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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1304823
審判番号 不服2014-12523  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-30 
確定日 2015-08-27 
事件の表示 特願2012- 87202号「遊技管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月12日出願公開、特開2012-130776号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年11月28日に出願された特願2005-342155号の一部を平成23年9月5日に新たな特許出願である特願2011-192361号とし、さらにその一部を平成24年4月6日に新たな特許出願としたものであって、平成26年3月28日付けで拒絶査定(発送日:平成26年4月1日)がなされ、これに対し平成26年6月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載を含む補正であり、平成25年7月18日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。

(補正前:平成25年7月18日付け手続補正書)
「【請求項1】
遊技領域に遊技媒体が発射されて遊技が行われた結果、予め定められた始動条件が成立することによって所定の遊技動作による補助遊技を実行する補助遊技実行手段と、
遊技媒体を受け入れない閉状態から遊技媒体を受け入れやすい開状態に変換され、発射された遊技媒体を受け入れて遊技者に遊技価値を付与する変動入賞装置と、を備える遊技用装置と、
前記遊技用装置から出力される遊技情報を収集する遊技情報収集手段と、を備える遊技管理システムであって、
前記遊技用装置は、
前記補助遊技が特定の結果となった場合に、前記変動入賞装置の開状態への変換態様が異なる複数の特別遊技状態の何れかを発生させる特別遊技状態発生手段と、
前記特別遊技状態が発生すると前記変動入賞装置を所定の回数だけ繰り返して作動させる変動入賞装置作動制御手段と、
前記特別遊技状態が発生中であることを示す特別遊技状態信号を前記遊技情報収集手段に出力する特別遊技状態信号出力手段と、
前記遊技領域に発射された遊技媒体の数を特定可能なアウト球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するアウト球数情報出力手段と、
遊技者に付与された遊技価値を特定可能なセーフ球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するセーフ球数情報出力手段と、を備え、
前記遊技情報収集手段は、
前記特別遊技状態におけるアウト球数情報を特賞中アウト球数情報として特別遊技状態の発生毎に収集して、かつ、前記特別遊技状態におけるセーフ球数情報を特賞中セーフ球数情報として特別遊技状態の発生毎に収集する特別遊技状態遊技情報収集手段と、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段によって収集された前記特賞中アウト球数情報を用いて、前記遊技用装置で発生した前記特別遊技状態の概要を判別する特別遊技状態概要判別手段と、を備え、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段は、前記特別遊技状態信号出力手段による特別遊技状態信号の出力が終了してから、所定期間が経過するまでの期間におけるセーフ球数情報を、前記特賞中セーフ球数情報として収集可能とすることを特徴とする遊技管理システム。」

(補正後:平成26年6月30日付け手続補正書)
「【請求項1】
遊技領域に遊技媒体が発射されて遊技が行われた結果、予め定められた始動条件が成立することによって所定の遊技動作による補助遊技を実行する補助遊技実行手段と、
遊技媒体を受け入れない閉状態から遊技媒体を受け入れやすい開状態に変換され、発射された遊技媒体を受け入れて遊技者に遊技価値を付与する変動入賞装置と、を備える遊技用装置と、
前記遊技用装置から出力される遊技情報を収集する遊技情報収集手段と、を備える遊技管理システムであって、
前記遊技用装置は、
前記補助遊技が特定の結果となった場合に、前記変動入賞装置の開状態への変換態様が異なる複数の特別遊技状態の何れかを発生させる特別遊技状態発生手段と、
前記特別遊技状態が発生すると前記変動入賞装置を所定の回数だけ繰り返して作動させる変動入賞装置作動制御手段と、
前記特別遊技状態が発生中であることを示す特別遊技状態信号を前記遊技情報収集手段に出力する特別遊技状態信号出力手段と、
前記遊技領域に発射された遊技媒体の数を特定可能なアウト球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するアウト球数情報出力手段と、
遊技者に付与された遊技価値を特定可能なセーフ球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するセーフ球数情報出力手段と、を備え、
前記遊技情報収集手段は、
前記特別遊技状態におけるアウト球数情報である特賞中アウト球数情報と前記特別遊技状態におけるセーフ球数情報である特賞中セーフ球数情報とを特別遊技状態遊技情報として前記特別遊技状態の発生毎に収集する特別遊技状態遊技情報収集手段と、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段によって収集された前記特別遊技状態遊技情報を用いて、前記遊技用装置で発生した前記特別遊技状態の概要を判別する特別遊技状態概要判別手段と、を備え、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段は、前記特別遊技状態信号出力手段による特別遊技状態信号の出力が終了してから、所定期間が経過するまでの期間におけるセーフ球数情報を、前記特賞中セーフ球数情報として収集可能とし、
前記遊技用装置は前記変動入賞装置を複数備え、
前記特別遊技状態の概要には、複数の前記変動入賞装置のうちいずれの変動入賞装置が開状態に変換されたものであるかを含むものであることを特徴とする遊技管理システム。」

2.補正の適否
(1)補正事項
a.上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「遊技情報収集手段」に関して、
「前記特別遊技状態におけるアウト球数情報を特賞中アウト球数情報として特別遊技状態の発生毎に収集して、かつ、前記特別遊技状態におけるセーフ球数情報を特賞中セーフ球数情報として特別遊技状態の発生毎に収集する特別遊技状態遊技情報収集手段と、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段によって収集された前記特賞中アウト球数情報を用いて、前記遊技用装置で発生した前記特別遊技状態の概要を判別する特別遊技状態概要判別手段と、を備え、」を、
「前記特別遊技状態におけるアウト球数情報である特賞中アウト球数情報と前記特別遊技状態におけるセーフ球数情報である特賞中セーフ球数情報とを特別遊技状態遊技情報として前記特別遊技状態の発生毎に収集する特別遊技状態遊技情報収集手段と、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段によって収集された前記特別遊技状態遊技情報を用いて、前記遊技用装置で発生した前記特別遊技状態の概要を判別する特別遊技状態概要判別手段と、を備え、」(以下、「補正事項a.」という。)に補正するものである。

b.また、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「遊技用装置」、「特別遊技状態の概要」に関して、
「前記遊技用装置は前記変動入賞装置を複数備え、
前記特別遊技状態の概要には、複数の前記変動入賞装置のうちいずれの変動入賞装置が開状態に変換されたものであるかを含むものであること」(以下、「補正事項b.」という。)と限定するものである。

(2)補正の目的、新規事項
a.まず、補正事項a.について検討すると、「特別遊技状態概要判別手段」は、補正前は、「特賞中アウト球数情報」を用いて、判別していたが、補正後は、「特別遊技状態遊技情報」を用いて、判別することとなった。この、「特別遊技状態遊技情報」は、補正後の請求項1の記載によると、「特賞中アウト球数情報」と「特賞中セーフ球数情報」を含む信号であると解せられるが、本願明細書【0189】によれば、「アウト球数又はセーフ球数の情報に基づいて、大当たり遊技状態毎に遊技データを収集する。」と記載され、本願明細書【0191】によれば、「対応判別手段66は、・・・遊技データに基づいて、・・・判別(予測)する。」と記載されている。
そうすると、補正前には、「特別遊技状態概要判別手段」は、「特賞中アウト球数情報」を用いて、判別していたが、補正後は、「特別遊技状態遊技情報」を用いて判別するものであるから、「特賞中セーフ球数情報」を用いて、判別することを含むことになる。したがって、補正事項a.は特許請求の範囲を減縮することを目的としたものといえない。また、この補正が明りようでない記載の釈明、誤記の訂正に該当しないことは明らかである。
よって、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

b.次に、補正事項b.について検討する。
上記補正事項b.により、「特別遊技状態の概要」の判別について、補正前には、「変動入賞装置の開状態への変換態様が異なる複数の特別遊技状態の何れか」の判別を含むものであったが、補正後には、それに加えて、「前記遊技用装置は前記変動入賞装置を複数備え」、「複数の前記変動入賞装置のうちいずれの変動入賞装置が開状態に変換されたものであるか」も含むものとなった。
しかしながら、本願の願書に最初に添付された明細書には、第1の実施の態様、第2の実施の態様では、変動入賞装置24Aのみが作動し、5ラウンド又は15ラウンド開閉動作が実行され、第3の実施の態様、第4の実施の態様では、変動入賞装置24A、変動入賞装置24Aがラウンド数を異ならせて作動することが記載されているが、第1の実施の態様又は第2の実施の態様と第3の実施の態様又は第4の実施の態様を組み合わせた態様、すなわち、変動入賞装置の開閉ラウンド数を複数にし、かつ、開閉ラウンド数が異なる複数の変動入賞装置を備えた態様については記載されていない。
したがって、「遊技用装置」、「特別遊技状態の概要」に関して、「前記遊技用装置は前記変動入賞装置を複数備え、前記特別遊技状態の概要には、複数の前記変動入賞装置のうちいずれの変動入賞装置が開状態に変換されたものであるかを含むものであること」は本願の願書に最初に添付された明細書に記載されておらず、また、本願の願書に最初に添付された明細書の記載から自明の事項ともいえない。そして、願書に最初に添付された特許請求の範囲、図面からも同様なことがいえる。
したがって、補正事項b.は願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものである。
よって、この補正は当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものということはできず、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)小括
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件
本件補正について、上記2.のとおりであるが、仮に、本件補正が限定的減縮を目的とするものとして、本件補正後の前記請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の補正の概要において示したとおりのものである。

(2)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である「特開2005-192990号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技媒体を使用した遊技により入賞が発生したときに所定個数の遊技媒体を払い出すように構成されその遊技時に入賞率を通常時より高めた第1の大当たり状態及び第2の大当たり状態が発生可能な遊技機であって、前記第1及び第2の大当たり状態にある各期間中の払出遊技媒体数が互いに相違する遊技機に係る稼動データを各遊技機別に区分して集計管理する遊技場用データ管理システムにおいて、
前記遊技機が前記第1及び第2の大当たり状態の何れかにある期間を大当たり期間として検出する検出手段と、
この検出手段により検出された大当たり期間に払い出された遊技媒体数を示す大当たり中払出遊技媒体数データ、並びに当該大当たり期間での払出遊技媒体数及び使用遊技媒体数の差である大当たり中差引遊技媒体数データの少なくとも一方の集計動作を行うデータ集計手段と、
このデータ集計手段により集計された大当たり中払出遊技媒体数データ或いは大当たり中差引遊技媒体数データが、各大当たり状態のそれぞれについて予め設定された上限しきい値及び下限しきい値の範囲に収まっているか否かに基づいて、前記第1及び第2の大当たり状態の何れが発生しているかを判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする遊技場用データ管理システム。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の遊技場用データ管理システムでは、払出パチンコ玉数がそれぞれ異なる2以上の大当たり状態が発生可能なパチンコ遊技機を管理対象とすることについて何も考慮されていないため、遊技機全体の稼動データを把握することは可能であるが、各大当たり状態に係る個別の稼動データを個別に把握することが困難になるという事情がある。特に、2以上の大当たり状態が設定されているにも関わらず、大当たり状態にあることを示す大当たり信号が1種類しか出力されないパチンコ遊技機も存在する可能性があり、このようなパ
チンコ遊技機については、遊技機の稼動データを各大当たり状態毎に区分して集計することが全く不可能になる。つまり、この種のパチンコ遊技機が管理対象であった場合、従来システムでは、各大当たり状態毎に区分した状態の稼動データを集計することが不可能になって、当該稼動データの関係により得られる各大当たり状態の遊技特性を個別に把握することが困難になるため、例えば、複合パチンコ遊技機に対する釘調整を的確に行うことが不可能になるなどの問題点が出てくる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2以上の大当たり状態が発生可能な遊技機、特には各大当たり状態の発生をそれぞれ示す信号が出力されない形態の遊技機が管理対象であった場合でも、各大当たり状態に係る稼動データを個別に集計可能となる遊技場用データ管理システムを提供することにある。」

(ウ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1実施例について図面を参照しながら説明する。
図2にはパチンコ遊技機の正面外観が概略的に示されている。この図2において、パチンコ遊技機1は、その上皿2内のパチンコ玉を電動式の玉発射機構(操作ダイヤルのみ符号3を付して示す)により盤面4へ発射する構成となっている。盤面4には、アウト口5、第1スタート入賞口6、第2スタート入賞口7、アタッカーと呼ばれる電動役物8a及び9aをそれぞれ備えた第1大型入賞口8及び第2大型入賞口9、第1スタート入賞口6へのパチンコ玉(遊技媒体)の入賞が動作開始契機とされた第1図柄表示部10、第2スタート入賞口7へのパチンコ玉の入賞が動作開始契機とされた第2図柄表示部11が設けられていると共に、図示しない通常入賞口も設けられている。つまり、パチンコ遊技機1は、同一種のパチンコ遊技機を融合した構成(第1種パチンコ遊技機の大当たり機能を2台分備えた形態)となっている。
【0024】
第1図柄表示部10は、第1スタート入賞口6へのパチンコ玉の入賞に応じて行われる所定の大当たり確率の第1抽選動作の結果を表示し、第2図柄表示部11は、第2スタート入賞口7へのパチンコ玉の入賞に応じて行われる所定の大当たり確率の第2抽選動作の結果を表示するためのもので、図2では、それぞれ3桁の数字列より成るルーレットを表示する例が示されている。即ち、第1及び第2図柄表示部10及び11は、それぞれに対応した第1及び第2スタート入賞口6及び7への各パチンコ玉の入賞に応じて互いに独立した状態でルーレットの変動表示(本実施例の場合、数字列の各桁の「0」?「9」の範囲での変動表示)を開始するものであり、上記第1及び第2抽選動作の結果が大当たりであった各場合に、その変動終了時点で数字列が「111」、「222」、…のようなぞろ目図柄(大当たり図柄)となるように制御される。
【0025】
この場合、第1図柄表示部10にぞろ目図柄が表示された状態で第1大当たり条件が成立し、第2図柄表示部11にぞろ目図柄が表示された状態で第2大当たり条件が成立することになる。そして、第1大当たり条件が成立したときには、第1大型入賞口8の電動役物8a(アタッカー)が予め決められたモードにて所定期間だけ開放され、以て当該入賞口8への入賞率が極端に高められた第1の大当たり状態(以下これを第1大当たりと呼ぶ)を呈するものである。また、第2大当たり条件が成立したときには、第2大型入賞口9の電動役物9a(アタッカー)が予め決められたモードにて所定期間だけ開放され、以て当該入賞口9への入賞率が極端に高められた第2の大当たり状態(以下これを第2大当たりと呼ぶ)を呈するものである。
【0026】
本実施例によるパチンコ遊技機1は、第1スタート入賞口6へのパチンコ玉入賞に応じて行われる第1抽選動作の大当たり確率を1/350、第2スタート入賞口7へのパチンコ玉入賞に応じて行われる第2抽選動作の大当たり確率を1/160に設定しており、また、第1及び第2大当たりにある各期間中の継続ラウンド数、各ラウンドでの各大型入賞口8及び9への入賞可能個数、各大型入賞口8及び9への1入賞に対する払出パチンコ玉数が決まっているので、第1大当たりが発生したときの平均的な差玉数が1800個前後、第2大当たりが発生したときの平均的な差玉数が1200個前後となる。つまり、パチンコ遊技機1にあっては、第1及び第2大当たりにある各期間中の払出パチンコ玉数の合計値(払出遊技媒体数)が互いに異なった状態となっている。」

(エ)「【0029】
このように構成されたパチンコ遊技機1には、以下に述べるような各信号を外部へ出力する機能が設けられている。
即ち、パチンコ遊技機1は、打込パチンコ玉数を示すアウト玉数信号、並びに賞球として払い出されたパチンコ玉の数を示すセーフ玉数信号を出力する構成となっている。また、パチンコ遊技機1は、第1図柄表示部10による図柄変動動作の実行(以下、これを第1スタートと呼ぶ)毎に第1スタート信号を出力し、第2図柄表示部11による図柄変動動作の実行(以下、これを第2スタートと呼ぶ)毎に第2スタート信号を出力する構成となっている。さらに、パチンコ遊技機1は、第1大当たりが発生した場合及び第2大当たりが発生した場合に大当たり信号を出力する構成、つまり第1及び第2大当たりが発生した各期間に同一の大当たり信号を出力する構成となっている。尚、この大当たり信号は、パチンコ遊技機1が第1或いは第2大当たりにある各期間中を通じて継続的に出力されるものである。
【0030】
図1には、本実施例によるパチンコホール用管理システムの概略的構成が本発明の要旨に関係した部分のみ示されている。この図1において、パチンコホール内に多数台ずつ設置されたパチンコ遊技機1及び台間玉貸機12は、互いの間で信号の授受を行い得るように構成されている。パチンコ遊技機1の上方には呼出ランプユニット13が設けられており、当該パチンコ遊技機1は、呼出ランプユニット13を介して入出力装置14と接続さ
れ、台間玉貸機12はパチンコ遊技機1及び呼出ランプユニット13を介して入出力装置14に接続されている。尚、パチンコ遊技機1から入出力装置14には、前述したアウト玉数信号、セーフ玉数信号、第1スタート信号、第2スタート信号、大当たり信号などが出力される。」

(オ)「【0033】
入出力装置14は、店内LAN15に接続されており、この店内LAN15には、パチンコホールの管理事務所内に設置された管理コンピュータ16(検出手段、データ集計手段、判定手段に相当)が接続されている。また、図示しないが、店内LAN15には、景品交換カウンタに設置されたPOS端末及び島端に設置されたパチンコ玉計数機なども接続される。
【0034】
管理コンピュータ16は、パチンコ遊技機1及び台間玉貸機12から出力される種々の信号(アウト玉数信号、セーフ玉数信号、第1スタート信号、第2スタート信号、大当たり信号、売上信号など)に基づいて、パチンコ遊技機1についての稼動データ(アウト玉数(打込パチンコ玉数)、セーフ玉数、差玉数、稼動率、出玉率、ベース、図柄表示部10及び11の各スタート回数(第1スタート回数、第2スタート回数)など)、並びに台間玉貸機12についての貸出高データ(売上金額、割数など)を集計して格納するという周知のデータ集計機能を備えた構成となっている。」

(カ)「【0036】
管理コンピュータ16は、大当たり信号の出力期間に集計した稼動データに基づいて大当たり履歴データを作成するものである。但し、本実施例では、2種類の第1及び第2大当たりが設定されているにも関わらず、大当たり信号が1種類しか出力されないパチンコ遊技機1を管理対象としているため、当該大当たり信号だけでは、管理コンピュータ16
側において集計される稼動データが第1及び第2大当たりのどちらによるものかを区別できない。そこで、本実施例では管理コンピュータ16において、上記大当たり信号並びにパチンコ遊技機1が大当たりにある期間中の差玉数(大当たり中差玉数:大当たり中差引遊技媒体数データに相当)に基づいて、第1及び第2大当たりのどちらが発生したかを判定する構成としており、以下これについて説明する。
【0037】
即ち、パチンコ遊技機1においては、前述したように、第1大当たりが発生したときの平均的な大当たり中差玉数は1800個前後、第2大当たりが発生したときの平均的な大当たり中差玉数は1200個前後となるように設定されている。そこで、管理コンピュータ16においては、大当たり信号が出力された期間(第1大当たりまたは第2大当たりの継続期間)における大当たり中差玉数が予め設定された上限しきい値及び下限しきい値の範囲に収まっているか否かに基づいて、発生した大当たりの種類を判定する構成となっている。
【0038】
この場合、第1大当たりについての大当たり中差玉数用の上限しきい値及び下限しきい値を例えば「2000」及び「1600」に設定し、第2大当たりについての大当たり中差玉数用の上限しきい値及び下限しきい値を例えば「1400」及び「1000」に設定する。
従って、大当たり信号が出力された場合に、これに伴う大当たり中差玉数を監視し、最終的に、
1600≦大当たり中差玉数≦2000
の状態となったときに第1大当たりが発生したものと判定し、
1000≦大当たり中差玉数≦1400
の状態となったときに第2大当たりが発生したものと判定することになる。」

(キ)「【0044】
図5には、図3のようなタイミングで大当たり信号を出力したパチンコ遊技機1に対応した複合データを、当該図3中に示したタイミングTにて作成した場合の例が示されている。
この図5において、複合データは、大当たりの発生順を示す通し番号(「1」?「9」)と対応付けた状態で、各大当たり履歴データ(発生時刻、大当たりの種類(「1」は第1大当たり、「2」は第2大当たり)、発生状態、大当たり間アウト、大当たり間差玉、大当たり間スタート(第1スタート回数及び第2スタート回数)、大当たり中差玉、大当たり中アウト、大当たり中セーフの組合せデータ)を記録すると共に、図3中のタイミングTでの大当たり間アウト、大当たり間差玉、大当たり間スタートを記録した形態となっている。
【0045】
さらに、管理コンピュータ16は、図5に示すように、上記のように記録した複合データ中に、以下に述べるような「第1大当たり合計」、「第2大当たり合計」、「第1大当たり平均」、「第2大当たり平均」、「実スタート比率」、「全平均」の各データを付け加えて集計する構成となっている。・・・」

(ク)「【0054】
(第2の実施の形態)
上記第1実施例では、管理対象が複合パチンコ遊技機である場合について説明したが、従来から提供されている通常のパチンコ遊技機を管理対象とした場合でも、同様の効果を奏するものであり、以下においては、通常パチンコ遊技機を管理対象とした本発明の第2実施例について、前記第1実施例と異なる部分のみ説明する。
・・・
【0057】
尚、本実施例の場合、大当たりラウンド数が15ラウンドの大当たりが本発明でいう第1の大当たり状態に相当し、大当たりラウンド数が8ラウンド及び1ラウンドの大当たりが本発明でいう第2の大当たり状態に相当することになる。
本実施例では、管理コンピュータ16(図1参照)が請求項7記載の発明でいう継続回数特定手段として機能するようになる。この場合、管理コンピュータ16は、上記図示しないパチンコ遊技機から出力される大当たり信号の出力期間に集計した稼動データに基づいて大当たり履歴データを作成するものであるが、当該大当たり信号は1種類しか出力されないため、継続ラウンド数が異なる各大当たり状態のどれが発生したか区別できず、また、パンクが発生したときの継続ラウンド数も判定できない。そこで、管理コンピュータ16は、上記大当たり信号並びにその大当たり信号により示される大当たり状態期間中の差玉数(大当たり中差玉数:大当たり中差引遊技媒体数データに相当)と、図7に示すようなテーブルに基づいて、大当たり状態にある期間中の継続ラウンド数を特定する構成となっている。尚、図7は、上記大当たり状態での継続ラウンド数と各ラウンド中における大当たり中差玉数(下限しきい値及び上限しきい値)との関係を示すテーブルである。」

(ケ)「【0064】
第1実施例では、第1スタート入賞口6及び第2スタート入賞口7を個別に設ける構成としたが、これらを一つのスタート入賞口により兼用する構成としても良い。この場合には、例えば、兼用スタート入賞口へのパチンコ玉の入賞タイミングや予め決められた順番などにより第1図柄表示部10及び第2図柄表示部11の何れを動作開始させるか(第1抽選動作及び第2抽選動作のいずれを行うか)を選択する手段を設けたり、或いは兼用スタート入賞口へのパチンコ玉の入賞に応じて動作する補助役物により各図柄表示部10及び11の何れを動作開始させるか選択する手段を設ける構成などが考えられる。」

(コ)上記(ウ)は第1実施例についてのパチンコ遊技機の構成について記載され、「第1スタート入賞口6へのパチンコ玉(遊技媒体)の入賞が動作開始契機とされた第1図柄表示部10、第2スタート入賞口7へのパチンコ玉の入賞が動作開始契機とされた第2図柄表示部11が設けられている」と記載され、上記(エ)には、「第1図柄表示部10による図柄変動動作の実行(以下、これを第1スタートと呼ぶ)毎に第1スタート信号を出力し、第2図柄表示部11による図柄変動動作の実行(以下、これを第2スタートと呼ぶ)毎に第2スタート信号を出力する」と記載され、そして、上記(ケ)には、「第1スタート入賞口6及び第2スタート入賞口7を個別に設ける構成としたが、これらを一つのスタート入賞口により兼用する構成としても良い。」と記載されている。
これらの記載より、パチンコ遊技機はスタート入賞口へのパチンコ玉(遊技媒体)の入賞が動作開始契機とされ、第1図柄表示部10、第2図柄表示部11の図柄変動動作の実行がされる構成を備えているといえる。なお、上記(ウ)、(エ)等において、「パチンコ遊技機」と「パチンコ遊技機1」が混在しているが、同じものを示していることは明らかであるので、以下、認定においては「パチンコ遊技機1」に統一して記載する。

(サ)上記(ウ)には、「第1図柄表示部10にぞろ目図柄が表示された状態で第1大当たり条件が成立し、第2図柄表示部11にぞろ目図柄が表示された状態で第2大当たり条件が成立することになる。そして、第1大当たり条件が成立したときには、第1大型入賞口8の電動役物8a(アタッカー)が予め決められたモードにて所定期間だけ開放され、以て当該入賞口8への入賞率が極端に高められた第1の大当たり状態(以下これを第1大当たりと呼ぶ)を呈するものである。また、第2大当たり条件が成立したときには、第2大型入賞口9の電動役物9a(アタッカー)が予め決められたモードにて所定期間だけ開放され、以て当該入賞口9への入賞率が極端に高められた第2の大当たり状態(以下これを第2大当たりと呼ぶ)を呈するものである。」と記載され、(カ)には、「第1大当たりが発生したときの平均的な大当たり中差玉数は1800個前後、第2大当たりが発生したときの平均的な大当たり中差玉数は1200個前後となるように設定されている」と記載されており、パチンコ遊技機1は、第1大当たりと第2大当たりで出玉数を異ならせている。

(シ)上記(オ)によれば、管理コンピュータ16は、検出手段、データ集計手段、判定手段に相当するものであり、パチンコ遊技機1等から出力される種々の信号を集計して格納するデータ集計手段を備えている。そして、上記(カ)には、「管理コンピュータ16において、上記大当たり信号並びにパチンコ遊技機1が大当たりにある期間中の差玉数(大当たり中差玉数:大当たり中差引遊技媒体数データに相当)に基づいて、第1及び第2大当たりのどちらが発生したかを判定する」と記載されており、管理コンピュータ16は上記のような判定手段を備えている。

(ス)上記(エ)には、「パチンコ遊技機1は、第1大当たりが発生した場合及び第2大当たりが発生した場合に大当たり信号を出力する構成、つまり第1及び第2大当たりが発生した各期間に同一の大当たり信号を出力する構成となっている。尚、この大当たり信号は、パチンコ遊技機1が第1或いは第2大当たりにある各期間中を通じて継続的に出力されるものである。」と記載され、大当たりにある各期間中を通じて継続的に大当たり信号を出力することが記載され、また、上記(オ)によれば、大当たり信号は管理コンピュータ16(集計手段)に出力されている。
また、同(エ)によれば、パチンコ遊技機1は、打込パチンコ玉数を示すアウト玉数信号、並びに賞球として払い出されたパチンコ玉の数を示すセーフ玉数信号を出力し、上記(オ)によれば、これらのアウト玉数信号、セーフ玉数信号は、管理コンピュータ16(集計手段)に出力されている。

(セ)上記(カ)には、「管理コンピュータ16は、大当たり信号の出力期間に集計」と記載されており、上記(オ)の種々の信号は、大当たり信号の出力期間に集計できることは明らかである。また、上記(キ)には、大当たり発生順に「大当たり中差玉、大当たり中アウト、大当たり中セーフの組合せデータ)を記録する」ことが記載されており、これらのデータの記録は大当たり発生毎であることは明らかである。
したがって、上記(シ)におけるデータ集計手段は、大当たり発生毎に大当たり信号の出力期間にアウト玉数信号、セーフ玉数信号、大当たり中差玉数信号を集計しているといえる。

したがって、上記(ア)?(キ)の記載事項及び(ケ)?(セ)の記載事項及び認定事項を総合すれば、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「遊技媒体を使用した遊技により、スタート入賞口へのパチンコ玉(遊技媒体)の入賞が動作開始契機とされ、第1図柄表示部10、第2図柄表示部11の図柄変動動作の実行がされ、
第1大当たり条件が成立したときには、第1大型入賞口8の電動役物8aが予め決められたモードにて所定期間だけ開放され、第2大当たり条件が成立したときには、第2大型入賞口9の電動役物9aが予め決められたモードにて所定期間だけ開放されるパチンコ遊技機1と、
パチンコ遊技機1等から出力される種々の信号を集計して格納するデータ集計手段を備えた管理コンピュータ16であって、
前記パチンコ遊技機は、
第1図柄表示部10にぞろ目図柄が表示された状態で第1大当たり条件が成立し、第2図柄表示部11にぞろ目図柄が表示された状態で第2大当たり条件が成立し、第1大当たりと第2大当たりで出玉数を異なり、
大当たりにある各期間中を通じて継続的に大当たり信号を管理コンピュータ16(集計手段)に出力し、
打込パチンコ玉数を示すアウト玉数信号、並びに賞球として払い出されたパチンコ玉の数を示すセーフ玉数信号を管理コンピュータ16に出力し、
管理コンピュータ16は、
大当たり発生毎に大当たり信号の出力期間にアウト玉数信号、セーフ玉数信号、大当たり中差玉数信号を集計するデータ集計手段を備え、
大当たり信号並びにパチンコ遊技機1が大当たりにある期間中の差玉数(大当たり中差玉数:大当たり中差引遊技媒体数データに相当)に基づいて、第1及び第2大当たりのどちらが発生したかを判定する判定手段を備えた、管理コンピュータ16。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「遊技媒体を使用した遊技により」は、本願補正発明の「遊技領域に遊技媒体が発射されて遊技が行われた結果」に相当する。そして、引用発明の「スタート入賞口へのパチンコ玉(遊技媒体)の入賞が動作開始契機」となることは、本願補正発明の「予め定められた始動条件が成立すること」に相当し、また、引用発明の「図柄変動動作の実行」する手段(なお、「手段」について明示的記載はないが、存在するのは明らかである。以下、同様箇所においては説明は省略する。)は、本願補正発明の「補助遊技実行手段」に相当する。

(イ)引用発明の「第1大当たり条件が成立したときには、第1大型入賞口8の電動役物8aが予め決められたモードにて所定期間だけ開放され、第2大当たり条件が成立したときには、第2大型入賞口9の電動役物9aが予め決められたモードにて所定期間だけ開放される」における「第1大型入賞口8」、「第2大型入賞口9」は、本願補正発明の「遊技媒体を受け入れない閉状態から遊技媒体を受け入れやすい開状態に変換され、発射された遊技媒体を受け入れて遊技者に遊技価値を付与する変動入賞装置」に相当する。したがって引用発明は、「変動入賞装置を複数備え」ていることになる。そして、引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技用装置」に相当する。

(ウ)引用発明の「パチンコ遊技機等から出力される種々の信号を集計して格納するデータ集計手段を備え管理コンピュータ16」は、本願補正発明の「遊技用装置から出力される遊技情報を収集する遊技情報収集手段」を備える「遊技管理システム」に相当する。

(エ)引用発明の「第1図柄表示部10にぞろ目図柄が表示された状態」、「第2図柄表示部11にぞろ目図柄が表示された状態」は、本願補正発明の「補助遊技が特定の結果となった場合」に相当し、引用発明の「第1大当たりと第2大当たり」による「第1大型入賞口8の電動役物8aが予め決められたモードにて所定期間だけ開放され」、「第2大型入賞口9の電動役物9aが予め決められたモードにて所定期間だけ開放され」は、本願補正発明の「特別遊技状態」を示しているに他ならない。そして引用発明は「第1大当たりと第2大当たりで出玉数を異な」るから、引用発明は大当たりにより、本願補正発明の「複数の特別遊技状態の何れかを発生させる」手段を備えているといえる。
また、引用発明の第1大型入賞口8、9の電動役物8a、9aが「予め決められたモードにて所定期間だけ開放され」は、本願補正発明の変動入賞装置が「所定の回数だけ繰り返して作動させる」ことに相当する。

(オ)引用発明の「大当たりにある各期間中」、「大当たり信号」は、それぞれ本願補正発明の「特別遊技状態が発生中」、「特別遊技状態信号」に相当するから、引用発明の「大当たりにある各期間中を通じて継続的に大当たり信号を管理コンピュータ16(集計手段)に出力」する手段は、本願補正発明の「前記特別遊技状態が発生中であることを示す特別遊技状態信号を前記遊技情報収集手段に出力する特別遊技状態信号出力する特別遊技状態信号出力手段」に相当する。
また、引用発明の「アウト玉数信号」、「セーフ玉数信号」は、それぞれ本願補正発明の「アウト球数情報」、「セーフ球数情報」に相当するから、引用発明の「打込パチンコ玉数を示すアウト玉数信号、並びに賞球として払い出されたパチンコ玉の数を示すセーフ玉数信号を管理コンピュータ16に出力」する手段は、本願補正発明の「前記遊技領域に発射された遊技媒体の数を特定可能なアウト球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するアウト球数情報出力手段と、遊技者に付与された遊技価値を特定可能なセーフ球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するセーフ球数情報出力手段」に相当する。

(カ)引用発明の「大当たり発生毎に大当たり信号の出力期間にアウト玉数信号、セーフ玉数信号、大当たり中差玉数信号を集計するデータ集計手段」は、本願補正発明の「前記特別遊技状態におけるアウト球数情報である特賞中アウト球数情報と前記特別遊技状態におけるセーフ球数情報である特賞中セーフ球数情報とを特別遊技状態遊技情報として前記特別遊技状態の発生毎に収集する特別遊技状態遊技情報収集手段」に相当する。
そして、引用発明の「大当たり中差玉数信号」は、本願補正発明の「特別遊技状態遊技情報」に含まれ、また、引用発明の「大当たり信号並びにパチンコ遊技機が大当たりにある期間中の差玉数(大当たり中差玉数:大当たり中差引遊技媒体数データに相当)」は「データ集計手段」から収集されることは明らかである。したがって、引用発明の「大当たり信号並びにパチンコ遊技機1が大当たりにある期間中の差玉数(大当たり中差玉数:大当たり中差引遊技媒体数データに相当)に基づいて、第1及び第2大当たりのどちらが発生したかを判定する判定手段」は、本願補正発明の「特別遊技状態遊技情報収集手段によって収集された前記特別遊技状態遊技情報を用いて、前記遊技用装置で発生した前記特別遊技状態の概要を判別する特別遊技状態判別手段」に相当する。
また、上記(イ)より引用発明は複数の変動入賞装置を備えていることから、引用発明の「第1及び第2大当たりのどちらが発生したかを判定する判定手段」は、本願補正発明の「複数の前記変動入賞装置のうちいずれの変動入賞装置が開状態に変換されたものであるか」を判別することを可能とするものである。

そうすると、両者は、
「遊技領域に遊技媒体が発射されて遊技が行われた結果、予め定められた始動条件が成立することによって所定の遊技動作による補助遊技を実行する補助遊技実行手段と、
遊技媒体を受け入れない閉状態から遊技媒体を受け入れやすい開状態に変換され、発射された遊技媒体を受け入れて遊技者に遊技価値を付与する変動入賞装置と、を備える遊技用装置と、
前記遊技用装置から出力される遊技情報を収集する遊技情報収集手段と、を備える遊技管理システムであって、
前記遊技用装置は、
前記補助遊技が特定の結果となった場合に、複数の特別遊技状態の何れかを発生させる特別遊技状態発生手段と、
前記特別遊技状態が発生すると前記変動入賞装置を所定の回数だけ繰り返して作動させる変動入賞装置作動制御手段と、
前記特別遊技状態が発生中であることを示す特別遊技状態信号を前記遊技情報収集手段に出力する特別遊技状態信号出力手段と、
前記遊技領域に発射された遊技媒体の数を特定可能なアウト球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するアウト球数情報出力手段と、
遊技者に付与された遊技価値を特定可能なセーフ球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するセーフ球数情報出力手段と、を備え、
前記遊技情報収集手段は、
前記特別遊技状態におけるアウト球数情報である特賞中アウト球数情報と前記特別遊技状態におけるセーフ球数情報である特賞中セーフ球数情報とを特別遊技状態遊技情報として前記特別遊技状態の発生毎に収集する特別遊技状態遊技情報収集手段と、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段によって収集された前記特別遊技状態遊技情報を用いて、前記遊技用装置で発生した前記特別遊技状態の概要を判別する特別遊技状態概要判別手段と、を備え、
前記遊技用装置は前記変動入賞装置を複数備え、
前記特別遊技状態の概要には、複数の前記変動入賞装置のうちいずれの変動入賞装置が開状態に変換されたものであるかを含むものである遊技管理システム。」
である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点1)
特別遊技状態発生手段について、本願補正発明は、「変動入賞装置の開状態への変換態様が異なる」ようにしたのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(相違点2)
特別遊技状態遊技情報収集手段について、本願発明は、「前記特別遊技状態信号出力手段による特別遊技状態信号の出力が終了してから、所定期間が経過するまでの期間におけるセーフ球数情報を、前記特賞中セーフ球数情報として収集可能とし」たのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(4)判断
a.相違点1について
刊行物1の(ク)には、本願の第2の実施の形態として、段落番号【0057】において、「尚、本実施例の場合、大当たりラウンド数が15ラウンドの大当たりが本発明でいう第1の大当たり状態に相当し、大当たりラウンド数が8ラウンド及び1ラウンドの大当たりが本発明でいう第2の大当たり状態に相当することになる。」と記載されている。
この記載によれば、変動入賞装置が開閉する大当たりラウンド数が15ラウンド、8ラウンド、1ラウンドにする態様が示されているから、刊行物1には、変動入賞装置の開状態への変換態様が異なるようにした構成が記載されているといえる。
したがって、引用発明の特別遊技状態発生手段において、上記刊行物1に記載された事項を採用し、前記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

b.相違点2について
一般に、パチンコ遊技機において、入賞口に入賞することにより入賞の種類に応じた賞球の払い出しが行われるが、入賞の時期と賞球の払い出しの時期にはタイムラグがあることはよく知られており、技術常識でもある。そして、特別遊技状態信号出力手段による特別遊技状態信号の出力が終了してから、所定期間が経過するまでの期間におけるセーフ球数情報を、特賞中セーフ球数情報として収集可能とし、セーフ球数を正確に求めることは、例えば、特許第2596579号公報(第2頁右欄(作用)の遅延信号の出力時間が所定期間に相当する。)、特開平7-59935号公報(補正後の段落0071のα時間が所定期間に相当する。)、特開平8-191942号公報(段落0033の遅延タイマの作動期間が所定期間に相当する。)に記載されているように、本願の公開準備日前にパチンコ機の管理装置において周知技術である。
そして、引用発明は、「各大当たり状態に係る稼動データを個別に集計」(上記(2)(イ)参照)することを、その課題とするものであるから、稼働データを正確に集計する必要があることは当業者にとって自明である。
したがって、このような周知技術を引用発明の特別遊技状態遊技情報収集手段に採用し、前記相違点2に係る本願補正発明とすることは当業者が容易になし得ることである。

また、本願補正発明の作用効果は引用発明、刊行物1に記載された事項及び周知技術からみて格別のものではない。

c.請求人の主張について
審判請求人は、平成26年11月7日付けで上申書を提出し、以下のような主張をしている。
「(1)引用文献1(特開2005-192990)のうち、特に段落[0044]?[0051]には、管理コンピュータ16が集計し出力するデータについて、遊技機が出力する稼働データに係る信号の出力態様やその判定、および大当りの別、大当り回数、連チャン回数、確変および時短の発生回数、スタート回数、遊技球数に係るデータに関する記載が認められるが、当該記載箇所の中に大型入賞口8、大型入賞口9のどちらが作動したかに関する記載は認められない。
(2)そして、引用文献1の第1の実施の形態に開示の技術において、大当りの種類の数と大入賞口の数が偶然同じであるため、大当りの種類を示すデータによっていずれの大入賞口が作動したかを、データを見た人が判断することができるだけである。」

しかしながら、上記第2の3.(2)(ウ)【0025】で示したように、第1大当たり条件が成立第1大型入賞口8の電動役物8a(アタッカー)が予め決められたモードにて所定期間だけ開放され、第2大当たり条件が成立したときには、第2大型入賞口9の電動役物9a(アタッカー)が予め決められたモードにて所定期間だけ開放されることが記載され、また、(カ)【0037】、【0038】には、管理コンピュータ16において中差出玉数から第1大当たり、第2大当たりを判定することが記載されている。
以上の記載より、第1大当たりは第1大型入賞口8の開放によるものであり、第2大当たりには第2大型入賞口9の開放によるものであることを、管理コンピュータが管理していることは明らかである。
よって、請求人の主張は採用できない。

d.まとめ
したがって、本願補正発明は引用発明及び刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正(平成26年6月30日付け手続補正)は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年7月18日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で前述した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
遊技領域に遊技媒体が発射されて遊技が行われた結果、予め定められた始動条件が成立することによって所定の遊技動作による補助遊技を実行する補助遊技実行手段と、
遊技媒体を受け入れない閉状態から遊技媒体を受け入れやすい開状態に変換され、発射された遊技媒体を受け入れて遊技者に遊技価値を付与する変動入賞装置と、を備える遊技用装置と、
前記遊技用装置から出力される遊技情報を収集する遊技情報収集手段と、を備える遊技管理システムであって、
前記遊技用装置は、
前記補助遊技が特定の結果となった場合に、前記変動入賞装置の開状態への変換態様が異なる複数の特別遊技状態の何れかを発生させる特別遊技状態発生手段と、
前記特別遊技状態が発生すると前記変動入賞装置を所定の回数だけ繰り返して作動させる変動入賞装置作動制御手段と、
前記特別遊技状態が発生中であることを示す特別遊技状態信号を前記遊技情報収集手段に出力する特別遊技状態信号出力手段と、
前記遊技領域に発射された遊技媒体の数を特定可能なアウト球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するアウト球数情報出力手段と、
遊技者に付与された遊技価値を特定可能なセーフ球数情報を前記遊技情報収集手段に出力するセーフ球数情報出力手段と、を備え、
前記遊技情報収集手段は、
前記特別遊技状態におけるアウト球数情報を特賞中アウト球数情報として特別遊技状態の発生毎に収集して、かつ、前記特別遊技状態におけるセーフ球数情報を特賞中セーフ球数情報として特別遊技状態の発生毎に収集する特別遊技状態遊技情報収集手段と、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段によって収集された前記特賞中アウト球数情報を用いて、前記遊技用装置で発生した前記特別遊技状態の概要を判別する特別遊技状態概要判別手段と、を備え、
前記特別遊技状態遊技情報収集手段は、前記特別遊技状態信号出力手段による特別遊技状態信号の出力が終了してから、所定期間が経過するまでの期間におけるセーフ球数情報を、前記特賞中セーフ球数情報として収集可能とすることを特徴とする遊技管理システム。」

1.刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項、引用発明は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、実質的に本願補正発明の発明特定事項から、上記第2の1.の下線部の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2で検討したとおり、引用発明と刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明と刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-10 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-07-13 
出願番号 特願2012-87202(P2012-87202)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 本郷 徹
遠藤 孝徳
発明の名称 遊技管理システム  
代理人 後藤 政喜  
代理人 後藤 政喜  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 後藤 政喜  

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