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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施  B27D
管理番号 1304764
審判番号 無効2012-800014  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-02-23 
確定日 2015-09-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第4460618号発明「板状体のスカーフ面加工方法及び装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4460618号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許の経緯概要は以下のとおりである。

平成10年 6月16日 特願平10-186866号出願(原出願)
平成21年 1月 9日 本件特許出願(特願2009-3911号)
平成22年 2月19日 設定登録(特許第4460618号)
平成24年 2月23日差出 本件無効審判請求(書面には2月22日の日付。)
平成24年 5月14日 答弁書(被請求人)
平成24年 7月20日差出 上申書(請求人。書面には7月19日の日付。)
平成24年 9月 5日 上申書(被請求人)
平成24年 9月20日 平成23年(ワ)第29049号事件判決言渡(本件特許権に基づく製造販売差止請求事件の判決言渡。以下,本件特許権に基づく製造販売差止請求事件を「侵害事件」という。)
平成24年10月 4日 上申書(請求人)
平成24年10月23日 審理事項通知書
平成24年11月13日 通知書(口頭審理延期)
平成24年11月21日差出 上申書(請求人。書面には11月19日の日付。)
平成24年12月 5日 審尋(請求人に対して)
平成25年 1月17日差出 上申書(請求人。書面には1月16日の日付。)
平成25年 1月30日 審尋(被請求人に対して)
平成25年 3月 4日 回答書,文書提出命令申立書,文書送付嘱託申立書(被請求人)
平成25年 4月15日受入 上申書(請求人。差出日不明。書面には4月10日の日付。)
平成25年 4月23日 平成24年(ネ)第10078号事件判決言渡(侵害事件の控訴事件判決言渡。以下,侵害事件の控訴事件を「侵害控訴事件」という。)
平成25年 5月 1日 上申書(請求人)
平成25年 6月12日 審理事項通知書
平成25年 6月26日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年 6月27日差出 口頭審理陳述要領書,証人尋問申出書(請求人。書面には6月26日の日付。)
平成25年 7月 1日 上申書(被請求人)
平成25年 7月 1日 上申書(請求人)
平成25年 7月10日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年 7月10日 口頭審理(被請求人の提出した文書提出命令申立書,文書送付嘱託申立書は採用しない。被請求人の提出した証人尋問申出書は採用しない。)
平成25年 7月10日 書面審理通知(口頭審理にて)
平成25年 8月12日 上申書(被請求人)
平成25年 8月12日 上申書(請求人)
平成25年 8月21日 審理終結通知

第2.本件審判事件にかかる両当事者の主張
請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。

1.請求人の主張
請求人は,平成24年2月23日差出の審判請求書において,「特許第4460618号発明の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め(請求の趣旨),以下の理由により,本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下,「本件特許発明1及び2」という。)は特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである旨主張し,証拠方法として甲第2号証の1?甲第9号証の2を提出した。

【無効理由1】
本件特許発明1?2は,甲第2号証の1?甲第9号証の2のとおり,本件特許の原出願の出願前に,日本国内において公然実施されたものであるから,特許法第29条第1項第2号の発明に該当し,特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(なお,審判請求書2頁下から2行?3頁2行の「7.請求の理由」「(2)無効審判請求の根拠」の「ア」には,特許法第29条第1項の何号の規定に基づく主張か明記されていないが,上記アには「本件特許の原出願の出願前に,日本国内において不特定多数人が知り得る状況で実施されたものであるから,」と,審判請求書3頁3?7行の「7.請求の理由」「(2)無効審判請求の根拠」の「イ」には「甲第2ないし甲第9号証のとおり,公然実施された発明に基づいて,」と記載されているので,特許法第29条第1項第2号と解釈した。)

【無効理由2】
本件特許発明1?2は,甲第2号証の1?甲第9号証の2のとおり,公然実施された発明に基づいて,本件特許の原出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の発明に該当し,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

また,請求人は,審判請求書3頁9行?4頁21行の「ア 7.(2)アの請求の根拠(新規性欠如)について」「(ア)根拠の要旨」において,特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない理由として,以下のように主張している。

あ.シンヤン用スカーフカッターについて
あ-1.請求人は,本件特許の原出願の出願日(平成10年6月16日)以前である平成9年9?10月頃,マレーシア国のSHIN YANG PLYWOOD用にスカーフカッター(以下,「シンヤン用スカーフカッター」という。)を国内で生産し,平成9年10月29日?11月2日まで,「ポートメッセなごや」において開催された「第33回名古屋国際木工機械展」に上記シンヤン用スカーフカッターを出品して,譲渡等のため展示し,また上記シンヤン用スカーフカッターを実演して使用した。【実施】

あ-2.展示し実演して使用した上記シンヤン用スカーフカッターは,本件特許発明2(装置)及び本件特許発明1(方法)の構成要件を充足するものである。【構成】

あ-3.上記シンヤン用スカーフカッターを譲渡等のために展示したことにより,不特定多数の来場者が内容を知り得る状況に置かれていた。【公然性】

い.サンテック用スカーフカッターについて
い-1.請求人は,本件特許の原出願の出願日(平成10年6月16日)以前に,宮崎県日向市日知屋字耳川17062番地の2の株式会社サンテック(現商号「株式会社大三商行サンテック事業部」。以下,「サンテック」という。)用にスカーフカッター(以下,「サンテック用スカーフカッター」という。)を生産し,平成9年7月24日,サンテックに譲渡した。【実施】

い-2.譲渡した上記サンテック用スカーフカッターは,本件特許発明2(装置)及び本件特許発明1(方法)の構成要件を充足するものである。【構成】

い-3.上記サンテック用スカーフカッターは,何ら秘密保持義務を負わないサンテックに譲渡された。【公然性】

(証拠方法)
甲第2号証の1:製作仕様書
甲第2号証の2:正式部品表(前切部)
甲第2号証の3:前切部組図
甲第2号証の4:正式部品表(後切部)
甲第2号証の5:後切部組図
甲第3号証の1:第33回名古屋国際木工機械展ガイドブック中表紙
甲第3号証の2:同 目次
甲第3号証の3:同 出品者索引
甲第3号証の4:同 会場図
甲第3号証の5:同 小間割図
甲第3号証の6:同 株式会社名南製作所紹介ページ
甲第3号証の7:同 橋本電機工業株式会社紹介ページ
甲第4号証 :スカーフジョインターカタログ,橋本電機工業株式會社
甲第5号証の1:展示用カバー打合資料
甲第5号証の2:展示用カバー図面
甲第5号証の3:カバー取付図
甲第6号証の1:‘97木機展ビデオ(DVD)
甲第6号証の2:甲第6号証の1のビデオのタイムライン
甲第7号証の1:延払条件付売買契約書
甲第7号証の2:目的物件受領書
甲第7号証の3:WOODMIC 1997 3 No.168,株式会社 ウッドミック,1997年3月10日,12?13,62頁
甲第7号証の4:WOODMIC 1997 7 No.172,株式会社 ウッドミック,1997年7月10日,12?15,66頁
甲第8号証の1:製作仕様書
甲第8号証の2:正式部品表(前切部)
甲第8号証の3:スカーフカッター前切部組図(MK01041101)
甲第8号証の4:正式部品表(後切部)
甲第8号証の5:スカーフカッター後切部組図(MK01041201)
甲第8号証の6:前切部上面図拡大図
甲第8号証の7:前切部側面図拡大図
甲第8号証の8:プレート設計図
甲第8号証の9:株式会社サンテックに対するプレート見積書
甲第9号証の1:ビデオ(DVD)
甲第9号証の2:甲第9号証の1のビデオ(DVD)のタイムライン

請求人は,平成24年7月20日差出の上申書において,侵害事件の証拠のうち,本件無効審判において提出していない証拠を甲第10号証の1?甲第37号証として提出した。

(証拠方法)
甲第10号証の1:平行合板作製装置の製造年月等に関する事実実験公正証書
甲第10号証の2:公正証書用ビデオデータ 2012年1月18日撮影
甲第10号証の3:甲第10号証の2のビデオ(DVD)のタイムライン
甲第11号証 :実開昭57-189802号公報
甲第12号証 :特開平3-146301号公報
甲第13号証の1:西山俊道による平成24年1月11日付け陳述書
甲第13号証の2:西山俊道による平成24年1月31日付け陳述書
甲第14号証 :実公平4-7922号公報
甲第15号証 :スカーフマシン ノコテストの設計図(第1設計図)
甲第16号証 :スカーフマシン ノコテストの部品表
甲第17号証 :登録実用新案第3002948号公報
甲第18号証 :スカーフマシンTEST押エシリンダー取付図の設計図(第2設計図)
甲第19号証 :プレートの設計図
甲第20号証 :スカーフマシンTEST機押エシリンダー取付図の部品表
甲第21号証 :スカーフマシンTEST押エシリンダー取付図の設計図(第3設計図)
甲第22号証 :プレートの設計図
甲第23号証 :スカーフマシンTEST機押エシリンダー取付図の部品表
甲第24号証 :写真
甲第25号証 :長澤潔による平成24年1月11日付け陳述書
甲第26号証 :「宮崎県にて杉のLVLを造る計画案について」という会議の議事録
甲第27号証 :「(株)サンテック殿向 単板縦継機の方向性について」という会議の議事録
甲第28号証 :「(株)サンテック殿向 単板縦継機」仕様書と説明されている手書きの書類
甲第29号証 :特開平10-128706号公報
甲第30号証 :日本合板工業組合連合会のホームページの画面
甲第31号証 :健康安全性と性能信頼性を高める合板技術講習会テキスト
甲第32号証 :「SJ-420型スカーフジョインター」講義レジュメ
甲第33号証 :写真撮影報告書
甲第34号証 :スライド写真
甲第35号証の1:ビデオ(DVD)
甲第35号証の2:甲第35号証の1のビデオ(DVD)のタイムライン
甲第36号証 :講演の原稿
甲第37号証 :健康安全性と性能信頼性を高める合板技術講習会受講者名簿

請求人は,平成24年10月4日付け上申書において,本件特許に基づく製造販売差止請求事件(平成23年(ワ)第29049号)の判決を甲第38号証として提出した。

(証拠方法)
甲第38号証 :平成23年(ワ)第29049号判決

請求人は,平成24年11月21日差出の上申書において,
(1)侵害事件において提出したのは甲第2号証の4でなく,新たに提出した甲第39号証である(2頁23?26行),
(2)甲第2号証の5,甲第8号証の8は,不鮮明なコピーで文字が判読しがたいものであったため,同一書面のクリーンコピーを甲第40号証,甲第41号証として改めて提出する(2頁27行?3頁1行,3頁9?12行),
(3)先に提出した甲第9号証の1?2,及び,甲第35号証の1?2は,各DVDと各タイムラインの関係を取り間違えたから,甲第9号証の1のDVDに対応するタイムラインは甲第35号証の2であると訂正すると共に,甲第9号証の2のタイムラインに対応するDVDは提出されていなかったことが判明したので,甲第9号証の2のタイムラインに対応するDVDとして甲第42号証を提出する(3頁19?29行),
旨主張し,甲第39?42号証を提出した。

(証拠方法)
甲第39号証 :正式部品表(後切部)
甲第40号証 :後切部組図
甲第41号証 :プレート設計図
甲第42号証 :ビデオ(DVD)

請求人は,平成25年1月17日差出の上申書において,
(1)サンテック用スカーフカッターの具体的構成は,甲第8号証の1?7,甲第10号証の1の各証拠を総合的に考慮し,甲第11?12,43?44号証の周知慣用技術等を併せて検討すれば理解できる(8頁5?10行),
(2)甲第9号証の1のビデオ(DVD)は1997年5月に撮影されたサンテック用スカーフジョインター(サンテック用スカーフカッター)の動作状況であるが,甲第9号証の1のビデオ(DVD)には,別紙1のとおり1997年3月13?14日,1997年6月18日に撮影された甲第45?48号証のビデオ(DVD)映像が一部含まれていることが判明した(12頁8行?13頁末行),
(3)甲第34号証のスライドには,甲第47?48号証のビデオ(DVD)映像のスクリーンショットが別紙2のとおり用いられているから,甲第47?48号証のビデオ(DVD)は,遅くとも1997年11月13日以前に撮影されたものであることが分かる(14頁1?6行),
(4)請求人自社工場で撮影した甲第45?46の各ビデオ(DVD)に映っているスカーフジョインターとサンテック工場内で撮影された甲第9号証の1,甲第47?48号証の各ビデオ(DVD)に映っているスカーフジョインターが同一の機械であることは,各ビデオ(DVD)の映像を対比すれば一目瞭然であり,甲第9号証の1,甲第45?48号証の各ビデオ(DVD)の映像が,本件特許の原出願前に存したサンテック用スカーフジョインターを撮影したものであることは,明らかである(14頁9?16行),
(5)甲第50号証の1?甲第51号証(別紙3は甲第50号証の2)から,甲第8号証の7のプレートは板状体を押圧している(29頁4行?31頁末行),
旨主張し,甲第43?51号証を提出した。

(証拠方法)
甲第43号証 :特開平6-122101号公報
甲第44号証 :実公平8-4241号公報
甲第45号証 :ビデオ(DVD)
甲第46号証 :ビデオ(DVD)
甲第47号証 :ビデオ(DVD)
甲第48号証 :ビデオ(DVD)
甲第49号証 :写真撮影報告書
甲第50号証の1:スカーフカッター前切部組図(MK01041101)
甲第50号証の2:サンテック用スカーフカッター装置図面
甲第51号証 :ガイド付き薄形シインダMGQ Seriesの製品カタログ

請求人は,平成25年4月15日受入の上申書において,被請求人が平成25年3月4日付けで提出した文書提出命令申立書,及び,文書送付嘱託申立書において提出を求めている文書は,取り調べる必要がなく却下されるべきである旨主張すると共に(4頁21行?5頁3行),侵害控訴事件の書類を添付資料1?7として提出した。

(証拠方法)
添付資料1:侵害控訴事件において控訴人が提出した文書提出命令申立書
添付資料2:侵害控訴事件において控訴人が提出した文書提出命令申立書(2)
添付資料3:侵害控訴事件において控訴人が提出した文書提出命令申立書(3)
添付資料4:侵害控訴事件において被控訴人が提出した文書提出命令申立書(1)及び同(2)に対する意見書
添付資料5:侵害控訴事件において被控訴人が提出した控訴準備書面(1)
添付資料6:侵害控訴事件の第2回口頭弁論調書
添付資料7:侵害控訴事件において被控訴人が提出した弁論再開申立に対する意見書

請求人は,平成25年5月1日付け上申書において,侵害控訴事件の判決を提出した。

請求人は,平成25年6月27日差出の口頭審理陳述要領書において,サンテック用スカーフカッターは,何ら秘密保持義務を負わないサンテックに譲渡された旨主張すると共に(2頁20?24行),平成25年6月27日差出の証人尋問申出書を提出した。

請求人は,平成25年7月1日付け上申書において,甲第43?51号証と侵害事件及び侵害控訴事件の証拠との対応関係を示す対応表2を提出した。

請求人は,平成25年8月12日付け上申書において,
(1)被請求人提出の平成25年7月10日付け口頭審理陳述要領書において,被請求人は「今回提出の乙第40号証によれば,甲第9号証の1のビデオの装置と甲第46号証のビデオの装置とは同一の装置でない」旨主張しているが,
甲第9号証の1のビデオの装置と甲第46号証のビデオの装置とは別個の装置ではなく,乙第40号証の1?2枚目において被請求人が指摘する各相違点は,本件審判の対象である「スカーフカッター装置」とは別の装置に関するものであり,乙第40号証の3枚目において被請求人が指摘する各相違点は,本件審判における争点である,板状体がプレートを押圧するか否かに関する箇所・部材等に関わるものではない(2頁7?25行),
(2)乙第40号証の1枚目のオートフィーダー装置は,当初甲第52号証の1のように設計して製造し,1997年3月14日請求人の工場内において内覧会を行ったうえ,総合試運転日である同月27日までに同装置をサンテックに納入し,その後サンテック工場において甲第52号証の2のようにサクションヘッド後端部にもシリンダを追加し,2箇所でサクションヘッド全体を上下動させる方式に変更したが,オートフィーダ装置としては同じものである(3頁4?28行),
(3)請求人の内部規格(甲53号証)に基づき,サクションヘッド全体の色を塗装し直したが,オートフィーダ装置としては同じものである(4頁2?9行),
旨主張すると共に,甲第52号証の1?甲第53号証を提出した。

(証拠方法)
甲第52号証の1:SJ-44型スカーフジョインタ単板フィーダの設計図
甲第52号証の2:スカーフジョインターオートフィーダー昇降部(改造)の設計図
甲第53号証 :安全色のHIS規格(内部規格)の書類

2.被請求人の主張
被請求人は,平成24年5月14日付け答弁書において,
(1)被請求人は,海外で押圧部材や挟持状態の有用性が認められ,乙第1号証の1?8の特許を取得した(7頁19?28行),
(2)挟持とガイドの意味が異なることを示すために,乙第2号証の1?2を提出する(8頁9?17行),
(3)甲第8号証の7では,サンテック用スカーフカッターが対応部位を押圧する押圧部材を有する構成とはいえないことを示すために,乙第3?4号証を提出する(14頁14行?16頁18行),
(4)ガイドの用語や概念を説明するために,乙第6?9号証を提出する(16頁29行?17頁10行),
(5)ガイドと押圧及び挟持の違いを示すために,乙第10号証を提出する(17頁11?15行),
(6)切削速度が変更されていることを示すために,乙第11?12号証を提出する(18頁28行?20頁14行),
旨主張し,乙第1号証の1?乙第12号証を提出した。

(証拠方法)
乙第1号証の1:米国特許第6112786号の特許証及び公報のフロントページの写し
乙第1号証の2:カナダ特許第2275013号の特許証及び公報のフロントページの写し
乙第1号証の3:欧州特許第0968797号の特許証及び公報のフロントページの写し
乙第1号証の4:韓国特許第10-0401396号の特許証及び公報のフロントページの写し
乙第1号証の5:台湾特許第133399号の特許証及び公報のフロントページの写し
乙第1号証の6:ニュージーランド特許第336264号の特許証及び公報のフロントページの写し及びニュージーランド特許庁のホームページより取得した特許情報の打ち出し
乙第1号証の7:マレーシア特許第MY-117181-A号の特許証及び公報のフロントページの写し
乙第1号証の8:インドネシア特許第0012377号の特許証及び公報のフロントページの写し
乙第2号証の1:特許技術用語集,第3版,日刊工業新聞社,2006年8月31日,11,40頁
乙第2号証の2:新村出編,広辞苑,第三版,株式会社岩波書店,昭和60年11月5日,393頁
乙第3号証 :甲第8号証の7に一部着色した検証図
乙第4号証 :ガイド付き薄型シリンダの図面
乙第5号証 :正常材とアバレ材の比較写真
乙第6号証 :特開平8-281608号公報
乙第7号証 :特開平9-150402号公報
乙第8号証 :特開平10-291204号公報
乙第9号証 :特開昭52-41204号公報
乙第10号証 :プレートのガイド部材と押圧部材の働きの相違を示す概念図
乙第11号証 :サンテック用スカーフカッターのスカーフ切削速度及び動作サイクルの検証タイムライン
乙第12号証 :サンテック用スカーフカッターのスカーフ切削速度及び推測グラフ

被請求人は,平成24年9月5日付け上申書において,侵害事件において提出した乙第13?15号証を提出した。

(証拠方法)
乙第13号証:長谷川英生による陳述書
乙第14号証:特願平10-186866号(原出願)の平成20年5月26日付け意見書
乙第15号証:工業用語大辞典,第5版,日本規格協会,2001年3月30日,112,310頁

被請求人は,平成25年3月4日付けの回答書において,
(1)甲第9号証の1のビデオ(DVD)の,後切部の(b)のビデオの映像((03:08?04:05)。平成24年12月5日付け審尋「2-2-14.甲第9号証の1」,及び,請求人平成25年1月17日差出の上申書別紙1参照。)から,青色の部材が板を押圧し挟持しているとはいえないことを示すために,乙第16?18号証を提出する(5頁15行?8頁11行),
(2)押圧挟持かガイドかは,青色部材の摩耗進行速度又は交換頻度で判別できることを示すために,押圧挟持している場合の交換頻度を示す乙第19?26号証を提出する(8頁12行?9頁7行),
(3)押圧挟持かガイドかは,青色部材に係る取扱説明書の記載が有用であり,請求人又は訴外サンテックが取扱説明書を所持していることは疑問の余地がないことを示すために,乙第27?28号証を提出する(9頁21行?11頁11行),
(4)甲第9号証の1のビデオ(DVD)において,青色の部材が板を押圧挟持していないことを示すために,乙第29?35号証を提出する(16頁6行?18頁1行,20頁末行?21頁27行,26頁末行?28頁末行),
旨主張し,乙第16?35号証を提出した。

(証拠方法)
乙第16号証:あばれのある板をガイドする場合に関する後切部の概念図
乙第17号証:写真(1押圧挟持・ガイド双方なし 2ガイド 3押圧挟持の場合のスカーフ切削面)
乙第18号証:被請求人作成のビデオ
乙第19号証:報告書(被請求人取締役長谷川英生)
乙第20号証:同上
乙第21号証:写真(被請求人製品の新品プレートの形状)
乙第22号証:写真(同摩擦後のプレートの形状)
乙第23号証:被請求人製品のプレートの売上データのプリント
乙第24号証:同プレートの納品書
乙第25号証:同プレートの送り状
乙第26号証:報告書(訴外株式会社オロチ川村孝典)
乙第27号証:報告書(被請求人取締役長谷川英生)
乙第28号証:英文取扱説明書(抜粋・訳文付き)
乙第29号証:甲第10号証の2のビデオから抽出したスクリーンショット
乙第30号証:甲第10号証の2(と同じ侵害事件・侵害訴訟事件の乙第49号証)のビデオから抽出したスクリーンショット
乙第31号証:プレート図面
乙第32号証:JISハンドブック59製図,日本規格協会,2012年6月21日,7,223,226?228頁
乙第33号証:初心者のための機械製図,第3版,森北出版株式会社,2011年12月20日,40?41,187,196,209頁
乙第34号証:新人設計者のための機械設計手ほどき帖,日刊工業新聞社,2011年9月22日,56?57頁
乙第35号証:甲第8号証の3(と同じ侵害事件・侵害訴訟事件の乙第7の3号証)を被請求人が一部着色したもの

また,平成25年3月4日付けの文書提出命令申立書において,請求人に対して,
(1)甲第9号証の1のビデオに映っている青色の部材の納入・購入の履歴を示す,納品書・送り状・見積書,発注書等に関する書類一切,
(2)甲第9号証の1のビデオに映っている青色の部材の装置における,青色の部材の交換手順,機能又は仕様を示す取扱説明書,仕様説明書ないしこれらに関する書類一切,
について,装置引き渡し時からその後10年分の提出を求める旨の申立をすると共に(2頁1?15行),
平成25年3月4日付けの文書送付嘱託申立書において,サンテックに対して,
(1)甲第9号証の1のビデオに映っている青色の部材の装置における,青色の部材の交換手順,機能又は仕様を示す取扱説明書,仕様説明書ないしこれらに関する書類一切,
について,装置引き渡し時からその後10年分の提出を求める旨の申立をした(2頁1?8行)。

被請求人は,平成25年6月26日付けの口頭審理陳述要領書において,
(1)甲第9号証の1のビデオ(DVD)のサンテック工場で撮影した映像の中に,明らかに別の工場で撮影された映像が混在していることを示すために,乙第36号証を提出する(4頁1?23行),
(2)甲第9号証の1のビデオ(DVD)は,重要な部分が編集された疑いが強く,撮影日・撮影場所が不明である(4頁24?25行),
(3)甲第9号証の1のビデオ(DVD)の,後切部の(b)のビデオの映像(03:08?04:05)から,青色の部材が板を押圧し挟持しているとはいえないことを示すために,甲第9号証の1の後切部の(b)のビデオと乙第18号証をつなげた乙第37号証を提出する(8頁7?24行),
(4)被請求人の社長以下従業員が,サンテック工場の見学を拒否されたことを示すために,乙第38号証を提出する(9頁20行?10頁3行),
(5)乙第38号証から,サンテック工場は社会通念上ないし商慣習上守秘義務のある範囲の会社等にしか見せないことが分かるので,サンテック工場は守秘義務を負っているといえ,公然性は否定されるものである(9頁20行?10頁3行),
旨主張し,乙第36?38号証を提出した。

(証拠方法)
乙第36号証:甲第9号証の1(と同じ侵害事件・侵害訴訟事件の乙第45)に係る第1の映像と第2の映像を区別した表
乙第37号証:甲第9号証の1の後切部の(b)のビデオと乙第18号証をつなげたビデオ(DVD)
乙第38号証:被請求人が受領したサンテック工場の見学会に関する手紙

被請求人は,平成25年7月1日付け上申書において,平成25年6月27日付けで最高裁判所に提出した乙第39号証の上告受理申立理由書を提出した。

(証拠方法)
乙第39号証:上告受理申立理由書

被請求人は,平成25年7月10日付けの口頭審理陳述要領書において,平成25年6月26日付けの口頭審理陳述要領書において既に主張している内容以外で,
(1)甲第9号証の1のビデオ(DVD)の装置と甲第46号証のビデオの装置とが同一の装置でないことを示すために,乙第40号証を提出する(7頁21?27行),
(2)乙第38号証のサンテック工場見学の開催案内の記事である乙第41号証を提出する(11頁24行?12頁7行),
旨主張し,乙第40?41号証を提出した。

(証拠方法)
乙第40号証:甲第9号証の1のビデオ(DVD)の装置と甲第46号証のビデオ(DVD)の装置の相違を示すキャプチャ画像(楕円印のみ追加加工)
乙第41号証:乙第38号証のサンテック工場見学の開催案内の記事

被請求人は,平成25年8月12日付け上申書において,
(1)請求人は,1997年3月13?14日にかけての内覧会,同年7月10日発行の雑誌の記事(甲第7号証の4)に係る記者の取材,同年7月24日におけるサンテックへの譲渡,のサンテック用スカーフカッターに関する3つの行為があった日以降において,サンテック用スカーフカッターに関する特許出願(乙第42号証[平成9年8月20日出願],乙第43号証[平成9年9月25日出願],乙第44号証[平成10年1月5日出願])を行っているから,
内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡,の3つの行為により,サンテック用スカーフカッターが公然実施され,新規性を失った状態となった後,請求人がサンテック用スカーフカッターに関する特許出願をしたとは考えられず,内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡,の3つの行為は,サンテック用スカーフカッターに関する特許出願(乙第42?44号証)の新規性が失われないように,秘密状態を保持したまま行われたものであると強く推認できるので,
内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡,の3つの行為によってサンテック用スカーフカッターが公然実施されたものと認定すべきではない(1頁下から5行?3頁12行),
(2)請求人は,平成25年1月17日差出の上申書18頁5行以下の「2.」において,甲第7号証の1の売買契約書に秘密保持条項が存在しないことをもって,譲渡先のサンテックに秘密保持義務がないとしているが,
社会通念上又は商慣習上,新技術を秘密扱いすることが暗黙のうちに求められ,期待される場合においても秘密を保つべき関係が生じることについて,東京高裁平成12年12月25日判決(乙第49号証)があるから,本件において甲第7号証の1の売買契約書に秘密保持事項が存在しなかったとしても,サンテック用スカーフカッターの譲渡に関しサンテックは社会通念上又は商慣習上の秘密保持義務を負っているといえるので,サンテックへの譲渡において,公然性は存在しない(4頁8行?5頁6行),
(3)甲第7号証の4の13頁下段22?25行には,「工場内部の写真は,遠慮して欲しいとの申し出だったが,本誌読者の為に全体写真のみ一部許可して貰った。雰囲気の一端なりとも感じて頂けよう。」と記載されているから,サンテックは記者の取材を制限することで秘密保持義務を果たすように行動していたといえ,記者の取材の事実からサンテックへの譲渡における公知性の存在を認めることはできない(5頁下から3行?6頁15行),
(4)甲第9号証の1のビデオ(DVD)における,本件特許発明の主要部である押圧部材に相当し得る部材が映っている部分は,前切部の(a)のビデオの映像(02:32?03:07)及び,後切部の(b)のビデオの映像(03:08?04:05)のみであり,これらは何れも請求人が自認するように,甲46号証のビデオの一部を編集により挿入した部分であり,
前切部の(a)のビデオの映像(02:32?03:07)及び,後切部の(b)のビデオの映像(03:08?04:05)と,甲第9号証の1のビデオ(DVD)の映像のうちの他の部分の映像[前切部の(a)のビデオの映像(02:32?03:07)及び,後切部の(b)のビデオの映像(03:08?04:05)以外の部分の映像]とを比較すると,乙第40号証の1?3頁の楕円で囲んだ部分で相違するから,甲第9号証の1のビデオに係るサンテック用スカーフカッターにおいて,本件特許発明の主要部は看て取れない(6頁17行?8頁27行),
(5)乙第50号証の25頁2?8行には「従来の『木工機械』には,『取扱説明書』のないもの(途中で紛失してなくなったものを含めて)が,しばしば見られた。しかし今回のPL法の施行(平成7年7月1日)によって,このようなことは許されなくなった。 今後はどのような場合でも(例え中古機械でも),取扱説明書のない機械は『欠陥のある製造物』と見なされ,この機械によって災害が発生したときは,賠償の責任があるとされることになった。・・・と考えられるからである。」と記載され,目次の次頁には「PL対応に係る木工機械安全化対策調査研究委員会委員名簿」があり,中段あたりに「杉山三男 橋本電機工業(株)取締役電気部長」と記載されているから,
サンテック用スカーフカッターの取扱説明書は,請求人が所持しているべきであり,所持しているはずであり,取扱説明書を提出すれば本件特許発明の構成の具備を示すことが可能であったにもかかわらず,これを敢えて怠った請求人の証拠提出態度は,事実認定において十分斟酌されるべきである(11頁13行?13頁1行),
旨主張し,乙第42?50号証を提出した。

(証拠方法)
乙第42号証:特開平11-58314号公報
乙第43号証:特開平11-99503号公報
乙第44号証:特開平11-192602号公報
乙第45号証:甲9号証の1のビデオ(圧締装置)のキャプチャ写真及び説明
乙第46号証:甲4号証のカタログの見開き頁の写しの赤字印を付したもの
乙第47号証:甲9号証の1のビデオ(キャリング装置)のキャプチャ写真及び説明
乙第48号証:甲9号証の1のビデオ(糊付装置)のキャプチャ写真及び説明
乙第49号証:別冊ジュリスト170号 特許判例百選[第三版],株式会社有斐閣,2004年2月20日,22?23頁
乙第50号証:平成5年度 PL対応に伴う木工機械の安全化具体策に関する調査研究報告書, 社団法人 全国木工機械工業会,平成6年9月,目次及びその次頁,1頁,25?36頁

第3 各号証の記載事項
請求人の提出した甲各号証には,以下の記載事項と発明が認められる。なお,下線は当審で付した。
1.「シンヤン用スカーフカッター」に関する甲第2号証の1?甲第6号証の2の記載事項
1-1.甲第2号証の1
甲第2号証の1は,製作仕様書であり,
1頁の「作成日」,「注文主」,「型式・名称」の欄には,それぞれ「1997,08,04」,「SHIN YANG PLYWOOD」,「SJ-420型スカーフジョイタ」と,
2頁の「No.」「2」の「組立図」,「備考」の欄には,それぞれ「MK 01041111」,「前切部組図」と,
2頁の「No.」「3」の「組立図」,「備考」の欄には,それぞれ「MK 01041211」,「後切部組図」と,記載されている。

1-2.甲第2号証の2
甲第2号証の2は,正式部品表(前切部)であり,
1?4頁の「作成日」,「機種名」,「名称」,「組図・番号」の欄には,それぞれ「1997,07,30」,「スカーフジョインタ SJ-420」,「前切部組図」,「MK01041111」と,記載されている。

1-3.甲第2号証の3
甲第2号証の3は,前切部組図であり,
右上には,「97 07 18」,「SJ-40型スカーフジョインタ」,「前切部組図」,「MK01041111」と,記載されている。

1-4.甲第2号証の4
甲第2号証の4は,正式部品表(後切部)であり,
1?3頁の「作成日」,「注文主」,「機種名」,「名称」,「組図・番号」の欄には,それぞれ「96.12.02」,「(株)サンテック」,「スカーフジョインタ SJ-44」,「後切部」,「MK01041201」と,記載されている。
甲第2号証の4は,甲第8号証の4と同じ内容が記載された正式部品表(後切部)である。

1-5.甲第2号証の5
甲第2号証の5は,後切部組図であり,
右上には,「97 07 18」,「SJ-40型スカーフジョインタ」,「後切部組図」,「?K 010???11」と(「?」の所の記載は,読み取れない。),記載されている。

1-6.甲第3号証の1
甲第3号証の1は,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブック中表紙であり,
上には,「第33回名古屋国際木工機械展 1997年10月29日(水)?11月2日(日) ポートメッセなごや」と,記載されている。

1-7.甲第3号証の2
甲第3号証の2は,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブック目次であり,
上には,「Mokkiten Nagoya’97」と,記載されている。

1-8.甲第3号証の3
甲第3号証の3は,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブック出品者索引であり,
1頁左上には,「出品者索引 (50音順)」と,
2頁には,「橋本電機工業株式会社 228」,「株式会社 名南製作所 258」と,記載されている。

1-9.甲第3号証の4
甲第3号証の4は,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブック会場図である。

1-10.甲第3号証の5
甲第3号証の5は,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブック小間割図であり,
右下の「3号館」の所には,「橋本電機工業 3・G703」,「名南製作所 3・G701」と,記載されている。

1-11.甲第3号証の6
甲第3号証の6は,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブックの被請求人である株式会社名南製作所紹介ページであり,
左下には,「Booth No.3-G701 株式会社 名南製作所」と,記載されている。

1-12.甲第3号証の7
甲第3号証の7は,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブックの請求人である橋本電機工業株式会社紹介ページであり,
左下には,「Booth No.3-G703 橋本電機工業株式会社」と,記載されている。

1-13.甲第4号証
甲第4号証は,スカーフジョインターカタログであり,
2頁中段には「白抜き丸3 スカーフカッター」と,
3頁左下には「スカーフカッター 単板を回転刃によりやさしくスカーフ加工するため欠けが非常に少なく平滑な加工面が得られます。」と,
4頁の「Model 型式」の欄には,「SJ-420」と,
4頁の右下には,「’97.07 1000Printed in Japan」と,記載されている。

1-14.甲第5号証の1
甲第5号証の1は,展示用カバー打合資料である。

1-15.甲第5号証の2
甲第5号証の2は,展示用カバー図面である。

1-16.甲第5号証の3
甲第5号証の3は,カバー取付図である。

1-17.甲第6号証の1
甲第6号証の1は,‘97木機展ビデオ(DVD)である。
上記「1-7.」(甲第3号証の2)で言及しているように,第33回名古屋国際木工機械展のガイドブック目次の上には「Mokkiten Nagoya’97」と記載されており,「‘97木機展」が「第33回名古屋国際木工機械展」を意味することは明らかである。
ビデオには,甲第6号証の2の1頁右欄に記載された「ご来場の皆様にご案内致します。木機展名古屋97では・・・」と同じ場内アナウンスが流れる場面が収録されている。
しかしながら,甲第6号証の1のビデオの映像には,型式・機種名を表す「SJ-40」等の文字が映っている映像はない。
甲第6号証の2の10頁右の「12:32:15PMから12:32:56PM」「・画面右端中央の青い部品が本件前押さえ。・丸鋸の進行方向前で,板を押さえながら切削していることがわかる。甲第2の1ないし2の5号証参照。」の記載に相当する箇所の前後のビデオには,丸鋸が映っている映像はなく,青い部材が左右方向に移動している点は映っているが,青い部材が板を挟持する方向(上から下方向)に移動する映像は映っておらず,青い部材が板を押さえているといえる映像も映っていない。
ビデオには,丸鋸は映っていないので,「刃物受台の板状体を支持する支持面に対し傾斜して備えられた回転切削刃物を,当該回転切削刃物の刃先と前記刃物受台の刃先当接部とを当接させ乍ら,・・・前記板状体の端部をスカーフ面に切削加工」している点,「回転切削刃物と一体化して相対的直線移動する押圧部材」も映っていない。

1-18.甲第6号証の2
甲第6号証の2は,甲第6号証の1のビデオのタイムラインであり,甲第6号証の1のビデオの内容を説明したものである。
1?17頁の下側の写真には,「1997 11 2」と,
7頁右欄,10頁右欄,11頁右欄,13頁右欄,14頁右欄には,それぞれ「SJ-40型スカーフカッター装置の映像。」,「スカーフカッターSJ-40型の動作実演。」,「スカーフカッターSJ-40型を映した映像。」,「スカーフカッターSJ-40型に送り出される。」,「スカーフカッターSJ-40型装置の丸鋸部分を下手側から撮影した映像。」と,記載されているが,
甲第6号証の2には,型式・機種名を表す「SJ-40」等の文字が映っている甲第6号証の1のビデオの映像の写真はない。

2.「サンテック用スカーフカッター」に関する甲第7号証の1?甲第9号証の2の記載事項
2-1.甲第7号証の1
甲第7号証の1は,延払条件付売買契約書であり,
1頁の上部には,「契約番号 DW97-0001-0 延払条件付売買契約書 1997年5月1日」と,
1頁の「(住所) 買主(用) (氏名)」,「売主(乙)」,「(1)主な物件名」,「(5)検査期限」の欄には,それぞれ「日向市日知屋字耳川17062番地の2 株式会社サンテック 代表取締役 石川靖彦」,「大阪府大阪市北区堂島浜2-2-28 住商リース株式会社」,「LVL製造装置 1式 (物件名・数量,製造者,仕入先,物件設置場所は添付別紙記載の通り)」。「1997年7月」と,記載されている。

2-2.甲第7号証の2
甲第7号証の2は,目的物件受領書であり,
1頁の「売主」,「(住所) (買主) (氏名)」,「目的物件受渡完了日 (検査終了日)」,「目的物件の表示」の欄には,それぞれ「住商リース株式会社 御中」,「日向市日知屋字耳川17062番地の2 株式会社サンテック 代表取締役 石川靖彦」,「1997年7月24日」,「LVL製造装置 1式」と,
1頁には,「貴社と弊社との間で締結した1997年5月1日付延払条件付売買契約(契約番号 DW 97-0001-0)第3条第1項にもとづき,下記目的物件の検査の結果上記契約に適合し,かつ瑕疵がないことを確認しましたので,これを本日正に受領しました。」と,
2頁の「項」「14」の「物件名」,「メーカー名」,「数量」の欄には,それぞれ「単板縦継機」,「橋本電機工業(株)」,「3基」と,
4頁右欄には,「仕入先 住友商事株式会社 物件設置場所・・・・・宮崎県日向市日知屋字耳川17062-2 株式会社サンテック」と,記載されている。

2-3.甲第7号証の3
甲第7号証の3は,WOODMIC 1997 3 No,168であり,
12頁中段には,「宮崎県日向市の細島港4区地内約一万坪の敷地に現在,(株)サンテック(〒八八三,宮崎県日向市日知屋字耳川一七〇六二ノ二,石川靖彦社長,・・・)の,国産スギ材を利用したLVL(単板積層材)生産工場が着々と建設中であるが,」と,
12頁下段?13頁中段には,「細島港4区に奥行き一五〇メートル,幅六〇メートルの工場上屋(約五億円)を建て,内部の加工機械設備として,まず・・・エクスツルーダー(単板を縦継ぎする橋本電機工業製),・・・等のLVLつまり単板積層材を造る為の機械設備約一二億円を据え,記事の出る頃は試運転も終えているはずである。」と,
13頁中段には,「▲着々と準備が進められるサンテックLVL工場外観」,「LVLのサンプルとムキ芯」と,
62頁の下欄には「1997年3月10日発行 発行所 株式会社 ウッドミック」と,記載されている。
なお,甲第7号証の3の住所は,甲第7号証の1?2の住所と「大字」,「字」の有無の点で異なるが,番地は甲第7号証の1?2と同一なので,住所における「大字」,「字」の有無については,甲第7号証の1?2の記載に統一した。甲第7号証の4,甲第32号証の資料1の住所の記載についても同じ。

2-4.甲第7号証の4
甲第7号証の4は,WOODMIC 1997 7 No,172であり,
12頁上段には,「国産スギ材の利用を主眼においたLVL(平行合板)生産工場の(株)サンテック(〒八八三,宮崎県日向市日知屋字耳川一七〇六二ノ二,石川靖彦社長,・・・)がこのほど本格的な操業を開始した。本誌今年三月号で工場建設中の話題を提供したが,今回さっそく操業開始目前のサンテックLVL工場に押しかけ,スギの工業的利用の一つの可能性を探った。」と,
13頁上段には,「乾燥が終わった定尺の単板は,長さ六メートルにスカーフジョインターという機械で縦継ぎされる。幅は一メートルだ。」と,
13頁中段?下段には,「一連の単板製造,乾燥,糊付け,圧締作業は従来の針葉樹合板製造工程と同じである。多少機械の仕様が異なるのみであるが,単板ジョイント性能を上げる為の,或いは歩留りを向上する為の工夫は色々と施されているという。代表的な機械は,・・・,スカーフジョインター(単板を縦継ぎする=橋本電機工業製),・・・,その他を含め機械設備合計は約一二億円に上る。・・・工場内部の写真は,遠慮して欲しいとの申し出だったが,本誌読者の為に全体写真のみ一部許可して貰った。」と,
14頁中段には,「▲LVL生産状況を見る(株)サンテックの石川靖彦社長(左)と古川哲也専務」,「▲見学通路から工場LVL生産ラインを見る」,「▲見学通路からLVL小割ラインを見る」と,
66頁の下欄には「1997年7月10日発行 発行所 株式会社 ウッドミック」と,記載されている。

2-5.甲第8号証の1
甲第8号証の1は,製作仕様書であり,
1頁の「納期」,「作成日」,「注文主」,「型式・名称」,「板厚」の欄には,それぞれ「1996・12・25」,「1996・12・25」,「(株)サンテック」,「SJ-44型スカーフジョインタ」,「3.2mm」と,
2頁の「No.」「20」の「組立図」,「部品表名称」の欄には,それぞれ「MK01041101」,「前切部」と,
2頁の「No.」「23」の「組立図」,「部品表名称」の欄には,それぞれ「MK01041201」,「後切部」と,記載されている。

2-6.甲第8号証の2
甲第8号証の2は,正式部品表(前切部)であり,
1,3頁(2頁は添付されていない)の「機種名」,「名称」,「組図・番号」の欄には,それぞれ「スカーフジョインタ SJ-44」,「前切部」,「MK01041101」と,
1頁の「納期」,「作成日」,「番号」「12」の「名称」,「図面番号」の欄には,それぞれ「1996・12・25」,「1996.12.02」,「プレート」,「MB07300804」と,
3頁の「番号」「53」の「名称」,「型式・寸法」の欄には,それぞれ「ネオプレンゴム」,「2T*50W*1000L ネオプレンゴム リョウメンテープツキ」と,記載されている。

2-7.甲第8号証の3
甲第8号証の3は,スカーフカッター前切部組図(MK01041101)であり,
右上には,「’96.11.27」,「SJ-44型スカーフジョインタ」,「前切部」,「MK01041101」と,記載されている。

2-8.甲第8号証の4
甲第8号証の4は,正式部品表(後切部)であり,
1?3頁の「機種名」,「名称」,「組図・番号」の欄には,それぞれ「スカーフジョインタ SJ-44」,「後切部」,「MK01041201」と,
1頁の「納期」,「作成日」,「番号」「12」の「名称」,「図面番号」の欄には,それぞれ「1996・12・25」,「1996.12.02」,「プレート」,「MB07300804」と,記載されている。

2-9.甲第8号証の5
甲第8号証の5は,スカーフカッター後切部組図(MK01041201)であり,
右上には,「’96.11.27」,「SJ-44型スカーフジョインタ」,「後切部」,「MK01041201」と,記載されている。

2-10.甲第8号証の6
請求人は,甲第8号証の6は前切部上面図拡大図(甲第8号証の3の左下図を180°回転させて拡大した図)であると主張している。

2-11.甲第8号証の7
請求人は,甲第8号証の7は前切部側面図拡大図(甲第8号証の3の左上図を180°回転させて拡大した図)であると主張している。

2-12.甲第8号証の8
甲第8号証の8は,プレート設計図であり,
1頁上の「規格,寸法」,「長さ」,「数」の欄には,それぞれ「t=30×62 MCナイロン」,「185」,「1」と,
1頁下の「製図年月日」,「名称」,「図番」の欄には,それぞれ「’96.09.06」,「プレート」,「MB0730080?」と(「?」の所の記載は,読み取れない。),記載されている。

2-13.甲第8号証の9
甲第8号証の9は,株式会社サンテックに対する見積書であり,
上部には「御見積書 1997年11月20日 株式会社サンテック殿 橋本電機工業株式会社」,「見積有効期限 30日 納期 約20日 納入場所 貴工場」と,
「項」,「品名」,「数量」の欄には,それぞれ「1」,「プレート 30t×62W×185mm (スカーフジョインター用)材質MCナイロン」,「1ケ」と,記載されている。

2-14.甲第9号証の1
甲第9号証の1は,最初に「スカーフ ジョインター」というタイトル映像が表示され,最後に「橋本電機工業株式会社 9705」という映像が表示されるビデオ(DVD)であり,
ビデオの映像は,平成24年7月19日付け(平成24年7月20日差出)の上申書に添付した甲第35号証の1と同じ内容であり,甲第9号証の2で説明されている内容と異なるものである。
甲第9号証の1のビデオに対応するタイムラインは,平成24年7月19日付け(平成24年7月20日差出)の上申書に添付した甲第35号証の2である。

(a)甲第35号証の2の9?11頁でも説明されているが,前切部の映像であるビデオの2:32?3:07(以下,「前切部の(a)のビデオ」という。)には,以下の映像が映っている。
(a1)板が中央部を持ち上げられた状態で左下から右上方向に搬送され,
(a2)赤色の部材が,台に載っている板を上から下方向に押圧し,
(a3)下方に丸鋸を有し,右に青色の部材を有するオレンジ色の部材が,左から右方向(台の方向)に移動し,
(a4)青色の部材が上から下方向(板を押さえる方向)に移動し(移動後,青色の部材と台との間の間隙はなくなっている。),
(a5)オレンジ色の部材が青色の部材と共に一体化して左から右方向に移動する。

(b)甲第35号証の2の12?16頁でも説明されているが,後切部の映像であるビデオの3:08?4:05(以下,「後切部の(b)のビデオ」という。)には,以下の映像が映っている。
(b1)板が左から茶色の台の下に搬送され,
(b2)緑色の部材が板を下から上方向(茶色の台方向)に押圧し,
(b3)右に青色の部材を有するオレンジ色の部材が,右から左方向(台の方向)に移動し,
(b4)青色の部材が下から上方向(板を押さえる台方向)に移動し(下から上方向に移動した時点では,青色の部材と茶色の台との間に板はなく,青色の部材の手前側が茶色の台の手前側より手前側にあり,青色の部材と茶色の台との間に間隙もない。),
(b5-1)オレンジ色の部材が青色の部材と共に一体化して左から右方向に移動する。
(b5-2)青色の部材が左から右方向に移動するとき,板がある所に来ると,青色の部材が板にぶつかり板の分だけ下方向に移動する。
(b5-3)青色の部材が左から右方向に移動するとき,板がある所に来ると,青色の部材の手前側が茶色の台の手前側より手前側にある状態から,板の手前側が青色の部材の手前側よりも手前側にある状態となる。
(b6)オレンジ色の部材が青色の部材と共に一体化して左から右方向に移動すると,板の手前側が切削され,板の手前側が茶色の台よりも奥側となり,板の手前側にスカーフ面が形成される。

ビデオの最後には,平成24年7月19日付け(平成24年7月20日差出)の上申書に添付した甲第35号証の2の27頁に記載された「橋本電機工業株式会社 9705」という映像が表示される。

2-15.甲第9号証の2
甲第9号証の2は,最初に「機械名:SJ型スカーフジョインター 場所:サンテック(宮崎県日向市) 撮影日:平成23年3月23日」というタイトルがスカーフジョインターの俯瞰映像と共に表示されるビデオ(DVD)のタイムラインであるが,
甲第9号証の1の,最初に「スカーフ ジョインター」というタイトル映像が表示され,最後に「橋本電機工業株式会社 9705」という映像が表示されるビデオ(DVD)に対応するタイムラインではない。
1頁左欄には,「0:00:00」「機械名:SJ型スカーフジョインター 場所:サンテック(宮崎県日向市) 撮影日:平成23年3月23日」と,
1頁右欄外には,「※左端の数字は,映像の分秒数である。 ※装置名の丸数字は,甲第4号証の図面上の番号に基づく(以下同じ)」と,記載されている。

3.平成24年7月20日差出の上申書の甲第10号証の1?甲第37号証の記載事項
3-1.甲第10号証の1
甲第10号証の1は,平行合板作製装置の製造年月等に関する事実実験公正証書であり,
1頁1行?11頁6行には,「平成24年第58号 正本
平行合板作製装置の製造年月等に関する事実実験公正証書
本公証人は,橋本電機工業株式会社の嘱託により,・・・
第1 嘱託の趣旨
嘱託人会社は,嘱託人会社が製造販売している平行合板(以下「LVL」という。)製造装置「SJ-44スカーフジョインター(以下「本件装置」という。)」の一部であるスカーフカッターの「押え部」に関し,・・・
嘱託人会社は,・・・その一例として株式会社大三商行サンテック事業部(宮崎県日向市日知屋字耳川17062番地の2。以下「設置会社」という(別紙6事実実験状況写真説明添付の写真1,2。写真について,以下同じ。)。)に納入している。
・・・
第2 事実実験の状況
1 平成24年1月18日午後1時ごろ,設置会社の研究棟会議室において・・・
2 同日午後1時30分ころ,本公証人,代理人,及び同席者5名は,設置会社事務室(写真3?5)に出向いた。
本公証人は,・・・現在使用している本件装置の説明書等関係資料を閲覧し,下記資料の表紙の品名及び日付等を確認した。
丸1(丸囲み数字は,「丸×」という。以下同様。) 電気図面の表紙(写真6,7) 株式会社サンテック殿
CB-2,スカーフJ SJ-44
橋本電機工業株式会社
電気図面表紙右下隅には,赤インクの角型スタンプが捺されていた。同スタンプの印影は,4段に仕切られており,上から「○○員用」「97.3.21」「設計部」「橋本電機工業(株)」と読み取れた(写真7)。
丸2 取扱説明書(写真8?13)
SJ-44 スカーフジョインター
橋本電機工業株式會社
97.06.10
この取扱説明書には,「設定圧力リスト」に関する一覧表並びに図面を記載した頁があった(写真10?13)。
3 本公証人は,説明者に対し,本件装置の設置日を確認できる他の資料について尋ねたところ,後刻,次の資料が示され,本公証人は,下記の内容を確認した。
丸1 1997年7月24日付け「住商リース株式会社」と「株式会社サンテック」との間のLVL製造装置一式の目的物件受領書(別紙1)
同受領書の物件明細表中,項14の欄に,「物件名 単板縦継機,メーカー名 橋本電機工業株式会社,数量 3基」と記載されていた。
説明者から,「物件名 単板縦継機」とは,本件装置のことである,との証言があった。 ・・・
丸2 説明者の1997年業務日誌(ダイアリー)の2月,3月分(別紙2)。
3月27日(木)の欄に「総合試運転」と記載されており,説明者から,この日は,本件装置の試運転であった,との証言があった。
4 同日午後1時48分ころ,本公証人,代理人,及び同席者5名は,本件装置が設置されている工場に出向いた(写真14,15)。
同工場には本件装置が3基備え付けられ稼動していた(写真16)。
以下,写真16の写真左側(画面奧)の機械を1号機(写真17,18)と呼称し,次に写真右側(画面手前)に向けて順に2号機(写真19?21),3号機(写真22?24)と呼称する。)。
本公証人は,1号機,2号機及び3号機の外観をチェックしたところ,1号機には名盤が無かった。
5 2号機には,縦4cm,横8.5cmの金属製の銘盤が貼り付けられおり,不鮮明であったが下記の字が読み取れた(写真25?27)。
「フロアリフター ・・・,製造年月97.01,橋本電機工業株式會社」
各本件装置には,それぞれ2基の電気制御盤(以下「制御盤」という。)を収納した箱が設置されていた。写真25の左端にある箱がこれに当たる。
以下,二つの箱のうち写真左側(画面手前)を「1基目」と呼称し,写真右側(画面奧)の箱を「2基目」と呼称する。
2号機の1基目制御盤扉の裏面に縦4cm,横8.5cmの紙片が貼り付けられおり,「型式 SJ-44,図面番号E8912,制作者N,D, HASHIMOTO DENKI CO.LTD」と記載されていた(写真28?31)。
・・・
7 本公証人が3号機の丸鋸用モーターの銘盤を確認したところ,縦2.5cm,横4cmの金属板に「AC SERVO MOTOR,TYPE SGMG-20A2ATBR,W1800,Nm11.5 ,A16.7,r/min1500,9702,S/N683355 001,-005,YASKAWA ELECTRIC,JAPAN」と記載されていた(写真41?44)。
本公証人は,説明者に対し,モーター銘盤の「9702」は何かと尋ねると「1997年2月の製造年月である。」との回答があった。また,3号機設置後,本モーターを更新などし,交換した事実があるか尋ねたところ,説明者から「モーターの修理などのため一時取り外したとがあるが,3号機設置時のモーターを現在も使用している。」との証言があった。
8 本件装置は,薄板単板(以下「単板」という。)を継ぎ合わせ,1枚のLVLを作製する機械である。
3号機には,単板同士を継ぎ合わせるに当たり,原料となる単板の両端を同時に斜めに切削して接着面(スカーフ面)作るために,単板下面から切削する丸鋸(スカーフカッター。別紙3図面「丸鋸」部分。写真45?48)が右側に,同上面から切削する丸鋸(別紙4図面「丸鋸」部分。写真49?51)が左側にそれぞれ取り付けられていた。
そこで,3号機右側の丸鋸を見ると,同丸鋸の切削時の進行方向側には「押え部」(プレート。別紙3及び別紙4図面水色表示部分。)が取付けられていた(写真52?58)。
この丸鋸によるLVL製造工程(単板下面からの切削)においては,単板は薄く,波打っているため(写真59?61),「押え部」で単板を押圧し(写真61?63),単板が押圧された状態で丸鋸が単板を切削しながら「押え部」と共に移動して,スカーフ面を作成している作動状況が見てとれた(写真64?70)。
また,単板切削後,3号機制御盤の操作により,丸鋸及び「押え部」を切削時の進行方向とは逆に移動させたところ,「押え部」は,スカーフ面とそれ以外の部分を押えていることが見てとれた(写真71)。
これらは,3号機左側の丸鋸によるLVL製造工程(単板上面からの切削)も同様であった(写真72?75)。
上記丸鋸のモーター付近にメーターが取り付けられていたので(写真76,77),本公証人は,説明者に対し,同メーターは何であるか尋ねると,説明者からは,「「押え部」が押圧する加圧力が表示されている。」との回答があった。同メーターを見ると,「押え部」が単板を押圧しないときは,針はゼロの状態であるが,「押え部」が単板を押圧すると,針が上昇することが見てとれた(写真78,79)。
10 以上の事実実験は,午後2時20分ころ終了した。
・・・
12 平成24年2月22日,午後3時20分ごろ,本公証人は,写真及びDVD(公正証書用ビデオデータ・2012年1月18日撮影 VIDEOTS・橋本電機工業株式會社・・・)Ver.2012.01.18と表面に印字)の映像が本公証人立会いの下に事実実験当日撮影されたものに間違いないことを確認した。」と記載されている。
また,添付されている別紙1は,甲第7号証の2と同じ内容である。

3-2.甲第10号証の2
甲第10号証の2は,公正証書用ビデオデータ2012年1月18日撮影で,平成24年1月18日に株式会社大三商行サンテック事業部において行われた平行合板作製装置の製造年月等に関する事実実験(甲第10号証の1に記載されている事実実験)の様子を撮影したビデオ(DVD)である。

3-3.甲第10号証の3
甲第10号証の3は,甲第10号証の2のビデオ(DVD)のタイムラインであり,甲第10号証の2のビデオ(DVD)の内容を説明したものである。

3-4.甲第11号証
甲第11号証は,実開昭57-189802号公報であり,
第1?2図には押え込みローラー6を設けた点が図示されている。

3-5.甲第12号証
甲第12号証は,特開平3-146301号公報であり,
第1?2,4図には先頭案内機構Aを設けた点が図示されている。

3-6.甲第13号証の1
甲第13号証の1は,西山俊道による平成24年1月11日付け陳述書である。

3-7.甲第13号証の2
甲第13号証の2は,西山俊道による平成24年1月31日付け陳述書である。

3-8.甲第14号証
甲第14号証は,甲第13号証の1において乙24として説明された審判請求人が出願人として出願した実公平4-7922号公報であり,
コンベアで単板を装置に搬送して加工台の上に載置したうえで,その前端部と後端部を同時にロータリーカッターを移動させながら削り取るものである。

3-9.甲第15号証
甲第15号証は,甲第13号証の1において乙25として説明されたスカーフマシン ノコテストで製図年月日が94,3,31である設計図(第1設計図)である。

3-10.甲第16号証
甲第16号証は,甲第13号証の1において乙26として説明された作成日が1994・3・31であるスカーフマシン ノコテストの部品表である。

3-11.甲第17号証
甲第17号証は,甲第13号証の1において乙27として説明された審判請求人が出願人として出願した登録実用新案第3002948号公報であり,ベニア合板のスカーフ加工装置に関するものである。

3-12.甲第18号証
甲第18号証は,甲第13号証の1において乙28として説明された製図年月日が’94,08,02であるスカーフマシンTEST押エシリンダー取付図の設計図(第2設計図)である。

3-13.甲第19号証
甲第19号証は,甲第13号証の1において乙29として説明された製図年月日が’94,08,02であるプレートの設計図である。

3-14.甲第20号証
甲第20号証は,甲第13号証の1において乙30として説明された作成日が1994・8・2であるスカーフマシンTEST機押エシリンダー取付図の部品表である。

3-15.甲第21号証
甲第21号証は,甲第13号証の1において乙31として説明された製図年月日が’94,08,12であるスカーフマシンTEST押エシリンダー取付図の設計図(第3設計図)である。

3-16.甲第22号証
甲第22号証は,甲第13号証の1において乙32として説明された製図年月日が’94,08,12であるプレートの設計図である。

3-17.甲第23号証
甲第23号証は,甲第13号証の1において乙33として説明された作成日が1994・8・12であるスカーフマシンTEST機押エシリンダー取付図の部品表である。

3-18.甲第24号証
甲第24号証は,(甲号証)(別紙)4/5ページで合板用スカーフカッターのテスト機であると説明されている写真である。

3-19.甲第25号証
甲第25号証は,長澤潔による平成24年1月11日付け陳述書であり,
1頁1行?6頁15行には,「平成24年1月11日
陳述書
・・・
氏名 長沢 潔
1. 私は,現在,橋本電機工業株式会社(以下「当社」といいます。)の取締役・設計部部長の職にある者です。
私は,宮崎県日向市日知屋字耳川17062番地の2 株式会社サンテック(以下「サンテック」といいます。)から依頼を請けて当社が製造販売した,スカーフ切断接合システム「スカーフジョインター」の開発に関与し,また,その内容について,平成9年11月13日,日本合板工業組合連合会主催の合板技術講習会において講演しましたので,その経緯について,以下のとおり陳述致します。
・・・
3. 平成7年(1995年)11月,丸良安藤株式会社(本社:名古屋市)から,株式会社大三商行(本社:岡山市)と日本製紙株式会社(本社:福岡市)が共同出資して設立したサンテックが新たに建設するLVL(平行合板)生産工場を作りたいので検討するように依頼がありました(乙36。黄色アンダーラインで示した箇所)。
・・・
LVLは,今回の計画では,まず長尺な単板を製造したうえで,さらにこれを複数枚積層して製造するものであるため,その製造工程は,おおよそ次のようなものとなります。
・・・
丸4 生単板をドライヤー内に通して乾燥し,積込みます。(乾燥単板と呼びます)
丸5 定尺単板は,オートフィーダーにセットされた後,
丸6 整合装置によって,左右・前後端の位置を調整したうえ,
丸7 スカーフカッターで単板の前後端を切除し,同端部に平滑なスカーフ面を形成し,
丸8 糊付機で,上向きの前端スカーフ斜面に接着剤(ホットメルト)を無接触で塗布した後,
丸9 下向きの後端スカーフ面に正確に重ね併せて冷圧接合し,
丸10 接合部位がずれないよう,クリンプ装置によって搬送して,
丸11 定尺クリッパーによって,設定寸法毎に切断します。これにより必要なLVL製品長さにします。
丸12 これを糊塗布装置に通し,単板の全面に熱硬化性の接着剤を塗布し,冷圧及び熱圧し,LVL製品を生産します。
サンテックから依頼のあった「LVL連続生産システム」とは,工場内で上記丸1から丸12の工程を連続して行うシステムをいい,また「単板ジョイントシステム」とは,上記丸5から丸11までの工程を一つのラインとして行う装置をいい,当社では「スカーフジョインター」と称しています(本件で問題となっているスカーフカッターは,「スカーフジョインター」の一部を構成する切削装置に当たるものです)。
・・・
4. サンテックからの依頼を受け,早速,同年11月から「スカーフジョインター」の開発を開始しました。
・・・
7. 当社は,平成9年(1997年)7月24日,サンテックに,上記単板用スカーフカッター3台を含む,スカーフ切断接合システム「スカーフジョインター」を納入しました(乙6の1ないし4)。
・・・
8. さらに,私は,同年11月13日,東京の木材会館で行われた合板技術講習会で,スライドやビデオ等を用いて,スカーフジョインターの講演を行いましたので,その点について詳細に説明します。
・・・
当社社長から,私に同講習会で講演(50分間)を行うよう指示がありましたので,私は,直近に開発・製造を行った,国産杉を使用したLVL生産システム,より具体的にはサンテック用のスカーフジョインターを例として「最新型の単板縦つぎ機」というテーマで講演を行うことにしました(乙41,42)。
・・・
まず,サンテック用のスカーフジョインターの概要を示した資料(乙40の資料1ないし4)を作ると共に,サンテックに納入した「LVL生産システム」と「単板ジョイントシステム」の写真をスライドにし(乙43,乙44の写真1?47),またサンテックに納入したスカーフジョインターの稼動状況を撮影したビデオ(乙45)を用意したうえ,これら資料を効果的に講演の中で紹介できるように,写真をスライドするタイミングと読み上げる原稿を同期させた,詳細な原稿(乙46)を作成しました。
・・・
9. ・・・
さらに,「以上で基本的な考え方,動作についてお話しましたので,この後は実際に稼動している状態をビデオで見て頂きます」(原稿7枚目)と紹介した上で,サンテックで稼働状況撮影したビデオ(乙45)を上映し,「前押さえ部」で切削部付近を押圧した状態で丸カッターがスカーフ面を切削状況(乙45の「02:32から03:37まで」,「04:08から04:24まで」及び「04:44から04:58まで」)を見せながら,青い部材が「前押さえ部」であり,このスカーフカッターの開発によりスカーフ面の直線制度の格段の向上が得られた事を,繰り返し説明しました。・・・
なお,当日は,原告から3名の方が来場されておりました(乙47)。」と記載されている。

3-20.甲第26号証
甲第26号証は,甲第25号証において乙36として説明された「宮崎県にて杉のLVLを造る計画案について」という会議議事録である。

3-21.甲第27号証
甲第27号証は,甲第25号証において乙37として説明された「(株)サンテック殿向 単板縦継機の方向性について」という会議議事録である。

3-22.甲第28号証
甲第28号証は,甲第25号証において乙38として説明され,(甲号証)(別紙)5/5ページで「(株)サンテック殿向 単板縦継機」仕様書と説明されている手書きの書類である。

3-23.甲第29号証
甲第29号証は,甲第25号証において乙39として説明された,審判請求人が出願人として出願した特開平10-128706号公報(甲第25号証では実用新案登録出願として説明)であり,ベニア単板の縦はぎ方法および装置に関するものである。

3-24.甲第30号証
甲第30号証は,甲第25号証において乙40として説明された,日本合板工業組合連合会のホームページの画面である。

3-25.甲第31号証
甲第31号証は,甲第25号証において乙41として説明された,健康安全性と性能信頼性を高める合板技術講習会テキストであり,
1頁1?2行には,「健康安全性と性能信頼性を高める合板技術講習会テキスト」と,
2頁1?8行には,「目次
-最近の内外情報と新しい機械-
・・・
3.最新型の単板縦つぎ機・・・・・・・・33
橋本電機工業株式会社 開発部次長 長澤 潔」と,
3頁1?10行には,「日時 平成9年11月13日(木)午後1時
平成9年11月14日(金)午前9時
会場 木材会館
講習会日程
第1日目 11月13日(木)午後1時
〔最近の内外情報と新しい機械〕
・・・
15:00?15:50 ・最新型の単板縦つぎ機」と記載されている。

3-26.甲第32号証
甲第32号証は,甲第25号証で乙42として説明され,(甲号証)(別紙)5/5ページで「SJ-420型スカーフジョインター」講義レジュメとして説明された書類であり,
3頁の「資料1」の上部には,「林経新聞
1997年(平成9年)10月29日(水曜日) (4)
日向市内LVL工場など見学
熊本営林局林政記者C
熊本営林局林政記者クラブ(本社加盟)一行は今月七日,八日の二日間,青柳熊本営林局長をはじめ長友広報室長,寺床主任官の案内により宮崎県日向市管内の現地視察を行った。
七日午前九時,・・・正午過ぎに日向営林署に到着。谷村署長の案内で早速,(株)サンテック(日向市日和屋字耳川,石川靖彦社長)の工場を見学した。
同社は,今春操業開始したばかりのLVL(単板積層木材=平行合板)工場で,宮崎県下のスギ材を主原料に生産し,宮崎県産材の有効利用ということで注目されている。
・・・今年七月一日に工場が完成し,操業を開始した。」と記載されている。
3頁下の写真は,甲第7号証の4と同じ写真である。

3-27.甲第33号証
甲第33号証は,甲第25号証において乙43と説明されている写真撮影報告書である。

3-28.甲第34号証
甲第34号証は,甲第25号証において乙44として説明されると共に,サンテックに納入した「LVL生産システム」と「単板ジョイントシステム」のスライド写真として説明されているものである。

3-29.甲第35号証の1
甲第35号証の1は,甲第25号証において乙45として説明されると共に,サンテックで稼働状況を撮影したビデオとして説明されているビデオ(DVD)であり,甲第9号証の1と同じ内容のものである。

3-30.甲第35号証の2
甲第35号証の2は,甲第25号証において乙45と説明されている甲第35号証の1(甲第9号証の1)のビデオ(DVD)のタイムラインであり,
甲第35号証の1(甲第9号証の1)のビデオの内容を説明したものである。

3-31.甲第36号証
甲第36号証は,甲第25号証において乙46として説明されると共に,講演の原稿として説明されているものである。

3-32.甲第37号証
甲第37号証は,甲第25号証において乙第47と説明されている健康安全性と性能信頼性を高める合板技術講習会受講者名簿であり,
No.52?54の欄に「株式会社名南製作所 松原輝幸
株式会社名南製作所 佐藤弘亮
株式会社名南製作所 池本史敏」と,記載されている。

4.平成24年11月21日差出の上申書の甲第39?42号証の記載事項
4-1.甲第39号証
甲第39号証は,請求人がシンヤン用スカーフジョインターの後切部正式部品表として侵害事件において提出したのは甲第2号証の4でなく甲第39号証であると主張する正式部品表(後切部)であり,
1?3頁の「作成日」,「注文主」,「機種名」,「名称」,「組図・番号」の欄には,それぞれ「1997.08.05」,「SHIN YANG PLYWOOD(MI RI)SDN.BHD.」,「スカーフジョインタ SJ-420」,「後切部組図」,「MK01041211」と,記載されている。

2-4-2.甲第40号証
甲第40号証は,請求人が甲第2号証の5が不鮮明なコピーで文字が判読しがたいものであったため,同一書面のクリーンコピーを新たに出し直したものであると主張する後切部組図であり,
右上には,「97 07 18」,「SJ-40型スカーフジョインタ」,「後切部組図」,「MK 01041211」と,記載されている。

4-3.甲第41号証
甲第41号証は,請求人が甲第8号証の8が不鮮明なコピーで文字が判読しがたいものであったため,同一書面のクリーンコピーを新たに出し直したものであると主張するプレート設計図であり,
1頁上の「規格,寸法」,「長さ」,「数」の欄には,それぞれ「t=30×62 MCナイロン」,「185」,「1」と,
1頁下の「製図年月日」,「名称」,「図番」の欄には,それぞれ「’96.09.06」,「プレート」,「MB07300804」と,記載されている。

4-4.甲第42号証
甲第42号証は,請求人が提出していないことが判明した甲第9号証の2のタイムラインに対応する平成23年3月23日に撮影したビデオ(DVD)であると主張するものである。

5.平成25年1月21日差出の上申書の甲第43?51号証の記載事項
5-1.甲第43号証
甲第43号証は,特開平6-122101号公報であり,
図9,11には,上部定盤35,35’と下部定盤27,29とにより薄板18を押圧保持した状態で,傾斜した丸鋸22,22’により薄板18の前端及び後端を切削できる点は図示されている。

5-2.甲第44号証
甲第44号証は,実公平8-4241号公報であり,第1?2図にはベース2を設けた点が図示されている。

5-3.甲第45号証
甲第45号証は,「1997 3 13」又は「1997 3 14」という日付が映像と共に表示されているビデオ(DVD)であり,
甲第45号証に映っている工場は,機械の周りには黄色の安全柵は映っておらず,設置箇所天井付近には天井クレーン用の大規模なクレーンガーダ(桁)が映っている。
請求人が平成25年1月17日に差出した上申書の,別紙1の「素材映像」の「証拠番号」の欄に「甲45」と記載されているSceneの甲第9の1の映像は,甲第45の素材映像に基づく映像であると認められる。

5-4.甲第46号証
甲第46号証は,「1997 3/14」という日付が映像と共に表示されているビデオ(DVD)であり,
甲第46号証に映っている工場は,機械の周りには黄色の安全柵は映っておらず,設置箇所天井付近には天井クレーン用の大規模なクレーンガーダ(桁)が映っている。
請求人が平成25年1月17日に差出した上申書の,別紙1の「素材映像」の「証拠番号」の欄に「甲46」と記載されているSceneの甲第9の1の映像は,甲第46の素材映像に基づく映像であると認められる。

5-5.甲第47号証
甲第47号証は,「1997 6/18」という日付が映像と共に表示されているビデオ(DVD)であり,
甲第47号証に映っている工場は,甲第10号証の1?3の工場と同様に,機械の周りには黄色の安全柵が映っており,天井から配管されており,設置箇所天井付近には天井クレーン用の大規模なクレーンガーダ(桁)は映っていない。
請求人が平成25年1月17日に差出した上申書の,別紙1の「素材映像」の「証拠番号」の欄に「甲47」と記載されているSceneの甲第9の1の映像は,甲第47の素材映像に基づく映像であると認められる。

5-6.甲第48号証
甲第48号証は,「1997 6/18」という日付が映像と共に表示されているビデオ(DVD)であり,
甲第48号証に映っている工場は,甲第10号証の1?3の工場と同様に,機械の周りには黄色の安全柵が映っており,天井から配管されており,設置箇所天井付近には天井クレーン用の大規模なクレーンガーダ(桁)が映っていない。

5-7.甲第49号証
甲第49号証は,甲第45?48号証の映像が収録されているテープを撮影した写真撮影報告書である。

5-8.甲第50号証の1
甲第50号証の1は,請求人が甲8号証の3と同一図面と主張する図面である。

5-9.甲第50号証の2
甲第50号証の2は,請求人が甲50号証の1(甲8号証の3)の赤点線枠を拡大し,CAD図面から寸法を実測して記入したサンテック用スカーフカッター装置図面であると主張する図面である。

5-10.甲第51号証
甲第51号証は,ガイド付き薄形シリンダMGQ Seriesの製品カタログである。

6.平成25年8月12日付け上申書の甲第52号証の1?甲第53号証の記載事項
6-1.甲第52号証の1
甲第52号証の1は,請求人がSJ-44型スカーフジョインタ単板フィーダの設計図と主張する設計図である。

6-2.甲第52号証の2
甲第52号証の2は,請求人がスカーフジョインターオートフィーダー昇降部(改造)の設計図と主張する設計図である。

6-3.甲第53号証
甲第53号証は,請求人が安全色のHIS規格(内部規格)と主張する書類であり,
「安全色
機械・設備において巻き込まれ,はさまれ等のおそれのある箇所を識別しやすくするため安全色で塗装する。
【1】色の種類と意味
(1)黄赤色(オレンジ)・・・JIS危険標示色」
と,記載されている。

第4 当審の判断
1.本件特許発明の認定について
本件特許発明1?2は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
刃物受台の板状体を支持する支持面に対し傾斜して備えられた回転切削刃物を,当該回転切削刃物の刃先と前記刃物受台の刃先当接部とを当接させ乍ら,前記板状体に対して相対的に直線移動させることにより,前記板状体の端部をスカーフ面に切削加工し,前記刃先当接部から突出した前記板状体端部を切削屑として排除する方法において,前記回転切削刃物と一体化して相対的直線移動する押圧部材によって,前記回転切削刃物の前記相対的直線移動方向下手側で且つ当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧し,当該切削屑として排除されることになる部分を当該押圧部材と前記刃物受台とによって挟持し乍ら切削加工することを特徴とする,板状体のスカーフ面加工方法。

【請求項2】
刃物受台の板状体を支持する支持面に対し傾斜して備えられた回転切削刃物を,当該回転切削刃物の刃先と前記刃物受台の刃先当接部とを当接させ乍ら,前記板状体に対して相対的に直線移動させることにより,前記板状体の端部をスカーフ面に切削加工し,前記刃先当接部から突出した前記板状体端部を切削屑として排除する板状体のスカーフ面加工装置において,前記回転切削刃物の前記相対的直線移動方向下手側で且つ当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で,而も前記回転切削刃物と一体化して相対的直線移動する押圧部材を設け,前記押圧部材と前記刃物受台とによって,前記切削屑として排除されることになる部分を挟持し乍ら切削加工することを特徴とする,板状体のスカーフ面加工装置。」

2.無効理由1(公然実施)について
2-1.サンテック用スカーフカッターについて
2-1-1.サンテック用スカーフカッターの構成について
2-1-1-1.甲第9号証の1?2の関係について
請求人は,審判請求書において,甲第9号証の2は,甲第9号証の1のビデオのタイムラインである旨主張しているが,
甲第9号証の1のビデオの映像は,平成24年7月20日差出の上申書に添付した甲第35号証の1と同じ内容であり,甲第35号証の2で説明されている内容と同じものであり,甲第9号証の2で説明されている内容と異なるものある。
甲第9号証の2は,本件特許の原出願の出願後である平成23年3月23日に撮影されたビデオのタイムテーブルである。

2-1-1-2.本件特許発明1?2とサンテック用スカーフカッターとの構成の対比・判断
本件特許発明1?2と対比する発明は,甲第9号証の1のビデオの発明のうち,上記「第3」の「2.」の「2-14.」の,後切部の(b)のビデオの映像(03:08?04:05)の発明とする。
甲第9号証の1の,後切部の(b)のビデオの映像(03:08?04:05)には,上記「第3」の「2.」の「2-14.」において(b5-2)として言及しているように,「青色の部材が左から右方向に移動するとき,板がある所に来ると,青色の部材が板にぶつかり下方向に移動する」映像が映っているから,青色の部材が板にぶつかり板の分だけ下方向に移動すると共に,青色の部材は茶色の台の下方に板があるかないかにかかわらず,茶色の台の方向に押圧されていると認められるので,茶色の台の下方に板がある場合,青色部材は板を押圧し挟持していると認められる。
また,上記「第3」の「2.」の「2-14.」において,(b5-3),(b6)として言及しているように,「青色の部材が左から右方向に移動するとき,板がある所に来ると,青色の部材の手前側が茶色の台の手前側より手前側にある状態から,板の手前側が青色の部材の手前側よりも手前側にある状態となる」映像(b5-3),「オレンジ色の部材が青色の部材と共に一体化して左から右方向に移動すると,板の手前側が切削され,板の手前側が茶色の台よりも奥側となり,板の手前側にスカーフ面が形成される」映像(b6)が映っており,これらの映像の,青色の部材,茶色の台,板,の手前側の位置関係から,青色の部材は,板の切削屑として排除されることになる部分を茶色の台方向に押圧し,挟持していると認められる。
上記「第3」の「2.」の「2-14.」において(b3)として言及している映像部分の,オレンジ色の部材の映像には丸鋸は映ってないが,上記「第3」の「2.」の「2-14.」において(b6)として言及している映像部分には板の手前側を切削する映像が映っており,上記「第3」の「2.」の「2-14.」の,前切部の(a)のビデオの(a3)には,オレンジ色の部材が丸鋸を有する点が映っているから,後切部のオレンジ色の部材も前切部のオレンジ色の部材と同様に丸鋸を有していることは明らかである。
丸鋸を有する後切部のオレンジ色の部材は,茶色の台に対して傾斜して設けられているから,茶色の台の板の支持面に対して丸鋸が傾斜していることも明らかであり,
板が切削された後のスカーフ面は,甲第35号証の2の14頁下の「03:48」の写真のように,茶色の台の手前側の端部の傾斜面に沿って板のスカーフ面が斜めに形成されているから,丸鋸と茶色の台の手前側の端部の傾斜面を当接させながら,板が切削されると認められる。

よって,甲第9号証の1の,後切部の(b)のビデオには,本件特許発明1及び2と同じ発明の映像が映っていると認められる。

また,甲第9号証の1のビデオ(DVD)には,後切部の(b)のビデオが含まれており,
甲第9号証の1,甲第45号証(上記「第3」の「5.」の「5-3.」)?甲第49号証(上記「第3」の「5.」の「5-7.」),乙第36号証,請求人の平成25年1月17日差出の上申書(12頁8行?13頁末行,14頁9行?17頁2行,別紙1),を総合的に勘案すると,甲第9号証の1のビデオ(DVD)の映像は,サンテックに納入される前後で,本件特許の原出願の出願日前に撮影されたサンテック用スカーフカッターの映像であると認められると共に,甲第9号証の1のビデオ(DVD)の映像の内容に不自然な点があるとは認められず,証拠価値が乏しいともいえない。

よって,甲第9号証の1のビデオ(DVD)の映像から,サンテックに納入される前後で,本件特許の原出願の出願日前に撮影されたサンテック用スカーフカッターは,本件特許発明1及び2の構成要件を充足していると認められる。

被請求人は,平成25年3月4日付けの回答書(5頁15行?8頁11行,16頁6行?18頁1行,20頁末行?21頁27行,26頁末行?28頁末行),平成25年6月26日付けの口頭審理陳述要領書(8頁7?24行),平成25年7月10日付けの口頭審理陳述要領書(9頁14行?10頁10行)において,甲第9号証の1の,後切部の(b)のビデオの映像(03:08?04:05)から,青色の部材が板を押圧し挟持しているとはいえない旨主張している。
しかしながら,既に検討しているように,後切部の(b)のビデオの(b5-2)の映像から,青色部材は板を押圧し挟持していると認められるので,被請求人の主張は採用することができない。

2-1-2.サンテック用スカーフカッターの実施について
上記「第3」の「2.」の「2-1.」(甲第7号証の1)?「2-2.」(甲第7号証の2)の記載から,1997年7月24日,単板縦継機3基(橋本電気工業が製造)を含むLVL製造装置について,住商リース株式会社から宮崎県日向市日知屋字耳川17062番地の2のサンテックへの受け渡しが完了したと認められる。
また,上記「第3」の「2.」の「2-4.」(甲第7号証の4)の記載から,サンテックにはLVL工場があり,LVL製造装置はサンテックに譲渡され,サンテックのLVL工場に設置されたと認められる。
サンテックに譲渡されたLVL製造装置である単板製造機械には,スカーフジョインター(単板を縦継ぎする=橋本電機工業製)が含まれていると認められると共に,上記スカーフジョインターは,サンテック用に生産された装置であると認められるから,上記スカーフジョインターはサンテック用スカーフカッターであると認められる。

以上のことから,請求人である橋本電機工業は,本件特許の原出願の出願日(平成10年6月16日)以前に,宮崎県日向市日知屋字耳川17062番地の2のサンテック用に,サンテック用スカーフカッターであるスカーフジョインターを生産し,
生産された上記サンテック用スカーフカッターは,1997年(平成9年)7月24日,1997年5月1日付延払条件付売買契約書(甲第7号証の1),及び,目的物件受領書(甲第7号証の2)に基づき,住商リース株式会社からサンテックに譲渡されたと認められる。

また,本件特許発明1?2の構成要件を充足するサンテック用スカーフカッターの映像が映っている甲9号証の1のビデオ(DVD)には,1997年6月頃にサンテックで撮影された映像が含まれており,
サンテックに譲渡されたサンテック用スカーフカッターも,上記「第3」の「2.」の「2-4.」(甲第7号証の4)の記載から,1997年6月頃にはサンテックに設置されていたと認められるから,
本件特許発明1?2の構成要件を充足するサンテック用スカーフカッターと,サンテックに譲渡されたサンテック用スカーフカッターは,同一のサンテック用スカーフカッターであると認められる。

2-1-3.サンテック用スカーフカッターの公然性について
上記「第3」の「2.」の「2-1.」(甲第7号証の1)の延払条件付売買契約書には,秘密保持条項の規定は記載されていない。
また,甲第7号証の3(上記「第3」の「2.」の「2-3.」)は,ウッドミックの記者が書いたサンテックの建設中のLVL工場の記事であり,「▲着々と準備が進められるサンテックLVL工場外観」,「LVLのサンプルとムキ芯」という記載が写真と一緒にあると共に,「1997年3月10日発行」という記載もあるから,甲第7号証の3の発売日(1997年3月10日)より前に,第三者であるウッドミックの記者が建設中のサンテックのLVL工場に出入り可能であったと推測される。
上記「第3」の「2.」の「2-4.」(甲第7号証の4)の記載から,甲第7号証の4の発売日(1997年7月10日)より前に,サンテックのLVL工場が第三者であるウッドミックの記者を見学者として受け入れていたと認められる。

以上のことから,サンテック用スカーフカッターを譲渡されたサンテックは,サンテック用スカーフカッターの譲渡の前後において,サンテック用スカーフカッターが設置されているLVL工場に第三者であるウッドミックの記者を受け入れていたから,サンテックはサンテック用スカーフカッターに関して秘密保持義務を負っていたとはいえない。
サンテック用スカーフカッターは,本件特許の原出願の出願前に,何ら秘密保持義務を負わないサンテックに公然と譲渡された,すなわち,公然実施されたと認められる。

なお,上記「第3」の「3.」の「3-26.」(甲第32号証の資料1)の記載からも,1997年10月7日に,サンテックのLVL工場が第三者である熊本営林局林政記者クラブ一行の見学者を受け入れていたと認められる。

被請求人は,平成25年8月12日付け上申書(1頁下から5行?3頁12行)において,1997年3月13?14日にかけての内覧会,同年7月10日発行の雑誌の記事(甲第7号証の4)に係る記者の取材,同年7月24日におけるサンテックへの譲渡,のサンテック用スカーフカッターに関する3つの行為があった日以降において,サンテック用スカーフカッターに関する特許出願(乙第42号証[平成9年8月20日出願],乙第43号証[平成9年9月25日出願],乙第44号証[平成10年1月5日出願])を行っているから,
内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡,の3つの行為により,サンテック用スカーフカッターが公然実施され,新規性を失った状態となった後,請求人がサンテック用スカーフカッターに関する特許出願をしたとは考えられず,内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡,の3つの行為は,サンテック用スカーフカッターに関する特許出願(乙第42?44号証)の新規性が失われないように,秘密状態を保持したまま行われたものであると強く推認できるので,
内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡,の3つの行為によってサンテック用スカーフカッターが公然実施されたものと認定すべきではない旨主張している。
しかしながら,乙第42?44号証の出願に係る発明は,いずれもサンテック用スカーフカッターを含んでいないから(乙第42?44号証【特許請求の範囲】),少なくともサンテック用スカーフカッターについて秘密状態を保持するような対応が必要であったとは考え難い。
また,何らかの事情により新規性が喪失した発明に関連する出願が行われることは一般的にあり得るもので,乙第42?44号証の出願がサンテック用スカーフカッターに関連したものであるとしても,そのことをもって当然に,内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡を秘密状態が保持されたまま行っていたとすべき理由はない。
よって,内覧会,雑誌記者の取材,サンテックへの譲渡の3つの行為が行われた後に,関連する特許出願があったことのみによって,上記3つの行為が新規性が失われないように秘密状態を保持したまま行われていたとまではいえず,被請求人の主張を採用することはできない。

被請求人は,平成25年8月12日付け上申書(4頁8行?5頁6行)において,社会通念上又は商慣習上,秘密扱いすることが暗黙のうちに求められ,期待される場合においても秘密を保つべき関係が生じることについて,東京高裁平成12年12月25日判決(乙第49号証)があるから,本件において甲第7号証の1の売買契約書に秘密保持事項が存在しなかったとしても,サンテック用スカーフカッターの譲渡に関しサンテックは社会通念上又は商慣習上の秘密保持義務を負っているといえるので,サンテックへの譲渡において,公然性は存在しない旨主張している。
しかしながら,東京高裁平成12年12月25日判決(乙第49号証)は,見積りの時に作成した図面について守秘義務があるかないか争われた事件であり,本件審判事件のような売買契約が行われ,装置が譲渡された後に守秘義務があるかないかについて争われた事件ではなく,本件と条件を異にするものであり,サンテックが社会通念上又は商慣習上の秘密保持義務を負っているとすべき特段の事情も認められないから,
本件において甲第7号証の1の売買契約書に秘密保持事項が存在しなかったとしても,サンテック用スカーフカッターの譲渡に関しサンテックは社会通念上又は商慣習上の秘密保持義務を負っているとはいえず,被請求人の主張を採用することはできない。

被請求人は,平成25年8月12日付け上申書(5頁下から3行?6頁15行)において,甲第7号証の4の13頁下段22?25行には,「工場内部の写真は,遠慮して欲しいとの申し出だったが,本誌読者の為に全体写真のみ一部許可して貰った。雰囲気の一端なりとも感じて頂けよう。」と記載されているから,サンテックは記者の取材を制限することで秘密保持義務を果たすように行動していたといえ,記者の取材の事実からサンテックへの譲渡における公知性の存在を認めることはできない旨主張している。
しかしながら,甲第7号証の4の上記記載では,記者が遠慮して欲しいと言われたのは工場内部の写真撮影のみであり,
甲第7号証の4(上記「第3」の「2.」の「2-4.」)の13頁中段?下段には,「一連の単板製造,乾燥,糊付け,圧締作業は従来の針葉樹合板製造工程と同じである。多少機械の仕様が異なるのみであるが,単板ジョイント性能を上げる為の,或いは歩留りを向上する為の工夫は色々と施されているという。代表的な機械は,・・・,スカーフジョインター(単板を縦継ぎする=橋本電機工業製),・・・,その他を含め機械設備合計は約一二億円に上る。」と,14頁中段には,「▲LVL生産状況を見る(株)サンテックの石川靖彦社長(左)と古川哲也専務」,「▲見学通路から工場LVL生産ラインを見る」,「▲見学通路からLVL小割ラインを見る」と記載されているとおり,これらの記載から,サンテックのLVL工場には見学通路があり,雑誌ウッドミックの記者が工場内を見学し,工場内のスカーフジョインター(単板を縦継ぎする=橋本電機工業製)[サンテック用スカーフカッターに相当]を含む機械装置に関する説明も受け,雑誌の記事を書いていることから,雑誌ウッドミックの記者が工場内を見学したとき,サンテックがサンテック用スカーフカッターについて秘密保持義務があり,サンテックが秘密保持義務を果たそうとしていたとは認められず,被請求人の主張を採用することはできない。

被請求人は,乙第38号証の被請求人が受領したサンテック工場の見学会に関する手紙を添付した平成25年7月10日付け口頭審理陳述要領書(11頁24行?12頁7行。平成25年6月27日差出の口頭審理陳述要領書9頁20行?10頁1行にも同趣旨の記載有り。)において,
「今般提出する乙第41号証及び乙第38号証に示されるように,被請求人の社長以下従業員がサンテック工場の見学会に対する申し込みを譲渡から半年経った時点において拒否されたことがあり,かように拒否することは,工場内の装置について秘密に管理されている事実を裏付けている。即ち,乙第38号証の手紙(1枚目)には,「先方の強い要請におり,御社をはじめ一部企業の参加者のLVL工場見学をご遠慮いただかざるを得なくなりました」等と記載されており,強い調子で被請求人側等の工場見学への参加を拒絶していることが看て取れると共に,サンテックや請求人を含む互いに関係の深い所定範囲の団体にしか工場を見学させない強い姿勢が看て取れる。つまり,サンテックの工場は,社会通念上ないし商慣習上守秘義務のある範囲の会社等にしか見せないこととされているのであり,その工場や内部の設備につき秘密に管理されていたと言えるのである。」と主張している。
しかしながら,乙第38号証には,
「平成10年2月7日
株式会社名南製作所
筒井幹夫様
河合和哉様
山内章行様

日本木材学会事業委員 R&Dツアー担当
京都大学木質科学研究所 教授 川井秀一

・・・
さて,この度当学会の事業委員会が主催するR&Dツアー「国産小径材の利用を考える」にお申し込みをいただき,誠にありがとうございます。
このツアーには,上述のパネル討論会のほか,株式会社サンテックのご好意によりLVL工場の見学会を企画しておりましたが,誠に残念で申し訳けないことですが,先方の強い要請により,御社をはじめ一部企業の参加者のLVL工場見学をご遠慮いただかざるを得なくなりました。」
と記載されており,以上の記載から,サンテックは,一部の企業の参加者について,サンテックのLVL工場見学を断ったことは把握できるが,一部の企業の参加者以外のLVL工場見学の参加者については,サンテックのLVL工場見学を許可したと認められる。
日本木材学会主催のR&Dツアー担当は京都大学の川井教授であり,乙第41号証には,R&Dツアー第1日目のパネル討論の司会を川井教授が行っている点が記載されているから,大学教授等の大学関係者もR&Dツアーに参加したと認められる。
乙第41号証には,一部企業参加者がR&Dツアーに参加することを断られた旨の記載はあるが,大学教授等の大学関係者がR&Dツアーに参加することを断られた旨の記載はなく,大学教授等の大学関係者は,請求人が主張する「社会通念上ないし商慣習上守秘義務のある範囲の会社等」に該当するとは思えないから,
「つまり,サンテックの工場は,社会通念上ないし商慣習上守秘義務のある範囲の会社等にしか見せないこととされているのであり,その工場や内部の設備につき秘密に管理されていたと言えるのである。」という被請求人の主張を採用することはできない。
また,大学教授等の大学関係者を含むサンテックのLVL工場見学会参加者全員が守秘義務を負っていたとは考えられず,守秘義務を負わない大学教授等の大学関係者が含まれていたと考えるべきであるから,
サンテック用スカーフカッターを譲渡されたサンテックは,秘密保持義務を負っていたとは認められず,被請求人の主張を採用することはできない。

2-1-4.小括り
上記「2-1-1.」?「2-1-3.」において検討したように,サンテック用スカーフカッターは,本件特許発明1?2の構成要件を充足するものであり,1997年7月24日にサンテックに譲渡されたものであり,譲渡先のサンテックは何ら秘密保持義務を負わないから,
サンテック用スカーフカッターは,本件特許発明1?2の構成要件を充足し,本件特許の原出願の出願前に公然とサンテックに譲渡されたもの,すなわち,公然実施されたものと認められる。

従って,本件特許発明1?2は,甲第7号証の1?4,甲第9号証の1のとおり,本件特許の原出願の出願前に,日本国内において公然実施されたものであるから,特許法第29条第1項第2号の発明に該当し,特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

第6 むすび
以上述べたとおり,本件特許発明1?2は特許法第29条第1項第2号の規定に反してされた特許であるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-21 
結審通知日 2013-08-23 
審決日 2013-09-19 
出願番号 特願2009-3911(P2009-3911)
審決分類 P 1 113・ 112- Z (B27D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
瀬津 太朗
登録日 2010-02-19 
登録番号 特許第4460618号(P4460618)
発明の名称 板状体のスカーフ面加工方法及び装置  
代理人 小川 晶露  
代理人 園田 清隆  
代理人 石田 正己  
代理人 石田 喜樹  
代理人 高橋 譲二  
代理人 長谷部 善太郎  
代理人 三木 浩太郎  
代理人 早川 尚志  

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