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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1307959
審判番号 不服2013-24180  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-06 
確定日 2015-11-26 
事件の表示 特願2006-330292「低密度の膨張された化粧料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年6月21日出願公開、特開2007-153901〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成18年12月7日(パリ条約による優先権主張2005年12月8日 フランス)を出願日とする出願であって、平成24年4月11日付けで拒絶理由が通知され、平成24年10月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成25年7月23日付けで拒絶査定がされ、平成25年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同日に手続補正書が提出され、平成26年1月23日に手続補正書(審判請求書)が提出され、平成26年7月29日付けで審尋(前置報告書(平成26年3月17日付け)に基づく審尋)がされ、同日に上申書が提出され、平成26年8月6日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年12月6日付け手続補正の補正却下の決定について
[補正却下の決定の結論]
平成25年12月6日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年12月6日付け手続補正(以下、「本件補正」といい、それによる本願の特許請求の範囲、明細書を「本件補正特許請求の範囲」、「本件補正明細書」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?12である、
「【請求項1】
ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための膨張された化粧料組成物であって、該膨張された化粧料組成物は0.12g/cm^(3)以下の密度を有し、かつ空気又は不活性ガス及び基本組成物を使用して形成され、該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを、生理的に許容し得る媒体中に含み、該フィラーは、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、ポリ‐β‐アラニン粉末、ポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ラウロイルリシン、中空ポリマー微小球体、シリコーン樹脂粉末、エラストマー状ポリオルガノシロキサン粒子、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球体、ガラス又はセラミックスマイクロカプセル、及び8?22個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導された金属石鹸、並びにこれらの混合物から選ばれ、該膨張された化粧料組成物は、該基本組成物及び空気又は不活性ガスを使用してムースの形態において安定に形成されており、該ガスは該基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である、前記組成物。

【請求項3】
ファンデーション又はファンデーションベースの形態における請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
組成物の合計重量に対して0.1?35重量%のフィラーを含む請求項1?3のいずれか一つに記載の組成物。

【請求項6】
3.0g/cm^(3)未満の密度を持つ少なくともひとつのフィラーを含む請求項1?5のいずれか一つに記載の組成物。

【請求項12】
体をケア及び/又はメークアップするための方法において、請求項1?9のいずれか一つに定義された膨張された組成物を、処理及び/又はメークアップされるべき表面に施与する方法。」
を新たな請求項1?9である、
「【請求項1】
ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための膨張された化粧料組成物であって、該膨張された化粧料組成物は0.12g/cm^(3)以下の密度を有し、かつ空気又は不活性ガス及び基本組成物を使用して形成され、
該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを、生理的に許容し得る媒体中に含み、
該フィラーは、3.0g/cm^(3)未満の密度を持ち、かつタルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、ポリ‐β‐アラニン粉末、ポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ラウロイルリシン、中空ポリマー微小球体、シリコーン樹脂粉末、エラストマー状ポリオルガノシロキサン粒子、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球体、ガラス又はセラミックスマイクロカプセル、及び8?22個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導された金属石鹸、並びにこれらの混合物から選ばれ、
該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%の水を含み、
該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%のフィラーを含み、
該膨張された化粧料組成物は、少なくとも1の非揮発性油を含み、かつ
該膨張された化粧料組成物は、該基本組成物及び空気又は不活性ガスを使用してムースの形態において安定に形成されており、該ガスは該基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である、前記組成物。

【請求項3】
ファンデーション又はファンデーションベースの形態における請求項1又は2記載の組成物。

【請求項9】
体をケア及び/又はメークアップするための方法において、請求項1?7のいずれか一つに定義された膨張された組成物を、処理及び/又はメークアップされるべき表面に施与する方法。」
と補正するものである。

そして、本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、「該フィラーは、3.0g/cm^(3)未満の密度を持ち」、「該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%の水を含み」、「該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%のフィラーを含み」、「該膨張された化粧料組成物は、少なくとも1の非揮発性油を含み」との事項を付加する補正事項を含むものである。

2.目的要件の検討
上記補正事項のうち、「該フィラーは、3.0g/cm^(3)未満の密度を持ち」、「該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%のフィラーを含み」は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「フィラー」について順に、「3.0g/cm^(3)未満の密度」、「化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%」との条件を付すことによってフィラーの態様を限定するものであり、「該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%の水を含み」は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「水」について「化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%」との条件を付すことによって水の態様を限定するものであり、「該膨張された化粧料組成物は、少なくとも1の非揮発性油を含み」は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「生理的に許容し得る媒体」について「非揮発性油」を含むとの条件を付すことによって「生理的に許容し得る媒体」の態様を限定するものと認められる。
そして、上記の補正事項は、いずれも補正の前後で請求項に記載された発明の属する技術分野及び解決すべき課題を変更するものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、補正の目的要件に違反するものとは認められない。

3.独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるか)について検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための膨張された化粧料組成物であって、該膨張された化粧料組成物は0.12g/cm^(3)以下の密度を有し、かつ空気又は不活性ガス及び基本組成物を使用して形成され、
該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを、生理的に許容し得る媒体中に含み、
該フィラーは、3.0g/cm^(3)未満の密度を持ち、かつタルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、ポリ‐β‐アラニン粉末、ポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ラウロイルリシン、中空ポリマー微小球体、シリコーン樹脂粉末、エラストマー状ポリオルガノシロキサン粒子、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球体、ガラス又はセラミックスマイクロカプセル、及び8?22個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導された金属石鹸、並びにこれらの混合物から選ばれ、
該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%の水を含み、
該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%のフィラーを含み、
該膨張された化粧料組成物は、少なくとも1の非揮発性油を含み、かつ
該膨張された化粧料組成物は、該基本組成物及び空気又は不活性ガスを使用してムースの形態において安定に形成されており、該ガスは該基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である、前記組成物。」

(2)刊行物及び刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物
刊行物1:特開昭62-16411号公報
刊行物2:特表2001-507718号公報
(刊行物1、2は、平成25年7月23日付け拒絶査定での引用文献5、8である。)

(2-2)刊行物に記載された事項
[刊行物1]
・摘示事項1-a:
「(a)色材 3?60重量%
(b)高級アルコール 0.05?3重量%
(c)液状油分 5?60重量%
(d)水及び/または多価アルコール 3?90重量%
(e)界面活性剤 0.1?10重量%
(f)被膜形成剤 0?40重量%
(g)噴射剤 1?10重量%
より構成されることを特徴とするメークアップ化粧料」(第1頁特許請求の範囲請求項1)

・摘示事項1-b:
「そこで本発明者らは、前記従来の問題を解決し、クリーム状、ゲル状等のタイプにとらわれずに、仕上り効果、化粧持続性と使用簡便性、使用感とを両立させ得る新たな剤型を得んと鋭意研究の重ねた結果、乳化系、液晶系を中心とするメークアップ化粧料中に、フォーム形成剤及び噴射剤などよりなる発泡基剤を含有させたものは、本来のメークアップ機能を損なうことなく、また高色材含有下にあっても発泡基剤の働きにより使用時にはムース状を呈し、広がり、伸びが良好で、また塗布終了後には均一且つ優れた仕上り効果を与え得ることを見出し、本発明の完成に至った。」(第2頁右上欄第10行?左下欄第1行)

・摘示事項1-c:
「まず、本発明に適用される色材は、通常メークアップ化粧料に使用される粉体及び顔料類であり、具体的には二酸化チタン、タルク、カオリン、セリサイト、ベントナイト類、雲母、チタン雲母、酸化亜鉛、酸化鉄、ナイロン末、ポリエチレン末、有機顔料等はもとより、それぞれの親油化乃至は親水化表面処理したものなどが挙げられ、これらのうちより目的に応じて適宜1種又は2種以上が選択され用いられるものである。
また配合量としてはメークアップ化粧料の全量に対して3?60重量%好ましくは20?40重量%の範囲が選択される。3重量%より少ない量では、得られたメークアップ化粧料の隠蔽力やメークアップ効果が乏しく好ましくなく、逆に60重量%を越えると、如何に発泡基材の働きにより使用感等が改善されるとは言え、その限度を越えたものとなってしまい良好なメークアップ化粧料は得られなくなってしまう。」(第2頁左下欄第13行?右下欄第10行)

・摘示事項1-d:
「最後に、本発明で使用し得る噴射剤としては、プロパン(bp-42℃)、フレオン12(bp-30℃)、n-ブタン(bp-0.5℃)、フレオン114(bp3.6℃)、フレオン11(bp23℃)、n-ペンタン(bp36℃)、フレオン113(bp47℃)などが挙げられ、これらを単独もしくは混合して好ましくは沸点20?30℃の範囲の噴射剤として使用する。斯る温度範囲の噴射剤を用いた場合には、季節による外部環境温度により若干の影響を受けるものの、本発明のメークアップ化粧料は、噴出時には安定なクリーム状態を維持し、且つ皮膚に塗布(皮膚温32℃)した時には、組成物の粘度や硬度によっても異なるが数秒から数十秒の遅延時間を以って発泡が開始される。また、噴射剤の配合量は、噴射剤の比重の違いにより気化後のガス容積が変動するため若干の幅はあるものの、メークアップ化粧料の全量に対して1?10重量%の範囲が選択される。尚、発泡後のメークアップ化粧料の比重が発泡前の1/10以下となるよう噴射剤量を設定すると使用効果として好ましい。1重量%より少ない量ではフォーム形成が不充分であり、反対に10重量%を超える量を用いると発泡後のメークアップ化粧料中に残ガスが滞留することになって好ましくない。」(第4頁右上欄第12行?左下欄第16行)

・摘示事項1-e:
「ここで本発明のメークアップ化粧料の特徴を示すと以下の如くである。
(1)乳化、液晶化及び分散系を中心としたメークアップ化粧料において、色材量を幅広く選択し得るため、所望の隠蔽力、質感、色彩の鮮やかさを付与し得る。
(2)同様に、被膜形成剤についても、従前以上の添加が可能となり、望むべき耐水性、密着性や化粧もち等の化粧持続性を有するメークアップ化粧料が得られる。
(3)更に、塗布時にはムース状を呈し、伸びが軽く、広がり易く、塗布量の調節が容易であり、塗布後にはムラツキ、厚ぼったさのない均一な仕上り効果が得られる。」(第5頁左上欄第4?17行)

・摘示事項1-f:
「以下に実施例を示す。尚、配合割合は重量部である。
実施例1.アンダーメークアップ料

(方法)
(C)を75℃に加熱し溶解した後、(A)を分散させ、更に別に80℃に調整した(B)を攪拌しながら加え乳化した後、40℃まで冷却し(D)を加えて、室温まで冷却した。得られた乳化組成物を耐圧容器に入れ、次に(E)を添加して製品とした。
実施例2.ファンデーション(O/W)

(方法)
(A)を混合し粉砕した。(C)を調整し、これに(A)を加え分散させた後75℃に加熱する。次いで(C)に80℃加熱した(B)を攪拌しながら加え乳化した後、室温まで冷却した。得られた乳化組成物を耐圧容器に入れ、次に(D)を添加後、50℃に加温振とう分散後、冷却して製品とした。
実施例3.ファンデーション(W/O)

(方法)
実施例2と同様にして行なった。」(第5頁左下欄下から第3行?第6頁右上欄第20行)

・摘示事項1-g:
「次に、本発明のメークアップ化粧料を評価した表を示す。
評価方法は、後記実施例1及び2に示した本発明のアンダーメークアップ料及びファンデーションと、比較品として後記実施例1及び2より高級アルコール及び噴射剤を除去(水を増量)したアンダーメークアップ料(比較品1)及びファンデーション(比較品2)とを用い、12名の女性官能パネラーを対象として官能評価試験を行なった。


表-1の結果が示す如く、本発明のメークアップ化粧料は、比較品のメークアップ化粧料と比べて、伸び、広がり易さ及び仕上がり均一性に優れていることが明らかとなった。」(第5頁左上欄第18行?左下欄下から第7行)

[刊行物2]
・摘示事項2-a:
「非エアロゾル系ムース組成物であって、
(a)ベタイン化両性固着性ポリマーから選択した、約0.1?約10重量%の第1の固着性ポリマー、と
(b)前記組成物に対する重量で約30%以下の揮発性溶媒を含有する水性キャリアを含み、
前記組成物が実質的に圧縮噴射剤を含まず、かつ、約0.025?約0.1g/mLの泡密度を有する泡を発生しうる非エアロゾル系ムース組成物。」
(第2頁【特許請求の範囲】請求項1)

・摘示事項2-b:
「髪に付ける発泡化粧用組成物は、通常「ムース」と呼ばれており、この発明でも「ムース」という用語を用いる。」(第3頁第7?8行)

・摘示事項2-c:
「第1の固着性ポリマーと随意の第2の固着性ポリマーは、圧縮噴射剤がない場合に、この組成物が約0.025?約0.1g/mL…程度の泡密度を有する泡を発生すしうるように選択する。このような泡密度は、この製品の髪への塗布を容易にし、…良好な泡の外観と保持時間などの優れた発泡特性を与えるものと考えられている。」(第5頁第20?25行)


(3)検討
ア.刊行物1に記載された発明
前記「(2)(2-2)[刊行物1]」の記載事項からみて、刊行物1には、メークアップ化粧料の発明(摘示事項1-a)が記載され、その実施例(摘示事項1-f、特に、実施例3参照。)の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる(なお、実施例における各成分の配合割合は「重量部」であるが、それらの合計量が100重量部であることからみて、各成分の配合割合は「重量%」と認められる。)。

「カオリン 2.0重量%、
タルク 3.0重量%、
二酸化チタン 7.0重量%、
色素 3.0重量%、
マイクロクリスタリンワックス 5.0重量%、
セタノール 1.0重量%、
流動パラフィン 10.0重量%、
イソプロピルパルミテート 5.0重量%、
ジグリセリルイソステアリルエーテル 5.0重量%、
マルビット 7.0重量%、
マルチトール 3.0重量%、
メチルパラペン 0.2重量%、
精製水 44.8重量%、
n-ペンタン 3.5重量%、
n-ブタン 0.5重量%、
を含有するファンデーション(W/O)。」
(以下、「引用発明」という。)

イ.検討
(ア)本件補正発明と引用発明との対比
引用発明の「ファンデーション(W/O)」は、ファンデーション(W/O)がメークアップのための下地として皮膚に適用されるものであるところ、皮膚を構成する主な物質としてケラチン物質があることが技術常識であることを考慮すると、本件補正発明の「ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための…化粧料組成物」のうちの「ケラチン物質をメークアップするための化粧料組成物」に相当する。

引用発明の「n-ペンタン 3.5重量%、n-ブタン 0.5重量%」は、本件補正明細書の段落【0092】の「この推進ガスは、…基本組成物の合計重量の1%?10%に相当し得る。使用され得るところの推進ガスは、二酸化炭素、窒素、酸化窒素及び揮発性炭化水素、例えば、ブタン、…、ペンタン、…から選ばれ得る。」との記載等からみて、本件補正発明の「基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である」「空気又は不活性ガス」が推進ガスであり、ブタン、ペンタン等がその例としてあげられるものと認められることからみて、本件補正発明の「空気又は不活性ガス…、該ガスは該基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である」に相当する。
また、斯かるガスを使用して得られた引用発明は、ガスの作用によって膨張したものと解されるから、本件補正発明の「膨張された化粧料組成物」との事項を満たすものと認められる。

引用発明の「カオリン 2.0重量%、タルク 3.0重量%」は、色材として用いられているものではあるが(摘示事項1-c)、カオリン、タルクが本件補正発明のフィラーとして列記されたものであることからみて、本件補正発明の「該フィラーは、…タルク、…、カオリン、…から選ばれ、…化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%のフィラーを含み」に実質的に相当する。
また、 引用発明の「精製水 44.8重量%」は、本件補正発明の「化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%の水」に相当する。
そして、精製水が「生理的に許容し得る媒体」であり、それが「水性相」を形成すること、及び、カオリン、タルク等のフィラーを含むことは技術常識からみて明らかなことと認められるから、引用発明は、本件補正発明の「該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを、生理的に許容し得る媒体中に含み」との事項を満たすものと認められる。

引用発明の「流動パラフィン 10.0重量%、イソプロピルパルミテート 5.0重量%」は、本件補正明細書の段落【0069】の記載等からみて、本件補正発明の「少なくとも1の非揮発性油」に相当する。

引用発明の「カオリン 2.0重量%、…、精製水 44.8重量%」は、本件補正発明の「基本組成物」に相当し、引用発明は、基本組成物と空気又は不活性ガスにあたるn-ペンタン 3.5重量%、n-ブタン 0.5重量%を使用して形成されるものと解されるから、引用発明は、本件補正発明の「空気又は不活性ガス及び基本組成物を使用して形成され、…該膨張された化粧料組成物は、該基本組成物及び空気又は不活性ガスを使用して…形成されており」との事項を満たすものと認められる。

引用発明の「二酸化チタン 7.0重量%、色素 3.0重量%、マイクロクリスタリンワックス 5.0重量%、セタノール 1.0重量%、ジグリセリルイソステアリルエーテル 5.0重量%、マルビット 7.0重量%、マルチトール 3.0重量%、メチルパラペン 0.2重量%」は、本件補正発明が「…該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを…含み、…35重量%?95重量%の水を含み、…1重量%?30重量%のフィラーを含み、…少なくとも1の非揮発性油を含み、…、前記組成物。」であって、発明特定事項とされた成分以外の他の成分を使用することを許容するものであることからみて、本件特許発明との相違点とならないものである。

以上を総合すると、両者は、
「ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための膨張された化粧料組成物であって、該膨張された化粧料組成物は空気又は不活性ガス及び基本組成物を使用して形成され、
該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを、生理的に許容し得る媒体中に含み、
該フィラーは、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、ポリ‐β‐アラニン粉末、ポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ラウロイルリシン、中空ポリマー微小球体、シリコーン樹脂粉末、エラストマー状ポリオルガノシロキサン粒子、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球体、ガラス又はセラミックスマイクロカプセル、及び8?22個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導された金属石鹸、並びにこれらの混合物から選ばれ、
該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%の水を含み、
該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%のフィラーを含み、
該膨張された化粧料組成物は、少なくとも1の非揮発性油を含み、かつ
該膨張された化粧料組成物は、該基本組成物及び空気又は不活性ガスを使用して形成されており、該ガスは該基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である、前記組成物。」
の点で一致し、次の点で相違すると認められる。

相違点1:本件補正発明は0.12g/cm^(3)以下の密度を有するのに対して、引用発明は斯かる事項を発明特定事項としない点。
相違点2:フィラーに関し、本件補正発明は3.0g/cm^(3)未満の密度を持つのに対して、引用発明は斯かる事項を発明特定事項としない点。
相違点3:本件補正発明は「ムースの形態において安定に形成され」たものであるのに対して、引用発明は斯かる事項を発明特定事項としない点。
(イ)相違点について
a.相違点1
刊行物1の「発泡後のメークアップ化粧料の比重が発泡前の1/10以下となるよう噴射剤量を設定すると使用効果として好ましい。」(摘示事項1-d)との記載等を考慮すると、引用発明において、噴射剤の量を調節することによってメークアップ化粧料の泡の量を調節し密度を小さくすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、刊行物2に、髪に適用されるムース組成物(摘示事項2-a、2-b)についてのものではあるが、「この組成物が約0.025?約0.1g/mL…程度の泡密度を有する泡を発生(す)しうるように選択する。このような泡密度は、…保持時間などの優れた発泡特性を与える…」(摘示事項2-c)と記載されているように、泡としては約0.025?0.1g/mL(すなわち、0.025?0.1g/cm^(3))程度の密度のものが保持時間に優れることが公知であったと認められることを考慮すると、ムース状を呈した化粧用組成物(アンダーメークアップ料)である(摘示事項1-b、1-e)引用発明においても、泡の保持時間を優れたものとすることによって安定性の優れたものとするために、刊行物2に保持時間が優れたものとして記載されている0.025?0.1g/cm^(3)との泡の密度を考慮して、当該密度の数値範囲を包含する0.12g/cm^(3)以下との密度の数値範囲を設定することは、当業者が、刊行物1、2に記載された技術的事項に基づいて容易に想到し得たことと認められる。
また、本件補正明細書の記載をみても、本件補正発明に係る化粧料組成物の密度を0.12g/cm^(3)以下とすることによって、当業者が予測し得ない程の顕著な効果が奏されるものとは認められない(例えば、本件補正明細書に記載された実施例は、特定の1種類の構成成分からなるものが「0.0868g/cm^(3)」の密度を有することを述べたものであって、0.12g/cm^(3)以下とすることによって、それ以外の場合に比べて、当業者が予測し得ない顕著な効果が奏されることを技術的な裏付けをもって確認できるものとはいえない。)。
そうすると、相違点1に係る本件補正発明の構成の点は、当業者が刊行物1、2に記載された技術的事項に基づいて容易に想到し得たものと認められる。

b.相違点2
タルクの密度が2.82g/cm^(3)、カオリンの密度が2.5?2.6g/cm^(3)(「化学大辞典」化学大辞典編集委員会編(共立出版株式会社)昭和53年9月10日縮刷版第22刷発行の第2巻第296頁「カオリン」の項、第5巻第683頁「タルク」の項参照。)程度であることは周知の技術的事項と認められることを考慮すると、本件補正発明のフィラーにあたる構成成分と認められる引用発明のタルク及びカオリンの密度は3.0g/cm^(3)未満の条件を満たすものといえる(なお、上記の密度は真密度(空隙のない密実な状態での密度)と解されるから、タルク及びカオリンが空隙を有する場合に、それらの密度が2.82g/cm^(3)、2.5?2.6g/cm^(3)よりも小さい値となる場合があるとしても、それらの密度が2.82g/cm^(3)、2.5?2.6g/cm^(3)よりも大きい値となり3.0g/cm^(3)以上となるものではないと推認される。)。
そうすると、引用発明における本件補正発明のフィラーにあたる構成成分の密度は3.0g/cm^(3)未満の条件を満たすから、相違点2に係る本件補正発明の構成の点は引用発明との実質的な相違点とはいえない。

c.相違点3
引用発明のファンデーション(W/O)は、刊行物1の「発泡基剤の働きにより使用時にはムース状を呈し、広がり、伸びが良好で、また塗布終了後には均一且つ優れた仕上り効果を与え得ることを見出し、本発明の完成に至った。」(摘示事項1-b)、「(3)更に、塗布時にはムース状を呈し、伸びが軽く、広がり易く、塗布量の調節が容易であり、塗布後にはムラツキ、厚ぼったさのない均一な仕上り効果が得られる。」(摘示事項1-e)及び「…本発明のメークアップ化粧料は、噴出時には安定なクリーム状態を維持し」(摘示事項1-d)との記載等からみて、ムース状を呈し、噴出時に安定なクリーム状態を維持したものであることを考慮すると、「ムースの形態において安定に形成され」たものと認められる。
そして、本件補正明細書の記載をみても、本件補正発明が「ムースの形態において安定に形成され」たものであることによって、ムース状を呈し、噴出時に安定なクリーム状態を維持したものである引用発明に比して、当業者が予測し得ない程の顕著な効果を奏するものとは認められない(例えば、本件補正明細書に記載された実施例は、特定の1種類の構成成分からなるものが「十分に安定性を示すところの0.0868g/cm^(3)の密度を有する」ことを述べたに止まるものであって、安定性の定量的な程度等を確認できるものとはいえない。)。
そうすると、相違点3に係る本件補正発明の構成の点は引用発明との実質的な相違点とはいえない。

(ウ)本件補正発明の効果について
本件補正明細書の発明の詳細な説明の「本発明に従う膨張された組成物は…、皮膚に適用されるとき、軽く、クリーミーかつフォンダンムースの肌合いを有する。それは容易に皮膚に伸び、かつ目に見える痕跡を残すことなしに、皮膚に一様なメークアップを与える。更に、皮膚への施与後に、得られたメークアップ又は被覆物は、粉末状のビロードのような仕上がりを有し、かつ乾燥又はぴんと張った効果なしに、つけるために気持ちが良い。メークアップ又は処理された皮膚は気持ちよく滑らかである。」(段落【0014】)との記載等からみて、本件補正発明は、
a.皮膚に適用されるとき、軽く、クリーミーかつフォンダンムースの肌合いを有する、
b.容易に皮膚に伸び、かつ目に見える痕跡を残すことなしに、皮膚に一様なメークアップを与え、皮膚への施与後に、得られたメークアップ又は被覆物は、粉末状のビロードのような仕上がりを有し、かつ乾燥又はぴんと張った効果なしに、つけるために気持ちが良く、メークアップ又は処理された皮膚は気持ちよく滑らかである、
との効果を奏するものと認められる。

しかしながら、本件補正明細書の発明の詳細な説明には、本件補正発明によって、これらa.、b.の効果が奏されることを当業者が技術的な裏付けをもって確認できるような開示がされているとは認められないから、上記a.、b.の効果が当業者が予測し得ない程の顕著なものであるものとは認められない(例えば、本件補正明細書に記載された実施例は、前記のとおり、特定の1種類の構成成分からなるものが「十分に安定性を示すところの0.0868g/cm^(3)の密度を有する」ことを述べたに止まるものであって、本件補正発明によって、上記a.、b.の効果が奏されること及びそれらの効果の程度等を確認できるものとはいえない。)。

また、上記a.の効果は、刊行物1の「(3)…塗布時にはムース状を呈し、伸びが軽く、…」(摘示事項1-e)との記載及びメークアップ化粧料の「伸び」等の特性についての実験データ(摘示事項1-gの表1。)等から当業者が予測し得た範囲内のものであり、上記b.の効果は、刊行物1の「(3)…伸びが軽く、広がり易く、…、塗布後にはムラツキ、厚ぼったさのない均一な仕上り効果が得られる。」(摘示事項1-e)との記載及びメークアップ化粧料の「伸び」、「広がり易さ」、「仕上がり均一性」等の特性についての実験データ(摘示事項1-gの表1)等から当業者が予測し得た範囲内のものと認められるから(伸び、広がりが容易で仕上がりが均一であれば、乾燥や突っ張り(ぴんと張った感触)がなく肌に気持ちよいことは当業者が予測し得たことと認められる。)、上記a.、b.の効果は、刊行物1、2に記された技術的事項から当業者が予測し得た範囲内のものと認められる(下線部は当審が付したものである。なお,刊行物1の当該実験データは、引用発明に係る実施例3のものではないが、刊行物1のメークアップ化粧料がこれらの特性に優れることを示すものと認められる。)。

そうすると、本件補正発明によって奏される効果は、刊行物1、2に記載された技術的事項から当業者が予測し得た範囲内の効果であって顕著な効果とは認められない。

(エ)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「しかしながら、上記に示したとおり、引用文献5…は…、特定の鎖長の高級アルコール、…を配合することにより改善をしています。このことは、膨張後の組成物の密度の安定性を増加すること及びこの安定性を達成するために特定の値に当該密度の調整をすることを当業者は考えずに、その成分を特定のものにすることにより上記改善を行うことを示しています。従って、引用文献5…に記載の発明に、泡密度を調整する引用文献8…に記載の発明を組み合わせることをしないと考えます。
引用文献8は、非エアロゾル系ムース組成物であって、(a)ベタイン化両性固着性ポリマーから選択した、約0.1?約10重量%の第1の固着性ポリマー、と(b)前記組成物に対する重量で約30%以下の揮発性溶媒を含有する水性キャリアを含む非エアロゾル系ムース組成物です(請求項1)。すなわち、圧縮噴射剤を含まないムースです。圧縮噴射剤を含まないということは、生じる泡に違いが見られます。従って、当業者が、引用文献5…に記載の膨張された組成物を改良する動機を引用文献8において見出すことはありません。」(第4頁第28?42行。なお、「引用文献5」、「引用文献8」は、「刊行物1」、「刊行物2」である。)、
と主張し、
a.引用文献5(刊行物1)に記載の発明は特定の鎖長の高級アルコールを配合することによって安定性の達成を図るものであるから、密度を調整する引用文献8(刊行物2)に記載の発明を組み合わせる動機付けが存在しないこと、
b.引用文献5(刊行物1)に記載の発明は圧縮噴射剤を含むから、圧縮噴射剤を含まないムースである引用文献8(刊行物2)に記載の発明を組み合わせる動機付けが存在しないこと、
を主張していると認められる。

しかしながら、刊行物2の「この組成物が約0.025?約0.1g/mL…程度の泡密度を有する泡を発生(す)しうるように選択する。このような泡密度は、…良好な泡の外観と保持時間などの優れた発泡特性を与える…」(摘示事項2-c)との記載は、泡の密度と安定性(保持時間)との間には相関があるという技術的知見を一般的に述べたものと認められるところ、刊行物1に記載された圧縮噴射剤を用いて生成した泡についても、斯かる一般的に述べられた技術的知見を考慮し、約0.025?約0.1g/mLとの泡密度を参考にして、泡密度を設定することは当業者が容易に想到し得たことと認められる(なお、仮に、刊行物2の約0.025?約0.1g/mLとの泡密度が、圧縮噴射剤を用いて生成した泡の安定性については適切でなかったとしても、刊行物2の技術的事項から、泡の密度と安定性との間には相関があることを一般的な技術的知見として類推し、刊行物1の圧縮噴射剤を用いて生成した泡における適切な泡密度を設定することは、当業者が通常の創作能力の範囲内で容易になし得たことと認められる。)から、上記b.の主張は妥当なものといえない。

また、刊行物1に記載された発明が特定の鎖長の高級アルコールを配合することによって安定性を達成するものであるとしても、安定性をより確実ならしめるために刊行物2に記載された泡密度に関する技術的知見をさらに考慮することは、当業者が通常の創作能力の範囲内で容易に想到し得たことであり、前記「第2 3.(3)イ.(イ)a.」に相違点1について記載したように、本件補正明細書の記載をみても、本件補正発明が0.12g/cm^(3)以下という密度の設定によって当業者が予測し得ない程の顕著な効果を奏するものとも認められないから、上記a.の主張は妥当なものといえない。

よって、上記の請求人の主張は、妥当なものとはいえない。

(4)独立特許要件のまとめ
以上のとおりであって、本件補正発明は、その優先日前日本国内において頒布された刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、上記補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本件出願に係る発明
本件出願に係る発明は、平成24年10月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための膨張された化粧料組成物であって、該膨張された化粧料組成物は0.12g/cm^(3)以下の密度を有し、かつ空気又は不活性ガス及び基本組成物を使用して形成され、該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを、生理的に許容し得る媒体中に含み、該フィラーは、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、ポリ‐β‐アラニン粉末、ポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ラウロイルリシン、中空ポリマー微小球体、シリコーン樹脂粉末、エラストマー状ポリオルガノシロキサン粒子、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球体、ガラス又はセラミックスマイクロカプセル、及び8?22個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導された金属石鹸、並びにこれらの混合物から選ばれ、該膨張された化粧料組成物は、該基本組成物及び空気又は不活性ガスを使用してムースの形態において安定に形成されており、該ガスは該基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である、前記組成物。」

第4 原査定の理由
原査定は、「この出願については、平成24年4月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2によって、拒絶をすべきものです。」とするものであり、平成24年4月11日付け拒絶理由通知書によると、理由2は、次の理由を含むものである。

「…
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

(C)理由2
・請求項1-12
・引用文献2、3、5-9

引 用 文 献 等 一 覧

2.特開2002-241212号公報
3.特開2005-213250号公報

5.特開昭62-016411号公報
6.特開昭63-185911号公報
7.特開平07-258033号公報
8.特表2001-507718号公報
9.特開2001-072543号公報」

第5 当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は、原査定の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものと判断する。

1.引用文献に記載された事項
原査定の引用文献のうち、引用文献5、8は、前記「第2 3.(2)(2-1)」に記載した刊行物1、2であって、それぞれ、前記「第2 3.(2)(2-2)」に刊行物1、2について記載したとおりの事項が記載されている。

2.引用文献に記載された発明
引用文献5には、前記「第2 3.(2)(3)」に刊行物1について記載したとおりの発明が記載されていると認められる(以下に再掲する。)。
「カオリン 2.0重量%、
タルク 3.0重量%、
二酸化チタン 7.0重量%、
色素 3.0重量%、
マイクロクリスタリンワックス 5.0重量%、
セタノール 1.0重量%、
流動パラフィン 10.0重量%、
イソプロピルパルミテート 5.0重量%、
ジグリセリルイソステアリルエーテル 5.0重量%、
マルビット 7.0重量%、
マルチトール 3.0重量%、
メチルパラペン 0.2重量%、
精製水 44.8重量%、
n-ペンタン 3.5重量%、
n-ブタン 0.5重量%、
を含有するファンデーション(W/O)。」
(以下同様に、「引用発明」という。)

3.検討
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明は、前記「第2 3.(1)」に記載した本件補正発明から、
「(該フィラーは、)3.0g/cm^(3)未満の密度を持ち」、
「該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して35重量%?95重量%の水を含み」、
「該膨張された化粧料組成物は、該膨張された化粧料組成物の総重量に対して1重量%?30重量%のフィラーを含み」、
「該膨張された化粧料組成物は、少なくとも1の非揮発性油を含み」、
との発明特定事項が削除されたほかの点は、本件補正発明と同様の発明であるから、前記「第2 3.(3)イ.(ア)」において、本件補正発明と引用発明とを対比したのと同様に、本願発明と引用発明とを対比すると、
両者は、
「ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための膨張された化粧料組成物であって、該膨張された化粧料組成物は空気又は不活性ガス及び基本組成物を使用して形成され、該基本組成物は、少なくとも一つの水性相及びフィラーを、生理的に許容し得る媒体中に含み、該フィラーは、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、ポリ‐β‐アラニン粉末、ポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ラウロイルリシン、中空ポリマー微小球体、シリコーン樹脂粉末、エラストマー状ポリオルガノシロキサン粒子、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球体、ガラス又はセラミックスマイクロカプセル、及び8?22個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導された金属石鹸、並びにこれらの混合物から選ばれ、該膨張された化粧料組成物は、該基本組成物及び空気又は不活性ガスを使用して形成されており、該ガスは該基本組成物の総重量の1重量%?10重量%である、前記組成物。」
の点で一致し、次の点で相違すると認められる。

相違点1’:本願発明は0.12g/cm^(3)以下の密度を有するのに対して、引用発明は斯かる事項を発明特定事項としない点。
相違点2’:本願発明は「ムースの形態において安定に形成され」たものであるのに対して、引用発明は斯かる事項を発明特定事項としない点。

(2)相違点について
上記相違点1’、相違点2’は、それぞれ前記「第2 3.(3)イ.(ア)」に記載した相違点1、相違点3と同様の相違点であるから、前記「第2 3.(3)イ.(イ)a.、c.」に相違点1、相違点3について記載した理由と同様の理由によって、相違点1’に係る本願発明の構成の点は引用文献5、8に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たものであり、相違点3’に係る本願発明の構成の点は引用発明との実質的な相違点とはいえないものである。

(3)本願発明の効果について
本願発明の効果については、前記「第2 3.(3)イ.(ウ)」に本件補正発明の効果について記載した理由と同様の理由によって、引用文献5、8に記載された技術的事項から、当業者が予測し得た範囲内のものであって格別顕著な効果とは認められない。

(4)小括
よって、本願発明は、引用文献5、8に記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものといえる。

(5)補正案について
請求人は、平成26年1月23日付け手続補正書(審判請求書)及び同年7月29日付け上申書において、本願発明が「ファンデーション又はファンデーションベースの形態であること」を特定する補正案(手続補正書(審判請求書)第3頁、上申書第4頁)を提示したが、前記2.に記載したとおり、引用発明はファンデーションに係る発明であることを考慮すると、仮に、本願の特許請求の範囲に対して、当該補正案のとおりの「ファンデーション又はファンデーションベースの形態であること」との事項を特定する補正がされたとしても、斯かる事項の点(ファウンデーションの形態であることを含むものである。)は、引用発明との相違点とはならないものと認められるから、当該補正によっても、本願発明は、依然として、引用文献5、8に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものといえる。

4.まとめ
よって、本願発明は、その優先日前頒布された刊行物である引用文献5、8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものと認められる。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-29 
結審通知日 2015-07-02 
審決日 2015-07-17 
出願番号 特願2006-330292(P2006-330292)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 明子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 冨永 保
関 美祝
発明の名称 低密度の膨張された化粧料組成物  
代理人 松井 光夫  
代理人 村上 博司  

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