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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1304353
審判番号 不服2014-11628  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-18 
確定日 2015-08-13 
事件の表示 特願2011-168674「出力装置、情報提供装置、情報出力方法、プログラム、及び情報出力システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月12日出願公開、特開2012- 9045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年7月23日に出願した特願2001-222147号の一部を平成23年8月1日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年12月28日:拒絶理由の通知(起案日)
平成25年 2月14日:意見書、手続補正書の提出
平成25年 8月 1日:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知(起案日)
平成25年10月 1日:意見書、手続補正書の提出
平成26年 3月10日:平成25年10月1日の手続補正に
ついての補正却下の決定、拒絶査定(起案日)
平成26年 6月18日:審判請求書、手続補正書の提出


第2 平成26年6月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年6月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものであり、その特許請求の範囲の請求項1についての補正内容は次のとおりである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「携帯可能かつユーザが操作する情報処理装置と、
提供する情報を識別する所在情報と前記情報処理装置に固有の情報である装置固有情報とを対応付けて記憶する記憶手段を備える情報提供装置と、
にネットワークを介して接続される出力装置であって、
前記装置固有情報の入力を受け付ける固有情報受信手段と、
前記装置固有情報を前記情報提供装置に送信して出力の対象となる前記情報の取得を要求する要求手段と、
前記要求手段の要求に応じて受信した前記情報であり、かつ、前記要求手段が送信した前記装置固有情報により前記記憶手段から特定された所在情報に基づき取得された前記情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする出力装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、平成25年2月14日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「情報処理装置と、提供する前記情報を識別する所在情報と前記情報処理装置に固有の情報である装置固有情報とを対応付けて記憶する記憶手段を備える情報提供装置と、にネットワークを介して接続される出力装置であって、
前記装置固有情報の入力を受け付ける固有情報受信手段と、
前記装置固有情報を前記情報提供装置に送信して出力の対象となる前記情報の取得を要求する要求手段と、
前記要求手段の要求に応じて受信した前記情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする出力装置。」

(3)上記特許請求の範囲の請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「情報処理装置」、「前記情報」について、上記下線部の限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項

ア.原査定の拒絶の理由(平成25年8月1日付け拒絶理由通知書で通知)で引用された、本願のみなし出願日(平成13年7月23日)前に頒布された刊行物である、特開2001-125982号公報(平成13年5月11日出願公開。以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0023】本発明の課題は、情報要求場所やプリントサービスを受ける場所が拘束されないネットワークによるコンテンツ配信型のプリントサービスのビジネスモデルを支援するモバイルポータルサイトをを提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、情報端末を用いてコンテンツをネットワーク上のサーバで印刷予約し、この印刷予約したコンテンツを任意の出力装置から印刷出力させるコンテンツ配信システムであって、前記情報端末(例えば、図1の携帯端末3)は、前記ネットワーク(例えば、図1のインターネットS)上のサーバに開設された印刷予約ホームページにアクセスして、該ホームページ上で所望するコンテンツを印刷予約する通信手段(例えば、図7の公衆回線伝送制御部34)を備え、前記サーバ(例えば、図1のポータルコンピュータ2)は、前記印刷予約ホームページを前記ネットワーク上で開設し、前記情報端末により該ホームページ上で所望のコンテンツが印刷予約された場合、その予約情報を情報端末のユーザIDに対応して記憶する記憶手段(例えば、図2の記憶装置26)と、前記出力装置から送信されたユーザIDを受信し、このユーザIDに基づいて前記記憶手段に記憶された予約情報を参照し、対応するコンテンツを出力装置に送信する通信手段(例えば、図2のインターネット伝送制御部24)と、を備え、前記出力装置(例えば、図1のプリントステーション6)は、前記情報端末のユーザIDを前記サーバに送信して、前記サーバから送信されたコンテンツを受信する通信手段(例えば、図8のインターネット伝送制御部64)と、この通信手段により受信されたコンテンツを印刷する印刷手段(例えば、図8の印刷装置68)と、を備えたことを特徴としている。
【0025】この請求項1記載の発明によれば、情報端末を用いてコンテンツをネットワーク上のサーバで印刷予約し、この印刷予約したコンテンツを任意の出力装置から印刷出力させるコンテンツ配信システムであって、前記情報端末は、通信手段により前記ネットワーク上のサーバに開設された印刷予約ホームページにアクセスして、該ホームページ上で所望するコンテンツを印刷予約し、前記サーバは、前記印刷予約ホームページを前記ネットワーク上で開設し、記憶手段に、前記情報端末により該ホームページ上で所望のコンテンツが印刷予約された場合、その予約情報を情報端末のユーザIDに対応して記憶し、通信手段が、前記出力装置から送信されたユーザIDを受信し、このユーザIDに基づいて前記記憶手段に記憶された予約情報を参照し、対応するコンテンツを出力装置に送信し、前記出力装置は、通信手段が、前記情報端末のユーザIDを前記サーバに送信して、前記サーバから送信されたコンテンツを受信すると、印刷手段が、この受信されたコンテンツを印刷する。」

「【0038】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1?図26は、本発明を適用したプリントサービスシステムの一実施の形態を示す図である。まず、構成を説明する。図1は、本実施の形態におけるプリントサービスシステムのシステム構成を示す図である。この図1において、プリントサービスシステム100は、通信事業者1と専用回線Tを介して接続されたポータルコンピュータ2と、公衆回線Nに接続された3台の携帯端末3と、インターネットSに接続された情報提供事業者4、マーケティング事業者5、及び3ヶ所に設置されたプリントステーション6と、から構成されている。
【0039】なお、図1では3台の携帯端末3と3ヶ所に設置されたプリントステーション6が接続された場合を示しているが、それらの台数や設置箇所数は特に限定されない。」

「【0041】ポータルコンピュータ2は、図2に示すブロック図のように、CPU21、表示部22、入力部23、インターネット伝送制御部24、RAM25、記憶装置26、記憶媒体27、及び専用回線伝送制御部28により構成され、記憶媒体27を除く各部はバス29に接続されている。
【0042】このポータルコンピュータ2は、インターネットSに接続された情報提供事業者4、及びマーケティング事業者5により提供されるプリントサービスの内容を携帯端末3に示すため、例えば、メニュー形式のポータルページを設定して、通信事業者1を介してアクセスされた携帯端末3に対して、そのプリントサービス用ポータルページを表示させ、携帯端末3からプリントサービスの要求内容(コンテンツ)を受け付けて、その印刷予約確認用のワンタイムパスワードを発行する等のプリントサービスに係るポータルサイト機能を有する。
【0043】また、ポータルコンピュータ2は、そのプリントサービスを予約した携帯端末3の利用者により、プリントステーション6からワンタイムパスワードを受信して、先に印刷予約された当該利用者のプリントサービス要求内容を参照して、対応するコンテンツと印刷指定内容などをプリントステーション6に配信して印刷させるコンテンツ配信機能と、当該利用者のプリントサービスの課金情報を管理する課金管理機能とを有する。
【0044】CPU(Central Processing Unit )21は、通信事業者1を介してアクセスされた携帯端末3に対してプリントサービスを提供するため、後述する印刷予約処理(図12参照)を実行する。
【0045】この印刷予約処理において、CPU21は、アクセスされた携帯端末3に対してプリントサービスのポータルメニューを送信し、その表示させたプリントサービスサイトにおいて利用者のユーザ認証処理を実行した後、選択されたプリントサービスの情報ページを送信して携帯端末3に表示させて、印刷するコンテンツや印刷方式などを指定させて印刷予約を受け付けると、そのコンテンツファイルを情報提供事業者4あるいはマーケティング事業者5から取り込み、それらの情報をまとめて利用予約情報として保存管理するとともに、今回のプリントサービスのみに適用するワンタイムパスワードを発行して、利用予約情報とともに携帯端末3にメール送信する。
【0046】また、CPU21は、プリントステーション6から携帯端末3利用者のユーザIDとワンタイムパスワードを受信すると、後述するコンテンツ配信処理(図14参照)を実行する。
【0047】このコンテンツ配信処理において、CPU21は、プリントステーション6においてプリントサービスサイトにアクセスした利用者のユーザ認証処理を実行した後、認証した利用者の利用予約情報ファイル(コンテンツや印刷方式を含む)を、当該プリントステーション6に配信して印刷処理を実行させ、その印刷処理が終了するまで利用者のファイルをロックし、印刷完了を確認すると、その印刷したコンテンツの利用情報、課金情報をプリントステーション6から受け取って、管理ファイルに記録するとともに、当該利用者の課金情報を更新する。」

「【0061】また、記憶装置26は、プリントサービスに係る各種メモリエリアを有し、図3に示すように、印刷予約ホームページメモリ26a、アンケート募集ホームページメモリ26b、アンケート回答ホームページメモリ26c、会員情報DBメモリ26d、電子メールBOXファイルメモリ26e、利用ポイントDBメモリ26f、利用予約DBメモリ26g、コンテンツ課金DBメモリ26h、利用料単価ファイルメモリ26i、複数のコンテンツファイル1?nメモリ26j、複数の広告コンテンツ1?nメモリ26k、広告コンテンツDBメモリ26l、アンケート利用者管理ファイルメモリ26m、及びプリペイド入金管理ファイルメモリ26nを有する。
【0062】印刷予約ホームページメモリ26aは、プリントサービスの内容を示すメニュー項目などを含む印刷予約ホームページ用の表示データを記憶する。アンケート募集ホームページメモリ26bは、アンケート募集ホームページ用の表示データを記憶する。アンケート回答ホームページメモリ26cは、アンケート回答ホームページ用の表示データを記憶する。」

「【0066】利用予約DBメモリ26gは、携帯端末3の利用者別にプリントサービスの予約情報を管理する利用情報ファイルを設定する利用予約データベースを記憶し、その利用情報ファイルの具体例を図5(A)に示す。図5(A)に示す利用情報ファイルでは、携帯電話番号、E-Mailアドレス、氏名、コンテンツID、印刷形式、印刷部数、ワンタイムパスワードなどを記憶している。」

「【0072】次いで、図1の携帯端末3の構成を図7に示すブロック図に基づいて説明する。この携帯端末3は、携帯電話機能も内蔵しており、公衆回線Nから通信事業者1を介してポータルコンピュータ2にアクセスしてプリントサービスを利用することができる。
【0073】図7において、携帯端末3は、CPU31、表示部32、入力部33、公衆回線伝送制御部34、RAM35、記憶装置36、及び記憶媒体37により構成されており、記憶媒体37を除く各部はバス38に接続されている。
【0074】CPU31は、記憶装置36内に格納されているシステムプログラム及び当該システムに対応する各種アプリケーションプログラムの中から指定されたアプリケーションプログラムをRAM35内の図示しないプログラム格納領域に展開し、入力部33から入力される各種指示あるいはデータをRAM35内に一時的に格納し、この入力指示及び入力データに応じて記憶装置36内に格納されたアプリケーションプログラムに従って各種処理を実行し、その処理結果をRAM35内に格納するとともに、表示部32に表示する。そして、RAM35に格納した処理結果を入力部33から入力指示される記憶装置36内の保存先に保存する。
【0075】また、CPU31は、公衆回線伝送制御部34に接続された公衆回線Nから通信事業者1を介してポータルコンピュータ2にアクセスしてプリントサービスを利用する際に、まず、後述する印刷予約処理(図9参照)を実行する。
【0076】この印刷予約処理において、CPU31は、インターネットでポータルコンピュータ2に設定されたポータルサイトを表示部32に表示し、そのポータルサイトにあるプリントサービスサイトが選択されると、ユーザ認証処理を実行した後に、そのプリントサービスサイトにあるメニューから希望ページを選択させ、ポータルコンピュータ2から送信される当該選択ページから更に印刷予約ページに移行して印刷方式を選択させる。
【0077】この印刷方式の選択に応じてポータルコンピュータ2から利用料と印刷予約内容を受信して確認されると、CPU31は、更にポータルコンピュータ2から受信したワンタイムパスワードと利用予約情報とを記憶装置36に保存するとともに、その印刷予約内容を表示部32に表示する。」

「【0080】表示部32は、液晶表示パネルなどにより構成され、CPU31から入力される表示データに基づいて画面表示を行う。
【0081】入力部33は、カーソルキー、数字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードと、ポインティングデバイスであるマウスとを備え、キーボードで押下されたキーの押下信号をCPU31に出力するとともに、マウスによる操作信号をCPU31に出力する。」

「【0085】次いで、図1のプリントステーション6の構成を図8に示すブロック図に基づいて説明する。このプリントステーション6は、店舗などに設置され、携帯端末3の利用者にプリントサービスを提供するとともに、そのプリントサービス用のプリペイド伝票を発行する機能と、広告印刷によるサービスポイントを提供する機能を有する。
【0086】図8において、プリントステーション6は、CPU61、表示部62、入力部63、インターネット伝送制御部64、RAM65、記憶装置66、記憶媒体67、及び印刷装置68により構成されており、記憶媒体67を除く各部はバス69に接続されている。
【0087】CPU61は、上記プリントサービスの印刷予約をした携帯端末3の利用者に対してプリントサービスを提供するため後述するプリントサービス処理(図13参照)を実行する。
【0088】このプリントサービス処理において、CPU61は、プリントサービスメニューを表示し、メニュー項目の「印刷」が選択されると、ユーザIDとワンタイムパスワードとを入力させ、その入力データをポータルコンピュータ2に送信してユーザ認証処理を行った後、ポータルコンピュータ2から送信される利用情報ファイルやコンテンツファイルを受信すると、その受信内容を一覧表示して、印刷形式や広告印刷の有無などを利用者に確認させる。」

「【0092】表示部62は、CRTや、液晶表示装置等により構成され、CPU61から入力される表示データに基づいて画面表示を行う。
【0093】入力部63は、表示部62の表示画面と一体的に構成されたタッチパネル、数字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードなどを備え、タッチパネルで押下された位置の座標信号をCPU61に出力するとともに、キーボードのキー操作信号をCPU61に出力する。」

「【0097】印刷装置68は、各種印刷用紙(普通紙(A4,A3)、システム手帳(B6)、長尺紙、シール(2×4)、トレーディングカード、はがき、プリペイド伝票用紙など)を利用可で、カラー印刷モードとモノクロ印刷モードとを備え、CPU61において実行されるプリントサービス処理に際して、CPU61から入力される印刷データを印刷媒体に印刷して排出するとともに、CPU61において実行されるプリペイド伝票発行処理に際して、CPU61から入力されるプリペイド伝票印刷データを印刷媒体に印刷して排出する。」

「【0113】携帯端末3から印刷予約の確認指示を受信すると、CPU21は、利用予約情報を記憶装置26内の利用予約DBメモリ26gに記録し、そのコンテンツIDで予約されたコンテンツの保存場所を管理する(ステップS8)。次いで、CPU21は、ワンタイムパスワードを発生し、利用者の携帯端末3に利用予約情報とともにメール送信して(ステップS9)、本印刷予約処理を終了する。
【0114】以上のように、携帯端末3とポータルコンピュータ2との間でプリントサービスの印刷予約処理が終了すると、その印刷予約をした携帯端末3の利用者は、プリントステーション6が設置された店舗に行けば、予約したコンテンツのプリントサービスを受けることができる。
【0115】次に、プリントステーション6において実行されるプリントサービス処理について図13に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0116】図13において、CPU61は、まず、プリントサービスの印刷予約をした携帯端末3の利用者からのアクセスによりプリントサービスメニューを表示し(ステップT1)、選択されたメニュー項目を確認する(ステップT2)。そして、CPU61は、選択されたメニュー項目が「印刷」以外の他の項目であれば、その選択項目に対応した他の処理に移行し、選択されたメニュー項目が「印刷」であれば、ユーザIDとワンタイムパスワードの入力を促す(ステップT3)。
【0117】利用者からユーザIDとワンタイムパスワードが入力されると、CPU61は、その入力データをポータルコンピュータ2に送信し(ステップT4)、ユーザ認証結果の受信を待機する(ステップT5)。そして、CPU61は、ポータルコンピュータ2から当該利用者を認めないユーザ認証結果を受信すると(ステップT6)、ステップT19に移行してエラー表示を行い、また、ポータルコンピュータ2から当該利用者を認めるユーザ認証結果を受信すると、続いてポータルコンピュータ2から送信される利用情報ファイル、コンテンツファイルなどを取り込む処理を実行する(ステップT7)。」

「【0121】CPU61は、利用料が印刷課金限度を越えた場合は、ステップT20に移行してエラー表示を行い、利用料が印刷課金限度内である場合は、上記プリントサービス利用予約情報にある印刷形式と先に取り込んだコンテンツファイルに基づいて印刷データを生成して印刷装置68に出力し、印刷装置68において印刷される印刷媒体の排出を確認する(ステップT15)。」

「【0124】以上のプリントステーション6において実行されたプリントサービス処理に対応して、ポータルコンピュータ2において実行されるコンテンツ配信処理について図14に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0125】図14において、CPU21は、まず、プリントステーション6から送信されたユーザIDとワンタイムパスワードを取り込み(ステップS11)、プリントステーション6のプリントサービスサイトにおいて当該利用者のユーザ認証処理を実行して(ステップS12)、記憶装置26内の会員情報DBメモリ26dに記憶された会員情報ファイルを参照して当該利用者の登録認証の有無を確認する(ステップS13)。
【0126】そして、CPU21は、当該利用者の会員情報が登録されていない場合は、ステップS19に移行してNGコメントをプリントステーション6に配信し、当該利用者の会員情報が登録されている場合は、その認証した利用者の利用予約情報ファイル(コンテンツや印刷方式を含む)などをプリントステーション6に配信する(ステップS14)。」


イ.引用例の上記記載事項を、関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。

(ア)上記段落【0042】-【0043】、並びに、上記段落【0072】-【0073】、【0080】-【0081】及び図1、7には、携帯電話機能を内蔵する携帯端末3は、利用者が入力操作するものであることが示されている。

(イ)上記段落【0038】及び図1、上記段落【0041】及び図2、上記段落【0061】及び図3、上記段落【0066】及び図5(A)には、ポータルコンピュータ2が、コンテンツIDと携帯電話番号を対応付けて記憶装置26に記憶することが記載されている。
加えて、上記段落【0113】には、ポータルコンピュータ2が、コンテンツの保存場所をコンテンツIDで管理することが記載されている。
よって、ポータルコンピュータ2は、コンテンツの保存場所を管理するコンテンツIDと、携帯電話番号とを対応付けて記憶する記憶装置26を備えるものといい得る。

(ウ)上記段落【0038】及び図1には、携帯端末3と、ポータルコンピュータ2とにネットワークを介して接続されるプリントステーション6が記載されている。

(エ)上記段落【0086】-【0088】及び図8、並びに、上記段落【0116】-【0117】及び図13には、プリントステーション6が、ユーザIDの入力を受け付ける入力部63を備えることが示されている。

(オ)上記段落【0117】、【0121】及び図13には、プリントステーション6が、ユーザIDをポータルコンピュータ2に送信し、ポータルコンピュータ2から印刷の対象となるコンテンツを取り込むことが記載されている。
よって、プリントステーション6は、ユーザIDをポータルコンピュータ2に送信して印刷の対象となるコンテンツを取り込むための要求を行う手段を備えているといい得る。

(カ)上記段落【0097】及び図8、並びに、上記段落【0117】、【0121】及び図13には、プリントステーション6が、ユーザIDの送信に応じて受信したコンテンツを印刷する印刷装置68を備えることが記載されている。
また、上記段落【0113】-【0114】、上記段落【0117】、並びに、上記段落【0124】-【0126】及び図14には、ポータルコンピュータ2において、プリントステーション6が送信したユーザIDにより記憶装置26から特定されたコンテンツIDに基づきコンテンツを取得してプリントステーション6に配信することが示されている。
よって、プリントステーション6は、ユーザIDの送信に応じて受信したコンテンツであり、かつ、送信したユーザIDにより記憶装置26から特定されたコンテンツIDに基づき取得された前記コンテンツを印刷する印刷装置68を備えるものといい得る。


ウ.以上を踏まえると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「利用者が入力操作し携帯電話機能を内蔵する携帯端末3と、
コンテンツの保存場所を管理するコンテンツIDと、携帯電話番号とを対応付けて記憶する記憶装置26を備えるポータルコンピュータ2と、
にネットワークを介して接続されるプリントステーション6であって、
ユーザIDの入力を受け付ける入力部63と、
前記ユーザIDをポータルコンピュータ2に送信して印刷の対象となるコンテンツを取り込むための要求を行う手段と、
前記要求を行う手段の要求に応じて受信したコンテンツであり、かつ、前記要求を行う手段が送信した前記ユーザIDにより記憶装置26から特定されたコンテンツIDに基づき取得された前記コンテンツを印刷する印刷装置68と、を備えるプリントステーション6。」

(3)引用発明との対比

ア.本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「利用者」、「入力操作」、「利用者が入力操作し携帯電話機能を内蔵する携帯端末3」は、
それぞれ本件補正発明の「ユーザ」、「操作」、「携帯可能かつユーザが操作する情報処理装置」に相当する。

(イ)引用発明の「コンテンツ」、「コンテンツの保存場所を管理するコンテンツID」、「携帯電話番号」、「記憶装置26」、「ポータルコンピュータ2」は、
それぞれ本件補正発明の「提供する情報」、「提供する情報を識別する所在情報」、「前記情報処理装置に固有の情報である装置固有情報」、「記憶手段」、「情報提供装置」に相当する。

(ウ)引用発明の「プリントステーション6」は、本件補正発明の「出力装置」に相当する。

(エ)引用発明の「ユーザID」と本件補正発明の「装置固有情報」は、共に『出力の対象を特定するために使用される情報』といい得、引用発明の「入力部63」と本件補正発明の「固有情報受信手段」は、共に「入力を受け付ける手段」といい得る。
したがって、引用発明の「ユーザIDの入力を受け付ける入力部63」と、本件補正発明の「前記装置固有情報の入力を受け付ける固有情報受信手段」は、“『出力の対象を特定するために使用される情報』の入力を受け付ける受信手段”である点で共通する。

(オ)引用発明の「ポータルコンピュータ2」、「印刷の対象となるコンテンツファイル」は、
それぞれ本件補正発明の「情報提供装置」、「出力の対象となる前記情報」に相当する。
したがって、引用発明の「ユーザIDをポータルコンピュータ2に送信して印刷の対象となるコンテンツを取り込むための要求を行う手段」は、
本件補正発明の「前記装置固有情報を前記情報提供装置に送信して出力の対象となる前記情報の取得を要求する要求手段」と、
“『出力の対象を特定するために使用される情報』を前記情報提供装置に送信して出力の対象となる前記情報の取得を要求する要求手段”である点で共通する。

(カ)引用発明の「印刷する印刷装置68」は、本件補正発明の「出力する出力手段」に相当するから、上記(イ)、(エ)、(オ)を踏まえると、
引用発明の「前記要求を行う手段の要求に応じて受信したコンテンツであり、かつ、前記要求を行う手段が送信したユーザIDにより記憶装置26から特定されたコンテンツIDに基づき取得された前記コンテンツを印刷する印刷装置68」は、
本件補正発明の「前記要求手段の要求に応じて受信した前記情報であり、かつ、前記要求手段が送信した前記装置固有情報により前記記憶手段から特定された所在情報に基づき取得された前記情報を出力する出力手段」と、
“前記要求手段の要求に応じて受信した前記情報であり、かつ、前記要求手段が送信した『出力の対象を特定するために使用される情報』により前記記憶手段から特定された所在情報に基づき取得された前記情報を出力する出力手段”である点で共通する。

イ.以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「携帯可能かつユーザが操作する情報処理装置と、
提供する情報を識別する所在情報と前記情報処理装置に固有の情報である装置固有情報とを対応付けて記憶する記憶手段を備える情報提供装置と、
にネットワークを介して接続される出力装置であって、
『出力の対象を特定するために使用される情報』の入力を受け付ける受信手段と、
『出力の対象を特定するために使用される情報』を前記情報提供装置に送信して出力の対象となる前記情報の取得を要求する要求手段と、
前記要求手段の要求に応じて受信した前記情報であり、かつ、前記要求手段が送信した『出力の対象を特定するために使用される情報』により前記記憶手段から特定された所在情報に基づき取得された前記情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする出力装置。」である点。

(相違点)
『出力の対象を特定するために使用される情報』が、本件補正発明では「装置固有情報」であるのに対し、引用発明では「ユーザID」とされ、「装置固有情報」とはされていない点。

(4)判断

ア.(相違点)について
以下の事情を総合すると、引用発明において、相違点に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。

(ア)引用例においては、「ユーザID」が実際にどのような情報であるのかについての具体的な説明は記載されていないが、上記段落【0024】-【0025】と上記段落【0066】及び図5(A)の各記載を合わせ見ると、該「ユーザID」は、図5(A)に示される「携帯電話番号」、「E-Mailアドレス」、「氏名」のいずれか、あるいはそれらを組み合わせたものを指していると理解される。

(イ)そして、引用例の段落【0023】などの記載から把握される引用発明の課題からみて、引用発明を具現化する際、上記「携帯電話番号」、「E-Mailアドレス」、「氏名」のいずれか、あるいはそれらの組み合わせの内のどのような情報を「ユーザID」として使用するかは、当業者が適宜決定し得たことであり、それらの内の「携帯電話番号」をユーザIDとして使用することは当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)上記(イ)の結論の正当性は、“アクセス主を特定する情報”として装置固有情報(携帯電話番号)を採用することは、特開2001-61036号公報(平成13年3月6日出願公開。特に、段落【0016】-【0017】、段落【0062】-【0063】及び図4参照。)、及び、特開2001-193324号公報(平成13年7月17日出願公開。特に段落【0005】-【0006】参照。)にも記載されているように周知の技術である、という事実によっても裏付けられる。

(エ)以上のことは、引用発明において、相違点に係る本件補正発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味する。

イ.本件補正発明の効果について
本件補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

ウ.まとめ
したがって、本件補正発明は、引用例に記載された発明、または、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(5)本件補正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。



第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年6月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年2月14日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。再掲すれば、次のとおり。
「情報処理装置と、提供する前記情報を識別する所在情報と前記情報処理装置に固有の情報である装置固有情報とを対応付けて記憶する記憶手段を備える情報提供装置と、にネットワークを介して接続される出力装置であって、
前記装置固有情報の入力を受け付ける固有情報受信手段と、
前記装置固有情報を前記情報提供装置に送信して出力の対象となる前記情報の取得を要求する要求手段と、
前記要求手段の要求に応じて受信した前記情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする出力装置。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例の記載事項は、前記第2[理由]2.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2.で検討した本件補正発明から、
「携帯可能かつユーザが操作する」情報処理装置という限定事項と、
要求手段の要求に応じて受信した前記情報「であり、かつ、前記要求手段が送信した前記装置固有情報により前記記憶手段から特定された所在情報に基づき取得された前記情報」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(3)、(4)に記載したとおり、引用例に記載された発明、または、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明、または、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-12 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-06-29 
出願番号 特願2011-168674(P2011-168674)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 雅也  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
桜井 茂行
発明の名称 出力装置、情報提供装置、情報出力方法、プログラム、及び情報出力システム  
代理人 酒井 宏明  

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