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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A62C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62C
管理番号 1305525
審判番号 不服2014-14784  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-29 
確定日 2015-09-08 
事件の表示 特願2011-526427「化学的なプロセスのためのユニバーサルインフラストラクチャ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日国際公開、WO2010/028869、平成24年 1月26日国内公表、特表2012-501770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年5月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年9月10日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成23年3月10日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、同年5月10日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成24年3月21日に上申書とともに手続補正書が提出され、平成25年3月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年4月21日付けで拒絶査定がされ、同年7月29日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに同時に手続補正書が提出され、同年12月26日に上申書が提出されたものである。

第2 平成26年7月29日付けの手続補正について
1 平成26年7月29日付けの手続補正の内容
平成26年7月29日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正であって、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年10月1日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャであって、
a)物質及び/又はエネルギ及び/又は情報を、出発材料を収容及び/又は準備するための装置、生成物を収容及び/又は準備するための装置、出発材料を反応させて生成物にする反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための装置相互間及び/又は出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と前記装置との間で交換可能とする、前記インフラストラクチャ内に組み込まれた線路と、
b)前記装置及び/又は前記反応器が固定可能な少なくとも1つの取り付け域と、
を備える、化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャにおいて、
c)前記インフラストラクチャが可搬であり、
d)前記インフラストラクチャが少なくとも1つの立ち入り可能な室を空間的に画成し、
e)前記取り付け域が前記室内に配置されており、
f)前記インフラストラクチャが消火剤分配手段を備える
ことを特徴とする、化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャ。
【請求項2】
前記消火剤分配手段が、前記室内での消火剤の分配を許可する、請求項1記載のインフラストラクチャ。
【請求項3】
前記消火剤分配手段が、前記インフラストラクチャを取り巻く環状線路を備え、該環状線路が、前記プラントの液体噴霧のための、互いに間隔を置いて配置された多数のノズルを備える、請求項1又は2記載のインフラストラクチャ。
【請求項4】
前記インフラストラクチャが、消火剤を前記消火剤分配手段に供給するための、外部から接近可能な少なくとも1つの消火剤接続部を備える、請求項1から3までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項5】
前記室が強制通気を備える、請求項1から4までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項6】
前記室が気密に遮断可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項7】
前記室が捕集槽により受けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項8】
前記取り付け域が、前記装置及び/又は前記反応器及び/又は補助ユニットを受容するための多数の受容部を備える、請求項1から7までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項9】
複数の前記受容部は、それぞれ、正六角形の形態を有しており、ハニカム状に互いに隣接している、請求項8記載のインフラストラクチャ。
【請求項10】
前記インフラストラクチャを補強する架構構成部分を備え、前記架構構成部分が互いに直交するように延在している、請求項1から9までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項11】
前記インフラストラクチャが、エネルギ及び/又は補助媒体及び/又は副生成物を供給又は導出するための、外部に面した少なくとも1つのインターフェースを有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項12】
前記インフラストラクチャが、規格コンテナ、特にISO668規格のコンテナの大きさを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項13】
化学的なプロセスを実施するためのプラントにおいて、
a)出発材料を収容及び/又は準備するための少なくとも1つの装置と、
b)生成物を収容及び/又は準備するための少なくとも1つの装置と、
c)出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と、
d)前記反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための少なくとも1つの装置とを備え、請求項1から12までのいずれか1項記載のインフラストラクチャをベースに形成されていることを特徴とする、化学的なプロセスを実施するためのプラント。
【請求項14】
請求項13記載のプラントを用いて生成物を製造する方法において、
以下のステップ、すなわち:
a)反応を開ループ制御又は閉ループ制御するための装置内で、前記反応器内での反応の開ループ制御又は閉ループ制御のために必要な情報を記録しながら、第1の時間にわたって第1の量の生成物を製造するステップと、
b)前記インフラストラクチャ及び前記反応を開ループ制御又は閉ループ制御するための装置を維持したまま、プラントの容量を拡大するステップと、
c)前記反応を開ループ制御又は閉ループ制御するための装置から、前記反応器内での反応の開ループ制御又は閉ループ制御のために必要な情報を読み出しながら、第2の時間にわたって第2の量の生成物を製造するステップとを備え、
前記第2の量が前記第1の量より大きく、かつ前記第2の時間が前記第1の時間の後に位置することを特徴とする、生成物を製造する方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャであって、
a)物質及び/又はエネルギ及び/又は情報を、出発材料を収容及び/又は準備するための装置、生成物を収容及び/又は準備するための装置、出発材料を反応させて生成物にする反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための装置相互間及び/又は出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と前記装置との間で交換可能とする、前記インフラストラクチャ内に組み込まれた線路と、
b)前記装置及び/又は前記反応器が固定可能な少なくとも1つの取り付け域と、
を備える、化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャにおいて、
c)前記インフラストラクチャが可搬であり、
d)前記インフラストラクチャが少なくとも1つの立ち入り可能な室を空間的に画成し、
e)前記取り付け域が前記室内に配置されており、
f)前記インフラストラクチャが消火剤分配手段を備える
ことを特徴とする、化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャ。
【請求項2】
前記消火剤分配手段が、前記室内での消火剤の分配を許可する、請求項1記載のインフラストラクチャ。
【請求項3】
前記消火剤分配手段が、前記インフラストラクチャを取り巻く環状線路を備え、該環状線路が、前記プラントの液体噴霧のための、互いに間隔を置いて配置された多数のノズルを備える、請求項1又は2記載のインフラストラクチャ。
【請求項4】
前記インフラストラクチャが、消火剤を前記消火剤分配手段に供給するための、外部から接近可能な少なくとも1つの消火剤接続部を備える、請求項1から3までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項5】
前記室が強制通気を備える、請求項1から4までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項6】
前記室が気密に遮断可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項7】
前記室が捕集槽により受けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項8】
前記取り付け域が、前記装置及び/又は前記反応器及び/又は補助ユニットを受容するための多数の受容部を備える、請求項1から7までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項9】
前記インフラストラクチャを補強する架構構成部分を備え、前記架構構成部分が互いに直交するように延在している、請求項1から8までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項10】
前記インフラストラクチャが、エネルギ及び/又は補助媒体及び/又は副生成物を供給又は導出するための、外部に面した少なくとも1つのインターフェースを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項11】
前記インフラストラクチャが、規格コンテナ、特にISO668規格のコンテナの大きさを有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のインフラストラクチャ。
【請求項12】
化学的なプロセスを実施するためのプラントにおいて、
a)出発材料を収容及び/又は準備するための少なくとも1つの装置と、
b)生成物を収容及び/又は準備するための少なくとも1つの装置と、
c)出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と、
d)前記反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための少なくとも1つの装置とを備え、請求項1から11までのいずれか1項記載のインフラストラクチャをベースに形成されていることを特徴とする、化学的なプロセスを実施するためのプラント。
【請求項13】
請求項12記載のプラントを用いて生成物を製造する方法において、
以下のステップ、すなわち:
a)反応を開ループ制御又は閉ループ制御するための装置内で、前記反応器内での反応の開ループ制御又は閉ループ制御のために必要な情報を記録しながら、第1の時間にわたって第1の量の生成物を製造するステップと、
b)前記インフラストラクチャ及び前記反応を開ループ制御又は閉ループ制御するための装置を維持したまま、プラントの容量を拡大するステップと、
c)前記反応を開ループ制御又は閉ループ制御するための装置から、前記反応器内での反応の開ループ制御又は閉ループ制御のために必要な情報を読み出しながら、第2の時間にわたって第2の量の生成物を製造するステップとを備え、
前記第2の量が前記第1の量より大きく、かつ前記第2の時間が前記第1の時間の後に位置することを特徴とする、生成物を製造する方法。」
(なお、下線は補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の目的及び適否
本件補正は、本件補正前の請求項9を削除し、それに伴い、本件補正前の請求項10ないし14を新たな請求項9ないし13に繰り上げたものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。
したがって、本件補正は、適法なものである。

第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし13に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲、平成23年5月10日に提出された明細書の翻訳文及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)の【請求項1】のとおりである。

第4 引用文献の記載等
1 引用文献1の記載等
1-1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-79262号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「水素供給システム及び移動式水素製造装置」に関して、概ね次の記載(以下、順に、「記載1a」及び「記載1b」という。)がある。

1a 「【0015】
図2は、図1の実施の形態で採用することができる水素製造車の一実施の形態を示す。水素製造車は、移動式水素製造装置の一形態である。この図2は、水素供給ステーションで、水素製造車が水素を供給する状態を示している。
この水素製造車1は、後部荷台部分に、水素製造ユニット2を設置している。水素製造ユニット2は、メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、 原料タンク7をコンテナ8内に収納している。
すなわち、改質装置としてメンブレンリフォーマを使用することによって車両等に容易に積載可能なコンパクト化を達成できることとなった。
なお、この車両等に容易に積載できるコンパクト化水素製造ユニットを達成できることとなったメンブレンリフォーマについては本願出願人により種々のものが提案されている(特開平9-2805号等)。
水素製造車1は、さらに、水素供給ステーション9で都市ガス10、電気、水11の供給を受けることができる。
【0016】
この構成の水素製造車1は、都市ガス10、電気、水11の供給を受けながらメンブレンリフォーマ3で水素を製造する。ボイラ20は、都市ガス10を水蒸気改質(予備改質を含む)する際に使用する水蒸気を供給するために使用する。製造した水素は、水素圧縮ユニット4で圧縮され、水素タンク5に蓄えられ、又は水素供給ステーション9の水素タンク12に貯蔵される。水素を製造するに伴って発生するCO_(2)は、CO_(2)ソルベントタンク6内のアミン等の吸収液(CO_(2)ソルベント)に吸収される。
水素供給ステーション9は、高圧デイスペンサ13によって燃料電池自動車14に水素を供給する。
なお、ここで、水素製造車1は、都市ガスの供給を受けることとしている。しかし、都市ガスには付臭剤が含まれている。そこで、図示しない脱硫装置によって、メンブレンリフォーマ3の前段でこのような付臭剤を除去している。
また、この水素製造車1は、原料中の炭化水素をいったんメタンを主成分とする炭化水素ガスへ変換する予備改質器を備える等、供給される原料に応じて対応できるようにしている。
【0017】
この水素製造車1は、原料タンク7を備え、水素供給ステーション9までの距離が長い場合、移動途中で予め水素を製造することができ、実質的に製造時間を短縮することができる。かつ、水素製造車1に燃料電池による駆動装置を設けることにより、得られる水素をその走行エネルギーとしても活用できる。なお、この場合、水蒸気改質反応に必要な水を貯留するタンクも備えるようにする。移動中に製造した水素は、貯蔵手段である水素タンク5に貯蔵する。貯蔵手段としては、水素タンク5に代えて、水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵装置を用いることもできる。
このように、水素タンク5に水素を蓄えること等を考慮し、水素製造車1は、水素製造ユニット2への振動を極力抑制するためのサスペンション(懸架装置)を備える。」(段落【0015】ないし【0017】)

1b 「【0018】
なお、図2に積極的には図示されていないが、水素供給ステーション9は、水素漏洩センサ等を備え、水素の製造・供給にあたって、万が一の水素の漏洩に対しても安全を確保する対策機構が含まれている。」(段落【0018】)

1-2 引用文献1の記載事項
記載1a及び1b並びに図面から、引用文献1には、次の事項(以下、順に、「記載事項1c」ないし「記載事項1f」という。)が記載されていると認める。

1c 記載1aの「図2は、図1の実施の形態で採用することができる水素製造車の一実施の形態を示す。水素製造車は、移動式水素製造装置の一形態である。この図2は、水素供給ステーションで、水素製造車が水素を供給する状態を示している。この水素製造車1は、後部荷台部分に、水素製造ユニット2を設置している。水素製造ユニット2は、メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、 原料タンク7をコンテナ8内に収納している。」(段落【0015】)及び図面によると、引用文献1には、水素を製造するためのメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、原料タンク7のためのコンテナ8が記載されている。

1d 記載1aの「この水素製造車1は、原料タンク7を備え、水素供給ステーション9までの距離が長い場合、移動途中で予め水素を製造することができ、実質的に製造時間を短縮することができる。かつ、水素製造車1に燃料電池による駆動装置を設けることにより、得られる水素をその走行エネルギーとしても活用できる。なお、この場合、水蒸気改質反応に必要な水を貯留するタンクも備えるようにする。移動中に製造した水素は、貯蔵手段である水素タンク5に貯蔵する。貯蔵手段としては、水素タンク5に代えて、水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵装置を用いることもできる。」(段落【0017】)、図面及び記載事項1cによると、引用文献1には、コンテナ8が、原料又は水素を、原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3との間を運ぶコンテナ8内の管路(便宜上、このように表現する。)を備えていることが記載されている。

1e 記載事項1c及び1dを踏まえると、図2から、コンテナ8は、原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3が設置される場所を備えていることが看取される。

1f 記載1aの「この水素製造車1は、後部荷台部分に、水素製造ユニット2を設置している。水素製造ユニット2は、メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、 原料タンク7をコンテナ8内に収納している。」(段落【0015】)、図面、記載事項1cないし1eによると、引用文献1には、コンテナ8が可搬であることが記載されている。

1-3 引用発明
記載1a及び1b、記載事項1cないし1f並びに図面を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「水素を製造するためのメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、原料タンク7のためのコンテナ8であって、
原料又は水素を、原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3との間を運ぶコンテナ8内の管路と、
原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3が設置される場所と、
を備える、水素を製造するためのメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、原料タンク7のためのコンテナ8において、
前記コンテナ8が可搬である
水素を製造するためのメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、原料タンク7のためのコンテナ8。」

2 引用文献2の記載等
2-1 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2007-61519号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「水素製造・貯蔵装置の防災設備」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。以下、「記載2a」という。)。

2a 「【0008】
実施形態1.
図1は本発明の実施形態1に係る水素製造装置の防災設備及びその関連設備の構成を示したブロック図である。・・・(略)・・・
【0009】
水素製造装置100に対する防災設備300は、サンプリングしてガスを質量分析する検知部10と、消火剤を放射する消火部20と、検知部10及び消火部20をそれぞれ制御する制御装置30と、水素製造装置100の周囲に配設された防護配管Pとから構成されている。防護配管Pは水素製造装置100の配置形態に沿って水素製造装置100の上側に敷設されおり、ノズルDが所定の間隔に沿って設けられている。・・・(略)・・・
【0011】
図2は防災設備300の処理過程を示したフローチャートである。・・・(略)・・・制御装置30は消火部20の起動装置22を駆動し、起動装置22は容器21を開放して消火剤を防護配管Pに送給し、防護配管Pに設けられたノズルDから消火剤が水素製造装置100に向けて噴射し、消火活動を行う(S18)。なお、消火剤の放射や消火活動等では「消火」と表現されているが、必ずしも水素ガスにより火災が発生した後に行う活動ではなく、水素ガス火災の発生を抑制する意味も含まれている。例えば消火剤として霧状の水を噴射した場合には、水素が製造装置周辺の湿度を高め、設備や壁に溜まっている静電気による水素ガスの燃焼爆発を抑制することができる。また、消火剤として不燃性ガス(例えば窒素ガス、二酸化炭素ガス)を放射した場合には、空気中の酸素分圧を低下させ、水素ガスが燃焼爆発の発生がしにくくなり、水素ガスの漏洩による災害を最小程度で抑えることができる。」(段落【0008】ないし【0011】)

2-2 引用文献2記載の技術
記載2a及び図面を整理すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認める。

「水素製造装置の防災のために、水素製造装置に消火剤を噴射するノズルを備えるという技術。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明における「水素を製造するための」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「化学的なプロセスを実施するための」に相当し、以下、同様に、「メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、原料タンク7」は「プラント」に、「コンテナ8」は「インフラストラクチャ」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明における「原料又は水素」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「物質及び/又はエネルギ及び/又は情報」に相当し、以下、同様に、「原料タンク7」は「出発材料を収容及び/又は準備するための装置」に、「水素タンク5」は「生成物を収容及び/又は準備するための装置」に、「メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3」は「出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器」に、「管路」は「線路」に、それぞれ、相当することから、引用発明における「原料又は水素を、原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3との間を運ぶコンテナ8内の管路」と本願発明における「物質及び/又はエネルギ及び/又は情報を、出発材料を収容及び/又は準備するための装置、生成物を収容及び/又は準備するための装置、出発材料を反応させて生成物にする反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための装置相互間及び/又は出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と前記装置との間で交換可能とする、前記インフラストラクチャ内に組み込まれた線路」は、「物質及び/又はエネルギ及び/又は情報を、出発材料を収容及び/又は準備するための装置、生成物を収容及び/又は準備するための装置、出発材料を反応させて生成物にする反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための装置相互間及び/又は出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と前記装置との間で運ぶインフラストラクチャ内の管路」という限りにおいて、一致する。
さらに、引用発明における「原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「前記装置及び/又は前記反応器」に相当する。
さらにまた、引用発明において、「原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3」の設置が固定可能に行われることは明らかであるから、引用発明における「設置される場所」は本願発明における「固定可能な少なくとも1つの取り付け域」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャであって、
物質及び/又はエネルギ及び/又は情報を、出発材料を収容及び/又は準備するための装置、生成物を収容及び/又は準備するための装置、出発材料を反応させて生成物にする反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための装置相互間及び/又は出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と前記装置との間で運ぶインフラストラクチャ内の管路と、
前記装置及び/又は前記反応器が固定可能な少なくとも1つの取り付け域と、
を備える、化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャにおいて、
前記インフラストラクチャが可搬である、
化学的なプロセスを実施するためのプラントのためのインフラストラクチャ。」

そして、以下の点で相違する。

1 相違点1
「物質及び/又はエネルギ及び/又は情報を、出発材料を収容及び/又は準備するための装置、生成物を収容及び/又は準備するための装置、出発材料を反応させて生成物にする反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための装置相互間及び/又は出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と前記装置との間で運ぶインフラストラクチャ内の管路」に関して、本願発明においては、「物質及び/又はエネルギ及び/又は情報を、出発材料を収容及び/又は準備するための装置、生成物を収容及び/又は準備するための装置、出発材料を反応させて生成物にする反応を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための装置相互間及び/又は出発材料を反応させて生成物にするための少なくとも1つの反応器と前記装置との間で交換可能とする、前記インフラストラクチャ内に組み込まれた線路」であるのに対し、引用発明においては、「原料又は水素を、原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3との間を運ぶコンテナ8内の管路」である点(以下、「相違点1」という。)。

2 相違点2
本願発明においては、「前記インフラストラクチャが少なくとも1つの立ち入り可能な室を空間的に画成し、
前記取り付け域が前記室内に配置されており」であるのに対し、引用発明においては、そのようにされているか明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

3 相違点3
本願発明においては、「前記インフラストラクチャが消火剤分配手段を備える」のに対し、引用発明においては、そのようにされているか明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

第6 相違点1ないし3に対する判断
そこで、相違点1ないし3について、以下に検討する。

1 相違点1について
本願明細書の「保管室3内には、例えば出発材料容器又は副生成物容器が配置されている。出発材料容器は、出発材料を収容及び/又は準備するための装置である。容器は、有利には、充填状態を管理することができるように、あるいは排出流又は充填流の出入を求めることができるように、車の上に配置されている。秤の光学式の表示装置が、保管室の壁に設けられている。」(段落【0053】)、「処理室4内には、化学的な生産物の開発のための手段及びこのような生産物の大量生産のための手段が設けられていてよい。これらの手段は、出発材料を反応させて生成物にするための反応器、反応器加熱手段、原料タンク(Vorlagenbehaelter)、熱交換器、蒸発器、凝縮器、急冷段(Quenchstufe)、冷却・加熱媒体を供給するためのサーモスタット、処理/浄化/物質分離のための装置、例えば蒸留塔、ポンプ、真空ポンプ等である。さらに処理室4内には、機器類を備える必要な管路が設けられている。機器類には、温度測定装置、圧力測定装置、液量測定装置、流量測定装置、制御弁、電磁弁、駆動モータ等が含まれる。これらは、本発明の意味で、(補助)ユニットである。」(段落【0058】)及び「処理室4内に設けられるプロセス装置は、保管室3のタンク及び容器に管路を介して接続されている。管路は、プラント1の壁を貫通し、有利には金属の管として形成されている。管路は、インフラストラクチャに組み込まれた線路であり、これらの線路によって、物質及び/又はエネルギ及び/又は情報が、装置同士及び/又は装置と反応器との間で交換可能である。」(段落【0060】)という記載によると、本願発明において、「交換可能」とは、「保管室3」内の「発材料容器又は副生成物容器」から「処理室4」内の「化学的な生産物の開発のための手段及びこのような生産物の大量生産のための手段」への「出発材料」等の供給を示すものである。
他方、引用発明においても、「原料」が「原料タンク7」から「メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3」に供給され、「水素」が「メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3」から「水素タンク5」に供給されており、「原料」や「水素」の供給のされ方は、本願発明と同様である。
また、引用発明において、「管路」を「コンテナ8」に組み込むかどうかは、設計上の問題に過ぎないし、可搬のコンテナに管路を組み込むことは周知でもある(必要であれば、下記アを参照。以下、「周知技術」という。)。
したがって、引用発明において、周知技術を適用し、「原料又は水素」を「原料タンク7、水素タンク5及びメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3との間」で交換可能とし、「管路」を「コンテナ8」に組み込まれたものとすることによって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ア 特開2005-25026号公報の記載
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-25026号公報には、「省エネルギー実習システム」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。)。

・「【0015】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の一実施形態に係る省エネルギー実習システムの平面図を示す。省エネルギー実習システム100は、車両によって移動可能なコンテナ1に収容されている。コンテナ1には、扉1a及び扉1bが設けられている。扉1aは、コンテナ1の上部から外部に向かって開く。開いた状態において扉1aとコンテナ1の床は、段差無く連結されるようになっており、実習生が実習システムへ立ち入るための入口となる。
・・・(略)・・・
【0020】
ポンプ実習領域Bには、ポンプ20、水槽21、及びポンプ実習設備電気制御盤22が設けられている。ポンプ20は、実際の事業所に配置されるポンプを模擬した設備である。ポンプ20は誘導電動機を備え、その回転数が制御できるようになっている。また、ポンプ20は、径の異なる複数の配管と選択的に連結可能な装置と接続されて。また、圧力損失を計測可能な計測装置が設けられており、ポンプ実習領域Bでは、配管径の相違による圧力損失を実習できるようになっている。一般に、配管径が小さい程、また、配管長が長い程、圧力損失が大きくなる。しかし、コンテナ1に組み込まれた配管は、スペース的な制約を受けて、配管長を短せざるを得ないため、圧力損失の違いが判り難い。そこで、各配管には流量調整弁を設け、流量調整弁の開度を調整することによって、擬似的に圧力損失を作り出している。ここで、流量調整弁の開度は、実習生が直接調整してもよいし、あるいは、空気駆動・電動駆動によって調整してもよい。」(段落【0015】ないし【0020】)

2 相違点2について
記載1aの「水素製造ユニット2は、メンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3、ボイラ20、水素圧縮機ユニット4、水素タンク5、CO_(2)ソルベントタンク6、 原料タンク7をコンテナ8内に収納している。」(段落【0015】)によると、引用発明における「コンテナ8」は、「水素を製造するためのメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3」、「ボイラ20」、「水素圧縮機ユニット4」、「水素タンク5」、「CO_(2)ソルベントタンク6」及び「原料タンク7」が収納されるものであり、これらをメンテナンスするために、「コンテナ8」内に立ち入り可能な「水素を製造するためのメンブレンリフォーマ(水素分離型改質器)3」、「ボイラ20」、「水素圧縮機ユニット4」、「水素タンク5」、「CO_(2)ソルベントタンク6」及び「原料タンク7」が設置される場所が配置される室を空間的に画成することは、当業者であれば当然である。
したがって、引用発明において、「コンテナ8」内に少なくとも1つの立ち入り可能な室を空間的に画成し、「設置される場所」を前記室内に配置するようにして、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

3 相違点3について
記載1bによると、水素の製造・供給にあたっては、万が一の水素の漏洩に対して安全を確保する対策をとる必要がある。
そして、記載1aの「この水素製造車1は、原料タンク7を備え、水素供給ステーション9までの距離が長い場合、移動途中で予め水素を製造することができ、実質的に製造時間を短縮することができる。」(段落【0017】)によると、引用発明は、移動中に水素を製造するものであるから、引用発明において、水素の漏洩に対して安全を確保する対策をとることは、当業者であれば当然考慮すべきことである。
したがって、引用発明において、水素製造装置の防災に関する技術である引用文献2記載の技術を適用し、「コンテナ8」が本願発明における「消火剤分配手段」に相当する「消火剤を噴射するノズル」を備えるようにして、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

4 効果について
そして、本願発明を全体として検討しても、本願発明により、引用発明、周知技術及び引用文献2記載の技術からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。

第7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-07 
結審通知日 2015-04-13 
審決日 2015-04-24 
出願番号 特願2011-526427(P2011-526427)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (A62C)
P 1 8・ 121- Z (A62C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鹿角 剛二  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 伊藤 元人
加藤 友也
発明の名称 化学的なプロセスのためのユニバーサルインフラストラクチャ  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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