ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B63H |
---|---|
管理番号 | 1307679 |
審判番号 | 不服2014-11813 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-03 |
確定日 | 2015-11-09 |
事件の表示 | 特願2009- 43338号「電動船」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 9日出願公開、特開2010-195240号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年2月26日の出願であって、平成26年2月20日付けで拒絶査定がされ、同年6月3日付け(受付日:同年6月5日)で拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成27年4月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月18日付けで意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成26年6月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである(以下「本願発明」という。)。 「両側にそれぞれクラッチをもつ電動モータを主機である内燃機関とプロペラとの間に一軸で取り付けた船舶推進システムとしての船内機あるいは船内外機。」 第3 当審が通知した拒絶の理由 当審が通知した平成27年4月16日付けの拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願日前の国際特許出願であって、本願の特許出願日後に国際公開された特願2010-538215号(特表2011-506180号公報参照)の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものである。 第4 当審の判断 1.先願明細書の記載事項 本願の出願日前の国際特許出願であって、本願の特許出願日後に国際公開された特願2010-538215号(特表2011-506180号公報参照)の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている(なお、先願明細書の記載内容は、上記特表2011-506180号公報のもので示す。)。 ア.「【0001】 本発明は、動作中に出力変化を必要とする船舶に使用するのに好適なハイブリッド推進システム・・・に関する。」(下線は当審で付与。以下同様) イ.「【0022】 典型的なハイブリッド推進システムが図1に概略的に示されている。本発明のハイブリッド推進システムは、少なくとも2つの推進エネルギー供給源を含み、ディーゼルエンジン10及び10′のような少なくとも1つの、好ましくは2つの主推進機関(例えば左舷及び右舷の主ディーゼルエンジン)と、少なくとも1つの、好ましくは2つのモータ発電機ユニット14、14′とを組み入れる。大きく変化する運転及び性能の要求事項を求められるタグボートのような船舶に使用するのに特に適応した本発明のハイブリッドシステムの一実施例では、前記ハイブリッドシステムの駆動系の構成は、2つの主推進機関(10、10′)を含み、該機関のそれぞれは、直接に又はアジマススラスタ12、12′などの機械式駆動機構又は変速機すなわち独立的に並列のシャフトに作動的に設けられるそれぞれの推進駆動系を介して、スクリュー18、18′のような推進出力部材に結合されている。本明細書ではアジマススラスタが例示されているが、他のタイプのギヤボックスや変速機構を本発明の推進システムに使うことができることは明白であろう。」 ウ.「【0025】 本発明の推進システムは、直列配置で結合された個々の機関、モータ発電機、駆動シャフト及びスクリューによって動作し、前記駆動シャフトのうちのそれぞれ、したがって前記スクリューのそれぞれは、主機関によって単独で直接的に、又はモータ発電機ユニット単独で、又は両エネルギー供給源によって同時的に駆動され得る。各シャフトは、前記主機関が前記メインシャフトを回転するか又は前記駆動システムから切り離されることを可能にするクラッチ15、15′を備え、これにより前記主機関が止められるか又は転用されるとき、前記モータ発電機は原動機として作用することが可能となる。また、各メインシャフトはクラッチ16、16′を有し、該クラッチが係合するとき各モータ発電機が前記出力シャフトを駆動するモータとして動作し、あるいは前記クラッチ16、16′が係合しないとき前記出力シャフトを駆動することなく前記エネルギー分配機構にエネルギーを供給する発電機として動作することを可能とする。」 エ.図1には、以下の図が示されている。 2.先願発明 摘示アのとおり、先願明細書には、「船舶に使用するハイブリッド推進システム」について開示されているところ、摘示イ、ウによれば、前記ハイブリッド推進システムは、 ディーゼルエンジン10のような少なくとも1つの主推進機関10と、少なくとも1つのモータ発電機ユニット14とを組み入れて構成されること、 前記主推進機関10及びモータ発電機ユニット14は、直接に又はアジマススラスタ12などの機械式駆動機構を介して、スクリュー18に結合されること、及び 前記ハイブリッド推進システムは、直列配置で結合された前記主推進機関10、モータ発電機ユニット14、駆動シャフト及びスクリュー18によって動作すること、が明らかである。 さらに、摘示ウ及び摘示エに示す図1の記載によれば、前記モータ発電ユニット14の両側にクラッチ15及びクラッチ16を設けることが明らかである。 以上によれば、先願明細書には、 「ディーゼルエンジン10のような主推進機関10と、モータ発電機ユニット14とを組み入れて構成される、船舶に使用するハイブリッド推進システムであって、 前記主推進機関10及びモータ発電機ユニット14は、直接に又はアジマススラスタ12などの機械式駆動機構を介して、スクリュー18に結合され、 前記ハイブリッド推進システムは、直列配置で結合された前記主推進機関10、モータ発電機ユニット14、駆動シャフト及びスクリュー18によって動作し、 前記モータ発電ユニット14の両側にクラッチ15及びクラッチ16を設けた、船舶に使用するハイブリッド推進システム。」の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているといえる。 3.対比・判断 本願発明と先願発明とを対比する。 ア.先願発明の「モータ発電機ユニット14」は、その技術的意義において、本願発明の「電動モータ」に相当し、また、先願発明の「クラッチ15」及び「クラッチ16」は、本願発明の「クラッチ」に相当する。 そして、本願明細書の「本発明における船内機での駆動方式1(図1)では、船体8の船内に取り付けられた内燃機関1とプロペラ6間に電動モータ4をつけたものである。内燃機関1はクラッチ3を持っており、駆動軸2を介して電動モータ4とつながっている。クラッチ9は電動モータ4とプロペラ6間に取り付ける。・・・」(段落【0010】)との記載、「駆動方式2(図2)では、船体8の船内にある内燃機関1と船外にあるプロペラ6のあるドライブユニット11間に電動モータ4を取り付けているが、クラッチ3が接続されれば、電動モータ4の駆動の有無に拘わらず、内燃機関1によりプロペラシャフト5を介して、プロペラ6が駆動できる。・・・電動モータ4とプロペラ6間に更にもう1個のクラッチを取り付けるか、あるいはプロペラ6のあるドライブユニット11自体に別途クラッチを内蔵する・・・」(段落【0013】)との記載、及び図1、2の記載によれば、本願発明の「クラッチ」は、動力伝達経路中にあって電動モータの両側にそれぞれ設けられたものと解されるところ、先願発明の「クラッチ15及びクラッチ16」も動力伝達経路中にあって「モータ発電機ユニット14」の両側にそれぞれ設けられていることが明らかであるから、先願発明の「両側にクラッチ15及びクラッチ16を設け」た「モータ発電機ユニット14」は、本願発明の「両側にそれぞれクラッチをもつ電動モータ」に相当する。 イ.先願発明の「ディーゼルエンジン10のような主推進機関10」は、その技術的意義において、本願発明の「主機である内燃機関」に相当する。 ウ.先願発明の「スクリュー18」は、その技術的意義において、本願発明の「プロペラ」に相当する。 エ.先願発明の「前記主推進機関10及びモータ発電機ユニット14は、直接に又はアジマススラスタ12などの機械式駆動機構を介して、スクリュー18に結合され、前記ハイブリッド推進システムは、直列配置で結合された前記主推進機関10、モータ発電機ユニット14、駆動シャフト及びスクリュー18によって動作」することは、言い換えれば、モータ発電機ユニット14を主推進機関10とスクリュー18との間に一軸で取り付けた態様といえるから、かかる構成は、本願発明の「両側にそれぞれクラッチをもつ電動モータを主機である内燃機関とプロペラとの間に一軸で取り付けた」構成に相当する。 オ.先願発明の「船舶に使用するハイブリッド推進システム」は、「直列配置で結合された前記主推進機関10、モータ発電機ユニット14、駆動シャフト及びスクリュー18によって動作」する船内機あるいは船内外機として構成されることが明らかであるから、かかるハイブリッド推進システムは、本願発明の「船舶推進システムとしての船内機あるいは船内外機」に相当する。 してみると、本願発明と先願発明とは、 「両側にそれぞれクラッチをもつ電動モータを主機である内燃機関とプロペラとの間に一軸で取り付けた船舶推進システムとしての船内機あるいは船内外機」の点で一致し、相違点は存在しない。 したがって、本願発明と先願発明は同一といえる。 4.審判請求人の主張について ア.審判請求人は、平成27年6月18日付けの意見書で、本願明細書の段落【0011】の記載によれば、本願発明は、駆動に使用される電動発電機とは別の発電機を主エンジンで駆動し、その電力でプロペラ駆動用の電動機を駆動する、純粋なシリーズハイブリッド方式の機構も併せ持った内容になっており、1つの駆動システムに対し2つの発電機構を具備する従来には存在しない発明内容になっている点に、特願2010-538215号とは大きな違いがある、旨主張する。 本願明細書の段落【0011】には、「【0011】・・・クラッチ3を切ると、電動モータ4だけの駆動になり静粛で、超低速まで柔軟な運転が可能になる。その時、内燃機関1に取り付けられた発電機を用いることにより、直接、電動モータ4の駆動が可能である。また、内燃機関1に取り付けられた発電機により、蓄電池を充電しておき、このエネルギーにより、この電動モータ4の駆動が可能である。・・・」と記載されており、確かに、審判請求人が主張するように、内燃機関に取り付けられた発電機を用いて、直接電気モータの駆動を可能にすること及び蓄電池を充電しこのエネルギーで電動モータの駆動を可能にすることの記載が認められる。 しかし、本願発明に係る特許請求の範囲(請求項1)の記載は、上記第2 で述べたとおり「両側にそれぞれクラッチをもつ電動モータを主機である内燃機関とプロペラとの間に一軸で取り付けた船舶推進システムとしての船内機あるいは船内外機」というものであって、内燃機関に「発電機」を取り付けることは特定されていないし、さらに、発電機を用いて、直接電気モータの駆動を可能にすること及び蓄電池を充電しこのエネルギーで電動モータの駆動を可能にすることも特定されていない。 したがって、原告の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであるといわざるを得ず、原告の上記主張は採用できない。 イ.また、審判請求人は、同意見書で、特願2010-538215号の内容では、電動発電機については、その【請求項18】でACモータ発電機としており、【請求項19】ではACかご形誘導モータである、と限定しているが、本願発明では、広くDCモータを含んだ電動発電機を用いることにしているので、その違いによる利点がある、旨主張する。 しかし、上述したとおり、本願発明に係る特許請求の範囲(請求項1)の記載は、「両側にそれぞれクラッチをもつ電動モータを主機である内燃機関とプロペラとの間に一軸で取り付けた船舶推進システムとしての船内機あるいは船内外機」というものであって、電動モータを「DCモータを含んだ電動発電機」とまで特定するものではない。 また、本件明細書には、本願発明の「電動モータ」が、特に「DCモータを含んだ電動発電機」のみを意味したものとする記載や示唆も存しない。 したがって、原告の上記主張は、特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載に基づかないものであるといわざるを得ず、原告の上記主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明を発明した者と同一ではなく、また本件出願の出願時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-21 |
結審通知日 | 2015-09-01 |
審決日 | 2015-09-14 |
出願番号 | 特願2009-43338(P2009-43338) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WZ
(B63H)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須山 直紀、増沢 誠一 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 氏原 康宏 |
発明の名称 | 電動船 |