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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23K
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1305961
審判番号 不服2014-17966  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-09 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2006-535289号「ペット用チュウ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年4月21日国際公開、WO2005/034646、平成19年4月5日国内公表、特表2007-508033号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年(平成16年)10月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年10月17日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月22日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2 平成26年9月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年9月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載について補正することを含むものであり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

補正前(平成25年9月2日付け手続補正書):
「【請求項1】
熱可塑性デンプンからペット用チュウを製造するための方法であって、
化学的修飾デンプンであるデンプン誘導体、可塑剤、結晶化調整剤および繊維性材料の混合物を調製すること、
前記混合物を熱可塑性デンプンに変換すること、および
熱可塑性デンプンを所望のペット用チュウに成形することを含んでなり、
前記混合物が、混合物の乾燥固体重量に対して15?80重量%の量のデンプン誘導体を含んでなり、かつ
前記混合物が、混合物の乾燥固体重量に対して15?35重量%の量の可塑剤を含んでなる、方法。」

補正後(平成26年9月9日付け手続補正書):
「【請求項1】
熱可塑性デンプンからペット用チュウを製造するための方法であって、
混合物の乾燥固体重量に対して15?80重量%の量の、ヒドロキシアルキル化デンプンもしくは加水分解デンプン、またはこれらの混合物である化学的修飾デンプン、混合物の乾燥固体重量に対して15?35重量%の量の可塑剤、結晶化調整剤および繊維性材料の混合物を調製すること、
前記混合物を熱可塑性デンプンに変換すること、および
熱可塑性デンプンを所望のペット用チュウに成形すること
を含む、方法。」(下線は補正箇所を示すものである。)

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正の請求項1に係る補正は、記載表現の変更を含むものであるが、実質的には請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「化学的修飾デンプン」を「ヒドロキシアルキル化デンプンもしくは加水分解デンプン、またはこれらの混合物である化学的修飾デンプン」に限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(前記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)先願発明について
原査定の拒絶理由に引用された出願である特願2003-585498号(以下「先願」という。)は、本願の優先権主張日前の2003年(平成15年)4月17日を国際出願日として出願されたものであって、平成23年11月25日に特許第4869557号として設定登録されたものであって、その特許請求の範囲(当該特許公報参照。)には、次のとおり記載されている。

「【請求項1】
ペット用噛み物の製造方法であって、
混合物の乾燥固体重量に対して、デンプンを、50?80重量%、可塑剤を18?30重量%、および、繊維状材料を1?20重量%を含む混合物を製造すること、
前記混合物を熱可塑性デンプンに転化すること、および
前記熱可塑性デンプンを所望のペット用噛み物に成形すること、
を含んでなる、方法。」
「【請求項3】
前記デンプンが、天然デンプンであるか、または化学的または物理的に変性されたデンプンである、請求項1または2に記載の方法。」
「【請求項9】
前記変性されたデンプンが、デンプン水解物である、請求項3?8のいずれか一項に記載の方法。」
「【請求項10】
前記混合物が、レシチン、モノグリセリド、油、脂肪、脂肪酸またはそれらの塩、充填材、ビタミン、着色剤、香料および味覚改良剤の群から選択された一種以上の添加剤をさらに含んでなる、請求項1?9のいずれか一項に記載の方法。」
(請求項2,4?8,11?19は、省略する。)

そして、請求項1を引用した請求項3を、さらに引用した請求項9を、またさらに引用した請求項10に係る発明(以下「先願発明」という。)は、独立形式に表現すると次のとおりであるといえる。

「ペット用噛み物の製造方法であって、
混合物の乾燥固体重量に対して、デンプンを、50?80重量%、可塑剤を18?30重量%、および、繊維状材料を1?20重量%を含む混合物を製造すること、
前記混合物を熱可塑性デンプンに転化すること、および
前記熱可塑性デンプンを所望のペット用噛み物に成形すること、
を含んでなり、
前記デンプンが、天然デンプンであるか、または化学的または物理的に変性されたデンプンであり、
前記変性されたデンプンが、デンプン水解物であり、
前記混合物が、レシチン、モノグリセリド、油、脂肪、脂肪酸またはそれらの塩、充填材、ビタミン、着色剤、香料および味覚改良剤の群から選択された一種以上の添加剤をさらに含んでなる、方法。」

(2)対比
ア 本願補正発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「ペット用噛み物」は、その用語の意味及び機能からみて、本願補正発明の「ペット用チュウ」に相当し、同様に、「繊維状材料」は「繊維性材料」に、「デンプン水解物」は「加水分解デンプン」に、「製造」は「調製」に、「転化」は「変換」にそれぞれ相当する。

イ 先願発明は、「混合物を熱可塑性デンプンに転化すること」、及び「熱可塑性デンプンを所望のペット用噛み物に成形すること」を含む「ペット用噛み物の製造方法」であるから、熱可塑性デンプンからペット用噛み物(ペット用チュウ)を製造するための方法であるといえる。

ウ 先願発明は、「混合物の乾燥固体重量に対して、デンプンを、50?80重量%、可塑剤を18?30重量%、および、繊維状材料を1?20重量%を含む混合物」、及び「前記デンプンが、天然デンプンであるか、または化学的または物理的に変性されたデンプンであり、前記変性されたデンプンが、デンプン水解物であり」と特定されているから、先願発明の「混合物」には、「デンプン水解物」と「可塑剤」と「繊維状材料」とが含まれていると認められるので、先願発明の「混合物」は、本願補正発明の「混合物」と、デンプン水解物(加水分解デンプン)、可塑剤および繊維状材料(繊維性材料)を含む点で共通するといえる。また、先願発明の「デンプン」は「デンプン水解物」であるので、先願発明で特定されている「混合物の乾燥固体重量に対して、デンプンを、50?80重量%」含むことは、混合物の乾燥固体重量に対して、デンプン水解物(加水分解デンプン)を、50?80重量%含むことといえる。

エ 上記アないしウで説示したことを踏まえると、本願補正発明と先願発明とは、
「熱可塑性デンプンからペット用チュウを製造するための方法であって、
加水分解デンプン、可塑剤および繊維性材料を含む混合物を調製すること、
前記混合物を熱可塑性デンプンに変換すること、および
熱可塑性デンプンを所望のペット用チュウに成形すること
を含む、方法。」
の点で一致し、次の相違点で一応相違するといえる。

(相違点)
加水分解デンプン、可塑剤および繊維性材料を含む混合物について、
本願補正発明では、「混合物の乾燥固体重量に対して15?80重量%の量の、ヒドロキシアルキル化デンプンもしくは加水分解デンプン、またはこれらの混合物である化学的修飾デンプン、混合物の乾燥固体重量に対して15?35重量%の量の可塑剤、結晶化調整剤および繊維性材料の混合物」であるの対して、
先願発明では、「混合物の乾燥固体重量に対して、加水分解デンプンを、50?80重量%、可塑剤を18?30重量%、および、繊維性材料を1?20重量%を含む混合物」であって、「前記混合物が、レシチン、モノグリセリド、油、脂肪、脂肪酸またはそれらの塩、充填材、ビタミン、着色剤、香料および味覚改良剤の群から選択された一種以上の添加剤をさらに含んでなる」点

(3)相違点の判断
ア デンプンの種類について
本願補正発明の「ヒドロキシアルキル化デンプンもしくは加水分解デンプン、またはこれらの混合物である化学的修飾デンプン」は、デンプンが選択的に特定されているところ、先願発明には、その中の1つである加水分解デンプンが特定されているので、本願補正発明の当該デンプンに係る特定事項は、先願発明の当該デンプンに係る特定事項を含むものであって、上位概念で表現されたものといえる。

イ デンプンの含有量について
本願補正発明の上記相違点に係る発明特定事項からは、混合物の乾燥固体重量に対して15?80重量%の量の加水分解デンプンを含むことが特定されているといえる。
そうすると、混合物の乾燥固体重量に対する加水分解デンプンの量(数値範囲)が、本願補正発明では15?80重量%であるのに対して、先願発明では50?80重量%である点で相違するといえる。
しかしながら、本願補正発明の数値範囲は、先願発明の数値範囲より広く、上位概念で表現されたものといえる。

ウ 可塑剤の含有量について
本願補正発明の上記相違点に係る発明特定事項からは、混合物の乾燥固体重量に対して15?35重量%の量の可塑剤を含むことが特定されているといえる。
そうすると、混合物の乾燥固体重量に対する可塑剤の量(数値範囲)が、本願補正発明では15?35重量%であるのに対して、先願発明では18?30重量%である点で相違するといえる。
しかしながら、本願補正発明の数値範囲は、先願発明の数値範囲より広く、上位概念で表現されたものといえる。

エ 繊維状材料の含有量について
繊維状材料について、先願発明では、「混合物の乾燥固体重量に対して、」「1?20重量%を含む」ものであるのに対して、本願補正発明では、混合物の乾燥固体重量に対する割合が特定(限定)されていないから、本願補正発明は先願発明の上位概念で表現されたものといえる。

オ 結晶化調整剤について
本願補正発明の「結晶化調整剤」は、本願明細書の段落【0026】の「結晶化調整剤の例としては、飽和および不飽和モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリド(例えば、モノステアリン酸グリセロール)、ならびにそれらの脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸)がある。結晶化調整剤は、好ましくは混合物の乾燥固体重量に対して0?8重量%、より好ましくは0.5?5重量%の量で存在する。」との記載を参酌すると、具体的には「飽和および不飽和モノグリセリド」や「脂肪酸」であるといえる。
先願発明においても、「前記混合物が、レシチン、モノグリセリド、油、脂肪、脂肪酸またはそれらの塩、充填材、ビタミン、着色剤、香料および味覚改良剤の群から選択された一種以上の添加剤をさらに含んでなる」とあるように、混合物に「モノグリセリド」や「脂肪酸」を含むものである。
そうすると、本願補正発明は、先願発明の「モノグリセリド」や「脂肪酸」の上位概念である「結晶化調整剤」を含むものであるといえる。

カ まとめ
以上のとおりであるから、上記相違点は実質的な相違ではない。

(4)むすび
したがって、本願補正発明は、先願発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし22に係る発明は、拒絶査定時の平成25年9月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は上記第2の1の補正前のとおりのものである。

第4 先願発明について
原査定の拒絶理由に引用された先願発明は、上記第2の3(1)に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記第2の1の本願補正発明から、「化学的修飾デンプン」に係る構成の限定事項である「ヒドロキシアルキル化デンプンもしくは加水分解デンプン、またはこれらの混合物である化学的修飾デンプン」との構成を省いたものである。すなわち、本願発明は、本願補正発明の上位概念の発明であるといえる。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の3(2),(3)に記載したとおり、先願発明と同一であるから、本願補正発明の上位概念の発明である本願発明も、同様の理由で、先願発明と同一である。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-14 
結審通知日 2015-04-20 
審決日 2015-05-07 
出願番号 特願2006-535289(P2006-535289)
審決分類 P 1 8・ 4- Z (A23K)
P 1 8・ 575- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
発明の名称 ペット用チュウ  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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