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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1306142
審判番号 不服2014-14987  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-31 
確定日 2015-09-30 
事件の表示 特願2011-537802「アプリケーションプログラムの状態への遠隔アクセスを提供するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月 3日国際公開、WO2010/060206、平成24年 4月26日国内公表、特表2012-510118〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

1.手続の経緯の概要

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2009年11月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年11月26日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年5月25日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され,平成23年6月29日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書,請求の範囲,図面の翻訳文が提出され,平成24年11月14日付けで審査請求がなされ,平成25年11月6日付けで拒絶理由通知(平成25年11月12日発送)がなされ,平成26年2月12日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正書が提出され,平成26年3月28日付けで拒絶査定(平成26年4月1日謄本発送,送達)がなされ,平成26年7月31日付けで審判請求がされるとともに,同日付けで手続補正書が提出され,平成26年8月25日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,平成27年2月13日付けで上申書が提出されたものである。

2.補正の内容

(1)平成26年2月12日付け手続補正
上記平成26年2月12日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正しようとするものである。

「【請求項1】
a)サーバコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータに関連付けられるアプリケーションを実行するためにアプリケーションプログラムを実行するステップと,
b)通信網を介して前記サーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供するために遠隔アクセスプログラムを実行するステップと,
c)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを生成するステップと,
d)前記クライアント差分プログラムを前記サーバコンピュータに送信するステップと,
e)前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの更新状態を判断するために前記クライアント差分プログラムを実行し,前記アプリケーションの更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードしたサーバ差分プログラムを生成するステップと,
f)前記サーバ差分プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
g)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記サーバ差分プログラムを実行するステップとを含む,方法。
【請求項2】
前記クライアントコンピュータにおいて,そのメモリにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を示すクライアントサーバデータと,クライアントインタラクションの後の前記アプリケーションの状態を示すクライアントデータとを記憶するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
c)は,クライアントインタラクションの後の前記アプリケーションの状態と前記サーバから最後に受信された前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードするステップを含む,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サーバコンピュータにおいて,そのメモリにおいて,前記アプリケーションのサーバ状態を示すサーバデータおよびクライアントに最後に送られた前記アプリケーションの状態を示すサーバクライアントデータを記憶するステップを含む,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
e)は,
前記サーバクライアントデータにおける前記クライアント差分プログラムの実行により,第2のサーバクライアントデータを判断するステップと,
前記サーバデータにおける前記クライアント差分プログラムの実行により,更新されたサーバデータを判断するステップと,
前記更新されたサーバデータと前記第2のサーバクライアントデータとの間の差分をエンコードするサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記第2のサーバクライアントデータにおける前記サーバ差分プログラムの実行により,第3のサーバクライアントデータを判断するステップと,
前記サーバクライアントデータを前記第3のサーバクライアントデータと置換えるステップとを含む,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
g)は,
前記クライアントサーバデータにおける前記サーバ差分プログラムの実行により,第2のクライアントサーバデータを判断するステップと,
前記クライアントデータにおける前記サーバ差分プログラムの実行により,第2のクライアントデータを判断するステップと,
前記クライアントサーバデータを前記第2のクライアントサーバデータと置換えるステップと,
前記クライアントデータを前記第2のクライアントデータと置換えるステップとを含む,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サーバコンピュータにおいて,そのメモリにおいて,サーバアプリケーション状態プログラムとして,前記アプリケーションのサーバ状態を示すサーバデータ,およびクライアントに最後に送られた前記アプリケーションの状態を示すサーバクライアントデータを記憶するステップを含み,
e)は,
前記サーバデータにおける前記クライアント差分プログラムの実行により,更新されたサーバデータを判断するステップと,
前記更新されたサーバデータと前記サーバクライアントデータとの間の差分をエンコードするサーバ差分プログラムを生成するステップとを含み,
g)は,
前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの更新状態を示す表示データを生成するステップと,
前記表示データを人間に理解可能な態様で表示するステップとを含む,請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションのサーバ状態を示すデータをエンコードしたサーバアプリケーション状態プログラムを生成するステップと,
前記サーバアプリケーション状態プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
前記クライアントコンピュータにおいて,前記アプリケーションのサーバ状態を判断するために前記サーバアプリケーション状態プログラムを実行するステップと,
前記アプリケーションのサーバ状態の更新状態を示す表示データを生成するステップと,
前記表示データを人間に理解可能な態様で表示するステップとを含む,請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの更新状態を示す表示データを生成するステップと,
前記表示データを人間に理解可能な態様で表示するステップとを含む,請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの第2の更新状態を判断するために第2のクライアントコンピュータから受信された第2のクライアント差分プログラムを実行し,前記アプリケーションの前記第2の更新状態と前記第2のクライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードした第2のサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記第2のサーバ差分プログラムを前記第2のクライアントコンピュータに送信するステップと,
前記第2のクライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記第2のサーバ差分プログラムを実行するステップとを含む,請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの前記第2の更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードした第3のサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記第3のサーバ差分プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記第3のサーバ差分プログラムを実行するステップとを含む,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クライアントコンピュータにおいて,それに接続されるユーザインタフェースから,前記アプリケーションの状態の変更を示すデータを受信するステップを含む,請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
遠隔サーバアクセスプログラムを実行するステップを含み,前記遠隔サーバアクセスプログラムは:前記クライアント差分プログラムを実行するため;前記アプリケーションの更新状態の判断のために前記アプリケーションプログラムと通信するため;および前記サーバ差分プログラムを生成するためのものである,請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
サーバコンピュータのプロセッサ上での実行のために実行可能なコマンドを記憶した記憶媒体であって,前記プロセッサは,前記コマンドを実行すると,それに接続されるクライアントコンピュータに対して,前記サーバコンピュータ上で実行されるアプリケーションへの遠隔アクセスをあたえ,前記プロセッサは,
前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを前記クライアントコンピュータから受信するステップと,
前記アプリケーションの更新状態を判断するために前記クライアント差分プログラムを実行し,前記アプリケーションの更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードしたサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記サーバ差分プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップとを実行する,記憶媒体。
【請求項15】
サーバコンピュータにおいて実行されるアプリケーションプログラムへの遠隔アクセスを提供するための方法であって,
前記方法は,クライアントコンピュータからアクセス可能なサーバコンピュータへの遠隔の接続の提供を含み,前記遠隔の接続は,前記アプリケーションプログラムへの前記遠隔アクセスを可能にし,
前記方法は,前記アプリケーションプログラムの実行および前記クライアントコンピュータのうち少なくとも1つによって生じた前記アプリケーションの状態における変更を示すデータを含む差分プログラムおよび前記クライアントコンピュータとの通信を含み,前記差分プログラムは,前記サーバコンピュータまたは前記クライアントコンピュータによってアプリケーションの状態が最後に受信されたときからの,前記アプリケーションプログラムの状態における変更を捕捉し,
前記方法は,前記サーバコンピュータと前記クライアントコンピュータとの間での,前記差分プログラムを利用した前記アプリケーションの状態における変更の同期を含む,遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項16】
前記クライアントコンピュータのハードウェア能力に従った,前記アプリケーションプログラムの状態における変更を表すビューデータの生成をさらに含む,請求項15に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項17】
前記ハードウェア能力は,処理能力,メモリサイズ,図形表示のタイプ,およびユーザインタフェースのタイプの中の1つを含む,請求項16に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項18】
前記アプリケーションプログラムの状態における変更を前記クライアントコンピュータに表示させるためのビューデータの生成をさらに含む,請求項16に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項19】
前記クライアントコンピュータに,前記アプリケーションの状態の予め定められた部分を表示させることをさらに含む,請求項18に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項20】
前記遠隔の接続は,サーバ上のサーバ遠隔アクセスプログラムの提供,および,前記クライアントコンピュータ上で実行されるクライアント遠隔アクセスプログラムの提供によって提供され,
前記サーバ遠隔アクセスプログラムは,前記アプリケーションプログラムと通信しており,
前記クライアント遠隔アクセスプログラムは,ネットワーク通信リンクを介して,前記サーバ遠隔アクセスプログラムと通信する,請求項15に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項21】
前記差分プログラムは,前記クライアントコンピュータによって前記サーバコンピュータと通信するクライアント差分プログラムと,前記サーバコンピュータによって前記クライアントコンピュータと通信するサーバ差分プログラムとを含み,
前記クライアント差分プログラムは,前記クライアントコンピュータで生成された前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含み,
前記サーバ差分プログラムは,前記アプリケーションプログラムの実行に従って生成された,前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含む,請求項20に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項22】
更新された前記アプリケーションプログラムの状態を判断するために,前記クライアントコンピュータで前記サーバ差分プログラムを実行すること,および,
更新された前記アプリケーションプログラムの状態を表示することをさらに含む,請求項21に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項23】
複数のクライアントコンピュータの中の1つにおいて実行される複数のクライアント遠隔アクセスプログラムのそれぞれと遠隔接続でのアクセスを可能にすること,
前記アプリケーションプログラムの実行および前記複数のクライアントコンピュータのうち少なくとも1つによって生じた前記アプリケーションの状態における変更を示す差分プログラムを生成すること,および,
前記差分プログラムを利用して前記アプリケーションプログラムと前記複数のクライアントコンピュータとの間の前記アプリケーションの状態における変更を同期させることをさらに含む,請求項20に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項24】
前記方法は,前記複数のクライアントコンピュータの各々における,前記サーバコンピュータと通信するクライアント差分プログラムの生成をさらに含み,前記クライアント差分プログラムの各々は,クライアントコンピュータのそれぞれにおいて生じた前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含み,
前記方法は,前記サーバコンピュータによる前記複数のクライアントコンピュータのそれぞれとの通信を行なうサーバ差分プログラムの生成をさらに含み,前記サーバ差分プログラムは,前記アプリケーションの実行の少なくとも1つによって生じた前記アプリケーションプログラムの状態における変更および前記複数のクライアントコンピュータの他のコンピュータによって生じた前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含む,請求項23に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項25】
前記アプリケーションプログラムの更新された状態を決定するために,前記サーバ遠隔アクセスプログラムで前記クライアント差分プログラムの各々を実行することをさらに含む,請求項24に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項26】
前記アプリケーションプログラムの更新された状態を決定するために,前記複数のクライアントコンピュータの各々で前記サーバ差分プログラムを実行すること,および,
前記複数のクライアントコンピュータの各々で,前記アプリケーションプログラムの更新された状態を表示することをさらに含む,請求項24に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項27】
前記アプリケーションプログラムの状態における変更は,前記クライアントコンピュータのユーザインターフェースで受信された入力に従って決定される,請求項25に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項28】
前記差分プログラムにおけるデータは,アプリケーションの状態における変更,変更のタイプ,前記クライアントコンピュータで受信された入力,および,変更の値の中の少なくとも1つを含む,請求項25に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項29】
前記差分プログラムは,前記サーバコンピュータが最後に差分プログラムと通信した後の前記アプリケーションプログラムの状態における変更を捕捉する,請求項25に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。」

(2)平成26年7月31日付け手続補正
上記平成26年7月31日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正しようとするものである。

「【請求項1】
a)サーバコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータに関連付けられるアプリケーションを実行するためにアプリケーションプログラムを実行するステップと,
b)通信網を介して前記サーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供し,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを生成するために遠隔アクセスプログラムを実行するステップと,
c)前記クライアント差分プログラムを前記サーバコンピュータに送信するステップと,
d)前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの更新状態を判断するために前記クライアント差分プログラムを実行し,前記アプリケーションの更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードしたサーバ差分プログラムを生成するステップと,
e)前記サーバ差分プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
f)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記サーバ差分プログラムを実行するステップとを含む,方法。
【請求項2】
前記クライアントコンピュータにおいて,そのメモリにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を示すクライアントサーバデータと,クライアントインタラクションの後の前記アプリケーションの状態を示すクライアントデータとを記憶するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
b)は,クライアントインタラクションの後の前記アプリケーションの状態と前記サーバから最後に受信された前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードするステップを含む,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サーバコンピュータにおいて,そのメモリにおいて,前記アプリケーションのサーバ状態を示すサーバデータおよびクライアントに最後に送られた前記アプリケーションの状態を示すサーバクライアントデータを記憶するステップを含む,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
d)は,
前記サーバクライアントデータにおける前記クライアント差分プログラムの実行により,第2のサーバクライアントデータを判断するステップと,
前記サーバデータにおける前記クライアント差分プログラムの実行により,更新されたサーバデータを判断するステップと,
前記更新されたサーバデータと前記第2のサーバクライアントデータとの間の差分をエンコードするサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記第2のサーバクライアントデータにおける前記サーバ差分プログラムの実行により,第3のサーバクライアントデータを判断するステップと,
前記サーバクライアントデータを前記第3のサーバクライアントデータと置換えるステップとを含む,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
f)は,
前記クライアントサーバデータにおける前記サーバ差分プログラムの実行により,第2のクライアントサーバデータを判断するステップと,
前記クライアントデータにおける前記サーバ差分プログラムの実行により,第2のクライアントデータを判断するステップと,
前記クライアントサーバデータを前記第2のクライアントサーバデータと置換えるステップと,
前記クライアントデータを前記第2のクライアントデータと置換えるステップとを含む,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サーバコンピュータにおいて,そのメモリにおいて,サーバアプリケーション状態プログラムとして,前記アプリケーションのサーバ状態を示すサーバデータ,およびクライアントに最後に送られた前記アプリケーションの状態を示すサーバクライアントデータを記憶するステップを含み,
d)は,
前記サーバデータにおける前記クライアント差分プログラムの実行により,更新されたサーバデータを判断するステップと,
前記更新されたサーバデータと前記サーバクライアントデータとの間の差分をエンコードするサーバ差分プログラムを生成するステップとを含み,
f)は,
前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの更新状態を示す表示データを生成するステップと,
前記表示データを人間に理解可能な態様で表示するステップとを含む,請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションのサーバ状態を示すデータをエンコードしたサーバアプリケーション状態プログラムを生成するステップと,
前記サーバアプリケーション状態プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
前記クライアントコンピュータにおいて,前記アプリケーションのサーバ状態を判断するために前記サーバアプリケーション状態プログラムを実行するステップと,
前記アプリケーションのサーバ状態の更新状態を示す表示データを生成するステップと,
前記表示データを人間に理解可能な態様で表示するステップとを含む,請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの更新状態を示す表示データを生成するステップと,
前記表示データを人間に理解可能な態様で表示するステップとを含む,請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの第2の更新状態を判断するために第2のクライアントコンピュータから受信された第2のクライアント差分プログラムを実行し,前記アプリケーションの前記第2の更新状態と前記第2のクライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードした第2のサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記第2のサーバ差分プログラムを前記第2のクライアントコンピュータに送信するステップと,
前記第2のクライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記第2のサーバ差分プログラムを実行するステップとを含む,請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの前記第2の更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードした第3のサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記第3のサーバ差分プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記第3のサーバ差分プログラムを実行するステップとを含む,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クライアントコンピュータにおいて,それに接続されるユーザインタフェースから,前記アプリケーションの状態の変更を示すデータを受信するステップを含む,請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
遠隔サーバアクセスプログラムを実行するステップを含み,前記遠隔サーバアクセスプログラムは:前記クライアント差分プログラムを実行するため;前記アプリケーションの更新状態の判断のために前記アプリケーションプログラムと通信するため;および前記サーバ差分プログラムを生成するためのものである,請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
サーバコンピュータのプロセッサ上での実行のために実行可能なコマンドを記憶した記憶媒体であって,前記プロセッサは,前記コマンドを実行すると,それに接続されるクライアントコンピュータに対して,前記サーバコンピュータ上で実行されるアプリケーションへの遠隔アクセスをあたえ,前記プロセッサは,
前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを前記クライアントコンピュータから受信し,前記アプリケーションの更新状態を判断するために前記クライアント差分プログラムを実行し,前記アプリケーションの更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードしたサーバ差分プログラムを生成するステップと,
前記サーバ差分プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップとを実行する,記憶媒体。
【請求項15】
サーバコンピュータにおいて実行されるアプリケーションプログラムへの遠隔アクセスを提供するための方法であって,
前記方法は,クライアントコンピュータからアクセス可能なサーバコンピュータへの遠隔の接続の提供を含み,前記遠隔の接続は,前記アプリケーションプログラムへの前記遠隔アクセスを可能にし,
前記方法は,前記アプリケーションプログラムの実行または前記クライアントコンピュータによって生じた前記アプリケーションの状態における変更を示すデータを含む差分プログラムの送信を含み,前記差分プログラムは,前記サーバコンピュータまたは前記クライアントコンピュータによって受信されたアプリケーションの最後の状態からの,前記アプリケーションプログラムの状態における変更を捕捉し,
前記方法は,前記サーバコンピュータと前記クライアントコンピュータとの間での,前記差分プログラムを利用した前記アプリケーションの状態における変更の同期を含む,遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項16】
前記クライアントコンピュータのハードウェア能力に従った,前記アプリケーションプログラムの状態における変更を表すビューデータの生成をさらに含む,請求項15に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項17】
前記ハードウェア能力は,処理能力,メモリサイズ,図形表示のタイプ,およびユーザインタフェースのタイプの中の1つを含む,請求項16に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項18】
前記アプリケーションプログラムの状態における変更を前記クライアントコンピュータに表示させるためのビューデータの生成をさらに含む,請求項16に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項19】
前記クライアントコンピュータに,前記アプリケーションの状態の予め定められた部分を表示させることをさらに含む,請求項18に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項20】
前記遠隔の接続は,サーバ上で実行されるサーバ遠隔アクセスプログラムの提供,および,前記クライアントコンピュータ上で実行されるクライアント遠隔アクセスプログラムの提供によって提供され,
前記サーバ遠隔アクセスプログラムは,前記アプリケーションプログラムと通信しており,
前記クライアント遠隔アクセスプログラムは,ネットワーク通信リンクを介して,前記サーバ遠隔アクセスプログラムと通信する,請求項15に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項21】
前記差分プログラムは,前記クライアントコンピュータによって前記サーバコンピュータと通信するクライアント差分プログラムと,前記サーバコンピュータによって前記クライアントコンピュータと通信するサーバ差分プログラムとを含み,
前記クライアント差分プログラムは,前記クライアントコンピュータで生成された前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含み,
前記サーバ差分プログラムは,前記アプリケーションプログラムの実行に従って生成された,前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含む,請求項20に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項22】
更新された前記アプリケーションプログラムの状態を判断するために,前記クライアントコンピュータで前記サーバ差分プログラムを実行すること,および,
更新された前記アプリケーションプログラムの状態を表示することをさらに含む,請求項21に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項23】
複数のクライアントコンピュータの中の1つにおいて実行される複数のクライアント遠隔アクセスプログラムのそれぞれと遠隔接続でのアクセスを可能にすること,
前記アプリケーションプログラムの実行および前記複数のクライアントコンピュータのうち少なくとも1つによって生じた前記アプリケーションの状態における変更を示す差分プログラムを生成すること,および,
前記差分プログラムを利用して前記アプリケーションプログラムと前記複数のクライアントコンピュータとの間の前記アプリケーションの状態における変更を同期させることをさらに含む,請求項20に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項24】
前記方法は,前記複数のクライアントコンピュータの各々における,前記サーバコンピュータと通信するクライアント差分プログラムの生成をさらに含み,前記クライアント差分プログラムの各々は,クライアントコンピュータのそれぞれにおいて生じた前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含み,
前記方法は,前記サーバコンピュータによる前記複数のクライアントコンピュータのそれぞれとの通信を行なうサーバ差分プログラムの生成をさらに含み,前記サーバ差分プログラムは,前記アプリケーションの実行の少なくとも1つによって生じた前記アプリケーションプログラムの状態における変更および前記複数のクライアントコンピュータの他のコンピュータによって生じた前記アプリケーションプログラムの状態における変更を示すデータを含む,請求項23に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項25】
前記アプリケーションプログラムの更新された状態を決定するために,前記サーバ遠隔アクセスプログラムで前記クライアント差分プログラムの各々を実行することをさらに含む,請求項24に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項26】
前記アプリケーションプログラムの更新された状態を決定するために,前記複数のクライアントコンピュータの各々で前記サーバ差分プログラムを実行すること,および,
前記複数のクライアントコンピュータの各々で,前記アプリケーションプログラムの更新された状態を表示することをさらに含む,請求項24に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項27】
前記アプリケーションプログラムの状態における変更は,前記クライアントコンピュータのユーザインターフェースで受信された入力に従って決定される,請求項25に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項28】
前記差分プログラムにおけるデータは,アプリケーションの状態における変更,変更のタイプ,前記クライアントコンピュータで受信された入力,および,変更の値の中の少なくとも1つを含む,請求項25に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。
【請求項29】
前記差分プログラムは,前記サーバコンピュータが最後に差分プログラムと通信した後の前記アプリケーションプログラムの状態における変更を捕捉する,請求項25に記載の遠隔アクセスを提供するための方法。」

第2.平成26年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年7月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

平成26年7月31日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,上記第1.2.(1)記載の特許請求の範囲から,上記第1.2.(2)記載の特許請求の範囲に補正しようとするものであり,これは次の補正事項よりなると言える。

【補正事項1】
補正前の請求項1の「b)通信網を介して前記サーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供するために遠隔アクセスプログラムを実行するステップと,
c)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを生成するステップと」を,補正後の請求項1の「b)通信網を介して前記サーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供し,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを生成するために遠隔アクセスプログラムを実行するステップと」とする補正。

【補正事項2】
補正前の請求項3の「c)」を「b)」に,請求項5の「e)」を「d)」に,請求項6の「g)」を「f)」に,また請求項7の「e)」,「g)」をそれぞれ「d)」,「f)」とする補正。

【補正事項3】
補正前の請求項14の「受信するステップと,」を「受信し,」とする補正。

【補正事項4】
補正前の請求項15の「前記アプリケーションプログラムの実行および前記クライアントコンピュータのうち少なくとも1つによって生じた前記アプリケーションの状態における変更」を,「前記アプリケーションプログラムの実行または前記クライアントコンピュータによって生じた前記アプリケーションの状態における変更」とする補正。

【補正事項5】
補正前の請求項15の「差分プログラムおよび前記クライアントコンピュータとの通信を含み,前記差分プログラムは,前記サーバコンピュータまたは前記クライアントコンピュータによってアプリケーションの状態が最後に受信されたときからの」を,「差分プログラムの送信を含み,前記差分プログラムは,前記サーバコンピュータまたは前記クライアントコンピュータによって受信されたアプリケーションの最後の状態からの」とする補正。

【補正事項6】
補正前の請求項20の「サーバ上のサーバ遠隔アクセスプログラムの提供」を,「サーバ上で実行されるサーバ遠隔アクセスプログラムの提供」とする補正。

2.新規事項追加禁止要件

(1)上記補正事項1によって本件補正後の請求項1に記載されることになった「クライアント差分プログラムを生成するために遠隔アクセスプログラムを実行する」旨の技術的事項は,特許法第184条の12第2項において,同法第17条の2第3項中の「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面」とあるのを,これに読み替える旨規定されるものであるところの,上記当初翻訳文および上記国際出願日における国際特許出願の図面(以下「当初明細書等」と記す。)には記載されておらず,また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。

なお,当初明細書等の翻訳文の段落【0027】には,クライアントコンピュータが,アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供するために「遠隔アクセスプログラム」を実行すること,及び,クライアントコンピュータがクライアント差分プログラムを生成することが記載されているが,クライアント差分プログラムを生成するために「遠隔アクセスプログラム」を実行することは記載されていない。

また,平成27年2月13日付け上申書において,審判請求人は「審判請求時の手続補正書の請求項1の「 b)通信網を介して前記サーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供し,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを生成するために遠隔アクセスプログラムを実行するステップと,」との記載には,誤記がございました。」と釈明しているが,「誤記の訂正」とは,本来その意であることが,明細書,特許請求の範囲又は図面の記載などから明かな内容の字句,語句に正すことをいい,訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうところ,補正事項1は誤記の訂正と言えるようなものではない。

(2)以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.目的要件

仮に,本件補正が新規事項の追加でなく,また特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもないとして,以下,検討を続ける。
本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正事項1について
上記補正事項1は「クライアント差分プログラムを生成するために遠隔アクセスプログラムを実行する」との記載を新たに追加するものであって,特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下,「限定的減縮」と記す。)には該当しない。
また,補正事項1が請求項の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明に該当しないことも明らかである。
よって,補正事項1の目的は,特許法第17条の2第5項各号のいずれにも該当しない。

(2)補正事項5について
上記補正事項5は,「差分プログラムおよび前記クライアントコンピュータとの通信」を「差分プログラムの送信」に置き換えるものであり,「および前記クライアントコンピュータとの」との記載を削除するものであるから,限定的減縮に該当しない。
また,補正事項5が請求項の削除,誤記の訂正,不明瞭な記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって,補正事項5の目的は,特許法第17条の2第5項各号のいずれにも該当しない。

(3)審判請求人の主張について
審判請求人は,平成26年7月31日付けの審判請求書において,「今回の請求項1,3,5,6,7の補正は,出願当初の特許請求の範囲等に記載されていた事項の範囲内であって(特許法第17条の2第3項),発明の特別な技術的特徴を変更するものでもなく(同条第4項),また,発明特定事項の限定的減縮を目的とするものである(同条第5項第2号)。」と主張しているが,上記(1)で述べたとおり限定的減縮には該当しないものである。
また,審判請求人は,上記審判請求書において,「今回の請求項15の補正は,出願当初の特許請求の範囲等に記載されていた事項の範囲内であって(特許法第17条の2第3項),発明の特別な技術的特徴を変更するものでなく(同条第4項),また,発明特定事項の限定的減縮を目的とするものである(同条第5項第2号)。」と主張しているが,上記(2)で述べたとおり限定的減縮には該当しないものである。

(4)以上のとおり,本件補正は請求項の削除,限定的減縮,誤記の訂正,不明瞭な記載の釈明の何れをも目的としない補正事項1及び補正事項5を含むものであるから特許法第17条の2第5項各号に掲げられる事項を目的とするものに限られるものではない。

したがって,本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

4.むすび

上記2.のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

また,上記3.のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成26年7月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年2月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「a)サーバコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータに関連付けられるアプリケーションを実行するためにアプリケーションプログラムを実行するステップと,
b)通信網を介して前記サーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供するために遠隔アクセスプログラムを実行するステップと,
c)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示すデータをエンコードしたクライアント差分プログラムを生成するステップと,
d)前記クライアント差分プログラムを前記サーバコンピュータに送信するステップと,
e)前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの更新状態を判断するために前記クライアント差分プログラムを実行し,前記アプリケーションの更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分をエンコードしたサーバ差分プログラムを生成するステップと,
f)前記サーバ差分プログラムを前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
g)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記サーバ差分プログラムを実行するステップとを含む,方法。」

2.引用例に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

(2-1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明

ア 本願の出願前である第1国出願日よりも前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である上記平成25年11月6日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2005-31807号公報(平成17年2月3日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【請求項1】
複数の業務端末と,各業務端末と通信回線を介して接続されているデータ管理端末とを有するデータ処理システムにおけるデータ更新方法において,
データ管理端末と業務端末とで同等のデータを保有し,業務端末でのデータの更新内容を定期的に差分データの形式でデータ管理端末に送信し,それを受けたデータ管理端末は自身のデータを更新し,複数の業務端末からの更新用差分データを受けたデータ管理端末は,全更新内容を全データに対する差分データの形式で業務端末に送信し,それを受けた業務端末は自身のデータを更新する
ことを特徴とするデータ処理システム。」

B 「【0018】
次に,この発明による更新データの通知(業務端末12(13,…)→データ管理端末11)について,図2を用いて説明する。
(1) 業務端末12は,発生したデータを定期的にファイルへ出力し,データ管理端末11上の特定フォルダ21上にコピーする。
(2) データ管理端末11は定期的に特定フォルダ21を参照する。処理対象のファイルが存在すれば,これをもとに自身のデータ更新処理を実行する。実行後に,処理済みのファイルを削除し,データ管理端末11と業務端末12間の電文中に完了したファイルのバージョンをセットする。
(3) ファイルには,バージョンが付与される。
ファイル名(バージョン):データ種類_YYYYMMDDnnnn
データ種類:データ種類を識別するためのヘッダ
YYYYMMDD:西暦年月日
nnnn:定期的に作成されるデータの連番
(4) 業務端末12とデータ管理端末11間のファイルのやり取りの概念図は図3に示すようになっている。データ管理端末11側は特定のフォルダを参照して未処理ファイルを取得し,これをもとに自身のデータを更新する。」

C 「【0022】
次に,この発明による差分ファイルの一覧入手について,図10を用いて説明する。
(1) 業務端末12(13,…)側のデータを最新の状態にするために,データ管理端末11から差分ファイルを入手する。この処理に先立って,ファイル一覧を入手する必要がある。ファイル一覧の入手には,標準のFTPコマンドであるDirを使用する。・・・」

D 「【0033】
また,オンライン/オフラインによるデータ総入れ替えを行うのではなく,差分データを用いて各端末のデータを更新するため,ネットワークへの負荷が軽減できる。」

イ ここで,上記引用例1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「複数の業務端末と,各業務端末と通信回線を介して接続されているデータ管理端末とを有するデータ処理システムにおけるデータ更新方法」及び「データ管理端末と業務端末とで同等のデータを保有し」との記載から,引用例1には,
”複数の業務端末と,各業務端末と通信回線を介して接続されているデータ管理端末とが,同等のデータを保有するようにデータを更新する方法”
が記載されていると解される。

(イ)上記Bの「データ管理端末11は定期的に特定フォルダ21を参照する。処理対象のファイルが存在すれば,これをもとに自身のデータ更新処理を実行する。」との記載,及び上記Cの「業務端末12(13,…)側のデータを最新の状態にするために,データ管理端末11から差分ファイルを入手する。この処理に先立って,ファイル一覧を入手する必要がある。ファイル一覧の入手には,標準のFTPコマンドであるDirを使用する。」との記載から,業務端末において遠隔アクセスの一種であるFTPのプログラムを実行し,業務端末からデータ管理端末に対して遠隔アクセスを行うことが読み取れるから,引用例1には,
”業務端末において遠隔アクセスのためのプログラムを実行し,業務端末からデータ管理端末に対して遠隔アクセスを行”
うことが記載されていると解される。

(ウ)上記Aの「業務端末でのデータの更新内容を定期的に差分データの形式でデータ管理端末に送信し,それを受けたデータ管理端末は自身のデータを更新し,複数の業務端末からの更新用差分データを受けたデータ管理端末は,全更新内容を全データに対する差分データの形式で業務端末に送信し,それを受けた業務端末は自身のデータを更新する」との記載から,引用例1には,
”業務端末でのデータの更新内容を差分データとしてデータ管理端末に送信し,データ管理端末は差分データを受けて自身のデータを更新し,全更新内容を全データに対する差分データとして業務端末に送信し,業務端末は差分データを受けて自身のデータを更新する”
ことが記載されているものと解される。

(エ)上記Dの「差分データを用いて各端末のデータを更新するため,ネットワークへの負荷が軽減できる」との記載から,引用例1には,差分データを用いたデータ更新により,
”ネットワークへの負荷を軽減する”
ことが記載されているものと解される。

ウ 以上で指摘した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「複数の業務端末と,各業務端末と通信回線を介して接続されているデータ管理端末とが,同等のデータを保有するようにデータを更新する方法において,業務端末において遠隔アクセスのためのプログラムを実行し,業務端末からデータ管理端末に対して遠隔アクセスを行い,業務端末でのデータの更新内容を差分データとしてデータ管理端末に送信し,データ管理端末は差分データを受けて自身のデータを更新し,全更新内容を全データに対する差分データとして業務端末に送信し,業務端末は差分データを受けて自身のデータを更新することにより,ネットワークへの負荷を軽減する方法。」

(2-2)引用例2に記載されている技術的事項

ア 本願の出願前である第1国出願日よりも前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である上記平成25年11月6日付けの拒絶理由通知において引用された,特表2005-521946号公報(平成17年7月21日公表,以下,「引用例2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0007】
SyncMLは,World Wide Consortium(ワールドワイドコンソーシアム)(W3C)のXML Activity(XMLアクティビィティ)(ウェブサイトhttp://www.w3.org.)の製品であるExtensible Markup言語(拡張マークアップ言語:XML)1.0に示された,いわゆる拡張マークアップ言語(XML)のシンタックスを使用している。XMLの情報については,http://www.w3.org.XMLを参照していただきたい。」

F 「【0013】
SyncMLでは,要求コマンドおよび応答コマンドを規定している。要求コマンドには以下のものが含まれる。例えば,add(発信側に対し,受信側にアクセスすることが可能なデータに1つまたは2つ以上のデータユニットの追加を要求させるコマンド),alert(発信側が受信側に対し,状態を通知させるコマンド),copy(発信側に対し,受信側にアクセスすることが可能な1つまたは2つ以上のデータユニットのコピーを要求させるコマンド),delete(発信側に対し,受信側にアクセスすることが可能な1つまたは2つ以上のデータユニットの削除または保存を要求させるコマンド),get(発信側に対し,受信側からの1つまたは2つ以上のデータユニットを要求させるコマンド),およびsearch(受信側にアクセスすることが可能な1つまたは2つ以上のデータユニットに対し,供給されたクエリー(query )を実行させることを発信側に要求させるコマンド)が含まれる。現在,応答コマンドは以下のものだけである。すなわち,status(動作の完了状況を示すコマンド,または以前の要求を処理している最中にエラーが発生したことを示すコマンド)およびresults(SyncMLのGetコマンドまたはSearchコマンドのいずれか一方のデータ結果を返送するために使用されるコマンド)である。」

G 「【0035】
本発明の上記の目的および他の目的,特徴および効果は,添付図面(図1?図4)に関連して提供されるような以下の詳細な説明を検討することにより明らかになるであろう。
図1は,本発明による,それぞれのデータ記憶部の間の同期を取るためにSyncMLメッセージを交換するクライアントおよびサーバのブロック図およびフロー図である。
ここで図1を参照すると,クライアントデータ記憶部11cとサーバ12中の対応するサーバデータ記憶部12cとの間の同期を取るクライアント11が示されている(データ記憶部は,装置管理またはユーザデータ(例えば電子メール)の保持のために利用することができる)。一般的に,データ記憶部は,図4に図示されるような任意のディレクトリ構造により,データ記憶部は1つの(またはそれ以上)のシステムディレクトリ構造を含むことが可能であり,さらに,おそらくは,1つまたは2つ以上の内部ディレクトリ構造(すなわち,オペレーティングシステムに対向する1つ以上のアプリケーションによって維持される内部ディレクトリ構造)を保持することができるであろう。この結果,ディレクトリ構造はフォルダの木構造となり,各フォルダは,1つまたは2つ以上のデータユニット(ファイル,すなわちシステムディレクトリ構造において維持されるデータのユニット,または電子メールアプリケーションにより維持される電子メール等の内部ディレクトリにおけるアプリケーションによって維持されるデータのユニット),および木構造の1つまたは2つ以上の他のフォルダを含むことができる。
【0036】
同様の構造を有する言語または類似の言語によるメッセージも使用することができるけれども,同期はSyncMLメッセージの交換を介して発生する。交換されたSyncMLメッセージの中には,データユニットに関してデータ記憶部11c,12c間の同期を取るものもあり,データ構成に関して同期を取るものもある。換言すれば,結果として,双方のデータ記憶部はフォルダに関して等価構造を有し,少なくともアプリケーションが関係するものの範囲に関する限り,同期は実行されている。クライアント11は,クライアント/サーバモデルにおいて,SyncMLプロトコルに従ってクライアントとしての役割を果たす任意の種類の装置であって,クライアント(通常,ラップトップ型または携帯電話またはその他の携帯端末)は,クライアント/サーバモデルにおいてサーバとしての役割を持つ装置(通常は,例えば,デスクトップコンピュータ)であるサーバ12に対し,当該データ記憶部11c中のデータのすべての変更を送出する。(通常,装置自体のそれぞれのデータ記憶部の同期を取る2台の装置のうち,より高い演算能力を有する装置がサーバの役割を果たす。)」

イ ここで,上記引用例2に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Eの「SyncMLは,・・・いわゆる拡張マークアップ言語(XML)のシンタックスを使用している」との記載,及び上記Fの「SyncMLでは,要求コマンドおよび応答コマンドを規定している。要求コマンドには以下のものが含まれる。例えば,add(発信側に対し,受信側にアクセスすることが可能なデータに1つまたは2つ以上のデータユニットの追加を要求させるコマンド),alert(発信側が受信側に対し,状態を通知させるコマンド),copy(発信側に対し,受信側にアクセスすることが可能な1つまたは2つ以上のデータユニットのコピーを要求させるコマンド),delete(発信側に対し,受信側にアクセスすることが可能な1つまたは2つ以上のデータユニットの削除または保存を要求させるコマンド),get(発信側に対し,受信側からの1つまたは2つ以上のデータユニットを要求させるコマンド)」との記載から,SyncMLは発信側と受信側との間でデータの追加・削除や,状態を通知するためプログラム言語であると解される。

(イ)上記Gの「図1を参照すると,クライアントデータ記憶部11cとサーバ12中の対応するサーバデータ記憶部12cとの間の同期を取るクライアント11が示されている」,「同期はSyncMLメッセージの交換を介して発生する。交換されたSyncMLメッセージの中には,データユニットに関してデータ記憶部11c,12c間の同期を取るものもあり」との記載及び上記(ア)から,引用例2には
”クライアントとサーバとの間で同期を取る際に,プログラム言語であるSyncMLを交換して行う”
ことが記載されているものと解される。

3.対比

ア 本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明は,クライアント・サーバシステムにおいてネットワークへの負荷を軽減すること課題とした技術であり,本願発明と,技術分野及び課題が共通する。

(イ)引用発明における「業務端末」は,通信回線を介して「データ管理端末」に遠隔アクセスしていることから,引用発明の「業務端末」及び「データ管理端末」は,それぞれ「クライアントコンピュータ」及び「サーバコンピュータ」と言えるものであり,これらは本願発明の「クライアントコンピュータ」及び「サーバコンピュータ」に相当するものと認められる。

(ウ)引用発明では,「データ管理端末は差分データを受けて自身のデータを更新し」ていることから,データ管理端末において,本願発明の「アプリケーションプログラム」に相当するプログラムを実行しているものと認められ,引用発明は,「サーバコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータに関連付けられるアプリケーションを実行するためにアプリケーションプログラムを実行する」点において,本願発明と共通するものである。

(エ)本願発明の「アプリケーションの状態」は,本願明細書の段落【0022】の「アプリケーションの状態は,たとえば,ユーザが患者ファイルにおいて情報を変更するかまたは医用画像についての異なる観察を要求するとき,変更される。」との記載からみて,少なくともアプリケーションに用いられる情報(データ)を含むものと解される。
引用発明では,「複数の業務端末と,各業務端末と通信回線を介して接続されているデータ管理端末とが,同等のデータを保有するようにデータを更新する方法において,業務端末において遠隔アクセスのためのプログラムを実行し,業務端末からデータ管理端末に対して遠隔アクセスを行」うことから,引用発明は,「通信網を介してサーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供し」ている点で,本願発明と共通するものである。

(オ)引用発明において,「業務端末でのデータの更新内容を差分データとしてデータ管理端末に送信し・・・業務端末は差分データを受けて自身のデータを更新する」ことから,業務端末は,最後に受けた差分データによる更新以降の,業務端末でのデータの更新内容について差分データとして送信していることは自明である。
してみると,引用発明は,「前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示す差分を生成し,差分を含む内容をサーバコンピュータに送信する」点において,本願発明と共通するものである。

(カ)引用発明において,「データ管理端末は差分データを受けて自身のデータを更新し,全更新内容を全データに対する差分データとして業務端末に送信し,業務端末は差分データを受けて自身のデータを更新する」ことから,データ管理端末は,最後に業務端末に送信した差分データ以降の,データ管理端末での更新内容について差分データを送信していることは自明である。
してみると,引用発明は,「サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの更新状態を判断するため,差分により更新し,前記アプリケーションの更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分を生成し,差分を含む内容をクライアントコンピュータに送信する」点において,本願発明と共通するものである。

(キ)引用発明において,「業務端末は差分データを受けて自身のデータを更新すること」から,「前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記差分により更新する」点において,本願発明と共通するものである。

イ 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

【一致点】
「a)サーバコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータに関連付けられるアプリケーションを実行するためにアプリケーションプログラムを実行するステップと,
b)通信網を介して前記サーバコンピュータに接続されるクライアントコンピュータにおいて,実行された前記アプリケーションの状態への遠隔アクセスを提供するために遠隔アクセスプログラムを実行するステップと,
c)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態の変更を示す差分を生成するステップと,
d)前記差分を含む内容を前記サーバコンピュータに送信するステップと,
e)前記サーバコンピュータにおいて,前記アプリケーションの更新状態を判断するために前記差分により更新し,前記アプリケーションの更新状態と前記クライアントコンピュータに最後に送られた前記アプリケーションの状態との間の差分を生成するステップと,
f)前記差分を含む内容を前記クライアントコンピュータに送信するステップと,
g)前記クライアントコンピュータにおいて,前記サーバコンピュータから最後に受信された前記アプリケーションの状態を更新するために前記差分により更新するステップとを含む,方法。」

【相違点】
本願発明では,クライアントコンピュータが生成した「クライアント差分プログラム」がサーバコンピュータに送信されて実行され,またサーバコンピュータが生成した「サーバ差分プログラム」がクライアントコンピュータに送信されて実行されるのに対し,引用発明では,業務端末からデータ管理端末へ,またデータ管理端末から業務端末へ「差分データ」が送信されてデータを更新しており,「差分プログラム」ではない点。

4.当審の判断

上記相違点について検討する。

ア 相違点について
上記(2-2)イ(イ)のとおり,引用例2には,「クライアントとサーバとの間で同期を取る際に,プログラム言語であるSyncMLを交換して行う」ことが記載されており。これを同様にクライアントとサーバとの同期を取るためのものである引用発明への適用を試みることは当業者の通常の創作力の発揮にほからなない。
したがって,引用発明において,引用例2に記載の技術を適用し,業務端末とデータ管理端末との間で送信される差分データをプログラム言語の形式とすることは,当業者ならば容易に想到し得たものである。

イ 小括
上記で検討したごとく,相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明1,引用例2に記載の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

5.請求人の主張について

請求人は,平成27年2月13日付けの上申書において,「「差分」と「差分プログラム」とは異なると思料いたします。「差分」は,2つの値の差,つまり値でありますが,「差分プログラム」は,プログラムであり単なる値とは異なるものと思料致します。」等と主張しているが,当該相違点については,上記4.において検討したとおりである。なお,請求人は引用例2については,何ら主張していない。
したがって,請求人の主張は認められない。

6.むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-21 
結審通知日 2015-05-07 
審決日 2015-05-21 
出願番号 特願2011-537802(P2011-537802)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 57- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多胡 滋  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
浜岸 広明
発明の名称 アプリケーションプログラムの状態への遠隔アクセスを提供するための方法およびシステム  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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