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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1303413
審判番号 不服2013-23537  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-02 
確定日 2015-07-22 
事件の表示 特願2008- 44251「A/Vプロファイルを管理する方法、装置およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月25日出願公開、特開2008-312190〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成20年2月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年6月13日、大韓民国)を出願日とする出願であって、
平成23年2月23日付けで審査請求がなされ、平成25年3月28日付けで拒絶理由通知(平成25年4月9日発送)がなされ、
これに対して平成25年7月9日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、
平成25年7月23日付けで上記平成25年3月28日付けの拒絶理由通知書に記載した理由Cによって拒絶査定(平成25年7月30日謄本発送・送達)がなされたものである。

これに対して、「原査定を取り消す、この出願の発明は、これを特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成25年12月2日付けで審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、
平成26年2月28日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされたものである。


第2 平成25年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年12月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1. 本件補正
平成25年12月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成25年7月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13の記載

「 【請求項1】
DRMドメインを構成するホームサーバが、
ライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネントを要請する段階、および
上記ライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネントのうち上記DRMドメインを構成する機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め、DRMライセンスおよび暗号化されたコンテンツを生成する段階
を含む、方法。
【請求項2】
上記ライセンスコンポーネントはドメインキー(DK)で暗号化したCEK、ドメインID、権利客体発行サーバ(RI)のID、コンテンツIDおよびライセンス
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ライセンスに権利客体発行サーバ(RI)の署名キー(S)を利用し、電子署名を遂行するのに、上記電子署名は、

ここで、M1はHDプロファイルに対するライセンスであり、M2はSDプロファイルに対するライセンスであり、M3は携帯用プロファイルに対するライセンスであり、Hはハッシュ関数であり、π-1はトラップドア置換の逆である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記暗号化されたコンテンツコンポーネントは、上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮し、エンコーディングした暗号化されたコンテンツおよび上記暗号化されたコンテンツのコンテンツIDを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
権利客体発行サーバおよびコンテンツ発行サーバにライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネントを要請する送信部と、
上記要請によって伝送された上記ライセンスコンポーネントおよび上記暗号化されたコンテンツコンポーネントを受信する受信部と、
上記伝送された暗号化されたコンテンツコンポーネントのうちDRMドメインを構成する機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め、暗号化されたコンテンツを生成するコンテンツコンポーネント管理部、および
上記伝送されたライセンスコンポーネントのうち所定機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め、DRMライセンスを生成するライセンスコンポーネント管理部
を含む、装置。
【請求項6】
上記ライセンスコンポーネントは、上記権利客体発行サーバによって生成され、ドメインキー(DK)で暗号化したCEK、ドメインID、権利客体発行サーバ(RI)のID、コンテンツIDおよびライセンスを含む、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
上記権利客体発行サーバの署名キー(S)を利用し、上記ライセンスに電子署名を遂行するのに上記電子署名は、

ここで、M1はHDプロファイルに対するライセンスであり、M2はSDプロファイルに対するライセンスであり、M3は携帯用プロファイルに対するライセンスであり、Hはハッシュ関数であり、π-1はトラップドア置換の逆である、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
上記暗号化されたコンテンツコンポーネントは、コンテンツ発行サーバによって生成され、上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮し、エンコーディングした暗号化されたコンテンツおよび上記暗号化されたコンテンツのコンテンツIDを含む、
請求項6に記載の装置。
【請求項9】
DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮したライセンスコンポーネントを生成する権利客体発行サーバと、
上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮した暗号化されたコンテンツコンポーネントを生成するコンテンツ発行サーバ、および
上記生成されたライセンスコンポーネントおよび上記暗号化されたコンテンツコンポーネントのうち上記DRMドメインを構成する機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集めDRMライセンスおよび暗号化されたコンテンツを生成するホームサーバ
を含む、システム。
【請求項10】
上記DRMドメイン内に位置され、上記ホームサーバにDRMライセンスおよび暗号化されたコンテンツを要請する携帯用機器をさらに含む、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
上記ライセンスコンポーネントはドメインキー(DK)で暗号化したCEK、ドメインID、権利客体発行サーバ(RI)のID、コンテンツIDおよびライセンスを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
上記権利客体発行サーバの署名キー(S)を利用し、上記ライセンスに電子署名を遂行するのに、上記電子署名は、

ここで、M1はHDプロファイルに対するライセンスであり、M2はSDプロファイルに対するライセンスであり、M3は携帯用プロファイルに対するライセンスであり、Hはハッシュ関数であり、π-1はトラップドア置換の逆である、
請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
上記暗号化されたコンテンツコンポーネントは、上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮し、エンコーディングした暗号化されたコンテンツおよび上記暗号化されたコンテンツのコンテンツIDを含む、
請求項9に記載のシステム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
DRMドメインを構成するホームサーバが、
A/Vプロファイル別に構成されたライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネントを要請する段階、および
上記ライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネントのうち上記DRMドメインを構成する機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め、DRMライセンスおよび暗号化されたコンテンツを生成する段階
を含み、
前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む、
方法。
【請求項2】
上記ライセンスコンポーネントはドメインキー(DK)で暗号化したCEK、ドメインID、権利客体発行サーバ(RI)のID、コンテンツIDおよびライセンスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ライセンスに権利客体発行サーバ(RI)の署名キー(S)を利用し、電子署名を遂行するのに、上記電子署名は、

ここで、M1はHDプロファイルに対するライセンスであり、M2はSDプロファイルに対するライセンスであり、M3は携帯用プロファイルに対するライセンスであり、Hはハッシュ関数であり、π-1はトラップドア置換の逆である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記暗号化されたコンテンツコンポーネントは、上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮し、エンコーディングした暗号化されたコンテンツおよび上記暗号化されたコンテンツのコンテンツIDを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
権利客体発行サーバおよびコンテンツ発行サーバにA/Vプロファイル別に構成されたライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネントを要請する送信部と、
上記要請によって伝送された上記ライセンスコンポーネントおよび上記暗号化されたコンテンツコンポーネントを受信する受信部と、
上記伝送された暗号化されたコンテンツコンポーネントのうちDRMドメインを構成する機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め、暗号化されたコンテンツを生成するコンテンツコンポーネント管理部、および
上記伝送されたライセンスコンポーネントのうち所定機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め、DRMライセンスを生成するライセンスコンポーネント管理部を含み、
前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む、装置。
【請求項6】
上記ライセンスコンポーネントは、上記権利客体発行サーバによって生成され、ドメインキー(DK)で暗号化したCEK、ドメインID、権利客体発行サーバ(RI)のID、コンテンツIDおよびライセンスを含む、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
上記権利客体発行サーバの署名キー(S)を利用し、上記ライセンスに電子署名を遂行するのに上記電子署名は、

ここで、M1はHDプロファイルに対するライセンスであり、M2はSDプロファイルに対するライセンスであり、M3は携帯用プロファイルに対するライセンスであり、Hはハッシュ関数であり、π-1はトラップドア置換の逆である、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
上記暗号化されたコンテンツコンポーネントは、コンテンツ発行サーバによって生成され、上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮し、エンコーディングした暗号化されたコンテンツおよび上記暗号化されたコンテンツのコンテンツIDを含む、
請求項6に記載の装置。
【請求項9】
DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮したライセンスコンポーネントを生成する権利客体発行サーバと、
上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮した暗号化されたコンテンツコンポーネントを生成するコンテンツ発行サーバ、および
上記生成されたライセンスコンポーネントおよび上記暗号化されたコンテンツコンポーネントのうち上記DRMドメインを構成する機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集めDRMライセンスおよび暗号化されたコンテンツを生成するホームサーバを含み、
前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む、システム。
【請求項10】
上記DRMドメイン内に位置され、上記ホームサーバにDRMライセンスおよび暗号化されたコンテンツを要請する携帯用機器をさらに含む、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
上記ライセンスコンポーネントはドメインキー(DK)で暗号化したCEK、ドメインID、権利客体発行サーバ(RI)のID、コンテンツIDおよびライセンスを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
上記権利客体発行サーバの署名キー(S)を利用し、上記ライセンスに電子署名を遂行するのに、上記電子署名は、

ここで、M1はHDプロファイルに対するライセンスであり、M2はSDプロファイルに対するライセンスであり、M3は携帯用プロファイルに対するライセンスであり、Hはハッシュ関数であり、π-1はトラップドア置換の逆である、
請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
上記暗号化されたコンテンツコンポーネントは、上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮し、エンコーディングした暗号化されたコンテンツおよび上記暗号化されたコンテンツのコンテンツIDを含む、
請求項9に記載のシステム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

2. 新規事項の追加禁止要件及び目的要件について

2-1 本件補正により発生した事項
本件補正により、以下の補正事項が発生した。

<補正事項1>
補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネントを要請する段階」は、「コンポーネント」に関し、新たに「A/Vプロファイル別に構成された」とする特定が付加された。また、新たに付加された特定にある「A/Vプロファイル」に関し、「前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む」との特定も付加された。

<補正事項2>
補正前の請求項5に係る発明の発明特定事項である「装置」の「送信部」が要請する「ライセンスコンポーネントおよび暗号化されたコンテンツコンポーネント」に関し、新たに「A/Vプロファイル別に構成された」とする特定が付加された。また、新たに付加された特定にある「A/Vプロファイル」に関し、「前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む」との特定も付加された。

<補正事項3>
補正前の請求項9に係る発明の発明特定事項である「権利客体発行サーバ」、「コンテンツ発行サーバ」、「ホームサーバ」の各々が扱う「A/Vプロファイル」に関し、「前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む」との特定が付加された。

2-2 新規事項の追加禁止要件及び補正の目的に関する検討

上記補正事項1ないし3の各々について、特許法第17条の2第3項の規定(新規事項の追加禁止)に適合する補正であるか否か、及び適合する場合に、同法同条第5項の規定(補正の目的)に適合する補正であるか否かについて、以下に検討する。

(1)補正事項1について
補正前の請求項1に記載されていた、ホームサーバがライセンスコンポーネントおよびコンテンツコンポーネントを要請するとした段階について、コンポーネントの構成を「A/Vプロファイル別」と、要請の段階から特定されたとする旨を示す記載は、本件出願に係る当初の明細書、図面、特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)のいずれにも見当たらない。
よって、補正事項1に係る補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものと認められる。
(2)補正事項2について
補正前の請求項5に係る発明は、「装置」を請求対象とする発明であるが、当該装置は、前出の<補正事項1>に係る「ホームサーバ」を指す関係にある。
とすれば、補正事項2についての検討は、上記2-2の(1)で既に行った、ホームサーバが要請する内容に、「A/Vプロファイル別」でのコンポーネント指定が含まれるとする具体的記述が、当初明細書等から見いだせるか、についての検討と、全く同じ関係になる。
そして、その検討結果は、既に示したとおり、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものとされているので、当該補正事項2についても同様に、同法同条同項の規定に違反してなされたものとすべきである。
(3)補正事項3について
補正前の請求項9に記載された「A/Vプロファイル」について、「前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む」を特定することの根拠は、当初明細書等の【0043】に、「コンテンツ発行サーバ」が行う「エンコーディング」の実行項目に挙げられている箇所が確認でき、また【0050】に、「権利客体サーバ」が生成したDRMライセンス中に、HDプロファイル/SDプロファイル/携帯用プロファイルの3種に対してそれぞれ「ライセンス」としてM1/M2/M3が生成されたとする記載があり、その後【0048】に記載された「個別的に生成」されたとする、この生成済みライセンスは、どのように編成されるかは明記されない形で、【0082】にて「ライセンスコンポーネント」として生成に至るとされている。そのため、生成される「コンポーネント」としては、1つのA/Vプロファイルを対象としたコンポーネント、2つのA/Vプロファイルを対象としたコンポーネント、3つのA/Vプロファイルを対象としたコンポーネントの、いずれの形態になるかは定かではないものの、当該補正事項3にて新たに特定しようとする、「前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む」との条件には合致していると判断される。
また、前出の新たな特定に関する記載には、「少なくとも一つ」と記載している点を見れば、コンポーネントが含むライセンスないしコンテンツの種別数の最低単位を、請求人は「1」と望んでいることが酌み取れる。
以上により、当該補正事項3に係る補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。加えて当該補正は、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の請求項9に記載された発明とその補正後の請求項9に記載される発明の産業上の利用分野及び解決使用とする課題を同一とするものであることが明らかなので、特許法第17条の2第5項第2号で定める特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

2-3 小結
以上のとおり、本件補正は、その一部に当初明細書等に記載した事項とはできない事項を加えようとする内容を含むものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであり、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3. 独立特許要件について

上記2-3に示したとおり、本件補正は新規事項の追加を含むものであるものの、仮に新規事項の追加に該当しない本件補正後の請求項9についてする補正は、限定的減縮を目的とする補正事項を含むものとされている点を考慮し、該請求項9に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、念のために以下に検討する。

3-1 本件補正発明
本件補正発明は、上記1.の本件補正後の特許請求の範囲において【請求項9】として記載した次のとおりのものである。

<本件補正発明>
「DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮したライセンスコンポーネントを生成する権利客体発行サーバと、
上記DRMドメイン内の機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮した暗号化されたコンテンツコンポーネントを生成するコンテンツ発行サーバ、および
上記生成されたライセンスコンポーネントおよび上記暗号化されたコンテンツコンポーネントのうち上記DRMドメインを構成する機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集めDRMライセンスおよび暗号化されたコンテンツを生成するホームサーバを含み、
前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む、システム。」

3-2 先行技術

(1)引用文献1
本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定において引用された下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献1>
特表2004-538677号公報(2004年12月24日公表)

<引用文献記載事項1-1>
「【0045】
[トランスコーディング方法およびシステム]
図15Aは、本発明の実施形態を実施してもよい、例示的なハイブリッド有線/無線ネットワーク1500のブロック図である。
ハイブリッド有線/無線ネットワーク1500では、メディア(たとえば、ビデオ)データを、有線リンクを介して固定クライアント(固定型受信ノード)に、および無線リンクを介して移動クライアント(移動型受信ノード)にストリーミングする。
【0046】
本実施形態では、ハイブリッド有線/無線ネットワーク1500は、有線送信機(ソース1510)と、有線高解像度受信機1520と、無線中間解像度受信機1540と、を有する。
このシステムでは、ソース1510は、高解像度受信機1520に送信されるフル帯域幅の高解像度ビデオストリーム1550aを生成する。
ソース1510、中間解像度受信機1540または有線/無線ゲートウェイ等の中間ノードに配置されたトランスコーダ1530は、ストリーム1550aをより低い帯域幅の中間解像度ビデオストリーム1550bにトランスコーディングし、それはその後、中間解像度受信機1540に送信される。
・・・(中略)・・・
【0049】
図15Aおよび図15Bを参照すると、ハイブリッド有線/無線ネットワーク1500と無線ネットワーク1501とはともに、ネットワークトランスコーダを使用してビデオストリーム1550aを、ターゲット無線ノード(たとえば、中間解像度受信機1540)の表示能力に一致するよりも低い帯域幅のストリーム1550bにトランスコーディングする。
概して、これらのネットワークは、ネットワークトランスコーディングが、メディア(たとえば、ビデオ)ストリームを特定のチャネルに亙る伝送に対しおよび受信ノードの能力に対しより適したフォーマットにトランスコーディングすることにより、無線スペクトルと受信機資源とをいかに効率よく使用することができるかを示す。」

<引用文献記載事項1-2>
「【0015】
本発明の様々な実施形態では、データパケットのストリームを、下流側の属性にしたがってデータパケットをトランケートまたは除去する機能によって操作する。
データパケットは、受取られた時に下流側の属性と互換性がある場合、変更なしにトランスコーディングシステムを通過してもよい。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0030】
概観として、本発明は、スケーラブルにエンコードすることができる任意のデータと、特にスケーラブルなエンコードを漸進的な暗号化と結合する任意のデータと、に関する。
本出願の目的のために、スケーラブル符号化を、オリジナルデータを入力としスケーラブルに符号化されたデータを出力として生成するプロセスとして定義する。
ここでは、スケーラブルに符号化されたデータは、その一部を、あらゆる品質レベルのオリジナルデータを復元するために使用することができる、という特性を有する。
特に、スケーラブルに符号化されたデータを、しばしば埋込みビットストリームとみなす。
ビットストリームの第1の部分を使用して、ビットストリームの残り部分からのいかなる情報も必要とすることなく、オリジナルデータの基準品質復元をデコードすることができ、ビットストリームの漸進的に大きい部分を使用して、オリジナルデータのより品質の向上した復元をデコードすることができる。」

<引用文献記載事項1-4>
「【0036】
ステップ608において述べるように、本実施形態は、スケーラブルビデオデータを漸進的に暗号化することにより、漸進的に暗号化されたスケーラブルビデオデータを生成する。
・・・(中略)・・・
【0038】
さらにステップ608を参照すると、本発明の一実施形態では、ペイロードデータ(すなわち、スケーラブルビデオデータ)は漸進的に暗号化されるが、ヘッダデータは、トランスコーディングノードがこの情報を使用してトランスコーディング判断を行うことができるように暗号化されないままである。
たとえば、一実施形態では、非暗号化ヘッダは、暗号化されたペイロードデータ内の推奨されたトランケーションポイント等の情報を含む。
別の実施形態では、このヘッダデータを使用して中間トランスコーディングノードにより準レート歪み(RD)-最適ビットレート低減を達成する。」

<引用文献記載事項1-5>
「【0048】
本実施形態において、無線ネットワーク1501は、無線送信機(ソース1510)と、高解像度受信機・トランスコーダ1560と、中間解像度(低帯域幅)受信機1540と、を含む。
無線ネットワーク1501では、高解像度受信機1560は、高解像度ビデオストリーム1550aを受取りトランスコーディングし、結果としての低帯域幅ストリーム1550bを中間解像度受信機1540に中継する。
【0049】
図15Aおよび図15Bを参照すると、ハイブリッド有線/無線ネットワーク1500と無線ネットワーク1501とはともに、ネットワークトランスコーダを使用してビデオストリーム1550aを、ターゲット無線ノード(たとえば、中間解像度受信機1540)の表示能力に一致するよりも低い帯域幅のストリーム1550bにトランスコーディングする。
概して、これらのネットワークは、ネットワークトランスコーディングが、メディア(たとえば、ビデオ)ストリームを特定のチャネルに亙る伝送に対しおよび受信ノードの能力に対しより適したフォーマットにトランスコーディングすることにより、無線スペクトルと受信機資源とをいかに効率よく使用することができるかを示す。」

(2)引用文献2
本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定において引用された下記引用文献1には、それぞれ対応する図面と共に、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与、当審訳は対応する日本語公表公報から転載した。)
<引用文献2>国際公開第2005/116794号(2005年12月8日公開)(特表2008-501177号公報に対応。)

<引用文献記載事項2-1>
「Figure 1 schematically shows an embodiment of the present invention. A user who wants to access information belonging to a content provider or license managing device LMD 120, such as a database connected for example to the Internet, without revealing his actual identity to the information system 100, can do so by using a user identity device or a smart card SC 110. When the user wants to buy rights to access some content, he contacts the content provider or license managing device 120 by means of an anonymous channel requesting the rights 113 and a certain content 112. After an anonymous payment scheme has been conducted, the user sends 1 his public key PK1 111 to the license managing device 110, which then creates 2 the rights and/or license 121 for that content. In different embodiments the content provider and the license managing device can be one common unit or two separate units. If they are two separate units, the content provider sends the requested content to the user, and the license manager device creates the license for that content. If they are one common unit the license manager device provides the user both with the requested content and the license.
The content is encrypted, by the content provider, with a symmetric key SYM and sent to the user together with the license 121. 」(第7頁第9行-第24行)
(当審訳:
【0031】
図1は、本発明の実施形態を概略的に示している。インターネットなどに接続されたデータベースのようなコンテンツ提供者またはライセンス管理装置(license managing device)LMD120に属する情報を、自分の実際の身元を情報システム100に明かすことなく利用したいユーザーは、ユーザー同定装置またはスマートカード(smart card)SC110を使うことによってそうできる。ユーザーが何らかのコンテンツにアクセスするための権利を購入したいとき、ユーザーは、匿名通信路によってコンテンツ提供者またはライセンス管理装置120に連絡して、権利113およびあるコンテンツ112を要求する。匿名支払い方式が実施されたのち、ユーザーは自分の公開鍵(public key)PK1 111をライセンス管理装置110に送り(1)、するとそのライセンス管理装置はそのコンテンツについての権利および/またはライセンス121を生成する(2)。異なる実施形態によって、コンテンツ提供者とライセンス管理装置は一つの共通のユニットであることも、二つの別個のユニットであることもできる。二つの別個のユニットである場合、コンテンツ提供者が要求されたコンテンツをユーザーに送り、ライセンス管理装置がそのコンテンツについてのライセンスを生成する。それらが一つの共通ユニットである場合、ライセンス管理装置はユーザーに要求されたコンテンツとライセンスの両方を提供する。
【0032】
コンテンツは対称鍵(symmetric key)SYMを用いてコンテンツ提供者によって暗号化されており、ライセンス121とともにユーザーに送られる。)

<引用文献記載事項2-2>
「 Distributing rights within a domain
When a user of the information distributing system buys information, other users which he is acquainted to might want to share that information. This can be done by forming a domain, which is associated with a shared domain key PK _(D) . The domain has to be registered with a domain authority, which can verify that indeed the members from a group, e.g. a family. The same domain authority can assign a PK _(D) to that group of users and add an SK _(D) to the smartcard. Having done that, a user can buy content for his personal use (using his personal key PK1) or for the whole domain using the domain key PK _(D) . In the case of buying content for the whole domain, a first user having a first user identity device 110 associated with a public domain key PK _(D) 516, provides 1 this public domain key PK _(D) together with a request for a certain content contentID 112 and Rights 113, to a license managing device 120. The license managing device creates 2 a master license 521, which is sent (3) to the first user identity device. The maser license preferably has the format: {{PK_(D)[SYM//Rights//contentID},1}_(signCP) , MR}_(signCP). (1)
The master license consists of the domain license, having the format::
{PK_(D) [SYM//Rights//contentID}, 1}_(signCP) (2)
and the master rights tag (MR), signed all together by the CP. The domain license consists of a symmetric key SYM, master rights Rights 113, and contentID 112 encrypted by the domain key PK_(D), as well as a delegation tag (set to 1), signed all together by the CP 120.」(第17頁第1行-第19行)
(当審訳:
【0069】
〈ドメイン内での権利の配布〉
情報配布システムのユーザーが情報を購入するとき、知己である他のユーザーがその情報を共有したがることがありうる。これは、ドメインを形成することによってできる。ドメインは共有ドメイン鍵PK_(D)と関連付けられる。ドメインはドメイン当局(domain authority)に登録される必要がある。ドメイン当局は当該構成員が実際に家族などのグループの一員であることを検証できる。その同じドメイン当局がPK_(D)をそのユーザーグループに、SK_(D)をスマートカードに割り当てることができる。それがすむと、ユーザーは自分の個人的使用のために(個人鍵PK1を使って)、あるいはドメイン鍵PK_(D)を使ってドメイン全体のためにコンテンツを購入できる。ドメイン全体のためにコンテンツを購入する場合、公開ドメイン鍵PK_(D)516に関連付けられた第一のユーザー同定装置110を有する第一のユーザーは、この公開ドメイン鍵PK_(D)をあるコンテンツcontentID112およびRights113の要求とともにライセンス管理装置120に与える(1)。ライセンス管理装置はマスターライセンス521を生成し(2)、これが第一のユーザー同定装置に送られる(3)。マスターライセンスは好ましくは書式
{{PK_(D)[SYM?Rights?contentID],1}_(signCP),MR}_(signCP) (1)
をもつ。
【0070】
前記マスターライセンスは、書式
{PK_(D)[SYM?Rights?contentID],1}_(signCP ) (2)
をもつドメインライセンスおよびマスター権利タグ(master rights tag)(MR)からなり、全体がCPによって署名されている。前記ドメインライセンスは対称鍵SYM、マスター権利Rights113およびcontentID112がドメイン鍵PK_(D)によって暗号化されたものならびに委譲タグ(delegation tag)(1に設定)からなり、全体がCP120によって署名されている。)

<引用文献記載事項2-3>
「Then, the DM creates 5 a member license for each PKi having the format:
・・・(中略)・・・
Finally, the license managing device distributes 9 these rights to the domain members, preferably via the first user identity device.」(第18頁第3行-第7行)
(当審訳:【0072】
・・・・・(中略)・・・そこで、DMは各PKiについて次の書式をもつメンバーライセンスを生成する(5)。
【0073】・・・(中略)・・・最後に、ライセンス管理装置がこれらの権利をドメイン構成員に、好ましくは第一のユーザー同定装置を介して配布する(9)。)


3-3 引用発明の認定

(1)上記引用文献記載事項1-1の記載から、引用文献1には
「メディアデータを送信する送信機と、高解度受信機と、中間解像度受信機と、ソース1510、中間解像度受信機1540または有線/無線ゲートウェイ等の中間ノードに配置されたトランスコーダを有するネットワークであって、
前記送信機はフル帯域幅の高解像度ビデオストリームを生成し、
前記トランスコーダは、ターゲット無線ノード(たとえば、中間解像度受信機1540)の表示能力に一致するよりも低い帯域幅のストリーム1550bにトランスコーディングする、ネットワーク。」
が記載されていると言える。

(2)上記引用文献記載事項1-2の記載から、引用文献1には、
「送られるデータパケットのストリームは、下流側の属性にしたがってデータパケットをトランケートまたは除去する機能によって操作され、データパケットは、受取られた時に下流側の属性と互換性がある場合、変更なしにトランスコーディングシステムを通過してもよい」
ことが記載されていると言える。

(3)上記引用文献記載事項1-3及び1-4の記載から、引用文献1には
「スケーラブルにエンコードすることができるビデオデータのヘッダを除く部分が漸進的に暗号化されているスケーラブルビデオデータ」
を態様とすることが記載されていると言える。

(4)上記引用文献記載事項1-5の記載から、引用文献1には
「中間解像度受信機へのメディアストリーム配信を中継する高解度受信機は、トランスコーダを備えることができ、トランスコーダの使用は、メディアストリームを、中間解像度受信機の表示能力に一致する帯域幅のストリームフォーマットにすることである」
ことが記載されていると言える。

(5)よって、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「メディアデータを送信する送信機と、有線/無線ゲートウェイ等の中間ノードに配置されたトランスコーダを備えた高解度受信機と、前記高解度受信機から中継されたメディアストリームを受信する中間解像度受信機と有するネットワークであって、
前記送信機はフル帯域幅の高解像度ビデオストリームであってスケーラブルにエンコードすることができるビデオデータのヘッダを除く部分が漸進的に暗号化されているスケーラブルビデオデータを生成し、
前記トランスコーダを備えた高解度受信機は、前記メディアストリームを、中間解像度受信機の表示能力に一致する帯域幅のストリームフォーマットにするようにトランスコーディングする、及び、トランスコーディングシステムの下流側の属性と送信されたデータパケットのストリームに互換性がある場合にはトランケートまたは除去されずに通過してデータパケットを下流側に送る、ネットワーク。」


3-4 対比

本件補正発明と引用発明とを以下に対比する。

(1)引用発明の「暗号化されているスケーラブルビデオデータ」であって「フル帯域幅の高解像度ビデオストリーム」を「生成」する「送信機」は、生成し送信する対象データが暗号化されているコンテンツデータであると言えるので、本件補正発明の「暗号化されたコンテンツ」「を生成するコンテンツ発行サーバ」に相当する。

(2)本件補正発明の「システム」に関係する「ドメイン内の機器」とは、その請求項1には直接的には明言されていないものの、本件明細書の【0106】「本発明の一実施形態によるA/Vプロファイルを管理するシステムを示した図である。」とされた本件添付図面の【図2】の図示によると、図中破線で示されたDRMドメイン内に、130及び140が図示されているところから見て、当該「ドメイン内の機器」とは、「ホームサーバ」(130)及び「携帯用機器」(140)が含まれていることが理解される。
そうすると、引用発明の「有線/無線ゲートウェイ等の中間ノードに配置されたトランスコーダを備えた高解度受信機」及び「前記高解度受信機から中継されたメディアストリームを受信する中間解像度受信機」は、メディア(コンテンツ)ストリームの送受信ルートの構成上、本件補正発明の「ホームサーバ」及び「携帯用機器」に共通する。

(3)また、前述した(2)のメディア(コンテンツ)ストリームの送受信ルートの構成の点から見て、引用発明の「ネットワーク」は、メディアストリームの発行及び送信サーバがあり、これを最初に受信し、下流の機器へと中継する「トランスコーダを備えた高解度受信機」があった上で、「中間解像度受信機」が存在するとした点で基本構造が一致するため、本件補正発明の「システム」が備える構成と共通する。

(4)本件補正発明の「HDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む」とした「A/Vプロファイル」、及び、当該「A/Vプロファイル」を「考慮した」とした処理内容は、その特定が、前者は解像度や画質のプロファイル情報を想定しているのかどうかが、単に「少なくとも一つを含む」としているに留まること、後者は擬人化表現を使用し、客観的でないことから、それぞれ具体的に何を指しているのかを、本件明細書の発明の詳細な説明を参酌することにより分析してみる。
「A/Vプロファイル」に関する記述箇所として、【0006】、【0013】、【0043】、【0050】、【0085】-【0087】、【0089】、【0090】-【0091】があり、当該記載箇所を見ると、A/Vプロファイルに関する処理として使用されているプロファイル情報は、「HD」、「SD」、「携帯用」のみであってその他には例示がなく、「A/Vプロファイル」の扱いも、HD/SD/携帯用のいずれに対しても、“コンテンツオブジェクトをスケーラブルビデオコーディングでエンコーディングする”ことで、【0043】に記載のとおり、“部分的なコーディングを可能”にさせたことの例示しかない。
すなわち、本件で言う「A/Vプロファイル」とされたものは、解像度や画質としてHD、SD、携帯用のいずれかとされるプロファイル情報を内容とし、かつ「A/Vプロファイル」を「考慮した」とした処理も、“コンテンツオブジェクトをスケーラブルビデオコーディングでエンコーディングする”を内容とするものと理解される。
そうすると、引用発明の「中間解像度受信機の表示能力」ないし「互換性がある」とされた「下流側の属性」は、本件補正発明の「機器のA/Vプロファイル」に相当し、同様に、引用発明の「ビデオストリームであってスケーラブルにエンコードすることができるビデオデータのヘッダを除く部分が漸進的に暗号化されているスケーラブルビデオデータを生成」は、本件補正発明の「機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮した暗号化されたコンテンツコンポーネントを生成」に相当する。

(5)上述の(4)の関係を加味すると、引用発明の「前記メディアストリームを、中間解像度受信機の表示能力に一致する帯域幅のストリームフォーマットにするようにトランスコーディングする、及び、トランスコーディングシステムの下流側の属性と送信されたデータパケットのストリームに互換性がある場合にはトランケートまたは除去されずに通過してデータパケットを下流側に送る」とされる「トランスコーダを備えた高解度受信機」は、その処理内容が下流側の表示能力に合わせたトランスコーディング処理の選択とされているところから見て、本件補正発明の「機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め」「暗号化されたコンテンツを生成する」を行うとした「ホームサーバ」に相当する。

(6)よって、本件補正発明は、下記の一致点で引用発明と一致し、下記の相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「機器がサポートする全てのA/Vプロファイルを考慮した暗号化されたコンテンツコンポーネントを生成するコンテンツ発行サーバ、および
上記生成され暗号化されたコンテンツコンポーネントの機器のA/Vプロファイルに該当する要素を集め暗号化されたコンテンツを生成するホームサーバを含み、
前記A/VプロファイルはHDプロファイル、SDプロファイル及び携帯用プロファイルのうち少なくとも一つを含む、システム。」

<相違点1>
本件補正発明では、「機器」に対して、「DRMドメイン」を構成するとした特定がなされているのに対して、引用発明のネットワークに含まれる機器である「トランスコーダを備えた高解度受信機」及び「中間解像度受信機」が、互いにコンテンツに対してドメインを形成した関係にあるか否かが定かとされていない点。

<相違点2>
本件補正発明には、コンテンツに対し、別途そのライセンスに関するコンポーネントを生成する「権利客体発行サーバ」が、「システム」の一部に存在し、「ホームサーバ」へコンテンツコンポーネントと共に送られることを示しているのに対して、引用発明の「ネットワーク」には、コンテンツに対応するライセンス情報が明らかでない点。


3-5 判断
以下、上記相違点について検討する。

上記相違点1、2で本件補正発明が有するとされた事項は、いずれも上記引用文献2に、ドメイン内にある複数の機器に対してコンテンツの使用権をライセンスサーバーがマスター及びメンバーライセンスとして生成し配布するとして示された引用文献記載事項に含まれる。そのため、相違点1、2はいずれも本件の優先日前に当業者に知られた公知の事項であり、新規な事項ではなく、当該引用文献2に記載の公知技術は、デジタルコンテンツの配布と利用を示した引用発明と同一分野の関係にあるところから見て、引用発明に当該引用文献2の公知技術を付加適用して本件補正発明のごとき構成をなすことは、当業者にとって困難なことではないと言える。また、本件補正発明が奏する作用効果についても、格別なものではない。
よって、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたというべきである。

3-6 小結
以上のとおり、本件補正後の請求項9に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。


4. むすび

上記2.のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであり、同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、さらに上記3.のとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定にも違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によっても却下すべきものである。


よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 原審査定について

1. 手続の経緯、本願発明の認定
本願の手続の経緯は上記「第1 手続の経緯」記載のとおりのものであり、さらに、平成25年12月2日付けの手続補正は上記「第2 平成25年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」のとおり却下された。

したがって、本願の特許請求の範囲は、上記「第2 平成25年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」の1.の本件補正前の特許請求の範囲に記載のとおりのものであり、その請求項9に係る発明(以下「本願発明」と記す。)はそこに【請求項9】として記載したとおりのものである。

2. 先行技術・引用発明の認定
上記「第2 平成25年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」の3-2で示したとおり、本件出願の優先日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年3月28日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献1ないし2には上記引用文献記載事項が記載されている。
そして、上記引用文献1には上記「第2 平成25年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定」の3-3で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

3. 対比・判断
上記第2.の3.で検討した本件補正発明は、実質的には本願発明に対し上記第2.の2.の2-2で述べた限定的減縮をしたものと認められるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当すると認められる。
そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに2-2で述べた限定的減縮をしたものに相当する上記本件補正発明は、上記第2.の3.に記載したとおり、上記引用文献1ないし2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明も同様の理由により、上記引用文献1ないし2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上のとおり、本願請求項9に係る発明は、その出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-17 
結審通知日 2015-02-24 
審決日 2015-03-12 
出願番号 特願2008-44251(P2008-44251)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 561- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 西村 泰英
田中 秀人
発明の名称 A/Vプロファイルを管理する方法、装置およびシステム  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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