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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1307267
審判番号 不服2014-15750  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-08 
確定日 2015-10-28 
事件の表示 特願2009- 37306「髪型決定支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 2日出願公開、特開2010-191831〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成21年2月20日の出願であって、平成25年8月30日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月25日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、平成26年4月9日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成26年8月8日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされものである。

第2 平成26年8月8日付け手続補正について

1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成26年8月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)
「【請求項1】
顧客ごとに過去にセットされた髪型の撮像データが記憶されたサーバを備えた髪型決定支援システムにおいて、サーバに無線通信回線を介して表示端末機が接続され、サーバは過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに複数の撮像データを並列して表示することができ各顧客の表示のトップ画面に並列された撮像日が選択されることによって各撮像日の画面が開かれると共に過去にセットされた髪型のセット作業の動画を含むファイルとして記憶されたデータベースを有し、表示端末機は携帯性を有してサーバのデータベースに記憶されているファイルを閲覧可能に表示するディスプレイを有し顧客が使用するファイルの閲覧専用の顧客用表示端末機と店舗が使用するファイルの閲覧とファイルへのデータ入力との双方を実行できる店舗用表示端末機とからなることを特徴とする髪型決定支援システム。
【請求項2】
請求項1の髪型決定支援システムにおいて、ファイルは過去にセットされた髪型の少なくとも正面,背面,側面の3つの角度の撮像データを含むことを特徴とする髪型決定支援システム。
【請求項3】
請求項1または2の髪型決定支援システムにおいて、ファイルは撮像データとともに表示されセットされた髪型の必要事項を説明する文字データを含むことを特徴とする髪型決定支援システム。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかの髪型決定支援システムにおいて、無線通信回線は携帯電話通信網であり、表示端末機は携帯電話であることを特徴とする髪型決定支援システム。」

(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
顧客ごとに過去にセットされた髪型の撮像データが記憶されたサーバを備えた髪型決定支援システムにおいて、サーバに無線通信回線を介して表示端末機が接続され、サーバは過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに複数の撮像データを並列して表示することができ各顧客の表示のトップ画面に並列された撮像日が選択されることによって各撮像日の画面が開かれるファイルとして記憶されたデータベースを有し、表示端末機は携帯性を有してサーバのデータベースに記憶されているファイルを閲覧可能に表示するディスプレイを有し顧客が使用するファイルの閲覧専用の顧客用表示端末機と店舗が使用するファイルの閲覧とファイルへのデータ入力との双方を実行できる店舗用表示端末機とからなることを特徴とする髪型決定支援システム。
【請求項2】
請求項1の髪型決定支援システムにおいて、ファイルは過去にセットされた髪型の少なくとも正面,背面,側面の3つの角度の撮像データを含むことを特徴とする髪型決定支援システム。
【請求項3】
請求項1または2の髪型決定支援システムにおいて、ファイルは撮像データとともに表示されセットされた髪型の必要事項を説明する文字データを含むことを特徴とする髪型決定支援システム。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかの髪型決定支援システムにおいて、ファイルは過去にセットされた髪型の動画やセット作業の動画を含むことを特徴とする髪型決定支援システム。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかの髪型決定支援システムにおいて、無線通信回線は携帯電話通信網であり、表示端末機は携帯電話であることを特徴とする髪型決定支援システム。」

2 補正の適否について
(1)補正の目的について
補正後の請求項1における「共に過去にセットされた髪型のセット作業の動画を含むファイル」との補正は、補正前の請求項4の発明特定事項で、補正前の請求項1における「ファイル」を限定するものである。
そして、補正後の請求項1乃至4に記載された発明は、それぞれ補正前の請求項4,2,3,5に記載された発明に対応する。
そうすると、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を削除するとともに、補正前の請求項4に記載された発明を補正後の請求項1に記載された発明とするものであると認められるから、請求項の削除を目的とするものである。

3 小括
上記「2 補正の適否について」で検討したように、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定された「第36条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするものに該当する。

第3 進歩性について
(1)本願発明
上記のとおり、平成26年8月8日付けの手続補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定された「第36条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするものでるから、本願の請求項1に係る発明は、平成26年8月8日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】
顧客ごとに過去にセットされた髪型の撮像データが記憶されたサーバを備えた髪型決定支援システムにおいて、サーバに無線通信回線を介して表示端末機が接続され、サーバは過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに複数の撮像データを並列して表示することができ各顧客の表示のトップ画面に並列された撮像日が選択されることによって各撮像日の画面が開かれると共に過去にセットされた髪型のセット作業の動画を含むファイルとして記憶されたデータベースを有し、表示端末機は携帯性を有してサーバのデータベースに記憶されているファイルを閲覧可能に表示するディスプレイを有し顧客が使用するファイルの閲覧専用の顧客用表示端末機と店舗が使用するファイルの閲覧とファイルへのデータ入力との双方を実行できる店舗用表示端末機とからなることを特徴とする髪型決定支援システム。」

(2)引用例
(2-1)引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-118534号公報(以下,「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(以下「引用例1指摘事項」という。)(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)

(ア)【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、理美容院や歯科医院におけるコンピュータを使用しての顧客管理装置において、該顧客管理装置における顧客データの中に少なくとも施術後における顧客の施術部位や顔写真を撮影し、その撮影した画像を前記顧客データ内に自動的に取り込むようにした撮影画像による顧客管理装置に関する。」

(イ)「【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る撮影画像による顧客管理装置、ここでは、理美容院で使用した場合の一実施の形態を図面と共に説明する。
図1は撮影画像による顧客管理装置のシステムブロック図を示し、1は理美容院に設置されたコンピュータ(以下、サロンPCという)にして、顧客が貸与された無線タグ21および理美容師が所有する無線タグ22に対して顧客認識データおよび理美容師認識データを書き込むためのタグ書込手段1aが接続されている。
【0015】
3は同じく理美容院に設置され、後述するカメラ5よりの画像を記憶する画像サーバにして、前記したと同様な顧客が貸与された無線タグ21および理美容師が所有する無線タグ22からの前記認識データを読み取るためのタグ読取手段3aが接続されている。
【0016】
4は前記サロンPC1と画像サーバ3とでネットワークを構成するWWWサーバにして、該WWWサーバ4には後述するカメラ5で撮影した被施術者のヘアスタイル画像を表示するための画像カルテCGI(Common Gateway Interface)が搭載されている。5は前記画像サーバに接続された顧客である被施術者のヘアスタイルや顔の画像をデジタル信号やアナログ信号として出力するカメラである。
【0017】
理美容椅子6には回転角度を検出するための角度センサ6aが取付けられており、画像サーバ3に対して理美容椅子6のカメラに対する角度信号を出力する。これは、被施術者のヘアスタイルを撮影する際に、正面からの写真か、側面からの写真か、あるいは、背面からの写真かを画像サーバ3に対して送信し、画像サーバ3において格納する際に、撮影した画像を分類して整理するためである。
【0018】
7は前記カメラ5よりの画像を取り込むための撮影スイッチにして、画像サーバ3と有線あるいは無線で接続されている。そして、撮影スイッチ7を操作することで、着座している被施術者のヘアスタイル画像が画像サーバ3に格納されることとなる。なお、前記角度センサ6aによって複数の画像を取り込む場合には、理美容椅子6が停止した位置毎に撮影スイッチ7を操作することは勿論のことである。
【0019】
8は前記WWWサーバ4と無線ランによって前記ネットワークに接続されるモバイル端末機にして、該モバイル端末機8はカメラ5よりの画像を前記画像サーバ3に取り込むためのタッチパネルとなっており、また、モバイル端末機8はキーボードやペン入力によって文字入力も行えるようになっている。なお、前記したタッチパネル方式に変えてモバイル端末機8に備えられたハードキー(機械的なスイッチ)としてもよい。」

(ウ)「【0021】
前記した画像サーバ3の記憶装置31には、顧客の画像ファイル、前記顧客カルテデータベースの顧客名とリンクされた顧客名、前記理美容師別施術画像データベースとリンクされた担当者および施術日時とリンクされた撮影日時や画像ファイル名、その他属性等が記憶された撮影画像データベース311と、前記撮影画像データベース311にカメラ5で撮影した顧客の画像を記録するための画像分類記録アプリケーション312と、前記理美容椅子6の角度センサ6aよりの出力(理美容椅子6の角度)を前記画像分類記録アプリケーション312に出力する椅子角度検知アプリケーション313と、顧客および理美容師が所有する無線タグよりの認識データを読み込み前記画像分類記録アプリケーション312に出力する無線タグ読込アプリケーション314と、前記カメラ5で撮影した顧客の画像を前記画像分類記録アプリケーション312に出力する画像撮影アプリケーション315とが格納されている。」

(エ)「【0028】
なお、前記撮影を行うに際して、顧客の正面、側面、背面等のように各方向からの画像が必要な場合には、例えば、理美容椅子6を正面に向けた状態、側面に向けた状態および背面に向けた状態で撮影を行う場合には、該理美容椅子6の角度センサ6aより椅子の角度が椅子角度検知アプリケーション313に記憶され、画像分類記録アプリケーション312は前記カメラ5より取り込んだ前記3つの位置での画像と理美容椅子6の回転角度とを関連付けして、その画像とファイル名とを撮影画像データベース311において記憶する。」

(オ)「【0032】
次に、モバイル端末機8による画像カルテCGIの動作を図5のフローチャートと共に説明する。
先ず、理美容師はモバイル端末機8を携帯し無線ランによってネットワークに接続し、予めWWWサーバ4の画像カルテCGIをモバイル端末機8のブラウザで読み込んだ画像カルテ画面を表示しておく。なお、画像カルテCGIは、CGIプログラムであるので、ブラウザからアクセスされるWWWサーバ内で必要な処理を実行して、その結果を元にHTMLを生成しブラウザに送信する処理を行っている。すなわち、カルテ画面はHTML形式であるが、以降の説明ではこのHTML生成処理の説明は省略する。
・・・< 中 略 >・・・
【0039】
また、理美容師が施術後の施術内容を記録したいと思った場合には、画像カルテのコメント(施術内容)の欄に、ペン入力等によって施術内容を記載することで、該記載内容が表示されると共に顧客カルテデータベース113のその他属性に記憶される(ステップS52)。」

(カ)「【0041】
また、前記したモバイル端末機8におけるカルテ画面の施術日変更ボタンをクリックすることで、以前に来店した時に撮影した撮影画像を表示することもできるので、該撮影画像を顧客に見せながらカウンセリングを行ったりすることも可能である。」

(1-2)引用例1記載の発明について
上記(ア)?(カ)の記載及び関連する図面を参照すると、次のことがいえる。

(a)上記(ア)段落【0001】の記載から、引用例1記載の発明は、理美容院における撮影画像による顧客管理装置についての発明である。
(b)上記(イ)段落【0014】の記載から、引用例1記載の理美容院における撮影画像による顧客管理装置はシステムとして表されている。
(c)上記(イ)段落【0015】および【0016】の記載から、引用例1記載の理美容院における撮影画像による顧客管理システムは、顧客である被施術者のヘアスタイルや顔の画像を記憶する画像サーバを備えている。
(d)上記(ウ)段落【0021】の記載から、画像サーバ3には、顧客の画像ファイル、前記顧客カルテデータベースの顧客名とリンクされた顧客名、前記理美容師別施術画像データベースとリンクされた担当者および施術日時とリンクされた撮影日時や画像ファイル名、その他属性等が記憶された撮影画像データベース311を備えている。
(e)上記(イ)段落【0017】および(エ)段落【0028】の記載から、画像サーバに記憶される画像は、被施術者のヘアスタイルを正面、側面、あるいは、背面から撮影したものである。
(f)上記(イ)段落【0019】の記載から、理美容院における撮影画像による顧客管理システムは、無線ランによってネットワークに接続されるモバイル端末機を備えている。
(g)上記(イ)段落【0019】および(オ)段落【0039】の記載から、モバイル端末機は、理美容師がペン入力等によって施術内容を顧客カルテデータベースに記憶させることができる。
(h)上記(カ)段落【0041】の記載から、モバイル端末は施術日変更ボタンをクリックすることで、来店した時に撮影した撮影画像を表示し、該撮影画像を顧客に見せながらカウンセリングを行うことができる。

上記(a)?(h)の事項を踏まえると、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「理美容院における撮影画像による顧客管理システムにおいて、
被施術者のヘアスタイルを正面、側面、あるいは、背面から撮影した画像を記憶した撮影画像データベースを有する画像サーバ、および
無線ランによってネットワークに接続されるモバイル端末機を備えており、
モバイル端末機は、施術日変更ボタンをクリックすることで、来店した時に撮影した撮影画像を表示し、該撮影画像を顧客に見せながらカウンセリングを行うと共に、
ペン入力等によって施術内容を顧客カルテデータベースに記憶させることができる
理美容院における撮影画像による顧客管理システム。」


(2-3)引用例2の発明について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-15056号公報(以下,「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(キ)「【0011】 写真保存欄(図5)は、2つ用意してあり、それぞれクリックして現れるダイアログから施術後の完成したヘアスタイルの写真を取り込んで表示できる。
【0012】 施術履歴欄(図6)は、自動的に入力出きる来店日、そして、施術内容、料金、担当者が入力できる。ここの、来店日を選択してクリックすることにより、1年前の施術の技術データや完成ヘアスタイルを呼び出すことができる。」
(ク)図6に示されている画面は、左上ウインドウに「お客様」や「氏名」欄、「住所」欄等があることから、各顧客のトップ画面であると認められる。
また、図6に示されている画面では、右上ウインドウに「年月日」欄、「施術内容」欄、「料金」欄、「担当」欄が有ることから、上記(キ)に記載されている「来店日を選択してクリックする」のは、上記「年月日」欄の例えば「00/04/14」をクリックすることであると認められる。

前記(キ)および(ク)によれば、引用例2には,次の事項が記載されているといえる。

<引用例2の記載事項>
「各顧客のトップ画面の並列された来店日が選択されることにより、選択された来店日の施術後の完成したヘアスタイルの写真が呼び出される」こと。

(2-4)引用例3の発明について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-149805号公報(以下,「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(ケ)「【0024】
【実施例】図1?2を参照して、本発明の美容院又は理容院管理システムを使用した、とくにそのヘアスタイルの閲覧方法を説明する。
【0025】会員10は特定の美容院又は理容院の顧客会員である。顧客会員は予め会員登録を行う。会員10には会員番号とパスワードが与えられる。それと同時に、会員カードを発行してもよい。
【0026】会員10の写真が美容院又は理容院において撮影される。写真は会員10のヘアスタイルを中心に撮影された写真であり、前後左右のヘアスタイルをセットで撮影したものが好ましい。撮影にはデジタルカメラが使用され、写真はデジタル方式の写真(写真データ)として保存される。写真データは過去に処理したヘアスタイルの写真として閲覧される。
【0027】図2には、パソコンの画面11に写真13a、13b、13c、13dをセットとして表示した例が示されている。この例において、写真13a?13dのセットは会員10の前後左右の写真で構成されている。画面11には写真13a?13dの他、会員10の会員番号と氏名が表示されている。」
(コ)「【0056】まず会員10の写真13a?13dをWebサーバー12に保存し、パソコン18や携帯電話20等のインターネット端末の画面上で閲覧可能な状態にする。ここでは、一般の人も閲覧できるように、パスワードなしで閲覧可能にすることもできる。
【0057】図7には、パソコン18の画面52に会員10の写真13a?13dが表示された状態が示されている。画面52には、会員10の写真13a?13dとともに会員番号を表示し、氏名は表示しない構成にする。画面52には、顧客会員の氏名記入欄54と送信ボタン56を設ける。顧客会員が閲覧している画面52上で、自己の氏名を氏名記入欄54に記入できるようになっている。送信ボタン56は、会員番号等の会員10のデータと顧客会員の氏名をWebサーバー12に送信する。美容院又は理容院は、会員10の会員番号に基づいて、ヘアスタイルを選択した顧客会員の氏名が確認できるようになっている。
(サ)「【0060】
【発明の効果】本発明によれば、美容院又は理容院以外の任意の場所において必要に応じてヘアスタイルの写真を閲覧できるため、美容院又は理容院に来店する前に、十分時間をかけて、会員が自己の過去のヘアスタイルに基づいて今回の処理内容を予め検討してから来店して、それを依頼することが可能となる。」
前記(ケ)?(サ)によれば、引用例3には、次の事項が記載されているといえる。

<引用例3の記載事項>
「サーバに保存された前後左右をセットで撮影したヘアスタイルを閲覧する方法であって、前後左右の写真を並列して表示する」こと。
「携帯電話を使って、前後左右をセットで撮影したヘアスタイルを閲覧し、自己の過去のヘアスタイルに基づいて、今回の処理内容を予め検討することを可能とする」こと。

(2-5)引用例4の発明について
特開2005-38293号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下の周知技術が記載されている。

(シ)「発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客データ管理方法及び顧客データ管理システムに関する。
更に詳しくは、例えば、美容室や理容室等にて、次回の施術の参考になる画像をカルテに収めることができるようにしたものに関する。
また、技術者が参考にしたいアングルで画像が表示できるようにしたものに関する。
更に、撮影した画像をカルテに収める作業が、コンピュータに負担をかけずに短時間でできるようにしたものに関する。
更にまた、撮影した画像をカルテに収める作業にて、カルテに記録された日付に対応する画像だけが選別されて表示されるようにして、選択作業を簡単にしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
美容室や理容室等においては、一般的に、顧客毎にカルテを作成して施術等の様子を記録し、次回の来店の際に今までの施術履歴が把握できるようにして、例えば、前回と同様の施術ができるようにするシステムが導入されている。近年、上記カルテはコンピュータを使用し、データベースを構築することで管理されている。」
(ス)「【0058】
本実施の形態では、施術後の頭部画像を撮影して動画ファイルを作成したが、これは限定するものではなく、カルテに収める動画は、例えば、施術前や施術中のものでも良い。」

前記(シ)および(ス)によれば、引用例4には、次の周知技術が記載されているといえる。

<引用例4の記載事項>
「美容室や理容室等にて、次回の施術の参考になる画像として施術中の動画をカルテに収めデータベースを構築する」こと。


(3)対比
(3-1)本願発明と引用例1発明とを対比する。
(ア)引用例1発明の「理美容院における撮影画像による顧客管理システム」は、「モバイル端末機」を用いて撮影画像を顧客に見せながらカウンセリングを行っているから、本願発明の「髪型決定支援システム」に対応する。
(イ)そして、引用例1発明の「画像サーバ」は、被施術者のヘアスタイルを正面、側面、あるいは、背面から撮影した画像を記憶し、この画像を無線ランネットワークに接続された「モバイル端末」で施術日変更ボタンをクリックすることで表示可能であるから、本願発明の「顧客ごとに過去にセットされた髪型の撮像データが記憶されたサーバ」と同様の動作を行っているとともに、「サーバに無線通信回線を介して表示端末機が接続され」ることと同様の構成を有し、また、「サーバは過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに」表示することと同様の動作を行っていると認められる。
そうすると、引用例1発明の「画像サーバ」は、本願発明の「サーバ」に相当する。
また、引用例1発明の「理美容院における撮影画像による顧客管理システム」は、本願発明の「顧客ごとに過去にセットされた髪型の撮像データが記憶されたサーバを備えた髪型決定支援システム」に相当する。
(ウ)引用例1発明の「モバイル端末機」は、無線ランネットワークに接続されており、また、画像サーバに格納された撮影画像を「モバイル端末機」を使って顧客に見せているから、本願発明のサーバに無線通信回線を介して接続された「表示端末機」に相当すると共に、「携帯性を有してサーバのデータベースに記憶されているファイルを閲覧可能に表示するディスプレイを有し」ていると認められる。
(エ)さらに、引用例1発明の「モバイル端末機」は、理美容師がペン入力等によって施術内容を顧客カルテデータベースに記憶させることや、来店した時に撮影した撮影画像を表示し、該撮影画像を顧客に見せながらカウンセリングを行うことを行っているから、本願発明の「店舗が使用するファイルの閲覧とファイルへのデータ入力との双方を実行できる店舗用表示端末機」に相当する。

(3-2)以上(ア)?(エ)のことから、本願発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
顧客ごとに過去にセットされた髪型の撮像データが記憶されたサーバを備えた髪型決定支援システムにおいて、サーバに無線通信回線を介して表示端末機が接続され、サーバは過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに表示することができ、表示端末機は携帯性を有してサーバのデータベースに記憶されているファイルを閲覧可能に表示するディスプレイを有し店舗が使用するファイルの閲覧とファイルへのデータ入力との双方を実行できる店舗用表示端末機とからなることを特徴とする髪型決定支援システム。

[相違点1]
本願発明は、過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに表示する際に、「複数の撮像データを並列して」表示しているのに対して、引用例1発明は、過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに表示することについて、具体的な表示形式については示されていない点。

[相違点2]
本願発明は、過去にセットされた髪型が複数の角度から撮像され撮像日ごとに表示する際に、「各顧客の表示のトップ画面に並列された撮像日が選択されることによって各撮像日の画面が開かれる」のに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。

[相違点3]
本願発明は、「過去にセットされた髪型のセット作業の動画を含むファイルとして記憶されたデータベースを有し」ているのに対して、引用例1発明は、「過去にセットされた髪型のセット作業の動画を含むファイルとして記憶されたデータベースを有し」ていない点。

[相違点4]
本願発明は、「顧客が使用するファイルの閲覧専用の顧客用表示端末機」を有しているのに対して、引用例1発明は、対応する構成を有していない点。

(3-3)当審の判断

上記各相違点について検討する。

(ア)[相違点1]について
引用例3の記載事項によれば、前後左右のヘアスタイル撮影した際に、それらのヘアスタイルを閲覧するときに、前後左右のヘアスタイルの写真を並列して表示することは、適宜行われている公知技術である。
そして、引用例1発明も被施術者のヘアスタイルを正面、側面、あるいは、背面から撮影した画像を記憶しているから、これらの画像を表示する際に、引用例3に記載された公知技術のように、撮影した画像を並列して表示することは、当業者が適宜為し得る事項である。

(イ)[相違点2]について
引用例2の記載事項によれば、各顧客のトップ画面の並列された来店日が選択されることにより、選択された来店日の施術後の完成したヘアスタイルの写真が呼び出されることは、公知の技術である。
そして、引用例2の「来店日」と、本願発明の「撮影日」は、同じ日を表していることを考慮すると、「各顧客の表示のトップ画面に並列された撮像日が選択されることによって各撮像日の画面が開かれる」ことは、公知の技術であると言える。
また、引用例1発明は「施術日変更ボタンをクリック」することにより、撮影日を選択しており、その際、引用例2に記載されているように、直接撮影日を指定することに、格別の困難性は認められないから、「施術日変更ボタンをクリック」することに換えて、「各顧客の表示のトップ画面に並列された撮像日が選択されることによって各撮像日の画面が開かれる」ようにすることは、当業者が必要に応じ適宜選択する事項である。

(ウ)[相違点3]について
引用例4の記載事項によれば、美容室や理容室等にて、次回の施術の参考になる画像として施術中の動画をカルテに収めデータベースを構築することは、周知の技術である。
そして、引用例1発明も、理美容院における撮影画像による顧客管理システムであり、顧客カルテを作成するものであるから、引用例1発明において、より詳しい施術内容を記録するために、引用例4に記載された周知技術のように、施術中の動画をデータベースに記憶するようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。

(エ)[相違点4]について
引用例3の記載事項によれば、携帯電話を使って、前後左右をセットで撮影したヘアスタイルを閲覧し、自己の過去のヘアスタイルに基づいて、今回の処理内容を予め検討することを可能とすることは、公知の技術である。
そして、引用例1発明において、顧客が事前にヘアスタイルを検討する際に、自己の過去のヘアスタイルを参考としたいと考えることは、当然想起される事項であるから、それを可能とするために、引用例3に記載された公知技術を適用し、「顧客が使用するファイルの閲覧専用の顧客用表示端末機」を設けることに格別の困難性は、認められない。

(オ)小括
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は,引用例1発明及び公知の技術、並びに、周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明は、引用例1発明及び公知の技術、並びに、周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)請求人の主張について
請求人は、平成26年8月8日付けの審判請求書において
「二、補正後の本願発明と引用文献との比較
(a)本出願人は、前回意見書において
「・・・顧客との美容師との「事前打ち合わせ」と「中途打ち合わせ」との双方での有用性を発揮することを指向しています。」
と主張したところ、これに対し審査官殿は、「・・・・そうすると、店舗用表示端末機は引用文献1に顧客用表示端末機は引用文献3に記載されている。・・・・2種類の表示端末機に相当する構成が開示されているのだから、出願人が主張するような使用形態は、当業者が商業上の目的に応じて適宜選択し得たものであると認められる。」とご指摘です。
しかし、美容院用のパソコンと携帯電話の2種類の表示端末機があったからと言って、それだけで本発明が主張する「中途打合わせ」(「事前打合わせ」も含めて)をすることは困難です。
このことを以下説明します。

(b)先ず、本発明でいう「打合わせ」とは何か。
・・・< 中 略 >・・・
(c)次に、この「中途打ち合わせ」において、必要とされる更なる特徴を説明します。
・・・< 中 略 >・・・
(d)加えて、本願の更なる特徴は、顧客用には当然にファイルの閲覧は可能としますが、この顧客用は「閲覧専用」としてデータの入力処理を行うことは不可能とし、入力データ処理等は、もっぱら「ファイルの閲覧とファイルへのデータ入力との双方を実行できる店舗用表示端末機」のみが実行できるものとすることです。
これは、上記の如く、顧客と美容師、理髪師とがそれぞれ顧客用表示端末と店舗用表示端末とを所有した場合、双方からの画面ファイルの閲覧を可能とした特性に合わせて、もし、当該ファイルへのデータ入力も可能とすると、顧客による入力は個々バラバラで規則性がないため、データ処理に統一性が失われてしまい、混乱の結果、再度の打合わせが困難となってしまうからです。
そこで、本願では、2台の端末機が、「顧客が使用するファイルの閲覧専用の顧客用表示端末機と店舗が使用するファイルの閲覧とファイルへのデータ入力との双方を実行できる店舗用表示端末機とからなる」ことを提案します。
2台の表示端末機を所有するが故に生じる問題に対し、これを有効に解決し得る手段です。
斯かる課題及び構成も引用文献1?4には存しません。
【結び】
上記に記載の如く、本発明には、a)必要な整理されたデータの共有、b)時系列的表示による最終形態の予測とその中途変更、c)その際の同一画面の表示とそこに至る操作の容易性、d)及びそのデータの安全維持管理、からなる(a)?(d)のいずれの要件もが要求され、それを満たす構成こそが必要とされるのです。
引用文献1、3には、このような中途打合わせという概念がなく、これを実行すべき構成もありません。
仮に、引用文献1の「サロンPC1」と引用文献3の「携帯電話20」をもち寄ったとしても、上記した如き内容の中途打ち合わせを行うことは不可能です。
そして、かかる概念は、美容、理容等の繊細な神経と心くばりが必要とされる作業において、革新的なものであり、上記引用文献1と3(及び2,4を加えて)から、上記(a)?(d)の要件を満たす構成が生まれるはずがなく、これは決して「当業者が商業上の目的に応じて適宜選択し得るもの」ではないものと思料します。
よって、本願は、引用文献1?4を基に当業者が容易に発明することができるものではなく、特許法第29条第2項の規定には該当しないものと思料します。
従って、本願発明は請求の趣旨の通り、原査定を取り消し、この出願は特許とすべきものであるとの審決を賜りたく、お願い致します。 」
旨主張している。
しかしながら、請求人が主張する「打合わせ」や「中途打ち合わせ」は、「髪型決定支援システム」の使用形態の一つにすぎないし、そもそも特許請求の範囲の請求項1に記載されたものではないから、請求人の上記主張は採用することはできない。

(5)進歩性についての結論
したがって、請求項1に記載された発明は、引用発明1及び公知の技術、並びに、周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
上記のとおり、請求項1に記載された発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-08 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-18 
出願番号 特願2009-37306(P2009-37306)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 裕子大野 朋也  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 川崎 優
小田 浩
発明の名称 髪型決定支援システム  
代理人 平山 俊夫  

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