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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1307850
審判番号 不服2014-10680  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-05 
確定日 2015-11-18 
事件の表示 特願2012-245547「画像安定化のための方法とシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日出願公開、特開2013- 62849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯

1.手続
本願は、平成19年5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年6月22日、米国)を国際出願日とする出願である特願2009-515976号の一部を平成24年11月7日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願(特願2012-245547号)としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成25年 1月29日(起案日)
手続補正 :平成25年 7月 8日
拒絶理由通知(最初) :平成25年 9月27日(起案日)
拒絶査定 :平成26年 2月14日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成26年 6月 5日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。
本願の各請求項に係る発明(平成25年7月8日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2003-101862号公報
刊行物2:特開2001-166351号公報
刊行物3:特開2002-116477号公報
刊行物4:特開平11-317904号公報
刊行物5:特開2004-7220号公報(拒絶査定時に周知技術として追加)

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面、及び平成25年7月8日付け手続補正書の記載からみて、平成25年7月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
少なくとも2つの露光を実現するために、少なくとも露光期間の一部の間において、結像システムの画像センサーの上に投影画像を露光するステップであって、前記画像センサーは画素の配列から成り、各画素は1つの画素領域を有する、ステップと、
前記露光期間における結像システムの初期位置に対する前記結像システムの移動量を決定するために、前記露光期間の間に、前記結像システムの移動を検出するステップと、
少なくとも第1の露光と第2の露光とに基づいて画像を構築するステップであって、
前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する所定の移動範囲の内である、前記露光期間内において、第1の期間に、前記第1の露光が実現され、
前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の内である前記露光期間内において、第2の期間に、前記第2の露光が実現され、
前記第1の期間と前記第2の期間との間に、前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の外である、第3の期間が存在し、
前記所定の移動範囲は1以上の画素領域に基づき決定される、ステップと、
捕捉された画像を構築するために、前記露光期間の後に単一の画像フレームをキャプチャするステップと、
を含む方法であって、
前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の内であるとき実現された前記第1の露光と前記第2の露光が、前記露光期間の間に前記単一の画像フレームを形成する、方法。

第3 刊行物に記載された発明
1.刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-101862号公報(以下「刊行物1」という。)には、それぞれ、図面とともに、次の事項が記載されている。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、振動による画像劣化を低減することができる撮像装置および撮像方法に関する。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の特開平7-218970号公報記載のカメラでは、露光指示後で所定時間が経過する前に手振れの影響が小さくすることできるが、そのために露光終了までの時間が遅くなってしまう。また、所定時間が過ぎても、手振れがおさまらなければ、効果がないということになる。また、特開平9-116858号公報記載の撮像装置では、複数枚の画像を一時的にメモリへ蓄え、その中から手振れの少ない画像を選択するというものであるが、複数枚の適正露光に達した画像を得るための撮影時間が長くなってしまう。さらに、このような撮像装置では、特別な像振れ補正機構を設けることにより、手振れによるボケた画像の記録を低減していたが、像振れ機構があったとしても、像振れ機構の可動範囲を超える像振れが生じた場合は、補正しきれない場合があった。
【0006】また、振れを補正する機構を特別に設けなくても手振れによる画像劣化を低減できるようにすることを目的とした撮像装置では、像振れ補正機構が設けられており、像振れ補正機構の可動範囲より大きな像振れが生じても、画像での像振れが許容範囲であれば、被写体像の入力を始めからやり直す必要がないようになっているが、この方法では複数枚の画像間の移動ベクトルを検出できない。また、速度ベクトルに応じて複数枚の画像を移動させた後に画像合成することにより、一段と振動による画像劣化が低減された静止画像を得ることができない。さらに、画像合成などの画像処理を撮影後に行うことができないため、撮影時間が長くなってしまうことがある。また、振動による画像劣化を減少させる手段は、補正許容量以上の振動による画像劣化が生じると劣化を減少することが困難であった。その他、手振れを低減する手段として、短時間の撮影で適正露光できる超高感度撮像素子を使用する方法もあるが、このような手振れによる影響を受けず、画像劣化がない写真を得られる超高感度素子は高価なものであることが多い。
【0007】そこで、本発明の第1の目的は、高価な超高感度素子を使わずに振動による画像劣化を低減させることができ、撮影時間が短く適正露光時間に達していない画像を捨てることなく再利用することができる撮像装置および撮像方法を提供することである。本発明の第2の目的は、画像合成の際に複数枚の画像を判定手段の出力結果に基づいて、複数枚の画像において振動または動きが許容範囲内にある画像であるかどうかを判断することなく合成し、振動による画像劣化を低減させることができる撮像装置および撮像方法を提供することである。本発明の第3の目的は、複数枚の画像合成処理を撮影後に行うことによって撮影時間を短縮することができる撮像装置および撮像方法を提供することである。本発明の第4の目的は、複数枚の画像を判定手段の出力結果に基づいて、複数枚の画像において振動または動きが許容範囲内にある画像であるかの判断処理と画像合成処理を撮影後に行うことにより、撮影時間を短縮し、任意に定められた撮影時間内で撮影することができる撮像装置および撮像方法を提供することである。
【0008】本発明の第5の目的は、複数枚の画像より移動ベクトルを求めて、振動による画像劣化の少ない静止画像を得ることができる撮像装置および撮像方法を提供することである。本発明の第6の目的は、撮像素子の振動または画像における動きに基づいて、振動による画像劣化の少ない静止画像を得ることができる撮像装置および撮像方法を提供することである。

【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態について図1ないし図16を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る撮像装置の概略構成を示した図である。撮像装置は、入力または撮影された複数枚の画像を記憶する画像記憶部、撮像素子の振動または画像における動きを検出する変位検出部、変位検出部の出力結果に基づいて変位が許容範囲内にあるか否かを判定する画像判定部、および、複数枚の画像を画像判定部の判定出力結果に基づて複数枚の画像において振動または動きが許容範囲内にある画像を合成する画像合成部とを備えている。
【0016】本実施の形態の撮像装置では、通常の撮像素子より高速で連写できる撮像素子を使用し、高速シャッタなどを用いて連続撮影を行い、振動が画像劣化にほとんど影響しないほどの短い時間で複数枚の画像を撮影するようになっている(後述の図6参照)。撮影時に振れ検出センサを使用し、画像劣化のない複数枚の画像と対応づけ、像振れ幅の大きい画像(図6のA、B、C、Dに当たる部分)を切り捨てて、像振れ幅が許容範囲にある画像群を集め、1枚の画像に合成することによる手振れ補正を行う。このとき、振動が画像劣化にほとんど影響しないほどの短い時間で撮影された複数枚の画像は、画像信号が適正露光時間よりも短くなってノイズに埋もれてしまっても、複数枚の画像合成を行うことにより、ノイズが平均化され画像信号だけが強調され、適正露光時間に達した静止画像を復元することができる。
【0017】まず、第1の実施形態について説明する。図2は、第1の実施形態に係る撮像装置を適用した電子カメラの一例を示した図である。図2に示したように、全体制御部1、表示部2、操作部3、振動検出部4、モータドライバ5、モータ6、レンズ7、ローパスフィルタ(赤外線カットフィルタ)8、高速撮像可能な撮像部9、CDS(相関2重サンプリング)-A/D(アナログ/ディジタル)10、画像転送部11、画像処理部12、記憶部13を備えている。振動検出部4および画像処理部12より検出された手振れを元に、像振れ量を算出する手段(全体制御部1に含まれる)によって被写体像の像振れを算出し、撮影された複数枚の画像と対応付ける。その結果に基づいて、画像処理部12によって複数枚の画像を合成し、像振れによる画像劣化を低減する。
【0018】図3は、第1の実施形態に係る撮像装置の動作手順を示したフローチャートである。また、図4は、撮影する場合の一般的な像振れの軌跡を示した図である。図5は、通常の撮像装置の露光開始からの像振れ量の推移と通常の撮像装置より撮影された画像の推移の一例を示した図であり、これより得られる画像には、振動による画像劣化が発生している。図6は、本実施の形態に係る撮像装置の露光開始からの像振れ量の推移と高速撮影可能な撮像装置より撮影された画像の推移から振動による画像劣化を防ぐ手段の一例を示した図であり、これより、振動による画像劣化のない画像を得ることができる。図4(a)に示したように、第1のレリーズをオンにして、露光前に測光を行い(ステップ1)、撮影時の条件より適正露光時間を求める(ステップ2)。第2のレリーズをオンにして、高速シャッタと高速撮影可能な撮像装置により連続撮影を行い、複数枚の画像を撮像する(ステップ3)。複数枚の画像と像振れ量との関係を調べ(ステップ4:判定)、振れ許容範囲外で撮影された画像(ステップ4;N)は保存せずに連続撮影へ戻る。許容範囲内で撮影された画像(ステップ4;Y)は保存をして(ステップ5)、合成する(ステップ6)。合成された画像と適正露光時間との関係を調べ(ステップ7:評価)、合成された画像が適正露出時間に達していなければ連続撮影に戻り(ステップ7;N)、適正露光時間に達していれば(ステップ7;Y)、合成された画像を記憶する(ステップ8)。
【0019】次に、複数枚の画像と像振れ量とを比較し(ステップ4)、像振れ量が許容範囲にある画像を適正露光時間に達するまで合成する手法(ステップ7)について説明する。撮影時に手振れをしないように意識してカメラを構えた場合の像振れは、図4(a)に示したようにはならず、ほとんどの場合、図4(b)に示したように、像振れの軌跡が、露光開始点の周辺を移動する(S→A→B→C→D→・・・)ような手振れが生じる。従って、撮影期間中で、露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている間に撮影された画像(ABCD部分)を消去すれば、画像合成により手振れなどによる画像劣化を防ぐことができる。従来の撮影方法では、図5に示すように適正露光時間に達するまでを1枚の画像としているため、振れ許容範囲外にある部分(図5のABCD部分)も1枚の画像に含まれてしまい、振動による画像劣化が発生することになる。そこで、本実施の形態のような高速撮影可能な撮像装置で短時間の間に複数枚の撮影を行うことにより、図6に示すように各画像と像振れ量とを比較し、振れ許容範囲外にある部分で撮影された画像群(図6のABCD部分)だけを保存しないようにすることができる。残った振れ許容範囲内にある画像群を合成すること(図6)によって適正露光時間に達した画像を復元できるので、高速連続撮影された画像は適正露光時間に達していなくてもよいことになる。









2.刊行物1に記載された発明
以上の刊行物1の記載からみて、刊行物1には、次の発明が記載されている。

(2a)刊行物1の【0018】によれば、刊行物1には「撮像方法」(【0001】)について、「第2のレリーズをオンにして、高速シャッタと高速撮影可能な撮像装置により連続撮影を行い、複数枚の画像を撮像するステップ」を有している。
上記撮像は、「レンズ」、「ローパスフィルタ」を介して「高速撮像可能な撮像部」で行われること、および、「高速撮像可能な撮像部」は「高速用CCD」であることは、【0017】や図2の記載から明らかである。上記「レンズ」、「ローパスフィルタ」、「高速用CCD」を用いて行う撮像は、レンズで結像した画像を高速用CCDに投影して露光することによって実現していることは明白である。
したがって、刊行物1の撮像方法は、「第2のレリーズをオンにして、レンズで結像した画像を、ローパスフィルタを介して、高速用CCDに投影して露光することで連続撮影を行い、複数枚の画像を撮像するステップ」を有している。

(2b)刊行物1の【0018】の記載によれば、刊行物1の撮像方法では、「複数枚の画像と像振れ量との関係を調べ」るステップを有している。
上記ステップは、【0019】の記載によれば、「露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている間に撮影された画像(ABCD部分)・・・だけを保存しないようにする」のであるから、上記像振れ量は露光を開始した位置からの振れを検出していることは明らかである。
したがって、刊行物1の撮像方法は、「複数枚の画像と露光を開始した位置からの像振れ量との関係を調べるステップ」を有しているといえる。

(2c)刊行物1の【0018】、【0019】、図3、図6の記載をみると、刊行物1の撮像方法では、「振れ許容範囲外で撮影された画像(ステップ4;N)は保存せずに連続撮影へ戻る。許容範囲内で撮影された画像(ステップ4;Y)は保存をして(ステップ5)、合成する(ステップ6)・・・合成された画像が適正露出時間に達していなければ連続撮影に戻り(ステップ7;N)、適正露光時間に達していれば(ステップ7;Y)、合成された画像を記憶する(ステップ8)」を有し、上記ステップ4ないしステップ8は、(2a)で検討した「複数枚の画像を撮像するステップ」を開始してから「画像を記憶するステップ」までに、A、B、C、Dの区間の画像を合成することなく、画像を合成することといえるから、上記A、B、C、Dの区間を除いた複数の各区間に撮像された画像に基づいて画像が形成されているといえる。
したがって、刊行物1の撮像方法は、「複数の区間に撮像された画像に基づいて画像が形成されるステップ」を有しているといえる。

(2d)上記刊行物1の【0019】及び図6を参照すると、上記(2c)の画像が形成されるステップでは、例えば「露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている間に撮影された画像B」の区間の両側にある「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の間に撮影された画像」を、それぞれ、画像B(前)、画像B(後)とすると、
画像B(前)は、「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第1の間に撮影された第1の画像B(前)」、
画像B(後)は、「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第2の間に撮影された第2の画像B(後)」、
画像Bは、「露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている第1の間と第2の間に挟まれた第3の間に撮影された画像B」、
ということができ、上記ステップでは、これらの画像が存在しているということができる。
したがって、上記画像が形成されるステップには、
「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第1の間に撮影された第1の画像B(前)」、
「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第2の間に撮影された第2の画像B(後)」、
「露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている第1の間と第2の間に挟まれた第3の間に撮影された画像B」が存在するといえる。

(2e)まとめ
以上、(2a)ないし(2d)の記載によれば、刊行物1には、以下のとおりの発明(以下、刊行物1発明という。)が記載されているといえる。

第2のレリーズをオンにして、レンズで結像した画像を、ローパスフィルタを介して、高速用CCDに投影して露光することで連続撮影を行い、複数枚の画像を撮像するステップと、
複数枚の画像と露光を開始した位置からの像振れ量との関係を調べるステップと、
複数の区間に撮像された画像に基づいて画像が形成されるステップであって、
露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第1の間に撮影された第1の画像B(前)、
露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第2の間に撮影された第2の画像B(後)、
露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている第1の間と第2の間に挟まれた第3の間に撮影された画像B、
が存在する、
撮像方法。

3.刊行物2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-166351号公報(以下「刊行物2」という。)には、それぞれ、図面とともに、次の事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に手振れ補正機能を有する電子カメラ装置に関する。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】手振れ補正機能は、撮影時にオペレータ(電子カメラのユーザ)の手振れにより、撮影光学系に発生する被写体の結像位置のずれ(像振れ)を補正する機能である。具体的な手振れ補正方式としては、各種の方式が開発または提案されている。例えば、複数回の連続的撮影を実行し、各撮影毎の画像データの手振れ補正結果を重ね合わせて、結果として手振れを抑制した露出画像を得る方式などが提案されている(例えば特開平9-261526号公報を参照)。
【0005】しかしながら、前記の従来の方式では、データ量及び手振れ補正の演算量が膨大になるため、実際の電子カメラに実装する場合にシステム上の制約になる。
【0006】そこで、本発明の目的は、手振れの発生状況に応じた実際的な手振れ補正機能を実現し、常に快適な撮影を可能とする電子カメラ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の観点は、撮影時の露光中に手振れ値を予測し、当該予測値が許容値を超える場合には、当該露光期間の画像データを削除して使用しない手振れ補正機能を備えた電子カメラ装置に関する。
【0008】即ち、本発明は、撮影レンズを介して受光した被写体像を光電変換して画像データを生成する撮像手段と、撮影時に発生した手振れに関係する手振れ値を検出する検出手段と、検出手段により検出された手振れ値に基づいて、撮像手段での露光中の所定期間に許容される手振れ値を超える手振れが発生するときは、当該所定期間での露光動作に対応する画像データが除去されるように制御する制御手段とを有する電子カメラ装置である。
【0009】このような構成であれば、特に大きい手振れが発生したときの画像データを撮影結果から取り除くことにより、結果的に手振れの影響を除外した撮影画像を得ることが可能となる。

【0013】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】(電子カメラの構成)図1は、同実施形態に関係する電子カメラの要部を示すブロック図である。同実施形態の電子カメラは、静止画撮影機能を主機能とし、動画撮影機能も有する電子スチールカメラ(ディジタルカメラ)を想定する。当然ながら、動画撮影機能を主機能とし、静止画撮影機能も有するディジタルビデオカメラにも適用可能である。

【0026】(手振れ補正動作)以下図1と共に、図2のフローチャート及び図6を参照して、同実施形態の手振れ補正動作を説明する。同実施形態の手振れ補正動作は、システムコントローラ3が手振れ値を予測し、撮像回路16のCCD撮像素子に対する露光制御(露光動作の強制終了)を実行するものである。
【0027】まず、入力操作部のレリーズボタン50が操作されると、撮影動作(ここでは静止画撮影動作)が実行される。即ち、撮影系1において、撮像回路16では、CCD撮像素子に対する露光動作が開始される(ステップS1)。CCD撮像素子により光電変換された被写体像に対応する画像信号は、A/Dコンバータ20によりディジタルの画像データに変換される。
【0028】システムコントローラ3は、撮影動作が開始してから、所定の間隔で手振れセンサ90により検出された手振れ値を入力する(ステップS2)。システムコントローラ3は、入力した手振れ値に基づいて、露光開始から所定期間における手振れ値(BR)を予測し、当該予測値(BR)と許容値(BRT)とを比較する(ステップS3)。ここで、図6(A)に示すように、露光時間(T)を横軸として、実際に検出された手振れ値の変化(実線600)と、システムコントローラ3が予測した予測値(点線601)とを想定する。なお、同図(B)は、CCD撮像素子に対する露光量(時間積分値)を示している。
【0029】システムコントローラ3は、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下であれば、通常の露光終了まで撮像回路16の露光制御を続行する(ステップS4,S5)。一方、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える場合には、システムコントローラ3は、前記予測値に基づいて撮像回路16での露光動作を強制的に終了する(ステップS3のNO,S6)。即ち、図6に示すように、手振れ値が許容値(BRT)を超えると予測された時点(Ts)で、露光動作(CCD撮像素子の電荷蓄積)を停止させる。
【0030】システムコントローラ3は、強制的に露光動作を終了させて、撮像回路16からA/Dコンバータ20に画像信号を出力させる。このとき、システムコントローラ3は、撮像回路16のアンプまたはA/Dコンバータ20のゲイン(G)を調整する。従って、図6(B)に示すように、強制終了により削除された露光量(点線の範囲)に相当するゲイン(G=Texp/Ts)を補償することにより、画像データの信号品質の劣化を抑制できる。
【0031】以上のように同実施形態によれば、撮影動作時の露光中に、検出された手振れ値に基づいて、所定期間の手振れ値を予測し、当該予測値が許容値を超える場合には、当該露光動作を強制的に終了させる。これにより、予測される許容範囲外の手振れにより影響される画像データ(1枚分の静止画データの一部)を削除することができる。従って、手振れの影響のない安定した撮影画像を得ることが可能となる。なお、削減した露光量に相当するゲイン(G)を調整することにより、画像データの信号品質の劣化を抑制できる。

【0032】(変形例1)図3のフローチャート及び図7は、同実施形態の変形例に関係する図である。本変形例は、同実施形態において所定期間だけ露光動作を強制的に終了させる場合に、所定期間以前の画像信号をCCD撮像素子に蓄積し、当該画像信号を所定期間後に得られる画像信号に加算する構成(間欠露光制御方式)である。
【0033】ここで言う所定期間とは、例えば露光中に許容値(BRT)を超える手振れが発生した期間のように、画像データに手振れの影響が生ずるような露光中の期間等が相当する。
【0034】以下図3及び図7を参照して具体的に説明する。
【0035】同実施形態と同様に、システムコントローラ3は、撮影動作が開始してから、所定の間隔で手振れセンサ90により検出された手振れ値を入力する(ステップS10,S11)。システムコントローラ3は、入力した手振れ値に基づいて、図7(A)に示すように、露光開始から所定期間における手振れ値(BR)を予測する(実線600)。なお、同図(B)は、CCD撮像素子に対する露光量702,703(時間積分値)を示している。システムコントローラ3は、当該予測値(BR)と許容値(BRT)とを比較する(ステップS12)。
【0036】システムコントローラ3は、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下であれば、通常の露光終了まで撮像回路16の露光制御を続行する(ステップS13,S14)。一方、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える場合には、システムコントローラ3は、撮像回路16での所定期間(ΔT)の露光動作を強制的に一時終了するために、当該所定期間(ΔT)以前の露光に応じた電荷量(画像信号)をCCD撮像素子の垂直転送部(V-CCD)に転送して一時蓄積すると共に、V-CCDの駆動を一時停止する(ステップS12のNO,S15,S16)。
【0037】そして、システムコントローラ3は、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下になると予測される期間(ΔT)にCCD撮像素子に蓄積された不要電荷を初期化(排出)し、再び、次の露光動作で(Texp-ΔT)の期間、電荷を蓄積するように撮像回路16を制御する(ステップS17,S18)。
【0038】ここで、期間(Texp-ΔT)は、期間(Ts)の蓄積動作と所定期間(ΔT)から算出された適正露光レベルまでの必要な残りの露光時間で、この期間(Texp-ΔT)の蓄積が終了すると、システムコントローラ3は、蓄積電荷(画像信号)をCCD撮像素子の垂直転送部(V-CCD)に転送する(ステップS12のYES,S13,S14)。
【0039】以上の動作により、図7(C)に示すように、期間(Ts)と期間(Texp-ΔT)に蓄積された電荷をV-CCD内で蓄積加算された電荷を得ることができる。手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超えた所定期間(ΔT)からそれ以後ので蓄積加算されたCCD撮像素子の電荷を得ることができる。
【0040】以上のように本変形例によれば、露光中に手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える所定期間(ΔT)では、強制的に露光動作を終了させる。従って、当該所定期間(ΔT)で得られる画像データを削除する。さらに、当該所定期間以前の電荷量(画像信号)を蓄積し、かつ所定期間以後(Texp-ΔT)に蓄積された電荷を加算する。従って、当該CCD撮像素子に蓄積及び加算された電荷を使用して、手振れの発生期間に対応する画像データの不足分を補償することが可能となる。これにより、手振れの影響がなく、かつ信号品質の劣化を抑制した撮影画像を得ることが可能となる。

【0047】(変形例3)図5のフローチャートは、同実施形態の変形例3に関係する図である。本変形例は、手振れ予測値(BR)が許容範囲外となる所定期間に、撮像回路16での露光制御ではなく、メカシャッタ14を制御して露光動作を強制的に終了させる構成である。
【0048】即ち、システムコントローラ3は、撮影動作が開始してから、所定の間隔で手振れセンサ90により検出された手振れ値を入力する(ステップS40,S41)。システムコントローラ3は、入力した手振れ値に基づいて、露光開始から所定期間における手振れ値(BR)を予測し、当該予測値(BR)と許容値(BRT)とを比較する(ステップS42)。
【0049】システムコントローラ3は、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下であれば、通常の露光終了まで撮像回路16の露光制御を続行する(ステップS43,S44)。一方、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える場合には、システムコントローラ3は、メカシャッタ14を強制的に閉じて、所定期間の露光動作を強制的に終了する(ステップS45)。そして、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下になると、システムコントローラ3は、メカシャッタ14を開けて、露光動作を再開させる(ステップS46のYES,S47)。
【0050】以上のように本変形例によれば、露光中に手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える所定期間では、メカシャッタ14を強制的に閉じて、強制的に露光動作を終了させる。従って、当該所定期間で得られる画像データを削除する。そして、手振れ予測値が許容範囲内であれば、メカシャッタ14を開いて、露光動作を再開させることにより、直ちに正常な画像データを得るこができる。従って、手振れの影響がなく、かつ画像データの信号品質の劣化を最小限に抑制した撮影画像を得ることが可能となる。






4.刊行物2に記載された技術事項
以上の刊行物2の記載からみて、刊行物2には、次の技術事項が記載されている。

(4a)刊行物2の【0001】、【0004】ないし【0009】の記載によれば、刊行物2は、撮影時の露光中に手振れ値を予測し、当該予測値が許容値を超える場合には、当該露光期間の画像データを削除して使用しない手振れ補正機能を備えた電子カメラ装置に関する技術が開示されているといえる。

(4b)刊行物2の全体の記載からみて、刊行物2の【0013】ないし【0031】には実施の形態が、【0032】ないし【0040】には実施の形態の変形例1が、【0047】ないし【0050】には実施の形態の変形例3が開示されている。

(4c)上記実施の形態は、特に【0031】の記載によれば「撮影動作時の露光中に、検出された手振れ値に基づいて、所定期間の手振れ値を予測し、当該予測値が許容値を超える場合には、当該露光動作を強制的に終了させ・・・削減した露光量に相当するゲイン(G)を調整することにより、画像データの信号品質の劣化を抑制」する構成を有しているものといえる。

(4d)変形例1(特に【0036】ないし【0040】の記載参照)では、「手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下であれば、通常の露光終了まで撮像回路16の露光制御を続行する(ステップS13,S14)。一方、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える場合には、システムコントローラ3は、撮像回路16での所定期間(ΔT)の露光動作を強制的に一時終了するために、当該所定期間(ΔT)以前の露光に応じた電荷量(画像信号)をCCD撮像素子の垂直転送部(V-CCD)に転送して一時蓄積すると共に、V-CCDの駆動を一時停止」し、「手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下になると予測される期間(ΔT)にCCD撮像素子に蓄積された不要電荷を初期化(排出)し、再び、次の露光動作で(Texp-ΔT)の期間、電荷を蓄積するように撮像回路16を制御」し、「適正露光レベルまでの必要な残りの露光時間で、この期間(Texp-ΔT)の蓄積が終了すると、システムコントローラ3は、蓄積電荷(画像信号)をCCD撮像素子の垂直転送部(V-CCD)に転送する」ことで、「露光中に手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える所定期間(ΔT)では、強制的に露光動作を終了させる。従って、当該所定期間(ΔT)で得られる画像データを削除する。さらに、当該所定期間以前の電荷量(画像信号)を蓄積し、かつ所定期間以後(Texp-ΔT)に蓄積された電荷を加算する。従って、当該CCD撮像素子に蓄積及び加算された電荷を使用して、手振れの発生期間に対応する画像データの不足分を補償することが可能となる。」ことを実現しているといえる。
すなわち、適正露光レベルまでの必要な露光時間となるまで、撮像回路16の露光制御の続行と、露光動作の強制的な一時終了を繰り返す構成であって、一時終了時には、CCD撮像素子の垂直転送部(V-CCD)に転送して一時蓄積すると共に、CCD撮像素子に蓄積された不要電荷を初期化(排出)し、再び、次の露光動作が行われる構成が開示されている。

(4e)変形例3は、「手振れ予測値(BR)が許容範囲外となる所定期間に、撮像回路16での露光制御ではなく、メカシャッタ14を制御して露光動作を強制的に終了させる構成」であって、「手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下であれば、通常の露光終了まで撮像回路16の露光制御を続行」し、「手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える場合には、システムコントローラ3は、メカシャッタ14を強制的に閉じて、所定期間の露光動作を強制的に終了」させ、「手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)以下になると、システムコントローラ3は、メカシャッタ14を開けて、露光動作を再開させる」ことにより、「露光中に手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える所定期間では、メカシャッタ14を強制的に閉じて、強制的に露光動作を終了させる。従って、当該所定期間で得られる画像データを削除する。そして、手振れ予測値が許容範囲内であれば、メカシャッタ14を開いて、露光動作を再開させることにより、直ちに正常な画像データを得るこができる。」ことを実現しているといえる。
上記変形例3は、変形例1との対比において、図3、図5も参照すれば、メカシャッタを開閉制御することのみにより露光の続行と終了を制御しているから、この間CCD撮像素子は露光状態を保ったままであって、通常の露光終了(S44)で露光を終了し、撮像回路16からA/Dコンバータ20に画像信号を出力させる構成であることは、当業者であれば自明のことである。
したがって、刊行物2の撮像装置は、その変形例3において、露光動作の開始から露光動作の終了まで、撮像回路16のCCD撮像素子は露光状態で、メカシャッタの開閉制御のみで露光の続行と終了を制御することにより、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える場合はメカシャッタを閉じることで露光を終了し、手振れ予測値が許容範囲内の場合露光を再開させ、通常の露光終了(S44)で露光を終了し、撮像回路16からA/Dコンバータ20に画像信号を出力させる構成が開示されている。

5.刊行物3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-116477号公報(以下「刊行物3」という。)には、それぞれ、図面とともに、次の事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体撮像デバイスを備え、被写体を撮像して記録媒体に記録する撮像装置に関する。

【0004】本発明は、前述したような従来のこの種の撮像装置の像振れ補償の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像時に発生する像振れに基づいて、適確に撮像条件を制御して、高品質の撮像画像を得ることが可能な撮像装置を提供することにある。

【0027】このような構成の本実施の形態の動作を説明する。先ず、図3に示すフローチャートに基づいて、本実施の形態の単一露光処理モードでの動作を説明する。本実施の形態による被写体の撮像に際しては、オペレータは操作部21から単一露光処理モードの設定を行い、図3のフローチャートのステップS1で、操作部21のレリーズ釦を操作して第1のレリーズONにセットすると、ステップS2に進んで、全体制御ユニット14の指令によって、図示せぬ測光部により被写体の輝度が検出され測光データが取得される。そして、ステップS3において、検出された輝度に基づいて、図2に示すように、適正露出を行う第1の露光時間Taと、第1の露光時間Taよりも短い許容される露出不足の露出を行う第2の露光時間Tbとが設定され、レリーズ釦の第2のレリーズONセットの待機状態となる。
【0028】この状態から、ステップS5に進んで、オペレータが操作部21のレリーズ釦を操作して、第2のレリーズONにセットすると、ステップS6に進んで露光が開始され、被写体の撮影光像がレンズ系11に入射し、収束されてフィルタ5を透過する過程で、ローパスフィルタにより、被写体の高周波成分での偽色の発生が防止され、赤外線カットフィルタにより、赤外線による色情報の変化が防止される。この状態で、フィルタ5を透過した被写体の撮影光像が固体撮像デバイス10に結像され、固体撮像デバイス10によって、光電変換されて撮影光像に対応する電荷が固体撮像デバイス10に蓄積される。次いで、ステップS7において、全体制御ユニット14によって、第1の露光時間Taに達し、適正露光時間が経過しているか否かが判定され、露光開始直後では適正露光時間は経過していないので、ステップS8に進んで、全体制御ユニット14の指令によって、振動検出部20が作動して、露光時の手振れ量が検出され、ステップS9に進んで、全体制御ユニット14によって、検出した手振れ量に基づいて像振れ量が演算される。この演算では、水平方向の画素単位のずれ量の2乗と垂直方向の画素単位のずれ量の2乗との和の平方根が像振れ量として演算される。
【0029】そして、ステップS10に進んで、ステップS9で演算した像振れ量が、予め設定されている像振れの許容値を越えているか否かの判定が行われ、この判定では、例えば像振れの許容値が6画素と設定されており、水平方向のずれ量が4画素、垂直方向のずれ量が3画素であるとすると、16+9=25の平方根の5と許容値の6とが比較され、この場合には、像振れが許容値を越えていないと判定されるので、ステップS7に戻って、ステップS7ないしステップS10の動作が繰り返される。一方、ステップS7で、第1の露光時間Taに達して、適正露光時間が経過したと判定されると、ステップS12に進んで、全体制御ユニット14の制御によって、固体撮像デバイス10から蓄積電荷が撮像信号として読み出され、この撮像信号はCDS・AD変換回路15で、相関二重サンプリングが施されてAD変換される。さらに、AD変換された撮像信号に対して、画像処理部16において、圧縮、輪郭補正、直流再生、ガンマ補正、偽色信号抑制、高輝度着色防止、低彩度圧縮などの画像処理が行われた後に、画像処理された撮像信号は記録部17に入力され、記録部17によって撮像信号が記録媒体18に記録される。
【0030】一方、ステップS10での判定時に、水平方向のずれ量が5画素で、垂直方向のずれ量が4画素であると、25+16=41の平方根は、ほぼ6.4となり許容値の6よりも大となるので、像振れが許容値を越えていると判定され、ステップS11に進み、第2の露光時間Tbに達し許容露光時間が経過しているか否かの判定が行われ、許容露光時間が経過していると判定されると、ステップS12に進んで、すでに説明したように、固体撮像デバイス10から撮像信号が読み出され、画像データの処理と記録が行われる。また、ステップS11で許容露光時間の経過前であると判定されると、撮影失敗の警報が発せられ撮像動作は直ちに中止される。

6.刊行物3に記載された技術事項
以上の刊行物3の記載からみて、刊行物3には、次の技術事項が記載されている。

刊行物3の撮像装置は、「撮像時に発生する像振れに基づいて、適確に撮像条件を制御して、高品質の撮像画像を得ることが可能な撮像装置」であって、上記像振れの検出は「振動検出部20が作動して、露光時の手振れ量が検出され、ステップS9に進んで、全体制御ユニット14によって、検出した手振れ量に基づいて像振れ量が演算される。この演算では、水平方向の画素単位のずれ量の2乗と垂直方向の画素単位のずれ量の2乗との和の平方根が像振れ量として演算され・・・ステップS10に進んで、ステップS9で演算した像振れ量が、予め設定されている像振れの許容値を越えているか否かの判定が行われ、この判定では、例えば像振れの許容値が6画素と設定されており、水平方向のずれ量が4画素、垂直方向のずれ量が3画素であるとすると、16+9=25の平方根の5と許容値の6とが比較され、この場合には、像振れが許容値を越えていないと判定されるので、ステップS7に戻って、ステップS7ないしステップS10の動作が繰り返される。」構成を有しているといえる。
すなわち、刊行物3には、撮像装置の像振れの検出に際して、6画素以上ずれているか否かにより像振れが許容値を越えているか否か、すなわち、手ぶれの有無を決定しているといえるから、画素に基づき手ぶれの有無を決定する構成が開示されているといえる。

第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(4a)刊行物1発明の「第2のレリーズをオンにして、レンズで結像した画像を、ローパスフィルタを介して、高速用CCDに投影して露光することで連続撮影を行い、複数枚の画像を撮像するステップ」は、刊行物1発明でも「第1の画像B(前)」、「第2の画像B(後)」の撮像を行っているから、少なくとも2つの露光を行っている。
刊行物1発明では、露光を開始した時点から画像が形成されるまで、複数の区間に撮像が行われるが、この間「像振れが所定の許容量より外れている間」においても撮影が行われているから、露光が行われていることは明らかであり、したがって、露光期間の一部の間に高速撮像可能な撮像部で撮像が行われているとはいえない。
刊行物1発明の「レンズ」、「ローパスフィルタ」、「高速用CCD」は画像を結像して撮像するシステムといえるから、結像システムである点で本願発明と相違がない。
また、刊行物1のCCDは、画素の配列から成り、各画素は1つの画素領域を有することは技術常識である。
以上のことから、刊行物1発明は、本願発明の「少なくとも2つの露光を実現するために、少なくとも露光期間の間において、結像システムの画像センサーの上に投影画像を露光するステップであって、前記画像センサーは画素の配列から成り、各画素は1つの画素領域を有する、ステップ」を有しているといえる。
もっとも、本願発明では、露光するステップが「少なくとも露光期間の一部の間において」露光するのに対し、刊行物1発明では「少なくとも露光期間の一部の間において」露光しているとはいえない点で相違する。

(4b)刊行物1発明の「複数枚の画像と露光を開始した位置からの像振れ量との関係を調べるステップ」における複数枚の画像は、刊行物1発明において、露光を開始してから終了するまでに刊行物1発明のCCDが撮像している画像であり、上記画像と露光を開始した位置からの像振れ量とは、露光を開始した位置と上記撮像を行った時の結像システムの移動の量といえるから、刊行物1発明の上記ステップは、本願発明の「前記露光期間における結像システムの初期位置に対する前記結像システムの移動量を決定するために、前記露光期間の間に、前記結像システムの移動を検出するステップ」に相当するといえる。

(4c)刊行物1発明の「複数の区間に撮像された画像に基づいて画像が形成されるステップ」の複数の区間に撮像された画像は、複数の各区間でそれぞれ露光されることで撮像されることは明白であるから、少なくとも複数の露光に基づいて画像が形成されているといえる。上記複数の区間で行われる複数の露光を、それぞれ、第1の露光、第2の露光と称してもよいから、刊行物1発明は、本願発明の「少なくとも第1の露光と第2の露光とに基づいて画像を構築するステップ」を有しているといえる。

(4d)刊行物1発明の「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第1の間に撮影された第1の画像B(前)」の「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第1の間」は、露光期間のうちの、結像システムの移動量が、前記結像システムの初期位置に対する所定の移動範囲の内である第1の期間といえる。
また、この間に撮像がされた第1の画像B(前)が存在するということは、露光が実現されているといえる。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の「前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する所定の移動範囲の内である、前記露光期間内において、第1の期間に、前記第1の露光が実現され」の構成を有している。

(4e)刊行物1発明の「 露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第2の間に撮影された第2の画像B(後)」の「露光開始からの像振れが所定の許容量以内の第2の間」は、露光期間のうちの、結像システムの移動量が、前記結像システムの初期位置に対する所定の移動範囲の内である第2の期間といえる。
また、この間に撮像がされた第2の画像B(後)が存在するということは、露光が実現されているといえる。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の「前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の内である前記露光期間内において、第2の期間に、前記第2の露光が実現され」の構成を有している。

(4f)刊行物1発明の「露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている第1の間と第2の間に挟まれた第3の間に撮影された画像B」の「第1の間」と「第2の間」は、それぞれ、上記(4d)、(4e)にて検討したとおり、本願発明の「第1の期間」、「第2の期間」に相当するといえる。
また、刊行物1発明の「露光開始からの像振れが所定の許容量より外れている」とは、「結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の外である」ことに相当する。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の「前記第1の期間と前記第2の期間との間に、前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の外である、第3の期間が存在し」の構成を有している。

(4g)刊行物1発明は、本願発明の「前記所定の移動範囲は1以上の画素領域に基づき決定される、ステップ」を有していない。

(4h)刊行物1発明は、本願発明の「捕捉された画像を構築するために、前記露光期間の後に単一の画像フレームをキャプチャするステップ」を有さず、また本願発明の「前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の内であるとき実現された前記第1の露光と前記第2の露光が、前記露光期間の間に前記単一の画像フレームを形成する」の構成も有していない。

(4i)まとめ(一致点、相違点)
以上まとめると、本願発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
少なくとも2つの露光を実現するために、少なくとも露光期間の間において、結像システムの画像センサーの上に投影画像を露光するステップであって、前記画像センサーは画素の配列から成り、各画素は1つの画素領域を有する、ステップと、
前記露光期間における結像システムの初期位置に対する前記結像システムの移動量を決定するために、前記露光期間の間に、前記結像システムの移動を検出するステップと、
少なくとも第1の露光と第2の露光とに基づいて画像を構築するステップであって、
前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する所定の移動範囲の内である、前記露光期間内において、第1の期間に、前記第1の露光が実現され、
前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の内である前記露光期間内において、第2の期間に、前記第2の露光が実現され、
前記第1の期間と前記第2の期間との間に、前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の外である、第3の期間が存在する方法。

(相違点)
相違点1
本願発明では、露光するステップが「少なくとも露光期間の一部の間において」露光するのに対し、刊行物1発明では「少なくとも露光期間の一部の間において」露光しているとはいえない点。

相違点2
刊行物1発明は、本願発明の「前記所定の移動範囲は1以上の画素領域に基づき決定される、ステップ」を有していない点。

相違点3
刊行物1発明は、本願発明の「捕捉された画像を構築するために、前記露光期間の後に単一の画像フレームをキャプチャするステップ」を有さず、また本願発明の「前記結像システムの前記決定された移動量が、前記結像システムの初期位置に対する前記所定の移動範囲の内であるとき実現された前記第1の露光と前記第2の露光が、前記露光期間の間に前記単一の画像フレームを形成する」の構成も有していない点。

第5 判断
上記相違点について検討する。

(5a)相違点1、相違点3について
審査官が拒絶理由通知で引用した刊行物2には、「露光動作の開始から露光動作の終了まで、撮像回路16のCCD撮像素子は露光状態で、メカシャッタの開閉制御のみで露光の続行と終了を制御することにより、手振れ予測値(BR)が許容値(BRT)を超える場合はメカシャッタを閉じることで露光を終了し、手振れ予測値が許容範囲内の場合露光を再開させ、通常の露光終了(S44)で露光を終了し、撮像回路16からA/Dコンバータ20に画像信号を出力させる構成」が開示されている。
当該刊行物2の構成は、「露光動作の開始から露光動作の終了」の間に、メカシャッタが開くと露光し、メカシャッタが閉じると露光を終了し、再びメカシャッタを開いて露光を行う構成が開示されているから、相違点1に相当する構成が開示されているといえ、また、先に行われた露光は、本願発明の第1の露光、後に行われた露光は本願発明の第2の露光、間にあるメカシャッタが閉じた期間は本願発明の第3の期間に相当するといえる。
また、撮像回路のCCD撮像素子は露光状態で、メカシャッタの開閉で露光の続行と終了を制御しているが、当該構成により、メカシャッタの開閉に関わらず、CCD撮像素子は常時露光状態であるから、露光動作の開始から露光動作の終了まで単一の電荷が蓄積されて、通常の露光が終了(S44)すると上記蓄積された単一の電荷に基づく画像フレームが出力されることは当業者であれば明白であるから、相違点3の構成に相当する構成を有しているといえる。
刊行物1、刊行物2は共に、手振れが生じたときに、その影響を小さくするため、手振れ量を検出しながら、手振れが小さいときに露光を行い、手振れが大きいと露光しないという、間欠的な露光を行う構成を採用したものであるから、上記間欠的な露光の実現手段として、刊行物1の露光の手法に代えて刊行物2の露光の手法を採用することは、当業者が容易になしえたことであるといえる。

(5b)相違点2について
刊行物3には、「撮像装置の像振れの検出に際して、6画素以上ずれているか否かにより像振れが許容値を越えているか否か、すなわち、手ぶれの有無を決定しているといえるから、画素に基づき手ぶれの有無を決定する構成」が開示されているから、上記相違点2に相当する構成が開示されているといえる。
そして、刊行物1発明において、その手振れの検出をどのように行うかは当業者が適宜なしえた設計的事項であり、刊行物1発明の手振れ検出に刊行物3に記載された手振れ検出ステップを採用することは、当業者が容易になしえたことであるといえる。

(5c)効果
以上のように、上記各相違点は当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

第6 むすび
以上、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1ないし刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし請求項11に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-08 
結審通知日 2015-04-14 
審決日 2015-06-18 
出願番号 特願2012-245547(P2012-245547)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 洋介  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
渡邊 聡
発明の名称 画像安定化のための方法とシステム  

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