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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1307162
審判番号 不服2014-9748  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-26 
確定日 2015-10-29 
事件の表示 特願2011-182184「インジウムを含むキャッピング構造を有する第III属窒化物ベースの量子井戸発光デバイス構造」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日出願公開,特開2012- 15535〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2005年6月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年7月27日,米国)を国際出願日とする特願2007-523569号(以下「原出願」という。)の一部を,平成23年8月24日に新たな出願としたものであって,平成25年6月28日付けで拒絶理由が通知され,同年9月26日に手続補正がされ,平成26年1月22日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年5月26日に審判請求がされるとともに同時に手続補正がされ,同年10月3日に上申書が提出され,平成27年4月15日に面接がされ,同年5月15日に上申書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年5月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,本件補正の前後で特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである。

〈補正前〉
「【請求項1】
n型第III属窒化物層と,
交代層の周期を少なくとも2周期有する,前記n型第III属窒化物層上の第III属窒化物ベースの超格子と,
前記n型第III属窒化物層側とは反対側の前記超格子上の第III属窒化物ベースの発光ダイオード活性領域であって,キャリアーが再結合することにより光子放出をもたらす発光ダイオード活性領域と,
前記発光ダイオード活性領域上のアルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって,前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い第III属窒化物キャッピング層と,
前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むp型第III属窒化物層と
を備えたことを特徴とする発光ダイオード。」

〈補正後〉
「【請求項1】
n型第III属窒化物層と,
交代層の周期を少なくとも2周期有する,前記n型第III属窒化物層上の第III属窒化物ベースの超格子と,
前記n型第III属窒化物層側とは反対側の前記超格子上の第III属窒化物ベースの発光ダイオード活性領域であって,キャリアーが再結合することにより光子放出をもたらす発光ダイオード活性領域と,
前記発光ダイオード活性領域上のインジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって,前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い,窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層と,
前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層と
を備えたことを特徴とする発光ダイオード。」

2 補正事項の整理
本件補正を整理すると以下のとおりとなる。
(1)補正事項1
補正前の請求項1の「前記発光ダイオード活性領域上のアルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって」を,補正後の請求項1の「前記発光ダイオード活性領域上のインジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって」と補正すること。

(2)補正事項2
補正前の請求項1の「前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い第III属窒化物キャッピング層と」を,補正後の請求項1の「前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い,窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層と」と補正すること。

(3)補正事項3
補正前の請求項1の「前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むp型第III属窒化物層と」を,補正後の請求項1の「前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層と」と補正すること。

3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
(1)補正事項1について
補正前の「アルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」について,補正後の「インジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」とすることは,「第III属窒化物キャッピング層」について,「インジウム(In)」「を含む」としてその構成を限定するものであるから,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,「インジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0047】?【0058】及び図4に記載されているから,補正事項1は,特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たすものである。

(2)補正事項2について
補正前の「第III属窒化物キャッピング層」について,補正後の「窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層」とすることは,「第III属窒化物キャッピング層」の配置について限定するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,「窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層」は,当初明細書等の図4に記載されているから,補正事項2は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3)補正事項3について
補正前の「p型第III属窒化物層」について,補正後の「Inを含まないp型第III属窒化物層」とすることは,「p型第III属窒化物層」について「Inを含まない」としてその構成を限定するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,「Alを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層」は,当初明細書等の段落【0055】及び図4に記載されているから,補正事項3は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

上記のとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから,以下,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する独立特許要件を満たすか)どうかを,補正後の請求項1に係る発明について検討する。

4 独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(再掲。以下「本願補正発明」という。)。
「【請求項1】
n型第III属窒化物層と,
交代層の周期を少なくとも2周期有する,前記n型第III属窒化物層上の第III属窒化物ベースの超格子と,
前記n型第III属窒化物層側とは反対側の前記超格子上の第III属窒化物ベースの発光ダイオード活性領域であって,キャリアーが再結合することにより光子放出をもたらす発光ダイオード活性領域と,
前記発光ダイオード活性領域上のインジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって,前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い,窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層と,
前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層と
を備えたことを特徴とする発光ダイオード。」

(2)刊行物に記載された発明
ア 国際公開第02/097904号
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に外国において頒布された刊行物である,国際公開第02/097904号(以下「引用例1」という。)には,Figure1ないしFigure3とともに,以下の記載がある(下線は当審において付加。以下同様。なお,日本語訳はファミリ文献である特表2005-507155号公報を参考として作成した。)。

(ア)技術分野
「This invention relates to microelectronic devices and fabrication methods therefor, and more particularly to structures which may be utilized in Group III nitride semiconductor devices, such as light emitting diodes (LEDs).」(1ページ13?15行)
(日本語訳:
本発明は,マイクロエレクトロニクスデバイスおよびその製造方法に関し,より詳細には,たとえば発光ダイオード(LED)のようなIII族窒化物半導体デバイスに用いることができる構造に関する。)

(イ)実施形態
「Embodiments of the present invention will be described with reference to Figure 1 that illustrates a light emitting diode (LED) structure 40. The LED structure 40 of Figure 1 includes a substrate 10, which is preferably 4H or 6H n-type silicon carbide. Substrate 10 may also comprise sapphire, bulk gallium nitride or another suitable substrate. Also included in the LED structure 40 of Figure 1 is a layered semiconductor structure comprising gallium nitride-based semiconductor layers on substrate 10. Namely, the LED structure 40 illustrated includes the following layers: a conductive buffer layer 11, a first silicon-doped GaN layer 12, a second silicon doped GaN layer 14, a superlattice structure 16 comprising alternating layers of silicon-doped GaN and/or InGaN, an active region 18, which may be provided by a multi-quantum well structure, an undoped GaN and/or AlGaN layer 22, an AlGaN layer 30 doped with a p-type impurity, and a GaN contact layer 32, also doped with a p-type impurity. The structure further includes an n-type ohmic contact 23 on the substrate 10 and a p-type ohmic contact 24 on the contact layer 32.
・・・(中略)・・・
As illustrated in Figure 1, a superlattice structure 16 according to embodiments of the present invention includes alternating layers of In_(X)Ga_(1-X)N and In_(Y)Ga_(1-Y)N, wherein X is between 0 and 1 inclusive and X is not equal to Y. Preferably, X=0 and the thickness of each of the alternating layers of InGaN is about 5-40Åthick inclusive, and the thickness of each of the alternating layers of GaN is about 5-100Åthick inclusive. In certain embodiments, the GaN layers are about 30Åthick and the InGaN layers are about 15Åthick. The superlattice structure 16 may include from about 5 to about 50 periods (where one period equals one repetition each of the In_(X)Ga_(1-X)N and In_(Y)Ga_(1-Y)N layers that comprise the superlattice). In one embodiment, the superlattice structure 16 comprises 25 periods. In another embodiment, the superlattice structure 16 comprises 10 periods. The number of periods, however, may be decreased by, for example, increasing the thickness of the respective layers. Thus, for example, doubling the thickness of the layers may be utilized with half the number of periods. Alternatively, the number and thickness of the periods may be independent of one another.
Preferably, the superlattice 16 is doped with an n-type impurity such as silicon at a level of from about 1x10^(17)cm^(-3) to about 5x10cm^(-3). Such a doping level may be actual doping or average doping of the layers of the superlattice 16. If such doping level is an average doping level, then it may be beneficial to provide doped layers adjacent the superlattice structure 16 that provide the desired average doping which the doping of the adjacent layers is averaged over the adjacent layers and the superlattice structure 16. By providing the superlattice 16 between substrate 10 and active region 18, a better surface may be provided on which to grow InGaN-based active region 18. While not wishing to be bound by any theory of operation, the inventors believe that strain effects in the superlattice structure 16 provide a growth surface that is conducive to the growth of a high-quality InGaN-containing active region. Further, the superlattice is known to influence the operating voltage of the device. Appropriate choice of superlattice thickness and composition parameters can reduce operating voltage and increase optical efficiency.
The superlattice structure 16 may be grown in an atmosphere of nitrogen or other gas, which enables growth of higher-quality InGaN layers in the structure. By growing a silicon-doped InGaN/GaN superlattice on a silicon-doped GaN layer in a nitrogen atmosphere, a structure having improved crystallinity and conductivity with optimized strain may be realized.」(9ページ16行?11ページ10行)
(日本語訳:
図1を参照して,本発明の実施形態を説明する。図1では,発光ダイオード(LED)構造40が例示されている。図1のLED構造40は,基板10を含む。基板10は,好ましくは4Hまたは6Hのn型炭化ケイ素である。また基板10は,サファイア,バルク状窒化ガリウム,または他の好適な基板を含んでいてもよい。また図1のLED構造40に含まれているのは,基板10上の窒化ガリウム系半導体層を含む層状の半導体構造である。すなわち,例示したLED構造40には,以下の層が含まれている。導電性バッファ層11,第1のシリコンドープGaN層12,第2のシリコンドープGaN層14,シリコンドープGaNおよび/またはInGaNの交互層を含む超格子構造16,多重量子井戸構造として与えることができる活性層18,アンドープGaNおよび/またはAlGaN層22,p型不純物がドープされたAlGaN層30,やはりp型不純物がドープされたGaNコンタクト層32。この構造にはさらに,基板10上のn型オーミックコンタクト23と,コンタクト層32上のオーミックコンタクト24とが含まれる。
・・・(中略)・・・
図1に例示するように,本発明の実施形態による超格子構造16には,In_(X)Ga_(1-X)NとIn_(Y)Ga_(1-Y)Nとの交互層が含まれている。ここで,Xは0と1との間(0と1も含めて)であり,XはYと等しくない。好ましくは,X=0であり,InGaNの交互層のそれぞれの厚みは約5?40Åの厚み(5と40も含めて)であり,GaNの交互層のそれぞれの厚みは約5?100Åの厚み(5と100も含めて)である。ある実施形態では,GaN層は約30Åの厚みであり,InGaN層は約15Åの厚みである。超格子構造16は,約5から約50の周期を含んでいてもよい(ここで1周期は,超格子を構成するIn_(X)Ga_(1-X)NおよびIn_(Y)Ga_(1-Y)Nの層のそれぞれの1回の繰り返しに等しい)。ある実施形態では,超格子構造16は25の周期を含んでいる。他の実施形態では,超格子構造16は10の周期を含んでいる。しかし周期の数を,たとえば個々の層の厚みを増やすことによって減らしてもよい。したがって,たとえば層の厚みを2倍にすることを用いて,周期の数を半分にしてもよい。その代わりに周期の数および厚みを,互いと独立にしてもよい。
好ましくは,超格子16には,n型不純物たとえばシリコンが約1×10^(17)cm^(-3)から約5×10^(19)cm^(-3)のレベルでドープされている。このようなドーピングレベルは,超格子16の層の実際のドーピングであってもよいし,平均のドーピングであってもよい。このようなドーピングレベルが平均のドーピングレベルである場合には,所望の平均ドーピングを与えるように,ドープ層を超格子構造16に隣接して設けることが有益であると考えられる。平均のドーピングは,隣接する層のドーピングを,隣接する層と超格子構造16とに渡って平均することで得られる。超格子16を基板10と活性領域18との間に設けることによって,InGaN系活性領域18をその上に成長させるための,より良好な表面を得ることができる。どんな動作理論に拘束されることも望まないが,発明者らは,超格子構造16における歪み効果によって,高品質のInGaN含有活性領域の成長を促す成長表面が得られると考えている。また超格子はデバイスの動作電圧に影響を及ぼすことが知られている。超格子の厚みおよび組成のパラメータを適切に選ぶことによって,動作電圧を下げ,光学的効率を上げることができる。
超格子構造16は,窒素または他のガスの雰囲気中で成長させてもよい。その結果,より高品質のInGaN層を構造内に成長させることができる。窒素雰囲気中でシリコンドープGaN層上にシリコンドープのInGaN/GaN超格子を成長させることによって,結晶性および導電性が改善され歪みが最適化された構造を実現することができる。)

(ウ)さらなる実施形態
「Figure 2 illustrates further embodiments of the present invention incorporating a multi-quantum well active region. The embodiments of the present invention illustrated in Figure 2 include a layered semiconductor structure 100 comprising gallium nitride-based semiconductor layers grown on a substrate 10. As described above, the substrate 10 may be SiC, sapphire or bulk gallium nitride. As is illustrated in Figure 2, LEDs according to particular embodiments of the present invention may include a conductive buffer layer 11, a first silicon-doped GaN layer 12, a second silicon doped GaN layer 14, a superlattice structure 16 comprising alternating layers of silicon-doped GaN and/or InGaN, an active region 125 comprising a multi-quantum well structure, an undoped GaN or AlGaN layer 22, an AlGaN layer 30 doped with a p-type impurity, and a GaN contact layer 32, also doped with a p-type impurity. The LEDs may further include an n-type ohmic contact 23 on the substrate 10 and a p-type ohmic contact 24 on the contact layer 32. In embodiments of the present invention where the substrate 10 is sapphire, the n-type ohmic contact 23 would be provided on n-type GaN layer 12 and/or n-type GaN layer 14.
As described above with reference to Figure 1, buffer layer 11 is preferably n- type AlGaN. Similarly, GaN layer 12 is preferably between about 500 and 4000 nm thick inclusive and is most preferably about 1500 nm thick. GaN layer 12 may be doped with silicon at a level of about 5x10^( 17) to 5x10^( 18) cm^( -3) . GaN layer 14 is preferably between about 10 and 500Åthick inclusive, and is most preferably about 80Åthick. GaN layer 14 may be doped with silicon at a level of less than about 5x10^( 19)cm^( -3) . The superlattice structure 16 may also be provided as described above with reference to Figure 1.
The active region 125 comprises a multi-quantum well structure that includes multiple InGaN quantum well layers 120 separated by barrier layers 118. The barrier layers 118 comprise In_(X)Ga_(1-X)N where 0≦X<1. Preferably the indium composition of the barrier layers 118 is less than that of the quantum well layers 120, so that the barrier layers 118 have a higher bandgap than quantum well layers 120. The barrier layers 118 and quantum well layers 120 may be undoped (i.e. not intentionally doped with an impurity atom such as silicon or magnesium). However, it may be desirable to dope the barrier layers 118 with Si at a level of less than 5x10^( 19)cm^( -3) , particularly if ultraviolet emission is desired.
In further embodiments of the present invention, the barrier layers 118 comprise Al_(X)In_(Y)Ga_(1-X-Y)N where 0<X<1, 0≦Y<1 and X+Y≦1. By including aluminum in the crystal of the barrier layers 118, the barrier layers 118 may be lattice- matched to the quantum well layers 120, thereby providing improved crystalline quality in the quantum well layers 120, which increases the luminescent efficiency of the device.

・・・(中略)・・・

In additional embodiments of the present invention, the LED structure illustrated in Figure 2 includes a spacer layer 17 disposed between the superlattice 16 and the active region 125. The spacer layer 17 preferably comprises undoped GaN. The presence of the optional spacer layer 17 between the doped superlattice 16 and active region 125 may deter silicon impurities from becoming incorporated into the active region 125. This, in turn, may improve the material quality of the active region 125 that provides more consistent device performance and better uniformity. Similarly, a spacer layer may also be provided in the LED structure illustrated in Figure 1 between the superlattice 16 and the active region 18.
Returning to Figure 2, the layer 22 may be provided on the active region 125 and is preferably undoped GaN or AlGaN between about 0 and 120Åthick inclusive. The layer 22 is preferably about 35Åthick. If the layer 22 comprises AlGaN, the aluminum percentage in such layer is preferably about 10-30% and most preferably about 24%. The level of aluminum in the layer 22 may also be graded in a stepwise or continuously decreasing fashion. The layer 22 may be grown at a higher temperature than the growth temperatures in the active region 125 in order to improve the crystal quality of the layer 22. Additional layers of undoped GaN or AlGaN may be included in the vicinity of layer 22. For example, the LED illustrated in Figure 2 may include an additional layer of undoped AlGaN about 6-9Å thick between the active regions 125 and the layer 22.
An AlGaN layer 30 doped with a p-type impurity such as magnesium is provided on layer 22. The AlGaN layer 30 may be between about 0 and 300Åthick inclusive and is preferably about 130Åthick. A contact layer 32 of p-type GaN is provided on the layer 30 and is preferably about 1800Åthick. Ohmic contacts 24 and 25 are provided on the p-GaN contact layer 32 and the substrate 10, respectively. Ohmic contacts 24 and 25 are provided on the p-GaN contact layer 32 and the substrate 10, respectively.」(11ページ32行?15ページ13行)
(日本語訳:
図2に,多重量子井戸活性領域を取り入れた本発明のさらなる実施形態を例示する。図2に例示した本発明の実施形態は,基板10上に成長させた窒化ガリウム系半導体層を含む層状の半導体構造100を含む。前述したように,基板10は,SiC,サファイア,またはバルク状窒化ガリウムであってもよい。図2に示したように,本発明の特定の実施形態によるLEDは,以下のものを含んでいてもよい。導電性バッファ層11,第1のシリコンドープGaN層12,第2のシリコンドープGaN層14,シリコンドープGaNおよび/またはInGaNの交互層を含む超格子構造16,多重量子井戸構造を含む活性領域125,アンドープGaNまたはAlGaN層22,p型不純物がドープされたAlGaN層30,同様にp型不純物がドープされたGaNコンタクト層32。LEDは,基板10上のn型オーミックコンタクト23と,コンタクト層32上のp型オーミックコンタクト24とをさらに含んでいてもよい。基板10がサファイアの場合の本発明の実施形態においては,n型オーミックコンタクト23を,n型GaN層12および/またはn型GaN層14上に設ける。
図1を参照して前述したように,バッファ層11は好ましくはn型AlGaNである。同様に,GaN層12は好ましくは,約500と4000nmとの間の厚み(500と4000も含めて)であり,最も好ましくは約1500nmの厚みである。GaN層12には,シリコンが約5×10^(17)から5×10^(18)cm^(-3)のレベルでドープされていてもよい。GaN層14は好ましくは,約10と500Åとの間の厚み(10と500も含めて)であり,最も好ましくは約80Åの厚みである。GaN層14には,シリコンが約5×10^(19)cm^(-3)未満のレベルでドープされていてもよい。また超格子構造16も,図1を参照して前述したように設けてもよい。
活性領域125は,バリア層118によって分離された複数のInGaN量子井戸層120を含む多重量子井戸構造を含む。バリア層118は,In_(X)Ga_(1-X)N(ここで0≦X<1)を含む。好ましくは,バリア層118のインジウム組成は,量子井戸層120のそれよりも低い。その結果,バリア層118は,量子井戸層120よりもバンドギャップが大きい。バリア層118と量子井戸層120とは,アンドープ(すなわち,シリコンまたはマグネシウムなどの不純物原子が意図的にドープされているわけではない)であってもよい。しかし,特に紫外線放射が求められる場合には,バリア層118に,Siを5×10^(19)cm^(-3)未満のレベルでドープすることが望ましいと考えられる。
本発明のさらなる実施形態においては,バリア層118は,Al_(X)In_(Y)Ga_(1-X-Y)N(ここで0<X<1,0≦Y<1,およびX+Y≦1)を含む。バリア層118の結晶中にアルミニウムを含むことによって,バリア層118は,量子井戸層120と格子整合することができる。その結果,量子井戸層120の結晶品質が向上し,デバイスの発光効率が上がる。
・・・(中略)・・・
本発明のさらなる実施形態においては,図2に例示するLED構造は,超格子16と活性領域125との間に配置されるスペーサ層17を含む。スペーサ層17は好ましくは,アンドープのGaNを含む。ドープされた超格子16と活性領域125との間に随意のスペーサ層17が存在することによって,活性領域125内にシリコン不純物が取り込まれることを防止することができる。この結果,活性領域125の材料品質が向上するため,デバイス特性をより安定させて,均一性を高めることができる。同様に,スペーサ層を,図1に例示するLED構造において,超格子16と活性領域18との間に設けてもよい。
図2に戻って,層22を活性領域125上に設けてもよい。層22は好ましくは,約0と120Åとの間の厚み(0と120も含めて)のアンドープのGaNまたはAlGaNである。層22は好ましくは,約35Åの厚みである。層22がAlGaNを含む場合には,このような層内のアルミニウムの割合は,好ましくは約10?30%であり,最も好ましくは約24%である。また層22内のアルミニウムレベルは,段階的にまたは連続的に減少するように,勾配がつけられていてもよい。層22の成長温度を量子井戸領域125での成長温度よりも高くして,層22の結晶品質を向上させてもよい。アンドープGaNまたはAlGaNのさらなる層を,層22の付近に含ませてもよい。たとえば図2に例示するLEDは,活性領域125と層22との間に約6?9Åの厚みのアンドープAlGaNのさらなる層を含んでいてもよい。
マグネシウムなどのp型不純物がドープされたAlGaN層30が,層22上に設けられている。AlGaN層30は,約0と300Åとの間の厚み(0と300も含めて)であってもよく,好ましくは約130Åの厚みである。p型GaNのコンタクト層32を,層30上に設ける。コンタクト層32は好ましくは,約1800Åの厚みである。オーミックコンタクト24と25とを,p型GaNコンタクト層32と基板10との上に,それぞれ設ける。オーミックコンタクト24と25とを,p型GaNコンタクト層32と基板10との上に,それぞれ設ける。)

(エ)ここで,Figure2は以下のものである。


(オ)ここで,上記(ウ)の記載とともにFigure2を参照すると,「導電性バッファ層11,第1のシリコンドープGaN層12,第2のシリコンドープGaN層14,シリコンドープGaNおよび/またはInGaNの交互層を含む超格子構造16,多重量子井戸構造を含む活性領域125,アンドープGaNまたはAlGaN層22,p型不純物がドープされたAlGaN層30,同様にp型不純物がドープされたGaNコンタクト層32」の各々を,この順に積層した構造を含むことがわかる。同様に,「アンドープGaNまたはAlGaN層22」が「活性領域125」の直上に設けられ,また,「p型不純物がドープされたAlGaN層30」が「アンドープGaNまたはAlGaN層22」の直上に設けられていることがわかる。
また,上記(ウ)の「また超格子構造16も,図1を参照して前述したように設けてもよい」との記載によれば,図2に示されたものにおける超格子16は,上記(イ)に記載された,図1に示されたものにおける超格子16と同様に構成できることは明らかである。
また,上記(ウ)の「層22を活性領域125上に設けてもよい。層22は好ましくは,約0と120Åとの間の厚み(0と120も含めて)のアンドープのGaNまたはAlGaNである。」との記載から,「層22」としてアンドープのAlGaNを用いた構造は明らかである。
また,上記(ウ)の記載とともにFigure2を参照すると,層22は,活性領域125のバリア層118に接していることが見て取れる。

(カ)以上を総合し,引用文献1には,Figure2に示されたものに関して以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「LEDであって,
導電性バッファ層11,第1のシリコンドープGaN層12,第2のシリコンドープGaN層14,超格子構造16,多重量子井戸構造を含む活性領域125,アンドープAlGaN層22,p型不純物がドープされたAlGaN層30,同様にp型不純物がドープされたGaNコンタクト層32をこの順に積層した構造を含み,
超格子構造16には,In_(X)Ga_(1-X)NとIn_(Y)Ga_(1-Y)Nとの交互層が含まれており,約5から約50の周期を含んでおり,(ここで1周期は,超格子を構成するIn_(X)Ga_(1-X)NおよびIn_(Y)Ga_(1-Y)Nの層のそれぞれの1回の繰り返しに等しい),また,n型不純物たとえばシリコンが約1×10^(17)cm^(-3)から約5×10^(19)cm^(-3)のレベルでドープされており,
超格子16と活性領域125との間には,さらにスペーサ層17が配置され,
活性領域125は,バリア層118によって分離された複数のInGaN量子井戸層120を含む多重量子井戸構造を含むものであって,バリア層118は,In_(X)Ga_(1-X)N(ここで0≦X<1)を含み,バリア層118のインジウム組成は,量子井戸層120のそれよりも低いものであり,
アンドープAlGaN層22は,活性領域125の直上に設けられるとともに,活性領域125のバリア層118に接しており,
p型不純物がドープされたAlGaN層30は,層22の直上に設けられているものである,
LED。」

イ 特開平9-266326号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平9-266326号公報(以下「引用例2」という。)には,図1ないし図5とともに,以下の記載がある。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】3族窒化物半導体から成る発光層と発光層の上に形成されるクラッド層とを有する発光素子において,
前記発光層と前記クラッド層との間に,前記発光層の成長温度と前記クラッド層の成長温度との間の成長温度で成長が可能で,前記発光層のバンドギャップと前記クラッド層のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する組成比を有する3族窒化物半導体から成るキャップ層を設けたことを特徴とする3族窒化物化合物半導体発光素子。
・・・(中略)・・・
【請求項3】前記発光層と前記クラッド層と前記キャップ層は4元系のAl_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N(0≦x ≦1, 0≦y ≦1, 0≦x+y ≦1)であり,前記キャップ層の組成比は前記発光層の組成比と前記クラッド層の組成比との間の組成比に選択されていることを特徴とする請求項1に記載の3族窒化物化合物半導体発光素子。
【請求項4】前記発光層は3元系のIn_(x1)Ga_(1-x1)N (0≦x1≦1)であり,前記クラッド層は3元系のAl_(y1)Ga_(1-y1)N(0 ≦y1≦1)であり,前記キャップ層は前記発光層の組成比と前記クラッド層の組成比との間の組成比に選択されたAl_(x2)Ga_(y2)In_(1-X2-Y2)N (0 ≦x2≦1, 0≦y2≦1, 0≦x2+y2 ≦1)であることを特徴とする請求項1に記載の3族窒化物化合物半導体発光素子。
【請求項5】前記キャップ層のインジウム(In)の組成比が前記発光層から前記クラッド層に近づくに連れて減少し,前記キャップ層のアルミニウム(Al)の組成比が前記発光層から前記クラッド層に近づくに連れて増加するように段階的又は連続的に変化させたことを特徴とする請求項4に記載の3族窒化物化合物半導体発光素子。」

(イ)発明の属する技術分野及び従来の技術
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は3族窒化物半導体を用いた半導体素子に関する。特に,素子特性や信頼性に優れた半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,青色や短波長領域の発光素子の材料としてAlGaInN 系の化合物半導体を用いたものが知られている。その化合物半導体は直接遷移型であることから発光効率が高いこと,光の3原色の1つである青色及び緑色を発光色とすること等から注目されている。
【0003】AlGaInN 系半導体においても,Mgをドープして電子線を照射したり,熱処理によりp型化できる。この結果,AlGaN のp伝導型のクラッド層と,ZnとSiドープのInGaN の発光層と,GaN のn層とを用いたダブルヘテロ構造を有する発光ダイオード(LED)が提案されている。」

(ウ)発明が解決しようとする課題
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが,上記のようなInGaN の発光層の上に直接,AlGaN のクラッド層が積層されている構造では,AlGaN のクラッド層の成長温度が先に形成されたInGaNの発光層の成長温度よりも高いため,クラッド層の形成工程において,発光層がInGaN の成長温度よりも高い温度にさらされ,発光層が熱的に劣化する。更に,この高温でのクラッド層の形成工程において,クラッド層に添加されたマグネシウム(Mg) が発光層へと拡散したり,発光層の窒素(N) が蒸発する。その結果,発光層の結晶性が悪化し発光効率が低下する。更に,素子の劣化により,素子の寿命は短くなり,信頼性に欠ける。
【0005】そこで本発明の目的は,発光層の結晶性を向上させることで,発光効率を向上させ,素子寿命の長期化と信頼性の向上を図ることである。」

(エ)課題を解決するための手段
「【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は,発光層とクラッド層との間に,発光層の成長温度とクラッド層の成長温度との間の成長温度で成長が可能で,発光層のバンドギャップとクラッド層のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する組成比を有する3族窒化物半導体から成るキャップ層を設けたことを特徴とする。
【0007】請求項2の発明は,そのキャップ層を,発光層からクラッド層にかけて,組成比が連続的又は段階的に変化する層としたことである。請求項3の発明は,発光層とクラッド層とキャップ層を4元系のAl_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N(0≦x ≦1, 0≦y ≦1, 0≦x+y ≦1)とし,キャップ層の組成比を発光層の組成比とクラッド層の組成比との間の組成比に選択したことである。請求項4の発明は,発光層は3元系のIn_(x1)Ga_(1-x1)N (0≦x1≦1)であり,クラッド層は3元系のAl_(y1)Ga_(1-y1)N(0 ≦y1≦1)であり,キャップ層は発光層の組成比とクラッド層の組成比との間の組成比に選択されたAl_(x2)Ga_(y2)In_(1-X2-Y2)N (0 ≦x2≦1, 0≦y2≦1, 0≦x2+y2 ≦1)であることを特徴とする。請求項5の発明は,キャップ層のインジウム(In)の組成比が発光層からクラッド層に近づくに連れて減少し,キャップ層のアルミニウム(Al)の組成比が発光層からクラッド層に近づくに連れて増加するように段階的又は連続的に変化させたことを特徴とする。請求項6の発明は,発光層は3元系のIn_(x1)Ga_(1-x1)N (0≦x1≦1)であり,クラッド層は3元系のAl_(y1)Ga_(1-y1)N(0 ≦y1≦1)であり,キャップ層は3元系のIn_(x2)Ga_(1-x2)N (0≦x2≦x1≦1) であることを特徴とする。請求項7の発明は,請求項6において,キャップ層のインジウム(In)の組成比が発光層からクラッド層に近づくに連れて段階的又は連続的に減少させたことを特徴とする。」

(オ)発明の作用及び効果
「【0008】
【発明の作用及び効果】上記の構成のキャップ層を発光層とクラッド層との間に,それらの成長温度間の温度で形成したので,発光層を形成した後に,より高温でクラッド層が形成される時に,発光層の結晶性への悪影響を防止できる。具体的には,発光層の窒素の抜けやインジウムの発光層からの拡散,マグネシウムウ(審決注:「マグネシウム」の誤記と認める。)の発光層への拡散が,このキャップ層で阻止される。又,キャップ層の形成は,クラッド層よりも低温で形成されるために,キャップ層形成時における発光層の結晶性への悪影響はキャップ層を直接形成する場合に比べて低減される。この結果,発光効率が向上し,阻止寿命(審決注:「素子寿命」の誤記と認める。)が長期化した。
【0009】ヘテロ接合により発光層でキャリア閉じ込め効果を発生させるためには,発光層のバンドギャップよりもキャップ層,クラッド層のバンドギャップの方を大きくする必要がある。4元系のAlGaInN 半導体の場合には,Alが多い程バンドギャップは広くなり成長温度が高くなり,Inが多い程バンドギャップは小さくなり成長温度は低くなる。よって,キャップ層の各元素の組成比を発光層とキャップ層の各元素の組成比の間の組成比とすることで,キャップ層のバンドギャップと成長温度を発光層とクラッド層のバンドギャップと成長温度の中間とすることができる。このような組成比は連続的変化させても,段階的に変化させても良い。特に,発光層がInGaN ,クラッド層がAlGaN の3元系で構成されている場合には,キャップ層に,発光層よりもインジウム組成比が小さいか,クラッド層よりもアルミニウム組成比が小さい3元系のInGaN 又はAlGaN 又は4元系のAlGaInN を用いることで,バンドギャップと成長温度の条件を満たすことができる。」

(カ)第1実施例
「【0010】
【発明の実施の形態】以下,本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。なお本発明は下記実施例に限定されるものではない。
第1実施例
・・・(中略)・・・
【0017】続いて,温度を900 ℃に保持し,N_(2)又はH_(2)を20 liter/分,NH_(3) を10 liter/分,TMG を0.2 ×10^(-4)モル/分,TMI を1.2 ×10^(-4)モル/分,CP_(2)Mg を2 ×10^(-5)モル/分で,3 分間供給して厚さ10nmの濃度 5×10^(19)/cm^(3)にマグネシウムのドープされたキャップ層6を形成した。この状態で,キャップ層6は,まだ,抵抗率10^(8) Ωcm以上の絶縁体である。
・・・(中略)・・・
【0023】上記実施例ではキャップ層6のインジウム(In)の組成比を0.08としたが,発光層5からクラッド層71に近づくに連れて,キャップ層6のインジウム(In)の組成比を0.2 から0 へ順次,減少させても良い。さらに,アルミニウム(Al)の組成比を0 から0.08へ順次,増加させても良い。さらに,4元系のAl_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N(0≦x ≦1, 0≦y ≦1, 0≦x+y ≦1)化合物半導体を用いて,発光層5からクラッド層71にかけて,インジウム(In)の組成比を減少させると共にアルミニウム(Al)の組成比を増加させても良い。これらのキャップ層6の組成比を変化させる時,2段以上で段階的に変化させても,連続的に組成比を変化させても良い。
【0024】又,発光層5とキャップ層71に,4元系のAl_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N(0≦x ≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y ≦1)半導体を用いた場合も,キャップ層に4元系の半導体を用いて,In,Al,Gaの組成比が発光層5とクラッド層71の間の値となるように,発光層からクラッド層71にかけて,連続的に又は段階的に変化するようにしても良い。又,上記実施例では発光層5に単一層を用いたが,単一量子井戸構造(QW)や多重量子井戸構造(MQW)を用いても良い。」

(キ)第2実施例
「【0025】第2実施例
次に,第2実施例の発光素子200について説明する。図5において,n層4を高キャリア濃度n^(+) 層3と発光層5との間の格子定数の変化を緩和する組成比のn伝導型の中間層41,42を設けた。これにより,発光5の結晶性を向上させることができる。
・・・(中略)・・・
【0027】第2実施例では第1中間層41のインジウム(In)の組成比を0.08とし,第2中間層42のインジウム(In)の組成比を0.15としたが,n^(+) 層3から発光層5に近づくに連れて,発光層5のインジウム(In)の組成比を0 から0.20に順次,増加させても良い。この時,2段以上の複層でも,連続的に組成比を変化させても良い。さらに,4元系の化合物半導体を用いると,バンドギャップと格子定数とをそれぞれ独立に変化させることができる。よって,InGaN の発光層5に対して,InGaN よりもバンドギャップが広く,格子定数を発光層5の格子定数にほぼ一致させた組成比のAl_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N(0≦x ≦1, 0≦y ≦1, 0≦x+y ≦1)を中間層4として用いても良い。
・・・(後略)・・・」

ここで,上記(カ)に記載された第1実施例においては,「キャップ層6」は「マグネシウムのドープされた」(段落【0017】)ものであるが,上記(ア)に摘記した特許請求の範囲には,「キャップ層」に不純物をドープすることは記載されておらず,また,引用例2の他の記載から,「キャップ層」に不純物をドープすることが必須であるとの記載は見いだせない。それゆえ,引用例2に記載されたものにおいて「キャップ層」に不純物をドープすることは適宜になされることであって,キャップ層に不純物をドープしないで形成することも,引用例2の記載から明らかである。

以上から,引用例2には以下の技術事項が記載されているものと認められる。
「3族窒化物半導体から成る発光層と発光層の上に形成されるクラッド層とを有する発光素子において,
前記発光層と前記クラッド層との間に,前記発光層の成長温度と前記クラッド層の成長温度との間の成長温度で成長が可能で,前記発光層のバンドギャップと前記クラッド層のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する組成比を有する3族窒化物半導体から成るキャップ層を設け,
前記発光層は3元系のIn_(x1)Ga_(1-x1)N (0≦x1≦1)であり,前記クラッド層は3元系のAl_(y1)Ga_(1-y1)N(0 ≦y1≦1)であり,前記キャップ層は前記発光層の組成比と前記クラッド層の組成比との間の組成比に選択されたAl_(x2)Ga_(y2)In_(1-X2-Y2)N (0 ≦x2≦1, 0≦y2≦1, 0≦x2+y2 ≦1)であり,
前記キャップ層のインジウム(In)の組成比が前記発光層から前記クラッド層に近づくに連れて減少し,前記キャップ層のアルミニウム(Al)の組成比が前記発光層から前記クラッド層に近づくに連れて増加するように段階的又は連続的に変化させることにより,
前記発光層の窒素の抜けやインジウムの発光層からの拡散が,前記キャップ層で阻止され,又,前記キャップ層形成時における発光層の結晶性への悪影響が前記キャップ層を直接形成する場合に比べて低減され,発光効率が向上され,素子寿命が長期化された,3族窒化物化合物半導体発光素子。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
ア 引用発明の「第1のシリコンドープGaN層12」及び「第2のシリコンドープGaN層14」について,「シリコン」は「GaN」においてn型不純物となるものであるから,上記各「シリコンドープGaN層」はともにn型の層であることは明らかである。よって,引用発明における「第1のシリコンドープGaN層12」及び「第2のシリコンドープGaN層14」は,ともに本願補正発明の「n型第III属窒化物層」に相当する。

イ 引用発明の「超格子構造16」であって,「超格子構造16には,In_(X)Ga_(1-X)NとIn_(Y)Ga_(1-Y)Nとの交互層が含まれており,約5から約50の周期を含んでおり,(ここで1周期は,超格子を構成するIn_(X)Ga_(1-X)NおよびIn_(Y)Ga_(1-Y)Nの層のそれぞれの1回の繰り返しに等しい),また,n型不純物たとえばシリコンが約1×10^(17)cm^(-3)から約5×10^(19)cm^(-3)のレベルでドープされて」いるものは,本願補正発明の「交代層の周期を少なくとも2周期有する,前記n型第III属窒化物層上の第III属窒化物ベースの超格子」に相当する。

ウ 引用発明の「第1のシリコンドープGaN層12,第2のシリコンドープGaN層14,超格子構造16,多重量子井戸構造を含む活性領域125」は「この順に積層した構造」を構成するから,「多重量子井戸構造を含む活性領域125」は,本願補正発明の「前記n型第III属窒化物層側とは反対側の前記超格子上の第III属窒化物ベースの発光ダイオード活性領域であって,キャリアーが再結合することにより光子放出をもたらす発光ダイオード活性領域」に相当する。

エ 引用発明の「アンドープAlGaN層22」であって「活性領域125の直上に設けられるとともに,活性領域125のバリア層118に接して」いるものと,本願補正発明の「前記発光ダイオード活性領域上のインジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって,前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い,窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層」とは,「前記発光ダイオード活性領域上のアルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物層」である点で一致する。

オ 引用発明の「p型不純物がドープされたAlGaN層30」は「層22の直上に設けられているものである」から,引用発明の当該構成と,本願補正発明の「前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層」とは,「前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層」である点で一致する。

カ 引用発明の「LED」は,本願補正発明の「発光ダイオード」に相当する。

キ 従って,引用発明と本願補正発明とは,
「n型第III属窒化物層と,
交代層の周期を少なくとも2周期有する,前記n型第III属窒化物層上の第III属窒化物ベースの超格子と,
前記n型第III属窒化物層側とは反対側の前記超格子上の第III属窒化物ベースの発光ダイオード活性領域であって,キャリアーが再結合することにより光子放出をもたらす発光ダイオード活性領域と,
前記発光ダイオード活性領域上のアルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物層と,
前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層と
を備えた発光ダイオード。」
である点で一致する。

ク 一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
本願補正発明は「前記発光ダイオード活性領域上のインジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって,前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い,窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層」を備えるのに対して,引用発明は「前記発光ダイオード活性領域上のアルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物層」に対応する構成は備えるものの,「インジウム(In)を含む」「キャッピング層」であって,「前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い,窒化ガリウム層の直上の」ものである構成までは備えない点。

《相違点2》
本願補正発明は「前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層」を備えるのに対して,引用発明は「前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物層直上のAlを含むが,Inを含まないp型第III属窒化物層」に対応する構成は備えるものの,当該「p型第III属窒化物層」が「前記第III属窒化物キャッピング層直上の」ものであることまでは特定されていない点。

(4)判断
前記相違点1及び相違点2を併せて判断する。

ア 前記(2)イ(ウ)に摘記したとおり,引用例2には,「発明が解決しようとする課題」として「上記のようなInGaN の発光層の上に直接,AlGaN のクラッド層が積層されている構造では,AlGaN のクラッド層の成長温度が先に形成されたInGaNの発光層の成長温度よりも高いため,クラッド層の形成工程において,発光層がInGaN の成長温度よりも高い温度にさらされ,発光層が熱的に劣化する。更に,この高温でのクラッド層の形成工程において,クラッド層に添加されたマグネシウム(Mg) が発光層へと拡散したり,発光層の窒素(N) が蒸発する。その結果,発光層の結晶性が悪化し発光効率が低下する。更に,素子の劣化により,素子の寿命は短くなり,信頼性に欠ける」との記載がある。
また,前記(2)イ(オ)に摘記したとおり,引用例2には,「発明の作用及び効果」として「上記の構成のキャップ層を発光層とクラッド層との間に,それらの成長温度間の温度で形成したので,発光層を形成した後に,より高温でクラッド層が形成される時に,発光層の結晶性への悪影響を防止できる。具体的には,発光層の窒素の抜けやインジウムの発光層からの拡散,マグネシウムの発光層への拡散が,このキャップ層で阻止される。又,キャップ層の形成は,クラッド層よりも低温で形成されるために,キャップ層形成時における発光層の結晶性への悪影響はキャップ層を直接形成する場合に比べて低減される。」とともに,「発光層がInGaN ,クラッド層がAlGaN の3元系で構成されている場合には,キャップ層に,発光層よりもインジウム組成比が小さいか,クラッド層よりもアルミニウム組成比が小さい3元系のInGaN 又はAlGaN 又は4元系のAlGaInN を用いることで,バンドギャップと成長温度の条件を満たすことができる」と記載されている。
さらに,前記(2)イ(カ)に摘記したとおり,引用例2には,「又,上記実施例では発光層5に単一層を用いたが,単一量子井戸構造(QW)や多重量子井戸構造(MQW)を用いても良い。」と記載されているから,発光層5として多重量子井戸構造を用いたものについても,上記「発明の作用及び効果」が奏されるものといえる。

イ そうすると,引用発明に係る「バリア層118によって分離された複数のInGaN量子井戸層120を含む多重量子井戸構造を含むものであって,バリア層118は,In_(X)Ga_(1-X)N(ここで0≦X<1)を含み,バリア層118のインジウム組成は,量子井戸層120のそれよりも低いものであ」る「活性層125」の直上に,「アンドープAlGaN層22」を設けたものを形成するに際して,「アンドープAlGaN層22」の成長温度が,「バリア層118によって分離された複数のInGaN量子井戸層120を含む多重量子井戸構造」の成長温度よりも高くなるために,「活性層125」が高い温度にさらされ,熱的に劣化することは上記引用例2の記載から明らかといえる。
そして,この劣化を防止するために,引用発明について引用例2に記載された技術を適用して,引用発明の「アンドープAlGaN層22」を,「活性層125」と「p型不純物がドープされたAlGaN層30」の間の組成を有する「Al_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N」からなる「キャップ層」,すなわち「キャッピング層」で置換するとともに,前記(2)イ(カ)に摘記した段落【0023】に記載されたとおり,「Al_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N(0≦x ≦1, 0≦y ≦1, 0≦x+y ≦1)化合物半導体を用いて,」活性層125から離れるにつれて「インジウム(In)の組成比を減少させると共にアルミニウム(Al)の組成比を増加させ」たものとすることは当業者が適宜になし得たことである。
また,引用発明においては,「活性領域125は,バリア層118によって分離された複数のInGaN量子井戸層120を含む多重量子井戸構造を含むものであって,バリア層118は,In_(X)Ga_(1-X)N(ここで0≦X<1)を含み,バリア層118のインジウム組成は,量子井戸層120のそれよりも低いものであ」り,また,「アンドープAlGaN層22は」「活性領域125のバリア層118に接して」いるものであるから,バリア層118としてIn_(X)Ga_(1-X)N(ここでX=0),すなわち窒化ガリウム(GaN)を採用することにより,「キャップ層」が窒化ガリウム層の直上に設けられるようにすることも当業者が適宜になし得たことである。

ウ ここで,引用例2において,「4元系の化合物半導体を用いると,バンドギャップと格子定数とをそれぞれ独立に変化させることができる。よって,InGaN の発光層5に対して,InGaN よりもバンドギャップが広く,格子定数を発光層5の格子定数にほぼ一致させた組成比のAl_(x)Ga_(y)In_(1-X-Y)N(0≦x ≦1, 0≦y ≦1, 0≦x+y ≦1)を中間層4として用いても良い」(前記(2)イ(キ)参照)と記載されているように,一般に,半導体素子技術において,4元系の化合物半導体を用いて,バンドギャップを変化させつつ,格子定数を一定に維持した構造として,結晶欠陥が比較的減少された良好な結晶状態のものを得ることは周知の技術である。それゆえ,上記のとおり「キャップ層」を構成するに際しても,格子定数を一定に維持した構造とすることにより,良好な結晶状態のものが得られて,発光効率が向上したものとなることは,当業者が普通に予測できたことといえる。
ところで,請求人は,平成26年10月3日に提出された上申書において,参考資料を参照しつつ,「本発明の対象ではない製品の構造を有する発光ダイオードの発光の輝度」と,「本発明の対象である「インジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」を有する発光ダイオードの発光の輝度」とを比較して,本願補正発明に係る素子の有利な効果を提示しようとしている。しかしながら,前記参考資料に記載された各図表は断片的なものであり,上記各「発光ダイオード」の構成を明示するものではない。仮に,前記参考資料に請求人が主張する「本発明の対象である「インジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」を有する発光ダイオード」のデータが表されているとしても,前記「本発明の対象ではない製品の構造を有する発光ダイオード」がどのような構成を備えるものかが不明であるから,本願補正発明に係る素子が,「インジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」を備えたことにより,そのような「第III属窒化物キャッピング層」を備えない点のみが異なる素子と比して,どの程度の輝度の向上が得られるのかは不明といわざるを得ない。よって,当該請求人の主張は採用できない。
この点に関して,請求人は,平成27年5月15日に提出された上申書において「インジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」がインジウム(In)を含むことによって得られる発光輝度増大の効果は,インジウム(In)を含むことによる格子整合から期待される効果を上回るものである旨を主張する。しかしながら,本願明細書の記載によれば,段落【0054】には,「インジウムを含むキャッピング層40は,活性領域325の量子井戸により近く格子整合されることができ,p型層の格子構造に活性領域325の格子構造からの遷移を提供することができる。そのような構造は,結果としてデバイスの増大される輝度を生じることができる。」と記載され,「インジウムを含むキャッピング層40」が「p型層の格子構造に活性領域325の格子構造からの遷移」を提供する結果として,「デバイスの増大される輝度を生じる」ものと理解でき,段落【0058】における「インジウムを含む層を有する構造は,インジウムを含む層を有さない構造よりほぼ1.15倍から1.25倍明るいことを示した。」との結果も,前記段落【0054】に記載された作用に基づくものと理解できる。その一方,前述の,平成27年5月15日に提出された上申書における主張については,それを裏付ける具体的な立証がなされておらず,また,当該主張を裏付ける事実も見いだせないから,当該主張は採用できない。
さらに,請求人は,平成27年5月15日に提出された上申書において,本願補正発明に係る,「インジウム(In)とアルミニウム(Al)とを含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」について,「インジウムの濃度は,本願明細書[0054]に記載されたとおり,In_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)NあるいはIn_(w)Al_(z)Ga_(1-w-z)Nにおいて0<x≦0.2もしくは0<w≦0.2と規定されているとおり,その直下にある窒化ガリウム層と格子整合を行うには十分な濃度ではありません」と主張する。しかしながら,前述のとおり,本願明細書の段落【0054】に,「インジウムを含むキャッピング層40は,活性領域325の量子井戸により近く格子整合されることができ,p型層の格子構造に活性領域325の格子構造からの遷移を提供することができる。」と記載されているとおり,「インジウムを含むキャッピング層40」は,完全な格子整合を意図したものではなく,「p型層の格子構造に活性領域325の格子構造からの遷移を提供する」ものであるから,仮に,前記請求人の主張のとおりであるとしても,「インジウムを含むキャッピング層40」を,「p型層の格子構造に活性領域325の格子構造からの遷移を提供する」ものとして構成し,「結果としてデバイスの増大される輝度を生じることができる」ものとすることに何ら困難はないものといえる。
また,本願明細書の記載を見ても,本願補正発明に係る,「第III属窒化物キャッピング層」を「窒化ガリウム層の直上の」ものとする構成を備えることにより格別な作用効果を奏する旨の記載は見いだせない。

エ 上記のとおりであるから,相違点1に係る,「インジウム(In)を含む」「キャッピング層」であって,「前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い,窒化ガリウム層の直上の」ものを備えることは,当業者が容易になし得たことである。

オ また,上記のとおり「キャッピング層」を構成するに伴い,引用発明の「p型不純物がドープされたAlGaN層30」が「第III属窒化物キャッピング層直上の」ものとなり,相違点2に係る構成を備えることは明らかである。

(5)小括
よって,本願補正発明は,引用例2に記載された技術事項に照らすとともに周知技術を勘案して,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 まとめ
以上のとおり,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年5月26日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成25年9月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(再掲。以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
n型第III属窒化物層と,
交代層の周期を少なくとも2周期有する,前記n型第III属窒化物層上の第III属窒化物ベースの超格子と,
前記n型第III属窒化物層側とは反対側の前記超格子上の第III属窒化物ベースの発光ダイオード活性領域であって,キャリアーが再結合することにより光子放出をもたらす発光ダイオード活性領域と,
前記発光ダイオード活性領域上のアルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層であって,前記発光ダイオード活性領域に対して近位の領域のAl濃度よりも遠位の領域のAl濃度の方が高い第III属窒化物キャッピング層と,
前記発光ダイオード活性領域とは離れている,前記第III属窒化物キャッピング層直上のAlを含むp型第III属窒化物層と
を備えたことを特徴とする発光ダイオード。」

2 引用発明
引用発明は,前記第2の4「(2)刊行物等に記載された発明」に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
前記第2「1 本件補正の内容」?第2「3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討」において記したように,本願補正発明は,補正前の請求項1における発明特定事項である「アルミニウム(Al)を含むドープされていない第III属窒化物キャッピング層」について「インジウム(In)」「を含む」としてより限定し,また,補正前の請求項1における発明特定事項である「第III属窒化物キャッピング層」について「窒化ガリウム層の直上の第III属窒化物キャッピング層」として,「第III属窒化物キャッピング層」の配置について限定し,さらに,補正前の請求項1における発明特定事項である「p型第III属窒化物層」について「Inを含まないp型第III属窒化物層」として,その構成をより限定するものである。言い換えると,本願発明は,本願補正発明から前記各限定を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定し前記加入事項を追加したものである本願補正発明が,前記第2 4「(3)対比」?第2 4「(5)小括」において検討したとおり,引用例2に記載された技術事項に照らすとともに周知技術を勘案して,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-29 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-19 
出願番号 特願2011-182184(P2011-182184)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 近藤 幸浩
山村 浩
発明の名称 インジウムを含むキャッピング構造を有する第III属窒化物ベースの量子井戸発光デバイス構造  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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