めに、図7(a)?(c)を用いて本実施例における電気化学キャパシタ40の構成を説明していく。」

カ.「【0061】
図7(b)において、素子31は銅箔から成る集電体の表裏面にリチウムイオンを吸蔵した炭素材料を主とした電極部が形成された負極と、アルミニウム箔から成る集電体の表裏面に活性炭を主とした電極部が形成された正極と、正極と負極とを対向させてその間に介在するセパレータとから成る。」

キ.「【0067】
外装体41は有底円筒状のアルミニウム製のケースからなる。この外装体41の底面が電気化学キャパシタ40において上面側にくるように構成されている。そして、この外装体41の内底面は素子31の正極端部31bと対向し、図7(a)の外装体41の外底面上に形成された溶接痕41aのように、正極端部31bと外装体41の内底面とが溶接などにより接合され、互いに電気的に接続されている。
【0068】
なお、外装体41はアルミニウムの他にアルミニウム合金であってもよい。」

ク.「【0069】
また、図7(b)において外装体41は、端子板42を用いて開口部を封止することで、素子31と駆動用電解液(図示なし)とを収容している。」

・上記「オ.」によれば、先願明細書等に記載のものは、電気化学キャパシタに関するものである。

・上記「キ.」によれば、外装体はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるものである。

・上記「ウ.」の従来の電気化学キャパシタの構成を参照すれば、正極、負極及び電解液が外装体内に収容されていることは当然のことである。

・上記「カ.」によれば、負極は、リチウムイオンを吸蔵したものである。

・上記「キ.」によれば、正極と外装体とが電気的に接続されていることから、当該外装体は正極電位とされているといえる。

上記先願明細書等の記載事項及び図面を総合勘案すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。

「アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる外装体と、この外装体内に正極と、リチウムイオンを吸蔵した負極と、電解液とを収容した電気化学キャパシタであって、
前記外装体が正極電位とされている電気化学キャパシタ。」

3.対比

そこで、本件補正発明と先願発明とを対比する。
(1)先願発明の「外装体」は、本件補正発明の「外装容器」にそれぞれ相当するから、先願発明と本件補正発明とは、「アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる外装容器」を備える点で共通する。
(2)先願発明の「正極」及び「負極」は、本件補正発明の「正極電極」及び「負極電極」にそれぞれ相当し、そして、先願発明の「正極」と「負極」とは、外装体内に収容されているから、先願発明と本件補正発明とは、「この外装容器内に配置された正極電極および負極電極」を備える点で共通する。
(3)先願発明は、「外装体内」に「電解液」を収容しているから、先願発明と本件補正発明とは、「前記外装容器内に充填された電解液」を備える点で共通する。
(4)先願発明の「吸蔵」は、本件補正発明の「ドーピング」に相当し、そして、先願発明の「負極」は、「リチウムイオンを吸蔵した」ものであるから、先願発明と本件補正発明とは、「リチウムイオンが当該負極電極にドーピングされた」ものである点で共通する。
(5)先願発明と本件補正発明とは、「前記外装容器が正極電位とされている」点で共通する。
(6)先願発明の「電気化学キャパシタ」は、本件補正発明の「蓄電デバイス」に相当する。

そうすると、本件補正発明と先願発明とは、次の点で一致する。

〈一致点〉
「アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる外装容器と、この外装容器内に配置された正極電極および負極電極と、前記外装容器内に充填された電解液とよりなり、リチウムイオンが当該負極電極にドーピングされた蓄電デバイスであって、
前記外装容器が正極電位とされている蓄電デバイス。」

一方、以下の点で一応相違する。

〈相違点1〉
「電解液」について、本件補正発明は、「リチウム塩を含む」と限定されているのに対し、先願発明はそのような限定がなされていない点。

〈相違点2〉
「ドーピング」について、本件補正発明は、「前記外装容器内に配置されたリチウム金属よりなるリチウムイオン供給源と前記負極電極および/または前記正極電極との電気化学的接触によって」と限定されているのに対し、先願発明はそのような限定がなされていない点。

4.判断
そこで、上記相違点について検討する。

〈相違点1について〉
先願明細書等において従来技術として引用された特開2007-67105号公報(【0014】)、及び特開2007-141897号公報(【0001】)には、リチウムイオンキャパシタ(本件補正発明の「蓄電デバイス」に相当)において、電解液としてリチウム塩を含むことが記載されており、当該事項はリチウムイオンキャパシタの慣用手段であり、先願発明においても当然に備える事項といえるから、先願発明と本件補正発明とはこの点で実質的に相違するものではない。

〈相違点2について〉
先願明細書等には、従来の電気化学キャパシタの構成として、上記「ウ.」及び「エ.」によればリチウムイオン供給源として「リチウム金属」を外装体内に収容し、負極にリチウムイオンをドーピングすることが記載され、リチウム金属よりなるリチウムイオン供給源と負極との電気化学的接触によって、リチウムイオンを負極にドーピングすることが実質的に記載されている。この点、上記特開2007-67105号公報(【0083】)や特開2007-141897号公報(【0033】)には、リチウム金属よりなるリチウムイオン供給源と負極との電気化学的接触によって、リチウムイオンが負極にドーピングされることが記載されている。
そうすると、相違点2は、リチウムイオンキャパシタにおけるドーピング手段として、周知の技術を採用したものに過ぎず、それにより新たな効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、先願発明と実質的に同一であり、しかも、本件出願の発明者が先願明細書等に記載された発明をした者と同一ではなく、また本件出願時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成26年7月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年1月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 理由 1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.先願明細書等

原査定の拒絶の理由で引用された先願明細書等及びその記載事項は、上記「第2 理由 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2 [理由]3.4.」で検討した本件補正発明から、発明特定事項である「リチウムイオン供給源」について「リチウム金属よりなる」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 [理由]3.4.」に記載したとおり、先願発明と実質的に同一であるから、本願発明も、同様の理由により、先願発明と実質的に同一である。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることがでいない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-28 
結審通知日 2015-05-07 
審決日 2015-05-19 
出願番号 特願2011-547445(P2011-547445)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01G)
P 1 8・ 161- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴垣 俊男太田 龍一  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 関谷 隆一
井上 信一
発明の名称 蓄電デバイス  
代理人 大井 正彦  

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