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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1306886 |
審判番号 | 不服2014-11432 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-17 |
確定日 | 2015-10-15 |
事件の表示 | 特願2012- 69108「太陽電池ユニットの製造方法及び太陽電池セル接続用導通材の使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日出願公開、特開2012-147008〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年5月20日に出願した特願2004-150373号(優先権主張平成15年9月5日:以下、「原出願」という。)の一部を平成21年5月21日に新たな特許出願とした特願2009-123330号の一部を平成24年3月26日に新たな特許出願としたものであって、平成25年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、平成26年3月14日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、平成26年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成26年10月20日付けで前置報告がなされた。 第2 平成26年6月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年6月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の請求項に記載された発明 平成26年6月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正された。 よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「導通材と接続部材とを介して複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続する太陽電池ユニットの製造方法であって、 前記導通材は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで異方導電性を有するフィルム状接着剤であり、 前記導通材を介して前記太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着して、一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記導通材を介して電気的に接続される、太陽電池ユニットの製造方法。」 そこで、上記本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。 2 引用刊行物 原出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-313126号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) (1)「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。 【0015】〈第1の実施形態〉図3は、本発明に係る第1の実施形態の太陽電池素子の構成を示す断面図である。従来技術と同様の構成部分には同一の符号を付記した。14は基板、1は基板内に設けられたp-n接合面、2は裏面電極、3は受光面電極、5は反射防止膜である。尚、受光面電極3の表面15は表面処理が施されている。 【0016】次に、太陽電池素子16の作製方法について説明する。図4は、作製手順を示した図である。 【0017】まず、ステップ#5で厚さ約400μm、比抵抗約3Ω・cmのp型単結晶シリコン基板14を洗浄する。そして、この基板14に、NaOH水溶液とイソプロピルアルコールの混合液を用いて液温約90゜Cでテクスチャエッチングを行い、表面に高さ数μmの微小ピラミッド状の凹凸を形成する。尚、基板14に凹凸を形成するのは、光吸収率を上げるためである。 ・・(中略)・・ 【0021】次に、ステップ#20で、基板14の裏面にアルミペースト及び銀ペーストを、ステップ#25で受光面に銀ペーストをそれぞれスクリーン印刷法により印刷し焼成することにより、厚さ数十μmの裏面電極2及び受光面電極3が形成され、太陽電池素子16が完成する。電極2、3の形成の際に用いるペーストは、上記銀ペースト以外の金ペーストや他の導電性ペーストを用いてもよい。また、蒸着やメッキ等によって電極2、3を形成してもよい。 ・・(中略)・・ 【0031】〈第3の実施形態〉以下、本発明による第3の実施形態の太陽電池モジュールについて説明する。本実施形態の太陽電池モジュール21は、第1または第2の実施形態で作製した複数の太陽電池素子16から構成されているものである。尚、太陽電池モジュール21の構成を示した断面図は、従来技術のものと同様であるので、図2を用いて説明する。 【0032】厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?50μm厚のはんだコーティングが施されたリード線の表面にフラックスを塗布する。そして、リード線の端部を前記第1または第2の実施形態の太陽電池素子16の電極2、3上に200?300゜Cで1?5秒間加熱することにより接着し、複数個の太陽電池素子16を直列あるいは並列に接続する。尚、複数の太陽電池素子16をリード線9で接続する際には、所望の出力が得られるように接続する。 【0033】太陽電池素子16の裏面電極2側には、裏面部材7が配設される。この裏面部材7は、湿気から太陽電池素子16を保護するために設けられるものであり、アルミ箔の表裏面にフッ素樹脂などをコーティングした部材で構成される。 【0034】太陽電池素子16の受光面側には、透光性ガラス10が配設される。裏面部材7と透光性ガラス10の間には、エチレンビニルアセテート(EVA)などの透光性樹脂8が充填される。 ・・(中略)・・ 【0037】〈第4の実施形態〉以下、本発明に係る第4の実施形態の太陽電池モジュールについて説明する。本実施形態の太陽電池モジュール21は、第3の実施形態と同様に、第1または第2の実施形態で作製した複数の太陽電池素子16から構成されるものである。 【0038】本実施形態は、第3の実施形態とは、太陽電池素子16を接続するために用いるリード線9が異なる。本実施形態では、厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線により、複数の太陽電池素子16を所望の出力が得られるように直列あるいは並列に接続する。 【0039】前記導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、有機溶剤や希釈剤、硬化剤等の添加剤から構成されている。導電性フィラーとしては、金、銀、銅、アルミニウム等の金属の微粉末やカーボンブラックやグラファイト粉末が用いられる。 【0040】導電性接着剤は、バインダーの種類により、常温乾燥型、常温硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型、高温焼成型に分類される。本実施形態では、どの型の導電性接着剤を用いてもよい。以下、各型の導電性接着剤について説明する。 【0041】常温乾燥型の導電性接着剤は、アクリル等の熱可塑性樹脂をバインダーに用い、常温?100゜Cで数十秒?数十分間放置すると乾燥し接着する。常温硬化型の導電性接着剤は、通常二液型のエポキシ樹脂をバインダーに用い、常温?100゜Cで数十秒?数十分間乾燥すると硬化し接着する。 【0042】熱硬化型の導電性接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーに用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する。紫外線硬化型の導電性接着剤は、エポキシアクリレート等のオリゴマーを用い、UVランプで数十秒?数十分間紫外線を照射することにより接着する。高温焼成型の導電性接着剤は、バインダーとしてガラスフリットを用い、300゜C以上の高温で数十秒?数十分間加熱することにより接着する。 【0043】本実施形態の導電性接着剤には、必ずカーボンブラック等の着色剤を加えるようにする。これにより、導電性接着剤は黒色に着色されることになる。 【0044】後は、第3の実施形態と同様にして、太陽電池モジュール21を作製する。尚、本実施形態において、リード線9の端部の太陽電池素子16の電極2、3へ接着は、上記導電性接着剤によるものでもよいし、はんだ付けによるものであってもよい。 【0045】本実施形態では、耐湿性がよく、劣化、腐食等の少ない高信頼性を有する太陽電池モジュール21が得られる。また、その電極3部分が目立つということもない。太陽電池モジュール21の変換効率更に関しても、従来のものと変わりない。リード線9との接続に導電性接着剤を用いた場合は、はんだを一切使用しない、つまりはんだに含まれる有害物質である鉛を一切使用しないことになる。よって、環境問題へ配慮した太陽電池モジュール21となる。」 (2)「【図2】 【図3】 」 上記記載事項(2)の図2からは、「リード線9」が、ある「太陽電池素子16」の受光面側とその隣の「太陽電池素子16」の裏面側を接続する構成が読み取れる。この構成、上記記載事項(1)の段落【0032】の「リード線の端部を前記第1または第2の実施形態の太陽電池素子16の電極2、3上に200?300゜Cで1?5秒間加熱することにより接着し、複数個の太陽電池素子16を直列あるいは並列に接続する。」という記載、及び、当業者の技術常識から、引用文献1には、「リード線9」の端部を、ある「太陽電池素子16」の「受光面電極3」とその隣の「太陽電池素子16」の「裏面電極2」に接着し、複数個の太陽電池素子16を直列に接続する構成が記載されていると認められる。 すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「p型単結晶シリコン基板14の裏面にアルミペースト及び銀ペーストを、受光面に銀ペーストをそれぞれスクリーン印刷法により印刷し焼成することにより、厚さ数十μmの裏面電極2及び受光面電極3が形成され、太陽電池素子16が完成され、 厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線9の端部を、ある太陽電池素子16の受光面電極3とその隣の太陽電池素子16の裏面電極2に接着し、複数個の太陽電池素子16を直列に接続する太陽電池モジュール21の作製方法であって、 導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、バインダーとして熱硬化性樹脂を用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する、太陽電池モジュール21の作製方法。」 3 対比 (1)本願補正発明と引用発明1との対比 ア 引用発明1の「p型単結晶シリコン基板14の裏面にアルミペースト及び銀ペーストを、受光面に銀ペーストをそれぞれスクリーン印刷法により印刷し焼成することにより、厚さ数十μmの裏面電極2及び受光面電極3が形成され、」「完成され」た「太陽電池素子16」が、本願補正発明の「結晶系太陽電池セル」に相当する。 イ 引用発明1の「導電性フィラー」、「熱硬化性樹脂」は、それぞれ、本願補正発明の「導電粒子」、「高分子樹脂」に相当するから、引用発明1の「導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、バインダーとして熱硬化性樹脂を用い」ることと、本願補正発明の「前記導通材は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで異方導電性を有するフィルム状接着剤であ」ることは、「前記導通材は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで導電性を有する接着剤であ」ることで一致する。 ウ 引用発明1の「リード線9」、「太陽電池モジュール21」は、それぞれ、本願補正発明の「接続部材」、「太陽電池ユニット」に相当する。 また、引用発明1の「ある太陽電池素子16の受光面電極3」、「その隣の太陽電池素子16の裏面電極2」は、それぞれ、本願補正発明の「一の前記太陽電池セルの受光面」、「他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面」に相当する。 すると、引用発明1の 「厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線9の端部を、ある太陽電池素子16の受光面電極3とその隣の太陽電池素子16の裏面電極2に接着し、複数個の太陽電池素子16を直列に接続する太陽電池モジュール21の作製方法であって、」 「導電性接着剤は、」「100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する」ことと、本願補正発明の 「導通材と接続部材とを介して複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続する太陽電池ユニットの製造方法であって、」 「前記導通材を介して前記太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着して、一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記導通材を介して電気的に接続される」ことは、 「導通材と接続部材とを介して複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続する太陽電池ユニットの製造方法であって、」 「前記導通材を介して前記太陽電池セルと前記接続部材とを加熱して、一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記導通材を介して電気的に接続される」ことで一致する。 (2)一致点 してみると、両者は、 「導通材と接続部材とを介して複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続する太陽電池ユニットの製造方法であって、 前記導通材は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで導電性を有する接着剤であり、 前記導通材を介して前記太陽電池セルと前記接続部材とを加熱して、一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記導通材を介して電気的に接続される、太陽電池ユニットの製造方法。」 で一致し、次の各点で相違する。 (3)相違点 ア 「導通材」について、本願補正発明では、「異方導電性を有するフィルム状」であるのに対して、引用発明1では、単に「導電性」と特定され、かつ、フィルム状ではない点。(相違点ア) イ 接着の際に、本願補正発明では、「熱圧着」するのに対して、引用発明1では、単に「加熱する」と特定される点。(相違点イ) 4 判断 (1)相違点アについて 異方導電性を有するフィルム状接着剤は、例えば、特開2001-31915号公報(請求項1、段落【0001】?【0004】等参照)、特開平11-61060号公報(段落【0018】?【0022】等参照)、特開昭62-188184号公報(第7頁右上欄第14行?同頁右下欄第19行等参照)に示されるように、原出願の優先日時点で、周知の技術事項である。 また、異方導電性フィルムの使用対象に太陽電池が含まれることは、例えば、特開2001-202830号公報(段落【0001】)、特開2001-297631号公報(段落【0001】)に示されるように、原出願の優先日時点で、周知の技術事項である。 すると、引用発明1の「厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線9の端部を、ある太陽電池素子16の受光面電極3とその隣の太陽電池素子16の裏面電極2に接着」することに換えて、「リード線9」の端部と「受光面電極3」及び「裏面電極2」とを、周知の異方導電性フィルムを介して接着するよう構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点イについて 一般に、熱硬化性樹脂をバインダーとして用いた導電性接着剤により接着する際には、加熱だけでなく、加圧も行う、すなわち、熱圧着することはごく普通のことであるから、引用発明1においても、「導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、バインダーとして熱硬化性樹脂を用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する」際に、加熱だけでなく、加熱も行って、熱圧着することは、当業者が適宜行えることである。 (3)効果について 本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明1及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 (4)結論 本願補正発明は、引用発明1及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5 小括 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年9月2日付けの手続補正により補正された、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「複数の結晶系太陽電池セルと、前記太陽電池セル同士を電気的に接続する接続部材及びフィルム状接着剤の硬化物と、少なくとも前記太陽電池セルの受光面側を保護する充填材層とを備える太陽電池ユニットであって、 前記フィルム状接着剤の硬化物は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで異方導電性を有し、 一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記フィルム状接着剤の硬化物を介して電気的に接続されている、太陽電池ユニット。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された引用文献1の記載内容は、上記「第2」「[理由]」「2」に記載したとおりである。 すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「p型単結晶シリコン基板14の裏面にアルミペースト及び銀ペーストが、受光面に銀ペーストがそれぞれスクリーン印刷法により印刷され焼成され、厚さ数十μmの裏面電極2及び受光面電極3が形成された太陽電池素子16と、 その端部が、ある太陽電池素子16の受光面電極3とその隣の太陽電池素子16の裏面電極2に接着され、複数個の太陽電池素子16を直列に接続する、厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線9と、 太陽電池素子16の受光面側に配設された透光性ガラス10と太陽電池素子16の裏面電極2側に配設された裏面部材7の間に充填された、エチレンビニルアセテート(EVA)などの透光性樹脂8とを有する太陽電池モジュール21であって、 導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、バインダーとして熱硬化性樹脂を用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着された、太陽電池モジュール21。」 3 対比 (1)本願発明と引用発明2との対比 ア 引用発明2の「p型単結晶シリコン基板14の裏面にアルミペースト及び銀ペーストが、受光面に銀ペーストがそれぞれスクリーン印刷法により印刷され焼成され、厚さ数十μmの裏面電極2及び受光面電極3が形成された太陽電池素子16と、」「を有する」ことが、本願発明の「結晶系太陽電池セルと、」「を備える」ことに相当する。 イ 引用発明2の「導電性フィラー」、「熱硬化性樹脂」は、それぞれ、本願発明の「導電粒子」、「高分子樹脂」に相当する。 引用発明2の「複数個の太陽電池素子16を直列に接続する」「リード線9」は、本願発明の「前記太陽電池セル同士を電気的に接続する接続部材」に相当する。 引用発明2の「100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着された」「導電性接着剤」と、本願発明の「フィルム状接着剤の硬化物」は、「接着剤の硬化物」で一致する。 引用発明2の「ある太陽電池素子16の受光面電極3」、「その隣の太陽電池素子16の裏面電極2」は、それぞれ、本願発明の「一の前記太陽電池セルの受光面」、「他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面」に相当する。 すると、引用発明2の「その端部が、ある太陽電池素子16の受光面電極3とその隣の太陽電池素子16の裏面電極2に接着され、複数個の太陽電池素子16を直列に接続する、厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線9と、」「を有」し、「導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、バインダーとして熱硬化性樹脂を用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着された」ことと、 本願発明の「前記太陽電池セル同士を電気的に接続する接続部材及びフィルム状接着剤の硬化物と、」「を備え」「一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記フィルム状接着剤の硬化物を介して電気的に接続されている」ことは、 「前記太陽電池セル同士を電気的に接続する接続部材及び接着剤の硬化物と、」「を備え」「一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記接着剤の硬化物を介して電気的に接続されている」ことで一致する。 ウ 引用発明2の「太陽電池素子16の受光面側に配設された透光性ガラス10と太陽電池素子16の裏面電極2側に配設された裏面部材7の間に充填された、エチレンビニルアセテート(EVA)などの透光性樹脂8とを有する」ことは、本願発明の「少なくとも前記太陽電池セルの受光面側を保護する充填材層とを備える」ことに相当する。 エ 引用発明2の「太陽電池モジュール21」は、本願発明の「太陽電池ユニット」に相当する。 (2)一致点 してみると、両者は、 「複数の結晶系太陽電池セルと、前記太陽電池セル同士を電気的に接続する接続部材及び接着剤の硬化物と、少なくとも前記太陽電池セルの受光面側を保護する充填材層とを備える太陽電池ユニットであって、 前記接着剤の硬化物は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで導電性を有し、 一の前記太陽電池セルの受光面と、他の前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面とが前記接続部材及び前記接着剤の硬化物を介して電気的に接続されている、太陽電池ユニット。」 で一致し、次の各点で相違する。 (3)相違点 ア 「接着剤の硬化物」について、本願発明では、「フィルム状接着剤の硬化物」である(特に、下線部)のに対して、引用発明2では、フィルム状接着剤が硬化したものではない点。(相違点ウ) イ 「接着剤の硬化物」について、本願発明では、「異方導電性を有」する(特に、下線部)のに対して、引用発明2では、単に「導電性」と特定される点。(相違点エ) 4 判断 (1)相違点ウについて 本願発明の「フィルム状接着剤の硬化物」も、引用発明2の「リード線9」の全表面に施された「導電性接着剤」が「100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し」たものも、それぞれ、「太陽電池ユニット」、「太陽電池モジュール21」という物の発明を構成する部分としては、硬化した接着剤層である点で変わりはなく、物の構成としての差異はないといえる。 すると、相違点ウは実質的な相違点ではない。 (2)相違点エについて 太陽電池において、異方導電性接着剤を使用することは、例えば、特開2001-345465号公報(段落【0049】?【0057】参照)、特開平7-147424号公報(段落【0008】)に示されるように、原出願の優先日時点で、周知の技術事項である。 すると、引用発明2の「導電性フィラーとバインダーを主成分とし、バインダーとして熱硬化性樹脂を用い」た「導電性接着剤」として、周知の異方導電性接着剤を使用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)効果について 本願発明が奏し得る効果は、引用発明2及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 (4)結論 してみると、本願発明は、引用発明2及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-17 |
結審通知日 | 2015-08-18 |
審決日 | 2015-08-31 |
出願番号 | 特願2012-69108(P2012-69108) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 元彦 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | 太陽電池ユニットの製造方法及び太陽電池セル接続用導通材の使用方法 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 古下 智也 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 城戸 博兒 |