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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1307614
審判番号 不服2014-2667  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-12 
確定日 2015-11-13 
事件の表示 特願2010-535311「モチーフGX1X2G、PX1X2P、またはPX1X2Kを有するテトラペプチドを含有するパーソナルケアおよび化粧品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月 4日国際公開、WO2009/068351、平成23年 2月17日国内公表、特表2011-504894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年10月1日(パリ条約による優先権主張 2007年11月30日欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成24年10月25日付けの拒絶理由通知書に対して、平成25年1月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月9日付けで拒絶査定されたのに対して、平成26年2月12日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正書が提出され、同年3月17日に審判請求書に係る手続補正書(方式)が提出され、同年8月29日付け審尋に対して同年11月28日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その記載は以下のとおりである。

「a)GEPG(配列番号1)ペプチド、GPPG(配列番号2)ペプチド、GEKG(配列番号3)ペプチド、PGPP(配列番号4)ペプチド、およびPKEK(配列番号5)ペプチドの群から選択されるテトラペプチド、これらの誘導体、およびこれらの混合物の群から選択される、安全で有効な量のテトラペプチドと、
b)ヒドロキシ酸、ラジカルスカベンジャー、UV吸収剤、ビタミン、抗老化活性物質、バリア脂質、皮膚落屑活性物質、抗アクネ活性物質、タンニング活性物質、抗セルライト活性物質、抗炎症活性物質、抗菌活性物質、抗真菌活性物質、皮膚美白剤、皮膚活性化剤、皮膚治癒剤、保湿活性物質、およびこれらの混合物からなる群から選択される、安全で有効な量の少なくとも1つの付加的な活性成分と、
c)皮膚科学的に許容可能なキャリアと
を含む局所パーソナルケアおよびスキンケア組成物。」(以下、「本願発明」という。)

第3 先願発明
1 先願
原査定の拒絶の理由で先願1として示された特願2009-515450号は、本願の優先日(2007年11月30日)より前の、2007年6月12日を国際出願日とする外国語特許出願PCT/US2007/013748号(以下、「先願」という。)であって、本願の出願後の2007年12月21日に国際公開(国際公開第2007/146269号)されたものである。

2 先願明細書の記載事項
先願の国際出願日における明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、先願明細書の記載として、国際公開第2007/146269号の記載箇所を摘示する。また、先願明細書は英文であるため、先願の翻訳文に相当する特表2009-539987号公報(以下、「参照公報」ともいう。)の記載を参考に当審による和訳を記載する。(括弧書きの摘示箇所に続き、参照公報の対応箇所の段落番号を記載した。下線は当審で付した。)

(1a)「【請求項1】
式GxxG(但し、Gはグリシンであり、xは可変アミノ酸である)を含む細胞外マトリックスタンパク質の生成を誘導することのできるテトラペプチド。
【請求項2】
テトラペプチドは、さらに、式GExG(但し、Eはグルタミン酸である)を含んでいる請求項1に記載のテトラペプチド。 ……
【請求項3】
テトラペプチドは、SEQ ID NO:5又はSEQ ID NO:8である請求項2に記載のテトラペプチド。
……
【請求項8】
細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲンである請求項1に記載のテトラペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載の少なくとも1のテトラペプチドと、薬学的に認められたキャリアを含んでいる組成物。」(21頁Claims1?3、8、9;参考公報の【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項3】、【請求項8】、【請求項9】)

(1b)「[0002] 本発明は、GxxG又はPxxPのアミノ酸モチーフを有するテトラペプチドに関するものであり、ここで、G(グリシン)とP(プロリン)は一定で、xは可変のアミノ酸である。本発明はまた、フレームシフト活性テトラペプチドに関するものであり、テトラペプチドは、つまりECMタンパク質の中のGxxG又はPxxPのテトラペプチドから1フレームシフトしたテトラペプチド配列である。特に、本発明は、GxxG、PxxP又はフレームシフト活性ペプチドに関するものであり、細胞外マトリックスタンパク質の生成を刺激し、切り傷のできたヒトの皮膚表皮細胞単層の傷閉鎖を増進する。ペプチド組成物は、ダメージを受けた皮膚を治したり、健康的な皮膚を維持する製剤に用いることができる。」(1頁6?13行;参照公報の【0002】)

(1c)「[0009] ……GxxGモチーフ又はPxxPモチーフを有するテトラペプチドのコンビナトリアルライブラリーを生成することにより、様々な生物活性のあるテトラペプチドを同じ製造工程で作製する(例えば、GEPG、GPEG、GPPG及びGEEG)。……開示されたテトラペプチドを単独で、又は、組合せで含む組成物は、スキンケアマーケット、例えば、これに限定されるものではないが、肌のしわ、色調、堅さやたるみを解決するマーケットで有用である。開示されたテトラペプチドによりコラーゲンを刺激することによって、ダメージを受けた肌や、年取った肌の健康と外見を大きく改善することができる。」(3頁1?10行;参照公報の【0009】)

(1d)「[0023] 本発明の実施形態は、ECMタンパク質の生成を刺激するテトラペプチドを用いて、ダメージを受けた皮膚を修復したり、健康的な肌を維持することを促進する方法に関する。本方法には、一般的に皮膚細胞をペプチドを含む組成物と接触させることに関する。組成物は、エアロゾル、エマルション、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、発泡体、その他の薬学的に認められている形態とすることができる。一般に、薬学的に認められている形態には、人の肌への使用に適切な認められたキャリア、例えば美容上認められたキャリアや皮膚科学上認められたキャリアを含むことができる。組成物は、その他の生物活性剤、たとえばレチノイドや他のペプチドを含んでもよい。合成物は薬学上認められたキャリアやアジュバンドを含むこともできる。接触ステップ法は、インビボ、インサイチュ、インビトロ、又は当該分野で知られたいかなる方法でも行うことができる。最も好ましくは、接触ステップは、促進反応を引き起こすのに十分な濃度で局所的に行うことである。組成物中のペプチド濃度は、約0.01μg/mLから約100μg/mL、約0.1μg/mLから約50μg/mL、約0.1μg/mLから約1μg/mLとすることができる。接触ステップは、哺乳動物、猫、犬、牛、馬、豚、又は人に行なうことができる。ECMタンパク質の生成を促進する望ましい組成物は、SEQ ID NO:8を含み、さらに望ましくは、少なくとも1の他のテトラペプチドの異種混合物中にSEQ ID NO:8を含む組成物である。最も望ましい実施形態では、組成物中にある個々のテトラペプチドは、少なくとも48時間以上、コラーゲン生成を維持させる。」(5頁9?27行;参照公報の【0023】)

(1e)「実施例3:コラーゲン生成を刺激する反復配列の同定
[0034]実施例1と2で同定されたいくつかの配列は、標準的なペプチド化学を用いて合成され、皮膚繊維芽細胞からコラーゲンの刺激のために分析された。ヒト表皮繊維芽細胞は、96ウェルプレートで、37℃、CO2濃度5%、24時間及び48時間低濃度の血清成長因子(……)を加えてさらに最終ペプチド濃度50μg/mLとなるようサンプルペプチドを含ませた完全細胞培養培地(……)150μL中でインキュベートした。各ウェルに10,000で種付けした。インキュベートの後、100μLの培地サンプルを各ウェルから取り出し、コラーゲン合成を分析した。」(10頁15?25行;参照公報の【0034】)

(1f)「


」(8?9頁;参照公報の【0030】)

(1g)「[0039] サンプル量が100μLであるため、μg/mLで表される各サンプル中で生成されたコラーゲンの濃度は、検出されたコラーゲン量に10を掛けることにより決定される。試験された全てのサンプルの結果を、表5にまとめている。


[0040] 試験された全てのテトラペプチドは、溶解性を有するコラーゲンの生成を刺激した。試験された配列のうち、位置2にグルタミン酸を有するGxxGテトラペプチドは、24時間と48時間の両方で最もコラーゲンを刺激した。これらの配列は、H11(GEPG; SEQ ID NO:5)、H14 (GEKG; SEQ ID NO:8)、及び、H38 (GEKG; SEQ ID NO:8)である。ペプチドは、最初に50μg/mLのペプチド濃度で検査した。コラーゲン生成を刺激する効果的な濃度を調べるために、H38と同様にH14(SEQ ID NO:8)も0.3μg/mLで試験した。表5に示すように、H38誘導コラーゲン刺激は、低濃度でも減少することはなく、SEQ ID NO:8の最大刺激濃度は0.3μg/mL、又は、それより低いことが示されている。」(14頁下から3行目?16頁2行;参照公報の【0039】?【0040】)

3 先願発明
ア 上記(1a)によれば、先願明細書の請求項3は、請求項1を引用するものである請求項2を引用しており、表1((1f))及び[0040]((1g))に記載されるとおり、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:8の配列はそれぞれGEPG、GEKGであるから、請求項3を書き下すと、
「テトラペプチドが、GEPG又はGEKGであり、さらに、式GExG(但し、Gはグリシン、Eはグルタミン酸であり、xは可変アミノ酸である)を含む細胞外マトリックスタンパク質の生成を誘導することのできるテトラペプチド。」
となる。

イ そして、請求項8((1a))の記載からコラーゲンは細胞外マトリックスタンパク質であることが明らかであるところ、[0034]((1e))及び[0040]((1g))には、実施例3として、ヒト表皮繊維芽細胞を、サンプルペプチドを含ませた完全細胞培養培地でインキュベートしてコラーゲン合成を分析したところ、試験したテトラペプチドのうち、最もコラーゲンの生成を刺激した配列は、H11(GEPG; SEQ ID NO:5)、H14 (GEKG; SEQ ID NO:8)、及び、H38 (GEKG; SEQ ID NO:8)であったことが記載され、更に、「表5:ペプチドにより誘導されたコラーゲン合成」((1g))には、サンプルH15(表5において「名称」が「H15」であるペプチド)、すなわち、SEQ ID NOs:5,6,7,8の組み合わせ(GEPG,GAPG,GPPG,GEKGの組み合わせ)では、48時間の時点で43μg/mLのコラーゲンの生成を刺激したことが示されている。

ウ 上記イのとおり、サンプルH15のペプチド(GEPG,GAPG,GPPG,GEKGの組み合わせ)は、上記アで請求項3を書き下した「テトラペプチドが、GEPG又はGEKGであり、さらに、式GExG(但し、Gはグリシン、Eはグルタミン酸であり、xは可変アミノ酸である)を含むもの」に該当するので、先願明細書には、細胞外マトリックスタンパク質の生成を誘導することが実施例で実際に確認されたものとして、請求項3のテトラペプチドが記載されている。

エ そうすると、請求項1のテトラペプチドが請求項3のものである場合の、請求項9によれば、先願明細書には、

「テトラペプチドが、GEPG又はGEKGであり、さらに、式GExG(但し、Gはグリシン、Eはグルタミン酸であり、xは可変アミノ酸である)を含むテトラペプチドであって細胞外マトリックスタンパク質の生成を誘導することのできるテトラペプチドと、薬学的に認められたキャリアとを含んでいる組成物。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。

第4 対比
本願発明と先願発明とを対比する。
1 先願発明の「テトラペプチドが、GEPG又はGEKGであ」ることは、本願発明の「a)GEPG(配列番号1)ペプチド、GPPG(配列番号2)ペプチド、GEKG(配列番号3)ペプチド、PGPP(配列番号4)ペプチド、およびPKEK(配列番号5)ペプチドの群から選択されるテトラペプチド」のうち、「GEPG(配列番号1)ペプチド」又は「GEKG(配列番号3)ペプチド」を選択したものに相当するので、a)成分のテトラペプチドについて本願発明と先願発明とで差違はない。

2 先願発明の「薬学的に認められたキャリア」と本願発明の「c)皮膚科学的に許容可能なキャリア」とは、組成物に含まれるキャリアである点で共通する。

3 そうすると、本願発明と先願発明とは、
「a)GEPG(配列番号1)ペプチド、GPPG(配列番号2)ペプチド、GEKG(配列番号3)ペプチド、PGPP(配列番号4)ペプチド、およびPKEK(配列番号5)ペプチドの群から選択されるテトラペプチド、これらの誘導体、およびこれらの混合物の群から選択される、テトラペプチドと、
c)キャリアと
を含む組成物。」の発明である点で一致し、
次の点で形式上、相違する。

<相違点1>
テトラペプチドの配合量について、本願発明は「安全で有効な量」と特定されているのに対して、先願発明は特定されていない点。

<相違点2>
本願発明は、「b)ヒドロキシ酸、ラジカルスカベンジャー、UV吸収剤、ビタミン、抗老化活性物質、バリア脂質、皮膚落屑活性物質、抗アクネ活性物質、タンニング活性物質、抗セルライト活性物質、抗炎症活性物質、抗菌活性物質、抗真菌活性物質、皮膚美白剤、皮膚活性化剤、皮膚治癒剤、保湿活性物質、およびこれらの混合物からなる群から選択される、安全で有効な量の少なくとも1つの付加的な活性成分」を含むのに対して、先願発明は、付加的な活性成分を含むことが特定されていない点。

<相違点3>
キャリアについて、本願発明は、「皮膚科学的に許容可能なキャリア」であるのに対して、先願発明は、「薬学的に認められたキャリア」である点。

<相違点4>
組成物について、本願発明は、「局所パーソナルケアおよびスキンケア組成物」であるのに対して、先願発明は、そのような特定がない点。

第5 当審の判断
上記形式上の相違点について検討する。
1 <相違点1>について
先願明細書の(1b)の「本発明は……ペプチドに関するものであり、ペプチド組成物は……健康的な皮膚を維持する製剤に用いることができる。」との記載のとおり、先願発明は「健康的な皮膚を維持する製剤に用いること」を意図しており、先願発明の意図する用途からして先願発明の成分であるテトラペプチドについて「安全で有効な量」配合することは自明な事項である。
したがって、<相違点1>は実質的な相違点ではない。

2 <相違点3>について
先に相違点3について検討する。
先願明細書の(1d)には「本発明の実施形態は、ECM(審決注:細胞外マトリックス)タンパク質の生成を刺激するテトラペプチドを用いて、ダメージを受けた皮膚を修復したり、健康的な肌を維持することを促進する方法に関する。本方法には、一般的に皮膚細胞をペプチドを含む組成物と接触させることに関する。組成物は、……薬学的に認められている形態とすることができる。一般に、薬学的に認められている形態には、人の肌への使用に適切な認められたキャリア、例えば美容上認められたキャリアや皮膚科学上認められたキャリアを含むことができる。組成物は、その他の生物活性剤、たとえばレチノイドや他のペプチドを含んでもよい。」と記載されており、薬学的に認められている形態において含まれるキャリアとして、美容上認められたキャリアや皮膚科学上認められたキャリアを用いることが明記されている。
したがって、<相違点3>は実質的な相違点ではない。

3 <相違点2>について
上記2で示した(1d)の記載のとおり、先願発明は、「その他の生物活性剤、たとえばレチノイド」を含む態様を包含している。
ここで、レチノイドは下記周知文献Aの(Aa)に記載のとおりの皮膚における生理作用を各種有しており、レチノイドがにきびやしわの治療薬として使用されることは周知である。

周知文献A:日本化粧品技術者会 編、「化粧品事典」、丸善、平成15年12月15日、852頁、「レチノイン酸」の項(下線は当審で付した。)
(Aa)「レチノイン酸[retinoic acid]
分子量300.4のレチノール^(*)の代謝物で,立体配座の異なる全trans-レチノイン酸(ATRA),13-cis-レチノイン酸,9-cis-レチノイン酸などの異性体が存在する.いずれも発生や細胞の分化など多様な生理活性を示すが,れは生体内に存在する数種類のレチノイン酸レセプターとよばれる特定のタンパク質を介して作用するので,レセプターの分布や発現時期により生理活性が制御されている.全trans-レチノイン酸は別名トレチノインとよばれ,概してこれらの異性体の中でもっとも活性が高い.同様の作用を有する誘導体が各種合成され,それらを総称してレチノイドとよぶ.レチノイドの皮膚における生理作用としては,角層剥離^(*)作用によるターンオーバー^(*)の促進,ケラチノサイト^(*)(表皮角化細胞)の増殖促進および分化誘導による表皮肥厚,真皮の線維芽細胞*のコラーゲン線維^(*)産生促進,また皮脂腺機能の抑制による皮脂の分泌低下などがよく知られている.さらには上記のケラチノサイト増殖とターンオーバー^(*)に伴い,表皮基底層周囲に存在するメラニン^(*)顆粒を排出して色素沈着^(*)を改善するとも考えられている.こうした作用から,米国ではトレチノインのクリームまたはジェル製剤が,にきびやしわの治療薬として使用されている」

してみると、先願明細書には、にきび治療などの活性を有するレチノイドを成分として含む先願発明が記載されているといえ、その際、安全で有効な量のレチノイドが配合されることは当然のことである。
一方、本願明細書【0042】には「有用な抗アクネ活性物質の例として……レチノイド、例えばイソトレチノイン」と記載されている。
そうすると、先願発明は、本願発明の「b)付加的な活性成分」として特定されるもののうち、少なくとも、にきび治療薬、すなわち「抗アクネ活性物質」であるレチノイドを選択したものに相当するといえる。
したがって、<相違点2>は実質的な相違点ではない。

4 <相違点4>について
ア 「スキンケア組成物について」
先願明細書の(1c)には、開示されたテトラペプチドを含む組成物は、肌のしわ、色調、堅さやたるみを解決するスキンケアマーケットで有用であること、開示されたテトラペプチドによりコラーゲンを刺激することによって、ダメージを受けた肌や、年取った肌の健康と外見を大きく改善することができることが記載されている。かかる記載は、先願発明の組成物のスキンケア用途への適用を開示するものといえる。
そして、先願明細書の(1d)の「本方法には、一般的に皮膚細胞をペプチドを含む組成物と接触させることに関する」及び「接触ステップは、促進反応を引き起こすのに十分な濃度で局所的に行う」との記載から、先願発明が局所適用されるものであることも明らかである。
してみると、先願明細書には、局所適用するスキンケア組成物である先願発明が記載されているといえる。

イ 本願発明の「パーソナルケア組成物」について
本願発明において、パーソナルケアとスキンケアの違いが必ずしも明確とはいえないところ、本願明細書において、「パーソナルケア製品」についての説明として、以下のように記載されている。(下線は当審で付した。)

「【0025】
本明細書で使用される「化粧品」は、クリーム、ローション、ジェル、軟膏、乳剤、コロイド、溶液、懸濁液、コンパクト、固体、ペンシル、スプレー式配合物、ブラシ式配合物などの形態にかかわらず、口紅、マスカラ、ルージュ、ファンデーション、頬紅、アイライナー、リップライナー、リップグロス、フェイシャルまたはボディパウダー、サンスクリーンおよびサンブロック、ネイルポリッシュ、ムース、スプレー、スタイリングジェル、ネイルコンディショナーを含むが限定されない。パーソナルケア製品は、固体、粉末、液体、クリーム、ジェル、軟膏、ローション、乳剤、コロイド、溶液、懸濁液、または他の形態にかかわらず、バスおよびシャワージェル、シャンプー、コンディショナー、クリームリンス、毛髪染料および着色製品、リーブオン(leave-on)コンディショナー、サンスクリーンおよびサンブロック、リップバーム、スキンコンディショナー、ヘアスプレー、セッケン、ボディスクラブ、角質剥離剤(exfoliant)、収斂剤、脱毛およびパーマネント液、ふけ防止配合物、制汗および発汗抑制組成物、シェービング、プレシェービング、およびアフターシェービング製品、保湿剤、デオデラント(deoderant)、コールドクリーム、デオドラント、クレンザー、スキンジェル、リンスを含むが限定されない。本発明の医薬品は、薬学的活性成分の局所および経皮適用を含む皮膚科学的な目的のためのキャリアを含むが限定されない。これらは、ジェル、パッチ、クリーム、鼻用スプレー、軟膏、ローション、乳剤、コロイド、溶液、懸濁液、粉末などの形態であり得る。」

上記【0025】の記載をみると、「パーソナルケア製品」は、「化粧品」あるいは「医薬品」に対するものとして記載されている。そして、本願明細書における「化粧品」が所謂”メークアップ化粧料”を意味するものと理解されるところ、このような「化粧品」や「医薬品」とは区別されるものとして「パーソナルケア製品」が記載されているが、そこに例示されるものの中には、「サンスクリーンおよびサンブロック、リップバーム、スキンコンディショナー、角質剥離剤(exfoliant)、収斂剤、制汗および発汗抑制組成物、プレシェービング、アフターシェービング製品、保湿剤、コールドクリーム、デオドラント、スキンジェル」等、一般的にはスキンケア製品の範疇に入るものが含まれており、本願明細書全体の記載をみても、本願明細書における「パーソナルケア製品」が、社会通念上スキンケア製品とされるものと明確に区別がつくものとはいえない。
そして、上記アで示したとおり、先願発明が局所適用されるものであることは明らかであるから、先願明細書には、先願発明を、本願明細書でいうところの「パーソナルケア製品」として局所適用することが記載されているといえる。

ウ 上記ア、イによれば、先願明細書には、先願発明の組成物の用途として、本願明細書に記載された意味における「局所パーソナルケアおよびスキンケア組成物」としての用途が記載されているものといえ、<相違点4>は実質的な相違点ではない。

5 まとめ
上記1?4で検討したとおり、形式上の相違点はいずれも実質的な相違点ではなく、本願発明と先願発明とに差違はない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、先願の特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であって、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第184条の13の規定により読み替えて適用される特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

なお、本審決においては、本願請求項1に係る発明について検討したが、該請求項1に係る発明は、平成26年2月12日付け手続補正の前と後とで変更されておらず、しかも、該請求項1に係る発明は、上記したように特許を受けることができないものである。そうすると、平成26年2月12日付け手続補正が所定の要件に適合せず却下されるべきものであるか否かにはかかわらず、「本願は拒絶すべきものである。」との判断に到ることは明らかである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-19 
結審通知日 2015-06-22 
審決日 2015-07-06 
出願番号 特願2010-535311(P2010-535311)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馳平 裕美吉岡 沙織  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 小川 慶子
星野 紹英
発明の名称 モチーフGX1X2G、PX1X2P、またはPX1X2Kを有するテトラペプチドを含有するパーソナルケアおよび化粧品組成物  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  

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