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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1305374
審判番号 不服2015-609  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-13 
確定日 2015-09-29 
事件の表示 特願2013-201119「振動ジャイロ素子およびジャイロセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月20日出願公開、特開2014- 32205、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成25年9月27日
(平成17年1月20日に出願した特願2005-12418号の一部を、平成21年10月7日に新たな特許出願とした特願2009-233098号の一部を、平成24年8月9日に新たな特許出願とした特願2012-176900号の一部を、平成25年9月27日に新たな特許出願としたものである。)
拒絶理由通知 : 平成26年5月21日(送付日:同年同月27日)
手続補正: 平成26年7月23日(以下、「補正1」という。)
拒絶査定: 平成26年10月7日(送達日:同年同月14日)
手続補正: 平成27年1月13日(以下、「本件補正」という。)
拒絶査定不服審判の請求: 平成27年1月13日


第2 補正の却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。

(補正前)
「基部、前記基部から第1方向に沿って延出している第1の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向とは反対の方向に沿って延出している第2の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向に直交する第2方向に延出している第1の連結腕、前記基部から前記第2方向とは反対の方向に延出している第2の連結腕、前記第1の連結腕から前記第1方向に延出している第1の駆動用振動腕、前記第1の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第2の駆動用振動腕、前記第2の連結腕から前記第1方向に延出している第3の駆動用振動腕、および前記第2の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第4の駆動用振動腕を有している振動体と、
前記基部に対して、前記基部の重心を通る前記第1方向側に配置されている第1の支持部と、
前記基部に対して、前記第1方向とは反対の方向側に配置されている第2の支持部と、
前記基部と前記第1の支持部とを連結している第1の梁及び第2の梁と、
前記基部と前記第2の支持部とを連結している第3の梁及び第4の梁と、
を備え、
前記第1の梁及び第2の梁は、前記第1の支持部から延出され前記第1方向とは反対の方向に延出している第1の構成部分と、前記第1の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第2の構成部分と、前記第2の構成部分から前記第1の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第3の構成部分と、前記第3の構成部分から前記第2の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第4の構成部分と、を備え、
前記第3の梁及び第4の梁は、前記第2の支持部から延出され前記第1方向に延出している第5の構成部分と、前記第5の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第6の構成部分と、前記第6の構成部分から前記第5の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第7の構成部分と、前記第7の構成部分から前記第6の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第8の構成部分と、を備え、
前記第1の梁及び前記第2の梁と前記第3の梁及び前記第4の梁とは、前記第1方向を規定する線に対して線対称である、ことを特徴とする振動ジャイロ素子。」

(補正後)
「基部と、前記基部から両側へ延出している第1及び第2の検出用振動腕と、前記基部から両側へ前記検出用振動腕の延出方向と直交する方向に沿って延出している第1及び第2の連結腕と、前記第1の連結腕から両側へ前記検出用振動腕の延出方向に沿って延出している第1及び第2の駆動用振動腕と、前記第2の連結腕から両側へ前記検出用振動腕の延出方向に沿って延出している第3及び第4の駆動用振動腕と、を有し、前記検出用振動腕は、前記検出用振動腕の延出方向と直交する方向に沿って検出振動をする振動体と、
前記第1の検出用振動腕の延出方向であって、前記第1の検出用振動腕の外側に配置されている第1の支持部と、
前記第2の検出用振動腕の延出方向であって、前記第2の検出用振動腕の外側に配置されている第2の支持部と、
前記基部から延出しており、前記第1の検出用振動腕と前記第1の駆動用振動腕との間を通り、前記第1の支持部に連結している第1の梁と、
前記基部から延出しており、前記第2の検出用振動腕と前記第2の駆動用振動腕との間を通り、前記第2の支持部に連結している第2の梁と、
前記基部から延出しており、前記第1の検出用振動腕と前記第3の駆動用振動腕との間を通り、前記第1の支持部に連結している第3の梁と、
前記基部から延出しており、前記第2の検出用振動腕と前記第4の駆動用振動腕との間を通り、前記第2の支持部に連結している第4の梁と、
を備え、
前記第1乃至第4の梁は、前記第1の支持部または前記第2の支持部から前記検出用振動腕の延出方向に沿って延出している第1の構成部分と、前記第1の構成部分の先端から前記基部側へ前記検出用振動腕の延出方向と直交する方向に沿って延出している第2の構成部分と、前記第2の構成部分の先端から前記第1の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第3の構成部分と、を備え、
前記第1の梁及び前記第2の梁と前記第3の梁及び前記第4の梁とは、前記基部の重心を通り、前記検出用振動腕の延出方向と平行な線に対して線対称であり、かつ、
前記第1の梁及び前記第3の梁と前記第2の梁及び前記第4の梁とは、前記基部の重心を通り、前記検出用振動腕の延出方向と直交する方向と平行な線に対して線対称であることを特徴とする振動ジャイロ素子。」

2 補正の適否の検討
本件補正が、いわゆる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するかについて検討する。
補正前の請求項1において、第1ないし第4の梁の構成は、
「前記第1の梁及び第2の梁は、前記第1の支持部から延出され前記第1方向とは反対の方向に延出している第1の構成部分と、前記第1の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第2の構成部分と、前記第2の構成部分から前記第1の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第3の構成部分と、前記第3の構成部分から前記第2の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第4の構成部分と、を備え、
前記第3の梁及び第4の梁は、前記第2の支持部から延出され前記第1方向に延出している第5の構成部分と、前記第5の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第6の構成部分と、前記第6の構成部分から前記第5の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第7の構成部分と、前記第7の構成部分から前記第6の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第8の構成部分と、を備え、」るものと特定されている一方、補正後の請求項1においては、
「前記第1乃至第4の梁は、前記第1の支持部または前記第2の支持部から前記検出用振動腕の延出方向に沿って延出している第1の構成部分と、前記第1の構成部分の先端から前記基部側へ前記検出用振動腕の延出方向と直交する方向に沿って延出している第2の構成部分と、前記第2の構成部分の先端から前記第1の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第3の構成部分と、を備え、」るとされており、実質的に、補正前の第1の梁及び第2の梁における「前記第3の構成部分から前記第2の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第4の構成部分」及び、補正前の第3の梁及び第4の梁における「前記第7の構成部分から前記第6の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第8の構成部分」という構成が削除されている。したがって、本件補正はいわゆる特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、本件補正が請求項の削除を目的とするものであるとも、誤記の訂正を目的とするものであるとも、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるともいえないことも明らかである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
そこで、まず、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)について検討するに、本願発明は、以下のとおりである。

「基部、前記基部から第1方向に沿って延出している第1の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向とは反対の方向に沿って延出している第2の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向に直交する第2方向に延出している第1の連結腕、前記基部から前記第2方向とは反対の方向に延出している第2の連結腕、前記第1の連結腕から前記第1方向に延出している第1の駆動用振動腕、前記第1の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第2の駆動用振動腕、前記第2の連結腕から前記第1方向に延出している第3の駆動用振動腕、および前記第2の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第4の駆動用振動腕を有している振動体と、
前記基部に対して、前記基部の重心を通る前記第1方向側に配置されている第1の支持部と、
前記基部に対して、前記第1方向とは反対の方向側に配置されている第2の支持部と、
前記基部と前記第1の支持部とを連結している第1の梁及び第2の梁と、
前記基部と前記第2の支持部とを連結している第3の梁及び第4の梁と、
を備え、
前記第1の梁及び第2の梁は、前記第1の支持部から延出され前記第1方向とは反対の方向に延出している第1の構成部分と、前記第1の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第2の構成部分と、前記第2の構成部分から前記第1の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第3の構成部分と、前記第3の構成部分から前記第2の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第4の構成部分と、を備え、
前記第3の梁及び第4の梁は、前記第2の支持部から延出され前記第1方向に延出している第5の構成部分と、前記第5の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第6の構成部分と、前記第6の構成部分から前記第5の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第7の構成部分と、前記第7の構成部分から前記第6の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第8の構成部分と、を備え、
前記第1の梁及び前記第2の梁と前記第3の梁及び前記第4の梁とは、前記第1方向を規定する線に対して線対称である、ことを特徴とする振動ジャイロ素子」

2 原査定の理由の概要
請求項1ないし5に係る各発明は、いずれも、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開2001-12955号公報
刊行物2:特開2000-180182号公報
刊行物3:特開2001-74468号公報
刊行物4:特開平9-269227号公報

3 当審の判断
(1)判断1
a 刊行物1の記載事項
刊行物1には、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、振動型ジャイロスコープに関するものである。」

(b)
「【0037】図1は、この態様に係る圧電単結晶製の振動子1を備えた振動型ジャイロスコープを、概略的に示す平面図である。基部8は、振動子の重心GOを中心として、4回対称の正方形をしている。基部8の周縁部8aから、四方に向かって放射状に、二つの駆動振動系9A、9B(本例では第一の振動系)と検出振動系10A、10B(本例では第二の振動系)とが突出しており、各振動系は互いに分離されている。駆動振動系9Aと9Bとは、重心GOを中心として2回対称であり、検出振動系10Aと10Bとは、重心GOを中心として2回対称である。
【0038】駆動振動系9A、9Bは、基部8の周縁部8aから突出する支持部2A、2Bと、支持部2A、2Bの先端2b側から支持部に直交する方向に延びる屈曲振動片3A、3B、3C、3Dを備えている。各屈曲振動片には、それぞれ駆動電極4A、4B、4C、4Dが設けられている。検出振動系10A、10Bは、細長い周方向屈曲振動片からなり、各屈曲振動片には検出電極5A、5Bが設けられている。」

(c)
「【0046】図4は、他の実施形態に係る振動子11を概略的に示す平面図である。駆動振動系9A、9B、検出振動系10A、10Bおよびこれらの動作については、図1に示したものと同様である。この基部13の検出振動系側の2片の周縁13aから枠部12A、12Bが延びており、各枠部の中に各検出振動系が包囲されている。各枠部は、それぞれ、各検出振動系と平行に延びる接続部分12aと、振動子の支持、固定を必要に応じて行うための支持枠12bとを備えている。枠部12A、12Bの中で、駆動振動時および検出振動時の振幅が最小の領域を支持、固定する。

・・・

【0049】検出振動の振幅が最小の領域6A内において、本発明に従って振動子11を支持し、固定し、および/または、支持孔7A(図示せず)において振動子11を支持し、固定する。また、支持枠12b内の領域6Bも振幅が最小となるので、この領域6B内において、本発明に従って振動子11を支持し、固定できる。また、領域6B内に、図示しない支持孔を形成し、この支持孔において振動子11を支持し、固定できる。」

また、図4の記載から、検出振動系10Aの突出する方向(第1方向)とは反対の方向に検出振動系10Bが突出していること、また第1方向に直交する方向(第2方向)に支持部2Bが突出し、その反対方向に支持部2Aが突出し、該支持部2Bから第1方向に屈曲振動片3Cが延び、その反対方向に屈曲振動片3Dが延び、支持部2Aから第1方向に屈曲振動片3Aが延び、その反対方向に屈曲振動片3Bが延びていること、さらに、枠部12Aの支持枠12bが基部に対して第1方向側に配置され、枠部12Bの支持枠12bが基部に対して第1方向とは反対の方向側に配置されていること、枠部12Aを構成する2つの接続部分12aと枠部12Bを構成する2つの接続部分12aとは前記第1方向に沿った線に対して線対称であること、が読みとれる。
以上の点を踏まえ、上記記載(a)ないし(c)、及び図面の図1及び図4の記載から、引用刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「基部、前記基部の周縁部から第1方向に突出する検出振動系10A、前記基部の周縁部から第1方向とは反対の方向に突出する検出振動系10B、前記基部の周縁部から前記第1方向に直交する第2方向に突出している支持部2B、前記基部の周縁部から前記第2方向とは反対の方向に突出している支持部2A、前記支持部2Bの先端側から第1方向に延びる屈曲振動片3C、前記支持部2Bの先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片3D、前記支持部2Aの先端側から第1方向に延びる屈曲振動片3A、前記支持部2Aの先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片3Bを有している振動子11と、
前記基部に対して第1方向側に配置されている枠部12Aの支持枠12bと、前記基部に対して第1方向とは反対の方向側に配置されている枠部12Bの支持枠12bと、
各検出振動系と平行に延びる、各枠部の接続部分12aと、
を備え、
枠部12Aを構成する2つの接続部分12aと枠部12Bを構成する2つの接続部分12aとは前記第1方向に沿った線に対して線対称である、ことを特徴とする振動子。」(以下「引用発明1」という。)

b 対比
本願発明と引用発明1とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。

まず、引用発明1における「基部」は、本願発明における「基部」に相当し、引用発明1における「振動子11」は、本願発明における「振動体」もしくは「振動ジャイロ素子」に相当する。同様に、引用発明1における「前記基部の周縁部から第1方向に突出する検出振動系10A」、「前記基部の周縁部から第1方向とは反対の方向に突出する検出振動系10B」、「前記基部の周縁部から前記第1方向に直交する第2方向に突出している支持部2B」、「前記基部の周縁部から前記第2方向とは反対の方向に突出している支持部2A」、「前記支持部2Bの先端側から第1方向に延びる屈曲振動片3C」、「前記支持部2Bの先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片3D」、「前記支持部2Aの先端側から第1方向に延びる屈曲振動片3A」、及び「前記支持部2Aの先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片3B」は、それぞれ本願発明における「前記基部から第1方向に沿って延出している第1の検出用振動腕」、「前記基部から前記第1方向とは反対の方向に沿って延出している第2の検出用振動腕」、「前記基部から前記第1方向に直交する第2方向に延出している第1の連結腕」、「前記基部から前記第2方向とは反対の方向に延出している第2の連結腕」、「前記第1の連結腕から前記第1方向に延出している第1の駆動用振動腕」、「前記第1の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第2の駆動用振動腕」、「前記第2の連結腕から前記第1方向に延出している第3の駆動用振動腕」、及び「前記第2の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第4の駆動用振動腕」に相当する。
また、引用発明1の「前記基部に対して第1方向側に配置されている枠部12Aの支持枠12b」と、「前記基部に対して第1方向とは反対の方向側に配置されている枠部12Bの支持枠12b」とは、それぞれ本願発明における「前記基部に対して、前記基部の重心を通る前記第1方向側に配置されている第1の支持部」及び「前記基部に対して、前記第1方向とは反対の方向側に配置されている第2の支持部」に相当する。
また、引用発明1における「各検出振動系と平行に延びる、各枠部の接続部分12a」は、基部と支持枠12bとを接続するものであるから、「梁」であるといえる。したがって、引用発明1における「各検出振動系と平行に延びる、各枠部の接続部分12a」は、本願発明における「前記基部と前記第1の支持部とを連結している第1の梁及び第2の梁と、前記基部と前記第2の支持部とを連結している第3の梁及び第4の梁」に相当する。
さらに、引用発明1において「枠部12Aを構成する2つの接続部分12aと枠部12Bを構成する2つの接続部分12aとは前記第1方向に沿った線に対して線対称である」ことは、本願発明における「前記第1の梁及び前記第2の梁と前記第3の梁及び前記第4の梁とは、前記第1方向を規定する線に対して線対称である」ことに相当する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「基部、前記基部から第1方向に沿って延出している第1の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向とは反対の方向に沿って延出している第2の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向に直交する第2方向に延出している第1の連結腕、前記基部から前記第2方向とは反対の方向に延出している第2の連結腕、前記第1の連結腕から前記第1方向に延出している第1の駆動用振動腕、前記第1の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第2の駆動用振動腕、前記第2の連結腕から前記第1方向に延出している第3の駆動用振動腕、および前記第2の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第4の駆動用振動腕を有している振動体と、
前記基部に対して、前記基部の重心を通る前記第1方向側に配置されている第1の支持部と、
前記基部に対して、前記第1方向とは反対の方向側に配置されている第2の支持部と、
前記基部と前記第1の支持部とを連結している第1の梁及び第2の梁と、
前記基部と前記第2の支持部とを連結している第3の梁及び第4の梁と、
を備え、
前記第1の梁及び前記第2の梁と前記第3の梁及び前記第4の梁とは、前記第1方向を規定する線に対して線対称である、ことを特徴とする振動ジャイロ素子」

(相違点)
相違点1:本願発明においては、
「前記第1の梁及び第2の梁は、前記第1の支持部から延出され前記第1方向とは反対の方向に延出している第1の構成部分と、前記第1の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第2の構成部分と、前記第2の構成部分から前記第1の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第3の構成部分と、前記第3の構成部分から前記第2の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第4の構成部分と、を備え、
前記第3の梁及び第4の梁は、前記第2の支持部から延出され前記第1方向に延出している第5の構成部分と、前記第5の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第6の構成部分と、前記第6の構成部分から前記第5の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第7の構成部分と、前記第7の構成部分から前記第6の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第8の構成部分と、を備え、」
るとされているのに対し、引用発明1においては、第1ないし第4の梁に相当する接続部分12aは、そのような構造を有さない点。

c 判断
上記相違点1について検討する。
上記刊行物3及び4には、振動ジャイロにおける振動子の支持部材構造に関し、それぞれ図面と共に以下のような記載がある。

(a)刊行物3
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は振動子の支持構造に関し、特にたとえば、振動ジャイロなどに用いられる振動子の支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の振動子の支持構造として、本件出願人が特願平11-19822号として出願したものがある。図3は、その従来の振動子の支持構造を示す斜視図であり、図4はその側面図解図である。振動子1は、たとえば逆向きの厚み方向に分極された2つの柱状の圧電体基板2a,2bを接着することによって形成される。一方の圧電体基板2a上には、分割された電極が形成され、振動子1の2つのノード点に対応する部分に形成された電極3に支持部材4が取り付けられる。これらの支持部材4は、それぞれ振動子1の中央部において分割して形成された電極5a,5bに接続される。他方の圧電体基板2b上には、全面電極6が形成される。そして、振動子1の2つのノード点に対応した部分において、全面電極6に支持部材4が取り付けられる。
【0003】これらの支持部材4の端部は、支持台7に支持される。支持台7には、金属ピン8が埋め込まれ、半田付けや導電性接着剤などによって、金属ピン8の露出部に支持部材4が固定されている。このような振動子1は、たとえば振動ジャイロとして用いられる。支持部材4を介して電極5a,5bと全面電極6との間に信号を入力することにより、振動子1は全面電極6の形成面に直行する向きに屈曲振動する。そして、振動子1の軸を中心として回転すると、コリオリ力によって振動子1の振動方向が変わる。このような振動方向の変化に対応した信号が、電極5a,5bから出力される。そのため、電極5a,5bの出力信号を測定することにより、振動子1に加わった回転角速度を検出することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図3に示す振動子の支持構造では、8か所で金属ピンと支持部材とが接合されているが、これらの接続部の半田の量にばらつきがあったり、半田付け時の熱ストレス、加工時の機械的ストレスによる支持部材や支持台の変形のため、接合部の固定状態にばらつきが生じる。このような固定状態のばらつきにより、支持部材から支持台への振動漏れが発生する。そのため、振動子の振動が不安定になって、特性劣化が生じる。」

「【0018】また、この振動子10を支持する支持部材28,30,32,34には、折り曲げ部が形成されているため、この折り曲げ部で振動子10の振動の漏れが吸収され、振動が支持台36,38に伝わりにくい構造になっている。このような構造によっても、振動子10の振動漏れを防ぐことができ、特性の安定化に寄与することができる。」

(b)刊行物4
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、振動ジャイロに関し、例えば回転角速度を検知することにより移動体の位置を検出し、適切な誘導を行うナビゲーションシステム、または手ぶれ等の外的振動による回転角速度を検知し適切な制振を行う手ぶれ防止装置等の除振システム等に応用できる振動ジャイロに関する。」

「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の振動ジャイロにおいては、次のような問題点があった。
【0008】すなわち、振動子50に取り付けられる線材56、56が直線状であり、それぞれの両端において固定されているため、振動子50がその長手方向に直交する方向(線材56、56の長手方向)に振動する際、振動が抑制され、それにより振動ジャイロの温度特性および感度が低下する恐れがあった。また、振動子50に線材57、57を取り付ける場合には、線材57、57が屈曲しているため、振動子50の振動の抑制は微小である反面、振動子50を中空に支持するために線材57、57の脚部59の長さ寸法を一定以上に確保しなければならず、振動ジャイロ全体としての高さ寸法が大きくなり、小型化に対する制約となった。」

「【0019】また、図6に示す線材24のように、二つのコ字状の屈曲部25、25を設けてもよい。線材24は、屈曲部25、25の中間点において、振動子2の共通電極7に接着されて用いられる。このように、振動子2を挟んで二つの屈曲部25、25が配置される場合、線材24は、単一の屈曲部を有する線材に比べて、振動子2の振動に対する追従性が高く、振動ジャイロの温度特性および感度のより一層の向上が期待できる。ここで、線材24に設ける屈曲部25、25の形状はコ字状に限定されるものではない。すなわち、鋭角的に屈曲した屈曲部、または曲線状に屈曲した屈曲部を設けてもよく、また、図7に示す線材26のように、コイル状の屈曲部27、27を設けてもよい。さらに、一方の線材と他方の線材とで、屈曲部の形状が異なっていてもよい。」

上記及び図面の記載から、刊行物3及び4には、振動ジャイロにおける柱状振動子の支持部材に折り曲げ部(屈曲部)を設けた構造(以下、「公知技術1」という。)が開示されているといえる。
しかしながら、公知技術1は柱状振動子の支持構造に関するものであるから、これを、板状の振動子の基部を直接固定可能な構造をなす引用発明1の振動子の支持構造として適用する動機を見いだすことはできない。特に、引用発明1においては接続部分12aは、(各振動系の部位ではなく、固定される領域6Aを含む)基部につながっており、振動を発生することが想定されていない基部への接続部分12aに対して、振動漏れや振動の抑制を防止しようとするような、公知技術1と共通な課題は見いだせない。したがって、引用発明1に公知技術1を適用することはできない。
また、仮に引用発明1に公知技術1を適用することができたとしても、そもそも刊行物3及び4に開示されている折り曲げ部(屈曲部)は、いずれも本願発明の梁構造における折り返し部分、すなわち、
「第1の梁及び第2の梁」における「前記第2の構成部分から前記第1の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第3の構成部分と、前記第3の構成部分から前記第2の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第4の構成部分」
と、
「第3の梁及び第4の梁」における「前記第6の構成部分から前記第5の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第7の構成部分と、前記第7の構成部分から前記第6の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第8の構成部分」
に相当する構成を有しておらず、上記適用によって相違点1に係る構成を実現することはできない。そして、この梁構造における折り返し部分の有無は、折り曲げ部(屈曲部)全体の形成方向が異なることによって生じているものであるから、単なる設計事項として適宜変更しうるものであるとも認められない。

そして、本願発明は、上記相違点1として挙げた構成を備えることにより、基部を支持することにより検出振動が抑圧されて角速度の検出感度が低下することを防止するという、特段の作用効果を奏する。
したがって、本願発明は、引用発明1及び公知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
請求項2-5に係る発明は、本願発明をさらに限定した発明であるから、本願の請求項2-5に係る発明も、同様に、引用発明1及び公知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)判断2
a 刊行物2の記載事項
刊行物2には、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、系の回転角速度および直線加速度を検出するための振動型ジャイロスコープに関するものである。」

(b)
「【0005】本発明の課題は、加速度と角速度とを一つの振動子内で同時に測定することができ、かつ回転角速度の検出時の振動子の振動ノイズを減少させ、更に加速度の検出感度を一層向上させることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、振動型ジャイロスコープが配置されている系の回転角速度および直線加速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、所定面内に延びるように形成されている振動子を備えており、この振動子が、所定面内の駆動振動を励振するための駆動振動系、振動子の回転によって振動子に発生した所定面内の検出振動を検出するための検出振動系であって、駆動振動系と分離されている検出振動系、駆動振動系と検出振動系とを連結する連結部、連結部から延びている音叉型振動片であって、無荷重時に所定の共振周波数において共振する音叉型振動片、および音叉型振動片を固定する固定部を備えており、検出振動を検出することによって回転角速度を算出し、音叉型振動片の共振周波数の変化を検出することによって直線加速度を算出する。」

(c)
「【0033】図3は、本発明の一実施形態に係る圧電単結晶製の振動子を備えた振動型ジャイロスコープを、概略的に示す正面図である。連結部13は、振動子の重心GOを中心として、4回対称の正方形をしている。連結部13の周縁部13aから、四方に向かって、放射状に、二つの駆動振動系2A、2Bと検出振動系3A、3Bとが突出しており、各振動系は互いに分離されている。駆動振動系2Aと2Bとは重心GOを中心として2回対称であり、検出振動系3Aと3Bとは重心GOを中心として2回対称である。
【0034】駆動振動系2A、2Bは、連結部13の周縁部13aから突出する支持部18と、支持部18の先端18b側から支持部に直交する方向に延びる屈曲振動片4A、4Bを備えている。各屈曲振動片4A、4Bは、更に詳細には屈曲振動片14Aと14B、および14Cと14Dからなる。各屈曲振動片には、それぞれ駆動電極15が設けられている。検出振動系3A、3Bは、細長い周方向屈曲振動片5A、5Bからなり、各屈曲振動片には検出電極16が設けられている。
【0035】連結部13からは、更に、一方の軸(X軸)の方向に延びるように、直線加速度検出部6A、6Cが延びており、他方の軸(Y軸)の方向に延びるように、直線加速度検出部6B、6Dが延びている。各検出部は、それぞれ、音叉型振動片9Iと9J,9Kと9L,9Mと9N,9Pと9Qとの各対の音叉型振動片を備えており、各対の音叉型振動片の端部に固定部7E,7F,7G,7Hが結合されている。各固定部は、固定ピン8Aによって、図示しない固定部材に対して固定されている。
【0036】各音叉型振動片9I、9J、9M、9Nは、それぞれ、平行部分9b、および、平行部分9bと連結部13とを連結する傾斜部分9aを備えている。各音叉型振動片9K、9L、9P、9Qは、それぞれ、平行部分9d、および、平行部分9dと連結部13とを連結する傾斜部分9cを備えている。各対の音叉型振動片の内側の空隙10A、10B、10C、10D内に、それぞれ、各振動系2A、2B、3A、3Bが設けられている。
【0037】駆動モードにおいては、各屈曲振動片14A、14B、14C、14Dが、支持部18の先端部分18b付近を中心として、矢印Aのように屈曲振動する。検出モードにおいては、各支持部18が、固定部18aを中心として周方向に屈曲振動し、これに対応して、各検出振動系の各屈曲振動片5A、5Bが、矢印Bのように屈曲振動する。」

また、図3の記載から、検出振動系3Aの突出する方向(第1方向)とは反対の方向に検出振動系3Bが突出していること、また第1方向に直交する方向(第2方向)に2つの支持部18が突出し、一方の支持部18から第1方向に屈曲振動片14Dが延び、その反対方向に屈曲振動片14Cが延び、他方の支持部18から第1方向に屈曲振動片14Aが延び、その反対方向に屈曲振動片14Bが延びていること、さらに、直線加速度検出部6Dの固定部7Hが連結部13に対して第1方向側に配置され、直線加速度検出部6Bの固定部7Fが連結部13に対して第1方向とは反対の方向側に配置されていること、直線加速度検出部6Dの音叉型振動片9P及び9Qと直線加速度検出部6Bの音叉型振動片9L及び9Mとは、前記第1方向に沿った線に対して線対称であること、が読みとれる。
以上の点を踏まえ、上記記載(a)ないし(c)、及び図3の記載から、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。

「連結部13、前記連結部13の周縁部から第1方向に突出する検出振動系3A、前記連結部13の周縁部から第1方向とは反対の方向に突出する検出振動系3B、前記連結部13の周縁部から前記第1方向に直交する第2方向に突出している支持部18、前記連結部13の周縁部から前記第2方向とは反対の方向に突出している支持部18、前記第2方向に突出している支持部18の先端側から第1方向に延びる屈曲振動片14D、前記第2方向に突出している支持部18の先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片14C、前記第2方向とは反対の方向に突出している支持部18の先端側から第1方向に延びる屈曲振動片14A、前記第2方向とは反対の方向に突出している支持部18の先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片14Bを有している振動子と、
前記連結部13に対して第1方向側に配置されている直線加速度検出部6Dの固定部7Hと、前記連結部に対して第1方向とは反対の方向側に配置されている直線加速度検出部6Bの固定部7Fと、
連結部13と直線加速度検出部6Dの固定部7Hとを連結する音叉型振動片9P及び9Qと、
連結部13と直線加速度検出部6Bの固定部7Fとを連結する音叉型振動片9L及び9Mと、
を備え、
前記音叉型振動片9P及び9Qと前記音叉型振動片9L及び9Mとは、前記第1方向に沿った線に対して線対称である、ことを特徴とする振動子。」(以下「引用発明2」という。)

b 対比
本願発明と引用発明2とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。

まず、引用発明2における「連結部13」は、本願発明における「基部」に相当し、引用発明2における「振動子」は、本願発明における「振動体」もしくは「振動ジャイロ素子」に相当する。同様に、引用発明2における「前記連結部13の周縁部から第1方向に突出する検出振動系3A」、「前記連結部13の周縁部から第1方向とは反対の方向に突出する検出振動系3B」、「前記連結部13の周縁部から前記第1方向に直交する第2方向に突出している支持部18」、「前記連結部13の周縁部から前記第2方向とは反対の方向に突出している支持部18」、「前記第2方向に突出している支持部18の先端側から第1方向に延びる屈曲振動片14D」、「前記第2方向に突出している支持部18の先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片14C」、「前記第2方向とは反対の方向に突出している支持部18の先端側から第1方向に延びる屈曲振動片14A」、及び「第2方向とは反対の方向に突出している前記支持部18の先端側から第1方向とは反対の方向に延びる屈曲振動片14B」は、それぞれ本願発明における「前記基部から第1方向に沿って延出している第1の検出用振動腕」、「前記基部から前記第1方向とは反対の方向に沿って延出している第2の検出用振動腕」、「前記基部から前記第1方向に直交する第2方向に延出している第1の連結腕」、「前記基部から前記第2方向とは反対の方向に延出している第2の連結腕」、「前記第1の連結腕から前記第1方向に延出している第1の駆動用振動腕」、「前記第1の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第2の駆動用振動腕」、「前記第2の連結腕から前記第1方向に延出している第3の駆動用振動腕」、及び「前記第2の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第4の駆動用振動腕」に相当する。
また、引用発明2の「前記連結部13に対して第1方向側に配置されている直線加速度検出部6Dの固定部7H」と、「前記連結部13に対して第1方向とは反対の方向側に配置されている直線加速度検出部6Bの固定部7F」とは、それぞれ本願発明における「前記基部に対して、前記基部の重心を通る前記第1方向側に配置されている第1の支持部」及び「前記基部に対して、前記第1方向とは反対の方向側に配置されている第2の支持部」に相当する。
また、引用発明2における「連結部13と直線加速度検出部6Dの固定部7Hとを連結する音叉型振動片9P及び9Qと、連結部13と直線加速度検出部6Bの固定部7Fとを連結する音叉型振動片9L及び9Mと、」は、連結部13と固定部7H、7Fとを接続するものであるから、「梁」であるといえる。したがって、引用発明2における「連結部13と直線加速度検出部6Dの固定部7Hとを連結する音叉型振動片9P及び9Qと、連結部13と直線加速度検出部6Bの固定部7Fとを連結する音叉型振動片9L及び9Mと、」は、本願発明における「前記基部と前記第1の支持部とを連結している第1の梁及び第2の梁と、前記基部と前記第2の支持部とを連結している第3の梁及び第4の梁」に相当する。
さらに、引用発明2において「前記音叉型振動片9P及び9Qと前記音叉型振動片9L及び9Mとは、前記第1方向に沿った線に対して線対称である」ことは、本願発明における「前記第1の梁及び前記第2の梁と前記第3の梁及び前記第4の梁とは、前記第1方向を規定する線に対して線対称である」ことに相当する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「基部、前記基部から第1方向に沿って延出している第1の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向とは反対の方向に沿って延出している第2の検出用振動腕、前記基部から前記第1方向に直交する第2方向に延出している第1の連結腕、前記基部から前記第2方向とは反対の方向に延出している第2の連結腕、前記第1の連結腕から前記第1方向に延出している第1の駆動用振動腕、前記第1の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第2の駆動用振動腕、前記第2の連結腕から前記第1方向に延出している第3の駆動用振動腕、および前記第2の連結腕から前記第1方向とは反対の方向に延出している第4の駆動用振動腕を有している振動体と、
前記基部に対して、前記基部の重心を通る前記第1方向側に配置されている第1の支持部と、
前記基部に対して、前記第1方向とは反対の方向側に配置されている第2の支持部と、
前記基部と前記第1の支持部とを連結している第1の梁及び第2の梁と、
前記基部と前記第2の支持部とを連結している第3の梁及び第4の梁と、
を備え、
前記第1の梁及び前記第2の梁と前記第3の梁及び前記第4の梁とは、前記第1方向を規定する線に対して線対称である、ことを特徴とする振動ジャイロ素子」

(相違点)
相違点2:本願発明においては、
「前記第1の梁及び第2の梁は、前記第1の支持部から延出され前記第1方向とは反対の方向に延出している第1の構成部分と、前記第1の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第2の構成部分と、前記第2の構成部分から前記第1の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第3の構成部分と、前記第3の構成部分から前記第2の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第4の構成部分と、を備え、
前記第3の梁及び第4の梁は、前記第2の支持部から延出され前記第1方向に延出している第5の構成部分と、前記第5の構成部分から前記第2方向に沿って延出している第6の構成部分と、前記第6の構成部分から前記第5の構成部分の延出方向と同じ方向に沿って延出している第7の構成部分と、前記第7の構成部分から前記第6の構成部分の延出方向とは反対の方向に沿って延出している第8の構成部分と、を備え、」
るとされているのに対し、引用発明2においては、そのような構造を有さず、第1ないし第4の梁に相当する音叉型振動片9P、9Q、9L、9Mのみが特定されている点。

c 判断
上記相違点2について検討する。
上記「(1)判断1」の「c 判断」において示したと同様の理由により、本願発明は、引用発明2及び公知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。またそもそも、引用発明2において、本願発明の第1ないし第4の梁に相当する部材9P、9Q、9L、9Mは音叉型振動片を構成するものであるから、そのような部位に振動状態に影響を与えることが明らかな折り曲げ部(屈曲部)を設けることは当業者が通常想定し得ないものであるともいえる。
請求項2-5に係る発明は、本願発明をさらに限定した発明であるから、本願の請求項2-5に係る発明も、同様に、引用発明2及び公知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも引用発明1または引用発明2、及び刊行物3,4に記載の公知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-09-16 
出願番号 特願2013-201119(P2013-201119)
審決分類 P 1 8・ 572- WY (G01C)
P 1 8・ 574- WY (G01C)
P 1 8・ 573- WY (G01C)
P 1 8・ 571- WY (G01C)
P 1 8・ 121- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶田 真也  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
中塚 直樹
発明の名称 振動ジャイロ素子およびジャイロセンサ  
代理人 西田 圭介  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 仲井 智至  

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