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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1307704
審判番号 不服2014-19134  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-25 
確定日 2015-11-12 
事件の表示 特願2011-513289「動画像符号化装置、方法およびプログラム、並びに、動画像復号化装置、方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月18日国際公開、WO2010/131537〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2010年(平成22年)4月8日(優先権主張 平成21年5月11日、日本)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成26年 3月 4日(起案日)
手続補正 :平成26年 5月 9日
拒絶査定 :平成26年 7月 3日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成26年 9月25日
手続補正 :平成26年 9月25日
前置審査報告 :平成26年12月16日
上申書 :平成27年 3月 5日

第2.平成26年9月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年9月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、請求項9に係る次の補正事項を含むものである。

(補正事項)
請求項9について
(補正前)「復号化対象の画像が分割されて得られた複数の処理ブロックの各々について、複数の参照画像のうち1つの参照画像を参照して予測信号を生成し予測復号化を行うための、動画像復号化装置により実行される動画像復号化方法であって、
入力された符号化データから、前記予測信号を生成するために各参照画像に対し行うべき二つ以上の処理の組み合わせによる処理方法の情報、並びに、前記処理ブロックごとの参照画像を特定する参照リスト番号および動きベクトル情報を復号化する復号化ステップと、
前記復号化ステップにて得られた、復号化対象の処理ブロックの参照リスト番号に基づいて、当該参照リスト番号に対応する参照画像に対し行うべき処理方法の情報を取得する予測信号生成方法制御ステップと、
前記予測信号生成方法制御ステップにて取得された、前記復号化対象の処理ブロックについての参照画像に対し行うべき処理方法に基づいて、当該参照画像に対し処理を行うことで、当該処理ブロックについての前記予測信号を生成する予測信号生成ステップと、
を備えることを特徴とする動画像復号化方法。」
とあるのを、
(補正後)「復号化対象の画像が分割されて得られた複数の処理ブロックの各々について、複数の参照画像のうち1つの参照画像を参照して予測信号を生成し予測復号化を行うための、動画像復号化装置により実行される動画像復号化方法であって、
入力された符号化データから、前記予測信号を生成するために各参照画像に対し行うべき二つ以上の処理の組み合わせによる処理方法の情報、並びに、前記処理ブロックごとの参照画像を特定する参照リスト番号および動きベクトル情報を復号化する復号化ステップと、
前記復号化ステップにて得られた、復号化対象の処理ブロックの参照リスト番号に基づいて、当該参照リスト番号に対応する参照画像に対し行うべき処理方法の情報を取得する予測信号生成方法制御ステップと、
前記予測信号生成方法制御ステップにて取得された、前記復号化対象の処理ブロックについての参照画像に対し行うべき処理方法に基づいて、当該参照画像に対し処理を行うことで、当該処理ブロックについての前記予測信号を生成する予測信号生成ステップと、
を備え、
前記処理方法の情報として、画素補間の精度の情報、画素補間フィルタの種類の情報を含むことを特徴とする動画像復号化方法。」
とする補正である。

2.補正の適合性
2-1.補正の範囲
上記補正事項の「前記処理方法の情報として、画素補間の精度の情報、画素補間フィルタの種類の情報を含む」という事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0067】)に基づくものであり、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項に規定される願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

2-2.補正の目的
上記補正事項は、請求項9の「処理方法の情報」について「画素補間の精度の情報、画素補間フィルタの種類の情報を含む」との限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

2-3.独立特許要件
上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項であるので、補正後の請求項9に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.の請求項9(補正後)に記載した事項により特定される次のとおりのものである。なお、本願補正発明の各構成の符号は便宜的に当審で付したものである。

(本願補正発明)
(A)復号化対象の画像が分割されて得られた複数の処理ブロックの各々について、複数の参照画像のうち1つの参照画像を参照して予測信号を生成し予測復号化を行うための、動画像復号化装置により実行される動画像復号化方法であって、
(B)入力された符号化データから、前記予測信号を生成するために各参照画像に対し行うべき二つ以上の処理の組み合わせによる処理方法の情報、並びに、前記処理ブロックごとの参照画像を特定する参照リスト番号および動きベクトル情報を復号化する復号化ステップと、
(C)前記復号化ステップにて得られた、復号化対象の処理ブロックの参照リスト番号に基づいて、当該参照リスト番号に対応する参照画像に対し行うべき処理方法の情報を取得する予測信号生成方法制御ステップと、
(D)前記予測信号生成方法制御ステップにて取得された、前記復号化対象の処理ブロックについての参照画像に対し行うべき処理方法に基づいて、当該参照画像に対し処理を行うことで、当該処理ブロックについての前記予測信号を生成する予測信号生成ステップと、
を備え、
(E)前記処理方法の情報として、画素補間の精度の情報、画素補間フィルタの種類の情報を含むことを特徴とする動画像復号化方法。

(2)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である国際公開第2007/002437号(以下、「刊行物1」という)には、「METHOD AND APPARATUS FOR VIDEO ENCODING AND DECODING USING ADAPTIVE INTERPOLATION」(発明の名称:適応補間を使用する映像符号化及び復号化の方法と装置)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する。

「SUMMARY OF THE INVENTION
[0013] A method and apparatus is disclosed herein for video encoding and/or decoding using adaptive interpolation is described. In one embodiment, the decoding method comprises decoding a reference index; decoding a motion vector; selecting a reference frame according to the reference index; selecting a filter according to the reference index; and filtering a set of samples of the reference frame using the filter to obtain the predicted block, wherein the set of samples of the reference frame is determined by the motion vector.」
(発明の概要
[0013]本明細書では、適応補間を使用する映像符号化及び/又は復号化の方法及び装置が開示されている。一実施形態では、復号化方法は、参照インデックスを復号化するステップと、動きベクトルを復号化するステップと、参照インデックスに従って参照フレームを選択するステップと、参照インデックスに従ってフィルタを選択するステップと、動きベクトルにより決定された参照フレームのサンプルのセットをフィルタリングし、予測されたブロックを取得するステップとを備える。)

「[0045] The decoding operation is the reverse of the encoding operation. Figure 5 is a flow diagram of one embodiment of an decoding process. The process is performed by processing logic that may comprise hardware (circuitry, dedicated logic, etc.), software (such as is run on a general purpose computer system or a dedicated machine), or a combination of both.
[0046] Referring to Figure 5, the process begins by processing logic decoding a bitstream having encoding video data including encoded data corresponding to residue data resulting from differencing between input video data and motion compensated predictions (processing logic 501). In one embodiment, processing logic also decodes motion vectors and reference indices. The decoding operation may be performed by a variable length decoder.
[0047] Next, processing logic generates motion compensated predictions using multiple references, where each of the references is associated with multiple reference indices which are each associated with a set of filter parameters by which a block associated with a particular reference is filtered to generate fractional sample positions (processing block 502). In one embodiment, the generation of motion compensated predictions is performed by a motion compensation module or unit in an encoder.」
([0045]復号化演算は符号化演算の逆である。図5は復号化プロセスの一実施形態のフローチャートである。プロセスは、ハードウェア(たとえば、回路、専用ロジックなど)、ソフトウェア(たとえば、汎用コンピュータシステム又は専用機械上で動かされるもの)、又は、両者の組み合わせ、を備えるプロセシングロジックによって実行される。
[0046]図5を参照すると、プロセスは、プロセシングロジックが入力映像データと動き補償された予測との間の差から生じる残差データに対応する符号化されたデータを含む符号化映像データを有するビットストリームを復号化することにより開始する(処理ロジック501)。一実施形態では、プロセシングロジックは動きベクトル及び参照インデックスをさらに復号化する。復号化演算は可変長デコーダによって実行されることがある。
[0047]次に、プロセシングロジックは、複数の参照を使用して動き補償された予測を生成し、ここで、各参照は、フィルタパラメータのセットとそれぞれ関連付けられている複数の参照インデックスと関連付けられ、フィルタパラメータを用いて個々の参照と関連付けられているブロックが分数サンプル位置を生成するためにフィルタ処理される(処理ブロック502)。一実施形態では、動き補償された予測の生成は、エンコーダ内の動き補償モジュール又はユニットによって実行される。)

「[0054] The prediction interpolation table syntax in Table 4 contains all the interpolation information for every reference within every reference list (listO and listl). More specifically, this could include the type of the interpolation filter (luma_interpolation_lX_type), whether this filter would be applied for 1/2-pel positions only and the bilinear would be used for 1/4-pel positions (as in Figure 6) or whether the filter would be applied for all samples (luma_interpolation_lX_qpel), the number of filter taps (luma_filter_length_lX or luma_2Dfilter_length_lX), the filter precision (luma_filter_denom_lX and luma_filter_2Ddenom_lX), and the actual filter coefficients (luma_filter_tap_lX and luma_2Dfilter_coeffs_lX). In one embodiment, the filter coefficients are variable length coded (i.e. ue(v)). In another embodiment, the filter coefficients are fixed length coded (u(N) i.e. with N=8). Furthermore, in yet another embodiment, the prediction of their value is selected for example versus the H.264 default interpolation filter, and therefore they may be more efficiently coded if differentially encoding is used.」
([0054]表4における予測補間テーブルシンタックスは、あらゆる参照リスト(リスト0及びリスト1)内のあらゆる参照のための補間情報の全部を含んでいる。より詳細には、予測補間テーブルシンタックスは、補間フィルタのタイプ(luma_interpolation_lX_type)と、このフィルタが(図6に示されているように)1/2画素位置だけのために適用され、双一次が1/4画素位置のために使用されるのか、又は、前記フィルタが全サンプルに適用されるか(luma_interpolation_lX_qpel)と、フィルタタップ数(luma_filter_length_lX又はluma_2Dfilter_length_lX)と、フィルタ精度(luma_filter_denom_lX及びluma_filter_2Ddenom_lX)と、実際のフィルタ係数(luma_filter_tap_lX及びluma_2Dfilter_coeffs_lX)とを含めることができる。一実施形態では、フィルタ係数は可変長符号化されている(すなわち、ue(v))。別の実施形態では、フィルタ係数は固定長符号化されている(u(N)、すなわち、N=8)。さらに別の実施形態では、フィルタ係数値の予測は、たとえば、H.264デフォルト補間フィルタと対比して選択されるので、差分符号化が使用されるならば、フィルタ係数はより効率的に符号化されるであろう。)









「[0079] Referring to Figure 11, the process begins by decoding slice information that includes reordering information, weighting parameter information and interpolation information (processing block 1101). In one embodiment, the reordering information comprises reordering commands. After decoding the slice information, processing logic creates reference lists (processing block 1102). Then processing logic performs a loop for each block (processing block 1103) in which processing logic decodes a reference index ri for each list i (processing block 1104), decodes motion information that includes motion vectors and weighting parameters (processing block 1105), selects interpolation filters based on r0 and r1 (processing block 1106), and performs motion compensation using selected filters and motion vector parameters (processing block 1107). Thereafter, the loop ends (processing block 1108). After the loop ends, the process ends.」
([0079]図11を参照すると、プロセスは、並べ替え情報、重み付けパラメータ情報及び補間情報を含むスライス情報を復号化することにより開始する(処理ブロック1101)。一実施形態では、並べ替え情報は並べ替えコマンドからなる。スライス情報を復号化した後、プロセシングロジックは参照リストを作成する(処理ブロック1102)。次に、プロセシングロジックはブロックごとにループを実行し(処理ブロック1103)、ループ内で、プロセシングロジックはリストiごとに参照インデックスriを復号化し(処理ブロック1104)、動きベクトル及び重み付けパラメータを含む動き情報を復号化し(処理ブロック1105)、r0及びr1に基づいて補間フィルタを選択し(処理ブロック1106)、選択されたフィルタ及び動きベクトルパラメータを使用して動き補償を実行する(処理ブロック1107)。その後に、ループは終了する(処理ブロック1108)。ループが終了した後、プロセスが終了する。)

(3)引用発明
a.刊行物1の[0013]、[0045]、[0046]、[0047]及び[0079]によれば、刊行物1には、映像の復号化プロセスが、「ハードウェア、ソフトウェア、又は、両者の組み合わせ、を備えるプロセシングロジック」によって実行されることが記載されている。「プロセシングロジック」によって実行される具体的な復号化プロセスは次の通りである。
まず、刊行物1の[0079]によれば、画像のブロックごとに参照インデックスを復号化する。次に、刊行物1の[0013]によれば、その参照インデックスに従って参照フレームを選択する。さらに、刊行物1の[0013]及び[0047]の記載を総合すれば、選択された参照フレームを使用して動き補償された予測されたブロックを取得し、復号化する。
すなわち、刊行物1には、「画像のブロックごとに参照インデックスに従って参照フレームを選択し、選択された参照フレームを使用して予測されたブロックを取得し、復号化を行うための、ハードウェアを備えるプロセシングロジックにより実行される映像復号化方法」が記載されているといえる。

b.刊行物1の[0013]及び[0047]によれば、刊行物1のプロセシングロジックは、フィルタパラメータのセットを用いて、個々の参照フレームに対してフィルタ処理を行い、予測されたブロックを取得することが記載されている。
そして、「Table 4 Proposed Prediction Interpolation Table Syntax」によれば、上記フィルタパラメータのセットは、「luma_interpolation_lX_type (luma_interpolation_l0_type、luma_interpolation_l1_type)」及び「luma_interpolation_lX_qpel(luma_interpolation_l0_qpel、luma_interpolation_l1_qpel)」が含まれるものであり、刊行物1の「Table 5」及び[0054]によれば、「luma_interpolation_lX_type」は、フィルタ処理に使用する補間フィルタのタイプを示す情報であり、「luma_interpolation_lX_qpel」は、「luma_interpolation_lX_type」で指定される補間フィルタを用いる対象が1/2画素位置の補間のみであるのか、1/2画素位置及び1/4画素位置の補間であるのかを示す情報であることが記載されている。
また、刊行物1の[0013]、[0047]及び[0079]によれば、プロセシングロジックは、画像のブロックごとに、参照リストごとの参照インデックス及び動きベクトルを復号化することが記載されている。
以上のことから、刊行物1には、プロセシングロジックが「予測されたブロックを取得するために個々の参照フレームに対して行うフィルタ処理に使用する補間フィルタのタイプを示す情報、及び、補間フィルタを用いる対象が1/2画素位置の補間のみであるのか、1/2画素位置及び1/4画素位置の補間であるのかを示す情報を含むフィルタパラメータのセットを取得する」こと、及び、「画像のブロックごとに、参照リストごとの参照インデックス及び動きベクトルを復号化する」ことが記載されているといえる。

c.刊行物1の[0079]によれば、「プロセシングロジック」は、復号化された、ブロックの参照インデックスに基づいて補間フィルタを選択するものである。ここで、段落[0079]には、上記補間フィルタの選択が上記フィルタパラメータのセットを取得することにより行われるとは明記されていないが、刊行物1の[0047]及び「Table 4」によれば、補間フィルタの情報であるフィルタパラメータのセットは、参照インデックスに関連付けられているものであるから、参照インデックスに基づいて補間フィルタを選択する際には、参照インデックスに関連付けられているフィルタパラメータのセットを取得することは明らかである。
また、刊行物1の[0013]及び[0047]によれば、フィルタパラメータのセットに基づくフィルタ処理は、参照フレームに対して行われ、予測されたブロックが取得されることが記載されている。
したがって、刊行物1には、プロセシングロジックが「復号化された、ブロックの参照インデックスに基づいて参照インデックスに関連付けられているフィルタパラメータのセットを取得し、上記フィルタパラメータのセットに基づいて参照フレームに対してフィルタ処理を行うことで、上記ブロックについての予測されたブロックを取得する」ことが記載されているといえる。

d.まとめ
以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)画像のブロックごとに参照インデックスに従って参照フレームを選択し、選択された参照フレームを使用して予測されたブロックを取得し、復号化を行うための、ハードウェアを備えるプロセシングロジックにより実行される映像復号化方法であって、
(b)上記プロセシングロジックは、予測されたブロックを取得するために個々の参照フレームに対して行うフィルタ処理に使用する補間フィルタのタイプを示す情報、及び、補間フィルタを用いる対象が1/2画素位置の補間のみであるのか、1/2画素位置及び1/4画素位置の補間であるのかを示す情報を含むフィルタパラメータのセットを取得し、画像のブロックごとに、参照リストごとの参照インデックス及び動きベクトルを復号化し、
(c)復号化された、ブロックの参照インデックスに基づいて参照インデックスに関連付けられているフィルタパラメータのセットを取得し、
(d)上記フィルタパラメータのセットに基づいて上記ブロックの参照フレームに対してフィルタ処理を行うことで、上記ブロックについての予測されたブロックを取得するものである、
映像復号化方法。

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

a.本願補正発明の構成(A)と、引用発明の構成(a)の対比
引用発明の構成(a)の「画像のブロックごとに参照インデックスに従って参照フレームを選択し、選択された参照フレームを使用して予測されたブロックを取得し、復号化を行うための、ハードウェアを備えるプロセシングロジックにより実行される映像復号化方法」について、引用発明の「画像のブロック」は、復号化対象の画像が分割されて得られたものであることは明らかであるから、本願補正発明の「復号化対象の画像が分割されて得られた複数の処理ブロック」に相当する。
また、引用発明の「参照フレーム」は、本願補正発明の「参照画像」に相当するものであり、「参照インデックスに従って参照フレームを選択し」ということは、複数の参照画像から1つの参照画像を選択することである。そして、引用発明の「予測されたブロックを取得し、復号化を行う」ということは、予測により算出されたブロックの信号を取得して復号化を行うことであるから、本願補正発明の「予測信号を生成し予測復号化を行う」ことに相当するものである。
さらに、「映像復号化方法」は、本願補正発明の「動画像復号化方法」に相当するものであり、「ハードウェアを備えるプロセシングロジック」は、「映像復号化方法」を実行する装置、すなわち「動画像復号化装置」といえる。
したがって、引用発明の構成(a)は、「復号化対象の画像が分割されて得られた複数の処理ブロックの各々について、複数の参照画像のうち1つの参照画像を参照して予測信号を生成し予測復号化を行うための、動画像復号化装置により実行される動画像復号化方法」である点で、本願補正発明の構成(A)と一致する。

b.本願補正発明の構成(B)と、引用発明の構成(b)の対比
引用発明の構成(b)の「予測されたブロックを取得するために個々の参照フレームに対して行うフィルタ処理に使用する補間フィルタのタイプを示す情報、及び、補間フィルタを用いる対象が1/2画素位置の補間のみであるのか、1/2画素位置及び1/4画素位置の補間であるのかを示す情報を含むフィルタパラメータのセットを取得し」について、上記フィルタパラメータのセットは、補間フィルタのタイプを選択するという処理と、補間フィルタを用いる対象が1/2画素位置の補間のみであるのか、1/2画素位置及び1/4画素位置の補間であるのかを決めるという処理の、2つの処理の組み合わせによるフィルタ処理を定める情報であるから、本願補正発明の「前記予測信号を生成するために各参照画像に対し行うべき二つ以上の処理の組み合わせによる処理方法の情報」に相当する。また、一般に、シンタックスが規定される映像復号化の制御情報は、動画像復号化装置に入力される符号化データを復号化して取得するものであるから、上記フィルタパラメータセットは入力された符号化データから復号化して取得することは明らかである。
さらに、引用発明の構成(b)の「参照リストごとの参照インデックス」、「動きベクトル」は、それぞれ本願補正発明の「参照リスト番号」、「動きベクトル情報」に相当する。
したがって、引用発明の構成(b)は、「入力された符号化データから、前記予測信号を生成するために各参照画像に対し行うべき二つ以上の処理の組み合わせによる処理方法の情報、並びに、前記処理ブロックごとの参照画像を特定する参照リスト番号および動きベクトル情報を復号化する復号化ステップ」である点で、本願補正発明の構成(B)と一致する。

c.本願補正発明の構成(C)と、引用発明の構成(c)の対比
引用発明の構成(c)の「復号化された、ブロックの参照インデックスに基づいて参照インデックスに関連付けられているフィルタパラメータのセットを取得し」について、上記b.で述べたように、「参照インデックス」は「参照リスト番号」に相当し、「フィルタパラメータのセット」は本願補正発明の「参照画像に対し行うべき処理方法の情報」に相当するから、引用発明の構成(c)の処理は、「前記復号化ステップにて得られた、復号化対象の処理ブロックの参照リスト番号に基づいて、当該参照リスト番号に対応する参照画像に対し行うべき処理方法の情報を取得する予測信号生成方法制御ステップ」である点で、本願補正発明の構成(C)と一致する。

d.本願補正発明の構成(D)と、引用発明の構成(d)の対比
引用発明の構成(d)の「フィルタパラメータのセット」は、画像のブロックごとに定められるものであり、上記b.で述べたように、本願補正発明の「参照画像に対し行うべき処理方法の情報」に相当するものであるから、本願補正発明の「復号化対象の処理ブロックについての参照画像に対し行うべき処理方法」を示す情報といえる。
また、引用発明の「上記ブロックの参照フレームに対してフィルタ処理を行う」ことは、本願補正発明の「当該参照画像に対し処理を行う」ことに相当し、「上記ブロックについての予測されたブロックを取得する」ことは、本願補正発明の「当該処理ブロックについての前記予測信号を生成する」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成(d)の処理は、「前記予測信号生成方法制御ステップにて取得された、前記復号化対象の処理ブロックについての参照画像に対し行うべき処理方法に基づいて、当該参照画像に対し処理を行うことで、当該処理ブロックについての前記予測信号を生成する予測信号生成ステップ」である点で、本願補正発明の構成(D)と一致する。

e.本願補正発明の構成(E)と、引用発明の構成(b)の対比
引用発明の構成(b)の「フィルタパラメータのセット」は、上記b.で述べたように、本願補正発明の「参照画像に対し行うべき処理方法の情報」に相当し、「補間フィルタのタイプを示す情報、及び、補間フィルタを用いる対象が1/2画素位置の補間のみであるのか、1/2画素位置及び1/4画素位置の補間であるのかを示す情報」という2つの情報を含む。
このうち「補間フィルタのタイプを示す情報」は、本願補正発明の「画素補間フィルタの種類の情報」に相当するから、引用発明の構成(b)は、「前記処理方法の情報として、画素補間フィルタの種類の情報を含む複数の情報を含む」点で、本願補正発明の構成(E)と一致する。
ただし、本願補正発明では、「処理方法の情報」に「画素補間の精度の情報」が含まれるのに対し、引用発明では、「画素補間の精度の情報」は含まれない点で相違する。

(5)一致点・相違点
上記(4)のaないしeの対比結果をまとめると、本願補正発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
復号化対象の画像が分割されて得られた複数の処理ブロックの各々について、複数の参照画像のうち1つの参照画像を参照して予測信号を生成し予測復号化を行うための、動画像復号化装置により実行される動画像復号化方法であって、
入力された符号化データから、前記予測信号を生成するために各参照画像に対し行うべき二つ以上の処理の組み合わせによる処理方法の情報、並びに、前記処理ブロックごとの参照画像を特定する参照リスト番号および動きベクトル情報を復号化する復号化ステップと、
前記復号化ステップにて得られた、復号化対象の処理ブロックの参照リスト番号に基づいて、当該参照リスト番号に対応する参照画像に対し行うべき処理方法の情報を取得する予測信号生成方法制御ステップと、
前記予測信号生成方法制御ステップにて取得された、前記復号化対象の処理ブロックについての参照画像に対し行うべき処理方法に基づいて、当該参照画像に対し処理を行うことで、当該処理ブロックについての前記予測信号を生成する予測信号生成ステップと、
を備え、
前記処理方法の情報として、画素補間フィルタの種類の情報を含む複数の情報を含むことを特徴とする動画像復号化方法。

[相違点]
本願補正発明では、「処理方法の情報」に「画素補間の精度の情報」が含まれるのに対し、引用発明では、「画素補間の精度の情報」は含まれない点。

(6)相違点の判断
一般に、参照フレームに補間フィルタ処理を適用し、動き補償符号化する際に、動き補償の精度、すなわち画素補間の精度を選択可能し、予測精度の向上と符号量の増加のバランスを取り、符号化効率を向上させること、その画素補間の精度の情報を符号化データに含め、復号化の際に当該情報を復号化して処理を行うことは、例えば、以下のa.及びb.に示す文献に記載されているように周知技術である。
そして、引用発明において、動き補償符号化する際の処理方法として、一定の画素補間の精度の下で処理方法を選択していたことに加え、上記周知技術のような画素補間の精度を選択する技術を追加し、さらに符号化効率を向上させようとすることは、当業者が容易になし得ることである。
よって、引用発明に上記周知技術を適用し、上記相違点に係る「処理方法の情報」に「画素補間の精度の情報」を含むものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

a.特開2004-048552号公報
特開2004-048552号公報には、「半画素精度や1/4画素精度の仮想サンプルを用いて予測画像を生成して動き補償符号化する際に、1/4画素精度の仮想サンプルを生成して予測するか、半画素精度の仮想サンプルを生成して予測するかを示す仮想サンプル精度切り換えフラグをビットストリームに多重化し、復号の際に仮想サンプル精度切り換えフラグを復号する技術」(段落【0092】?【0102】等)が記載されている。

b.特開2001-189934号公報
特開2001-189934号公報には、「分数画素精度の動き補償符号化の際に、動き精度の情報を符号化し、復号の際には、動き精度の情報を復号し、動き精度に応じて補間フィルタを用いて再構築する技術」(段落【0035】?【0039】,【0045】等)が記載されており、動き精度の情報は画素補間の精度を示す情報である。

(7)効果等について
本願補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。

(8)上申書について
平成27年3月5日付け上申書において、「動画像復号化装置における復号化部が、復号化により取得された各参照画像についての処理方法の情報を、参照リスト番号に関連付けて記憶することに限定する」という補正の用意がある旨を述べているため、この点について検討する。
引用発明において、本願補正発明の「処理方法の情報」に対応する「フィルタパラメータセット」は、本願補正発明の「参照リスト番号」に対応する「参照インデックス」に関連付けられており、処理方法の情報を参照リスト番号に関連付けることは刊行物1に記載されている事項であり、その情報を後の処理に用いるために記憶することも当然行われていることである。
したがって、上申書で述べられる上記補正によっても、本願補正発明が進歩性を有するものとは認められない。

(9)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成26年9月25日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項9に係る発明(以下「本願発明」という)は、前記第2.1.の請求項9(補正前)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

2.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、および、その記載事項は、前記第2.2.2-3.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.2.2-2.で摘示した本願補正発明に追加された限定事項を省いたものである。
そうすると、前記第2.2.2-3.での検討を援用すると、本願発明の特定事項は刊行物1に記載された発明と全て一致するものであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

第4.むすび

以上のとおり、本願の請求項9に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-01 
結審通知日 2015-09-08 
審決日 2015-09-28 
出願番号 特願2011-513289(P2011-513289)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 小池 正彦
清水 正一
発明の名称 動画像符号化装置、方法およびプログラム、並びに、動画像復号化装置、方法およびプログラム  
代理人 黒木 義樹  
代理人 深石 賢治  
代理人 沖山 隆  
代理人 長谷川 芳樹  

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