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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1305309
審判番号 不服2013-14167  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-23 
確定日 2015-09-09 
事件の表示 特願2011-502863「通信システムにおける暗号化キーを用いるブロードキャストサービスを提供する方法及び装置,並びにブロードキャストサービスを受信する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月 3日国際公開,WO2009/145495、平成23年 7月 7日国内公表,特表2011-519510〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2009年4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年4月4日 大韓民国)を国際出願日とする出願であって,
平成22年10月4日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出されると共に同日付けで審査請求がなされ,平成24年11月27日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成25年3月4日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成25年3月21日付けで審査官により拒絶査定がなされ(発送;平成25年3月26日),これに対して平成25年7月23日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成25年11月5日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成25年11月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ,平成26年3月3日付けで回答書の提出があったものである。

第2.平成25年7月23日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成25年7月23日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成25年7月23日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成25年3月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成するステップと,
前記シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するステップと,
前記シードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップと,
前記暗号化したブロードキャストサービスデータをブロードキャストするステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を有することを特徴とする通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。
【請求項2】
前記所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップは,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うステップを有することを特徴とする請求項1に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。
【請求項3】
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップを更に有することを特徴とする請求項1に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。
【請求項4】
前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記端末から受信すると,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップを更に有することを特徴とする請求項1に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。
【請求項5】
通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を受信するステップと,
前記受信したシードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間にブロードキャストされた暗号化されたブロードキャストサービスデータを解除するステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を有することを特徴とする通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法。
【請求項6】
前記所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップは,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和演算を行うステップを有することを特徴とする請求項5に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法。
【請求項7】
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を受信するステップを更に有することを特徴とする請求項5に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法。
【請求項8】
前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了する時,前記端末が追加のブロードキャストサービスを必要とする場合に,前記追加のブロードキャストサービスに対する要請を送信してこれに応じて次のシードキー対を受信するステップを更に有することを特徴とする請求項5に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法。
【請求項9】
通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成し,該シードキー対を送受信部を通じて前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するシードキー生成部と,
前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを前記シードキー対を用いて生成する暗号化キー生成部と,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化し,該暗号化したブロードキャストサービスデータを前記送受信部を通じてブロードキャストするデータ暗号化部と,を備え,
前記暗号化キー生成部は,順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成し,逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成し,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項10】
前記暗号化キー生成部は,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うことにより前記トラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする請求項9に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項11】
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,前記シードキー生成部が次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するように制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項12】
前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記送受信部を通じて前記端末から受信すると,前記シードキー生成部が次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するように制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項13】
通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を受信する送受信部と,
前記受信したシードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成する暗号化キー生成部と,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間にブロードキャストされた暗号化されたブロードキャストサービスデータを解除するデータ暗号化解除部と,を備え,
前記暗号化キー生成部は,順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成し,逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成し,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置。
【請求項14】
前記暗号化キー生成部は,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うことにより前記トラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする請求項13に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置。
【請求項15】
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を前記送受信部を通じて受信する制御部を更に備えることを特徴とする請求項13に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置。
【請求項16】
前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了する時,前記端末が追加のブロードキャストサービスを必要とする場合に,前記送受信部を通じて前記追加のブロードキャストサービスに対する要請を送信し,該要請に応じて前記送受信部を通じて次のシードキー対を受信する制御部を更に備えることを特徴とする請求項13に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置。
【請求項17】
オープンモバイルアライアンスブロードキャスト(OMA BCAST)システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成し,該シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するサービス保護キー分配部(SP-KD)と,
前記シードキー対を前記SP-KDから受信し,該受信したシードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成し,該暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化し,該暗号化したブロードキャストサービスデータを前記端末に送信するサービスプロバイダー暗号化部(SP-E)と,を備え,
前記SP-Eは,順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成し,逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成し,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成することを特徴とするOMA BCASTシステムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項18】
前記SP-Eは,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うことにより前記トラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする請求項17に記載のOMA BCASTシステムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項19】
前記SP-KDは,前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信することを特徴とする請求項17に記載のOMA BCASTシステムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項20】
前記SP-KDは,前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記端末から受信すると,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信することを特徴とする請求項17に記載のOMA BCASTシステムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成するステップと,
前記シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するステップと,
前記シードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップと,
前記暗号化したブロードキャストサービスデータをブロードキャストするステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を含み,
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップと,
前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記端末から受信すると,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップと,を更に有することを特徴とする通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。
【請求項2】
前記所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップは,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うステップを有することを特徴とする請求項1に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。
【請求項3】
通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を受信するステップと,
前記受信したシードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間にブロードキャストされた暗号化されたブロードキャストサービスデータを解除するステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を含み,
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を受信するステップと,
前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了する時,前記端末が追加のブロードキャストサービスを必要とする場合に,前記追加のブロードキャストサービスに対する要請を送信してこれに応じて次のシードキー対を受信するステップと,を更に有することを特徴とする通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法。
【請求項4】
前記所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップは,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和演算を行うステップを有することを特徴とする請求項3に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する方法。
【請求項5】
通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成し,該シードキー対を送受信部を通じて前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するシードキー生成部と,
前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを前記シードキー対を用いて生成する暗号化キー生成部と,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化し,該暗号化したブロードキャストサービスデータを前記送受信部を通じてブロードキャストするデータ暗号化部と,
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,前記シードキー生成部が次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するように制御し,前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記送受信部を通じて前記端末から受信すると,前記シードキー生成部が次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するように制御する制御部と,を備え,
前記暗号化キー生成部は,順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成し,逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成し,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項6】
前記暗号化キー生成部は,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うことにより前記トラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする請求項5に記載の通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項7】
通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を受信する送受信部と,
前記受信したシードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成する暗号化キー生成部と,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間にブロードキャストされた暗号化されたブロードキャストサービスデータを解除するデータ暗号化解除部と,
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を前記送受信部を通じて受信し,前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了する時,前記端末が追加のブロードキャストサービスを必要とする場合に,前記送受信部を通じて前記追加のブロードキャストサービスに対する要請を送信し,該要請に応じて前記送受信部を通じて次のシードキー対を受信する制御部と,を備え,
前記暗号化キー生成部は,順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成し,逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成し,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置。
【請求項8】
前記暗号化キー生成部は,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うことにより前記トラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする請求項7に記載の通信システムにおける端末がブロードキャストサービスを受信する装置。
【請求項9】
オープンモバイルアライアンスブロードキャスト(OMA BCAST)システムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成し,該シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するサービス保護キー分配部(SP-KD)と,
前記シードキー対を前記SP-KDから受信し,該受信したシードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成し,該暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化し,該暗号化したブロードキャストサービスデータを前記端末に送信するサービスプロバイダー暗号化部(SP-E)と,を備え,
前記SP-Eは,順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成し,逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成し,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成し,
前記SP-KDは,前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信し,前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記端末から受信すると,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信することを特徴とするOMA BCASTシステムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。
【請求項10】
前記SP-Eは,前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーの排他的論理和を行うことにより前記トラフィック暗号化キーを生成することを特徴とする請求項9に記載のOMA BCASTシステムにおけるブロードキャストサービスを提供する装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
(1)新規事項
本件手続補正は,補正前の請求項1に,補正前の請求項3,及び,補正前の請求項4の記載内容を組み込み,補正後の請求項1とし,それに伴って,補正前の請求項3,及び,補正前の請求項4を削除し,補正前の請求項5に,補正前の請求項7,及び,補正前の請求項8の記載内容を組み込み,補正後の請求項3とし,それに伴って,補正前の請求項7,及び,補正前の請求項8を削除し,補正前の請求項9に,補正前の請求項11,及び,補正前の請求項12の記載内容を組み込み,補正後の請求項5とし,それに伴って,補正前の請求項11,及び,補正前の請求項12を削除し,補正前の請求項13に,補正前の請求項15,及び,補正前の請求項16の記載内容を組み込み,補正後の請求項7とし,それに伴って,補正前の請求項15,及び,補正前の請求項16を削除し,補正前の請求項17に,補正前の請求項19,及び,補正前の請求項20の記載内容を組み込み,補正後の請求項9とし,それに伴って,補正前の請求項19,及び,補正前の請求項20を削除すると共に,その他の請求項の番号を整理したものであるから,平成22年10月4日に提出された翻訳文の範囲内でなされたものである。
よって,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。

(2)目的要件
ア.本件手続補正によって,補正後の請求項1は,補正前の請求項3,及び,補正前の請求項4に記載された内容の両方を含むものであって,補正前の請求項3,及び,補正前の請求項4は,それぞれ,補正前の請求項1のみを引用するものであるから,補正後の請求項1が,補正前の請求項3を削除したもの,或いは,補正前の請求項4を削除したものの,何れにも該当しないことは明らかである。そして,補正前の請求項1に対する,上記指摘の補正内容は,2つの新たな「ステップ」を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められない。また,当該補正が,明瞭でない記載の釈明,或いは,誤記の訂正を目的としたものでないことも明らかである。

イ.加えて,補正前の請求項1を引用する,補正前の請求項2は,本件手続補正によって,補正前の請求項3,及び,補正前の請求項4に記載された内容の両方を含む,補正後の請求項1を引用する,補正後の請求項2に補正されたが,補正の前後で,請求項2に記載された内容自体は変わっていないので,補正前の請求項2に対する,本件手続補正の内容は,補正後の請求項1を引用することによって,補正後の請求項1に加わった“新たなステップ”を追加するというものであるから,請求項2に係る当該補正が,特許請求の範囲の減縮,明瞭でない記載の釈明,誤記の訂正,請求項の削除の何れにも該当しないことは明らかである。
補正後の請求項3,請求項5,請求項7,及び,請求項9についても,上記「(2)目的要件」のアにおいて指摘した事項と同等のことが言え,補正後の請求項4,請求項6,請求項8,及び,請求項10についても,上記「(2)目的要件」のイにおいて指摘した事項と同等のことが言える。

よって,本件手続補正は,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)のいずれを目的としたものでもない。

ウ.目的要件むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件
本件手続補正は,上記「(2)目的要件」において検討したとおり,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,仮に,本件手続補正が,目的要件を満たすものとして,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

ア.補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次の記載内容により特定されるものである。

「通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成するステップと,
前記シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するステップと,
前記シードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップと,
前記暗号化したブロードキャストサービスデータをブロードキャストするステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を含み,
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップと,
前記端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記端末から受信すると,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップと,を更に有することを特徴とする通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。」

イ.引用刊行物に記載の発明
原審が,平成24年11月27日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2001-320357号公報(2001年11月16日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0002】
【従来の技術】現在,有料放送,ニュース速報,株価情報などのコンテンツを放送,インターネット等を介して,契約者のみに有料で提供するサービスが拡大しつつある。
【0003】このようなサービスを提供する提供手段としては,
(1) コンテンツ提供者が有料放送として終日コンテンツを配送する。
【0004】(2) ニュース速報等を携帯電話や携帯端末,パソコン等に定期的に配送する。」(下線は,当審にて,説明の都合上附加したものである。以下,同じ。)

B.「【0025】
【課題を解決するための手段】まず,本願発明の概念について説明する。初期値Aに一方向性関数fを適用した値を,B=f(A)とすると,一方向性関数の特徴により,AからBを計算することは容易だが,BからAを計算することは出来ない。なお,一方向性関数としては,上記特性を有する一方向性関数であれば,MD4,MD5,SHA等のいずれの方法であっても構わない。」

C.「【0050】なお,本実施形態で用いられるハッシュ連鎖とは,ある値A0について何度も一方向性関数のひとつであるハッシュ関数fを適用することを指すものとする。
【0051】例えば,
A1=f(A0)
A2=f(A1)=f( f(A0))
A3=f(A2)=f( f(A1))=f( f( f (A0)))
・・・
An=f(An-1)
であるとき,一方向性関数は,A1からA0を求めることが困難なため,A0からA1,A2,…,Anを求めることは出来るものの,AnからA1,A2,…,An-1を求めることは出来ない。」

D.「【0052】次に,図1を参照してコンテンツ発行機関Cの構成を説明する。このコンテンツ発行機関Cは,大きくはコンテンツ管理部11と権限情報管理部19により構成される。またコンテンツ管理部11は,コンテンツ保管部13と,コンテンツ送信部15とコンテンツ暗号化部17により構成され,さらにコンテンツ暗号化部17は暗号鍵導出部17aと暗号化部17bにより構成される。一方,権限情報管理部19は,秘密情報保管部19aと権限情報算出部19bにより構成される。
【0053】次に,図2を参照して利用者端末Uの構成を説明する。この利用者端末Uは,大きくはコンテンツ管理部31と権限情報管理部39により構成される。またコンテンツ管理部31は,コンテンツ受信部35とコンテンツ復号化部37により構成され,さらにコンテンツ復号化部37は復号鍵導出部37aと復号化部37bにより構成される。一方,権限情報管理部39は,権限情報保管部39aと権限情報算出部39bにより構成される。
【0054】次に図3を参照して,コンテンツの暗号化および復号化手順を順を追って説明する。
【0055】コンテンツ(刊行物)を発行する機関であるコンテンツ発行機関Cは,Sを秘密情報とするとき秘密情報S1から一方向性関数f1を用いて生成されるn個の値X,すなわち,
X{1}(=f1(X{2})) ,X{2}(=f1(X{3})) ,... ,X{n}(=f1(S1))
と,秘密情報S2から一方向性関数f2を用いて生成されるn個の値Y,すなわち,
Y{1}(=f2(S2)),Y{2}(=f2(Y{1})) ,... ,Y{n}(=f2(Y{n-1}))
とを生成し,秘密情報保管部19aに保管する。
【0056】次に,X,Yの対から以下のように生成されるデータ(オブジェクト)Dを権限情報とする。なお,ここでは「権限情報」とは,権限を示すデータであり,例えばチケットや証明書(credential)などがある。その他,実社会では電車の切符やコンサートのチケット,入館証等が相当する。
【0057】
D{1} = f3( X{1} ,Y{1})
D{2} = f3( X{2} ,Y{2})
・・・
D{n} = f3( X{n} ,Y{n})
f3は任意の関数であり特に制限はなく,X{m} ,Y{m} (但し1≦m≦n)を連結したビット列に任意のハッシュ関数を適用するといった手段をとることができる。」

E.「【0059】
1月号は権限情報D{1} を算出できる利用者のみ
2月号は権限情報D{2} を算出できる利用者のみ
・・・・
12月号は権限情報D{12}を算出できる利用者のみ
来年1月号は権限情報D{13}を算出できる利用者のみ
来年2月号は権限情報D{14}を算出できる利用者のみ
来年3月号は権限情報D{15}を算出できる利用者のみ
例えば,1月から1年間契約した契約者Aには,X{12},Y{1} を契約者Aのみに配送し,契約者Aは権限情報保管部39aに保管する。このとき,刊行物を発行するコンテンツ発行機関Cは,
X{1} ,...,X{15},
Y{1} ,...,Y{15}
を全て保持しなくても良く,X{1} ,...,X{15},Y{1} ,...,Y{15}の代わりに秘密情報S1,秘密情報S2を秘密情報保管部19aに保管し,新規契約者に権限情報を配送する度に,秘密情報S1,秘密情報S2から計算することができる。」

F.「【0061】i) 権限情報算出部19bにて権限情報D{1} をX{1} ,Y{1} から算出
ii) 暗号鍵導出部17aにて暗号鍵K{1} を権限情報D{1} から導出
iii)暗号化部17bにてコンテンツC{1} を暗号化
また,翌年の3月号(C{15}) の場合は以下の通りである。
【0062】i) 権限情報算出部19bにて権限情報D{15}をX{15},Y{15}から算出
ii) 暗号鍵導出部17aにて暗号鍵K{15}を権限情報D{15}から導出
iii)暗号化部17bにてコンテンツC{15}を暗号化
このように任意のkに対して権限情報D{k} ,鍵K{k} を導入する方法に制限はない。」

G.「【0064】一方,例えば2月号を受け取った利用者Aは,権限情報保管部39aのX{12},Y{1} から権限情報算出部39bにて権限情報D{2} を算出する。
【0065】次に,復号鍵導出部37aにて権限情報D{2} から鍵K{2} を導出し,復号化部37bにて暗号化されたコンテンツを復号化する。
【0066】このように,利用者Aは,X{12},Y{1} を保持するのみで,鍵K{1} ,...,K{12}を導出することができる。」

H.「【0071】(第3の実施形態)ここでは,
・有料放送で,見たい時間帯を1日のうち一つを契約する。
【0072】・契約者以外は放送を見ることができない。
【0073】・放送内容は暗号化される。
【0074】というサービスを例に説明する。
【0075】放送局は第1の実施形態と同様にS1,S2からX,Yを生成する。」

(ア)上記Aの「有料放送,ニュース速報,株価情報などのコンテンツを放送,インターネット等を介して,契約者のみに有料で提供するサービス」という記載,同じく,上記Aの「コンテンツ提供者が有料放送として終日コンテンツを配送する」という記載,及び,上記Aの「ニュース速報等を携帯電話や携帯端末,パソコン等に定期的に配送する」という記載,並びに,上記Dの「コンテンツ発行機関」,及び,「利用者端末」という記載から,引用刊行物1は,
“コンテンツ発行機関が,利用者端末に,放送,インターネット等を介してコンテンツを配送するサービスを提供する方法”に関するものであることが読み取れる。

(イ)上記Dの「秘密情報S1から一方向性関数f1を用いて生成されるn個の値X,すなわち,X{1}(=f1(X{2})) ,X{2}(=f1(X{3})) ,... ,X{n}(=f1(S1))と,秘密情報S2から一方向性関数f2を用いて生成されるn個の値Y,すなわち,Y{1}(=f2(S2)),Y{2}(=f2(Y{1})) ,... ,Y{n}(=f2(Y{n-1}))とを生成し,秘密情報保管部19aに保管する」という記載から,「X{1}...X{n}」,及び,「Y{1}...Y{n}」は,「秘密情報」であることが読み取れ,上記引用のDの記載内容と,上記Eの「1月から1年間契約した契約者Aには,X{12},Y{1} を契約者Aのみに配送し,契約者Aは権限情報保管部39aに保管する」という記載,並びに,上記(ア)において検討した事項から,“コンテンツ発行機関は,契約者Aの契約者端末に,秘密情報X{12},Y{1}を送信し,契約者Aの契約者端末は,受信した前記X{12},Y{1}から,一方向性関数f1,及び,f2を用いて,X{1}?X{11},Y{2}?Y{12}を算出すること”が読み取れる。

(ウ)上記(イ)において検討した事項と,上記Gの「2月号を受け取った利用者Aは,権限情報保管部39aのX{12},Y{1} から権限情報算出部39bにて権限情報D{2} を算出する」という記載,及び,同じく上記Gの「復号鍵導出部37aにて権限情報D{2} から鍵K{2} を導出し,復号化部37bにて暗号化されたコンテンツを復号化する」という記載から,「コンテンツ発行機関」から,「利用者A」に送信した「秘密情報X{12},Y{1}」は,「利用者A」において,「2月号」を復号するために必要な「鍵K{2}」を導出するために必要な,「権限情報D{2}」を算出するために必要な,「秘密情報X{2},Y{2}」を計算するために必要な,“元秘密情報”と言い得るものであり,当該“元秘密情報”が「コンテンツ発行機関」において生成されることは明らかである。
したがって,上記(イ)において検討した事項を踏まえると,引用刊行物1においては,
“コンテンツ発行機関は,契約者端末に,元秘密情報を送信する”ものであることが読み取れる。

(エ)上記Dの「コンテンツ発行機関Cは,大きくはコンテンツ管理部11と権限情報管理部19により構成される」という記載,同じく上記Dの「権限情報管理部19は,・・・・権限情報算出部19bにより構成される」という記載,及び,上記Fの「i) 権限情報算出部19bにて権限情報D{1} をX{1} ,Y{1} から算出 ii) 暗号鍵導出部17aにて暗号鍵K{1} を権限情報D{1} から導出 iii)暗号化部17bにてコンテンツC{1} を暗号化」という記載から,「秘密情報」には,“X系列の秘密情報”と,“Y系列の秘密情報”が存在することが読み取れ,このことを踏まえると,引用刊行物1においては,“コンテンツ発行機関において,X系列の秘密情報と,Y系列の秘密情報を算出し,前記秘密情報を用いて,権限情報を算出し,前記権限情報を用いて,暗号鍵を導出し,前記暗号鍵を用いて,コンテンツを暗号化する”こと,即ち,“コンテンツ発行機関において,X系列の秘密情報と,Y系列の秘密情報を算出し,前記秘密情報の組を用いて,暗号鍵を導出し,前記暗号鍵を用いて,コンテンツを暗号化する”ことが読み取れる。

(オ)上記Bの「なお,一方向性関数としては,上記特性を有する一方向性関数であれば,MD4,MD5,SHA等のいずれの方法であっても構わない」という記載,及び,上記Cの「本実施形態で用いられるハッシュ連鎖とは,ある値A0について何度も一方向性関数のひとつであるハッシュ関数fを適用することを指すものとする」という記載と,上記(イ)において検討した事項から,引用発明においては,“コンテンツ発行機関は,秘密情報にハッシュ連鎖を適用して,複数個の秘密情報を順次生成する”ことが読み取れる。
そして,上記(イ)において引用した上記Dの記載内容,及び,上記(エ)において検討した事項から,前記「ハッシュ連鎖」には,“X系列の秘密情報”に適用される“ハッシュ連鎖f1”と,“Y系列の秘密情報”に適用される“ハッシュ連鎖f2”とが存在することが読み取れる。
以上から,引用刊行物1においては,
“コンテンツ発行機関は,X系列の秘密情報にハッシュ連鎖f1を適用し,Y系列の秘密情報にハッシュ連鎖f2を適用し,得られた結果を用いて,暗号鍵を導出し,前記暗号鍵を用いて,コンテンツを暗号化する”ものであることが読み取れる。
ここで,上記(イ)において引用した上記Dの記載内容から,利用者端末において必要となる複数の“X系列の秘密情報”と,“Y系列の秘密情報”とは,「コンテンツ発行機関」においても算出されるものであるから,上記(ウ),及び,(エ)において検討した事項を踏まえると,引用刊行物1においては,
“ハッシュ連鎖f1をX系列の元秘密情報に適用することにより,複数のX系列の秘密情報を生成し,ハッシュ連鎖f2をY系列の元秘密情報に適用することにより,複数のY系列の秘密情報を生成する”ものであることが読み取れる。

(カ)上記(オ)において引用した上記Gの記載内容と,上記Hの「放送内容は暗号化される」,及び,同じく上記Hの「放送局は第1の実施形態と同様にS1,S2からX,Yを生成する」という記載から,引用刊行物1においては,
“コンテンツ発行機関は,放送,即ち,ブロードキャストによって,利用者の端末にコンテンツを配送する態様を含むものである”ことが読み取れる。

以上(ア)?(カ)において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを,「引用発明」という)が記載されているものと認める。

コンテンツ発行機関が,利用者端末に,放送,インターネット等を介してコンテンツを配送するサービスを提供する方法であって,
コンテンツ発行機関において,1つのX系列の元秘密情報と,1つのY系列の元秘密情報を生成し,前記元秘密情報の組を,利用者端末に送信し,
前記元秘密情報の組を用いて,複数の暗号鍵を生成し,
前記暗号鍵を用いてブロードキャストされるコンテンツを暗号化し,
前記暗号化したコンテンツをブロードキャストによって,前記利用者端末に配送し,
前記複数の暗号鍵の生成は,
ハッシュ連鎖f1を前記X系列の元秘密情報に適用することにより,複数のX系列の秘密情報を生成し,
ハッシュ連鎖f2を前記Y系列の元秘密情報に適用することにより,複数のY系列の秘密情報を生成し,
前記X系列の秘密情報及びY系列の秘密情報を用いて,複数の暗号鍵を生成する,方法。

ウ.本件補正発明と引用発明との対比
(ア)引用発明における「コンテンツ発行機関」と,「利用者端末」は,「インターネット」等の通信網で接続されているものであるから,「通信システム」を構築していることは明らかである。また,「インターネット」を介した“ブロードキャスト配信”が,引用発明の構成で提供し得ることも明らかであるから,
引用発明における「コンテンツ発行機関が,利用者端末に,放送,インターネット等を介してコンテンツを配送するサービスを提供する方法」は,
本件補正発明における「通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法」に相当する。

(イ)引用発明における「1つのX系列の元秘密情報」と,「1つのY系列の元秘密情報」は,「利用者端末」に送信されるものであり,「暗号鍵」の生成に用いられるものであるから,引用発明における「1つのX系列の元秘密情報」と,「1つのY系列の元秘密情報」,及び,「利用者端末」は,本件補正発明における「第1のキー」と,「第2のキー」,及び,「ブロードキャストサービスが提供される端末」に相当し,引用発明における「1つのX系列の元秘密情報」と,「1つのY系列の元秘密情報」からなる“組”が,本件補正発明における「シードキー対」に相当するので,
引用発明における「コンテンツ発行機関において,1つのX系列の元秘密情報と,1つのY系列の元秘密情報を生成し,前記元秘密情報の組を,利用者端末に送信」することは,
本件補正発明における「第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成するステップ」と,「前記シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するステップ」とに相当する。

(ウ)引用発明における「1つのX系列の元秘密情報」と,「1つのY系列の元秘密情報」は,上記Eの「1月から1年間契約した契約者Aには,X{12},Y{1} を契約者Aのみに配送し,契約者Aは権限情報保管部39aに保管する」という記載から明らかなように,コンテンツの利用期限に関連する情報を有しているから,
引用発明における「前記元秘密情報の組を用いて,複数の暗号鍵を生成」することが,
本件補正発明における「前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップ」に相当する。

(エ)引用発明における「ブロードキャストされるコンテンツ」は,上記(ウ)において検討した事項を踏まえると,“期限に関する情報を有するコンテンツを含む”ものであることは明らかであるから,
引用発明における「暗号鍵を用いてブロードキャストされるコンテンツを暗号化」することが,
本件補正発明における「暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップ」に相当し,
引用発明における「暗号化したコンテンツをブロードキャストによって,前記利用者端末に配送」することが,
本件補正発明における「暗号化したブロードキャストサービスデータをブロードキャストするステップ」に相当する。

(オ)引用発明における「ハッシュ連鎖f1」と,「ハッシュ連鎖f2」は,引用刊行物1の【図4】を参照すると,適用する方向が,それぞれ,逆方向となっており,前記「ハッシュ連鎖f1」を順方向とすれば,「ハッシュ連鎖f2」が逆方向と言い得るものであることは明らかである。
よって,引用発明における「ハッシュ連鎖f1」と,「ハッシュ連鎖f2」が,本件補正発明における「順方向ハッシュチェーン」,及び,「逆方向ハッシュチェーン」に相当し,引用発明において,「ハッシュ連鎖f1」を用いて生成される「複数のX系列の秘密情報」,及び,「ハッシュ連鎖f2」を用いて生成される「複数のY系列の秘密情報」が,それぞれ,本件補正発明における「所定数の順方向暗号化キー」,及び,「所定数の逆方向暗号化キー」に相当する。
以上のことから,引用発明における「ハッシュ連鎖f1を前記X系列の元秘密情報に適用することにより,複数のX系列の秘密情報を生成」すること,及び,「ハッシュ連鎖f2を前記Y系列の元秘密情報に適用することにより,複数のY系列の秘密情報を生成」することが,
本件補正発明における「順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップ」,及び,「逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップ」に相当する。

(カ)そして,引用発明における「暗号鍵」は「コンテンツ」を暗号化するための鍵であって,本件補正発明の「所定数の暗号化キー」における「暗号化キー」と「トラフィック暗号化キー」とは同じものであるから,引用発明における「暗号鍵」が,本件補正発明における「所定数の暗号化キー」としての「暗号化キー」,及び,「トラフィック暗号化キー」に相当し,したがって,
引用発明における「X系列の秘密情報及びY系列の秘密情報を用いて,複数の暗号鍵を生成する」が,
本件補正発明における「順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップ」に相当する。

以上(ア)?(カ)において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成するステップと,
前記シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するステップと,
前記シードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップと,
前記暗号化したブロードキャストサービスデータをブロードキャストするステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を有する通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。

[相違点1]
本件補正発明においては,「端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップ」を有するものであるのに対して,
引用発明においては,「利用者端末」が,「有効期限」のある「登録端末」であることが言及されていない点。

[相違点2]
本件補正発明においては,「端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記端末から受信すると,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップ」を有するものであるのに対して,
引用発明においては,「利用者端末」が「PPV端末」であることが言及されていない点。

エ.相違点についての当審の判断
(ア)[相違点1],及び,[相違点2]について
引用発明においても,引用刊行物1の上記E?Gに引用した記載内容から明らかなように「1月から1年間契約した利用者A」の「利用者端末」において「コンテンツ」を復号可能なようにする点が示され,この場合,また,他の例として,引用刊行物1に,

I.「【0077】
1:00-2:00 の放送は,権限情報D{1} を算出できる利用者のみ
2:00-3:00 の放送は,権限情報D{2} を算出できる利用者のみ

22:00-23:00 の放送は,権限情報D{22} を算出できる利用者のみ
23:00-24:00 の放送は,権限情報D{23} を算出できる利用者のみ
例えば,10:00 から12:00 までを契約した契約者Aには,X{12},Y{10}を契約者Aのみに配送する。」

と記載されていて,上記Iと,上記E?Hに引用した記載内容を加味すれば,引用発明においても,所定の時間帯毎に放送番組を視聴可能とする機能を実現し得ることは明らかである。PPVとは,例えば,放送番組毎に契約を行う態様を示すものであるが,引用発明においても,時間帯ではなく,当該時間帯毎に契約する態様を採用すれば,PPVが実現し得ることも明らかである。
引用発明においては,1年間の契約が切れた後,或いは,所定の時間帯のコンテンツを視聴した後,コンテンツ発行機関と,利用者端末との間で,どのようにして,契約の更新を行うかについては,特に言及されていないが,端末の登録,及び,契約の更新については,原審拒絶理由において引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第2006/129983号(2006年12月7日公開,以下,これを「引用例2」という)に,

J.「[152] The user management DB 270 manages the users who have been purchased the contents provided from the server 200. A user management DB format 1270, as shown in FIG. 16, includes a user ID field 1271, a terminal ID field 1272, a user name field 1273, a user resident registration No. field 1274, a user contact field 1275, and a pre- miumadditional service registration information field 1276. The premiumadditional service registration information field 1276 includes a field 1276a for storing information on if the user subscribes the premiumadditional service and a field 1276b for storing information on a service period for the premiumadditional service of the user.」
(【0092】
ユーザ管理DB270は,サーバ200から提供するコンテンツを購買した履歴のあるユーザに関する情報を管理する。ユーザ管理DBフォーマット1270は,図16に例示したように,ユーザ管理番号フィールド(1271),端末番号フィールド(1272),名前フィールド(1273),住民登録番号フィールド(1274),連絡先フィールド(1275),付加サービス加入情報フィールド(1276)を含み,前記ユーザ情報(特に,付加サービス加入情報)を管理することが好ましい。特に,付加サービス加入情報フィールド1276には該当ユーザが期間定額制サービスに加入したか否かを記入するためのフィールド1276aと,該当ユーザが期間定額制サービスに加入した場合にはそのサービス期間を記入するためのフィールド1276bとを含み,対応する情報を格納することが好ましい。<引用刊行物2の日本語公報である,特表2008-543216号公報における対応箇所より引用。以下,同じ>)

K.「[182] Referring to FIG. 19, when the user terminal 700 transmits a subscription request message for the period-based flat rate service contentperiod-based flat rate content service to the server 200 (S305), the server 200 updates the user management DB stored in the terminal 700 (S310).
[183] For example, the premiumadditional service subscription information contained in the user management DB is updated. That is, a description (i.e., Flag mark) for the use of the period-based flat rate service by the user and the service period are recorded in the premiumadditional service subscription field of the user management field.」
(【0113】
図19を参照すると,端末700がサーバ200に接続した後に期間定額制コンテンツ使用のためのサービス(以下,「期間定額制サービス」と称する)に加入要請メッセージを伝送すると(S305),サーバ200は予め格納したユーザ端末700のユーザ管理DBを更新する。例えば,前記ユーザ管理DBに含まれた付加サービス加入情報を変更する。すなわち,ユーザ管理DBに含まれた付加サービス加入情報フィールドに該当ユーザが期間定額制サービスを用いるという内容,例えば,フラグ表示や,そのサービス期間を記入する。)

L.「[190] Then, the server 200 receiving the content use request message searches the user management DB of the server 200 using the terminal ID (S335). That is, the server 200 identifies if the user subscribes the period-based flat rate service by searching the user management DB.

[191] When it is identified that the user subscribes the period-based flat rate service, the server 200 determines if the service period for the user expires according to the information stored in the user management DB (S340). When it is determined that the service period expires, the master right object provided to the terminal 700 is updated (S345). At this point, the terminal 700 determines the service extension period in response to the user's approval and updates the master right object according to the service extension period.

[192] Then, the server 200 transmits the master right object to the terminal 700 (S350).」
(【0117】
前記コンテンツ使用要請の伝送を受けたサーバ200は,前記要請の際に共に伝送された該当端末700の端末番号を用いてサーバ200で管理するユーザ管理DBを検索する(S335)。すなわち,サーバ200は前記ユーザ管理DBを検索して該当ユーザが期間定額制サービスに加入しているか否かを確認する。
【0118】
前記確認結果,該当ユーザが期間定額制サービスに加入していると判断されると,サーバ200は前記ユーザ管理DBに格納された情報に基づいて,該当ユーザのサービス期間が満了したか否かを判断し(S340),該当ユーザのサービス期間が満了した場合,前記端末700に提供されたマスター使用権限を更新する(S345)。この時,前記過程は端末700ユーザの承認により延長期間を決定し,その期間情報に基づいてマスター使用権限を更新することが好ましい。
【0119】
そして,サーバ200前記更新されたマスター使用権限を端末700に伝送する(S350)。)

と記載されていて,「ユーザ」が,「期間定額制サービスに加入」した場合に,当該「ユーザ」を,「ユーザ管理DB」に登録し,「コンテンツ使用要請の伝送を受けたサーバ」は,「サービス期間が満了した場合」に,「サーバ」が,「権限を更新する」ことが開示されていて,このとき,「ユーザ」の「端末」は,「登録端末」と言い得るものであって,引用例2に係る発明も,引用発明も,時間的条件の設定されたコンテンツ提供サービスである点で共通しているので,引用発明において,コンテンツの配信を契約した際に,契約した「ユーザ」の「ユーザ利用端末」を「コンテンツ発行機関」のデータベースに登録し,コンテンツの配信要求を受けたときに,契約の更新等を提供するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点1,及び,相違点2は,格別のものではない。

上記において検討したとおり,本件補正発明と,引用発明との,相違点1,及び,相違点2はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,引用発明,及び,引用例2に係る発明から,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

よって,本件補正発明は,引用発明,及び,引用例2に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

オ.独立特許要件むすび
以上のとおり,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に,本件手続補正が,目的要件を満たすとしても,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成25年7月23日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成25年3月4日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成25年7月23日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。

「通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成するステップと,
前記シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するステップと,
前記シードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップと,
前記暗号化したブロードキャストサービスデータをブロードキャストするステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を有することを特徴とする通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明
原審拒絶理由において引用され,上記「第2.平成25年7月23日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(3)独立特許要件」における「イ.引用刊行物に記載の発明」において,引用刊行物1として引用した,特開2001-320357号公報(2001年11月16日公開)には,上記「イ.引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,次の引用発明が記載されている。

コンテンツ発行機関が,利用者端末に,放送,インターネット等を介してコンテンツを配送するサービスを提供する方法であって,
コンテンツ発行機関において,1つのX系列の元秘密情報と,1つのY系列の元秘密情報を生成し,前記元秘密情報の組を,利用者端末に送信し,
前記元秘密情報の組を用いて,複数の暗号鍵を生成し,
前記暗号鍵を用いてブロードキャストされるコンテンツを暗号化し,
前記暗号化したコンテンツをブロードキャストによって,前記利用者端末に配送し,
前記複数の暗号鍵の生成は,
ハッシュ連鎖f1を前記X系列の元秘密情報に適用することにより,複数のX系列の秘密情報を生成し,
ハッシュ連鎖f2を前記Y系列の元秘密情報に適用することにより,複数のY系列の秘密情報を生成し,
前記X系列の秘密情報及びY系列の秘密情報を用いて,複数の暗号鍵を生成する,方法。

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成25年7月23日付けの手続補正の却下の決定」の「(3)独立特許要件」における「ア.補正後の請求項1に係る発明」以降において検討した,本件補正発明から,「端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップ」と,「端末がペイ-パー-ビュー(PPV)端末であり前記有効期間が満了した場合,追加のブロードキャストサービスに対する要請を前記端末から受信すると,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップ」という,2つの「ステップ」を除いたものであるから,
本願発明と,引用発明とは,

通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法であって,
第1のキー及び第2のキーを有するシードキー対を生成するステップと,
前記シードキー対を前記ブロードキャストサービスが提供される端末に送信するステップと,
前記シードキー対を用いて前記シードキー対の有効期間に対応する所定数の暗号化キーを生成するステップと,
前記暗号化キーを用いて前記有効期間の間のブロードキャストサービスデータを暗号化するステップと,
前記暗号化したブロードキャストサービスデータをブロードキャストするステップと,を有し,
前記所定数の暗号化キーを生成するステップは,
順方向ハッシュチェーンを前記第1のキーに適用することにより所定数の順方向暗号化キーを生成するステップと,
逆方向ハッシュチェーンを前記第2のキーに適用することにより所定数の逆方向暗号化キーを生成するステップと,
前記順方向暗号化キー及び前記逆方向暗号化キーを用いて所定数のトラフィック暗号化キーを生成するステップと,を含み,
前記端末が登録端末であり前記有効期間が満了した場合,次のシードキー対を生成してこれを前記端末に送信するステップと,を有する通信システムにおけるブロードキャストサービスを提供する方法。

である点で一致し,格別の相違点は存在しない。

よって,本願発明と,引用刊行物1に記載された発明である。
また,本願発明と,引用刊行物1に記載された発明である以上,当業者が,引用発明に基づいて,本願発明を容易に構築し得ることも明らかである。

第6.むすび
したがって,本願発明は,引用刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許をうけることができない。
加えて,本願発明は,引用刊行物1に記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-02 
結審通知日 2015-04-07 
審決日 2015-04-20 
出願番号 特願2011-502863(P2011-502863)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 574- Z (H04L)
P 1 8・ 572- Z (H04L)
P 1 8・ 573- Z (H04L)
P 1 8・ 113- Z (H04L)
P 1 8・ 571- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
田中 秀人
発明の名称 通信システムにおける暗号化キーを用いるブロードキャストサービスを提供する方法及び装置、並びにブロードキャストサービスを受信する方法及び装置  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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