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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1303877
審判番号 不服2014-4703  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-11 
確定日 2015-08-06 
事件の表示 特願2010-117832「通信システム、通信装置及び通信方法、並びにコンピューター・プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月21日出願公開、特開2011- 82952〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成22年5月21日(優先権主張平成21年9月9日(以下「優先日」という。))の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 5月 7日 :出願審査請求書の提出
平成25年10月28日 :上申書、手続補正書の提出
平成25年11月 1日付け :拒絶理由の通知
平成25年12月 2日 :意見書、手続補正書の提出
平成25年12月16日付け :拒絶査定
平成26年 3月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成26年 3月31日 :前置報告

第2 平成26年3月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年3月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成26年3月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成25年12月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至38の記載

「 【請求項1】
コンテンツを提供するコンテンツ提供装置とコンテンツを利用する1以上のコンテンツ利用装置でコンテンツ伝送のための通信を行なう通信システムであって、
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を前記コンテンツ提供装置に登録する登録手段と、
前記コンテンツ提供装置から前記コンテンツ利用装置へ伝送するコンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置が前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信システム。

【請求項2】
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録手段と、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信装置。

【請求項3】
DLNAプロトコルに従ってコンテンツ利用装置と通信を行なう通信装置であって、
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、
要求されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信装置。

【請求項4】
前記登録手段は、前記第1の相互認証手続きに際し、IP(Internet Protocol)ルーターのホップ回数に関する制限をさらに課し、
前記伝送手段は、前記第2の相互認証手続きに際し、IPルーターのホップ回数に関する制限をも課さない、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項5】
前記伝送手段は、
前記第2の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ利用装置の間で共有される交換鍵から生成される暗号鍵を用いてコンテンツを暗号化伝送する、
請求項2乃至4のいずれかに記載の通信装置。

【請求項6】
前記第2の相互認証手続きを経たコンテンツ伝送が可能であるコンテンツには所定の伝送可能情報が付加されており、
前記伝送手段は、前記伝送可能情報が付加されていないコンテンツの伝送を禁止し、前記伝送可能情報が付加されているコンテンツについては前記伝送可能情報を伴わずに伝送する、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項7】
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを伝送する第2の伝送手段をさらに備える、
請求項6に記載の通信装置。

【請求項8】
前記第2の伝送手段は、
前記第1の相互認証手続きを通じて1台のコンテンツ利用装置のみの間で共有される代行用の交換鍵から生成される暗号鍵を用いて前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを暗号化伝送し、
前記1台のコンテンツ利用装置が代行終了時に発行する破棄要求に応じて、前記代行用の交換鍵を破棄する、
請求項7に記載の通信装置。

【請求項9】
前記伝送手段は、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項10】
前記伝送手段は、前記第2の相互認証手続きを通じて伝送するコンテンツを暗号化する暗号鍵の生成に用いる交換の鍵を、コンテンツの伝送先となるコンテンツ利用装置毎に変えるとともに、暗号化伝送するコンテンツをコンテンツ利用装置毎に管理して、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項11】
提供するコンテンツを記録する記憶部を備える、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項12】
前記伝送手段は、前記記憶部に記録してから所定時間が経過した後のコンテンツの伝送を許容する、
請求項11に記載の通信装置。

【請求項13】
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段をさらに備える、
請求項3に記載の通信装置。

【請求項14】
前記圧縮処理は、H.264コーデックを用いて実行される、
請求項2又は13のいずれかに記載の通信装置。

【請求項15】
前記圧縮処理はハードウェアにより実行される、
請求項2又は13のいずれかに記載の通信装置。

【請求項16】
前記コンテンツ利用装置はモバイル端末である、
請求項2乃至15のいずれかに記載の通信装置。

【請求項17】
前記伝送手段はLANチップを含む、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項18】
DLNAプロトコルに従いホーム・ネットワーク内に存在する前記コンテンツ利用装置と通信を行なう、
請求項2に記載の通信装置。

【請求項19】
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録ステップと、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換ステップと、
前記登録ステップにより登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送ステップと、
を有し、
前記登録ステップでは、登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し、
前記伝送ステップでは、前記登録ステップで登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信方法。

【請求項20】
コンテンツ要求先となるコンテンツ提供装置に対し、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録手続きを行なう登録手続手段と、
登録した後の前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスして、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、圧縮処理されたコンテンツを受信するコンテンツ要求手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録する台数の制限内で登録手続きを行ない、
前記コンテンツ要求手段は、登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された台数の上限内でコンテンツを受信する、
通信装置。

【請求項21】
前記登録手続手段による登録手続きでは、前記第1の相互認証手続きに際し、IPルーターのホップ回数に関する制限がさらに課され、
前記コンテンツ要求手段によるコンテンツ要求時では前記第2の相互認証手続きに際し、IPルーターのホップ回数に関する制限をも課されない、
請求項20に記載の通信装置。

【請求項22】
前記コンテンツ要求手段は、前記第2の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ提供装置との間で共有される交換鍵から生成される暗号鍵を用いて暗号化されたコンテンツを受信する、

請求項20に記載の通信装置。
【請求項23】
前記第2の相互認証手続きを経たコンテンツ伝送が可能であるコンテンツには所定の伝送可能情報が付加されており、
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、前記伝送可能情報が付加されたままのコンテンツを要求する第2のコンテンツ要求手段をさらに備える、
請求項20に記載の通信装置。

【請求項24】
前記第2のコンテンツ要求手段は、
前記第1の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ提供装置との間で共有される代行用の交換鍵から生成される暗号鍵を用いて暗号化された、前記伝送可能情報が付加されたコンテンツを受信して、前記コンテンツ提供装置を代行し、
前記コンテンツ提供装置の代行を終了するときに前記代行用の交換鍵の破棄要求を発行する、
請求項23に記載の通信装置。

【請求項25】
コンテンツ要求先となるコンテンツ提供装置に対し、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録手続きを行なう登録手続ステップと、
登録した後の前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスして、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、圧縮処理されたコンテンツを受信するコンテンツ要求ステップと、
を有し、
前記登録ステップでは、登録する台数の制限内で登録手続きを行ない、
前記コンテンツ要求ステップでは、登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された台数の上限内でコンテンツを受信する、
通信方法。
【請求項26】
ネットワーク経由でコンテンツを提供するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、前記コンピューターを、
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を
課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録手段、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段、
として機能させ、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
コンピューター・プログラム。

【請求項27】
ネットワーク経由でコンテンツを要求するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、前記コンピューターを、
コンテンツ要求先となるコンテンツ提供装置に対し、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録手続きを行なう登録手続手段、
登録した後の前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスして、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、圧縮処理されたコンテンツを受信するコンテンツ要求手段、
として機能させ、
前記登録手段は、登録する台数の制限内で登録手続きを行ない、
前記コンテンツ要求手段は、登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された台数の上限内でコンテンツを受信する、
コンピューター・プログラム。

【請求項28】
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを記述した第1のプログラム、及び、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを記述した第2のプログラムを記憶するプログラム記憶部と、
前記プログラム記憶部から読み出したプログラムを実行するプログラム実行部と、
前記プログラム実行部が前記第1のプログラムを実行したことを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を示すコンテンツ利用装置識別情報を記憶するコンテンツ利用装置記憶部と、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換部と、
前記コンテンツ利用装置記憶部にコンテンツ利用装置識別情報が記憶されたコンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、前記プログラム実行部が前記第2のプログラムを実行したことを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを送信する送信部と、
を具備し、
前記コンテンツ利用装置記憶部は、記憶するコンテンツ利用装置識別情報の数を制限し、
前記送信部は、前記コンテンツ利用装置記憶部にコンテンツ利用装置識別情報が記憶された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信装置。

【請求項29】
前記コンテンツ変換部は、MPEG2、H264、又は、VC1アルゴリズムを備える、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項30】
前記第1のプログラムで記述される第1の相互認証手続きは、IPルーターのホップ回数に関する制限をさらに課し、
前記第2のプログラムで記述される第2の相互認証手続きは、IPルーターのホップ回数に関する制限をも課さない、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項31】
前記コンテンツ利用装置記憶部は、コンテンツ利用装置識別情報を記憶するコンテンツ利用装置の台数を制限する、
請求項30に記載の通信装置。

【請求項32】
前記送信部は、
前記第2の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ利用装置の間で共有される交換鍵から生成される暗号鍵を用いてコンテンツを暗号化伝送する、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項33】
前記第2の相互認証手続きを経たコンテンツ伝送が可能であるコンテンツには所定の伝送可能情報が付加されており、
前記送信部は、前記伝送可能情報が付加されていないコンテンツの伝送を禁止し、前記伝送可能情報が付加されているコンテンツについては前記伝送可能情報を伴わずに伝送す
る、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項34】
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを伝送する第2の送信部をさらに備える、
請求項33に記載の通信装置。

【請求項35】
前記第2の送信部は、
前記第1の相互認証手続きを通じて1台のコンテンツ利用装置のみの間で共有される代行用の交換鍵から生成される暗号鍵を用いて前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを暗号化伝送し、
前記1台のコンテンツ利用装置が代行終了時に発行する破棄要求に応じて、前記代行用の交換鍵を破棄する、
請求項34に記載の通信装置。

【請求項36】
前記送信部は、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、
請求項35に記載の通信装置。

【請求項37】
前記送信部は、前記第2の相互認証手続きを通じて伝送するコンテンツを暗号化する暗号鍵の生成に用いる交換の鍵を、コンテンツの伝送先となるコンテンツ利用装置毎に変えるとともに、暗号化伝送するコンテンツをコンテンツ利用装置毎に管理して、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項38】
提供するコンテンツを記録するコンテンツ記憶部を備える、
ことを特徴とする請求項28に記載の通信装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)を、


「 【請求項1】
コンテンツを提供するコンテンツ提供装置とコンテンツを利用する1以上のコンテンツ利用装置でコンテンツ伝送のための通信を行なう通信システムであって、
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を前記コンテンツ提供装置に登録する登録手段と、
前記コンテンツ提供装置から前記コンテンツ利用装置へ伝送するコンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置が前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信システム。

【請求項2】
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録手段と、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信装置。

【請求項3】
DLNAプロトコルに従ってコンテンツ利用装置と通信を行なう通信装置であって、
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、要求されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信装置。

【請求項4】
前記登録手段は、前記第1の相互認証手続きに際し、IP(Internet Protocol)ルーターのホップ回数に関する制限をさらに課し、
前記伝送手段は、前記第2の相互認証手続きに際し、IPルーターのホップ回数に関する制限をも課さない、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項5】
前記伝送手段は、
前記第2の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ利用装置の間で共有される交換鍵から生成される暗号鍵を用いてコンテンツを暗号化伝送する、
請求項2乃至4のいずれかに記載の通信装置。

【請求項6】
前記第2の相互認証手続きを経たコンテンツ伝送が可能であるコンテンツには所定の伝送可能情報が付加されており、
前記伝送手段は、前記伝送可能情報が付加されていないコンテンツの伝送を禁止し、前記伝送可能情報が付加されているコンテンツについては前記伝送可能情報を伴わずに伝送する、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項7】
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを伝送する第2の伝送手段をさらに備える、
請求項6に記載の通信装置。

【請求項8】
前記第2の伝送手段は、
前記第1の相互認証手続きを通じて1台のコンテンツ利用装置のみの間で共有される代行用の交換鍵から生成される暗号鍵を用いて前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを暗号化伝送し、
前記1台のコンテンツ利用装置が代行終了時に発行する破棄要求に応じて、前記代行用の交換鍵を破棄する、
請求項7に記載の通信装置。

【請求項9】
前記伝送手段は、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項10】
前記伝送手段は、前記第2の相互認証手続きを通じて伝送するコンテンツを暗号化する暗号鍵の生成に用いる交換の鍵を、コンテンツの伝送先となるコンテンツ利用装置毎に変えるとともに、暗号化伝送するコンテンツをコンテンツ利用装置毎に管理して、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項11】
提供するコンテンツを記録する記憶部を備える、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項12】
前記伝送手段は、前記記憶部に記録してから所定時間が経過した後のコンテンツの伝送を許容する、
請求項11に記載の通信装置。

【請求項13】
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段をさらに備える、
請求項3に記載の通信装置。

【請求項14】
前記圧縮処理は、H.264コーデックを用いて実行される、
請求項2又は13のいずれかに記載の通信装置。

【請求項15】
前記圧縮処理はハードウェアにより実行される、
請求項2又は13のいずれかに記載の通信装置。

【請求項16】
前記コンテンツ利用装置はモバイル端末である、
請求項2乃至15のいずれかに記載の通信装置。

【請求項17】
前記伝送手段はLANチップを含む、
請求項2又は3のいずれかに記載の通信装置。

【請求項18】
DLNAプロトコルに従いホーム・ネットワーク内に存在する前記コンテンツ利用装置と通信を行なう、
請求項2に記載の通信装置。

【請求項19】
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録ステップと、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換ステップと、
前記登録ステップにより登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送ステップと、
を有し、
前記登録ステップでは、登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し、
前記伝送ステップでは、前記登録ステップで登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信方法。

【請求項20】
コンテンツ要求先となるコンテンツ提供装置に対し、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録手続きを行なう登録手続手段と、
登録した後の前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスして、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、圧縮処理されたコンテンツを受信するコンテンツ要求手段と、
を具備し、
前記登録手段は、第1の台数の制限内で登録手続きを行ない、
前記コンテンツ要求手段は、登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数の上限内でコンテンツを受信する、
通信装置。

【請求項21】
前記登録手続手段による登録手続きでは、前記第1の相互認証手続きに際し、IPルーターのホップ回数に関する制限がさらに課され、
前記コンテンツ要求手段によるコンテンツ要求時では前記第2の相互認証手続きに際し、IPルーターのホップ回数に関する制限をも課されない、
請求項20に記載の通信装置。

【請求項22】
前記コンテンツ要求手段は、前記第2の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ提供装置との間で共有される交換鍵から生成される暗号鍵を用いて暗号化されたコンテンツを受信する、
請求項20に記載の通信装置。

【請求項23】
前記第2の相互認証手続きを経たコンテンツ伝送が可能であるコンテンツには所定の伝送可能情報が付加されており、
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、前記伝送可能情報が付加されたままのコンテンツを要求する第2のコンテンツ要求手段をさらに備える、
請求項20に記載の通信装置。

【請求項24】
前記第2のコンテンツ要求手段は、
前記第1の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ提供装置との間で共有される代行用の交換鍵から生成される暗号鍵を用いて暗号化された、前記伝送可能情報が付加されたコンテンツを受信して、前記コンテンツ提供装置を代行し、
前記コンテンツ提供装置の代行を終了するときに前記代行用の交換鍵の破棄要求を発行する、
請求項23に記載の通信装置。

【請求項25】
コンテンツ要求先となるコンテンツ提供装置に対し、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録手続きを行なう登録手続ステップと、
登録した後の前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスして、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、圧縮処理されたコンテンツを受信するコンテンツ要求ステップと、
を有し、
前記登録ステップでは、第1の台数の制限内で登録手続きを行ない、
前記コンテンツ要求ステップでは、登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数の上限内でコンテンツを受信する、
通信方法。

【請求項26】
ネットワーク経由でコンテンツを提供するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、前記コンピューターを、
コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録する登録手段、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、
前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段、
として機能させ、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
コンピューター・プログラム。

【請求項27】
ネットワーク経由でコンテンツを要求するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、前記コンピューターを、
コンテンツ要求先となるコンテンツ提供装置に対し、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て登録手続きを行なう登録手続手段、
登録した後の前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスして、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、圧縮処理されたコンテンツを受信するコンテンツ要求手段、
として機能させ、
前記登録手段は、第1の台数の制限内で登録手続きを行ない、
前記コンテンツ要求手段は、登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数の上限内でコンテンツを受信する、
コンピューター・プログラム。

【請求項28】
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを記述した第1のプログラム、及び、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを記述した第2のプログラムを記憶するプログラム記憶部と、
前記プログラム記憶部から読み出したプログラムを実行するプログラム実行部と、
前記プログラム実行部が前記第1のプログラムを実行したことを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を示すコンテンツ利用装置識別情報を記憶するコンテンツ利用装置記憶部と、
コンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換部と、
前記コンテンツ利用装置記憶部にコンテンツ利用装置識別情報が記憶されたコンテンツ利用装置がリモート・アクセスしてきたときに、前記プログラム実行部が前記第2のプログラムを実行したことを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを送信する送信部と、
を具備し、
前記コンテンツ利用装置記憶部は、記憶するコンテンツ利用装置識別情報を第1の数に制限し、
前記送信部は、前記コンテンツ利用装置記憶部にコンテンツ利用装置識別情報が記憶された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信装置。

【請求項29】
前記コンテンツ変換部は、MPEG2、H264、又は、VC1アルゴリズムを備える、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項30】
前記第1のプログラムで記述される第1の相互認証手続きは、IPルーターのホップ回数に関する制限をさらに課し、
前記第2のプログラムで記述される第2の相互認証手続きは、IPルーターのホップ回数に関する制限をも課さない、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項31】
前記コンテンツ利用装置記憶部は、コンテンツ利用装置識別情報を記憶するコンテンツ利用装置の台数を制限する、
請求項30に記載の通信装置。

【請求項32】
前記送信部は、
前記第2の相互認証手続きを通じて前記コンテンツ利用装置の間で共有される交換鍵から生成される暗号鍵を用いてコンテンツを暗号化伝送する、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項33】
前記第2の相互認証手続きを経たコンテンツ伝送が可能であるコンテンツには所定の伝送可能情報が付加されており、
前記送信部は、前記伝送可能情報が付加されていないコンテンツの伝送を禁止し、前記伝送可能情報が付加されているコンテンツについては前記伝送可能情報を伴わずに伝送する、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項34】
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを伝送する第2の送信部をさらに備える、
請求項33に記載の通信装置。

【請求項35】
前記第2の送信部は、
前記第1の相互認証手続きを通じて1台のコンテンツ利用装置のみの間で共有される代行用の交換鍵から生成される暗号鍵を用いて前記伝送可能情報が付加されたままコンテンツを暗号化伝送し、
前記1台のコンテンツ利用装置が代行終了時に発行する破棄要求に応じて、前記代行用の交換鍵を破棄する、
請求項34に記載の通信装置。

【請求項36】
前記送信部は、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、
請求項35に記載の通信装置。

【請求項37】
前記送信部は、前記第2の相互認証手続きを通じて伝送するコンテンツを暗号化する暗号鍵の生成に用いる交換の鍵を、コンテンツの伝送先となるコンテンツ利用装置毎に変えるとともに、暗号化伝送するコンテンツをコンテンツ利用装置毎に管理して、同じコンテンツを所定の台数以上のコンテンツ利用装置に同時に伝送しないようにする、
請求項28に記載の通信装置。

【請求項38】
提供するコンテンツを記録するコンテンツ記憶部を備える、
ことを特徴とする請求項28に記載の通信装置。」(当審注:下線は、出願人が付与したものである。以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。また、本件補正が、特許法第17条の2第4項の規定に適合していることは、明らかである。

2.目的要件

本件補正は、拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時になされたものであり、特許請求の範囲についてする補正であるから、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて、以下に検討する。

(1)本件補正前の請求項と、本件補正後の請求項とを比較すると、本件補正後の請求項1乃至38はそれぞれ、本件補正前の請求項1乃至38に対応することは明らかである。

(2)本件補正後の請求項1乃至3,19,26に係る補正は、下記の補正事項1よりなるものである。

<補正事項1>

本件補正前の請求項1乃至3,19,26の

「登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し」、及び、
「登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する」

との記載を、本件補正後の請求項1乃至3,19,26の

「登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し」、及び、
「登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する」

との記載に補正して、登録台数の具体的制限値として「第1の台数」を付加し、制限コンテンツ伝送を許容された台数の制限値を、登録台数の制限値と同一である場合を含まず、より少ない値に限定することを目的とするものであり、本件補正によっても、補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

(3)本件補正後の請求項20,25,27に係る補正は、下記の補正事項2よりなるものである。

<補正事項2>

本件補正前の請求項20,25,27の

「登録する台数の制限内で登録手続き」、及び、
「登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された台数の上限内でコンテンツを受信する」

との記載を、本件補正後の請求項20,25,27の

「第1の台数の制限内で登録手続き」、及び、
「登録された正当な通信装置のうちコンテンツ伝送が許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数の上限内でコンテンツを受信する」

との記載に限定することを目的とするものであり、本件補正によっても、補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

(4)本件補正後の請求項28に係る補正は、下記の補正事項3よりなるものである。

<補正事項3>

本件補正前の請求項28の

「記憶するコンテンツ利用装置識別情報の数を制限し」、及び、
「前記コンテンツ利用装置記憶部にコンテンツ利用装置識別情報が記憶された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する」

との記載を、本件補正後の請求項28の

「記憶するコンテンツ利用装置識別情報を第1の数に制限し」、及び、
「前記コンテンツ利用装置記憶部にコンテンツ利用装置識別情報が記憶された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する」

との記載に限定することを目的とするものであり、本件補正によっても、補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

(5)したがって、上記補正事項1乃至3は限定的減縮を目的とするものであり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると言えることから、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。

3.独立特許要件

以上のように、本件補正は、限定的減縮を目的とする上記補正事項1乃至3を含むものである。そこで、限定的減縮を目的として補正された本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記平成26年3月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「コンテンツを提供するコンテンツ提供装置とコンテンツを利用する1以上のコンテンツ利用装置でコンテンツ伝送のための通信を行なう通信システムであって、
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を前記コンテンツ提供装置に登録する登録手段と、
前記コンテンツ提供装置から前記コンテンツ利用装置へ伝送するコンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置が前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信システム。」

(2)引用文献

(2-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明1

ア 本願の優先日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成25年11月1日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2005-204094号公報(平成17年7月28日出願公開、以下、「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0024】
以上のことから、コンテンツ送信装置100は、コンテンツ受信装置200を認証する時に、上記機器情報登録手段108に登録されている機器情報を元に、登録されたコンテンツ受信装置200を特定することが可能となる。
ここで、装置固有情報として、ネットワークを介して接続されるコンテンツ送信装置とコンテンツ受信装置との間のコンテンツ伝送にコピープロテクト方法を定めたDTCPを用いた時、お互いを認証する際に使用する公開鍵を例にとって説明しているが、特に公開鍵に限定されるものではなく、装置を特定可能なユニークな情報を登録するようにする。
また本実施の形態では、コンテンツ送信装置100がコンテンツ受信装置200の機器情報を登録する方法について述べたが、コンテンツ受信装置200がコンテンツ送信装置100を登録する方法についても上記説明通りである。
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0025】
以下本発明の実施例2について説明する。
本実施の形態の特徴は、有線または無線のLANを利用したコンテンツの伝送の際に、コンテンツの不正な複製を防止するコピープロテクションを実施することができ、しかもコンテンツの正当な視聴や複製の作成が個人的利用の範囲に限定することのできるコンテンツ送信装置、受信装置を提供することが可能となる。
図5はコンテンツ送信装置100とコンテンツ受信装置200によるコンテンツ送受信の際の手順の一例を示したものである。左側がコンテンツ送信装置100を、右側がコンテンツ受信装置200を表しており、両者の間の情報の送受信のタイミングと方向を矢印により示している。」

B 「【0026】
始めにコンテンツ受信装置200側から認証要求を作成する。認証要求には前記した装置固有の公開鍵と、該公開鍵に対する証書を付してコンテンツ送信装置100に送る。認証要求を受け取りその受信確認をコンテンツ受信装置200に送ると、コンテンツ送信装置100は自分の側からの認証要求を作成し、コンテンツ受信装置の場合と同様に認証機関が発行したコンテンツ送信装置100の固有の公開鍵とその証書を付してコンテンツ受信装置200に送り、タイマー回路107をスタートさせ、認証要求に対する受信確認がコンテンツ受信装置200から受信されるまでの時間T1を測定する。
【0027】
タイマー回路107での計測値が所定の値(T)を超えない場合、すなわちT1<Tである時、コンテンツ受信装置200は個人的利用の範囲内に存在する装置であることを認証(以下、時間認証と呼ぶ)する。この時、上記コンテンツ受信装置200側から認証要求をコンテンツ送信装置100へ送信する時、タイマー回路207をスタートさせ、コンテンツ送信装置100からの受信確認が受信されるまでの時間T2を測定することで、時間認証を行うことも可能である。
…(中略)…
【0033】
以上のことから本発明の第2の実施の形態において、コンテンツ送信装置は一度時間認証されたコンテンツ受信装置のアドレス情報と装置固有の機器情報をコンテンツ送信装置が登録し、再度コンテンツの受信を行う際、コンテンツ受信装置の時間認証を行うことなく、暗号化されたコンテンツを送信することができ、コンテンツの受信毎に行っていた時間認証を省略することができる。」

C 「【0034】
以下本発明の実施例3について説明する。
また、本発明の実施例3によると、例えば携帯端末によりインターネットを介してコンテンツ送信装置100からコンテンツ視聴も可能となる。
図7はインターネットを介したコンテンツ視聴時の構成図である。200cはコンテンツ送信装置が一度時間認証した携帯用コンテンツ受信装置である。本来なら、インターネットに接続された携帯用コンテンツ受信装置200cはコンテンツ送信装置100との時間認証でT1>Tとなり認証されず、コンテンツ送信装置100から送信されるコンテンツを受信できないが、本発明によると、コンテンツ送信装置100は携帯用コンテンツ受信装置200cを一度時間認証し、携帯用コンテンツ受信装置200cのアドレス情報と装置固有の公開鍵を機器情報登録手段108に登録する。
【0035】
これにより、時間認証でT1>Tとなる所でも機器情報登録手段108に登録されている携帯用コンテンツ受信装置200cは時間認証を行わなくてもコンテンツ送信装置100から送信されるコンテンツを受信することができる。また、コンテンツ送信装置100から送信されるコンテンツを受信し視聴できるのは、機器情報登録手段108に登録されている装置のみとなるので、コンテンツの不正な複製を防止するコピープロテクションを実施することができ、しかもコンテンツの正当な視聴や複製の作成が個人的利用の範囲に制限することができる。」

D 「【0041】
図10は、本発明の実施の形態において、例えばPDA(Personal Digital Assistance)を用いた例について示した図である。(a)は、PDA(800)とコンテンツ送信装置100、500との認証時の接続を示しており、(b)は上記認証されたPDA(800)を用いて、宅外から宅内のコンテンツ送信装置100、500のコンテンツを視聴する時の図を示したものである。800は、コンテンツ送信装置100、500から配信されるコンテンツを視聴することができるPDAを、900は宅内においてコンテンツ送信装置100、500が配信するコンテンツを視聴できるディスプレイであり、例えばプラズマディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0042】
例えば、購入してきたPDA(800)を宅内で接続し、時間認証をコンテンツ送信装置100とコンテンツ送信装置500との間で行い、夫々のコンテンツ送信装置100、500で認証された場合、コンテンツ送信装置100、500はPDA(800)のアドレス情報と上記時間認証時に使用する機器固有情報である共通鍵を登録し機器を管理することで、従来宅外のPDA(800)は時間認証により宅内のコンテンツ受信装置100、500から配信されるコンテンツの受信を許可されないが、本発明により一度コンテンツ送信装置100、500で時間認証を受け機器情報を登録されているので宅内のコンテンツ送信装置100、500から配信されるコンテンツを視聴することが出来るようになる。」

イ ここで、上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「しかもコンテンツの正当な視聴や複製の作成が個人的利用の範囲に限定することのできるコンテンツ送信装置、受信装置を提供することが可能となる。
図5はコンテンツ送信装置100とコンテンツ受信装置200によるコンテンツ送受信の際の手順の一例を示したものである。」、及び、
上記Dの「コンテンツ送信装置100、500から配信されるコンテンツを視聴することができるPDA」との記載からすると、

引用文献1に記載の「PDA」は、「コンテンツ送信装置」から配信されるコンテンツを受信して視聴するコンテンツ受信装置であることが読みとれることから、
引用文献1には、“コンテンツを配信するコンテンツ送信装置と、コンテンツを視聴するコンテンツ受信装置とでコンテンツを伝送する構成”が記載されていると解される。

(イ)上記Bの「始めにコンテンツ受信装置200側から認証要求を作成する。認証要求には前記した装置固有の公開鍵と、該公開鍵に対する証書を付してコンテンツ送信装置100に送る。認証要求を受け取りその受信確認をコンテンツ受信装置200に送ると、コンテンツ送信装置100は自分の側からの認証要求を作成し、コンテンツ受信装置の場合と同様に認証機関が発行したコンテンツ送信装置100の固有の公開鍵とその証書を付してコンテンツ受信装置200に送り」との記載からすると、

コンテンツ受信装置及びコンテンツ送信装置は、相互に認証要求を送信しており、引用文献1に記載の「コンテンツ送信装置」及び「コンテンツ受信装置」は、相互に認証していることが読みとれる。

上記Bの「タイマー回路107をスタートさせ、認証要求に対する受信確認がコンテンツ受信装置200から受信されるまでの時間T1を測定する。」、「 タイマー回路107での計測値が所定の値(T)を超えない場合、すなわちT1<Tである時、コンテンツ受信装置200は個人的利用の範囲内に存在する装置であることを認証(以下、時間認証と呼ぶ)する。」との記載からすると、

引用文献1に記載の「コンテンツ送信装置」と「コンテンツ受信装置」の間の上記相互認証において、送信した認証要求に対する受信確認が受信されるまでの時間が所定の値を超えない場合、認証が成功する点が読みとれる。

上記Bの「コンテンツ送信装置は一度時間認証されたコンテンツ受信装置のアドレス情報と装置固有の機器情報をコンテンツ送信装置が登録し」、及び、
上記Cの「本発明によると、コンテンツ送信装置100は携帯用コンテンツ受信装置200cを一度時間認証し、携帯用コンテンツ受信装置200cのアドレス情報と装置固有の公開鍵を機器情報登録手段108に登録する。」
との記載からすると、

引用文献1に記載の「コンテンツ送信装置」は、上記認証されたコンテンツ受信装置を機器情報登録手段に登録する点が読みとれる。

してみると、引用文献1には、上記“コンテンツ送信装置”は、“コンテンツ受信装置との間で、送信した認証要求に対する受信確認が受信されるまでの時間が所定の値を超えない場合、時間認証を伴う相互認証が成功し、認証されたコンテンツ受信装置を機器情報登録手段に登録する”ものであることが記載されていると解される。

(ウ)上記Bの「コンテンツ送信装置は一度時間認証されたコンテンツ受信装置のアドレス情報と装置固有の機器情報をコンテンツ送信装置が登録し、再度コンテンツの受信を行う際、コンテンツ受信装置の時間認証を行うことなく、暗号化されたコンテンツを送信することができ」、及び、
上記Cの「コンテンツ送信装置100は携帯用コンテンツ受信装置200cを一度時間認証し、携帯用コンテンツ受信装置200cのアドレス情報と装置固有の公開鍵を機器情報登録手段108に登録する。」、「これにより、時間認証でT1>Tとなる所でも機器情報登録手段108に登録されている携帯用コンテンツ受信装置200cは時間認証を行わなくてもコンテンツ送信装置100から送信されるコンテンツを受信することができる。また、コンテンツ送信装置100から送信されるコンテンツを受信し視聴できるのは、機器情報登録手段108に登録されている装置のみとなる」、及び、
上記Dの「例えば、購入してきたPDA(800)を宅内で接続し、時間認証をコンテンツ送信装置100とコンテンツ送信装置500との間で行い、夫々のコンテンツ送信装置100、500で認証された場合、コンテンツ送信装置100、500はPDA(800)のアドレス情報と上記時間認証時に使用する機器固有情報である共通鍵を登録し機器を管理することで…(中略)…宅外のPDA(800)は…(中略)…一度コンテンツ送信装置100、500で時間認証を受け機器情報を登録されているので宅内のコンテンツ送信装置100、500から配信されるコンテンツを視聴することが出来るようになる。」との記載からすると、

引用文献1に記載の「コンテンツ送信装置」は、宅外のコンテンツ受信装置に、事前に宅内で時間認証して登録されている場合のみコンテンツを送信することから、登録されたコンテンツ受信装置であるか否か確認していると解される。
してみると、引用文献1には、上記“コンテンツ送信装置”は、“宅内で時間認証して機器情報登録手段に登録されたコンテンツ受信装置であるか否か確認することで、宅外のコンテンツ受信装置であっても時間認証を行うことなくコンテンツを送信する”ものであることも記載されていると解される。

ウ 以上、(ア)乃至(ウ)で指摘した事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

「コンテンツを配信するコンテンツ送信装置と、コンテンツを視聴するコンテンツ受信装置とでコンテンツを伝送する構成において、
前記コンテンツ送信装置は、コンテンツ受信装置との間で、送信した認証要求に対する受信確認が受信されるまでの時間が所定の値を超えない場合、時間認証を伴う相互認証が成功し、認証されたコンテンツ受信装置を機器情報登録手段に登録し、
前記コンテンツ送信装置は、宅内で時間認証して機器情報登録手段に登録されたコンテンツ受信装置であるか否か確認することで、宅外のコンテンツ受信装置であっても時間認証を行うことなくコンテンツを送信する構成」

(2-2)引用文献2に記載されている技術的事項及び引用発明2

ア 本願の優先日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成25年11月1日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2004-180020号公報(平成16年6月24日出願公開、以下、「引用文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

E 「【要約】
【課題】宅内ネットワーク間で送受信される情報を、著作権保護を図りつつ、宅外ネットワーク間でも送受信を行う。
【解決手段】本発明に係る通信システムは、ユーザ宅1内に設置された送信装置2、ホームネットワーク3及び宅外DTCPブリッジ4と、ユーザ宅1にインターネット5を介して接続される宅外の受信装置6とを備えている。宅外DTCPブリッジ4は、宅内ネットワークI/F部11と、DTCP関連パケットフィルタ12,13と、DTCP処理部14と、ホームルータ及びファイアウォール部15と、宅外ネットワークI/F部16とを有する。ユーザ宅1内の宅外DTCPブリッジ4に宅外デバイス登録テーブル25を設け、このテーブルに予め登録された受信装置6のみにユーザ宅1内からのコンテンツ送信を許可するため、著作権保護を図る必要のあるコンテンツの不正コピーや不正取得を防止しつつ、正規のユーザに対して宅外でもコンテンツを利用できる機会を与えることができる。」

F 「【0019】
DTCP処理部14は、DTCPブリッジ処理部21と、自動構成認識及び家電制御用Webサーバ処理部22と、宅内側DTCP AKE処理部23と、宅外側DTCP AKE処理部24と、宅外デバイス登録テーブル25と、ユーザ認証登録テーブル26とを有する。」

G 「【0021】
宅内側DTCP AKE処理部23は、宅内側のDTCP認証・鍵交換処理を行う。ここで、AKEとは、Authentication and key exchangeの略である。DTCP認証鍵交換は、例えばIPパケット上の特定のポート番号(DTCP-AKEに割り当てられたポート番号)で示されるパケット、あるいは無線LANやイーサネット上のDTCP専用のフレーム、あるいはIEEE1394のAV/Cパケットのセキュリティコマンド等を使って行われる。宅内にて行われる認証・鍵交換は、これが成立する範囲を家庭内に限定するために、例えばTTL(Time To Live)の値を1にする、IPアドレスとしてリンクローカルアドレスを使う(特開2001-285284号公報参照)、伝送パケットにIPパケットの代わりにイーサネットフレームを使う、または、パケットが届くまでのタイムアウト時間を制限する(特願2002-19135号参照)等の工夫が施されていてもよい。」

H 「【0022】
宅外側DTCP AKE処理部24は、宅外側のDTCP認証・鍵交換処理を行う。宅外のDTCP認証鍵交換は、例えばIPパケット上の特定のポート番号で示されるパケット、あるいは、HTMLの特定のラベル(例えばX-DTCP)を使ってDTCPパケットであることを示した上でHTTPを使ってやり取りされる。HTTPを使って送受すると、認証鍵交換の経路途中にプロキシサーバやネットワークアドレス変換装置(NAT)が存在していても、通信を継続できる場合がある、という利点がある。宅外のDTCP認証鍵交換は、通信相手となる装置(本実施形態の場合は受信装置6)が、DTCPブリッジからどれだけ離れた場所に位置しているかわからないため、例えばTTLの値等に制限を設ける必要はないし、グローバルIPアドレスで通信が成立していてもよい。」

I 「【0023】
DTCPには、シンクリミテーションなる仕組みが定義されている。即ち、同時に通信できる装置の数(あるいは、同一AVストリームを同時にやり取りできる装置の数)を、一定以下の数に制限する仕組みである。シンクリミテーションの仕組みを導入しない場合、事実上無制限の数の装置が同一ネットワーク上に接続されて、1本のAVストリームから、大量の接続装置へのAVデータのコピーが行われ、コピーコンテンツが大量に生成されてしまうため、このような不具合を未然に防止するためにシンクリミテーションが導入される。
【0024】
本実施形態の宅外DTCPブリッジ4は、シンクリミテーションの仕組みを更に強化し、以下の(1)乃至(4)の特徴を持つ。なお、(1)乃至(4)の一部だけを実現してもよい。
【0025】
(1)宅外側からアクセスされるデバイス(例えば、受信装置6)を予め宅外デバイス登録テーブル25に登録しておき、この登録テーブルに登録されたデバイス以外からの通信(認証鍵交換の申し込み)を拒否する。
【0026】
(2)宅外デバイス登録テーブル25に登録できるデバイス数を一定以下(例えば16台)に制限する(つまり、テーブルの大きさに上限がある)。
…(中略)…
【0028】
(4)宅外デバイステーブルへの登録は、宅内からのみ行えるようにする。」

J 「【0052】
第2の登録手順は、ホームネットワーク3に受信装置6を接続し(ステップS11)、宅外DTCPブリッジ4を登録モードに変更した上で(ステップS12)、宅外DTCPブリッジ4と受信装置6間でDTCP認証鍵交換を実行させて(ステップS13)、その結果(受信装置6のDTCPデバイスIDと固有ID)を宅外DTCPブリッジ4が、宅外デバイス登録テーブル25に記憶するものである(ステップS14)。なお、受信装置がDTCPデバイスIDを2つ以上持っている場合には、宅外通信用に用いるDTCPデバイスIDを、宅外デバイス登録テーブル25に記憶するようにする。」

イ ここで、上記引用文献2に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Eの「本発明に係る通信システムは、ユーザ宅1内に設置された送信装置2、ホームネットワーク3及び宅外DTCPブリッジ4と、ユーザ宅1にインターネット5を介して接続される宅外の受信装置6とを備えている。宅外DTCPブリッジ4は、宅内ネットワークI/F部11と、DTCP関連パケットフィルタ12,13と、DTCP処理部14と、ホームルータ及びファイアウォール部15と、宅外ネットワークI/F部16とを有する。ユーザ宅1内の宅外DTCPブリッジ4に宅外デバイス登録テーブル25を設け、このテーブルに予め登録された受信装置6のみにユーザ宅1内からのコンテンツ送信を許可する」との記載からすると、

引用文献2には、“送信装置から受信装置にコンテンツを送信する通信システム”が記載されていると解される。

(イ)上記Fの「DTCP処理部14は、DTCPブリッジ処理部21と、自動構成認識及び家電制御用Webサーバ処理部22と、宅内側DTCP AKE処理部23と、宅外側DTCP AKE処理部24と、宅外デバイス登録テーブル25と、ユーザ認証登録テーブル26とを有する。」、及び、
上記Gの「宅内側DTCP AKE処理部23は、宅内側のDTCP認証・鍵交換処理を行う。」、「宅内にて行われる認証・鍵交換は、これが成立する範囲を家庭内に限定するために、例えばTTL(Time To Live)の値を1にする…(中略)…パケットが届くまでのタイムアウト時間を制限する」、及び、
上記Iの「(2)宅外デバイス登録テーブル25に登録できるデバイス数を一定以下(例えば16台)に制限する(つまり、テーブルの大きさに上限がある)。」、「(4)宅外デバイステーブルへの登録は、宅内からのみ行えるようにする。」、及び、
上記Jの「第2の登録手順は、ホームネットワーク3に受信装置6を接続し…(中略)…宅外DTCPブリッジ4と受信装置6間でDTCP認証鍵交換を実行させて(ステップS13)、その結果(受信装置6のDTCPデバイスIDと固有ID)を宅外DTCPブリッジ4が、宅外デバイス登録テーブル25に記憶するものである」との記載からすると、

引用文献2に記載の「宅外デバイス登録テーブル」への受信装置の登録は宅内からのみ行え、登録は認証後に行われ、宅内にて行われる該認証は、タイムアウト時間やTTLにより、成立する範囲が家庭内に限定されたものであるから、
上記「宅外デバイス登録テーブル」には、家庭内に限定した認証が成立した受信装置のみが登録されることが読みとれる。
また、該「宅外デバイス登録テーブル」に登録できるデバイス数は一定以下に制限されている。

してみれば、引用文献2には、“家庭内に限定した相互認証が成立した受信装置のみを予めデバイス登録テーブルに登録しておき、登録できるデバイス数は一定以下に制限される”ことが記載されていると解される。

(ウ)上記Hの「宅外のDTCP認証鍵交換は…(中略)…TTLの値等に制限を設ける必要はない」、及び、
上記Iの「(1)宅外側からアクセスされるデバイス(例えば、受信装置6)を予め宅外デバイス登録テーブル25に登録しておき、この登録テーブルに登録されたデバイス以外からの通信(認証鍵交換の申し込み)を拒否する。」との記載からすると、

引用文献2の宅外側からアクセスされる「受信装置」は、「宅外のDTCP認証鍵交換」を実行するものであることが読みとれ、
該「宅外のDTCP認証鍵交換」の認証は、TTLの値等に制限を設ける必要はない認証であると解される。
また、引用文献1の上記Aに「コンテンツ送信装置とコンテンツ受信装置との間のコンテンツ伝送にコピープロテクト方法を定めたDTCPを用いた時、お互いを認証する」と記載されるように、DTCPの認証方式が相互認証であることは、技術常識であるから、
引用文献2の「宅外のDTCP認証鍵交換」も、相互認証であると解することが妥当である。

してみれば、引用文献2には、“TTLの値等に制限を設けない相互認証が成立し、デバイス登録テーブルに登録された受信装置からのみ、宅外の受信装置からの通信を許可する”ことが記載されていると解される。

ウ 以上、(ア)乃至(ウ)で指摘した事項から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。

「送信装置から受信装置にコンテンツを送信する通信システムであって、
家庭内に限定した相互認証が成立した受信装置のみを予めデバイス登録テーブルに登録しておき、登録できるデバイス数は一定以下に制限され、
TTLの値等に制限を設けない相互認証が成立し、デバイス登録テーブルに登録された受信装置からのみ、宅外の受信装置からの通信を許可する通信システム」

(3)参考文献

(3-1)参考文献1

本願の優先日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記記平成25年11月1日付けの拒絶理由通知において引用された、新井 英哲 他,「B to B向け高効率コンテンツ配送システムMDS-Pack」,NTT技術ジャーナル,社団法人電気通信協会,Vol.14,No.4,p.39?43(平成14年4月発行、以下、「参考文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

K 「■基本配送機能
基本的な配送機能として,複数のファイルやディレクトリを1回で配送する機能や,その際にコンテンツを暗号化,圧縮して送信する機能を持っています.受信側ではこれらのコンテンツは自動的に元の状態に復元されます.暗号化に必要な鍵の管理は配送システムが行うため,ユーザは暗号鍵を意識することなく安全に配送を行えます.また,インターネット上での利用も想定して,クライアントー転送サーバ間,転送サーバー転送サーバ間の通信をSSL(SecureSocketsLayerprotocol)で暗号化することも可能です.」(第40頁第3欄最終段落乃至第41頁第1欄第1行)

(3-2)参考文献2

本願の優先日前に頒布された特開2007-164299号公報(平成19年6月28日出願公開、以下、「参考文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

L 「【0021】
センタ装置1は、図3に示すようにインターネットを介して各ゲートウェイ装置GWn(インターネット接続装置4)並びに端末装置2との間でデータ通信を行う通信部10と、同時に通信可能であるゲートウェイ装置GWnの上限台数を決定する上限台数決定部11と…(中略)…とを備えている。
…(中略)…
【0022】
上限台数決定部11は、予めセンタ装置1に登録されているゲートウェイ装置GWnの登録台数に応じて上限台数を決定するものであって、例えば、登録台数が3台であれば上限台数は1台、登録台数が10であれば上限台数は3台、登録台数が50台であれば上限台数は12台というように決定する。あるいは、センタ装置1が同時に通信可能である単位時間当たりの通信数(通信容量)に応じて上限台数を決定してもよく、例えば、前記通信数が1時間当たり3であれば上限台数は1台、通信数が1時間当たり10であれば上限台数は3台、通信数が1時間当たり50であれば上限台数は12台というように決定する。」

(3-3)参考文献3

本願の優先日前に頒布された特開2003-186778号公報(平成15年7月4日出願公開、以下、「参考文献3」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

M 「【0018】配信サーバDS2,DS3は、それぞれにデフォルト(配信元)として設定されているクライアント端末からコンテンツ配信要求がある場合、コンテンツの配信を開始する。図1の場合、配信サーバDS2には、クライアント21とクライアント22がデフォルトとして設定され、配信サーバDS3には、クライアント31とクライアント32とがデフォルトとして設定されている。
【0019】配信サーバDS2,DS3は、コンテンツの配信を同時に行えるクライアント数に制限(同時送信限界値〈台数〉)があるため、夫々にデフォルトとして設定されている全てのクライアントに対し、同時に複数からコンテンツ配信要求があった場合には、配信を行えない可能性がある。このため、各配信サーバDS2,DS3は、コンテンツ配信中であるクライアントのリストAと、同時送信限界値のために送信できないクライアントのリストBと、を持っている。」

(4)対比

ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「コンテンツを配信する」ことは、コンテンツを提供する形態の一種であるといえるから、引用発明1の「コンテンツを配信するコンテンツ送信装置」は本件補正発明の「コンテンツを提供するコンテンツ提供装置」に相当する。
引用発明1の「コンテンツを視聴する」ことは、コンテンツを利用する形態の一種であるといえるから、引用発明1の「コンテンツを視聴するコンテンツ受信装置」は本件補正発明の「コンテンツを利用する1以上のコンテンツ利用装置」に相当する。上記「コンテンツを視聴するコンテンツ受信装置」の台数が1以上であることは明らかである。
さらに、複数の装置を含む構成全体は「システム」といえるものであるから、引用発明1の「コンテンツ送信装置」と「コンテンツ受信装置」とでコンテンツを伝送する構成は「通信システム」であるといえる。

よって、引用発明1と本件補正発明は「コンテンツを提供するコンテンツ提供装置とコンテンツを利用する1以上のコンテンツ利用装置でコンテンツ伝送のための通信を行なう通信システム」である点で一致するといえる。

(イ)引用発明1の「送信した認証要求に対する受信確認が受信されるまでの時間」は、本件補正発明の「コマンドの往復遅延時間」に相当するから、
引用発明1の「コンテンツ受信装置との間で、送信した認証要求に対する受信確認が受信されるまでの時間が所定の値を超えない場合」に成功する「時間認証を伴う相互認証」は、本件補正発明の「コマンドの往復遅延時間に関する制限を課したコマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続き」に相当するものといえる。
また、引用発明1の「機器情報登録手段」は、上記「時間認証を伴う相互認証」が成功すると、コンテンツ受信装置を登録するものであるから、上記「時間認証を伴う相互認証」を経てから、コンテンツ受信装置を登録するものといえるので、引用発明1の「機器情報登録手段」は本件補正発明の「登録手段」に相当するものといえる。

したがって、引用発明1と本件補正発明とは、後記する点で相違するものの「コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置をコンテンツ提供装置に登録する登録手段」を備える点で一致するといえる。

(ウ)引用発明1の「コンテンツ送信装置」は、「宅内で時間認証して機器情報登録手段に登録されたコンテンツ受信装置であるか否か確認することで、宅外のコンテンツ受信装置であっても時間認証を行うことなくコンテンツを送信する」ものであるところ、
宅外のコンテンツ受信装置が、コンテンツ送信装置からコンテンツを受信する際に、コンテンツ受信装置が宅外にあることから、リモート・アクセスが行われることは明らかである。

引用発明1の「機器情報登録手段に登録されたコンテンツ受信装置であるか否か確認すること」は、コンテンツ受信装置を「認証」する手続きの一種であるといえるから、引用発明1の上記「コンテンツ送信装置」は、コンテンツ受信装置の認証手続きを経て、コンテンツを送信するものといえる。

ここで、引用発明1の上記「コンテンツ送信装置」は、「宅外のコンテンツ受信装置であっても時間認証を行うことなくコンテンツを送信する」ものであるから、機器情報登録手段に登録されたコンテンツ受信装置であるか否か「認証」することは、「時間認証」、すなわち、送信した認証要求に対する受信確認が受信されるまでの時間が所定の値を超えないか否かを認証しない認証手続きであるといえる。
そして、上記(イ)で検討したように「送信した認証要求に対する受信確認が受信されるまでの時間」は、本件補正発明の「コマンドの往復遅延時間」に相当する。

したがって、引用発明1と本件補正発明とは、後記する点で相違するものの「登録手段により登録されたコンテンツ利用装置がコンテンツ提供装置にリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない認証手続きを経て、コンテンツを伝送する伝送手段」を備える点で一致するといえる。

イ 以上から、本件補正発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「コンテンツを提供するコンテンツ提供装置とコンテンツを利用する1以上のコンテンツ利用装置でコンテンツ伝送のための通信を行なう通信システムであって、
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を前記コンテンツ提供装置に登録する登録手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置が前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない認証手続きを経て、前記コンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備する通信システム」

(相違点1)

本件補正発明は、「通信システム」が「前記コンテンツ提供装置から前記コンテンツ利用装置へ伝送するコンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段」を備える点、及び、「伝送手段」が伝送するコンテンツが、「圧縮処理されたコンテンツ」である点について特定されているのに対して、
引用発明1では、それらの点について格別限定されていない点。

(相違点2)

伝送手段に関し、
本件補正発明では、「第2の相互認証手続き」を経て伝送するのに対して、
引用発明1では、認証手続きが「相互認証」に限定されていない点。

(相違点3)

本件補正発明では、「前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置を第1の台数に制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された、前記第1の台数よりも少ない第2の台数に制限して前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する」点について特定されているのに対して、
引用発明1では、装置の登録とコンテンツ伝送において、台数に関する制限はない点。

(5)当審の判断

上記相違点1乃至3について検討する。

ア 相違点1について

引用発明1は、「コンテンツを配信するコンテンツ送信装置と、コンテンツを視聴するコンテンツ受信装置とでコンテンツを伝送する」ところ、
送信側が、コンテンツを圧縮処理して送信する機能を備えることは、
例えば参考文献1(上記Kを参照)に記載されるように、本願の優先日前にはデータ伝送の技術分野において適宜に採用されていた周知技術であった。

そうすると、引用発明1の「コンテンツ送信装置」のコンテンツ伝送に、上記周知技術を適用して、コンテンツを圧縮処理して、圧縮処理されたコンテンツを送信する機能を付加すること、すなわち、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

上記引用発明2の「通信システム」は、「TTLの値等に制限を設けない相互認証が成立し、デバイス登録テーブルに登録された受信装置からのみ、宅外の受信装置からの通信を許可する」ものであると認められる。

ここで引用発明1の技術的課題について検討する。
上記Aの「本実施の形態の特徴は、有線または無線のLANを利用したコンテンツの伝送の際に…(中略)…コンテンツの正当な視聴や複製の作成が個人的利用の範囲に限定することのできるコンテンツ送信装置、受信装置を提供することが可能となる。」、及び、
上記C「本来なら、インターネットに接続された携帯用コンテンツ受信装置200cはコンテンツ送信装置100との時間認証でT1>Tとなり認証されず、コンテンツ送信装置100から送信されるコンテンツを受信できないが、本発明によると…(中略)…携帯用コンテンツ受信装置200cは時間認証を行わなくてもコンテンツ送信装置100から送信されるコンテンツを受信することができる。」との記載からすると、
引用文献1からは、本来は個人的利用の範囲である宅内でのみ受信できるコンテンツを、宅外でも受信して視聴できるようにする旨の課題が読みとれる。
また引用発明2の技術的課題について検討する。
上記Eの「【課題】宅内ネットワーク間で送受信される情報を、著作権保護を図りつつ、宅外ネットワーク間でも送受信を行う。…(中略)…著作権保護を図る必要のあるコンテンツの不正コピーや不正取得を防止しつつ、正規のユーザに対して宅外でもコンテンツを利用できる機会を与えることができる。」との記載からすると、
引用文献2からは、宅内で送受信されるコンテンツを、宅外でも利用できるようにする旨の課題が読みとれる。

そうすると、引用発明1、引用発明2は共に、本来宅内でのみ受信できるコンテンツを、宅外でも利用できるようにすることを課題とした技術の異なる態様であるといえる。

したがって、引用発明1に、引用発明2を適用して、宅内で時間認証して機器情報登録手段に登録されたコンテンツ受信装置であるか否か確認することで、時間認証を行うことなくコンテンツを送信する際に、「TTLの値等に制限を設けない相互認証」を行うようにすること、すなわち、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について

上記引用発明2の「通信システム」は、デバイス登録テーブルに登録でき、家庭内に限定した相互認証がなされたデバイス数は一定以下に制限されるものであると認められる。
引用発明2のデバイス数の上限である「一定」は、本件補正発明の「第1の台数」に相当するものである。

また、上記Eの「DTCPには、シンクリミテーションなる仕組みが定義されている。即ち、同時に通信できる装置の数(あるいは、同一AVストリームを同時にやり取りできる装置の数)を、一定以下の数に制限する仕組みである。」との記載からすると、このデバイス数の上限は「同時に通信できる装置の数」を制限するものでもある。

上記イで検討したように、引用発明1、引用発明2は共に、本来宅内でのみ受信できるコンテンツを、宅外でも利用できるようにすることを課題とした技術の異なる態様であるといえる。

また、通信装置において、内部に登録された全ての装置を同時に通信可能とするのではなく、同時に通信可能な台数を、登録された台数よりも少ない台数とすることができる旨の技術は、例えば、参考文献2(上記L参照)、参考文献3(上記M参照)に記載されているように、本願の優先日前にはデータ伝送の技術分野において周知技術であった。
また、通信装置に登録された台数は、登録できる台数以下であることは明らかであるから、該周知技術の「同時に通信可能な台数」は、登録できる台数よりも少ない台数とすべきものといえる。

してみると、引用発明1において、共通の課題を有する引用発明2を適用し、登録できる台数を第1の台数に制限し、上記周知技術を参酌して、同時に通信可能な台数を、より低い第2の台数に制限するように変更すること、すなわち、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ 小括

上記で検討したごとく、相違点1乃至3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明1、引用発明2及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、上記引用発明1、引用発明2及び当該技術分野の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)むすび

以上のように、本件補正は、上記「3.独立特許要件」の「(5)当審の判断」乃至「(6)むすび」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成26年3月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年12月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「コンテンツを提供するコンテンツ提供装置とコンテンツを利用する1以上のコンテンツ利用装置でコンテンツ伝送のための通信を行なう通信システムであって、
コマンドの往復遅延時間に関する制限を課した第1の相互認証手続きを経て、コンテンツを要求するコンテンツ利用装置を前記コンテンツ提供装置に登録する登録手段と、
前記コンテンツ提供装置から前記コンテンツ利用装置へ伝送するコンテンツの圧縮処理を実行するコンテンツ変換手段と、
前記登録手段により登録された前記コンテンツ利用装置が前記コンテンツ提供装置にリモート・アクセスしてきたときに、コマンドの往復遅延時間に関する制限を課さない第2の相互認証手続きを経て、前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する伝送手段と、
を具備し、
前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する、
通信システム。」

2.引用文献及び参考文献

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,2に記載されている引用発明1,2及び参考文献1に記載された技術的事項は、上記「第2 平成26年3月11日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献」及び「(3)参考文献」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成26年3月11日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」で検討した本件補正発明から「登録するコンテンツ利用装置」の台数の具体的制限値である「第1の台数」を削除し、該「第1の台数」と、本件補正発明の「第2の台数」に対応する「コンテンツ伝送を許容された所定の台数」との大小関係に係る事項も削除したものである。

ここで本願発明と引用発明1とを対比すると、一致点、及び、相違点1乃至2については、上記「第2 平成26年3月11日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(4)対比」及び「(5)当審の判断」で検討したとおりである。

一方、上記相違点3については、 本件補正発明と本願発明とで、対応する事項が上記のとおり異なっており、本願発明と引用発明1とを対比した場合に、上記相違点3に対応する相違点(以下、「相違点3’」という。)は、以下のとおりとなる。

(相違点3’)
本願発明では、「前記登録手段は、登録するコンテンツ利用装置の台数を制限し、
前記伝送手段は、前記登録手段に登録された正当なコンテンツ利用装置のうちコンテンツ伝送を許容された所定の台数に前記圧縮処理されたコンテンツを伝送する」点について特定されているのに対して、
引用発明1では、装置の登録とコンテンツ伝送において、台数に関する制限はない点。

相違点3’について検討する。
引用発明2の「通信システム」は、デバイス登録テーブルに登録できる、家庭内に限定した相互認証がなされたデバイス数は一定以下に制限されものであると認められる。
引用発明2の登録できるデバイス数を一定以下に制限する点は、本願発明の「登録するコンテンツ利用装置の台数を制限」する点に相当するものである。
また、上記Eの「DTCPには、シンクリミテーションなる仕組みが定義されている。即ち、同時に通信できる装置の数(あるいは、同一AVストリームを同時にやり取りできる装置の数)を、一定以下の数に制限する仕組みである。」との記載からすると、このデバイス数の上限は「同時に通信できる装置の数」を制限するものでもある。よって引用発明2の「同時に通信できる装置の数」は、本願発明の「所定の台数」に相当するものである。

また引用発明1、引用発明2は共に、本来宅内でのみ受信できるコンテンツを、宅外でも利用できるようにすることを課題とした技術の異なる態様であるといえる。

してみると、引用発明1において、共通の課題を有する引用発明2を適用し、登録できる台数及びコンテンツ伝送を許容される台数を所定の台数に制限するように変更すること、すなわち、相違点3’に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

上記で検討したごとく、相違点1乃至2及び3’に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明1、引用発明2及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、上記引用発明1、引用発明2及び当該技術分野の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-03 
結審通知日 2015-06-09 
審決日 2015-06-23 
出願番号 特願2010-117832(P2010-117832)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松平 英  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 戸島 弘詩
辻本 泰隆
発明の名称 通信システム、通信装置及び通信方法、並びにコンピューター・プログラム  
代理人 特許業務法人大同特許事務所  
代理人 山田 英治  
代理人 佐々木 榮二  
代理人 澤田 俊夫  
代理人 宮田 正昭  

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