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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1304003
審判番号 不服2014-9923  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-28 
確定日 2015-08-05 
事件の表示 特願2012-129907「携帯端末装置及び携帯端末装置におけるキー操作ロック方法並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日出願公開,特開2012-165478〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張(優先権主張:平成18年9月28日,優先権主張の基礎となる出願:特願2006-263925号)を伴う,2007年9月11日を国際出願日とする特願2008-536326号(以下「原出願」という。)の一部を,平成20年12月19日に新たな特許出願(特願2008-324713号)としたうえで,当該新たな特許出願の一部を,平成24年6月7日に新たな特許出願としたものであって,特許出願と同日に審査請求がされるとともに,上申書が提出され,平成25年9月26日付けの拒絶理由通知に対し,同年12月2日に手続補正がされ,平成26年3月3日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年5月28日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年5月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであって,補正前の特許請求の範囲の請求項8,及び補正後の特許請求の範囲の請求項6については,以下のとおりである。
・補正前
「【請求項8】
キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定のアプリケーションプログラムが起動されていないという条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするロック制御ステップと,画像取得ステップと,を有し,
前記ロック制御ステップは,キー操作ロック機能が有効であり,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得した場合,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除することを特徴とする携帯端末装置におけるキー操作ロック方法。」
・補正後
「【請求項6】
キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定のアプリケーションプログラムが起動されていないという条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするロック制御ステップと,画像取得ステップと,を有し,
前記キー操作ロック機能は,前記携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベントを制限する機能であると共にキー操作ロックを解除するためのイベントを制限しない機能であり,
前記ロック制御ステップは,キー操作ロック機能が有効であり,前記キー操作ロックを解除するためのイベントを検出した場合,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除することを特徴とする携帯端末装置におけるキー操作ロック方法。」

2 補正事項の整理
本件補正による,補正前の特許請求の範囲の請求項8についての補正を整理すると次のとおりとなる。(当審注.下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)
・補正事項1
補正前の請求項の削除に伴い,補正前の請求項8を補正後の請求項6とすること。
・補正事項2
補正前の請求項8に記載の「キー操作ロック機能」について,「前記キー操作ロック機能は,前記携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベントを制限する機能であると共にキー操作ロックを解除するためのイベントを制限しない機能であり,」と特定する補正をすること。
・補正事項3
補正前の請求項8の「前記ロック制御ステップは,キー操作ロック機能が有効であり,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得した場合,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除すること」を,補正後の請求項6の「前記ロック制御ステップは,キー操作ロック機能が有効であり,前記キー操作ロックを解除するためのイベントを検出した場合,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除すること」と補正すること。

3 補正の適否について
(1)補正事項1について
補正事項1は,補正前の請求項の削除に伴う請求項の項番の繰り上げであるから,特許法第17条の2第5項第1号に掲げる,第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0017】,【0021】,【0032】及び【0033】の記載から,補正事項2は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,補正事項2は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,補正事項2は,補正前の請求項8に記載された発明特定事項である「キー操作ロック機能」を限定的に減縮するから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。

(3)補正事項3について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0017】,【0021】,【0032】及び【0033】の記載から,補正事項3は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,補正事項2は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,補正事項3は,補正前の請求項8に記載された発明特定事項である「前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除すること」の内容を,補正事項2の上記限定に伴って限定的に減縮するから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。

4 独立特許要件についての検討
(1)検討の前提
上記3で検討したとおり,本件補正による補正前の請求項8についての補正事項2及び3は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから,本件補正による補正後の請求項6に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,更に検討する。

(2)本願補正発明
ア 本件補正後の請求項6の記載は,次のとおりである。(再掲)
「【請求項6】
キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定のアプリケーションプログラムが起動されていないという条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするロック制御ステップと,画像取得ステップと,を有し,
前記キー操作ロック機能は,前記携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベントを制限する機能であると共にキー操作ロックを解除するためのイベントを制限しない機能であり,
前記ロック制御ステップは,キー操作ロック機能が有効であり,前記キー操作ロックを解除するためのイベントを検出した場合,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除することを特徴とする携帯端末装置におけるキー操作ロック方法。」
イ 本件補正後の請求項6に記載の「キー操作ロック指示が発生し」との文言について,その意味内容を一義的に理解することは困難であるので,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,その意味内容を理解すると,上記の文言について,本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
・「【0014】
図3は,記憶部7の内容例を示す図である。同図を参照すると,記憶部7には,メイン条件記憶部71と,サブ条件記憶部72と,ロック中受け付け可能イベント記憶部73とが設けられている。
【0015】
メイン条件記憶部71には,ロック指示が発生しているか否かを判定するための条件であるメイン条件が登録されている。図3を参照すると,メイン条件記憶部71には,複数のメイン条件と,そのメイン条件を有効にするか否かを示す有効フラグ(ONで有効)とが登録されている。図3の例の場合,「筐体が閉じられている」というメイン条件に対する有効フラグも,「キー無操作時間が5分以上」というメイン条件に対する有効フラグもONとなっているので,上記2つのメイン条件の内の何れか一方が成立すれば,ロック指示が発生していると判定することになる。なお,有効フラグは,ユーザによって変更可能であり,例えば,「筐体が閉じられている」というメイン条件に対する有効フラグをONとし,「キー無操作時間が5分以上」というメイン条件に対する有効フラグをOFFとするようにすることもできる。このようにした場合には,「筐体が閉じられている」というメイン条件が成立した場合のみ,ロック指示が発生していると判定することになる。また,キー無操作時間もユーザによって変更可能である。」
・「【0026】
・・・
〔実施の形態の動作の説明〕
次に,本実施の形態の動作について詳細に説明する。
〔キー操作ロック機能起動時の動作〕
先ず,キー操作ロック機能起動時の動作について説明する。制御部2内のロック制御手段23には,携帯電話装置1のユーザが所定時間(図3の例では5分),キー操作を行わなかった場合,タイマ22からタイムアウト信号が入力され,また,ユーザが筐体を閉じた場合,開閉検出部6から筐体が閉じられたことを示す検出結果が入力される。
【0027】
ロック制御手段23は,タイマ22からタイムアウト信号が入力された場合,及び開閉検出部6から筐体が閉じられたことを示す検出結果が入力された場合,メイン条件記憶部71に登録されている該当する有効フラグがONになっていれば,メイン条件が成立した(ロック指示が発生した)と判断する(図5のステップS51)。メイン条件記憶部71の内容が,図3に示すものである場合は,ロック制御手段23は,タイマ22からタイムアウト信号が入力された場合も,開閉検出部6から筐体が閉じられたことを示す検出結果が入力された場合も,メイン条件が成立したと判断する。」
そして,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載より,本願に係る発明では,携帯電話装置の筐体が閉じられているという条件と,携帯電話装置のユーザが所定時間キー操作を行わなかったという条件のいずれかが成立した場合に,キー操作ロック指示が発生するものと認められる。
そうすると,本願明細書の記載を参酌すれば,本件補正後の請求項6に記載の「キー操作ロック指示が発生し」との文言は,当該請求項に係る発明の携帯端末装置の筐体が閉じられているという条件と,上記携帯端末装置のユーザが所定時間キー操作を行わなかったという条件のいずれかが成立した場合に,キー操作ロック指示が発生することを含み得ると理解できる。
ウ また,本件補正後の請求項6に記載の「携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベント」及び「キー操作ロックを解除するためのイベント」における「イベント」との用語について,その意味内容を一義的に理解することは困難であるので,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,その意味内容を理解すると,本件補正後の請求項6に記載の,「キー操作ロック機能」が「携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベント」を制限すること,「キー操作ロック機能」が「キー操作ロックを解除するためのイベント」を制限しないこと,及び「キー操作ロック機能が有効であり,前記キー操作ロックを解除するためのイベントを検出した場合,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除する」ことについて,本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
・「【0017】
ロック中受け付け可能イベント記憶部73には,キー操作ロック機能が有効になった場合に受け付けることができるイベントが,携帯電話装置1の状態毎に登録されている。キー操作ロック機能が有効にされた後に受け付け可能なイベントは,キー操作ロック機能が有効にされる前と比較して制限されており,図3の例では,携帯電話装置1の状態が「待ち受け状態」のときは,受け付け可能なイベントが「着信」のみに制限されており,携帯電話装置1の状態が「着信状態」のときは,受け付け可能なイベントが「通話キー操作」のみに制限されており,「通話中状態」のときは,受け付け可能なイベントが「スピーカ切り替え操作」「終話キー操作」のみに制限されている。」
・「【0032】
・・・
〔キー操作ロック機能解除時の動作〕
次に,キー操作ロック機能の解除時の動作について説明する。キー操作ロック機能を解除する場合,ユーザは,自身のユーザIDが記録されている非接触ICカード10を携帯電話装置1に近づけ,その後,側面キー操作部203に設けられているロック解除キーを操作する。制御部2内のキー操作検出手段21は,ロック解除キーが操作されたことを検出すると,認証手段24に対して認証処理開始を指示する。
【0033】
これにより,認証手段24は,図7のフローチャートに示すように,リーダ/ライタ9を利用して,非接触ICカード10からユーザIDを入力し(ステップS71),入力したユーザIDと記憶部7に登録されているユーザIDとを比較することにより,本人認証を行う(ステップS72)。そして,認証OKの場合(ステップS73がYES)は,制御手段25に対してキー操作ロック解除信号を出力し(ステップS74),認証NGの場合(ステップS73がNO)は,その処理を終了する。なお,本実施の形態では,非接触ICカード10に登録されているユーザIDに基づいて本人認証を行うようにしたが,ロック解除キーが操作されたとき,カメラ11によりユーザの顔画像を撮影し,この顔画像と予め記憶部7に登録しておいたユーザの顔画像とに基づいて本人認証を行うようにしても良い。」
そして,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載より,本願に係る発明において,「キー操作ロック機能」は,携帯電話装置の状態が「着信状態」のときは,受け付け可能なイベントを「通話キー操作」のみに制限することや,「通話中状態」のときは,受け付け可能なイベントが「スピーカ切り替え操作」及び「終話キー操作」のみに制限することによって,「携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベント」を制限するものと認められる。
また,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載より,本願に係る発明は,「キー操作ロック機能」が有効である場合,「側面キー操作部203」に設けられている「ロック解除キー」が操作されたとき,「カメラ11」によりユーザの顔画像を撮影し,この顔画像と予め「記憶部7」に登録しておいたユーザの顔画像とに基づいて本人認証を行うものと認められる。
そうすると,本願明細書の記載を参酌すれば,本件補正後の請求項6に記載の「携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベント」は,「通話キー操作」,「スピーカ切り替え操作」及び「終話キー操作」といった,当該請求項に係る発明の携帯端末装置に設けられている特定のキーの操作を含み得ると解され,また,本件補正後の請求項6に記載の「キー操作ロックを解除するためのイベント」は,「ロック解除キー」のような,当該請求項に係る発明の携帯端末装置に設けられている特定のキーの操作を含み得ると解されるから,本件補正後の請求項6に記載の「携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベント」及び「キー操作ロックを解除するためのイベント」における「イベント」との用語は,当該請求項に係る発明の携帯端末装置に設けられている特定のキーの操作を含み得ると理解できる。
エ 以上から,本件補正後の請求項6に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,その発明特定事項である「キー操作ロック指示が発生し」との文言が,携帯端末装置の筐体が閉じられているという条件と,携帯端末装置のユーザが所定時間キー操作を行わなかったという条件のいずれかが成立した場合に,キー操作ロック指示が発生することを含み得ると解し,また,その発明特定事項である「携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベント」及び「キー操作ロックを解除するためのイベント」における「イベント」との用語は,携帯端末装置に設けられている特定のキーの操作を含み得ると解したうえで,本件補正後の請求項6に記載されたとおりのものと認める。

(3)引用文献の記載と引用発明
ア 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,原出願の優先権主張日(以下「原出願の優先日」という。)前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-222567号公報(以下「引用文献1」という。)には,図1,図10及び図14とともに,次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,情報処理装置に係り,特に,処理動作が実行されている際の操作ロック処理に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上述した特許文献1に開示されている手法では,情報処理装置で処理動作が行われている場合,操作ロックが施されない。そのため,その装置で処理動作が行われていて,その装置が放置されている可能性がある場合,操作ロックが施されないことによって,その装置内に記憶された個人情報が漏れる可能性があるなどの問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので,処理動作が行われている際,その処理動作の性質に依存して放置されている可能性があると判断し,操作ロックを施す情報処理装置を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,処理動作が行われている際,その処理動作の性質に依存して放置されている可能性があると判断し,操作ロックを施す情報処理装置を提供することができる。」
(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に,本発明による情報処理装置の実施の形態を,図面を参照して説明する。図1は,本発明の実施形態に係る情報処理装置が適用された第1の開閉自在の折畳み型移動通信端末装置の,上下筐体の折畳みを開いた時の外観を示し,図1(a)は正面図を,図1(b)は側面図を示す。
【0013】
この第1の移動通信端末装置は,上筐体1と下筐体2とが,ヒンジ部3によって回動自在に連結されてなることによって,上下筐体1,2の角度がほぼ0度(閉状態)からほぼ180度(開状態)の間で開閉自在に構成されている。・・・
・・・
【0039】
図10は,これらの移動通信端末装置の構成を示すブロック図である。この移動通信端末装置は,開閉信号3bが入力され,装置全体の制御を行う制御部11と,基地局(図示せず)との間で電波の送受信を行うアンテナ12aと,通信部12bと,送受信部13と,スピーカ14aと,マイクロフォン14bと,通話部14cと,表示部15と,入力装置16と,留守番電話部17と,電子メール送受信部18と,着信通知部21と,画像表示部22とからなる。
【0040】
上記のように構成された,本発明の実施形態に係る移動通信端末装置の各部の動作を,図10を参照して説明する。まず,通信部12bは,アンテナ12aが受信した高周波信号を送受信部13へ出力し,また,送受信部13から出力される高周波信号をアンテナ12aより送信する。
【0041】
送受信部13は,通信部12bからの高周波信号を増幅,周波数変換及び復調し,それによって得られたディジタル音声信号を通話部14cへ,また,制御信号を制御部11に送る。更には,通話部14cから出力されるディジタル音声信号,及び制御部11から出力される制御信号を変調,周波数変換及び増幅し,高周波信号を得て,それを通信部12bに送る。
【0042】
次に,通話部14cは,送受信部13から出力されるディジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し,それを増幅してスピーカ14aに送る。また,マイクロフォン14bから出力されるアナログ音声信号を増幅し,それをディジタル音声信号に変換して送受信部13に送信する。
・・・
【0045】
次に,留守番電話部17の動作を説明する。・・・
【0046】
そして,留守番電話部17は,上記着信信号に対して着呼し,使用者は電話に出ることができないので,用件を録音する旨の所定の音声を通話部14cを介して送信する。次に,留守番電話部17は,通話部14cを介して受信された音声メッセージを留守番電話部17内の記憶部(図示せず)に格納する。
・・・
【0048】
次に,電子メール送受信部18の動作を説明する。・・・
【0049】
電子メール送受信部18は,続いて,入力装置16から送信されたキーの識別子に従って,電子メールの宛先メールアドレスと,本文データとからなる電子メール(送信メール)を作成する。・・・この送信メールは,更に,通信部12b,アンテナ12a,基地局を介してメールサーバ装置(図示せず)に送信される。
【0050】
また,電子メール送受信部18は,メールサーバ装置から基地局,アンテナ12a,通信部12b,送受信部13を介して送られた電子メール(受信メール)を制御部11経由で受信し,受信された受信メールを,電子メール送受信部18内の記憶部(図示せず)に格納して,動作を終了する。・・・
【0051】
次に,着信通知部21の動作を説明する。着信通知部21は,留守番電話部17が通話部14cを介して受信された音声メッセージを留守番電話部17内の記憶部に格納した場合と,電子メール送受信部18が受信メールを電子メール送受信部18内の記憶部に格納した場合とに,制御部11によって起動され,動作を開始する。この際,入力装置16から送信されたキーの識別子を受信することなしに動作を開始する。
【0052】
そして,着信通知部21は,表示部15に未再生メッセージの件数と,未読メールの件数とを表示する。・・・
・・・
【0063】
次に,画像表示部22の動作を説明する。画像表示部22は,コンテンツの再生表示を行う装置であり,低い優先度で動作する。即ち,制御部11は,画像表示部22が動作中に,使用者の所定のキー操作によって,または,その他のイベントによって,画像表示部22の動作を一時的に停止させ,それ以外の処理(通話部14c,送受信部13などによる通話処理,留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理及び着信通知部21の処理のいずれかの処理。)をさせることがある。
・・・
【0065】
ここで,上記コンテンツは,例えば,仮想ペットの動作からなるアニメーションであるが,これに限るものではない。映画であっても良く,静止画であっても良く,静止画が所定の時間間隔で交換されて表示されるものでも良く,また,ゲームであっても良い。・・・」
(ウ)「【0077】
次に,制御部11の操作ロック及びそのロックの解除の制御動作を説明する。図14は,制御部11の操作ロック及びそのロックの解除の制御動作のフローチャートを示す。この制御動作は,所定時間間隔で動作を開始する。ただし,制御部11がこの制御動作を既に実行中である場合,動作を開始しない(ステップS11a)。そして,開閉信号3bを受信して,その開閉信号3bによって上下筐体1,2が閉状態であり,かつ,制御部11内に記憶された過去の開閉信号3bによって閉状態になってから所定の時間が経過したか否かを調べる(ステップS11b)。
・・・
【0079】
ステップS11bで,上下筐体1,2が閉状態になってから所定の時間が経過したと検出した場合,制御部11は,移動通信端末装置内で動作中の処理を調べる(ステップS11c)。即ち,使用者の操作なしで起動され,使用者の操作を待っている処理(例えば,着信通知部21の処理。)及び/または優先度が低い処理(例えば,画像表示部22の処理。)のみが動作中であるか否かを調べる。
【0080】
そして,使用者の操作なしで起動され,使用者の操作を待っている処理及び/または優先度が低い処理のみが動作中である場合,制御部11は,移動通信端末装置が放置されている可能性があると判断して,その装置に操作ロックを施し,操作ロックが施されたことを制御部11内に記憶する(ステップS11d)。即ち,入力装置16から送信されたキーの識別子が受信されても,制御部11は,その受信によって新たな動作をさせず,操作ロック及びそのロックの解除の制御動作のみを続ける。なお,操作ロックが施されている場合,着呼操作や,電源の投入,切断,警察への通報など,所定の操作に対応するキーの識別子が受信されると,制御部11は,その操作に対しては新たな動作をさせる。
【0081】
続いて,制御部11は,入力装置16から送信されたキーの識別子を受信し,表示部15のバックライトを点灯させて,所定の表示をさせる(ステップS11e)。なお,この表示部15のバックライトの点灯による表示開始は,受信されたキーの識別子が操作ロック解除に用いられる可能性のあるキーの識別子である場合に行い,その可能性のないキーの識別子である場合に行わないとしても良い。
・・・
【0083】
次に,制御部11は,認証動作を行い,即ち,例えば,操作ロック解除には暗証番号の入力が要求される場合,ステップS11eで受信されたキーの識別子が示す情報が,制御部11内に記憶された所定の暗証番号と等しいか否かを調べ(ステップS11f),等しい場合,操作ロックを解除して(ステップS11g),操作ロック及びそのロックの解除の制御動作を終了する(ステップS11h)。一方,等しくない場合,ステップS11eの操作されたキーの識別子を受信し,表示部15の表示を点灯させる動作に戻る。
【0084】
ステップS11cで使用者の操作なしで起動され,使用者の操作を待っている処理及び/または優先度が低い処理以外の処理(例えば,留守番電話部17の処理や,電子メール送受信部18の処理や,通話処理。)が動作中である場合,制御部11は,操作ロック及びそのロックの解除の制御動作を終了する(ステップS11h)。
【0085】
また,ステップS11bで,上下筐体1,2が閉状態であり,閉状態になってから所定の時間が経過していない場合,または,上下筐体1,2が開状態である場合(ステップS11bの「経過せず」),制御部11は,移動通信端末装置が使用者のキー操作待ちの状態となって,即ち,入力装置16からキーの識別子が送信されることを待つ状態となってから,所定の時間が経過したか否かを調べる(ステップS11i)。
・・・
【0087】
ステップS11iで,上記所定の時間が経過したと判断した場合,制御部11は,ステップS11cの,動作中の処理を調べる動作以降の動作をする。一方,上記所定の時間が経過していないと判断した場合,制御部11は,操作ロック及びそのロックの解除の制御動作を終了する(ステップS11h)。
【0088】
以上の説明では,制御部11は,上下筐体1,2が閉状態になって所定時間経過した場合と,使用者の入力操作待ちが所定時間経過した場合とに,ステップS11c以降の操作ロックの制御動作を行うとしたが,使用者の所定のキー操作によって,この2つの場合のそれぞれに,または,両方に操作ロックの制御動作を行わせるか否かの設定が使用者によって可能であるとしても良い。」
イ 引用発明
(ア)上記ア(ア)によれば,引用文献1記載の発明は,「情報処理装置に係り,特に,処理動作が実行されている際の操作ロック処理に関する」(段落【0001】)もので,上記ア(イ)及び(ウ)によれば,引用文献1には,上記の情報処理装置が適用された移動通信端末装置についての説明が記載されているから,引用文献1には,移動通信端末装置における操作ロック処理方法に関する発明が記載されていると認められる。
(イ)上記ア(ウ)より,引用文献1記載の発明は,移動通信端末装置の上下筐体1及び2が閉状態になって所定時間経過した場合,又は使用者の入力操作待ちが所定時間経過した場合のいずれかが検出されると,操作ロックの制御動作を行うものと認められる。
そして,上記ア(ウ)より,引用文献1記載の発明は,移動通信端末装置において留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理,及び通話部14c,送受信部13などによる通話処理が動作中でない場合に,移動通信端末装置に操作ロックを施すステップを有すると認められる。
(ウ)上記ア(ウ)より,引用文献1記載の発明は,移動通信端末装置に操作ロックが施されている場合,ユーザによって入力装置16から送信されたキーの識別子が示す情報が,制御部11内に記憶された所定の暗証番号と等しい場合,操作ロックを解除するステップを有すると認められる。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)より,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「移動通信端末装置の上下筐体1及び2が閉状態になって所定時間経過した場合,又は使用者の入力操作待ちが所定時間経過した場合のいずれかが検出されると,操作ロックの制御動作を行い,移動通信端末装置において留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理,及び通話部14c,送受信部13などによる通話処理が動作中でない場合に,移動通信端末装置に操作ロックを施すステップを有し,
移動通信端末装置に操作ロックが施されている場合,ユーザによって入力装置16から送信されたキーの識別子が示す情報が,制御部11内に記憶された所定の暗証番号と等しい場合,操作ロックを解除するステップを有する,
移動通信端末装置における操作ロック処理方法。」

(4)周知例の記載と周知技術
ア 周知例1
原査定の拒絶の理由に引用された,原出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2000-184050号公報(以下「周知例1」という。)には,図1及び図3とともに,次の記載がある。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,画像と音声による通信を行う携帯テレビ電話端末に関し,特に第3者による不正使用を防止するためのキー操作のロック機能に関する。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上説明してきた従来の携帯電話端末のロック機能では,所有者以外の第3者による不正使用を防ぐことは可能だが,所有者本人が通常使う場合には,使用する度にロックコードを入力してロック機能を解除する必要があるために操作が煩雑となるという問題があった。
【0006】本発明の目的は,従来のロック機能のように第3者の不正使用を防止するとともに,所有者に対しては煩雑な操作を要求することなく,ロック機能を解除することが可能な携帯テレビ電話端末を提供することにある。」
・「【0019】次に,端末使用時のキーロック機能解除方法について説明する。図3は端末使用時のキーロック解除処理の流れを示した図である。図において,端末でキーロックが設定された状態で,キー入力検出部110において使用者による何らかのキー操作を検出する(S21)と,端末は画像入力手段100から画像の取り込みを開始する(S22)。取り込まれた画像は,画像比較手段105において,ロック解除用画像記憶手段104に記憶されているロック解除用画像と比較される(S23)。例えば,ロック解除用画像として所有者本人の顔画像が登録されている場合には,使用者は自分の顔を端末の画像入力手段100に映し込み,画像表示手段102で顔画像を確認しながら撮影する。
【0020】撮影された顔画像は画像比較手段105に送られ,予めロック解除用画像記憶手段104に記憶されている顔画像と比較される。比較の結果(S24),正規の所有者であると判定された場合,画像比較手段105は比較結果をキーロック制御手段111に渡し,キーロック制御手段111でキーロック機能を解除してすべてのキー入力を有効とする(S27)。画像の一致度の検出には入力画像から特徴点を抽出して特徴点のパターンのマッチングを取る方法などを用いることができる。」
イ 周知例2
原出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,「取扱説明書/A1402SII」(KDDI株式会社,2004年8月,第2版)には,図とともに次の記載がある。(当審注.「センタージョグ/ソフトキー2」,「発信/受信キー」及び「クイックディスプレイキー/シャッターキー」については,キーの図柄を省略して,又はキーの図柄をキーの名称で置き換えて摘記した。)
・「ご利用の準備
各部の名称と機能
・・・
○4 センタージョグ/ソフトキー2
(当審注.審決起案システムの制約上,○囲み数字を上記のように表す。以下同じ。)
上下に回すとアドレス帳画面,押すとインデックスメニューを呼び出します。1秒以上押すとキーロックを設定/解除します(→P.29)。・・・
・・・
○7 発信/受信キー
電話をかけるときや,受けるときに使用します。
・・・
○28 クイックディスプレイキー/シャッターキー
クイックディスプレイの照明を点灯させるときに使用します。また,シャッターキーとして使用します。本体を閉じているとき,1秒以上押すとキーロックを設定/解除します(→P.29)。
・・・」(20ないし21頁)
・「キーの誤動作を防止する
[キーロック]
電源を入れたまま持ち歩くときなどに,キーが押されて誤動作しないようロックすることができます。
・・・
■キーロックを解除する
センタージョグ/ソフトキー2を1秒以上押す
お知らせ
・キーロック中でも,クイックディスプレイキーは操作できます。A1402SIIを閉じているときに,クイックディスプレイキーを押してもキーロックの設定/解除ができます。
・・・
・キーロック中に利用できる操作は以下のとおりです。
待ち受け時
-110(警察),119(消防・救急),118(海上保安本部)への緊急呼発信
-アラーム,オートパワーオフなどタイマーで動作する機能
-キーロック解除のためにセンタージョグ/ソフトキー2を1秒以上押す
着信時
-簡易留守メモ起動
-応答保留
-着信音量調節
-発信/受信キーによる応答
Eメール,Cメールなどの着信時
-エニーキーアンサーでの着信音停止
データ通信時
-通信着信中の音量調節
-通信終了
・・・」(29頁)
ウ 周知例3
原出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2003-143290号公報(以下「周知例3」という。)には,図16とともに次の記載がある。
・「【0022】・・・
(3) 操作部103
操作部103は,図2に示す様に,携帯電話機10の操作面に設けられたファンクションボタン(以下では「Fボタン」という)201と複数の操作ボタン202とを含む。
【0023】・・・Fボタンは,光の透過性が高い材質から成り,表面には,指紋認証部104の一部である指紋読取面が設けられている。・・・」
・「【0032】(2) ボタンの処理
ボタンの処理における携帯電話機10の処理について,図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお,ここで説明する動作は,図4のフローチャートにおけるステップS103の詳細である。制御部102は,操作部103を介して入力を受け付けたボタンが,「Fボタン」であるか否か判断する(ステップS201)。受け付けたボタンが「Fボタン」であるなら(ステップS201でYES),制御部102は,内部に記憶しているロックフラグを読み,操作部103がキーロック状態であるか否か判断する(ステップS202)。ロックフラグが「オフ」に設定され,操作部103がキーロック状態でないなら(ステップS202でNO),ステップS101に戻り処理を続ける。ロックフラグが「オン」に設定され,操作部103がキーロック状態であるなら(ステップS202でYES),制御部102は,指紋認証部104を起動する指示を出力し,指紋認証部104は,当該利用者の指紋情報が登録指紋情報と一致するか否か判断することにより指紋認証を行う(ステップS203)。当該利用者の指紋情報が登録指紋情報と一致し,正当な利用者であることが認証されると(ステップS204でOK),制御部102は,ロックフラグを「オフ」に設定することにより,キーロックを解除する(ステップS205)。その後,ステップS101に戻り処理を続ける。当該利用者の指紋情報が登録指紋情報と一致せず,正当な利用者でないと判断されると(ステップS204でNG),ステップS101に戻る。」
エ 周知技術
(ア)上記アより,携帯端末装置において,使用者の顔画像を撮影し,撮影された顔画像と予めロック解除用画像記憶手段に記憶されている顔画像とを比較した結果,正規の所有者であると判定された場合にキーロック機能を解除することで,第三者の不正使用を防止するとともに,所有者に対しては煩雑な操作を要求することなく,キーロック機能を解除できるようにすることは,例えば周知例1にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では周知の技術と認められる。
(イ)上記イより,携帯端末装置の状態に応じて,キーロック中に受け付ける携帯端末装置のキー操作を制限することは,例えば周知例2にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたものと認められる。
(ウ)上記イ及びウより,携帯端末装置において,キーロック中にキーロックを解除するための携帯端末装置のキー操作を制限しないことは,周知例2及び3にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたものと認められる。
また,上記ウより,携帯端末装置において,キーロック中にキーロックを解除するための携帯端末装置のキー操作を検出した場合に,ユーザが正当な利用者であるか否かの認証を行うことも,例えば周知例3にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたものと認められる。

(5)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明における「移動通信端末装置」は,本願補正発明の「携帯端末装置」に相当するといえる。
そして,上記(2)エのとおり,本願補正発明において,その発明特定事項である「キー操作ロック指示が発生し」との文言は,携帯端末装置の筐体が閉じられているという条件と,携帯端末装置のユーザが所定時間キー操作を行わなかったという条件のいずれかが成立した場合に,キー操作ロック指示が発生することを含み得ると解されるから,引用発明における「移動通信端末装置の上下筐体1及び2が閉状態になって所定時間経過した場合,又は使用者の入力操作待ちが所定時間経過した場合のいずれかが検出されると,操作ロックの制御動作を行い」は,本願補正発明の「キー操作ロック指示が発生し」に相当するといえる。
また,本願補正発明の「携帯端末装置の状態が特定のアプリケーションプログラムが起動されていないという条件を満たしている場合」と,引用発明における「移動通信端末装置において留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理,及び通話部14c,送受信部13などによる通話処理が動作中でない場合」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「携帯端末装置の状態が特定の条件を満たしている場合」という点で共通するということができる。
さらに,引用発明における「操作ロック」及び「移動通信端末装置に操作ロックを施す」は,それぞれ,本願補正発明の「キー操作ロック機能」及び「キー操作ロック機能を有効にする」に相当するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定の条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするステップ」を有する点で共通するということができる。
イ 本願補正発明の「キー操作ロック機能が有効であり,前記キー操作ロックを解除するためのイベントを検出した場合」と,引用発明における「移動通信端末装置に操作ロックが施されている場合」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「キー操作ロック機能が有効である場合」との点で共通するといえる。
そして,本願補正発明の「前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除すること」と,引用発明における「ユーザによって入力装置16から送信されたキーの識別子が示す情報が,制御部11内に記憶された所定の暗証番号と等しい場合,操作ロックを解除する」こととは,後述する相違点に係る構成を除き,「認証情報を用いることにより前記キー操作ロック機能を解除すること」である点で共通するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「キー操作ロック機能が有効である場合,認証情報を用いることにより前記キー操作ロック機能を解除する」ステップを有する点で共通するということができる。
ウ 本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「携帯端末装置におけるキー操作ロック方法」に関する発明である点で共通するということができる。
エ 上記アないしウより,本願補正発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりであると認められる。
(ア)一致点
「キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定の条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするステップを有し,
キー操作ロック機能が有効である場合,認証情報を用いることにより前記キー操作ロック機能を解除するステップを有する
携帯端末装置におけるキー操作ロック方法。」
(イ)相違点
・相違点1
一致点に係る構成の「キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定の条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするロック制御ステップ」における,「携帯端末装置の状態が特定の条件を満たしている場合」について,本願補正発明は「携帯端末装置の状態が特定のアプリケーションプログラムが起動されていないという条件を満たしている場合」であるのに対し,引用発明は「移動通信端末装置において留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理,及び通話部14c,送受信部13などによる通話処理が動作中でない場合」であり,「特定のアプリケーションプログラムが起動されていない」ことは明示されていない点。
・相違点2
一致点に係る構成の「キー操作ロック機能」について,本願補正発明は,「前記携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベントを制限する機能であると共にキー操作ロックを解除するためのイベントを制限しない機能である」のに対し,引用発明における「操作ロック」(本願補正発明の「キー操作ロック機能」に相当。)の機能に関し,上記の特定はされていない点。
・相違点3
本願補正発明は「画像取得ステップ」を有するのに対し,引用発明は当該ステップを有しておらず,また,一致点に係る構成の「キー操作ロック機能が有効である場合,認証情報を用いることにより前記キー操作ロック機能を解除するステップ」について,本願補正発明は,「前記キー操作ロックを解除するためのイベントを検出した場合,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いること」によりキー操作ロック機能を解除するのに対し,引用発明は,「キー操作ロックを解除するためのイベントを検出」するものではなく,「画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いる」ものでもない点。
・相違点4
一致点に係る構成の「キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定の条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするステップ」,及び「キー操作ロック機能が有効である場合,認証情報を用いることにより前記キー操作ロック機能を解除するステップ」について,本願補正発明は,上記二つのステップを「ロック制御ステップ」と称して特定しているのに対し,引用発明は上記の様な特定をしていない点。

(5)相違点についての検討
ア 相違点1について
引用発明は,移動通信端末装置において留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理,及び通話部14c,送受信部13などによる通話処理が動作中でない場合に,移動通信端末装置に操作ロックを施すものであり,引用文献1の記載(上記(3)ア(イ))によれば,上記留守番電話部17の処理は,用件を録音する旨の音声の送信や,受信された音声メッセージの記憶部への格納を行い,また,上記電子メール送受信部18の処理は,送信メールの作成及び送信や,受信メールの記憶部への格納を行う。
そして,携帯端末装置における通話処理,及び留守番電話や電子メールの処理を,アプリケーションプログラムにより行うことは,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたものと認められる。
そうすると,引用発明において,移動通信端末装置の留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理,及び通話部14c,送受信部13などによる通話処理を,アプリケーションプログラムにより行うようにし,これらのアプリケーションプログラムが起動されていないという条件を満たしている場合に,キー操作ロック機能を有効にするようにすることは,当業者が適宜行い得るものと認められる。
以上から,相違点1に係る発明は,引用発明において,当業者が適宜なし得たものである。
イ 相違点2について
上記(4)エ(イ)のとおり,携帯端末装置の状態に応じて,キーロック中に受け付ける携帯端末装置のキー操作を制限することは,例えば周知例2にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたものと認められ,また,上記(4)エ(ウ)のとおり,携帯端末装置において,キーロック中にキーロックを解除するための携帯端末装置のキー操作を制限しないことも,周知例2及び3にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたものと認められる。
そうすると,引用発明において,移動通信端末装置(本願補正発明の「携帯端末装置」に相当。)に操作ロック(本願補正発明の「キー操作ロック機能」に相当。)を施した場合に,移動通信端末装置の状態に応じて,受け付ける移動通信端末装置のキー操作を制限すること,及び操作ロックを解除するための携帯端末装置のキー操作を制限しないことは,いずれも,当業者が普通に行い得るものである。
そして,上記(2)エのとおり,本願補正発明において,その発明特定事項である「携帯端末装置の状態に応じて受け付けるイベント」及び「キー操作ロックを解除するためのイベント」における「イベント」との用語は,携帯端末装置に設けられている特定のキーの操作を含み得ると解されるから,引用発明の操作ロックについて,移動通信端末装置の状態に応じて受け付けるイベントを制限すること,及び操作ロックを解除するためのイベントを制限しないことは,いずれも,当業者が普通に行い得るものである。
以上から,相違点2に係る構成は,引用発明において,当業者が普通に行い得るものである。
ウ 相違点3について
上記(4)エ(ア)のとおり,携帯端末装置において,使用者の顔画像を撮影し,撮影された顔画像と予めロック解除用画像記憶手段に記憶されている顔画像とを比較した結果,正規の所有者であると判定された場合にキーロック機能を解除することで,第三者の不正使用を防止するとともに,所有者に対しては煩雑な操作を要求することなく,キーロック機能を解除できるようにすることは,例えば周知例1にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では周知の技術と認められる。
そうすると,引用発明において,移動通信端末装置に操作ロックが施されている場合,ユーザによって入力装置16から送信されたキーの識別子が示す情報が,制御部11内に記憶された所定の暗証番号と等しい場合,操作ロックを解除することに代えて,画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得し,上記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより上記操作ロックを解除するようにすることは,第三者の不正使用を防止するとともに,所有者に対しては煩雑な操作を要求することなく,上記操作ロックを解除できるようにすることを目的として,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものということができる。
そして,上記(4)エ(ウ)のとおり,携帯端末装置において,キーロック中にキーロックを解除するための携帯端末装置のキー操作を検出した場合に,ユーザが正当な利用者であるか否かの認証を行うことは,例えば周知例3にみられるように,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたと認められるから,引用発明に上記周知技術を適用する際,操作ロックを解除するための携帯端末装置のキー操作を検出した場合,すなわち,上記(2)エより,操作ロックを解除するためのイベントを検出した場合に,画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得するようにすることは,当業者が適宜なし得たものということができる。
以上から,相違点3に係る構成は,引用発明において,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
エ 相違点4について
引用発明における「移動通信端末装置の上下筐体1及び2が閉状態になって所定時間経過した場合,又は使用者の入力操作待ちが所定時間経過した場合のいずれかが検出されると,操作ロックの制御動作を行い,移動通信端末装置において留守番電話部17の処理,電子メール送受信部18の処理,及び通話部14c,送受信部13などによる通話処理が動作中でない場合に,移動通信端末装置に操作ロックを施すステップ」と,「移動通信端末装置に操作ロックが施されている場合,ユーザによって入力装置16から送信されたキーの識別子が示す情報が,制御部11内に記憶された所定の暗証番号と等しい場合,操作ロックを解除するステップ」とは,いずれもロックの制御に係る処理であるが,これらにそれぞれ異なる名称を付すか,両者をまとめて「ロック制御ステップ」のような名称を付すかは,当業者が適宜選択し得るものといえる。
そうすると,引用発明において,相違点5に係る構成とすることは,例えば周知例1にみられるような周知技術を適用する際に,当業者が適宜なし得たものと認められる。
以上から,相違点4に係る構成は,引用発明において,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

(6)本願補正発明の作用効果について
本願明細書に記載され,請求人が審判請求書で主張する,携帯端末装置の使い勝手を向上させることができるとの本願補正発明が奏する作用効果は,引用発明において,例えば周知例1にみられるような周知技術,並びに周知例2及び3にみられるような,原出願の優先日前,当該技術分野では普通に行われていたことに基づいて,当業者が容易に予測し得るものと認められる。
そうすると,本願補正発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

(7)まとめ
本件補正後の請求項6に係る発明(本願補正発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明)及び周知例1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性について

1 本願発明について
平成26年5月28日に提出された手続補正書による手続補正は前記のとおり却下された。そして,平成25年12月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項8の記載は,次のとおりである。(再掲)
「【請求項8】
キー操作ロック指示が発生し,携帯端末装置の状態が特定のアプリケーションプログラムが起動されていないという条件を満たしている場合にキー操作ロック機能を有効にするロック制御ステップと,画像取得ステップと,を有し,
前記ロック制御ステップは,キー操作ロック機能が有効であり,前記画像取得ステップでユーザ自身の顔画像を取得した場合,前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除することを特徴とする携帯端末装置におけるキー操作ロック方法。」
そうすると,前記第2の4(2)より,本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その発明特定事項である「キー操作ロック指示が発生し」との文言が,携帯端末装置の筐体が閉じられているという条件と,携帯端末装置のユーザが所定時間キー操作を行わなかったという条件のいずれかが成立した場合に,キー操作ロック指示が発生することを含み得ると解したうえで,平成25年12月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項8に記載されたとおりのものと認める。

2 引用文献の記載と引用発明
引用文献1の記載は,前記第2の4(3)アのとおりであり,引用発明は,前記第2の4(3)イで認定したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比
前記第2の1及び2より,本願発明は,本願補正発明において,補正事項2及び3による発明特定事項(「キー操作ロック機能」及び「前記ユーザの顔画像を認証情報として用いることにより前記キー操作ロック機能を解除すること」)に対する限定(限定的減縮)を取り除いたものである。
そして,前記第2の4(5)で検討したとおり,本願補正発明は,引用文献1記載の発明(引用発明)及び周知例1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると,本願補正発明を包含する本願発明も,前記第2の4(5)で検討した理由により,引用文献1記載の発明(引用発明),及び原査定の拒絶の理由に引用された周知例1にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,前記第2の4(6)の理由により,本願発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

5 まとめ
以上のとおり,本願の請求項8に係る発明(本願発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明),及び原査定の拒絶の理由に引用された周知例1にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 結言

したがって,本願の請求項8に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-03 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-23 
出願番号 特願2012-129907(P2012-129907)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山中 実
河口 雅英
発明の名称 携帯端末装置及び携帯端末装置におけるキー操作ロック方法並びにプログラム  
代理人 丸山 隆夫  

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