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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1304926
審判番号 不服2014-12180  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-25 
確定日 2015-09-03 
事件の表示 特願2012-201004「情報配信方法、及び情報配信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月10日出願公開、特開2013- 9423〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成19年3月14日の出願である特願2007-065361号の一部を平成24年9月12日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願(特願2012-201004号)としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 7月22日付け:拒絶理由の通知
平成25年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出
平成25年11月20日付け:拒絶理由(最後)の通知
平成26年 1月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 3月18日付け:平成26年 1月27日に提出された
手続補正書による手続補正についての
補正却下の決定、拒絶査定
平成26年 6月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成27年 4月 9日付け:当審による拒絶理由の通知
平成27年 6月15日 :意見書の提出

特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年 6月25日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
移動端末の、前回の配信情報の送信履歴が示す前記前回の配信情報の配信時の位置からの移動距離が所定の距離を越えたことの検出を行い、
該検出に応じて、移動後の該移動端末の位置を配信対象の位置範囲に含む配信情報を、それぞれ配信対象の位置範囲が設定された複数の配信情報の中から選択し、
選択した前記配信情報を前記移動端末に送信する、
ことを特徴とする情報配信方法。」

2.引用発明
これに対して、当審の拒絶理由で引用された文献であり、本願出願日前に公開された、特開2005-78497号公報(以下、「引用例」という。)には、「サーバ装置および広告配信方法」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
本発明はサーバ装置および広告配信方法に関し、例えば、広告の配信先である顧客の実環境などを考慮した広告配信に関する。」

ロ.「【0008】
広告を受け取る顧客を取り巻く実環境(位置・天候・時間など)、顧客の趣味・嗜好といった個人情報を、単独ではなく組み合せて使用し、顧客により有益な広告を配信することが望ましい。」

ハ.「【0028】
●店舗情報ファイル
広告配信支援サーバ2は、店舗の経営者や担当者(以下、単に「店舗」と呼ぶ場合がある)が店舗端末6を操作して入力した情報を基に店舗情報ファイルを作成しデータベース3に保存する。図5は店舗情報ファイルの一例を示す図で、店舗識別番号、店舗名称、住所、電話番号などの店舗属性情報、店舗位置、天候地域、並びに、商品カテゴリとその推奨比率を一組とする複数の推奨商品セットなどをもつ。
【0029】
「店舗位置」は、GPS (Global Positioning System)や通信事業者の基地局の情報によって得た位置情報で、下記のフォーマットにより位置を示す。
Addd.mm.ss.xx
Bddd.mm.ss.xx
ここで、Aは緯度を表し、N(北緯)またはS(南緯)
Bは経度を表し、E(東経)またはW(西経)
ddd.mm.ss.xxは「度.分.秒.百分の一秒」を表す数値」

ニ.「【0033】
●広告配信履歴ファイル
広告配信支援サーバ2は、後述する広告配信を行った場合、その履歴を広告配信履歴ファイルとして作成しデータベース3に保存する。図6は広告配信履歴ファイルの一例を示す図で、広告の配信先を示す顧客識別番号ごとに、広告の配信日時、配信元店舗の店舗識別番号、配信先位置(配信時の携帯端末7の位置)などをもつ。なお、「直近配信実績」には、その顧客識別番号に対する最新の配信情報を保存し、「配信履歴n」(n=1, 2, 3, …)には、その顧客識別番号に対する以前の配信情報をスタックする(nの増加とともに古くなる)。
【0034】
●係数テーブル
広告配信支援サーバ2は、データベース3に保存された情報のうち、一部の判定値について、広告配信支援システム1の管理者の端末4からの入力を受け付けて係数テーブルに反映し、処理内容の調整を可能としている。図7は係数テーブルの一例を示す図で、詳細は後述するが、項目として広告配信の基準になる時間間隔、気温情報(暑いか、暖かいか、涼しいか、寒いかを判定する実際の気温の値)、後述する店舗スコアを計算するために使用するパラメータ値などを保持する。
【0035】
[処理]
広告配信支援サーバ2は、位置情報の問合処理、位置情報の受領処理、および、広告配信処理などを行うが、以下、それら処理を順に説明する。
【0036】
●位置情報の問合処理
広告配信支援サーバ2は、係数テーブルの「稼動時間帯」が示す期間、「起動間隔」が示す時間間隔で位置情報の問合処理を起動し実行する。例えば、図7に示す係数テーブルによれば、7時から23時までの間、0.7時間(42分)ごとに位置情報の問合処理を起動し実行する。図8は位置情報の問合処理の一例を示すフローチャートである。
【0037】
広告配信支援サーバ2は、顧客情報ファイルに登録された一人の顧客のデータを顧客情報ファイルおよび広告配信履歴ファイルから読み込み(S110)、現在時刻とその顧客の直近配信実績の配信日時とを比較して、係数テーブルの「基準配信間隔」(図7の例では三時間)以上の時間が経過しているか否かを判定する(S112)。経過していれば当該顧客を、位置情報を問い合わせる顧客として、図示しないRAMの所定領域に記憶する(S114)。また、未経過であれば、ステップS114の処理をスキップして、顧客情報ファイルが登録された全顧客について、ステップS112の判定が終了したか否かを判断する(S116)。未了であれば、顧客情報ファイルが登録された次の顧客に対するステップS112の判定を行うために、処理をステップS110に戻す。このようにして、全顧客(登録された全顧客情報ファイル)についてステップS112の判定を終了すると処理をステップS118へ進める。
【0038】
このように、ステップS112の経過時間の判定により、同一の顧客に対して「基準配信間隔」に設定された時間内に続けて広告を配信しないようにし、顧客に不快感を与えることを避ける。
【0039】
広告配信支援サーバ2は、位置情報を問合わせる顧客として記憶した顧客について、その携帯端末7の通信事業者に対して、位置情報を問い合わせるためのショートメッセージを携帯端末7へ送るように要求する(S118)。この要求は、係数テーブルの「位置要求送出単位」に設定された人数分ごとにまとめて行う。また、ステップS114において、位置情報を問合わせる顧客として記憶した顧客の数が「位置要求送出単位」の設定値に達するごとに、ステップS118の要求を行ってもよい。」

ホ.「【0042】
●位置情報の受領処理
次に、広告配信支援サーバ2が行う位置情報の受領処理について説明する。なお、位置情報の受領処理は停止することなく稼動し続ける。図9は位置情報の受領処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
広告配信支援サーバ2は、携帯端末7の位置情報アプリケーションプログラムから顧客識別番号、位置情報、その誤差、起動種別などの情報を受信すると(S120)、受信した情報をデータベース3に格納された配信候補顧客ファイルの最後尾に一件のレコードとして記録し(S122)、処理をステップS120に戻す。」

ヘ.「【0048】
●広告配信処理
次に、広告配信支援サーバ2が行う広告配信処理について説明する。なお、広告配信処理は停止することなく稼動し続ける。図11は広告配信処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
広告配信支援サーバ2は、配信候補顧客ファイルにレコードがあるか否かを判定し(S210)、レコードがなければ、係数テーブルの「待機時間」に設定された時間(図7の例では0.001時間(3.6秒間))だけ処理を休止し(S212)、その後、処理をステップS210へ戻す。
【0050】
配信候補顧客ファイルにレコードがあれば、配信候補顧客ファイルの先頭から一件のレコードを読み込み(S214)、読み込んだレコードの顧客識別番号に基づき、顧客情報ファイルおよび広告配信履歴ファイルから対応する顧客のデータを読み込む(S216)。
【0051】
次に、広告配信支援サーバ2は、読み込んだレコードの配信タイプの値が「push」か否かを判定し(S218)、そうであれば(以降「プッシュ型顧客」と呼ぶ)、読み込んだレコードの誤差レベルと係数テーブルの「許容誤差」の設定値とを比較して(S220)、誤差レベル<許容誤差であればプッシュ型顧客に対する処理を行う(S222)。また、誤差レベル≧許容誤差であれば処理をステップS226へ進める。つまり、位置情報の誤差が大きい携帯端末7については、その携帯端末7と店舗との距離が正確に把握できず、両者の距離が遠い場合もあるので広告配信をせずに、効果の少ない広告配信を行う可能性を回避する。
【0052】
また、配信タイプの値が「pull」であれば(以降「プル型顧客」と呼ぶ)、プル型顧客に対する処理を行い(S224)、その後、処理をステップS226へ進める。なお、プル型顧客については誤差レベルを調査することなくプル型顧客に対する処理を行う。
【0053】
ステップS226では、配信候補顧客ファイルの先頭のレコード、つまり処理済みのレコードを削除し、その後、処理をステップS210へ戻す。
【0054】
●プッシュ型顧客に対する処理
図12はプッシュ型顧客に対する処理の流れを説明するフローチャートである。
【0055】
広告配信支援サーバ2は、店舗情報ファイルのレコードを一件読み込み(S310)、まず、営業時間のデータから当該店舗が営業中か否かを判定し(S312)、営業中でなければ処理をステップS328へ進める。
【0056】
当該店舗が営業中であれば、店舗情報ファイルの「店舗位置」と配信候補顧客ファイルの「位置情報」から、店舗と携帯端末7の間の距離を計算する(S314)。例えば、ヒュベニの距離計算式を使って計算する場合、両者の位置における緯度の平均値をP、緯度の差をdP、経度の差をdRとしてそれらを求め、続いて、子午線曲率半径Mおよび卯酉線曲率半径Nを次式により計算する。
M = 6334834/√(1 - 0.006674・sin^(2)P)^(3)
N = 6377397/√(1 - 0.006674・sin^(2)P)
【0057】
そして両者の距離Dを次式により計算する。
D = √{(M・dP)^(2) + (N・cos P・dR)^(2)}
【0058】
例えば、店舗位置を北緯35度32分57.53秒、東経139度31分22.82秒、携帯端末の位置を北緯35度32分56.00秒、東経139度31分17.00秒とすると、両者の距離Dは上式により154メートルと計算される。広告配信支援サーバ2は、計算した距離Dと係数テーブルの「店舗距離」とを比較し(S316)、距離D<店舗距離ならば処理をステップS318へ進め、距離D≧店舗距離ならば処理をステップS328へ進める。
【0059】
次に、広告配信支援サーバ2は、広告配信履歴ファイルを参照して、対象顧客の直近配信実績に当該店舗が登録されているか否かを判定し(S318)、登録されている場合は、その配信日時から係数ファイルの「同一店舗連続配信間隔」以上の時間が経過しているか否かを調べる(S320)。また、直近配信実績に当該店舗が登録されていなければ、配信履歴を参照して配信履歴nに当該店舗が登録されているか否かを調べ(S322)、登録されている場合は、その配信日時から係数テーブルの「同一店舗最短配信間隔」以上の時間が経過しているか否かを調べる(S324)。
【0060】
例えば、図6に示すように、顧客識別番号「abc1234567」の顧客について、店舗識別番号「sh11223」の店舗が直近配信実績に登録されていれば、たとえ当該店舗と携帯電話7(対象顧客)の距離が近くても、その配信日時から同一店舗連続配信間隔(図7では「125時間」)が経過するまでは、配信条件を満たさないと判定する。また、店舗識別番号「sh11223」の店舗が配信履歴nに登録されている場合は、その配信日時から同一顧客最短配信間隔(図7では「27時間」)が経過するまでは、配信条件を満たさないと判定する。勿論、配信履歴nにも登録されていなければ条件を満たすと判定する。この判定により、同一店舗の広告を短期間に繰り返し配信して顧客に不快感を与えることを避ける。
【0061】
そして、広告配信支援サーバ2は、配信条件を満たせば処理をステップS326へ進み、配信条件を満たさなければ処理をステップS328へ進める。
【0062】
次に、広告配信支援サーバ2は、係数テーブルの「店舗絞り込み数」に設定された数分(図7では「10」)、より距離Dが近い店舗の店舗識別番号および距離Dを一組として、データベース3に格納された配信元店舗候補ファイルに記憶し(S326)、店舗情報ファイルの全レコードを参照したか否かを判定し(S328)、未参照のレコードがあれば処理をステップS310へ戻し、未参照のレコードがなければ処理をステップS330へ進める。
【0063】
店舗情報ファイルの全レコードを参照した場合、広告配信支援サーバ2は、配信元店舗候補があるか否かを判定し(S330)、あれば記憶した配信元店舗候補ごとに店舗スコアSを計算する(S332)。なお、配信元店舗候補がなければプッシュ型顧客に対する処理を終了する。
S = Σ(Wm・Pm)」

ト.「【0075】
このようにして、広告配信支援サーバ2は、配信元店舗候補の各店舗について店舗スコアSを計算し、その後、最大の店舗スコアSをもつ店舗を配信元店舗に決定し、図13に一例を示すメール案文ファイルを参照して配信内容を決定する(S334)。具体的には、メール案文ファイルの、配信元店舗および現在時刻に基づき、対応する店舗識別番号かつ配信時間帯のメールコンテンツの内容を、対象顧客の携帯端末7に宛に配信する電子メールの内容にする。なお、店舗は、随時、店舗端末6を操作して配信時間帯およびメールコンテンツの数および内容を変更することができる。
【0076】
広告配信支援サーバ2は、ステップS334で決定した配信内容の電子メールを対象顧客の携帯端末7に送信し、当該顧客の広告配信履歴ファイルの直近配信実績を更新し(S336)、プッシュ型顧客に対する処理を終了する。なお、直前に直近配信実績として記憶されてデータは配信履歴nにスタックされる。その際、係数テーブルの「配信履歴保存時間」の設定値以上の時間が経過した配信履歴nを削除する。」

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記イの【0001】、ニの【0035】の記載によれば、引用例記載の「広告配信方法」では、位置情報の問合処理、位置情報の受領処理、および、広告配信処理を行っている。

b.上記ニの【0033】、トの【0075】の記載によれば、上記「広告配信方法」における広告の配信先は携帯端末であり、引用例の図6の記載によれば、直近配信実績は広告配信履歴ファイルが示すものであることを考慮すると、上記ニの【0036】、【0037】の記載から、上記位置情報の問合処理において、携帯端末への、広告配信履歴ファイルが示す直近配信実績の配信日時と現在時刻とを比較して基準配信間隔以上の時間が経過しているか否かを判定することは明らかである。

c.上記ニの【0037】の記載によれば、上記b.で言及した判定において、基準配信間隔以上の時間が経過している顧客は位置情報を問い合わせる顧客としてRAMの所定領域に記憶し、上記ニの【0039】の記載によれば、この記憶した顧客の携帯端末に対して、位置情報を問い合わせるから、上記判定に応じて、携帯端末に対して位置情報を問い合わせることは明らかである。

d.上記ホの【0042】、【0043】の記載によれば、上記位置情報の受領処理において、携帯端末から顧客識別番号、位置情報などの情報を受信すると、受信した情報を配信候補顧客ファイルの最後尾に一件のレコードとして記録することは明らかである。

e.上記ヘの【0048】、【0050】の記載によれば、上記広告配信処理において、配信候補顧客ファイルの先頭から一件のレコードを読み込むことは明らかである。

f.上記ヘの【0051】、【0054】、【0055】の記載によれば、上記e.で言及した配信候補顧客ファイルから読み込まれたレコードの顧客がプッシュ型顧客であれば、プッシュ型顧客に対する処理として、店舗情報ファイルのレコードを一件読み込むことは明らかである。

g.上記ヘの【0055】?【0058】の記載によれば、上記f.で言及した店舗情報ファイルから読み込まれたレコードの店舗が営業中であれば、携帯端末の位置と店舗位置との間の距離Dを計算することは明らかである。

h.上記ヘの【0058】?【0062】の記載によれば、上記g.で言及した距離Dに関し、距離D<店舗距離ならば、同一店舗連続配信間隔と同一店舗最短配信間隔に関する配信条件を満たすか否かを判定し、満たす場合に、店舗絞り込み数に設定された数分、より距離Dが近い店舗の店舗識別番号および距離Dを一組として配信元店舗候補ファイルに記憶することは明らかである。

i.上記ヘの【0063】、トの【0075】の記載によれば、上記h.で言及した配信元店舗候補ファイルに記憶された配信元店舗候補の各店舗について店舗スコアSを計算し、その後、最大の店舗スコアSをもつ店舗を配信元店舗に決定することは明らかである。

j.上記トの【0075】、【0076】の記載によれば、上記i.で言及した配信元店舗の店舗が決定されると、メール案文ファイルを参照して、対応する店舗のメールコンテンツを配信内容として携帯端末に送信するが、引用例の図13の記載によれば、メール案文ファイルには複数のメールコンテンツがあるから、複数のメールコンテンツの中から、上記決定された店舗に対応するメールコンテンツを配信内容として決定し、携帯端末に送信することは明らかである。

以上を総合すると、上記引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「携帯端末への、広告配信履歴ファイルが示す直近配信実績の配信日時と現在時刻とを比較して基準配信間隔以上の時間が経過しているか否かを判定し、該判定に応じて、携帯端末に対して位置情報を問い合わせ、携帯端末から顧客識別番号、位置情報などの情報を受信すると、受信した情報を配信候補顧客ファイルの最後尾に一件のレコードとして記録し、配信候補顧客ファイルの先頭から一件のレコードを読み込み、当該顧客がプッシュ型顧客であれば、店舗情報ファイルのレコードを一件読み込み、当該店舗が営業中であれば、携帯端末の位置と店舗位置との間の距離Dを計算し、距離D<店舗距離ならば、同一店舗連続配信間隔と同一店舗最短配信間隔に関する配信条件を満たす場合に、店舗絞り込み数に設定された数分、より距離Dが近い店舗の店舗識別番号および距離Dを一組として配信元店舗候補ファイルに記憶し、配信元店舗候補の各店舗について店舗スコアSを計算し、その後、最大の店舗スコアSをもつ店舗を配信元店舗に決定し、複数のメールコンテンツの中から上記決定された店舗に対応するメールコンテンツを配信内容として決定し、携帯端末に送信する広告配信方法。」

3.対比
本願発明を引用発明と対比すると、

a.引用発明の「携帯端末」は、本願発明の「移動端末」に相当する。

b.引用発明の「直近配信実績の配信日時」は、「直近」が「前回」と言えることから、「前回の配信情報を配信した日時」であることは明らかである。
また、この「直近配信実績の配信日時」を含む「広告配信履歴ファイル」は、「配信履歴」が「送信履歴」に相当することを考慮すると、前回の配信情報の送信履歴と言える。
そうすると、引用発明の「広告配信履歴ファイルが示す直近配信実績の配信日時」は、本願発明の「前回の配信情報の送信履歴が示す前記前回の配信情報の配信時」に相当する。

c.引用発明の「メールコンテンツ」は、引用例の段落【0075】の記載によれば、配信内容として決定されるから、本願発明の「配信情報」に相当し、また、引用発明の「複数のメールコンテンツの中から上記決定された店舗に対応するメールコンテンツを配信内容として決定」することは、配信内容を選択していると言えるから、
引用発明の「携帯端末への、広告配信履歴ファイルが示す直近配信実績の配信日時と現在時刻とを比較して基準配信間隔以上の時間が経過しているか否かを判定し、該判定に応じて」、複数のメールコンテンツの中から配信内容を決定することと、
本願発明の「移動端末の、前回の配信情報の送信履歴が示す前記前回の配信情報の配信時の位置からの移動距離が所定の距離を越えたことの検出を行い、該検出に応じて」、配信情報の選択を行うこととは、
「移動端末の、前回の配信情報の送信履歴が示す前記前回の配信情報」に関する情報に応じて配信情報の選択を行う点で共通する。

d.引用発明では、複数のメールコンテンツの中から配信内容として決定されたものが携帯端末に送信されるから、上記a.及びc.の検討を踏まえれば、配信情報を、複数の配信情報の中から選択し、選択した配信情報を移動端末に送信すると言える。

e.引用発明の「メールコンテンツ」の決定にあたっては、携帯端末の位置と店舗位置との間の距離D<店舗距離である店舗、言い換えれば、携帯端末の位置が、店舗位置を中心として店舗距離を半径とする範囲内にある店舗に限り、配信元店舗候補として、その店舗の「メールコンテンツ」が配信内容として決定され得るので、店舗位置を中心として店舗距離を半径とする範囲内がその店舗の「メールコンテンツ」の配信対象の位置範囲と言える。
また、この位置範囲の中心となる店舗位置は、引用例の段落【0028】、【0029】の記載によれば、店舗端末を操作して入力され、店舗情報ファイルの一項目として、データベースに保存される情報であるから、上記位置範囲は店舗端末の操作入力により設定されると言える。
さらに、上記携帯端末の位置情報は、問い合わせにより携帯端末から受信したものであるから、移動後の最新のものと言える。
そうしてみると、複数の「メールコンテンツ」は、それぞれの配信対象の位置範囲が設定され、また、複数の「メールコンテンツ」の中から決定される「メールコンテンツ」は携帯端末の位置が、その配信対象の位置範囲に含まれる店舗のものであるから、上記a.及びd.の検討を踏まえれば、引用発明は「移動後の移動端末の位置を配信対象の位置範囲に含む配信情報を、それぞれ配信対象の位置範囲が設定された複数の配信情報の中から選択し、選択した前記配信情報を前記移動端末に送信する」と言える。

f.引用発明の「広告配信方法」と、本願発明の「情報配信方法」は、「情報配信方法」である点で共通する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「移動端末の、前回の配信情報の送信履歴が示す前記前回の配信情報に関する情報に応じて、移動後の該移動端末の位置を配信対象の位置範囲に含む配信情報を、それぞれ配信対象の位置範囲が設定された複数の配信情報の中から選択し、
選択した前記配信情報を前記移動端末に送信する、
情報配信方法。」

(相違点)
本願発明では、「移動端末の、前回の配信情報の送信履歴が示す前記前回の配信情報の配信時の位置からの移動距離が所定の距離を越えたことの検出を行い、該検出に応じて」、配信情報の選択を行うのに対し、引用発明では、「携帯端末への、広告配信履歴ファイルが示す直近配信実績の配信日時と現在時刻とを比較して基準配信間隔以上の時間が経過しているか否かを判定し、該判定に応じて」、配信内容の決定を行う点で相違する。

4.検討
引用発明が基準配信間隔以上の時間経過を判定するのは、引用例の段落【0038】の記載によれば、顧客に不快感を与えることを避けることが目的であるとされており、同一の顧客に対して続けて広告を配信することは避けるべきことが示唆されている。また、引用例の段落【0060】においては、同一店舗の広告を短期間に繰り返し配信して顧客に不快感を与えることを避けるべきことが示唆されている。

そして、引用例の段落【0008】では、広告を受け取る顧客を取り巻く実環境(位置・天候・時間など)を使用して顧客に有益な広告を配信することが望ましいとされており、広告の配信にあたって、時間情報のほか、位置情報についても使用することが示唆されている。

また、引用発明において携帯端末に配信される情報は携帯端末の位置に応じて変化することも明らかである。

そうすると、同一店舗の広告を短期間に繰り返し配信することにより顧客に不快感を与えることを避けるために、時間経過が少ない場合に代えて、携帯端末の位置を考慮することは格別困難なこととは言えず、また、引用発明の上記「広告配信履歴ファイル」には、引用例の段落【0033】、図6に記載されているように、「配信時の携帯端末7の位置」が保存されているから、配信時の携帯端末の位置からの移動距離が短い場合に広告配信を行わないようにすること、すなわち本願発明のように、「前回の配信情報の配信時の位置からの移動距離が所定の距離を越えたことの検出」に応じて配信内容の決定を行うことは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-01 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-21 
出願番号 特願2012-201004(P2012-201004)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町井 義亮  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 坂本 聡生
中野 浩昌
発明の名称 情報配信方法、及び情報配信装置  
代理人 高田 大輔  
代理人 平川 明  

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