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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24J 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24J |
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管理番号 | 1307160 |
審判番号 | 不服2014-9172 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-18 |
確定日 | 2015-10-29 |
事件の表示 | 特願2013-157200号「大容量地中熱交換井」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日出願公開、特開2015- 25643号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年7月29日の出願であって、平成26年2月21日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成26年5月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成27年4月30日付けで拒絶理由が通知され、平成27年6月29日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成27年6月29日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 。 「地面に開けた縦孔の中に、縦孔の内壁から一定の間隙を開けて多孔スリーブ管を配置し、該多孔スリーブ管と縦孔の内壁との隙間に砂利を充填することにより前記間隙部位を透水構造とし、さらに前記多孔スリーブ管の中には熱交換用媒体を流すための一対もしくはそれ以上の本数の熱交換ダクトを挿入した上、該一対もしくはそれ以上の本数のダクトを利用機器の吸込口および吐出口に接続し、前記ダクトと利用機器との間に熱交換用媒体を循環させて、前記多孔スリーブ管内で熱交換用媒体が放熱することにより、多孔スリーブ管内の地下水を加熱して上昇流を生起させ、さらに前記多孔スリーブ管の下部には周辺から新たな地下水が流れ込んで多孔スリーブ管とその周辺に対流が生じ、そうした対流の発生により放熱された熱が広く周辺に拡散することにより地中熱交換井としての容量を大幅に上昇させる大容量地中熱交換井において、前記多孔スリーブ管は、管の壁面に設けた通孔のサイズが、前記砂利の径よりも小さく形成されているか、前記砂利の透過防止手段を備えていることを特徴とする大容量地中熱交換井。」 第3 引用例 1 当審における平成27年4月30日付けで通知した拒絶理由「理由3」に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特許第4928644号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。) (1)「【技術分野】 【0001】 この発明は、液状化対策や軟弱地盤対策等の、他の目的のために設置する砂利、砂類からなる粒状物を含む通水材料で構成された透水性のある柱状構造物の内部地中熱交換用のダクトを配設し、ドレーンやウェルのみならず、周辺地盤とも広く熱交換を行い、大きな熱交換容量を確保できるようにした対流型地中熱交換井に関するものである。」 (2)「【0008】 すなわちこの発明の対流型地中熱交換井は、液状化対策の場合は主に地震時に働く土粒子間の間隙水圧を逃がすため、また、軟弱地盤対策の場合は主に排水を効率よく行うために用いられてきた砂利、砂類からなる粒状物を含む通水材料で構成された透水性のある柱状構造物の内部に地中熱交換用のダクトを配設し、前記ダクト内に熱交換用の冷媒を循環させることにより、液状化対策においては水圧を逃がした経路を通じて、また、軟弱地盤対策の場合は排水をおこなった経路を通じて対流もしくは擬似的な対流を発生させることにより、広く周辺地盤との熱交換を行い、大きな熱交換容量を確保できるようにしたことを特徴とするものである。」 (3)「【発明の効果】 【0013】 この発明の対流型地中熱交換井においては、透水性のある筒状構造体内部のダクトに熱交換媒体を循環させることで熱交換井としての機能を発揮するばかりでなく、透水性のある筒状構造体の周辺での地下水の対流を促進することができるので、従来の熱交換井に比べ、熱容量を大幅に増大させることができ、熱交換効率を飛躍的に高めることができるようになった。 【0014】 グラベルドレーン工法を例にとると、これは地盤中に砂利で出来た柱状ドレーンが形成されるが、砂利を圧入する際の加圧によってダクトが損傷を受けることからダクトを守るためにも、その中に多孔管を軸方向に挿設し、その多孔管を外管として中にダクトを挿入し、ダクト内に熱交換用の冷媒を循環させると、地上と地下との熱交換が可能となる。 そうした場合、夏はダクトに接して温まった管内の水が上昇し、管の下部では周辺の冷水が管内に流入するため、砂利で満たされた管周辺を包括した水の対流が発生し、対流型の地中熱交換井が形成される。また冬は、それと反対方向の対流が発生する。そうしたことにより、砂利で出来た柱状ドレーン全体が熱源として機能し、熱交換井としての容量は大きく改善される。」 (4)「【発明を実施するための形態】 【0017】 以下図面に基づいて、この発明の対流型地中熱交換井の実施の形態を詳細に説明する。 図1は、この発明の対流型地中熱交換井の1実施例を示すものである。 図1において、地中に開設した縦孔10に砕石類を充填して通水性を有する柱、すなわちグラベルドレーン11が構築されている。前記砕石類としては、単粒度砕石の他に、粒度調整した再生砕石やスラグ等のリサイクル材料を使用することができる。もちろん、川砂利やその他所定の粒度を有する粒状物であれば充分使用可能である。 前記通水性を有するグラベルドレーン11の中には多孔管12からなる中空で透水性のある筒状構造体が配設されており、当該多孔管12内に長さ方向に一対のダクト13を挿通させてあって、このダクト13内に熱交換媒体を充填してある。 【0018】 前記一対のダクト13は上端の開口部が、例えばポンプを内蔵した熱交換媒体の強制循環機構と連結されており、図3に示すように、下端に形成したU字状折返し部13aで連通している。したがって熱交換媒体の強制循環機構を駆動することにより、前記ダクト13内を熱交換媒体が上昇あるいは下降することになる。 このようにして前記熱交換媒体を当該ダクト13内を循環させることにより、地上の各種施設と地中内との熱交換を行って、地中熱を利用できるようにしたことを特徴としている。 【0019】 上述のように、前記通水性を有するグラベルドレーン11の中に金属製、合成樹脂製あるいはその他の素材からなる多孔管12を配設することにより、該多孔管12の中を水が自由に出入りし、砕石類のみの場合よりも空隙の容量が増して、土粒子間の圧力を逃がすという従来の工法における間隙水圧の上昇を抑える機能がさらに増強される。」 (5)「【0022】 すなわち、多孔管12内において地下水の温度がダクト13部分よりも低いときは、矢印(上向き)A方向に流れ、地下水の温度がダクト13部分よりも高いときは、矢印(下向き)B方向に流れが発生する。 そして前記多孔管12の中に流れが発生した場合、その流れが管内を上昇する場合は下部に、また下降する場合は上部に多孔管12の外から水が流れ込み、多孔管12周辺の砕石類でできた柱体全体を巻き込んだ対流が発生する。そのことにより、通常は多孔管への接触により伝播する熱が対流によっても柱体全体に伝えられ、柱体全体が熱源として機能するようになる。 したがって接触による熱の伝播のみならず、水の対流をも利用するという以上の原理を利用すれば、周辺の建造物等の各種熱利用施設に対して、例えば夏は冷房用に、冬は暖房用に容量の大きな熱交換用の熱源として極めて有効に利用することができるのである。」 (6)「【0024】 また、ダクト13は多孔管12等の外管で覆われているが、外管の変形状況をセンサー等で把握すれば、外管に過度の変形が生じた場合、ダクト13もしくは熱交換媒体を管内から除去することにより、ダクト13からの熱交換媒体の漏出を未然に防ぐことができる。」 2 引用例に記載された発明の認定 上記記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「地中に開設した縦孔10に砕石類を充填して通水性を有する柱、すなわちグラベルドレーン11が構築されており、 前記砕石類は、川砂利であり、 前記通水性を有するグラベルドレーン11の中には多孔管12からなる中空で透水性のある筒状構造体が配設されており、当該多孔管12内に長さ方向に一対のダクト13を挿通させてあって、このダクト13内に熱交換媒体を充填し、 前記一対のダクト13は上端の開口部が、例えばポンプを内蔵した熱交換媒体の強制循環機構と連結されており、下端に形成したU字状折返し部13aで連通し、 前記熱交換媒体を当該ダクト13内を循環させることにより、地上の各種施設と地中内との熱交換を行い、 夏はダクトに接して温まった多孔管12内の水が上昇し、多孔管12の下部では周辺の冷水が多孔管12内に流入するため、川砂利で満たされた多孔管12周辺を包括した水の対流が発生し、 広く周辺地盤との熱交換を行い、大きな熱交換容量を確保できるようにした対流型地中熱交換井。」 第4 対比・判断 1 ここで、本願発明と引用発明とを対比する。 本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明の「地中に開設した縦孔10」は、その機能又は構造から、本願発明の「地面に開けた縦孔」に相当し、以下同様に、「多孔管12からなる中空で透水性のある筒状構造体」は「多孔スリーブ管」に、「川砂利」である「砕石類」は「砂利」に、「熱交換媒体」は「熱交換用媒体」に、「一対のダクト13」は「一対もしくはそれ以上の本数の熱交換ダクト」に、「地上の各種施設」は「利用機器」に、「夏はダクトに接して温まった管内の水」は「多孔スリーブ管内の地下水」に、「周辺の冷水」は「周辺から」の「新たな地下水」にそれぞれ相当する。 (2)引用発明の「砕石類は、川砂利であ」って、「地中に開設した縦孔10に砕石類を充填して通水性を有する柱、すなわちグラベルドレーン11が構築されており、」「前記通水性を有するグラベルドレーン11の中には多孔管12からなる中空で透水性のある筒状構造体が配設され」、「多孔管12周辺」が「川砂利で満たされ」ていることは、縦孔10の内壁と多孔管12との間には一定の間隙が有り、その間隙に川砂利が充填され、通水性を有する構造であるから、本願発明の「地面に開けた縦孔の中に、縦孔の内壁から一定の間隙を開けて多孔スリーブ管を配置し、該多孔スリーブ管と縦孔の内壁との隙間に砂利を充填することにより前記間隙部位を透水構造と」することに相当する。 (3)引用発明の「当該多孔管12内に長さ方向に」、「熱交換媒体を充填し」た「一対のダクト13を挿通させてあって、」「前記一対のダクト13は上端の開口部が、例えばポンプを内蔵した熱交換媒体の強制循環機構と連結されており、」「前記熱交換媒体を当該ダクト13内を循環させることにより、地上の各種施設と地中内との熱交換を行」うことは、地上の各種施設と一対のダクト13との間で熱交換媒体を循環させるものであるから、地上の各種施設には一対のダクト13との接続部として、熱交換媒体の吸込口および吐出口が備えられていることは構造上明らかである。したがって、引用発明の上記構成は、本願発明の「前記多孔スリーブ管の中には熱交換用媒体を流すための一対もしくはそれ以上の本数の熱交換ダクトを挿入した上、該一対もしくはそれ以上の本数のダクトを利用機器の吸込口および吐出口に接続」することに相当する。 (4)引用発明の「前記熱交換媒体を当該ダクト13内を循環させることにより、地上の各種施設と地中内との熱交換を行い、」「夏はダクトに接して温まった多孔管12内の水が上昇し、多孔管12の下部では周辺の冷水が多孔管12内に流入するため、川砂利で満たされた多孔管12周辺を包括した水の対流が発生」することは、その水の対流によりダクトの熱が、周辺の地中内に拡散していくことであるから、本願発明の「前記ダクトと利用機器との間に熱交換用媒体を循環させて、前記多孔スリーブ管内で熱交換用媒体が放熱することにより、多孔スリーブ管内の地下水を加熱して上昇流を生起させ、さらに前記多孔スリーブ管の下部には周辺から新たな地下水が流れ込んで多孔スリーブ管とその周辺に対流が生じ、そうした対流の発生により放熱された熱が広く周辺に拡散する」ことに相当する。 (5)引用発明の「広く周辺地盤との熱交換を行い、大きな熱交換容量を確保できるようにした対流型地中熱交換井」は、本願発明の「地中熱交換井としての容量を大幅に上昇させる大容量地中熱交換井」に相当する。 2 一致点・相違点 したがって、両者は、 「地面に開けた縦孔の中に、縦孔の内壁から一定の間隙を開けて多孔スリーブ管を配置し、該多孔スリーブ管と縦孔の内壁との隙間に砂利を充填することにより前記間隙部位を透水構造とし、さらに前記多孔スリーブ管の中には熱交換用媒体を流すための一対もしくはそれ以上の本数の熱交換ダクトを挿入した上、該一対もしくはそれ以上の本数のダクトを利用機器の吸込口および吐出口に接続し、前記ダクトと利用機器との間に熱交換用媒体を循環させて、前記多孔スリーブ管内で熱交換用媒体が放熱することにより、多孔スリーブ管内の地下水を加熱して上昇流を生起させ、さらに前記多孔スリーブ管の下部には周辺から新たな地下水が流れ込んで多孔スリーブ管とその周辺に対流が生じ、そうした対流の発生により放熱された熱が広く周辺に拡散することにより地中熱交換井としての容量を大幅に上昇させる大容量地中熱交換井。」 の点で一致し、下記の点で一応相違する。 (相違点) 多孔スリーブ管について、本願発明では、「前記多孔スリーブ管は、管の壁面に設けた通孔のサイズが、前記砂利の径よりも小さく形成されているか、前記砂利の透過防止手段を備えている」のに対して、引用発明では、多孔管12の孔のサイズは特定されていない点。 3 当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 3-1 新規性について 引用例には、多孔管12の透水性及び砂利で満たされた管周辺を包括した水の対流に関して、以下の記載がある。 (1)「砂利を圧入する際の加圧によってダクトが損傷を受けることからダクトを守るためにも、その中に多孔管を軸方向に挿設し、その多孔管を外管として中にダクトを挿入し、ダクト内に熱交換用の冷媒を循環させると、地上と地下との熱交換が可能となる。 夏はダクトに接して温まった管内の水が上昇し、管の下部では周辺の冷水が管内に流入するため、砂利で満たされた管周辺を包括した水の対流が発生し、対流型の地中熱交換井が形成される。また冬は、それと反対方向の対流が発生する。」(【0014】) (2)「多孔管12からなる中空で透水性のある筒状構造体」(【0017】) (3)「前記通水性を有するグラベルドレーン11の中に金属製、合成樹脂製あるいはその他の素材からなる多孔管12を配設することにより、該多孔管12の中を水が自由に出入りし、砕石類のみの場合よりも空隙の容量が増して、土粒子間の圧力を逃がすという従来の工法における間隙水圧の上昇を抑える機能がさらに増強される。」(【0019】) (4)「また、ダクト13は多孔管12等の外管で覆われているが、外管の変形状況をセンサー等で把握すれば、外管に過度の変形が生じた場合、ダクト13もしくは熱交換媒体を管内から除去することにより、ダクト13からの熱交換媒体の漏出を未然に防ぐことができる。」(【0024】) 上記記載(1)には、多孔管12は、砂利を圧入する際の加圧によってダクトが損傷を受けることからダクトを守るための構造を有するものであること、及び上記記載(4)には、多孔管12に過度の変形が生じた場合、ダクト13を多孔管12内から除去することが可能であることが記載されていること、また、上記記載(3)には、多孔管12を配設することにより、砕石類のみの場合よりも空隙の容量が増していると記載されていることから、多孔管12は、その内部に川砂利を侵入させない構造であると認められる。 また、上記記載(1)乃至(3)から、多孔管12は、透水性のある筒状構造体であって、多孔管12の中を水は自由に出入りすることがわかる。 そうすると、引用発明の多孔管12の透水性は、専ら、水を透過させるためのものであり、多孔管12周辺の川砂利は透過させないものと解されるから、多孔管12の孔のサイズは、川砂利よりも小さいものとされていることが実質上記載されているといえるものである。 ゆえに、上記一応の相違点は、引用発明が実質的に有している事項であり、実質的な相違点とはならない。 よって、本願発明は、引用発明である。 3-2 進歩性について 仮に、上記一応の相違点が、引用発明が実質的に有している事項とはいえず、実質的な相違点となるとしても、上記のとおり、引用発明の多孔管12の透水性について、専ら水を透過させるためだけの具体的構造として、多孔管12の孔のサイズを川砂利より小さくすること、又は網のような砂利の透過防止手段で対応することは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものである。 よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3-3 請求人の主張について なお、請求人は平成27年6月29日の意見書において、 「しかしながら、上記相違点2における認定には誤りがあります。 すなわち、引用例1の段落[0017]に「多孔管12からなる中空で透水性のある筒状構造体」とあるように、引用例1における多孔管に求められているのは「透水性」のみであります。 それゆえ、段落[0019]に「多孔管12の中を水が自由に出入りし、」と記載されているのであって、ここから「多孔管12の通孔のサイズをその周囲に配された粒状物質の径より小さく形成することが構造上必要であることは明らかである。」との認定が導かれるとは到底認めることができません。 ちなみに、引用例1の段落[0026]において「サンドドレーン工法の場合は、砂の粒度により透水性が大きく左右され」と記載がある一方、段落[0017]には「図1において、地中に開設した縦孔10に砕石類を充填して通水性を有する柱、すなわちグラベルドレーン11が構築されている。」、「前記砕石類としては、・・・」とあるように、引用例1の多孔管12においては通孔のサイズをその周囲に配された粒状物質の径より小さく形成する必要はなく、通水性さえ確保されれば多孔管12の内外に砕石類が存在することは排除しておらず、したがって、引用例1において「多孔管12の通孔のサイズをその周囲に配された粒状物質の径より小さく形成することが構造上必要である」との議論には到底組みすることができません。 そのことは、引用例1の段落[0027]?[0030]の記載から明らかであります。 段落[0027]には「前記内外二重の筒状網袋22,23には通水可能な無数の小孔が空いているのである。したがって、これを多孔管と同等の機能を有するものとみなしても何ら問題はない。」と記載され、段落[0030]には「なお、前記実施例においては内外二重の筒状網袋22,23を使用することが示されているが、砂の質やダクトの外側の螺旋状のフィンの密度、その他の条件を勘案し、内側の筒状網袋23を省略することも可能である。」と記載されています。 すなわち、多孔管とダクトの間に砂24が充填されている状態が含まれるのであるから、「多孔管12の通孔のサイズをその周囲に配された粒状物質の径より小さく形成することが構造上必要である」との議論は成立しません。」と主張する。 しかし、引用発明において、多孔管内に砂利を侵入させないようにしてあることは、上記3-1に説示したとおりである。また、請求人の主張する段落[0029]のサンドドレーン工法や段落[0027]?[0030]のパックドレーン工法等筒状の網袋を用いるケースは、引用発明の川砂利を用いたグラベルドレーンを用いるものと別の態様であるから、請求人の主張は採用できない。 第5 まとめ したがって、本願発明は、引用発明であり、特許法第29条第1項3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであるか、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-21 |
結審通知日 | 2015-08-24 |
審決日 | 2015-09-14 |
出願番号 | 特願2013-157200(P2013-157200) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(F24J)
P 1 8・ 121- WZ (F24J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 貴雄 |
特許庁審判長 |
千壽 哲郎 |
特許庁審判官 |
窪田 治彦 佐々木 正章 |
発明の名称 | 大容量地中熱交換井 |
代理人 | 土橋 博司 |