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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1307690
審判番号 不服2014-5416  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-24 
確定日 2015-11-12 
事件の表示 特願2009-551585「研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年8月6日国際公開、WO2009/096495〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2009年1月29日(パリ条約による優先権主張、2008年2月1日、2008年6月10日、共に日本)を国際出願日とする出願であって、
平成22年6月10日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、
平成23年12月12日付けで審査請求がなされ、
平成25年5月13日付けで拒絶理由通知(同年同月21日発送)がなされ、
これに対して同年7月19日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、
同年12月16日付けで上記平成25年5月13日付けの拒絶理由通知書に記載した理由2(特許法第29条第2項)によって拒絶査定(同年同月24日謄本発送・送達)がなされたものである。

これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許すべきものである、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成26年3月24日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされた。
これに対して同年5月27日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成26年7月2日付けで上申書が提出され、
その後、当審合議体より平成27年4月22日付け拒絶理由通知(同年同月28日発送)がなされ、
これに対して平成27年6月24日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年6月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(下線は、請求人が付したもの。)

(本願発明)
「 シリコン材料としてのポリシリコンを研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、窒素含有化合物、並びに、コロイダルシリカ及びフュームドシリカから選ばれる少なくとも一種の砥粒を含有し、pHが1?7であり、前記窒素含有化合物は、ピペラジン、メチルピペリジン、ピリジン、イミノ二酢酸、ヒダントイン、こはく酸イミド、N-ヒドロキシこはく酸イミド、ピペリジン、ピロリジン、グリシン、アラニン、バリン、N-メチルグリシン、アミン型ノニオン界面活性剤、カルボキシベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、及びアミンオキサイド型両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする研磨用組成物。」


第3 引用文献・引用発明の認定

本願の優先日前に頒布され、当審が上記平成27年4月22日付けの拒絶理由通知において引用した、特開2003-306669号公報(公開日:平成15年10月31日、以下、「引用文献」という。)には、関連する図面とともに、以下の事項が記載されている。
(下線は、当審にて付した。)

A 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 研磨対象物の表面を遊離砥粒により研磨するために用いられる研磨スラリーであって、水、研磨粒子、及び研磨促進剤から成り、前記研磨促進剤として、有機酸、又は有機酸塩が使用され、当該研磨スラリーの液性が酸性を示す、ところの研磨スラリー。
【請求項2】 前記有機酸として、フタル酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、キナルジン酸、グリシンが使用される、請求項1の研磨スラリー。
【請求項3】 前記有機酸塩として、フタル酸塩が使用される、請求項1の研磨スラリー。
【請求項4】 前記フタル酸塩として、フタル酸2ナトリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸カリウムナトリウム、フタル酸2アンモニウム、フタル酸水素アンモニウム、フタル酸2ナトリウム、又はフタル酸水素ナトリウムが使用される、請求項3の研磨スラリー。
【請求項5】 前記研磨粒子として、シリカ、アルミナ、セリア、酸化マンガン、及びジルコニアから選択される一種又は二種以上の粒子が使用される、請求項1の研磨スラリー。」

B 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンウエハ、強誘電体ウエハ、磁気ハードディスク用又は液晶カラーフィルター用のガラス基板など、表面に高い平滑性と平坦性が要求される研磨対象物の表面を研磨するのに適した研磨スラリーに関するものである。」

C 「【0035】<実施例> 本発明の研磨スラリーを製造した。実施例の研磨スラリーは、予め水中に平均粒径80nmの球状のシリカ粒子を分散させたコロイダルシリカを純水に加え、さらにフタル酸水素カリウムを添加して製造した。実施例の研磨スラリーの組成は、下記の表1に示すとおりである。実施例の研磨スラリーの液性は、下記の表1に示すように、pH4.0(酸性)であった。」

上記摘記事項A?Cより、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「 シリコンウエハを研磨する用途で使用される研磨スラリーであって、
前記研磨スラリーはコロイダルシリカとグリシンを含有し、
前記研磨スラリーは酸性を示す、研磨スラリー。」


第4 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「前記研磨スラリーはコロイダルシリカとグリシンを含有し」は、本願発明の「研磨用組成物」が「含有」する「砥粒」の候補の1つとされた「コロイダルシリカ」と、同じく「窒素含有化合物」の候補の1種とされた「グリシン」に相当する。
また、引用発明の「前記研磨スラリーは酸性を示す」は、本願発明の「pHが1?7であり」に相当する。
そうすると、引用発明の「シリコンウエハを研磨する用途で使用される」と本願発明の「シリコン材料としてのポリシリコンを研磨する用途で使用される」とは、用途とされる対象がいずれも「シリコン」材料である点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、かつ相違する。

(一致点)
「シリコン材料を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、グリシン、並びに、コロイダルシリカを含有し、pHが1?7である研磨用組成物。」

(相違点)
本願発明では、研磨の用途先として「ポリシリコン」を特定しているのに対して、引用発明の「研磨スラリー」の用途先は、単に「シリコンウエハ」に留まり、ポリシリコンを含むか否かを直接特定していない点。


第5 判断

上記相違点について検討する。

一般的に上記対比で共通点とされる「シリコンウエハ」の素材が採り得る状態に、単結晶シリコンと多結晶シリコン、通称ポリシリコンが存在することは、本願の優先日前に当業者に技術常識として認知されていた事項である。
また、シリコンウエハ用の化学機械研磨(CMP)用組成物として窒素原子を官能基に含むアミン(アミノ基、アミノ酸として知られる)を備える研磨用組成物(研磨スラリー)が、単結晶シリコンのみならず多結晶シリコン(=ポリシリコン)に有効であることもまた技術常識とされる(ウエハのシリコン素材に単結晶と多結晶が存在すること、及び、アミンを含む組成物が単結晶シリコンにも多結晶シリコンにも有効に作用することを記述した文献として、特開2007-51200号公報が一例として存在する。当該公知文献の段落0009及び0018等を参照のこと。)。
とすれば、技術常識を参酌すれば引用発明の「シリコンウエハ」の「シリコン」として、単結晶シリコン及びポリシリコンを認識することは十分に想到し得る事項に過ぎない。

そして、上記で検討したごとく、研磨の用途先として、単結晶シリコンとポリシリコンとで格別の差異はなく、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び技術常識として把握される事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、ポリシリコンを選択することに困難性があったとは認められない。

したがって、本願発明は、引用発明と技術常識に基づいて、当業者が容易に発明できたと認められる。


第6 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載の発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであると認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-09 
結審通知日 2015-09-15 
審決日 2015-09-28 
出願番号 特願2009-551585(P2009-551585)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大光 太朗細川 翔多  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 西村 泰英
平岩 正一
発明の名称 研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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