ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03F |
---|---|
管理番号 | 1302887 |
審判番号 | 不服2014-5517 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-25 |
確定日 | 2015-07-09 |
事件の表示 | 特願2012- 23401「感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開、特開2012-137768〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年11月22日(優先権主張平成18年12月27日)を国際出願日とする特願2008-550999号(以下、「原出願」という。)の一部を平成24年 2月 6日に新たな特許出願としたものであって、平成25年 8月16日付けで拒絶理由が通知され、同年10月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月17日付けで拒絶査定され、これを不服として、平成26年 3月25日に審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 分割の適法性について 分割出願である本願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、原出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、願書に最初に添付された明細書を「原出願当初明細書」といい、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面をあわせて「原出願当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内であるか(本願が特許法44条1項の要件を満たすか)を、以下、特に請求項1について検討する。 1 本願の記載事項 (1)本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、願書に最初に添付された明細書を「本願当初明細書」といい、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面をあわせて「本願当初明細書等」という。)の請求項1には、以下の発明が記載されている。 「(A)スチレン又はスチレン誘導体に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジル又は(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0?2.0であるバインダーポリマー、 (B)光重合性化合物、及び (C)光重合開始剤、 を含有する感光性樹脂組成物。」 (2)平成25年10月17日に提出された手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲(以下「補正1」という。)の請求項1には、以下の発明が記載されている。 「(A)スチレンに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0?2.0であるバインダーポリマー、 (B)光重合性化合物、及び (C)光重合開始剤、 を含有する感光性樹脂組成物。」 (3)平成26年 3月25日に提出された手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲(以下「補正2」という。)の請求項1には、以下の発明が記載されている。 「(A)スチレンに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、炭素数1?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0?2.0であるバインダーポリマー、 (B)光重合性化合物、及び (C)光重合開始剤、 を含有する感光性樹脂組成物。」 2 原出願の記載事項 (1)原出願当初明細書等には、「バインダーポリマー」について、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付加したものである。以下同様。) ア 「請求の範囲[1] (A)下記一般式(I)で表される2価の基と、下記一般式(II)で表される2価の基と、下記一般式(III)で表される2価の基と、下記一般式(IV)で表される2価の基と、を有するバインダーポリマー、 (B)光重合性化合物、及び (C)光重合開始剤、 を含有する感光性樹脂組成物。 [式(I)、式(II)、式(III)、及び式(IV)中、R^(1),R^(3),R^(5),及びR^(6)はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立に炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のアルコキシ基、OH基、又はハロゲン原子を示し、R^(7)は炭素数1?6のアルキル基を示し、m又はnはそれぞれ独立に0?5の整数を示し、m又はnが2?5のとき、複数のR^(2)又はR^(4)は互いに同一でも異なっていてもよい。] 」 イ 「[0026] まず、(A)成分であるバインダーポリマーについて説明する。 [0027] (A)バインダーポリマーは、上記一般式(I)中、R^(1)が水素原子又はメチル基を示し、R^(2)が炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のアルコキシ基、OH基又はハロゲン原子を示し、mが0?5の整数を示すものである。一般式(I)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、スチレン又はスチレン誘導体が挙げられる。なお、本発明において、「スチレン誘導体」とは、スチレンにおける水素原子が置換基(アルキル基などの有機基やハロゲン原子など)で置換されたものをいう。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレンなどが挙げられる。 [0028] また、上記一般式(II)中、R^(3)は水素原子又はメチル基を示し、R^(4)は炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のアルコキシ基、OH基又はハロゲン原子を示し、mは0?5の整数を示す。一般式(II)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸ベンジル又は(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸4-メチルベンジルなどが挙げられる。 [0029] また、上記一般式(III)中、R^(5)は水素原子又はメチル基を示す。一般式(III)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。 [0030] また、上記一般式(IV)中、R^(6)はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R^(7)は炭素数1?6のアルキル基を示し、m又はnはそれぞれ独立に炭素数0?5の整数を示す。剥離時間を短くできる及び解像度を向上できる観点から、R^(7)は炭素数1?4のアルキル基が好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)がより好ましい。一般式(IV)で表される構造単位を与える重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。 [0031] (メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(V)で表される化合物などが挙げられる。 CH_(2)=C(R^(8))-COOR^(9) (V) [0032] ここで、上記一般式(V)中、R^(8)は水素原子又はメチル基を示し、R^(9)は炭素数1?6のアルキル基を示す。また、R^(9)で示される炭素数1?6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。上記一般式(V)で表される重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステルなどが挙げられる。これらの重合性単量体は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。」 ウ 「[0040] また、(A)バインダーポリマーの分散度(Mw/Mn)は、1.0?3.0であることが好ましく、1.0?2.0であることがより好ましい。分散度が3.0を超えると密着性及び解像度が低下する傾向がある。」 エ 「[0043] 上述の(A)バインダーポリマーは、上記一般式(I)?(IV)で表される構造単位以外の構造単位を含んでいてもよい。上述の(A)バインダーポリマーは、上記一般式(I)?(IV)で表される構造単位のみを有していることが最も好ましいが、本発明の目的を阻害しない程度において、それ以外の構造単位を、(A)成分の総量に対して1?10質量部程度有していてもよい。この場合、上記一般式(I)?(IV)で表される構造単位以外の構造単位を与える重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル-n-ブチルエーテルなどのビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピルなどのマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。」 オ 「[0107] (バインダーポリマー((A)成分)の合成) 撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比3:2のメチルセロソルブ及びトルエンの配合物450gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。一方、共重合単量体としてメタクリル酸150g、メタクリル酸メチル25g、メタクリル酸ベンジル125g及びスチレン200gと、アゾビスイソブチロニトリル9.0gとを混合した溶液(以下、「溶液a」という)を用意し、予め用意した質量比3:2のメチルセロソルブ及びトルエンの配合物に、溶液aを4時間かけて滴下した後、80℃で撹拌しながら2時間保温した。さらに、質量比3:2のメチルセロソルブ及びトルエンの配合物100gに、アゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解した溶液を10分かけて滴下した。滴下後の溶液を撹拌しながら80℃で3時間保温した後、30分間かけて90℃に加温した。90℃で2時間保温した後、冷却してバインダーポリマー(A-1)を得た。」 カ 「[0109]また、上述したバインダーポリマー(A-1)の合成方法と同様の方法で、下記表1に示される組成となるように、バインダーポリマー(A-2)?(A-10)を合成した。 [表1] 」 3 分割の適法性についての判断 (1)本願当初明細書等の請求項1について ア 「スチレン又はスチレン誘導体に基づく構成単位」及び「(メタ)アクリル酸ベンジル又は(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体に基づく構成単位」について (ア)上記2 原出願の記載事項アとして摘記したように、一般式(I)及び一般式(II)において「R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立に炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のアルコキシ基、OH基、又はハロゲン原子を示し」ている。記載事項イには、「一般式(I)で表される構造単位を与える重合性単量体」としての「スチレン誘導体」が記載されており、また、「一般式(II)で表される構造単位を与える重合性単量体」としての「(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体」が記載されている。よって、原出願当初明細書等には、上記のように特定の置換基を有する「スチレン誘導体」及び「(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体」が記載されてものである。 (イ)一方、原出願当初明細書等には、任意の置換基を有する「スチレン誘導体」及び「(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体」、例えば、一般式(I)においてR^(2)の炭素数が4である、ブチルスチレンやブトキシスチレンに基づく構造単位であってもよいとの上位概念化し得る説明は記載されていない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)に対し、本願当初明細書等の請求項1の記載は、「スチレン又はスチレン誘導体に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジル又は(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体に基づく構造単位と」を有するバインダーポリマーであるから、バインダーポリマーが、置換基を限定しないスチレン誘導体や、置換基を限定しない(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体に基づく構造単位を有する場合を含んでいる。 イ 「(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位」について (ア)上記2 原出願の記載事項ア?カで摘記したように、原出願当初明細書等には、バインダーポリマーが、スチレンに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、炭素数1?6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0?2.0であり、 さらに上記以外の構造単位として、「(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル」に基づく構造単位を有することが記載されている。 (イ)一方、原出願当初明細書等には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位について、任意の炭素数でも良いとの上位概念化し得る説明は記載されていない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)に対し、本願当初明細書等の請求項1の記載は、「(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位」を有するバインダーポリマーであるから、バインダーポリマーが、任意の炭素数、つまり炭素数1?6以外のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を有する場合を含んでいる。 ウ 上記ア及びイから、本願出願当初明細書等の請求項1に記載された事項は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲を超えるものである。 (2)補正1の請求項1について ア 補正1の請求項1の発明特定事項は、本願出願当初明細書等の請求項1の発明特定事項から、「スチレン誘導体に基づく構造単位」及び「(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体に基づく構造単位」を削除し、他は同じものであるから、補正1の請求項1で特定されている、「(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位」を有するバインダーポリマーは、上記(1)イ(ア)?(ウ)で検討したと同様の理由により、原出願当初明細書等に記載された構造単位以外の構造単位を有するバインダーポリマーを含んでいる。 イ したがって、補正1の請求項1に記載された事項は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲を超えるものである。 (3)補正2の請求項1について ア 補正2の請求項1の発明特定事項である、「炭素数1?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位」について (ア)原出願当初明細書等には、バインダーポリマーが、上記(1)イ(ア)で摘記した構造単位を有することが記載されている。 (イ)一方、原出願当初明細書等には、バインダーポリマーが、(メタ)アルキル酸アルキルエステルとして、炭素数1?6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を必須とし、更に炭素数7?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を有しても良い旨の記載があることを、上記(1)イ(ア)で摘記したが、炭素数1?6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を必須とはせずに、炭素数7?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル基づく構造単位を必須とすることについては、記載されていない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)に対し、補正2の請求項1の記載は、「スチレンに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、炭素数1?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0?2.0であるバインダーポリマー」であるから、炭素数7?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アクリルエステルに基づく構造単位を有するバインダーポリマーを含んでいる。 イ したがって、補正2の請求項1に記載された事項は、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲を超えるものである。 4 分割の適法性についてのまとめ 以上のとおりであるから、本願は、本願出願時、平成25年10月17日提出の手続補正書による補正時、及び平成26年 3月25日提出の手続補正書による補正時のいずれにおいても、原出願の一部を新たな特許出願としたものではなく、特許法44条1項に規定する要件を満たさない。 したがって、本願の出願日は、実際の出願日(平成24年 2月 6日)である。 第3 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年 3月25日に提出された手続補正書による補正(補正2、以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、平成25年10月17日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前(補正1、以下「本件補正前」という。)の明細書及び特許請求の範囲についてするものであって、そのうち特許請求の範囲の請求項1についての補正は、再掲すると以下のとおりである。(下線は補正箇所を示す。) (1)本件補正前の請求項1 「(A)スチレンに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0?2.0であるバインダーポリマー、 (B)光重合性化合物、及び (C)光重合開始剤、 を含有する感光性樹脂組成物。」 (2)本件補正により補正された請求項1 「(A)スチレンに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、炭素数1?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有し、分散度が1.0?2.0であるバインダーポリマー、 (B)光重合性化合物、及び (C)光重合開始剤、 を含有する感光性樹脂組成物。」(以下「本願補正発明」という。) 2 新規事項の追加について (1)ア 本願当初明細書等の請求項1は、前記「第2 1(1)」に記載したとおりである。 イ また、本願当初明細書の【0026】?【0032】、【0040】、【0043】、【0107】及び【0109】に記載された、バインダーポリマーについての記載事項は、前記「第2 2(1)」のイ?カで摘記した原出願の記載事項の[0026]?[0032]、[0040]、[0043]、[0107]及び[0109]に記載されたものと同記載である。 ウ よって、本願当初明細書等には、「バインダーポリマー」が、炭素数7?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに基づく構造単位を必須の構造単位として有することは記載されておらず、本願補正発明の「炭素数1?12」という特定は、本願出願当初明細書等のいずれにも記載されていない「炭素数7?12」という特定の炭素数のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を有するバインダーポリマーを必須の構造単位として特定するものである。 (2)したがって、本件補正は、本願当初明細書等に記載された事項に、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、本願当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえない。 (3)新規事項の追加についてのまとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 3 独立特許要件についての一応の検討 本件補正は、上記2で検討したように、新規事項を含むものであるが、当該本件補正が仮に新規事項に係る補正ではないものとして、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすか)について以下に検討する。 (1)前記「第2 分割の適法性について」で検討したように、本願補正発明は、原出願当初明細書等に記載されていない事項を含むものであり、本願の出願日は、実際の出願日(平成24年 2月 6日)である。 (2)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開第2008/078483号(公開日平成20年 7月 3日)(以下「引用文献1」という。)には、以下の発明が記載されている。 「(A)下記一般式(I)で表される2価の基と、下記一般式(II)で表される2価の基と、下記一般式(III)で表される2価の基と、下記一般式(IV)で表される2価の基と、を有するバインダーポリマー(【請求項1】)であって、その分散度(Mw/Mn)は好ましく1.0?2.0である(【0040】)、バインダーポリマー (B)光重合性化合物、及び (C)光重合開始剤、 を含有する感光性樹脂組成物であって、 [式(I)、式(II)、式(III)、及び式(IV)中、R^(1),R^(3),R^(5),及びR^(6)はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立に炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のアルコキシ基、OH基、又はハロゲン原子を示し、R^(7)は炭素数1?6のアルキル基を示し、m又はnはそれぞれ独立に0?5の整数を示し、m又はnが2?5のとき、複数のR^(2)又はR^(4)は互いに同一でも異なっていてもよい。] (A)バインダーポリマーは、具体的には、共重合単量体として、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル及びスチレンを用いて得たバインダーポリマーである(【0107】)、感光性樹脂組成物。」(以下、「引用発明」という。) (3)対比・判断 引用発明の「メタクリル酸メチル」は、炭素数1のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。したがって、引用発明の「メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル及びスチレンを用いて得たバインダーポリマー」は、本願補正発明の「『スチレンに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルに基づく構造単位と、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位と、炭素数1?12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位とを有』する『バインダーポリマー』」に相当する。 よって、本願補正発明と、引用発明とは、発明の構成に差異がない。 (4)したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)独立特許要件についての検討のまとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第4 本願発明について 1 本願発明 前記「第3」での検討のとおり、平成26年 3月25日に提出された手続補正書による本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の請求項1?10に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第3[理由]1(1)に記載したとおりである。 2 本願発明の出願日について (1)本願発明は、前記「第2」で検討したように、原出願の一部を新たな特許出願としたものではなく、特許法44条1項に規定する要件を満たさないから、本願の出願日は、実際の出願日(平成24年 2月 6日)である。 3 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第3[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第3[理由]3で検討した本願補正発明から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位の炭素数に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第3[理由]3(3)及び(4)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明である。 5 むすび 上記の通りであるから、本願発明は、特許法第29条1項3号の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2015-05-01 |
結審通知日 | 2015-05-12 |
審決日 | 2015-05-26 |
出願番号 | 特願2012-23401(P2012-23401) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G03F)
P 1 8・ 113- Z (G03F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉持 俊輔 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
清水 康司 大瀧 真理 |
発明の名称 | 感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法 |
代理人 | 古下 智也 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 鈴木 洋平 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |