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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C10M
管理番号 1307336
審判番号 不服2014-12460  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-30 
確定日 2015-11-04 
事件の表示 特願2011-515350「ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミドを含む潤滑組成物の使用法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月30日国際公開、WO2009/156393、平成23年 9月22日国内公表、特表2011-525563〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、特許法第184条の3第1項の規定により、2009年 6月23日(パリ条約による優先権主張:2008年 6月24日 欧州特許庁(EP))の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成24年 6月22日 出願審査請求
平成25年 7月19日付け 拒絶理由通知
平成25年11月25日 意見書・手続補正書
平成26年 2月26日付け 拒絶査定
平成26年 6月30日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成26年 9月 5日付け 前置報告書

第2 本願に係る発明について
本願に係る発明は、平成26年 6月30付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるものである。
「ピストンの清浄性を向上するため、内燃機関に、基油と、式(III):
[Y-CO[O-A-CO]_(n)-Z-R^(+)]_(m)pX^(q-) (III)
(但し、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは任意に置換された2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100であり、mは1?4であり、qは1?4であり、またpはpq=mとなるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合する、任意に置換された2価の架橋基であり、R^(+)はアンモニウム基であり、またX^(q-)はアニオンである。)
を有する1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体とを含む潤滑組成物を使用する方法。」

第3 原審の拒絶査定の概要
原審において、平成25年 7月19日付け拒絶理由通知書で概略以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由

1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・・(中略)・・

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・理由1,2
請求項1?3
引用文献等1
<備考>
引用文献1には、基油と、本願所定の式(III)と同じ化学構造式で表されるポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含む潤滑組成物を内燃機関において使用する方法が記載されており(特許請求の範囲及び実施例等を参照)、内燃機関において使用される潤滑組成物は、通常、ピストンの潤滑を目的の一つとするものであるから、上記引用文献1に記載された方法においても、本願発明と同じピストンの清浄性を向上するための上記潤滑組成物を内燃機関において使用する方法が自ずと行われているものと認められる。
また、上記内燃機関において使用される潤滑組成物を、TU5(CEC L-88-T02)や、ASTM D6984といった内燃機関用潤滑組成物に関する試験に供し、その試験結果を本願発明のように規定する程度のことにも特段の困難性は認められない。

・・(中略)・・
引 用 文 献 等 一 覧

1.国際公開第2007/128740号
・・(後略)」

<拒絶査定>
「この出願については、平成25年 7月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?3によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
・理由1,2について
出願人は、意見書において、「引用文献1はスラッジおよびワニス堆積物を低減させることに関するものであり、ピストン堆積物の低減に関するものではない。スラッジおよびワニス堆積物はピストン堆積物とは化学的に非常に相違するものであり、これら異なるタイプの堆積物は非常に異なった方法によって形成されるものであることを知るいわゆる当業者は、内燃機関内のピストン堆積物を低減しようとする場合、引用文献1を参照することはないのである。」と主張しているが、先の拒絶理由通知書にも記載したとおり、先の拒絶理由通知で引用した引用文献1に記載された潤滑組成物と、本願発明の潤滑組成物とは同じ構成を有しており、また、内燃機関のエンジンオイルとして用いる点も同じであるから、上記引用文献1に「ピストンの清浄性が向上するため」という記載はなくても、上記引用文献1に記載された潤滑組成物を使用した際には、スラッジ及びワニス堆積物だけでなく、本願発明の潤滑組成物を使用した場合と同様に、ピストン堆積物も低減されるものと認められ、したがって、上記引用文献1に記載された潤滑組成物を使用する方法においても、本願発明の方法と同じ方法が自ずと行われていると認められる。
さらに、内燃機関用潤滑組成物を、これを評価するASTM等の適当な試験において評価することも当業者であれば適宜になし得ることにすぎない。
よって、本願請求項1,3,4に係る発明は、依然として先の拒絶理由通知で引用した引用文献1に記載された発明であり、また、本願請求項1?5に係る発明は、依然として上記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
・・(後略)」

第4 当審の判断
当審は、
上記拒絶査定の理由1,2により、本願は、特許法第49条第2号に該当するから、拒絶すべきものである、
と判断する。以下詳述する。

1.刊行物に記載された事項
本審決で引用する刊行物は、以下のとおりである。

刊行物:国際公開第2007/128740号 (原査定における「引用文献1」) (以下、上記刊行物を「引用例」という。)

上記引用例には、以下の事項が記載されている(当審注;各摘示事項の訳文として、引用例の内容を国内公表した公表特許公報である特表2009-535473号公報の該当箇所の記載を採用し、『』にて併記する。)。

(a)
「 C L A I M S

1. A lubricating oil composition comprising lubricating oil base oil, one or more anti-wear additives and one or more poly (hydroxycarboxylic acid) amide salt derivatives preparable by reaction of an amine and a poly (hydroxycarboxylic acid) of formula (I)
Y-CO[O-A-CO] n -OH (I) wherein Y is hydrogen or optionally substituted hydrocarbyl group, A is a divalent optionally substituted hydrocarbyl group and n is from 1 to 100, preferably from 1 to 10, with an acid or a quaternizing agent .」

6. Lubricating oil composition accordingly to any one of Claims 1 to 5, wherein the one or more poly (hydroxycarboxylic acid) amide salt derivatives comprise a compound of formula (III) :
[Y-CO [O-A-CO] _(n) -Z-R^( +) ] _(m) pX^( q-) (III)
wherein Y is hydrogen or optionally substituted hydrocarbyl group, A is a divalent optionally substituted hydrocarbyl group, n is from 1 to 100, preferably from 1 to 10, m is from 1 to 4 , q is from 1 to 4 and p is an integer such that pq = m, Z is an optionally substituted divalent bridging group which is attached to the carbonyl group through a nitrogen atom, R ^(+) is an ammonium group and X^( q- )is an anion. 」

13. Use of a lubricating oil composition according to any one of Claims 1 to 11 in order to reduce deposits m an internal combustion engine. 」(33頁1行?35頁10行)
『【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑基油;1種以上の耐摩耗添加剤;並びにアミン及び式(I):
Y-CO[O-A-CO]_(n)-OH (I)
(但し、Yは水素又は置換又は非置換のヒドロカルビル基であり、Aは置換又は非置換の2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100、好ましくは1?10である)
のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と酸又は四級化剤との反応により製造できる1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含有する潤滑油組成物。

【請求項6】
前記1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体が、式(III):
[Y-CO[O-A-CO]_(n)-Z-R^(+)]_(m)pX^(q-) (III)
(但し、Yは水素又は置換又は非置換のヒドロカルビル基であり、Aは置換又は非置換の2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100、好ましくは1?10であり、qは1?4であり、pはpq=mとなるような整数であり、Zは窒素原子を介してカルボニル基に結合した、置換又は非置換の2価の架橋基であり、R^(+)はアンモニウム基であり、またX^(q-)はアニオンである)
の化合物を含む請求項1?5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。

【請求項13】
内燃機関内の沈着物を低減するため、内燃機関に請求項1?11のいずれか1項に記載の潤滑油組成物を使用する方法。』

(b)
「It will be appreciated that the same lubricating oils are not always used by consumers as internal combustion engine oils in their vehicles. As different lubricating oil compositions have differing abilities to suppress internal combustion engine fouling, this may lead to the build-up of deposits such as sludge, varnish and soot-related deposits m an internal combustion engine .
Sludge and varnish deposits form through complex interactions of lubricating oil composition components with contaminants under differing engine conditions. Under low temperature operating conditions, such as short automotive trips, a lubricating oil composition may not get hot enough for contaminants such as water and fuel components to evaporate. At high temperatures a lubricating oil composition can oxidise, producing reactive groups and thickening. These conditions promote reactions with unburnt and partially burnt fuel, water, soot, acids, blow-by gases and other contaminants to form sludges and varnish. Also, if high levels of soot are not efficiently dispersed, then the soot particles can aggregate forming extended structures and gels which increase the low shear viscosity of a lubricating oil composition. Such materials can build up to coat engine components and block vital oilways, potentially causing oil starvation and wear. It therefore highly desirable to develop lubricating oil compositions which not only exhibit outstanding abilities to suppress internal combustion engine fouling during continual use, but which also exhibit excellent cleaning performance in reducing deposits in the oil circuit of an internal combustion engines.」(2頁4?29行)
『【0006】
自動車の内燃機関潤滑油には、消費者は必ずしも同じ潤滑油を使用しないものと認識されている。潤滑油組成物が異なれば、内燃機関の汚染抑制能力は異なるので、内燃機関内にスラッジ、ワニス及び煤関連沈着物が堆積する可能性がある。
【0007】
スラッジやワニス沈着物は、種々のエンジン条件下で潤滑油組成物の成分と汚染物との複雑な相互作用により生成する。短時間の運転のような低温操作条件下では、潤滑油組成物は、水や燃料成分のような汚染物を蒸発させるのに十分熱くすることはできない。高温では潤滑油組成物は、酸化して反応基を生成すると共に、濃厚化する可能性がある。これらの条件は、未燃焼又は部分酸化した燃料、水、煤、酸、ブローバイガス、その他の汚染物との反応を促進して、スラッジやワニスを形成する。また、高レベルの煤が効率的に分散しないと、煤粒子は凝集して大きな構造やゲルを形成し、潤滑油組成物の低い剪断粘度を増大させる可能性がある。これらの物質は堆積して、エンジン部品を被覆したり、活動する油の通路を閉塞し、潜在的に油の供給停止や摩耗を起こす可能性がある。
【0008】
したがって、連続使用中、内燃機関の汚染を抑制する顕著な能力ばかりでなく、内燃機関の油回路中の汚染低減に優れた性能も示す潤滑油組成物を開発することが非常に望まれている。』

(c)
「 There has been surprisingly found in the present invention a lubricating oil composition for particular use in internal combustion engines, which lubricating oil composition not only suppresses internal combustion engine fouling and which also exhibits advantageous cleaning performance in the reduction of deposits such as sludge and varnish.」(3頁19?25行)
『【0011】
本発明では、意外にも内燃機関の汚染を抑制するばかりでなく、スラッジやワニスのような沈着物の低減に有利な清浄化性能も示す特に内燃機関用の潤滑油組成物が見出された。』

2.本願発明についての検討

(1)引用例に記載された発明
引用例には、摘示(a)における請求項1を引用する請求項6によれば、
「潤滑基油;1種以上の耐摩耗添加剤;並びに式(III):
[Y-CO[O-A-CO]_(n)-Z-R^(+)]_(m)pX^(q-) (III)
(但し、Yは水素又は置換又は非置換のヒドロカルビル基であり、Aは置換又は非置換の2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100、好ましくは1?10であり、qは1?4であり、pはpq=mとなるような整数であり、zは窒素原子を介してカルボニル基に結合した、置換又は非置換の2価の架橋基であり、R^(+)はアンモニウム基であり、またX^(q-)はアニオンである)を含む1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含有する潤滑油組成物」が記載され、また、摘示(a)における【請求項13】によれば「内燃機関内の沈着物を低減するため、内燃機関に前記潤滑油組成物を使用する方法」が記載されているといえるから、上記引用例には、
「内燃機関内の沈着物を低減するため、内燃機関に、潤滑基油;1種以上の耐摩耗添加剤;並びに式(III):
[Y-CO[O-A-CO]_(n)-Z-R^(+)]_(m)pX^(q-) (III)
(但し、Yは水素又は置換又は非置換のヒドロカルビル基であり、Aは置換又は非置換の2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100、好ましくは1?10であり、qは1?4であり、pはpq=mとなるような整数であり、Zは窒素原子を介してカルボニル基に結合した、置換又は非置換の2価の架橋基であり、R^(+)はアンモニウム基であり、またX^(q-)はアニオンである)を含む1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体を含有する潤滑油組成物を使用する方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているものといえる。

(2)対比・検討

ア.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
(ア)引用発明の「潤滑基油」、「潤滑油組成物」、「潤滑油組成物を使用する方法」及び「式(III):
[Y-CO[O-A-CO]_(n)-Z-R^(+)]_(m)pX^(q-) (III)
(但し、Yは水素又は置換又は非置換のヒドロカルビル基であり、Aは置換又は非置換の2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100、好ましくは1?10であり、qは1?4であり、pはpq=mとなるような整数であり、Zは窒素原子を介してカルボニル基に結合した、置換又は非置換の2価の架橋基であり、R^(+)はアンモニウム基であり、またX^(q-)はアニオンである)を含む1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体」は、それぞれ、本願発明の「基油」、「潤滑組成物」、「潤滑組成物を使用する方法」及び「式(III):
[Y-CO[O-A-CO]_(n)-Z-R^(+)]_(m)pX^(q-) (III)
(但し、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは任意に置換された2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100であり、mは1?4であり、qは1?4であり、またpはpq=mとなるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合する、任意に置換された2価の架橋基であり、R^(+)はアンモニウム基であり、またX^(q-)はアニオンである。)を有する1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体」に相当する。
(イ)引用発明の「潤滑基油;1種以上の耐摩耗添加剤;並びに式(III)…含有する」は、本願発明の「基油と、式(III)…とを含む」に相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、本願発明と引用発明とは、
「内燃機関に、基油と、式(III):
[Y-CO[O-A-CO]_(n)-Z-R^(+)]_(m)pX^(q-) (III)
(但し、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは任意に置換された2価のヒドロカルビル基であり、nは1?100であり、mは1?4であり、qは1?4であり、またpはpq=mとなるような整数であり、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合する、任意に置換された2価の架橋基であり、R^(+)はアンモニウム基であり、またX^(q-)はアニオンである。)
を有する1種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド塩誘導体とを含む潤滑組成物を使用する方法」
の点で一致し、下記の点で一応相違する。

相違点:本願発明は、ピストンの清浄性を向上するために内燃機関に潤滑組成物を使用するのに対し、引用発明は、内燃機関内の沈着物を低減するために内燃機関に潤滑油組成物を使用するものの、ピストンの清浄性を向上するために使用するものであるか不明である点。

イ.検討
上記相違点について検討する(下線は合議体において付した。)。
(ア)摘示(c)の「本発明では、意外にも内燃機関の汚染を抑制するばかりでなく、スラッジやワニスのような沈着物の低減に有利な清浄化性能も示す特に内燃機関用の潤滑油組成物が見出された。」からみて、引用発明は内燃機関におけるスラッジやワニスのような沈着物の低減を目的とするものであるが、内燃機関のピストンにスラッジやワニスが付着することは当業者に自明の事項(要すれば、特開2002-161292号公報「【0010】(B)サリチル酸塩清浄剤清浄剤は、エンジン内でのピストン付着物、例えば、高温ワニスおよびラッカー付着物の生成を低減させる添加剤である」、特開2000-53986号公報「【0003】例えば、潤滑油に清浄剤を添加することで、カーボンやスラッジがピストンに付着することを防止し、オイル上がりによる消費量の増加を防止することは、通常行われている。しかし、エンジン稼働初期段階のレベル以下にすることは困難であった。」、特開平11-92777号公報「【0002】【従来の技術】内燃機関の操作は、クランクケース中およびエンジンの油管中のピストンワニスおよびスラッジの形成を伴う。スラッジおよびワニスは、クランクケースオイルのエンジンを十分に減摩する能力を大きく制限する。さらに、捕らえられた水を有するスラッジは、エンジン中での錆の形成に寄与する傾向がある。内燃機関中でのワニスおよびスラッジをなくすために、潤滑油に分散剤の形で添加剤を添加することが長い間習慣となっている。分散剤はワニスおよびスラッジの成分を油全体に分散するよう機能し、それによりそれらの蓄積を防ぐ。」及び特開2006-328403号公報「【0006】(洗浄剤)潤滑油組成物は少なくとも1つの洗浄剤を含む。洗浄剤は、エンジン内における、例えば高温ワニス及びラッカー沈着物のようなピストン沈着物の形成を減少させる添加剤であり、酸を中和させる性質を有し、懸濁液中に微粉状の固体を保持しうる。それは、界面活性剤とも呼ばれる酸性の有機化合物の金属塩である金属“石鹸”を基剤とする。」を参照)であり、引用発明は、ピストン沈着物を低減するため、ひいては、ピストンの清浄性を向上するために潤滑油組成物を使用する方法といえるから、本願発明と引用発明とはこの点で実質的に相違するところがない。また、前記自明の事項に基づいて、引用発明を内燃機関内のピストン沈着物の低減、すなわち、ピストンの清浄化向上のために用いることは、当業者が容易になし得ることである。そして本願発明の効果については、当業者が予測できる程度のものである。
(イ)検討のまとめ
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるし、また、当業者が、引用例に記載された発明及び上記自明の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成26年 6月30日付け審判請求書(6頁1?18行)において、引用文献1記載の堆積物は、本願発明の対象である堆積物とは異なるタイプの堆積物であるから、当業者が内燃機関内のピストンの堆積物を軽減する課題に直面した場合、引用文献1を参照することはない旨主張する。
しかしながら、引用例に記載されているように、内燃機関内において、ピストンを含めた部材に対するスラッジやワニスの付着を低減するために、本願発明に係る潤滑組成物はすでに知れていたのであるから、本願発明が、引用例に記載された発明であり、また引用例に記載された発明から容易になされたものであることは、すでに上記(2)イで説示したとおりである。

(4)当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明及び上記自明の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
したがって、本願は、他の請求項に係る各発明につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-10 
結審通知日 2015-06-11 
審決日 2015-06-24 
出願番号 特願2011-515350(P2011-515350)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10M)
P 1 8・ 113- Z (C10M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂井 哲也▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 豊永 茂弘
菅野 芳男
発明の名称 ポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミドを含む潤滑組成物の使用法  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 沖本 一暁  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
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